JP3698170B2 - 表示装置用ガラス板の熱処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電子機器に用いられるガラス板を熱処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器産業の発達に伴い、各種の電子機器、とりわけ液晶やエレクトロルミネセンス、プラズマディスプレイといった表示装置あるいはイメージセンサ等の基板用ガラスとして、肉厚0.03〜1.5mm程度のガラス板が多量に用いられるようになってきている。
【0003】
これらの用途に用いられるガラス板は、その上に薄膜電気回路を形成するため、成膜熱処理、パターニング等の処理を受ける。これらの処理は、ガラス板を高温度下に曝す場合があり、そのためこの種のガラス板には、熱的寸法安定性の良いことが要求される。
【0004】
例えばTN(Twisted Nematic)及びSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶ディスプレイにおける透明導電膜回路、a−SiTFT(Amorphous−Si Thin Film Transistor)、p−SiTFT(Poly−Si Thin Film Transistor)やその他の各種金属膜や絶縁膜等の組み合わせによって形成された液晶ディスプレイの薄膜電気回路やエレクトロルミネセンスの薄膜電気回路、プラズマディスプレイの薄膜電気回路及びイメージセンサの薄膜電気回路等の製造工程において、ガラス板が高温度の熱処理を受けると、ガラスの寸法が変化して所定寸法を維持できなくなったり、更には回路パターンが所定の設計よりずれたりする虞れがある。この回路パターンのずれは、電気的な性能を維持できなくなるという致命的な不良原因になり、用途によっては100mm当たり1μm以下の寸法変化も許されないことがある。
【0005】
またこのような用途のガラス板は、反りやうねりが少なく、ガラス表面の平坦性が良いことも要求される。すなわちガラス板の平坦性が悪いと、露光距離が設計どおりにならなくなったり、液晶の2枚のガラス板の間隔に差が生じて表示性能を損なうという本質的な問題から、自動化された製造工程での機械的操作に適合しないという付随的な問題まで様々な問題を引き起こし、用途によってはガラス板の全面に亙って数μm〜数十μmの平坦性が要求される。
【0006】
しかしながら公知の工業的な成形法によって製造されたガラス板では、良好な熱的寸法安定性や平坦性は有しておらず、そのためにガラスを成形した後、これを平坦性に優れた耐熱性材料からなる板状体の上に載置した状態で、熱処理炉に入れ、歪点付近から軟化点付近の温度まで昇温し、一定時間保持した後、徐冷するといった熱処理方法が一般に採られている。この熱処理によってガラス板の寸法変化が予め飽和値近くまで進行し、ガラス板の熱的寸法安定性が改善されると共にガラスの表面が軟化変形することによって平坦性が改善される。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら上記したガラス板の熱処理方法の場合、ガラス板を板状体の上に載置した状態で搬送コンベアー等に載せて移動させる際、ガラス板が板状体上で移動し、擦れることによって、ガラス板の表面に多数の傷が付いたり、さらにガラス板の位置がずれて、板状体からはみ出した状態で熱処理されると、ガラス板に反りが発生することになる。
【0008】
電子機器用のガラス板の場合、表面の傷は、単に外観的に透明性が損なわれるといった問題のみならず、薄膜電気回路が傷のために設計どおりに形成されず、所望の電気性能が得られなかったり、断線したりするといった致命的な不良を引き起こす。特に微細な薄膜電気回路の場合、わずか数μmの長さの傷ですら問題となる。またこのような傷は、ガラス表面を研磨することによって除去することができるが、研磨コストがガラス板の価格を大幅に上昇させるため好ましくない。
【0009】
またガラス板の反りが大きい場合にも、薄膜電気回路が設計どおりに形成されないという問題が生じる。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、平坦性に優れた耐熱性材料からなる板状体の上に、ガラス板を載置して熱処理する場合、ガラス板が板状体上で移動するのを防止する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の表示装置用ガラス板の熱処理方法は、平坦性に優れた耐熱性材料からなる板状体の上に、ガラス板を載置した後、炉に入れて熱処理する表示装置用ガラス板の熱処理方法において、熱処理する前に、板状体とガラス板との間を水あるいはアルコールで濡らし、該水あるいはアルコールを、ガラス板を炉に搬送する途中で徐々に揮発させ、熱処理工程において完全に蒸発させることを特徴とする。
