JP3697507B2 - オキシトシン受容体欠損マウス及びその利用方法 - Google Patents

オキシトシン受容体欠損マウス及びその利用方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキシトシン受容体遺伝子を欠損させたノックアウトマウス及びその利用方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オキシトシンは下垂体ホルモンの一種であり、全長9アミノ酸のポリペプチドから構成される。オキシトシンの作用としては、分娩時の子宮平滑筋収縮や乳汁射出中の乳腺筋上皮細胞の収縮において、働くことが知られている。近年明らかとなった知見により、オキシトシンは、性、母性行動、記憶、摂食、飽満、記憶、黄体退縮の調節因子としての卵巣における卵胞・卵母細胞制御、更に性周期、陰茎勃起、射精、腎臓機能、ナトリウム恒常性などを含む、より広範囲の生理学的機能に関わることを示す知見が得られてきた。
【0003】
オキシトシンは子宮筋収縮作用を有するペプチドホルモンとして最初にウシ下垂体から精製され、1953年にオキシトシンのアミノ酸配列が解明された(Du Vigneaud V et al.J.Biol.Chem.205、949−957,1953)。オキシトシンは構造が比較的に単純であることから、多数のアゴニストやアンタゴニストが合成されて解析が進み合成ペプチドの作製が可能となった。そのために、臨床においてオキシトシンは子宮収縮剤として誘発分娩に使用されてきた。
【0004】
一方リガンドであるオキシトシンが結合する標的である受容体に関しては、ラット子宮筋層における薬理学的な結合実験により、オキシトシン受容体の存在が初めて示された(Soloff MS et al.J.Biol.Chem.248、6471−6478,1973)。1992年にアフリカツメガエル卵母細胞内の発現系を用いてヒト子宮のオキシトシン受容体cDNAのクローニングが初めて行われ(Kimura et al.Nature,356,526−529,1992)、構造の決定されたオキシトシン受容体は、細胞膜を7回貫通するGTP結合蛋白質が結合するロドプシン型受容体であることが判った。更にオキシトシン受容体の遺伝子もクローニングされ、ヒト、ウシ、ラット、マウス、ハタネズミに関してはオキシトシン受容体遺伝子の構造が明らかにされている。ヒト由来のオキシトシン受容体cDNAは388個のアミノ酸から構成され、推定分子量は42.7kDaの一本鎖ポリペプチドである。各種間の相同性はヒトとマウスのアミノ酸配列では91%、ヒトとラットでは93%という高い相同性を示し、種を越えて保存されている。
【0005】
本発明者らは、過去においてオキシトシンをコードする遺伝子が欠損したマウスの作出に成功しており、そのマウスを用いて、オキシトシンが出産後の雌の射乳に必須であること(Nishimori et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,93,11699−11704,1996)、オキシトシンは個体識別機能に関わっている事(Ferguson J.etal.Nature Genetics,25,284−288,2000)などの知見を得た。これらの知見はオキシトシン/オキシトシン受容体システムの解明において非常に貴重である。
【0006】
しかし、オキシトシン/オキシトシン受容体システムを介する作動薬のスクリーニングを行うこと、更にはオキシトシン関連化合物の薬理作用やその作用メカニズムの解析等を行うことを考えると、リガンドであるオキシトシンの発現が欠損したマウスによる検討のみならず、オキシトシン受容体側からの検討が必要とされている。そしてその検討のために、オキシトシン受容体遺伝子の発現を欠損したノックアウトマウスの作出が求められていた。しかし、マウスオキシトシン受容体遺伝子は1996年にクローニングされていた(Kubota Y etal.Mol.Cell.Endocrinol.,124,1−2、25−32、1996)ものの、本発明までマウスオキシトシン受容体遺伝子を欠損したノックアウトマウスの作製は成功していなかった。
【0007】
また基礎研究の場において、オキシトシン/オキシトシン受容体システムにおけるリガンドと受容体は1対1対応の関係でもって多くの生殖機能、行動、記憶等に関わると考えられてきた。しかし、一方でリガンドと受容体が異なった生理的機能を担っている可能性を示す報告もあり、この点についての解決が待たれていた。この様な疑問に対する答えを得るためにも、やはりオキシトシン受容体遺伝子が欠損したマウスが必要とされていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、オキシトシンの受容体遺伝子が発現しないように改変された欠損マウス、いわゆるノックアウトマウスを作製することが本発明の課題である。かかる動物は、オキシトシン受容体を介する医薬のスクリーニングのツールとして特に有用である。また、本発明のノックアウトマウスはオキシトシンやオキシトシン様の化合物が作用する機構を解明するためのツールとしても有用である。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本出願は、前記の課題を解決するために、以下の(1)から(9)の発明を提供するものである。
