JP2003070378A - オキシトシン受容体欠損マウス及びその利用方法 - Google Patents

オキシトシン受容体欠損マウス及びその利用方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 オキシトシン受容体に作用析を行った写真で
ある。する薬剤を探索するための新規な方法を開発す
る。 【解決手段】 本発明により、オキシトシン受容体遺伝
子が欠損したノックアウトマウスが与えられた。本発明
のノックアウトマウスは、オキシトシン受容体に関連す
る医薬の開発やオキシトシン受容体に関連する医薬の開
発に有用であると考えられる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、オキシトシン受容
体遺伝子を欠損させたノックアウトマウス及びその利用
方法に関する。
【0002】
【従来の技術】オキシトシンは下垂体ホルモンの一種で
あり、全長9アミノ酸のポリペプチドから構成される。
オキシトシンの作用としては、分娩時の子宮平滑筋収縮
や乳汁射出中の乳腺筋上皮細胞の収縮において、働くこ
とが知られている。近年明らかとなった知見により、オ
キシトシンは、性、母性行動、記憶、摂食、飽満、記
憶、黄体退縮の調節因子としての卵巣における卵胞・卵
母細胞制御、更に性周期、陰茎勃起、射精、腎臓機能、
ナトリウム恒常性などを含む、より広範囲の生理学的機
能に関わることを示す知見が得られてきた。
【0003】オキシトシンは子宮筋収縮作用を有するペ
プチドホルモンとして最初にウシ下垂体から精製され、
1953年にオキシトシンのアミノ酸配列が解明された
(Du Vigneaud V et al.J.Bi
ol.Chem.205、949−957,195
3)。オキシトシンは構造が比較的に単純であることか
ら、多数のアゴニストやアンタゴニストが合成されて解
析が進み合成ペプチドの作製が可能となった。そのため
に、臨床においてオキシトシンは子宮収縮剤として誘発
分娩に使用されてきた。
【0004】一方リガンドであるオキシトシンが結合す
る標的である受容体に関しては、ラット子宮筋層におけ
る薬理学的な結合実験により、オキシトシン受容体の存
在が初めて示された(Soloff MS et a
l.J.Biol.Chem.248、6471−64
78,1973)。1992年にアフリカツメガエル卵
母細胞内の発現系を用いてヒト子宮のオキシトシン受容
体cDNAのクローニングが初めて行われ(Kimur
a et al.Nature,356,526−52
9,1992)、構造の決定されたオキシトシン受容体
は、細胞膜を7回貫通するGTP結合蛋白質が結合する
ロドプシン型受容体であることが判った。更にオキシト
シン受容体の遺伝子もクローニングされ、ヒト、ウシ、
ラット、マウス、ハタネズミに関してはオキシトシン受
容体遺伝子の構造が明らかにされている。ヒト由来のオ
キシトシン受容体cDNAは388個のアミノ酸から構
成され、推定分子量は42.7kDaの一本鎖ポリペプ
チドである。各種間の相同性はヒトとマウスのアミノ酸
配列では91%、ヒトとラットでは93%という高い相
同性を示し、種を越えて保存されている。
【0005】本発明者らは、過去においてオキシトシン
をコードする遺伝子が欠損したマウスの作出に成功して
おり、そのマウスを用いて、オキシトシンが出産後の雌
の射乳に必須であること(Nishimori et
al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.
