JP3697988B2 - 電源装置およびこれを用いた電動機または圧縮機駆動システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、力率を改善し高調波を抑制する電源装置及びこの電源装置を用いた電動機または圧縮機駆動システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
図14は、特開平10−178780号公報に示された従来の直流電源装置を示す。図において、101は交流電源、102はリアクトル、103は第1のダイオードブリッジ、104は短絡素子、105は第2のダイオードブリッジ、106,107,108は平滑用電解コンデンサ、109は負荷、110はゼロクロス検出手段、111は駆動信号生成手段、112は短絡素子駆動手段である。
【0003】
次に、図14に示した直流電源装置の動作を説明する。短絡素子104が動作しない場合は、この直流電源装置は、一般的に知られた倍電圧整流回路となり、交流電源101の電源電圧ピークの2倍の値が平滑コンデンサ108の両端出力として整流される。その場合、平滑コンデンサ106,107,108への充電に基づき、電源力率は決定されるため、電源力率は低いものとなる。一方、交流電源101の零点を通過した後、短期間だけ短絡素子104が動作した場合、交流電源101がリアクトル102を介して第1のダイオードブリッジ103と短絡素子104に短絡することになる。この結果、リアクトルに短絡電流が流れることになり、倍電圧整流では不通電期間であった期間にも電流が流れるので、電源力率を大きく向上させることができる。しかも、この直流電源装置の制御は交流電源101の零点通過後に短期間だけ短絡素子104を動作させるだけなので、複雑な制御を必要としない簡易な制御にて短絡素子104を動作させることが可能である。また、このような電源力率の改善方式は、例えば、特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報に示されている技術であり、この旨は特開平10−178780号公報にも記載されている。
【0004】
しかしながら、上述の特開平10−178780号公報、特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報の技術では、リアクトル102から「ジー」というような不快な騒音が発生するといった問題点があげられており、図14に示される特開平10−178780号公報において、前記騒音の発生を簡易な構成により経済的に低減し得る技術が示されている。
【0005】
図14において、ゼロクロス検出手段110が電源のゼロクロスを検出し、ゼロクロス通過後の所定の短期間に短絡素子104を短絡する前後の少なくとも一方で、前記短絡をした期間よりも短い期間だけ短絡素子104が動作し短絡するものである。そして、前記長い短絡期間を力率改善パルス、前記短い短絡期間を騒音低減パルスとし、図15に示されるように力率改善パルスと騒音低減パルスの2つのパルスにて短絡素子104を動作させて、騒音低減を実現しようとするものである。
【0006】
前記力率改善パルスは力率を改善するためのものであり、前記騒音低減パルスは、騒音を低減するものである。そして、騒音低減パルスは、リアクトル102の固有振動周期の略1/6の期間だけの間隔をあけ、略1/6の期間だけ短絡するといったもので、力率改善パルスによりリアクトル102に発生した自由振動と前記騒音低減パルスにより発生したリアクトル102の自由振動が干渉し、振動を打ち消すような間隔と短絡を短絡素子104に行わせて、リアクトル102からの不快な騒音を低減するものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
特開平10−178780号公報に示される技術は、リアクトル102の騒音を低減するためにリアクトル102の固有振動周期の1/6の周期の振動を騒音低減パルスにて与えて、力率改善パルスによる振動を打ち消している。しかしながら、力率改善パルスに起因して発生するリアクトル102の振動は、リアクトル102の固有振動数が変化すると変化する。リアクトル102の固有振動数は、リアクトル102の強度ばらつきや個体ばらつき、通電によるリアクトル102の特性変化や温度変化、さらにはリアクトル102の取付環境や取付強度などで変化してしまう。
【0008】
したがって、リアクトル102の固有振動数に対しその振動を打ち消すような振動を与えて騒音低減しようとしても、騒音低減パルスがリアクトル102の固有振動数の変化に対し変化しない場合、振動を打ち消さずに逆に助長してしまう恐れがある。
【0009】
また、現在出力している騒音低減パルスがリアクトル102の固有振動を打ち消すような振動を与えているかどうか検出する場合、その振動を検出するために何らかの検出手段が必要となり、コストアップにつながる。リアクトルの剛性アップや周囲を防音材で囲むなどといった騒音対策の方が上記検出手段を設けるよりも低コストになる可能性もある。また、仮に検出手段を設けて検出したとしても検出手段にて精度良く検出できない場合、固有振動を助長するような騒音低減パルスを出力してしまう恐れもある。
