JP3698341B2 - 片面銅めっき鋼帯の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気めっき法による片面銅めっき鋼帯の製造方法、特に、両面に電気銅めっきを施した後、めっき不要面のめっき層を電解除去する片面銅めっき鋼帯の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コイル状の鋼帯を原板として連続ラインで製造する各種電気めっき鋼帯は、製造性が優れており安価なため、広い分野で使用されている。例えば、電気銅めっき鋼帯の用途として、自動車のコネクティングロッドの軸受けに用いられる軸受け焼結メタルが挙げられる。この焼結メタルは、銅めっき鋼板の上に銅系合金粉末を載せた後加熱処理し、銅系合金粉末を焼結させて製造される。この場合、銅粉を載せない面に銅めっき層が存在すると、コネクティングロッドとの焼き付きが発生するので片面めっきにするか、両面めっきの場合にはめっき不要面の銅めっき層を除去する必要がある。
【0003】
切板等を原板とするバッチ式の電気めっきの場合、片面めっきを施すことは比較的容易であり、通常は非めっき面を機械的にシールしたり、めっき浴外に配置する等の手段により行われる。連続式電気めっきの場合にも、片面をシールして電気めっきを行う技術が、例えば特開昭49−28534号公報や特開昭63−96291号公報に開示されているが、この場合、被めっき物である鋼帯が連続的に走行・移動しているるために、非めっき面を効果的にシールすることは困難であった。このため、連続式の片面電気めっき鋼帯の製造においては、両面に所望のめっきを施した後、めっき不要面のめっき層を除去するのが一般的である。
【0004】
不要のめっき層を除去する手段としては、機械的研削法、化学的溶解法、および電気化学的溶解(電解)法等が挙げられる。ここで、機械的研削法は、片面のめっき層のみを選択除去するには適した方法であるが、連続ライン内でインライン処理することが時間的に困難であり、かつ粉塵発生等の作業環境上の問題も発生する。また、化学的溶解法の場合には、片面めっきの場合と同様に、非処理面を連続的にシールすることが困難であり、片面のめっき層のみを選択的に除去することは困難である。
電解法の場合には、対極をめっき不要面側にのみ配設して陽極電解することにより、片面のめっき層を選択的に溶解除去することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
両面に亜鉛系の電気めっきを施した鋼帯の片面のみを、電解法により選択的に除去する技術が、例えば特開昭59−126786号公報に開示されている。この場合、めっき不要面にも電気めっきを施すのは、片面電気めっきを行う際の非めっき面の酸焼けを防止するためであり、電解法に用いる電解液も特にその種類を限定するものではない。
【0006】
これに対し、銅めっき鋼帯の場合には、通常の酸またはアルカリの水溶液中で銅めっき層を溶解すると、電解液中に溶解した銅イオンが、露出した鋼素地に置換反応により再析出するため、電解法による片面銅めっき鋼帯の製造は従来より困難であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、片面銅めっき鋼帯を安定的に製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明においては、鋼帯の両面に電気銅めっきを施した後、めっき不要面の銅めっき層を電解法により溶解除去する片面銅めっき鋼帯の製造方法において、めっき層溶解除去用の電解液として、電解質が主としてアンモニウムイオンおよび硫酸塩イオンからなり、そのアンモニウムイオン濃度が13.5〜80g/lであり、かつpHが5〜9の水溶液を用い、鋼帯の幅より50mmもしくはそれ以上狭い幅を有する対極をめっき不要面側に配設して陰極とし、陽極電流密度が1〜30A/dm2 の条件で銅めっき層を電解除去することを特徴とする片面銅めっき鋼帯の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
銅めっき層を電解除去することにより露出した鋼素地上への置換銅の再析出を抑制するためには、電解液中に存在する銅イオンを錯イオン化し、銅の析出電位を低下する必要がある。このような作用を示す錯化剤にはアンモニウムイオン、シアン化物イオン、ピロりん酸塩イオン等の無機イオンやEDTA等の有機キレート化合物がある。