(1)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAの一部または全部の改変により、当該オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している、オキシトシン受容体欠損マウス。
(2)前記改変が、オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、その一部または全部を欠失させること、またはその一部または全部を他の遺伝子により置換すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させることである、前記(1)のオキシトシン受容体欠損マウス。
(3)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、エクソン2からエクソン3の領域が除去された変異を有することによりオキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している、前記(1)のオキシトシン受容体欠損マウス。
(4)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、エクソン3領域の下流にネオマイシン耐性遺伝子が挿入されている変異を有することによりオキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している、前記(1)のオキシトシン受容体欠損マウス。
(5)雌個体において乳汁射出機能が不全であることを特徴とする、前記(3)または(4)の、オキシトシン受容体欠損マウス。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載のオキシトシン受容体欠損マウスを使用して、平滑筋収縮薬をスクリーニングする方法。
(7)前記平滑筋収縮薬が、乳腺収縮薬または子宮平滑筋収縮薬である、前記(6)記載の方法。
(8)前記(1)から(5)のいずれかに記載のオキシトシン受容体欠損マウスを、オキシトシン受容体欠損を有する疾患のモデル動物として使用する方法。
(9)オキシトシン受容体欠損マウスの作製方法であって、
(a)オキシトシン受容体遺伝子のゲノム領域をクローニングする過程、
(b)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、その一部または全部を欠失させること、またはその一部または全部を他の遺伝子により置換すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させることにより改変し、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損したターゲティングベクターを作製する過程、
(c)胚性幹細胞を前記ターゲティングベクターにより相同組み換えを行うことにより、前記オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAの一部または全部を改変し、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損した胚性幹細胞を作製する過程、
(d)前記オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損した胚性幹細胞を、胚盤胞内に注入するかまたは8細胞期胚と凝集させることにより、キメラマウスを作製する過程:および
(e)前記キメラマウスを交配し、オキシトシン受容体遺伝子を欠損したホモ接合体マウスを作製する過程;
を含むことを特徴とする、オキシトシン受容体欠損マウスの作製方法。
(10)オキシトシン受容体欠損マウスの作製において、前記ターゲティングベクターを作製する過程において、欠失させる対象であるゲノム領域の両端にLoxp配列を挿入すること、及び前記ホモ接合体マウスを作製する過程において、前記キメラマウスを交配することにより得たヘテロ接合体マウスを用いてCre酵素を発現している形質転換マウスと交配することを更に含み、Cre酵素の作用によりLoxp配列で挟まれたゲノム領域が欠失していることを特徴とする、前記(9)の方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明により提供されるオキシトシン受容体欠損マウスは、オキシトシン受容体遺伝子がその欠損型遺伝子に置換されているために、オキシトシン受容体遺伝子の発現が欠損しているノックアウトマウスである。
【0011】
更に詳しくは、本発明のオキシトシン受容体欠損マウスは、染色体上のオキシトシン受容体遺伝子座のエクソン2から3の領域が除去されることにより、その発現が完全に欠損している遺伝子変異マウス、あるいは染色体上のオキシトシン受容体遺伝子座のエクソン3の下流にネオマイシン耐性遺伝子等が挿入されることにより、その発現が低下している変異配列に置換されている遺伝子変異マウスとして提供される。
【0012】
本願明細書において、「オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAの一部または全部の改変」とは、オキシトシン受容体遺伝子のDNAの一部に、欠損、置換または付加を生じさせる改変を加えることをいう。オキシトシン受容体遺伝子の機能を欠損させるためには、オキシトシン受容体遺伝子に対して欠損、置換または付加のうち、1つまたは2つ以上の方法を併せて使用してもよい。