【0010】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、リアクトル102の固有振動数が変化しても騒音を低減することにあり、更に言えば、力率改善を簡易な制御によって実現し、且つ騒音も併せて容易な方法で低減することにより、低コストでそれらを実現するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電源装置は、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、この整流器に接続されたリアクトルと、前記交流電源を短絡する短絡手段と、前記交流電源の半周期毎に所定時間パルス幅変調信号を前記短絡手段へ出力し、前記リアクトルに流れる電流の変化が小さくなるように前記パルス幅変調信号のオンdutyを前記所定時間の中で徐々に変化させる制御手段とを備えたものである。
【0012】
また、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、この整流器に接続されたリアクトルと、前記交流電源を短絡する短絡手段と、交流電源のゼロクロスからピークまでの間の所定時間パルス幅変調信号を前記短絡手段へ出力し、前記パルス幅変調信号のオンdutyが徐々に0%に近づくように変化させる制御手段とを備えたものである。
【0013】
また、交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、この整流器に接続されたリアクトルと、前記交流電源を短絡する短絡手段と、前記交流電源のゼロクロスからピークまでの間の第1の所定時間、及び前記交流電源のピークから次のゼロクロスまでの間の第2の所定時間に、パルス幅変調信号を前記短絡手段へ出力し、前記第1の所定時間には前記パルス幅変調信号のオンdutyが徐々に0%に近づくように変化させ、前記第2の所定時間にはオンdutyを0%から徐々に変化させる制御手段とを備えたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1を示す回路ブロック図である。図1において、1は交流電源、2はダイオードで構成され交流電源1を整流する整流器、3は交流電源1と整流器2との間に挿入されたリアクトル、4は整流器2の出力電圧を平滑する平滑コンデンサ、5は電源装置(電源装置)の出力部に接続される負荷、6は電源同期信号を生成する同期信号生成部、7は平滑コンデンサ4より交流電源1側に配置され同期信号生成部6に基づいて電源を短絡させる電源短絡手段、8は電源短絡手段7をPWM制御するPWM制御部、9は負荷5の負荷量を検出する負荷量検出手段である。
【0015】
図1の動作について説明する。図1に示す電源短絡手段7が動作しない場合、図2に波線に示すような入力電流が流れる。これは、整流器2と平滑コンデンサ4のみによる整流であるためである。このようなコンデンサインプット電流に対し、電源短絡手段7を図2に示すようなSW駆動信号にて動作させると図2の実線で示される入力電流が流れる。
【0016】
これは、電源短絡手段7が動作したことによって交流電源1をリアクトル3を介して短絡したため、短絡電流が流れ、コンデンサインプットでは流れない区間に電流が流れるようになる。従って、力率が改善されるのであるが、この力率改善方式は前記特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報に示されている力率改善方式と考え方は同じである。
【0017】
しかしながら、特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報に示されている技術では、電源半周期に1回もしくは複数回のスイッチング動作であるため、それが電源半周期毎に発生しリアクトル3を振動させて騒音を発生させるという課題がある。図3は特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報に示されている技術である電源半周期に1回だけスイッチング素子を動作させた場合の動作波形を示している。
【0018】
そこで、これから特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報に示されている技術における騒音発生のメカニズムについて述べる。電源短絡手段7の動作時、交流電源1から流れ出た電流は、リアクトル3、電源短絡手段7を介して交流電源1に戻る電流経路が形成される。この場合、電源系統や製品での配線のインピーダンスなどの微少インピーダンスを無視すれば、電源短絡手段7の動作時の電流は、リアクトル3のインピーダンスをL、交流電源1の電圧をVとすると、V=Ldi/dtにて近似される。
【0019】
また、電源短絡手段7がオン状態からオフ状態になった場合、短絡電流の流れる経路が無くなるため、整流器2が理想ダイオードにて構成されていたとすると、V=Ldi/dt+1/C∫idtと表される。この場合、オフになった瞬間のリアクトル3に流れていた電流が初期値として与えられる。