S.A.,93,11699−11704,199
6)、オキシトシンは個体識別機能に関わっている事
(Ferguson J.etal.Nature G
enetics,25,284−288,2000)な
どの知見を得た。これらの知見はオキシトシン/オキシ
トシン受容体システムの解明において非常に貴重であ
る。
【0006】しかし、オキシトシン/オキシトシン受容
体システムを介する作動薬のスクリーニングを行うこ
と、更にはオキシトシン関連化合物の薬理作用やその作
用メカニズムの解析等を行うことを考えると、リガンド
であるオキシトシンの発現が欠損したマウスによる検討
のみならず、オキシトシン受容体側からの検討が必要と
されている。そしてその検討のために、オキシトシン受
容体遺伝子の発現を欠損したノックアウトマウスの作出
が求められていた。しかし、マウスオキシトシン受容体
遺伝子は1996年にクローニングされていた(Kub
ota Y etal.Mol.Cell.Endoc
rinol.,124,1−2、25−32、199
6)ものの、本発明までマウスオキシトシン受容体遺伝
子を欠損したノックアウトマウスの作製は成功していな
かった。
【0007】また基礎研究の場において、オキシトシン
/オキシトシン受容体システムにおけるリガンドと受容
体は1対1対応の関係でもって多くの生殖機能、行動、
記憶等に関わると考えられてきた。しかし、一方でリガ
ンドと受容体が異なった生理的機能を担っている可能性
を示す報告もあり、この点についての解決が待たれてい
た。この様な疑問に対する答えを得るためにも、やはり
オキシトシン受容体遺伝子が欠損したマウスが必要とさ
れていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】そこで、オキシトシン
の受容体遺伝子が発現しないように改変された欠損マウ
ス、いわゆるノックアウトマウスを作製することが本発
明の課題である。かかる動物は、オキシトシン受容体を
介する医薬のスクリーニングのツールとして特に有用で
ある。また、本発明のノックアウトマウスはオキシトシ
ンやオキシトシン様の化合物が作用する機構を解明する
ためのツールとしても有用である。
【0009】
【課題を解決するための手段】本出願は、前記の課題を
解決するために、以下の(1)から(9)の発明を提供
するものである。 (1)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAの一部
または全部の改変により、当該オキシトシン受容体遺伝
子の機能が欠損している、オキシトシン受容体欠損マウ
ス。 (2)前記改変が、オキシトシン受容体遺伝子のゲノム
DNAにおいて、その一部または全部を欠失させるこ
と、またはその一部または全部を他の遺伝子により置換
すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子のゲノム
DNA中に他の遺伝子を付加させることである、前記
(1)のオキシトシン受容体欠損マウス。 (3)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおい
て、エクソン2からエクソン3の領域が除去された変異
を有することによりオキシトシン受容体遺伝子の機能が
欠損している、前記(1)のオキシトシン受容体欠損マ
ウス。 (4)オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNAにおい
て、エクソン3領域の下流にネオマイシン耐性遺伝子が
挿入されている変異を有することによりオキシトシン受
容体遺伝子の機能が欠損している、前記(1)のオキシ
トシン受容体欠損マウス。 (5)雌個体において乳汁射出機能が不全であることを
特徴とする、前記(3)または(4)の、オキシトシン
受容体欠損マウス。 (6)前記(1)から(5)のいずれかに記載のオキシ
トシン受容体欠損マウスを使用して、平滑筋収縮薬をス
クリーニングする方法。 (7)前記平滑筋収縮薬が、乳腺収縮薬または子宮平滑
筋収縮薬である、前記(6)記載の方法。 (8)前記(1)から(5)のいずれかに記載のオキシ
トシン受容体欠損マウスを、オキシトシン受容体欠損を
有する疾患のモデル動物として使用する方法。 (9)オキシトシン受容体欠損マウスの作製方法であっ
て、(a)オキシトシン受容体遺伝子のゲノム領域をク
ローニングする過程、(b)オキシトシン受容体遺伝子
のゲノムDNAにおいて、その一部または全部を欠失さ
せること、またはその一部または全部を他の遺伝子によ
り置換すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子の
ゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させることにより改
変し、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損したター
ゲティングベクターを作製する過程、(c)胚性幹細胞
を前記ターゲティングベクターにより相同組み換えを行
うことにより、前記オキシトシン受容体遺伝子のゲノム
DNAの一部または全部を改変し、オキシトシン受容体
遺伝子の機能が欠損した胚性幹細胞を作製する過程、
(d)前記オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損した
胚性幹細胞を、胚盤胞内に注入するかまたは8細胞期胚
と凝集させることにより、キメラマウスを作製する過
程:および(e)前記キメラマウスを交配し、オキシト
シン受容体遺伝子を欠損したホモ接合体マウスを作製す
る過程;を含むことを特徴とする、オキシトシン受容体
欠損マウスの作製方法。 (10)オキシトシン受容体欠損マウスの作製におい
て、前記ターゲティングベクターを作製する過程におい
て、欠失させる対象であるゲノム領域の両端にIoxp
配列を挿入すること、及び前記ホモ接合体マウスを作製
する過程において、前記キメラマウスを交配することに
より得たヘテロ接合体マウスを用いてCre酵素を発現
している形質転換マウスと交配することを更に含み、C
re酵素の作用によりIoxp配列で挟まれたゲノム領
域が欠失していることを特徴とする、前記(9)の方
法。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明により提供されるオキシト
シン受容体欠損マウスは、オキシトシン受容体遺伝子が
その欠損型遺伝子に置換されているために、オキシトシ
ン受容体遺伝子の発現が欠損しているノックアウトマウ
スである。
【0011】更に詳しくは、本発明のオキシトシン受容
体欠損マウスは、染色体上のオキシトシン受容体遺伝子
座のエクソン2から3の領域が除去されることにより、
その発現が完全に欠損している遺伝子変異マウス、ある
いは染色体上のオキシトシン受容体遺伝子座のエクソン
3の下流にネオマイシン耐性遺伝子等が挿入されること
により、その発現が低下している変異配列に置換されて
いる遺伝子変異マウスとして提供される。
【0012】本願明細書において、「オキシトシン受容
体遺伝子のゲノムDNAの一部または全部の改変」と
は、オキシトシン受容体遺伝子のDNAの一部に、欠
損、置換または付加を生じさせる改変を加えることをい
う。オキシトシン受容体遺伝子の機能を欠損させるため
には、オキシトシン受容体遺伝子に対して欠損、置換ま
たは付加のうち、1つまたは2つ以上の方法を併せて使
用してもよい。
【0013】本願明細書においてゲノムDNAを「欠
損」させるとは、オキシトシン受容体遺伝子の一部また
は全部を欠損させることにより、オキシトシン受容体遺
伝子の発現産物がオキシトシン受容体蛋白質として機能
が発現しないように改変することをいう。また、本願明
細書においてDNAを「置換」するとは、オキシトシン
受容体遺伝子の一部または全部をオキシトシン受容体遺
伝子とは関係のない別個の配列により置換することによ
り、オキシトシン受容体遺伝子の発現産物がオキシトシ
ン受容体蛋白質として機能が発現しないように改変する
ことをいう。更に、本願明細書においてDNAを「付
加」するとは、オキシトシン受容体遺伝子中にオキシト
シン受容体遺伝子以外の配列を有する付加することによ
り、オキシトシン受容体遺伝子の発現産物がオキシトシ
ン受容体蛋白質として機能が発現しないように改変する
ことをいう。
【0014】また本願明細書において、「オキシトシン
受容体遺伝子の機能が欠損している」とは、上記に記載
したオキシトシン受容体遺伝子のDNAの改変により、
オキシトシン受容体遺伝子の発現産物が全く発現しない
か、または発現しても正常なオキシトシン受容体遺伝子
産物が有する機能を示すことができないことをいうもの
とする。
【0015】本発明のオキシトシン受容体欠損マウス
は、公知の遺伝子組み換え法(ジーンターゲッティング
法)により作製することができる。ジーンターゲッティ
ング法は、本分野においては良く知られた技術であり、
本分野の種々の実験書の教示に従って行うことができ
る。先ず、オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDNA断
片を単離する。そして種々の制限酵素で消化した実験の
情報から、制限酵素地図を作製する。そして、その制限
酵素地図の情報から、オキシトシン受容体遺伝子の機能