【0013】
本願明細書においてゲノムDNAを「欠損」させるとは、オキシトシン受容体遺伝子の一部または全部を欠損させることにより、オキシトシン受容体遺伝子の発現産物がオキシトシン受容体蛋白質として機能が発現しないように改変することをいう。また、本願明細書においてDNAを「置換」するとは、オキシトシン受容体遺伝子の一部または全部をオキシトシン受容体遺伝子とは関係のない別個の配列により置換することにより、オキシトシン受容体遺伝子の発現産物がオキシトシン受容体蛋白質として機能が発現しないように改変することをいう。更に、本願明細書においてDNAを「付加」するとは、オキシトシン受容体遺伝子中にオキシトシン受容体遺伝子以外の配列を有する付加することにより、オキシトシン受容体遺伝子の発現産物がオキシトシン受容体蛋白質として機能が発現しないように改変することをいう。
【0014】
また本願明細書において、「オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している」とは、上記に記載したオキシトシン受容体遺伝子のDNAの改変により、オキシトシン受容体遺伝子の発現産物が全く発現しないか、または発現しても正常なオキシトシン受容体遺伝子産物が有する機能を示すことができないことをいうものとする。
【0015】
本発明のオキシトシン受容体欠損マウスは、公知の遺伝子組み換え法(ジーンターゲッティング法)により作製することができる。ジーンターゲッティング法は、本分野においては良く知られた技術であり、本分野の種々の実験書の教示に従って行うことができる。先ず、オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA断片を単離する。そして種々の制限酵素で消化した実験の情報から、制限酵素地図を作製する。そして、その制限酵素地図の情報から、オキシトシン受容体遺伝子の機能を低下あるいは欠損させた配列を有するターゲティングベクターを、下記の方法により作製することができる。
【0016】
ターゲティングベクターを設計するにあたり、オキシトシン受容体遺伝子の構造に変化をもたらす部位は、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損するという効果を有する限り、特に限定されるものではない。しかしオキシトシン受容体遺伝子の機能及び構造から考慮して、下記の実施例において示す様に、オキシトシン受容体遺伝子のエクソン2から3を欠失させるように設計することは特に好ましい。
【0017】
また、ベクターを導入した組み換え体につき、ターゲティングベクターにより導入した薬剤耐性遺伝子を用いたスクリーニングとサザンブロット法やPCR法を用いたスクリーニングを併用して、選抜することが好ましい、そのために、それらのスクリーニングを容易に行う事ができるように便宜を考えてターゲティングベクターを設計することが望ましい。薬剤選択のマーカー遺伝子として、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等を使用することができる。また、ネガティブ選択用遺伝子には、HSVチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子等を使用することができる。
【0018】
そのDNA断片を試験管内において遺伝子操作し、オキシトシン受容体遺伝子座のエクソン2から3の領域を欠損させるか、またはオキシトシン受容体遺伝子座のエクソン3の下流にネオマイシン耐性遺伝子を挿入するなどの改変を行い、オキシトシン受容体遺伝子の機能を欠損させるような変異DNAを作製する。なお下記の実施例においては、下記に詳しく述べるCre−Loxpのシステム(R.Kuhn et al.Science,269,1427−1429,1995)を用いて、オキシトシン受容体遺伝子のエクソン2から3の部分を欠失させることを可能とするベクターを構築し、オキシトシン受容体遺伝子の機能を欠損させている。しかし、本発明はCre−Loxpシステムを用いた方法に限定されるものではなく、Cre−Loxpシステムを用いない最も一般的なノックアウトマウスの作製方法によっても、オキシトシン受容体遺伝子の機能を欠損させるような種々の改変を行うことができる。
【0019】
次いで上記の方法により作製したターゲッティングベクターを使用して、相同組み換えを行う。本願明細書において、「オキシトシン受容体遺伝子の相同組み換え」とは、オキシトシン受容体遺伝子と同一または類似の塩基配列を有する改変したオキシトシン受容体遺伝子を、ゲノム中のオキシトシン受容体遺伝子のDNA領域に、人工的に組み換えさせることをいう。
【0020】
目的とする遺伝子の相同組み換えが起こる頻度は低いことが知られており、目的とする相同組み換え体を得るためには、多数の組み換え体をスクリーニングする必要がある。しかし、受精卵では多数のスクリーニングを行うことが技術的に困難である。よって、受精卵と同様に多分化能を有し、かつin vitroで培養することができる細胞を使用することが好ましい。そして、その目的を達成するためには胚性幹細胞(ES細胞)による方法を用いることができるが、それに限定されるものではない。
【0021】