【0020】
このように、電源短絡手段7のオン状態からオフ状態になる瞬間の電流変化量(di/dt)の大きさによって、異音や騒音が発生してしまうのである。図4は、異音や騒音の原因となるdi/dtの変化部を示す波形図であり、図4の右側の波形図は変化部の拡大図である。この図4に示すdi/dtの変化が騒音として発生するのである。
【0021】
そこで、前記di/dtの変化が小さくなるように、図3に示す電源半周期毎に1回オンとなる駆動信号をPWM化して図2のように駆動信号を生成し、そのPWMのオンdutyを徐々に小さくなるようにする。そうして最終的にオンdutyが0%になるようにPWM制御部8にて電源短絡手段7を動作させる。di/dtは電流の時間変化率であるので、電源短絡手段7での短絡時間が短くなればなるほど電流の時間変化率は小さくなり、騒音や異音の原因となるdi/dtの変化を小さくするものである。
なお、PWMとは多数回のスイッチングをおこなわせて複数コのパルスのパルス幅を変調制御する制御方式であり、一般的には、パルス幅変調と呼ばれている。なお、PWM制御について、以下のとおり簡単に説明する。PWM制御とは、キャリヤ周期(キャリヤ周波数)を一定として、その一定のキャリヤ周期において、オンする時間とオフする時間の比率を変化させることによって、スイッチング素子の導通率を変化させる方式である。例えば、図16に示すとおり、(a)で示す一定のキャリア周期の搬送波(三角波)があり、(b)にオン時間を示すdutyの指令がある。このdutyの指令に従い、スイッチイグ素子のオンオフ信号(図16(c)を生成する制御方式がPWM制御である。
【0022】
以上のことから、図2に示すように、交流電源1のゼロクロスから平滑コンデンサ4へ充電電流が流れ出す期間の間に電源短絡手段7をPWM動作させ、しかも、PWMのオンdutyは交流電源1のピークが近づくにつれて小さくし、電源短絡手段7の動作停止直前にPWMのオンdutyを0%にするようにすることで、di/dtを最小限に小さくできる。その結果、異音や騒音を低減することができる。
【0023】
また、交流電源1は電源同期信号とともに時間が経過すると徐々に大きくなり、上式でのVが大きくなる。そのため、交流電源1のゼロクロス付近とピーク付近では、同時間のオンdutyであった場合、di/dtはピーク付近の方が大きくなって、di/dtが大きくなることは明らかである。
【0024】
従って、図4に示した部分のdi/dtがリアクトル3の音の主要因であり、この部分でPWMのオンdutyが大きいと異音や騒音が発生してしまうため、PWMのオンdutyは一定値にて動作させた場合では、異音や騒音を防止することはできない。また、オンdutyを極端に低い値で一定にした場合、力率が改善しなくなり、本技術である力率改善が為し得なくなるため、オンdutyは徐々に小さくしていくのが望ましい。
【0025】
以上より、電源短絡手段7の動作を停止する直前は、できる限りdi/dtを小さくしなければならない。そのため動作停止直前は極力オンdutyを小さくし、動作停止直前は0%となる必要があるが、図2に示すように直線的に減少しなくとも動作停止直前にて0%となれば上記と同等の効果があることは言うまでもなく、例えば、近似式や段階状のテーブルとしてPWM制御部8に与えたり、交流電源1の電圧値に応じて減少させるようにしてもよい。また、動作停止直前のみきわめて細いパルス波形にパルス幅変調していくことにしてもよい。
【0026】
さらに、図2においてはPWMの動作開始時刻のオンdutyは100%となっているが、なにも100%でなくとも良く、例えば、50%でも30%でもよく、動作停止直前にて0%となれば上記と同等の効果があることは言うまでもない。
【0027】
また、PWMの動作開始直後は小さいオンdutyで、いったん大きくした後からオンdutyを小さくして、動作停止直前に0%とするように動作させても上記と同等の効果があることも言うまでもない。
【0028】
また、PWM制御部8のキャリア周波数が低い場合、いくら小さいオンdutyにしたとしても、異音や騒音が消えないことがある。これは、PWMのキャリア周波数が低いと、オンdutyが小さくても相対的にオン時間は長くなって、di/dtが大きくなってしまうからである。PWMキャリア周波数は、高ければ高いほどいいが、16kHz程度の可聴周波数領域外となるキャリア周波数であれば異音や騒音は全く聞こえなくなる。
【0029】
さらに、交流電源1のゼロクロス点に基づいて同期信号生成部6にて交流電源1に同期した同期信号が生成される。負荷量検出部9にて負荷5の負荷量が検出され、その負荷量に応じて、交流電源1のゼロクロス点から電源短絡手段7の動作開始時刻がPWM制御部8にて設定される。その設定値は、予めPWM制御部8に格納されていても良いし、負荷量検出部9から検出される負荷量から演算にて求められるよう近似式を生成してPWM制御部8に与えておいても良い。負荷量に応じて変化させることができれば、どんな方法でも良いのは言うまでもない。
【0030】