この中でシアン化物は有毒であり、作業環境および廃液処理の面で工業的に使用することは困難である。またピロりん酸塩および各種の有機キレート剤は高価であり、コスト上昇を招くため、工業的な電解除去に使用することはやはり困難である。
【0010】
上記の錯化剤の中でアンモニウム塩は安価であり、かつ入手が容易であり、電解除去に用いるものとして好適である。電解液中のアンモニウムイオン濃度としては、13.5〜80g/lが好ましい。濃度が13.5g/l未満では錯化能力が不足であり、銅めっき層の電解除去後に置換銅の再析出が起こってしまう。また、濃度が80g/lを超える場合には、錯化能力の点で問題はないが、走行する鋼帯に付着して電解槽外に持ち出される電解質の量が増大し、電解液の濃度調整に要する費用が上昇するので好ましくない。
【0011】
アンモニウムイオンと対をなすアニオン種としては、硫酸塩イオン、硝酸塩イオンや塩化物イオン等の通常用いられる無機酸塩イオンを含め、いかなるアニオン種も使用可能であるが、連続電気銅めっき工程の場合、ストライクめっき後の本めっきには、通常、大電流密度での電解が可能な硫酸銅浴を用いることが多いので、電解質の持ち込み・混入を考慮すると、硫酸塩イオンの使用が好ましい。また、硝酸塩イオンや塩化物イオン等の一塩基酸塩イオンを用いると、電解除去により鋼素地が露出した際に、鋼素地表面の荒れが起こり易くなるので、その点からも硫酸塩イオンの使用が好ましい。
【0012】
電解液のpHとしては5〜9が好適である。pHが4以下では、アンモニウムイオン濃度を上述の範囲に調整しても、置換銅の再析出が起こるために不適当である。またpHが10以上では、電解除去時の電流効率が低下するために、コスト上昇となり、好ましくない。なお、電解浴の建浴時や電解後のアンモニウムイオン濃度およびpHの調整には、主として硫酸アンモニウム、硫酸およびアンモニア水またはそれらの水溶液を用いる。
また、電解除去のための電解液は、電解質として主としてアンモニウムイオンと硫酸塩イオンとを含むものであるが、これら以外に、他の支持電解質、鋼素地の腐食を抑制するインヒビター、鋼素地より溶解した鉄イオンを錯化するための錯化剤や、pH調整剤等を添加することも可能である。
【0013】
片面のめっき層のみを電解除去するためには、電解槽中のめっき不要面側のみに対極を配設して陰極とし、非処理物である銅めっき鋼帯を陽極として電解を行い、銅めっき層を電気化学的に溶解する。その際、本発明の電解液は多量の電解質を含み導電性が高いため、非電解面(めっき層が必要な面)への電流の回り込みが起こり、この面のエッジ部のめっき層が一部溶解する。
なお、本発明の実施にあたり、めっき不要面のめっき層は最終的には電解除去するものであるため、この面への銅めっき厚さは、めっき必要面のそれよりも薄くすることが経済的である。
【0014】
電流の回り込みを防止する手段としては、対極と銅めっき鋼帯の中間で、鋼帯の両エッジ部に絶縁性の電流遮蔽板を配設する方法や、対極の幅を非処理物のそれよりも狭くする方法がある。前者の方法は、処理する銅めっき鋼帯の幅に合わせて電解槽の配置を変更する必要があり、実用上困難である。
後者の場合には、電解に必要な対極の幅に許容度があり、同一の対極幅で複数の幅の銅めっき鋼帯の処理が可能であり、工業的な製造に好適である。本発明において、電解除去に用いる対極は、その幅が被処理物である銅めっき鋼帯のそれよりも50mmもしくはそれ以上狭いものとすることが必要である。
【0015】
電解除去の電流密度としては、1〜30A/dm2 の範囲が好ましい。電流密度が1A/dm2 未満では処理速度が遅く、製造コストが増大するので好ましくない。電流密度が30A/dm2 を超える場合、電解電圧が上昇して、対極の幅を上述の範囲に設定しても電流の回り込みが起こり、非電解面エッジ部の溶解が起こるため不適当である。
【0016】
表1に、好適な電解条件を設定するための予備的調査の結果を示す。