現在マウス由来のES細胞株がいくつか確立されており、その一つに下記の実施例で使用しているE14TG2a細胞株がある。しかし、それに限定されるものではなく、他のマウス由来のES細胞株である、TT2細胞株、AB−1細胞株、J1細胞株、R1細胞株等を使用することもできる。これらのいずれのES細胞株を用いるかは、実験の目的や方法により適宜選択して決定することができる。
【0022】
オキシトシン受容体遺伝子を改変してその機能を欠損させたターゲティングベクターを公知の方法に準じてマウスES細胞に導入する。そして、ES細胞中の目的とするオキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA配列を、ターゲティングベクター中の機能が欠損したオキシトシン受容体遺伝子による相同組み換えによって置換する。相同組み換えは、オキシトシン受容体遺伝子ゲノムDNA配列と、ターゲティングベクタ中の非改変部分との配列との相同性を利用して、ある確率をもって生じさせることができる。
【0023】
ターゲティングベクターをES細胞に導入する方法としては、公知の電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、リポソーム法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法等も利用できるが、導入遺伝子の相同組み換え効率を考えると、電気穿孔法を用いることが好ましい。
【0024】
得られた組み換えES細胞につき、相同組み換えが起こっているかどうかのスクリーニングを行う。即ち、まずネオマイシン等の導入した薬剤耐性因子によりスクリーニングを行う。更にスクリーニングを確実にする為に、サザンハイブリダイゼーション法やPCR法により、スクリーニングを行う。これらのアッセイにより、染色体上に存在する野生型オキシトシン受容体遺伝子と導入したオキシトシン受容体遺伝子断片の間で正しく相同遺伝子組み換えが起こり、染色体上のオキシトシン受容体遺伝子に変異が移った細胞を選択することができる。
【0025】
こうして得た変異遺伝子を持つES細胞を、野生型マウスの胚盤胞または8細胞期の胚内に導入する。そして、このES細胞胚を偽妊娠状態の仮親マウスの子宮に移植し、出産させることによりキメラ動物を作製することができる。ノックアウト動物は、現在はES細胞が確立しているマウスにおいて作製することができるが、将来の技術進歩により他の動物種においても作製が可能となるであろう。
【0026】
ES細胞を胚盤胞等の胚に導入する方法としては、マイクロインジュクション法や凝集法が知られているが、いずれの方法を用いることも可能であり、当業者が適宜改変することができる。マウスの場合には、ホルモン剤(例えば、FSH様作用を有するPMSGおよびLH作用を有するhCGを使用)により過排卵処理を施した雌マウスを、雄マウスと交配させる。その後、胚盤胞を用いる場合には受精から3.5日目に、8細胞期胚を用いる場合には2.5日目に、それぞれ子宮から初期発生胚を回収する。このようにして回収した胚に対して、ターゲティングベクターを用いて相同組み換えを行ったES細胞をin vitroにおいて注入し、キメラ胚を作製する。
【0027】
一方、仮親とするための偽妊娠雌マウスは、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などにより去勢した雄マウスと交配することにより得ることができる。作出した偽妊娠マウスに対して、上記の方法により作製したキメラ胚を子宮内移植し、妊娠・出産させることによりキメラマウスを作製することができる。キメラ胚の着床、妊娠がより確実に起こるようにするため、受精卵を採取する雌マウスと仮親となる偽妊娠マウスとを、同一の性周期にある雌マウス群から作出することが望ましい。
【0028】
ES細胞移植胚に由来するマウス個体が、このようなキメラマウスの中から得られた場合、このキメラマウスを純系のマウスと交配し、そして次世代個体にES細胞由来の被毛色が現れることにより、ES細胞がキメラマウス生殖系列へ導入されたことを確認することができる。ES細胞が生殖系列へ導入されたことを確認するには、様々な形質を指標として用いることができるが、確認の容易さを考慮して、被毛色によることが望ましい。マウスにおいては野ネズミ色(アグーチ色)、黒色、黄土色、チョコレート色および白色などの被毛色が知られているが、使用するES細胞の由来系統を考慮して、キメラマウスと交配させるマウス系統を適宜選択することができる。また、体の一部(例えば尾部先端)からDNAを抽出し、サザンブロット解析やPCRアッセイを行うことにより、選抜を行うこともまた可能である。
【0029】
この様に、胚内に移植された組み換えES細胞が生殖系列に導入された動物を選択し、そのキメラ動物を繁殖させることにより、目的とする遺伝子を欠損した個体を得ることができる。得られたオキシトシン受容体遺伝子欠損ヘテロ接合体マウス同士を交配させることにより、目的とする遺伝子欠損ホモ接合マウスを得ることができる。作出されたオキシトシン受容体変異遺伝子を保有するヘテロ接合体、あるいはホモ接合体は生殖細胞および体細胞のすべてに安定的にオキシトシン受容体遺伝子変異を有しており、交配等により効率よくその変異を子孫動物に伝達することができる。図1に、ES細胞からノックアウトマウスを作製するまでの過程の概略を示した図を示す。