【0012】
また本発明の好ましい態様は、ガラス板の上に、平坦性に優れた耐熱性材料からなる板状体を載置してなることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明においては、板状体が、耐熱性結晶化ガラスからなることを特徴とし、さらにアルコールが、エチルアルコールであることを特徴とする。
【0014】
本発明における加熱保持温度は、ガラスの歪点即ちガラスの粘度が、1014.5poiseの温度付近までの範囲である。通常、電子機器のガラス板として使用される硼珪酸ガラスの場合、歪点は、約500〜550℃、軟化点は約750〜800℃であり、また無アルカリガラスの場合、歪点は、約630〜750℃、軟化点は、約840〜950℃である。
【0015】
【作用】
本発明においては、板状体とガラス板の間を水あるいはアルコールで濡らしておくが、これらの液体の表面張力による吸着作用によってガラス板の板状体の上での移動が防止される。そのため、ガラス板を板状体の上に載置し、これを搬送コンベアーに載せて移動してもガラス板の表面に擦り傷が付くことはない。因に、これらの液体は、ガラス板を炉に搬送する途中で徐々に揮発し、熱処理工程において完全に蒸発する。
【0016】
また板状体とガラス板の間を水あるいはアルコールで濡らす方法としては、板状体の上に液体をしずく状にして垂らしたり、液体を霧状にして吹き付ける方法が適当であり、これらの作業は自動化することが可能である。
【0017】
つまり液体の代わりに、ガラス繊維シート等を使用し、これを板状体とガラス板の間に挟み込むことによって、ガラス板の位置ずれを防止することも可能ではあるが、板状体の上にガラス繊維シートを載せる作業あるいは取り除く作業を自動化することは非常に困難である。
【0018】
因に本発明における液体は、必ずしも板状板の全面を濡らす必要はなく、部分的に濡れるようにすれば良い。
【0019】
本発明において使用する水としては、通常の水道水で良いが、水中には無機質の不純物が含まれているため、熱処理後のガラス板表面に不純物に起因する染みが発生することがある。このような場合には、ガラス板の表面をポリッシュ研磨することが好ましい。
【0020】
さらにアルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール等を使用することが可能であるが、安全性や炉内での発火性を考慮すると、エチルアルコールを使用するのが望ましい。
【0021】
本発明において高純度のアルコールを使用すると、液体中の不純物が少ないため、熱処理後のガラス板表面に染みが発生し難いため、ポリッシュ研磨を行う必要がない。
【0022】
また本発明で使用する板状体の材料としては、耐熱性、生産コスト等を考慮すると、耐熱性結晶化ガラスが最も好ましい。この耐熱性結晶化ガラスとしては、30〜380℃の温度範囲において、−20〜20×10-7/℃の熱膨張係数を有するものが適しており、より具体的には、重量百分率で、SiO2 55〜70%、Al2 O3 20〜35%、Li2 O 3〜5%、TiO2 1〜3%、ZrO2 1〜4%、P2 O5 1〜5%、Na2 O 0〜4%、K2 O 0〜4%の組成を有し、内部にβ−石英固溶体結晶あるいはβ−スポジューメン結晶を析出してなるものが好適である。
【0023】
本発明において、ガラス板の上にも上記した板状体を載置すると、ガラス板の反りがより一層改善されると共に、熱処理時にガラス板の上下の熱バランスが保たれ、良好に徐冷することが可能となる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明のガラス板の熱処理方法を実施例及び比較例に基づいて詳細に説明する。
【0025】
(実施例1)
重量百分率で、SiO2 71.2%、Al2 O3 5.8%、B2 O3 12.3%、BaO 2.2%、CaO 1.1%、Na2 O 6.3%、K2 O1.1%からなり、歪点が530℃、軟化点が770℃で、200×250×0.5mmの寸法を有するガラス板を準備した。尚、このガラス板は、リドロー法によって成形したもので、表面には、問題となるような傷はないが、熱的寸法安定性及び平坦性が悪いガラス板である。
【0026】
また250×430×3mmの寸法を有する耐熱性結晶化ガラス板(日本電気硝子株式会社製ネオセラムN−0)を準備し、この耐熱性結晶化ガラス板の上に、高純度のエチルアルコールを0.5cc滴下した。
【0027】
次いで上記のガラス板を洗浄し、乾燥させた後、上記の耐熱性結晶化ガラスの上に載置してから、最高温度が550℃となるように設定されたトンネル炉内を移動する搬送コンベアーの上に載置し、所定の速度でトンネル炉内を移動させてから取り出し、再びガラス板を洗浄し、乾燥させた。
【0028】