板厚2mm(面積1dm2 )の無酸素銅板を陽極とし、硫酸アンモニウム50〜300g/l(アンモニウムイオン濃度13.5〜80g/lに相当)、pH4〜10、浴温45℃の電解液中、電流密度20A/dm2 で10分間電解を行い、銅板の重量減少量を測定して電流効率を算出した。また、常法に従って電解脱脂および酸洗処理を施した冷延鋼板を、上述の電解を行った後の電解液中に1分間浸漬し、冷延鋼板表面への置換銅析出の有無を目視にて評価した。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明の電解条件に相当する試料番号1から6の場合は何れも、電流効率が100%であり、冷延鋼板表面に置換銅の析出も起こらなかった。電解液濃度の低い試料番号7およびpHの低い試料番号8および9では、冷延鋼板表面に置換銅の析出が起こった。電解液pHの高い試料番号10および11では、置換銅の析出は起こらないが、電流効率が低下した。
【0019】
【実施例1】
板厚0.5mmで板幅300mmの冷延鋼帯に、常法に従って電解脱脂および酸洗処理を施した後、ピロりん酸銅めっき浴(ストライクめっき)および硫酸銅めっき浴(本めっき)で、めっき不要面には0.4μm、めっき必要面には8μmの銅めっきを施した後、板幅の異なる無酸素銅板を陰極として、硫酸アンモニウム200g/l、pH7、浴温45℃の電解液中、電流密度20A/dm2 でめっき不要面の銅めっき層が全量溶解するまで電解し、めっき必要面の銅めっき層の溶解量を調査した。
【0020】
めっき不要面の銅めっき層の全量を電解除去後に、鋼帯エッジから5mmの位置のめっき必要面の銅めっき層厚さを蛍光X線膜厚計により5点測定した平均値につき、電解前後の膜厚の差を溶解膜厚とし、その値が銅めっき鋼帯製造時に通常発生するエッジオーバーコート量(2μm)以下のものを良、それを超えるものを不良と判定した。測定結果を表2に示す。鋼帯の幅と対極の幅の差を50mm以上にすると、溶解膜厚が2μm以下になり、片面銅めっき鋼帯の製造上問題がない。
【0021】
【表2】
【0022】
【実施例2】
実施例1と同じ条件で両面に厚さの異なる銅めっきを施した鋼帯を、同一条件の電解液中、対極幅を鋼帯のそれよりも50mm狭くし、電流密度1〜50A/dm2 でめっき不要面の銅めっき層が全量溶解するまで電解し、めっき必要面の銅めっき層の溶解量を調査した。調査結果を表3に示す。電流密度1〜30A/dm2 の範囲で溶解膜厚が2μm以下になり、片面銅めっき鋼帯の製造上問題がない。
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したとおり、両面に銅めっきを施した鋼帯を、アンモニウムイオンを含有する電解液中で、対極幅を鋼帯幅より50mm以上狭くして電解することにより、片面銅めっき鋼帯を簡易に製造することが可能になった。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気めっき法による片面銅めっき鋼帯の製造方法、特に、両面に電気銅めっきを施した後、めっき不要面のめっき層を電解除去する片面銅めっき鋼帯の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
コイル状の鋼帯を原板として連続ラインで製造する各種電気めっき鋼帯は、製造性が優れており安価なため、広い分野で使用されている。例えば、電気銅めっき鋼帯の用途として、自動車のコネクティングロッドの軸受けに用いられる軸受け焼結メタルが挙げられる。この焼結メタルは、銅めっき鋼板の上に銅系合金粉末を載せた後加熱処理し、銅系合金粉末を焼結させて製造される。この場合、銅粉を載せない面に銅めっき層が存在すると、コネクティングロッドとの焼き付きが発生するので片面めっきにするか、両面めっきの場合にはめっき不要面の銅めっき層を除去する必要がある。
【0003】
切板等を原板とするバッチ式の電気めっきの場合、片面めっきを施すことは比較的容易であり、通常は非めっき面を機械的にシールしたり、めっき浴外に配置する等の手段により行われる。連続式電気めっきの場合にも、片面をシールして電気めっきを行う技術が、例えば特開昭49−28534号公報や特開昭63−96291号公報に開示されているが、この場合、被めっき物である鋼帯が連続的に走行・移動しているるために、非めっき面を効果的にシールすることは困難であった。このため、連続式の片面電気めっき鋼帯の製造においては、両面に所望のめっきを施した後、めっき不要面のめっき層を除去するのが一般的である。