を低下あるいは欠損させた配列を有するターゲティング
ベクターを、下記の方法により作製することができる。
【0016】ターゲティングベクターを設計するにあた
り、オキシトシン受容体遺伝子の構造に変化をもたらす
部位は、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損すると
いう効果を有する限り、特に限定されるものではない。
しかしオキシトシン受容体遺伝子の機能及び構造から考
慮して、下記の実施例において示す様に、オキシトシン
受容体遺伝子のエクソン2から3を欠失させるように設
計することは特に好ましい。
【0017】また、ベクターを導入した組み換え体につ
き、ターゲティングベクターにより導入した薬剤耐性遺
伝子を用いたスクリーニングとサザンブロット法やPC
R法を用いたスクリーニングを併用して、選抜すること
が好ましい、そのために、それらのスクリーニングを容
易に行う事ができるように便宜を考えてターゲティング
ベクターを設計することが望ましい。薬剤選択のマーカ
ー遺伝子として、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマ
イシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子等を使用する
ことができる。また、ネガティブ選択用遺伝子には、H
SVチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素A遺伝子
等を使用することができる。
【0018】そのDNA断片を試験管内において遺伝子
操作し、オキシトシン受容体遺伝子座のエクソン2から
3の領域を欠損させるか、またはオキシトシン受容体遺
伝子座のエクソン3の下流にネオマイシン耐性遺伝子を
挿入するなどの改変を行い、オキシトシン受容体遺伝子
の機能を欠損させるような変異DNAを作製する。なお
下記の実施例においては、下記に詳しく述べるCre−
Ioxpのシステム(R.Kuhn et al.Sc
ience,269,1427−1429,1995)
を用いて、オキシトシン受容体遺伝子のエクソン2から
3の部分を欠失させることを可能とするベクターを構築
し、オキシトシン受容体遺伝子の機能を欠損させてい
る。しかし、本発明はCre−Ioxpシステムを用い
た方法に限定されるものではなく、Cre−Ioxpシ
ステムを用いない最も一般的なノックアウトマウスの作
製方法によっても、オキシトシン受容体遺伝子の機能を
欠損させるような種々の改変を行うことができる。
【0019】次いで上記の方法により作製したターゲッ
ティングベクターを使用して、相同組み換えを行う。本
願明細書において、「オキシトシン受容体遺伝子の相同
組み換え」とは、オキシトシン受容体遺伝子と同一また
は類似の塩基配列を有する改変したオキシトシン受容体
遺伝子を、ゲノム中のオキシトシン受容体遺伝子のDN
A領域に、人工的に組み換えさせることをいう。
【0020】目的とする遺伝子の相同組み換えが起こる
頻度は低いことが知られており、目的とする相同組み換
え体を得るためには、多数の組み換え体をスクリーニン
グする必要がある。しかし、受精卵では多数のスクリー
ニングを行うことが技術的に困難である。よって、受精
卵と同様に多分化能を有し、かつin vitroで培
養することができる細胞を使用することが好ましい。そ
して、その目的を達成するためには胚性幹細胞(ES細
胞)による方法を用いることができるが、それに限定さ
れるものではない。
【0021】現在マウス由来のES細胞株がいくつか確
立されており、その一つに下記の実施例で使用している
E14TG2a細胞株がある。しかし、それに限定され
るものではなく、他のマウス由来のES細胞株である、
TT2細胞株、AB−1細胞株、J1細胞株、R1細胞
株等を使用することもできる。これらのいずれのES細
胞株を用いるかは、実験の目的や方法により適宜選択し
て決定することができる。
【0022】オキシトシン受容体遺伝子を改変してその
機能を欠損させたターゲティングベクターを公知の方法
に準じてマウスES細胞に導入する。そして、ES細胞
中の目的とするオキシトシン受容体遺伝子のゲノムDN
A配列を、ターゲティングベクター中の機能が欠損した
オキシトシン受容体遺伝子による相同組み換えによって
置換する。相同組み換えは、オキシトシン受容体遺伝子
ゲノムDNA配列と、ターゲティングベクタ中の非改変
部分との配列との相同性を利用して、ある確率をもって
生じさせることができる。
【0023】ターゲティングベクターをES細胞に導入
する方法としては、公知の電気穿孔法(エレクトロポレ