【0030】
ところで下記の実施例において示すように、本発明のノックアウトマウスを作製するにあたり、コンディショナルなノックアウトマウスの作製において汎用されている、Cre/Loxpのシステム(R.Kuhn et al.Science,269,1427−1429,1995)を用いることも可能である。実施例においては既に述べたように、オキシトシン受容体遺伝子のエキソン2から3の領域を欠失させることを可能とする、ターゲティングベクターを用いている。
【0031】
Cre/Loxpのシステムにおいては、Loxp配列で挟まれた配列を予め作製しておくことにより、後に大腸菌のP1ファージ由来の組み換え酵素であるCre酵素を発現している動物と交配させた時に、Cre酵素はLoxp配列で挟まれた配列を認識して削除するために、その領域を欠損させた動物を作出することが可能となる。そのようなCre/Loxpのシステムを用いて、組織特異的にCre酵素を発現しているマウスと交配させることにより、組織特異的に遺伝子が欠損した特性を有するノックアウトを作製することが、本技術分野においてよく行われている。かかる手法は、目的とする遺伝子の欠損が動物にとって致死的である場合に、特に有効である。図2に、Cre/Loxpのシステムを用いたノックアウトマウス作製の概念を示した模式図を示す。
【0032】
下記の実施例においてノックアウト動物を作製するにあたっては、目的とする遺伝子の欠損が動物にとって致死的である可能性を考えたために、エキソン2から3の領域をCre/Loxpのシステムで削除する方法を採用した。なお、実験結果から考えると、オキシトシン受容体遺伝子の欠損はマウスにとって致死的ではなかった。下記の実施例では組織特異的ではなく、全身においてCre酵素を発現しているトランスジェニックマウス(CAG−Cre)と交配させることにより、全身においてオキシトシン受容体遺伝子が欠損したマウス(otr−/−)を作出しているが、完全にオキシトシン受容体遺伝子が欠損したマウス(otr−/−)は無事に誕生してくることが可能であった。
【0033】
下記の実施例に関わらず、本発明のノックアウト動物を作製する方法は、Cre/Loxpのシステムを用いた方法に限定されるものではないと考えるべきである。一例としては、Cre/Loxpのシステムを用いずに、エクソン2から3の領域を薬剤耐性遺伝子により置換したターゲティングベクターを使用することにより、エクソン2から3の領域を欠損したノックアウトマウスを作出することも可能であると考えられる。
【0034】
一方、臓器特異的にCreを発現したマウスを用いることにより、臓器特異的に遺伝子を欠損したマウスを作製することが可能である、Cre/Loxpのシステムの利点もまた、大いに注目されるべきである。ある臓器にのみ特異的に見られる現象を解析することは、オキシトシン/オキシトシン受容体システムの研究の発展にとって大いに意義のあることである。またCre/Loxpのシステムを用いると、Cre遺伝子を有する遺伝子をもつウイルスベクターを感染させること、或いは誘導型Cre酵素遺伝子を持ったトランスジェニックマウスと交配することにより、成長したマウスにおいて目的とする遺伝子の欠損を誘導することができる。遺伝子欠損を成長後に誘導できることは、動物の成長過程における遺伝子欠損の影響の解析を行うにあたり、大いに役立つことと思われる。
【0035】
このようにして作製されたオキシトシン受容体遺伝子に変異を有するマウスは、雌において乳汁射出の機能が不全であり、本発明のノックアウトマウスの雌より産まれた新生マウスは乳汁を摂取することができずに死亡した。また、本発明のノックアウトマウスの雌は、一度に産む子の数が少ないという特徴も示した。
【0036】
オキシトシン受容体遺伝子産物を全く持たないホモ接合体マウスは、自らは体内でオキシトシン受容体を発現させることができないため、オキシトシン又はオキシトシン受容体が関連する各種疾患の発症メカニズムの解明や、オキシトシンに関連する疾患の治療薬剤をスクリーニングするための最適のモデル動物となる。
【0037】
本発明のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスは、受容体が欠損しているために、リガンドであるオキシトシンを投与しても平滑筋の収縮等の反応を示さないという特徴を有する。よって、野生型マウスに投与した場合には反応するが、本発明のオキシトシン受容体欠損マウスに投与した場合には反応しない化合物を探索することにより、オキシトシン受容体を介して作用する作動薬を得ることができると考えられる。その様な検討を行うことにより、その化合物がオキシトシン受容体と結合するアゴニストであることの証明が可能である。また、かかる方法で選択される作動薬は作用点が少ないという特徴を有し、安全性が高いと考えられる。本発明のオキシトシンやオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスは、オキシトシン及びそれに関連する疾患に対する治療薬の、スクリーニングや薬理試験、安全性試験、ひいては遺伝子治療を含む治療法の開発研究の目的において有用である。
【0038】