そして、負荷量検出部9にて検出された負荷量に応じた電源短絡手段7の動作開始時刻にてPWM制御部8は動作を開始し、PWM動作を続ける時間も負荷量検出部9にて検出された負荷量に応じて設定される。その設定されたPWM動作継続時間に対し、図2に示すように直線的にPWMのオンdutyが減少したPWMにてPWM制御部8は電源短絡手段7を制御する。
【0031】
また、上記のように直線的にPWMのオンdutyを設定しなくとも動作停止直前に小さくなっていればよいことは前述の通りである。
【0032】
以上のように負荷5の負荷量に応じてPWMを行う開始時刻およびPWMの動作時間は変化させたことによって、負荷5の負荷量が変化した場合でも、常に力率を高い状態に維持し、発生する電源高調波電流を抑制しつつ、特開平2−299470号公報や特開平7−7946号公報に示されている技術にて問題となるリアクトル3から発生する異音や騒音を防止することができる。
【0033】
また、騒音原因となるdi/dtを小さくしたことで、リアクトルのばらつきや温度などによる固有振動数の変化などに関係することなく、異音や騒音を低減することができる。
【0034】
さらに、通常、リアクトル3自身の騒音対策のため、巻線や鉄心をモールドしたり、遮音密閉したりして対策されるが、騒音原因となるdi/dtを小さくして騒音、異音を低減したため、モールドや遮音密閉する必要がなくなり、解体、分解が容易になり、リサイクル性を向上させることができる。
【0035】
また、di/dtが小さくなるように電源短絡手段7を動作させればよいので、平滑コンデンサ4の充電電流が流れる前後にて電源短絡手段7を図5に示すように交流電源1のピークまではPWMのオンdutyは小さくなるように動作させ、ピーク以後のオン開始時刻はオンdutyを小さい状態から開始させていっても異音や騒音は前記方法と同等の効果があることは言うまでもなく、平滑コンデンサ4の充電電流前後にて電源短絡手段7を動作させているので、前記方法よりも力率を向上させる更なる効果を有する。
【0036】
この場合においても、負荷5の負荷量に応じてPWMの動作期間を変更することによって、負荷量の変化によらず力率を高い値に維持することができるようになる。負荷量に応じて変更する時間は、同期信号生成部6にて生成された同期信号からPWMを開始する開始時刻、そのPWM開始動作の動作時間、交流電源1のピーク値を過ぎた後のPWMの動作開始時刻、PWMの動作停止時刻の4点であり、この4点を変更することによって負荷5の負荷量に適した力率に改善することができる。
【0037】
以上のように電源装置を構成しPWM制御することによって、負荷に応じた力率に向上させることができ、かつ電源高調波電流をも抑制することができる。更に、簡易な方法にて行う力率改善方式の場合、リアクトルより発生してしまう異音や騒音をもオンdutyをPWM制御することによって異音や騒音を完全に防止することができる。
【0038】
また、リアクトルのばらつきや温度変化などにて変化するリアクトルの固有振動数にも影響されることのない方法であるため、製品を量産した際の製品のばらつきによる騒音発生の信頼性を高めることができる。
【0039】
また、電源半周期の一部期間のみのPWMであるため、PWMによる動作損失が少なく、全区間動作させる方式よりも効率を高め、PWMによるノイズ発生量を低減することもできる。
【0040】
さらに、図1において、リアクトル3が整流器2の入力側である交流リアクトルとなっているが、リアクトル3は電源短絡手段7よりも交流電源1側に配置されていれば良く、図1に示す回路ブロック図では電源短絡手段7が交流側に接続されているため、交流リアクトルになっている。例えば、電源短絡手段7が直流側にある場合、リアクトル3は交流側でも直流側でもどちらでも良く、リアクトル3が交流側に配置されている場合、図6のように構成され、リアクトル3が直流側に配置されている場合、図7のように構成される。いずれの場合にしても、上記で述べた図1とPWM制御の方式は同一であるため、同じ動作となり、同等の効果となることは言うまでもない。
【0041】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2を表す回路ブロック図である。図8において、10は電源短絡手段7を構成するスイッチ素子、11はスイッチ素子10へ直流を与えるダイオードブリッジ、12は整流器2の出力を平滑する第1の平滑コンデンサ、13は整流器2の出力を平滑する第2の平滑コンデンサ、14は負荷となる圧縮機、15は圧縮機14を駆動するインバータ、16は圧縮機14に使用されている電動機の回転子の位置を検出する位置検出部、17は位置検出部16の出力に従いインバータ15をPWMにて圧縮機の回転数制御を行うインバータ制御部である。
【0042】
まず、図8は図1に示される回路ブロック図を実際の回路素子に置き換えたものであり、図1と図8との対応について説明する。スイッチ素子10として、例えば図8に示すようにIGBTを用いた場合、スイッチ素子10とダイオードブリッジ11にて図1に示す電源短絡手段7を形成することができる。
【0043】