ーション法)、リポソーム法、リン酸カルシウム法、D
EAE−デキストラン法等も利用できるが、導入遺伝子
の相同組み換え効率を考えると、電気穿孔法を用いるこ
とが好ましい。
【0024】得られた組み換えES細胞につき、相同組
み換えが起こっているかどうかのスクリーニングを行
う。即ち、まずネオマイシン等の導入した薬剤耐性因子
によりスクリーニングを行う。更にスクリーニングを確
実にする為に、サザンハイブリダイゼーション法やPC
R法により、スクリーニングを行う。これらのアッセイ
により、染色体上に存在する野生型オキシトシン受容体
遺伝子と導入したオキシトシン受容体遺伝子断片の間で
正しく相同遺伝子組み換えが起こり、染色体上のオキシ
トシン受容体遺伝子に変異が移った細胞を選択すること
ができる。
【0025】こうして得た変異遺伝子を持つES細胞
を、野生型マウスの胚盤胞または8細胞期の胚内に導入
する。そして、このES細胞胚を偽妊娠状態の仮親マウ
スの子宮に移植し、出産させることによりキメラ動物を
作製することができる。ノックアウト動物は、現在はE
S細胞が確立しているマウスにおいて作製することがで
きるが、将来の技術進歩により他の動物種においても作
製が可能となるであろう。
【0026】ES細胞を胚盤胞等の胚に導入する方法と
しては、マイクロインジュクション法や凝集法が知られ
ているが、いずれの方法を用いることも可能であり、当
業者が適宜改変することができる。マウスの場合には、
ホルモン剤(例えば、FSH様作用を有するPMSGお
よびLH作用を有するhCGを使用)により過排卵処理
を施した雌マウスを、雄マウスと交配させる。その後、
胚盤胞を用いる場合には受精から3.5日目に、8細胞
期胚を用いる場合には2.5日目に、それぞれ子宮から
初期発生胚を回収する。このようにして回収した胚に対
して、ターゲティングベクターを用いて相同組み換えを
行ったES細胞をin vitroにおいて注入し、キ
メラ胚を作製する。
【0027】一方、仮親とするための偽妊娠雌マウス
は、正常性周期の雌マウスを、精管結紮などにより去勢
した雄マウスと交配することにより得ることができる。
作出した偽妊娠マウスに対して、上記の方法により作製
したキメラ胚を子宮内移植し、妊娠・出産させることに
よりキメラマウスを作製することができる。キメラ胚の
着床、妊娠がより確実に起こるようにするため、受精卵
を採取する雌マウスと仮親となる偽妊娠マウスとを、同
一の性周期にある雌マウス群から作出することが望まし
い。
【0028】ES細胞移植胚に由来するマウス個体が、
このようなキメラマウスの中から得られた場合、このキ
メラマウスを純系のマウスと交配し、そして次世代個体
にES細胞由来の被毛色が現れることにより、ES細胞
がキメラマウス生殖系列へ導入されたことを確認するこ
とができる。ES細胞が生殖系列へ導入されたことを確
認するには、様々な形質を指標として用いることができ
るが、確認の容易さを考慮して、被毛色によることが望
ましい。マウスにおいては野ネズミ色(アグーチ色)、
黒色、黄土色、チョコレート色および白色などの被毛色
が知られているが、使用するES細胞の由来系統を考慮
して、キメラマウスと交配させるマウス系統を適宜選択
することができる。また、体の一部(例えば尾部先端)
からDNAを抽出し、サザンブロット解析やPCRアッ
セイを行うことにより、選抜を行うこともまた可能であ
る。
【0029】この様に、胚内に移植された組み換えES
細胞が生殖系列に導入された動物を選択し、そのキメラ
動物を繁殖させることにより、目的とする遺伝子を欠損
した個体を得ることができる。得られたオキシトシン受
容体遺伝子欠損ヘテロ接合体マウス同士を交配させるこ
とにより、目的とする遺伝子欠損ホモ接合マウスを得る
ことができる。作出されたオキシトシン受容体変異遺伝
子を保有するヘテロ接合体、あるいはホモ接合体は生殖
細胞および体細胞のすべてに安定的にオキシトシン受容
体遺伝子変異を有しており、交配等により効率よくその
変異を子孫動物に伝達することができる。図1に、ES
細胞からノックアウトマウスを作製するまでの過程の概
略を示した図を示す。
【0030】ところで下記の実施例において示すよう
に、本発明のノックアウトマウスを作製するにあたり、
コンディショナルなノックアウトマウスの作製において
汎用されている、Cre/Ioxpのシステム(R.K
uhn et al.Science,269,142
7−1429,1995)を用いることも可能である。
実施例においては既に述べたように、オキシトシン受容
体遺伝子のエキソン2から3の領域を欠失させることを
可能とする、ターゲティングベクターを用いている。