【0004】
不要のめっき層を除去する手段としては、機械的研削法、化学的溶解法、および電気化学的溶解(電解)法等が挙げられる。ここで、機械的研削法は、片面のめっき層のみを選択除去するには適した方法であるが、連続ライン内でインライン処理することが時間的に困難であり、かつ粉塵発生等の作業環境上の問題も発生する。また、化学的溶解法の場合には、片面めっきの場合と同様に、非処理面を連続的にシールすることが困難であり、片面のめっき層のみを選択的に除去することは困難である。
電解法の場合には、対極をめっき不要面側にのみ配設して陽極電解することにより、片面のめっき層を選択的に溶解除去することが可能である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
両面に亜鉛系の電気めっきを施した鋼帯の片面のみを、電解法により選択的に除去する技術が、例えば特開昭59−126786号公報に開示されている。この場合、めっき不要面にも電気めっきを施すのは、片面電気めっきを行う際の非めっき面の酸焼けを防止するためであり、電解法に用いる電解液も特にその種類を限定するものではない。
【0006】
これに対し、銅めっき鋼帯の場合には、通常の酸またはアルカリの水溶液中で銅めっき層を溶解すると、電解液中に溶解した銅イオンが、露出した鋼素地に置換反応により再析出するため、電解法による片面銅めっき鋼帯の製造は従来より困難であった。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決し、片面銅めっき鋼帯を安定的に製造する方法を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明においては、鋼帯の両面に電気銅めっきを施した後、めっき不要面の銅めっき層を電解法により溶解除去する片面銅めっき鋼帯の製造方法において、めっき層溶解除去用の電解液として、電解質が主としてアンモニウムイオンおよび硫酸塩イオンからなり、そのアンモニウムイオン濃度が13.5〜80g/lであり、かつpHが5〜9の水溶液を用い、鋼帯の幅より50mmもしくはそれ以上狭い幅を有する対極をめっき不要面側に配設して陰極とし、陽極電流密度が1〜30A/dm2 の条件で銅めっき層を電解除去することを特徴とする片面銅めっき鋼帯の製造方法が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
銅めっき層を電解除去することにより露出した鋼素地上への置換銅の再析出を抑制するためには、電解液中に存在する銅イオンを錯イオン化し、銅の析出電位を低下する必要がある。このような作用を示す錯化剤にはアンモニウムイオン、シアン化物イオン、ピロりん酸塩イオン等の無機イオンやEDTA等の有機キレート化合物がある。
この中でシアン化物は有毒であり、作業環境および廃液処理の面で工業的に使用することは困難である。またピロりん酸塩および各種の有機キレート剤は高価であり、コスト上昇を招くため、工業的な電解除去に使用することはやはり困難である。
【0010】
上記の錯化剤の中でアンモニウム塩は安価であり、かつ入手が容易であり、電解除去に用いるものとして好適である。電解液中のアンモニウムイオン濃度としては、13.5〜80g/lが好ましい。濃度が13.5g/l未満では錯化能力が不足であり、銅めっき層の電解除去後に置換銅の再析出が起こってしまう。また、濃度が80g/lを超える場合には、錯化能力の点で問題はないが、走行する鋼帯に付着して電解槽外に持ち出される電解質の量が増大し、電解液の濃度調整に要する費用が上昇するので好ましくない。
【0011】
アンモニウムイオンと対をなすアニオン種としては、硫酸塩イオン、硝酸塩イオンや塩化物イオン等の通常用いられる無機酸塩イオンを含め、いかなるアニオン種も使用可能であるが、連続電気銅めっき工程の場合、ストライクめっき後の本めっきには、通常、大電流密度での電解が可能な硫酸銅浴を用いることが多いので、電解質の持ち込み・混入を考慮すると、硫酸塩イオンの使用が好ましい。また、硝酸塩イオンや塩化物イオン等の一塩基酸塩イオンを用いると、電解除去により鋼素地が露出した際に、鋼素地表面の荒れが起こり易くなるので、その点からも硫酸塩イオンの使用が好ましい。
【0012】