こうして熱処理したガラス板に、10000ルクスのハロゲン光を当てて、その表面を観察したところ、表面の傷は、成形後の水準と同等であり、染みも存在しないことが確認された。またこのガラス板の熱的寸法安定性を調べるため、350℃で3時間熱処理を施したところ、100mm当たり1μm以内の良好な熱的寸法安定性を有しており、さらに触針式反り測定機を使用してガラス板の反りを調べたところ、50μm以内の良好な平坦面を有していた。
【0029】
(実施例2)
実施例1で使用したエチルアルコールを水道水に代え、後の条件は、全て同じように設定し、ガラス板の熱処理を行った。このガラス板の表面を観察したところ、表面の傷は、成形後の水準と同等であったが、染みの存在が確認された。また熱的寸法安定性と反りについても、実施例1と同等の値を示した。
【0030】
その後、このガラス板の両面をポリッシュ研磨し、再びその表面を観察したところ、染みは消失していた。
【0031】
(比較例)
実施例と同様のガラス板と耐熱性結晶化ガラス板を準備し、ガラス板を洗浄し、乾燥させた後、これを耐熱性結晶化ガラス板の上に載置し、これを実施例1と同じ条件で熱処理し、再び洗浄し、乾燥させた。
【0032】
こうして徐冷したガラス板の表面を観察したところ、数μm〜数十μmの長さの傷が多数認められ、成形後の水準よりもかなり悪かった。またこのガラス板の熱的寸法安定性と反りを調べたところ、熱的寸法安定性については、実施例1のガラス板と同様、良好な値を示したが、反りについては50μm以上と大きい値を示した。
【0033】
【発明の効果】
以上のように本発明のガラス板の熱処理方法によると、ガラス板が板状体上で移動することがないため、熱処理の際の搬送工程においてガラス板の表面に傷を付けたり、反りを発生させることなく、良好に徐冷することが可能である。
【0034】
また本発明は、徐冷のための熱処理に限定されるものではなく、例えばガラス板の表面に各種の機能膜を形成した後の熱処理にも応用することが可能である。
Claims (4)
- 平坦性に優れた耐熱性材料からなる板状体の上に、ガラス板を載置した後、炉に入れて熱処理する表示装置用ガラス板の熱処理方法において、熱処理する前に、板状体とガラス板との間を水あるいはアルコールで濡らし、該水あるいはアルコールを、ガラス板を炉に搬送する途中で徐々に揮発させ、熱処理工程において完全に蒸発させることを特徴とする表示装置用ガラス板の熱処理方法。
- ガラス板の上に、平坦性に優れた耐熱性材料からなる板状体を載置してなることを特徴とする請求項1の表示装置用ガラス板の熱処理方法。
- 板状体が、耐熱性結晶化ガラスからなることを特徴とする請求項1又は2の表示装置用ガラス板の熱処理方法。
- アルコールが、エチルアルコールであることを特徴とする請求項1又は2の表示装置用ガラス板の熱処理方法。
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JP33108194A JP3698170B2 (ja) | 1994-12-07 | 1994-12-07 | 表示装置用ガラス板の熱処理方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP33108194A JP3698170B2 (ja) | 1994-12-07 | 1994-12-07 | 表示装置用ガラス板の熱処理方法 |
Publications (2)
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JPH08165132A JPH08165132A (ja) | 1996-06-25 |
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ID=18239643
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JP33108194A Expired - Lifetime JP3698170B2 (ja) | 1994-12-07 | 1994-12-07 | 表示装置用ガラス板の熱処理方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3698170B2 (ja) |
-
1994
- 1994-12-07 JP JP33108194A patent/JP3698170B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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JPH08165132A (ja) | 1996-06-25 |
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