また、図8において、インバータ15に圧縮機14が接続され、図1における負荷5として構成されている。さらに、例えば圧縮機14に搭載されている電動機がブラシレスモータであった場合、位置検出部16にて電動機の回転子の位置を検出し、その検出値に応じてインバータ制御部が回転数制御されるが、回転数やインバータ15からの出力電圧によって負荷5である圧縮機14とインバータ15の負荷量の検出は可能であるので、位置検出部16およびインバータ制御部17が図1に示す負荷量検出部9としても差し支えなく、その信号に基づいてPWM制御部8は負荷量に応じた所定の値を変更するように動作する。
【0044】
また、さらに、図1の整流器2の出力側に接続されている平滑コンデンサ4は、図8の第1の平滑コンデンサ12と第2の平滑コンデンサ13にて構成される。それは、図8に示すように整流方式を倍電圧整流とした場合、交流電源1の半周期毎に第1の平滑コンデンサ12と第2の平滑コンデンサ13とが交互に充電され、インバータ15に入力される電圧は交流電源1のピーク値の約2倍の電圧となり、インバータ15からみれば、第1の平滑コンデンサ12と第2の平滑コンデンサ13は直列接続の1ケの平滑コンデンサ4を見なすことができるからである。
【0045】
また、図示してはいないが、直列に接続された第1の平滑コンデンサ12と第2の平滑コンデンサ13と並列に更にもう1個の平滑コンデンサを配置しても回路動作は同一となることは言うまでもない。
【0046】
以上より本発明の実施の形態2で示した図8を前記実施の形態1にて示した図1と比較した場合、図8の回路は、図1と同一の回路構成を有していることがわかる。そのため、図8でも実施の形態1に示した動作と同様な動作をPWM制御部8にて制御させることによって、力率改善を簡易な制御によって実現でき、かつ、異音や騒音を抑制することが可能となる。さらには、インバータ制御部17から圧縮機の回転数やインバータ15から出力する出力電圧などの情報(負荷量)がPWM制御部8へ出力され、前記の情報に応じて電源短絡手段7のPWM開始時刻やPWM動作時間を変更することで、負荷量に応じた変更と同等な効果を有することができる。
【0047】
以上のように図8にて示された実施の形態は、実施の形態1に示した図1における負荷5がインバータ15と圧縮機14の負荷である以外、ほぼ同一であり、インバータ制御部8からの信号によりPWM制御部でのPWM動作を変更している点以外には、何ら差異はなく、実施の形態1にて示した同等な効果があることは言うまでもない。
【0048】
さらには、圧縮機14およびインバータ15を負荷5としたことによって、図1における負荷5の負荷量を検出する負荷量検出部9は既存のインバータ制御部17および位置検出部16にて代用することができ、コストアップ無しで、負荷量を検出することが可能となる。また、圧縮機に適用する場合、スイッチ素子を電源半周期中の一部区間のみの動作であるため、電源半周期中の全区間スイッチ素子を動作させるより、漏洩電流が低減できる。特に、HFCなどの誘電率の高い代替冷媒に使用する場合、代替冷媒による漏洩電流増加分を本発明の力率改善方式によって抑制できる。
【0049】
また、図5のように平滑コンデンサへの充電電流が流れる前後の区間ともスイッチ素子10を動作させても、図5に示すようにPWMのオンdutyを徐々に小さくして0%とし、0%から徐々に大きくしていくように制御させても、実施の形態1と同等の効果があることは言うまでもない。
【0050】
さらに、図2や図5に示したように直線的に減少、増加させなくとも、実施の形態1で述べたとおりにオンdutyを設定すれば騒音抑制の効果があることは言うまでもない。
【0051】
また、電源装置のPWM制御部8とインバータ制御部17を1つのCPUにて構成しても、別のCPUであっても何ら問題はなく、同様の効果があることは言うまでもない。
【0052】
また、図8では倍電圧整流の整流方式に交流側の電源短絡手段7にて説明しているが、図示しないものの交流側に電源短絡手段7を配置した場合、整流方式は倍電圧整流方式でなくともよく、全波整流方式でも上述と同等効果があることは言うまでもない。
【0053】
さらに、実施の形態2では図1に対応した図8にて説明しているが、図6および図7の回路ブロック図に示すように、直流側に電源短絡手段7を配置した場合、図9、図10、図11のように構成される。図9、図11に示される全波整流との組み合わせの場合、電源短絡手段7はスイッチ素子10および平滑コンデンサ4からの逆流を防止する逆流防止ダイオード20で構成されることになり、図8にて構成された電源短絡手段7と異なるが、目的は同一である同等効果を有する。
【0054】
また、図10のように倍電圧整流との組み合わせの場合、電源短絡手段7は第1のスイッチ素子21および第2のスイッチ素子22にて電源半周期毎に交互に動作し、第1の平滑コンデンサ12からの逆流を防止する第1の逆流防止ダイオード22、第2の平滑コンデンサ13からの逆流を防止する第2の逆流防止ダイオード23で構成されることになり、図8にて構成された電源短絡手段7と異なるが、目的は同一であり同等効果を有する。また、図示はしていないが図10のリアクトル3を直流側に配置する構成でも同等効果を有する。
【0055】
実施の形態3.