本発明のノックアウトマウスはオキシトシン受容体異常を有する遺伝病モデルマウスであるために、オキシトシン受容体異常を治療するための新規な薬剤を探索するために使用できる。オキシトシン/オキシトシン受容体システムはGTP結合蛋白質を介する情報伝達系を採用しているが、その情報伝達経路は特に下流においてまだ判明していないことを考えると、これまではオキシトシン/オキシトシン受容体システムとの関連が全く考えられていなかった化合物や全く新規の化合物の中から、オキシトシン受容体異常の治療薬を探索できると考えられる。
【0039】
更に近年のオキシトシンやオキシトシン受容体に関する知見によれば、オキシトシン/オキシトシン受容体システムは平滑筋の収縮のみならず、子育て、性生殖行動や保育に関係する様々な精神状態にも関係している可能性が示唆されている。そのために、本発明のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスは、子育てや集団生活や性に関する異常行動の治療に寄与する、良いツールとなる可能性がある。
【0040】
基礎研究の分野においては、既に述べたようにオキシトシンとオキシトシン受容体が「1対1対応」であるかという点が問題となっており、本発明のオキシトシン受容体遺伝子欠損マウスは、その解明においても非常に有用なモデル動物を提供するものである。より具体的には、多様なオキシトシンの作用の中でオキシトシン受容体を介しているものと、そうでないものを区別することが可能となる。また、オキシトシン以外の化合物でオキシトシン受容体を介している物が存在するならば、その様な物質を探索することもまた可能であると思われる。
【0041】
【実施例】
(マウスotr遺伝子の制限酵素切断地図の作製)
2つのオキシトシン受容体(以下otrと略する)ゲノムクローンが導入されたλファージベクター(λDASHII)より、ファージ中のDNAを分離精製した。この2つのクローンは、両方ともotrゲノムのエクソン1・2・3を含む形で、それぞれ5’領域、3’領域をカバーするようなクローンであった。その様にして得たotrゲノムを、pBleuscriptSK(−)にサブクローニングした。これらのクローンを単一または複数の各種制限酵素で切断して、制限酵素地図を作製した。なお、マウスオキシトシン受容体のcDNA配列は遺伝子バンクのアクセッション番号D86599として、マウスオキシトシン受容体ゲノムDNA配列は D86631 として、それぞれ登録されており、その配列を得ることができる。
【0042】
(ターゲティングベクターの作製)
上記の制限酵素地図の情報から、otr遺伝子のターゲティングベクターの構築を試みた。具体的には、otrのほとんどをコードするエクソン3をターゲティングする目的で、Cre−Loxpのシステムを用いて、otr遺伝子のエクソン2から3の領域を欠失させることを可能とするベクターの構築を試みた。エクソン2・3、ポシティブ選択のためのネオマイシン耐性遺伝子、相同領域5’・3’arm、大腸菌への形質転換に必要なアンピシリン耐性遺伝子、ネガティブ選別のための遺伝子として核酸アナログを細胞毒性のある物質に変化させて細胞を死滅させる性質を持つHSV(単純ヘルペスウイルス)のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子(mc1tk)等の9つのパーツから、18.5kbのターゲティングベクターを作製した。
【0043】
(ES細胞へのターゲティングベクターの導入)
ターゲティングベクターを精製し、制限酵素消化によって直鎖状にした。その後、2種類のES細胞株(E14TG2a株・AB2・2株)に、電気穿孔法の手法を用いて、上記のターゲティングベクターを導入した。そして、E14TG2a株とAB2・2株について、薬剤選択により相同組み換えの起こったES細胞株コロニーのスクリーニングを行った。遺伝子型決定に用いるより優良なプローブを決定し、サザンブロットハイブリダイゼーションの手法を用いて、相同性組み換えの起こったコロニーのスクリーニングを行った。
【0044】
図3に、エクソン2から3の領域を除去するために本発明で使用したターゲティングベクターの構造、及び相同組み換えにより得られる遺伝子の構造を示す。図3において、一番上に野生型遺伝子の構造、二段目にターゲティングベクターの構造、一番下に相同組み換えを起こした結果得られるfxotrの構造を示す。図3において、E1はエクソン1、E2はエクソン2、E3はエクソン3を、それぞれ示す。太線と細い線は、ゲノムDNAとベクターのバックボーンをそれぞれ示す。XbaIはXbaI消化部位を、SacIは消化部位を、それぞれ示す。
【0045】
(キメラマウスの作製)
マイクロインジェクションの技術を用いて、相同組み換えを正しく起こしたES細胞を、マウス胚盤胞に導入した。生殖能を有しない雄マウスと交配させるホルモン処理により擬制妊娠させた仮親マウスに、ES細胞を導入した胚盤胞(C57BL/6J)を移植し、出産させてキメラマウスを得た。マウスの毛の色とサザンブロットハイブリダイゼーションにより、産まれたマウスの形質を確認した。
【0046】
(ノックアウトマウスの取得のための交配)
図4に示す計画に従って交配を行い、目的とするノックアウトマウスの取得を試みた。ここでも、毛の色とサザンブロットハイブリダイゼーションにより、産まれたマウスの形質を確認した。そして、C57BL/6Jを相手としてキメラマウスと交配させて、fxotr/fxotrマウス及びotr−/−マウスを得た。本発明においては既に述べたように、Cre−Loxpシステムを用いた手法を応用して、遺伝子ノックアウトを行った。