電解液のpHとしては5〜9が好適である。pHが4以下では、アンモニウムイオン濃度を上述の範囲に調整しても、置換銅の再析出が起こるために不適当である。またpHが10以上では、電解除去時の電流効率が低下するために、コスト上昇となり、好ましくない。なお、電解浴の建浴時や電解後のアンモニウムイオン濃度およびpHの調整には、主として硫酸アンモニウム、硫酸およびアンモニア水またはそれらの水溶液を用いる。
また、電解除去のための電解液は、電解質として主としてアンモニウムイオンと硫酸塩イオンとを含むものであるが、これら以外に、他の支持電解質、鋼素地の腐食を抑制するインヒビター、鋼素地より溶解した鉄イオンを錯化するための錯化剤や、pH調整剤等を添加することも可能である。
【0013】
片面のめっき層のみを電解除去するためには、電解槽中のめっき不要面側のみに対極を配設して陰極とし、非処理物である銅めっき鋼帯を陽極として電解を行い、銅めっき層を電気化学的に溶解する。その際、本発明の電解液は多量の電解質を含み導電性が高いため、非電解面(めっき層が必要な面)への電流の回り込みが起こり、この面のエッジ部のめっき層が一部溶解する。
なお、本発明の実施にあたり、めっき不要面のめっき層は最終的には電解除去するものであるため、この面への銅めっき厚さは、めっき必要面のそれよりも薄くすることが経済的である。
【0014】
電流の回り込みを防止する手段としては、対極と銅めっき鋼帯の中間で、鋼帯の両エッジ部に絶縁性の電流遮蔽板を配設する方法や、対極の幅を非処理物のそれよりも狭くする方法がある。前者の方法は、処理する銅めっき鋼帯の幅に合わせて電解槽の配置を変更する必要があり、実用上困難である。
後者の場合には、電解に必要な対極の幅に許容度があり、同一の対極幅で複数の幅の銅めっき鋼帯の処理が可能であり、工業的な製造に好適である。本発明において、電解除去に用いる対極は、その幅が被処理物である銅めっき鋼帯のそれよりも50mmもしくはそれ以上狭いものとすることが必要である。
【0015】
電解除去の電流密度としては、1〜30A/dm2 の範囲が好ましい。電流密度が1A/dm2 未満では処理速度が遅く、製造コストが増大するので好ましくない。電流密度が30A/dm2 を超える場合、電解電圧が上昇して、対極の幅を上述の範囲に設定しても電流の回り込みが起こり、非電解面エッジ部の溶解が起こるため不適当である。
【0016】
表1に、好適な電解条件を設定するための予備的調査の結果を示す。
板厚2mm(面積1dm2 )の無酸素銅板を陽極とし、硫酸アンモニウム50〜300g/l(アンモニウムイオン濃度13.5〜80g/lに相当)、pH4〜10、浴温45℃の電解液中、電流密度20A/dm2 で10分間電解を行い、銅板の重量減少量を測定して電流効率を算出した。また、常法に従って電解脱脂および酸洗処理を施した冷延鋼板を、上述の電解を行った後の電解液中に1分間浸漬し、冷延鋼板表面への置換銅析出の有無を目視にて評価した。
【0017】
【表1】
【0018】
本発明の電解条件に相当する試料番号1から6の場合は何れも、電流効率が100%であり、冷延鋼板表面に置換銅の析出も起こらなかった。電解液濃度の低い試料番号7およびpHの低い試料番号8および9では、冷延鋼板表面に置換銅の析出が起こった。電解液pHの高い試料番号10および11では、置換銅の析出は起こらないが、電流効率が低下した。
【0019】
【実施例1】
板厚0.5mmで板幅300mmの冷延鋼帯に、常法に従って電解脱脂および酸洗処理を施した後、ピロりん酸銅めっき浴(ストライクめっき)および硫酸銅めっき浴(本めっき)で、めっき不要面には0.4μm、めっき必要面には8μmの銅めっきを施した後、板幅の異なる無酸素銅板を陰極として、硫酸アンモニウム200g/l、pH7、浴温45℃の電解液中、電流密度20A/dm2 でめっき不要面の銅めっき層が全量溶解するまで電解し、めっき必要面の銅めっき層の溶解量を調査した。
【0020】
めっき不要面の銅めっき層の全量を電解除去後に、鋼帯エッジから5mmの位置のめっき必要面の銅めっき層厚さを蛍光X線膜厚計により5点測定した平均値につき、電解前後の膜厚の差を溶解膜厚とし、その値が銅めっき鋼帯製造時に通常発生するエッジオーバーコート量(2μm)以下のものを良、それを超えるものを不良と判定した。測定結果を表2に示す。鋼帯の幅と対極の幅の差を50mm以上にすると、溶解膜厚が2μm以下になり、片面銅めっき鋼帯の製造上問題がない。