図12は本発明の実施の形態3を表す回路ブロック図であり、25は図8における整流器2と第1の平滑コンデンサ12と第2の平滑コンデンサ13の中点との間に接続されたリレーである。図12はリレー25を前記整流器2と平滑コンデンサ12と13の中点に挿入された以外は図8と違いのない回路ブロック図である。
【0056】
図12も図8と同様に電源短絡手段7を構成しているスイッチ素子10をPWMにて駆動し、そのオンdutyを徐々に減少させることによって、簡易な制御方法にて力率を改善しつつ、簡易的な方法にて発生する異音や騒音を抑制するものである。
【0057】
図12の違いは、リレー25によって整流方式が倍電圧整流と全波整流とに切り替えができるという点である。圧縮機の場合、回転数が低い方が負荷は軽く、回転数が高くなるにつれて負荷は重くなっていく。負荷量が軽い場合、インバータ15の入力電圧である直流母線電圧が低いほど、圧縮機14およびインバータ15の効率は高くなる。そのため、負荷が軽い状態は、リレー25をオフして全波整流とし、直流母線電圧を低くして効率を高める。負荷の検出は、前記実施の形態2でも述べたとおり、圧縮機14の回転数やインバータ15からの出力電圧などから推測できる。
【0058】
負荷が重くなるにつれ、リレー25をオンして倍電圧整流とすることで、直流母線電圧を高くすることができる。ここで、直流母線電圧を高くする理由であるが、直流母線電圧以上の電圧をインバータ15から出力することはできない。圧縮機14は電動機負荷であるが、電動機の場合、電動機に印加される電圧にて出力が決定され、電圧が低いと必要とする出力を電動機が出力できなくなる。従って、負荷が重くなった場合、直流母線電圧を高くするため、倍電圧整流に切り替えるように動作させる。
【0059】
以上のようにリレー25を動作させる以外は、前述までの実施の形態1もしくは2と回路構成および制御方法が変わるものではないので、前記実施の形態1や2で述べたものと同等の効果があるのは言うまでもない。それ以上に、リレー25によって各負荷領域において電源装置だけでなく、負荷として接続されている圧縮機やインバータの効率を上昇させることができ、前記実施の形態1および2の発明より高い効果を有する電源装置を提供することができる。
【0060】
実施の形態4.
図13は本発明の実施の形態4を示す回路ブロック図である。図13において、図8と同一構成要素は同じ番号を付し、説明を略する。図13において、30は1つのパッケージとなっている半導体であり、AからGで示してあるのは半導体30の端子である。
【0061】
図13に示すように、図8に示すスイッチ素子10、ダイオードブリッジ11、整流器2の3ケの部品を1つの半導体とすることができるので、装置の小型化軽量化を実現できる。また、本発明の制御方法は、図2に示すような一部区間を高周波にてスイッチ素子を動作させるものであり、ノイズが発生するが、電源短絡手段7と整流器2との配線距離を短くすることによって、スイッチ動作にて発生するノイズを低減させることが可能となり、装置の信頼性を向上させることができる。また、加工に要する作業が少なくなり、作業に対する信頼性および作業性を向上させ、作業にかかる費用を低減させることができる。
【0062】
図13には、図8に示した回路ブロックを1つの半導体モジュールとしたが、なにも図8の回路構成に限ったことではなく、図9、図10、図11に示す回路構成でも1つの半導体としても上記と同等な効果があることは言うまでもない。
【0063】
また、図13では、パワー素子のみを半導体化することにて説明しているが、同期信号生成部6もしくはPWM制御部8の何れか一方または両方を上記半導体内部に含めても、同等の効果を有することは言うまでもない。さらに、パワー系回路と制御信号系回路とを隣接することによって、ノイズに対する影響を極力小さくできるので、スイッチ素子の誤作動がなくなり、誤作動防止用素子を廃止することができ、コスト低減を実現できる。また、部品を集約でき、更なる小型化軽量化に寄与し、作業性が向上、作業に必要とする費用を低減できる。
【0064】
さらに、インバータ15の6ケの素子をも前記半導体に含めると、更なる装置の小型化軽量化が実現できる。また、部品の集約による一括放熱を行うことができ、半導体部品への発熱対策の信頼性を向上させることができる。さらに、部品数低減による作業性も向上させることができ、作業にかかる費用も更に低減できる。また、ノイズ発生原因を集約したことによって、ノイズ発生部分を特定化でき、ノイズ対策を容易にし、装置の信頼性を向上させることができる。また、配線の短縮化によるノイズ発生量を一段と抑制することも可能となる。
【0065】
本実施の形態においては、電源短絡手段を設けて電源装置を構成し、負荷に応じた電源短絡手段をPWM制御することによって、負荷に応じた力率に向上させることができ、かつ電源高調波電流をも抑制することができる。更に、簡易な方法にて行う力率改善方式の場合、リアクトルより発生してしまう異音や騒音をもオンdutyをPWMによる制御にて異音や騒音を完全に防止する方法を提供することが可能となる。