【0031】Cre/Ioxpのシステムにおいては、
Ioxp配列で挟まれた配列を予め作製しておくことに
より、後に大腸菌のP1ファージ由来の組み換え酵素で
あるCre酵素を発現している動物と交配させた時に、
Cre酵素はIoxp配列で挟まれた配列を認識して削
除するために、その領域を欠損させた動物を作出するこ
とが可能となる。そのようなCre/Ioxpのシステ
ムを用いて、組織特異的にCre酵素を発現しているマ
ウスと交配させることにより、組織特異的に遺伝子が欠
損した特性を有するノックアウトを作製することが、本
技術分野においてよく行われている。かかる手法は、目
的とする遺伝子の欠損が動物にとって致死的である場合
に、特に有効である。図2に、Cre/Ioxpのシス
テムを用いたノックアウトマウス作製の概念を示した模
式図を示す。
【0032】下記の実施例においてノックアウト動物を
作製するにあたっては、目的とする遺伝子の欠損が動物
にとって致死的である可能性を考えたために、エキソン
2から3の領域をCre/Ioxpのシステムで削除す
る方法を採用した。なお、実験結果から考えると、オキ
シトシン受容体遺伝子の欠損はマウスにとって致死的で
はなかった。下記の実施例では組織特異的ではなく、全
身においてCre酵素を発現しているトランスジェニッ
クマウス(CAG−Cre)と交配させることにより、
全身においてオキシトシン受容体遺伝子が欠損したマウ
ス(otr−/−)を作出しているが、完全にオキシト
シン受容体遺伝子が欠損したマウス(otr−/−)は
無事に誕生してくることが可能であった。
【0033】下記の実施例に関わらず、本発明のノック
アウト動物を作製する方法は、Cre/Ioxpのシス
テムを用いた方法に限定されるものではないと考えるべ
きである。一例としては、Cre/Ioxpのシステム
を用いずに、エクソン2から3の領域を薬剤耐性遺伝子
により置換したターゲティングベクターを使用すること
により、エクソン2から3の領域を欠損したノックアウ
トマウスを作出することも可能であると考えられる。
【0034】一方、臓器特異的にCreを発現したマウ
スを用いることにより、臓器特異的に遺伝子を欠損した
マウスを作製することが可能である、Cre/Ioxp
のシステムの利点もまた、大いに注目されるべきであ
る。ある臓器にのみ特異的に見られる現象を解析するこ
とは、オキシトシン/オキシトシン受容体システムの研
究の発展にとって大いに意義のあることである。またC
re/Ioxpのシステムを用いると、Cre遺伝子を
有する遺伝子をもつウイルスベクターを感染させるこ
と、或いは誘導型Cre酵素遺伝子を持ったトランスジ
ェニックマウスと交配することにより、成長したマウス
において目的とする遺伝子の欠損を誘導することができ
る。遺伝子欠損を成長後に誘導できることは、動物の成
長過程における遺伝子欠損の影響の解析を行うにあた
り、大いに役立つことと思われる。
【0035】このようにして作製されたオキシトシン受
容体遺伝子に変異を有するマウスは、雌において乳汁射
出の機能が不全であり、本発明のノックアウトマウスの
雌より産まれた新生マウスは乳汁を摂取することができ
ずに死亡した。また、本発明のノックアウトマウスの雌
は、一度に産む子の数が少ないという特徴も示した。
【0036】オキシトシン受容体遺伝子産物を全く持た
ないホモ接合体マウスは、自らは体内でオキシトシン受
容体を発現させることができないため、オキシトシン又
はオキシトシン受容体が関連する各種疾患の発症メカニ
ズムの解明や、オキシトシンに関連する疾患の治療薬剤
をスクリーニングするための最適のモデル動物となる。
【0037】本発明のオキシトシン受容体遺伝子欠損マ
ウスは、受容体が欠損しているために、リガンドである
オキシトシンを投与しても平滑筋の収縮等の反応を示さ
ないという特徴を有する。よって、野生型マウスに投与
した場合には反応するが、本発明のオキシトシン受容体
欠損マウスに投与した場合には反応しない化合物を探索
することにより、オキシトシン受容体を介して作用する
作動薬を得ることができると考えられる。その様な検討
を行うことにより、その化合物がオキシトシン受容体と
結合するアゴニストであることの証明が可能である。ま
た、かかる方法で選択される作動薬は作用点が少ないと
いう特徴を有し、安全性が高いと考えられる。本発明の
オキシトシンやオキシトシン受容体遺伝子欠損マウス
は、オキシトシン及びそれに関連する疾患に対する治療
薬の、スクリーニングや薬理試験、安全性試験、ひいて
は遺伝子治療を含む治療法の開発研究の目的において有
用である。
【0038】本発明のノックアウトマウスはオキシトシ
ン受容体異常を有する遺伝病モデルマウスであるため