【0021】
【表2】
【0022】
【実施例2】
実施例1と同じ条件で両面に厚さの異なる銅めっきを施した鋼帯を、同一条件の電解液中、対極幅を鋼帯のそれよりも50mm狭くし、電流密度1〜50A/dm2 でめっき不要面の銅めっき層が全量溶解するまで電解し、めっき必要面の銅めっき層の溶解量を調査した。調査結果を表3に示す。電流密度1〜30A/dm2 の範囲で溶解膜厚が2μm以下になり、片面銅めっき鋼帯の製造上問題がない。
【0023】
【表3】
【0024】
【発明の効果】
以上説明したとおり、両面に銅めっきを施した鋼帯を、アンモニウムイオンを含有する電解液中で、対極幅を鋼帯幅より50mm以上狭くして電解することにより、片面銅めっき鋼帯を簡易に製造することが可能になった。
Claims (1)
- 鋼帯の両面に電気銅めっきを施した後、めっき不要面の銅めっき層を電解法により溶解除去する片面銅めっき鋼帯の製造方法において、めっき層溶解除去用の電解液として、電解質が主としてアンモニウムイオンおよび硫酸塩イオンからなり、そのアンモニウムイオン濃度が13.5〜80g/lであり、かつpHが5〜9の水溶液を用い、鋼帯の幅より50mmもしくはそれ以上狭い幅を有する対極をめっき不要面側に配設して陰極とし、陽極電流密度が1〜30A/dm2 の条件で銅めっき層を電解除去することを特徴とする片面銅めっき鋼帯の製造方法。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP09272797A JP3698341B2 (ja) | 1997-03-28 | 1997-03-28 | 片面銅めっき鋼帯の製造方法 |
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JP09272797A JP3698341B2 (ja) | 1997-03-28 | 1997-03-28 | 片面銅めっき鋼帯の製造方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10273800A JPH10273800A (ja) | 1998-10-13 |
JP3698341B2 true JP3698341B2 (ja) | 2005-09-21 |
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ID=14062474
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JP (1) | JP3698341B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103938244A (zh) * | 2014-05-11 | 2014-07-23 | 山东建筑大学 | 一种钢带连续镀铜ⅱ |
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JP4650275B2 (ja) * | 2004-08-10 | 2011-03-16 | 日立金属株式会社 | 銅めっき被膜を表面に有する希土類系永久磁石 |
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1997
- 1997-03-28 JP JP09272797A patent/JP3698341B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN103938244A (zh) * | 2014-05-11 | 2014-07-23 | 山东建筑大学 | 一种钢带连续镀铜ⅱ |
CN103938244B (zh) * | 2014-05-11 | 2016-07-06 | 山东建筑大学 | 一种钢带连续镀铜的电镀工艺 |
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JPH10273800A (ja) | 1998-10-13 |
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