【0066】
また、リアクトルのばらつきや温度変化などにて変化するリアクトルの固有振動数にも影響されることのない方法であるため、製品を量産した際の製品ばらつきによる騒音発生の信頼性を高めることができる。また、電源半周期の一部期間のみのPWMであるため、PWMによる動作損失が少なく、全区間動作させる方式よりも効率を高め、PWMによるノイズ発生量を低減することもできる。
【0067】
さらに、通常、リアクトル3自身の騒音対策のため、巻線や鉄心をモールドしたり、遮音密閉したりして対策されるが、騒音原因となるdi/dtを小さくして騒音、異音を低減したため、モールドや遮音密閉する必要がなくなり、解体、分解が容易になり、リサイクル性を向上させることができる。
【0068】
また、di/dtが小さくなるように電源短絡手段7を動作させればよいので、平滑コンデンサ4の充電電流が流れる前後にて電源短絡手段7を図5に示すように交流電源1のピークまではPWMのオンdutyは小さくなるように動作させ、ピーク以後のオン開始時刻はオンdutyを小さい状態から開始させていっても異音や騒音は前記方法と同等の効果があることは言うまでもなく、平滑コンデンサ4の充電電流前後にて電源短絡手段7を動作させているので、前記方法よりも力率を向上させる更なる効果を有する。
【0069】
さらには、圧縮機14およびインバータ15を負荷5としたことによって、負荷5の負荷量を検出する負荷量検出部9は既存のインバータ制御部17および位置検出部16にて代用することができ、コストアップ無しで負荷量を検出することが可能となるので、負荷量に応じた細かな力率改善の制御が可能になる。
【0070】
また、圧縮機に適用する場合、スイッチ素子を電源半周期中の一部区間のみの動作であるため、電源半周期中の全区間スイッチ素子を動作させるより、漏洩電流が低減できる。特に、HFCなどの誘電率の高い代替冷媒に使用する場合、代替冷媒による漏洩電流増加分を抑制できる。
【0071】
また、リレー25を追加することによって、各負荷領域において、電源装置部分の効率だけでなく、負荷として接続されている圧縮機やインバータの効率を上昇させることができ、前記実施の形態1および2の発明より高い効果を有する電源装置を提供することができる。
【0072】
スイッチ素子10、ダイオードブリッジ11、整流器2の3ケの部品を1つの半導体とすることができるので、装置の小型化軽量化を実現できる。また、一部区間を高周波にてスイッチ素子を動作させるものであり、ノイズが発生するが、電源短絡手段7と整流器2との配線距離を短くすることによって、スイッチ動作にて発生するノイズを低減させることが可能となり、装置の信頼性を向上させることができる。また、加工に要する作業が少なくなり、作業に対する信頼性および作業性を向上させ、作業にかかる費用を低減させることができる。
【0073】
【発明の効果】
本発明は、以上の構成により、力率改善を簡易な制御によって実現し且つ、騒音も低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1を示す回路ブロック図である。
【図2】 本発明の実施の形態1を示す動作波形図である。
【図3】 本発明の実施の形態1を説明するための従来技術の動作波形図である。
【図4】 本発明の実施の形態1を説明するための異音発生部の電流波形図である。
【図5】 本発明の他の実施の形態1を示す動作波形図である。
【図6】 本発明の他の実施の形態1を示す回路ブロック図である。
【図7】 本発明の他の実施の形態1を示す回路ブロック図である。
【図8】 本発明の実施の形態2を示す回路ブロック図である。
【図9】 本発明の他の実施の形態2を示す回路ブロック図である。
【図10】 本発明の他の実施の形態2を示す回路ブロック図である。
【図11】 本発明の他の実施の形態2を示す回路ブロック図である。
【図12】 本発明の実施の形態3を示す回路ブロック図である。
【図13】 本発明の実施の形態4を示す回路ブロック図である。
【図14】 従来の技術を示す回路ブロック図である。
【図15】 従来の技術を示す回路の動作波形図である。
【図16】 本発明の実施の形態1のPWM制御の説明図である。
【符号の説明】
2 整流器、3 リアクトル、4 平滑コンデンサ、6 同期信号生成部、7 電源短絡手段、8 PWM制御部、14 圧縮機、15 インバータ。
Claims (18)
- 交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、この整流器に接続されたリアクトルと、前記交流電源を短絡する短絡手段と、前記交流電源の半周期毎に所定時間パルス幅変調信号を前記短絡手段へ出力し、前記リアクトルに流れる電流の変化が小さくなるように前記パルス幅変調信号のオンdutyを前記所定時間の中で徐々に変化させる制御手段とを備えたことを特徴とする電源装置。