【0047】
C57BL/6Jとキメラマウスを交配することによって得たヘテロの遺伝子型を有するマウスを用いて、全身でcre酵素を発現しているCAG−creマウスと交配させて、完全にotrが欠損しているヘテロマウス(otr−/−)を作製した。得られたotr(−/−)マウスにおいては、otr遺伝子の発現が完全に欠損していると考えられる。ヘテロマウス同士を交配して得たホモ型のfxotr/fxotrマウスにおいては、otr遺伝子座にネオマイシン耐性遺伝子(neo)が挿入されている。よって、本来のotr遺伝子の効果が維持できないためにotr遺伝子の発現の低下が起こり、ノックアウトマウスと野生型の中間的な表現型を表す。それら2系統のマウスにつき、下記の解析を行った。
【0048】
fxotr/fxotrマウスの形質の解析)
fxotr/fxotrマウスの遺伝子型をサザンブロットハイブリダイゼーションにより解析した結果を、図5に示す。図5より、野生型(WT)マウスにおいては6.25kbpの位置にバンドが認められた。一方、fxotr/fxotrマウス(fxotr/fxotr)においてはその位置にはバンドが認められず、代わりに8.48bpの位置にバンドが認められた。なお、ヘテロマウス(fxotr/WT)においては6.25kbpの位置と8.48kbpの位置の両方において、バンドが認められた。
【0049】
ヘテロ型であるfxotr/+マウスの特性について解析したところ、雄のfxotr/+マウスは、生殖行動において正常であった。一方、雌fxotr/+マウスにおいては初産の子数が1〜6匹程度と少なかった。また、生後の子マウスにおける死亡率において、高い値を示した。
【0050】
更にfxotr/fxotrホモマウスの特性について解析を行った。交配において、fxotr/fxotrマウスは雌雄共に健康に産まれてきた。fxotr/fxotr雄マウスにおいて、生殖行動・性行動等に異常は見られないと認められた。しかし、fxotr/fxotr雌マウスに関しては乳汁射出に異常が見られた。これは、発明者らが過去にオキシトシンをノックアウトしたマウスにおいて得られた知見と同様であった。fxotr/fxotr雌マウスから子は無事に産まれてくるが、雌親から十分に乳汁の摂取ができないために、子が死亡することが認められた(図6)。図6において、左側は野生型の母親に保育させた新生マウス、右側はfxotr/fxotrマウスの母親に保育させたために死亡した新生マウスを示す。fxotr/fxotrマウス同士の交配による子を野生型の仮親に育てさせたところ、子マウスは乳汁を摂取して健康に生育することがわかり、子の死亡は母親側によるものであると考えられる。なお、fxotr/fxotr雌親マウスは上記の様に乳汁射出が不全であったものの、授乳行動や保育行動を示すことができた。
【0051】
(otr−/−マウスの形質の解析)
上記で説明したように、CAG−creトランスジェニックマウスとヘテロ型fxotr/+マウスを交配することにより、Cre酵素の作用によりotr遺伝子座のエクソン2から3の領域が欠損したotr+/−ヘテロマウスを取得することができた。そしてotr+/−ヘテロマウスマウス同士の交配により、ホモマウスを更に取得した。otr−/−マウスの遺伝子型をサザンブロットハイブリダイゼーションにより解析した結果を、図7に示す。図7より、野生型(WT)マウスにおいては6.25kbpの位置にバンドが認められた(レーン1、3、4、7)。一方、otr−/−マウスにおいてはその位置にはバンドが認められず(−/−)、代わりに4.05bpの位置にバンドが認められた(レーン2)。なお、ヘテロマウス(−/+)においては6.25kbpの位置と4.05kbpの位置の両方において、バンドが認められた(レーン5、6)。
【0052】
ヘテロ型であるotr+/−マウスの特性を解析した。雄のotr+/−マウスと交配した雌は妊娠をすることができ、この結果から、雄のotr+/−マウスの生殖行動と性機能は正常であることがわかった。一方雌のotr+/−マウスは、1回の出産において産む子マウスの数が少ない(5.2匹/1回)という知見が得られた。なお、野生型においては平均出産数は8.6匹/1回である。この原因としては、受精の異常、排卵の異常、受精卵の着床異常等が考えられる。
【0053】
完全なノックアウトマウスであるホモ型otr−/−マウスの特性を解析した。otr−/−雄マウスと交配した雌は妊娠し、otr−/−雄マウスの生殖行動と性機能は正常であった。しかし、otr−/−の雌マウスに関しては、otr+/−の雌マウスと同様に、一度に産まれてくる子マウスの数は少なく(4.2匹/回)、野生型の半分程度であった。そしてotr−/−雌親マウスより産まれた新生マウスは24時間以内に100%死亡した。そして新生マウスの死因は、otr−/−雌親マウスから乳汁が射出されないことであり、otr−/−雌マウスもまた、乳汁の射出に異常を示した。野生型、otr+/−、otr−/−の知見をまとめた結果を、表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0003697507
【0055】
【発明の効果】