- 交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、この整流器に接続されたリアクトルと、前記交流電源を短絡する短絡手段と、交流電源のゼロクロスからピークまでの間の所定時間パルス幅変調信号を前記短絡手段へ出力し、前記パルス幅変調信号のオンdutyが徐々に0%に近づくように変化させる制御手段とを備えたことを特徴とする電源装置。
- 交流電源からの交流電圧を直流電圧に整流する整流器と、この整流器に接続されたリアクトルと、前記交流電源を短絡する短絡手段と、前記交流電源のゼロクロスからピークまでの間の第1の所定時間、及び前記交流電源のピークから次のゼロクロスまでの間の第2の所定時間に、パルス幅変調信号を前記短絡手段へ出力し、前記第1の所定時間には前記パルス幅変調信号のオンdutyが徐々に0%に近づくように変化させ、前記第2の所定時間にはオンdutyを0%から徐々に変化させる制御手段とを備えたことを特徴とする電源装置。
- 前記整流器の出力電圧を平滑する平滑手段を備え、前記交流電源のゼロクロスから前記平滑手段への充電電流が流れ出す前までにパルス幅変調信号を出力開始することを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
- 前記整流器の出力電圧を平滑する平滑手段と、この平滑手段と接続する負荷手段の負荷量を検出する負荷量検出手段を備え、この負荷量検出手段により検出された負荷量に基づいて前記パルス幅変調信号の出力開始時刻及び出力時間を変化させることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 前記制御手段のパルス幅変調信号のオンdutyは、予め決められた最大値と予め決められた最小値とを直線的に変化することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 前記制御手段のパルス幅変調信号のオンdutyは、交流電源の電圧値に応じて変化することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 前記制御手段のパルス幅変調信号のオンdutyは、交流電源の電源同期信号に基づいて予め与えられた数式に応じて変化することを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 短絡手段とリアクトルは直流側に配置され、整流器の出力側をリアクトルを介して短絡するよう構成されたことが特徴である請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 短絡手段は直流側、リアクトルは交流側に配置され、整流器の出力側を短絡手段にて短絡するよう構成されたことが特徴である請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 短絡手段とリアクトルは交流側に配置され、整流器の入力側だけで短絡手段にて短絡するように構成されたことが特徴である請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 短絡手段およびリアクトルは交流側に配置され、且つ倍電圧整流と全波整流とをリレーによって切り替えることが可能な整流器を備え、負荷量に応じて倍電圧と全波整流とを切り替えることが特徴である請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 前記短絡手段および整流器を1つの半導体とすることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 前記短絡手段、整流器、制御手段とを1つの半導体とすることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の電源装置。
- 前記整流器により生成された直流電圧が供給される負荷手段はスイッチ素子6ケにて構成されたインバータであり、インバータを構成する6ケのスイッチ素子も前記半導体内部に取り入れた半導体を使用していることを特徴とする請求項13又は14に記載の電源装置。
- 前記請求項1ないし請求項15に記載の電源装置を電動機に設けたことを特徴とする電動機。
- 前記請求項1ないし請求項15に記載の電源装置を圧縮機駆動システムに設けたことを特徴とする圧縮機駆動システム。
- 前記圧縮機駆動システムの圧縮機はHFC系冷媒を用いたことを特徴とする請求項17記載の圧縮機駆動システム。
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