本発明により、オキシトシン受容体遺伝子が欠損したノックアウトマウスが与えられた。本発明のノックアウトマウスは、オキシトシン受容体に関連する医薬の開発や、オキシトシン又はオキシトシン受容体が関係する疾患のメカニズムの解析に有用であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ES細胞を経由してノックアウトマウスを作製する手法の概要を示した模式図である。
【図2】 図2は、Cre/Loxpシステムの手法の概要を示した模式図である。
【図3】 図3は、本発明において行われた遺伝子相同組み換えの概要を示した模式図である。
【図4】 図4は、本発明のノックアウトマウスを作製するために行った交配を示した模式図である。
【図5】 図5は、fxotr/WTマウスおよびfxotr/fxotrマウスにおいてサザンブロット解析を行った写真である。
【図6】 図6は、野生型マウスの雌親およびfxotr/fxotrの雌親に育てられた新生マウスを示す写真である。
【図7】 図7は、+/−マウスおよび−/−マウスにおいてサザンブロット解析を行なった写真である。

Claims (10)

  1. オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAの一部または全部の改変により、当該オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している、オキシトシン受容体欠損マウス。
  2. 前記改変が、オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、その一部または全部を欠失させること、またはその一部または全部を他の遺伝子により置換すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させることである、請求項1記載のオキシトシン受容体欠損マウス。
  3. オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、エクソン2からエクソン3の領域が除去された変異を有することによりオキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している、請求項1記載のオキシトシン受容体欠損マウス。
  4. オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、エクソン3領域の下流にネオマイシン耐性遺伝子が挿入されている変異を有することによりオキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損している、請求項1記載のオキシトシン受容体欠損マウス。
  5. 雌個体において乳汁射出機能が不全であることを特徴とする、請求項3または4記載の、オキシトシン受容体欠損マウス。
  6. 請求項1から5のいずれか1項記載のオキシトシン受容体欠損マウスを使用して、平滑筋収縮薬をスクリーニングする方法。
  7. 前記平滑筋収縮薬が、乳腺収縮薬または子宮平滑筋収縮薬である、請求項6記載の方法。
  8. 請求項1から5のいずれか1項記載のオキシトシン受容体欠損マウスを、オキシトシン受容体欠損を有する疾患のモデル動物として使用する方法。
  9. オキシトシン受容体欠損マウスの作製方法であって、
    (1)オキシトシン受容体遺伝子のゲノム領域をクローニングする過程、
    (2)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおいて、その一部または全部を欠失させること、またはその一部または全部を他の遺伝子により置換すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させることにより改変し、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損したターゲティングベクターを作製する過程、
    (3)マウス胚性幹細胞を前記ターゲティングベクターにより相同組み換えを行うことにより、前記オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAの一部または全部を改変し、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損した胚性幹細胞を作製する過程、
    (4)前記オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損した胚性幹細胞を、胚盤胞内に注入するかまたは8細胞期胚と凝集させることにより、キメラマウスを作製する過程:および
    (5)前記キメラマウスを交配し、オキシトシン受容体遺伝子を欠損したホモ接合体マウスを作製する過程;
    を含むことを特徴とする、オキシトシン受容体欠損マウスの作製方法。
  10. オキシトシン受容体欠損マウスの作製において、前記ターゲティングベクターを作製する過程において、欠失させる対象であるゲノム領域の両端にLoxp配列を挿入すること、及び前記ホモ接合体マウスを作製する過程において、前記キメラマウスを交配することにより得たヘテロ接合体マウスを用いてCre酵素を発現している形質転換マウスと交配することを更に含み、Cre酵素の作用によりLoxp配列で挟まれたゲノム領域が欠失していることを特徴とする、請求項9記載の方法。
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