に、オキシトシン受容体異常を治療するための新規な薬
剤を探索するために使用できる。オキシトシン/オキシ
トシン受容体システムはGTP結合蛋白質を介する情報
伝達系を採用しているが、その情報伝達経路は特に下流
においてまだ判明していないことを考えると、これまで
はオキシトシン/オキシトシン受容体システムとの関連
が全く考えられていなかった化合物や全く新規の化合物
の中から、オキシトシン受容体異常の治療薬を探索でき
ると考えられる。
【0039】更に近年のオキシトシンやオキシトシン受
容体に関する知見によれば、オキシトシン/オキシトシ
ン受容体システムは平滑筋の収縮のみならず、子育て、
性生殖行動や保育に関係する様々な精神状態にも関係し
ている可能性が示唆されている。そのために、本発明の
オキシトシン受容体遺伝子欠損マウスは、子育てや集団
生活や性に関する異常行動の治療に寄与する、良いツー
ルとなる可能性がある。
【0040】基礎研究の分野においては、既に述べたよ
うにオキシトシンとオキシトシン受容体が「1対1対
応」であるかという点が問題となっており、本発明のオ
キシトシン受容体遺伝子欠損マウスは、その解明におい
ても非常に有用なモデル動物を提供するものである。よ
り具体的には、多様なオキシトシンの作用の中でオキシ
トシン受容体を介しているものと、そうでないものを区
別することが可能となる。また、オキシトシン以外の化
合物でオキシトシン受容体を介している物が存在するな
らば、その様な物質を探索することもまた可能であると
思われる。
【0041】
【実施例】(マウスotr遺伝子の制限酵素切断地図の
作製)2つのオキシトシン受容体(以下otrと略す
る)ゲノムクローンが導入されたλファージベクター
(λDASHII)より、ファージ中のDNAを分離精
製した。この2つのクローンは、両方ともotrゲノム
のエクソン1・2・3を含む形で、それぞれ5’領域、
3’領域をカバーするようなクローンであった。その様
にして得たotrゲノムを、pBleuscriptS
K(−)にサブクローニングした。これらのクローンを
単一または複数の各種制限酵素で切断して、制限酵素地
図を作製した。なお、マウスオキシトシン受容体のcD
NA配列は遺伝子バンクのアクセッション番号D86599と
して、マウスオキシトシン受容体ゲノムDNA配列は D
86631 として、それぞれ登録されており、その配列を得
ることができる。
【0042】(ターゲティングベクターの作製)上記の
制限酵素地図の情報から、otr遺伝子のターゲティン
グベクターの構築を試みた。具体的には、otrのほと
んどをコードするエクソン3をターゲティングする目的
で、Cre−Ioxpのシステムを用いて、otr遺伝
子のエクソン2から3の領域を欠失させることを可能と
するベクターの構築を試みた。エクソン2・3、ポシテ
ィブ選択のためのネオマイシン耐性遺伝子、相同領域
5’・3’arm、大腸菌への形質転換に必要なアンピ
シリン耐性遺伝子、ネガティブ選別のための遺伝子とし
て核酸アナログを細胞毒性のある物質に変化させて細胞
を死滅させる性質を持つHSV(単純ヘルペスウイル
ス)のチミジンキナーゼ(tk)遺伝子(mc1tk)
等の9つのパーツから、18.5kbのターゲティング
ベクターを作製した。
【0043】(ES細胞へのターゲティングベクターの
導入)ターゲティングベクターを精製し、制限酵素消化
によって直鎖状にした。その後、2種類のES細胞株
(E14TG2a株・AB2・2株)に、電気穿孔法の
手法を用いて、上記のターゲティングベクターを導入し
た。そして、E14TG2a株とAB2・2株につい
て、薬剤選択により相同組み換えの起こったES細胞株
コロニーのスクリーニングを行った。遺伝子型決定に用
いるより優良なプローブを決定し、サザンブロットハイ
ブリダイゼーションの手法を用いて、相同性組み換えの
起こったコロニーのスクリーニングを行った。
【0044】図3に、エクソン2から3の領域を除去す
るために本発明で使用したターゲティングベクターの構
造、及び相同組み換えにより得られる遺伝子の構造を示
す。図3において、一番上に野生型遺伝子の構造、二段
目にターゲティングベクターの構造、一番下に相同組み
換えを起こした結果得られるfxotrの構造を示す。図
3において、E1はエクソン1、E2はエクソン2、E
3はエクソン3を、それぞれ示す。太線と細い線は、ゲ
ノムDNAとベクターのバックボーンをそれぞれ示す。
XbaIはXbaI消化部位を、SacIは消化部位
を、それぞれ示す。
【0045】(キメラマウスの作製)マイクロインジェ
クションの技術を用いて、相同組み換えを正しく起こし
たES細胞を、マウス胚盤胞に導入した。生殖能を有し
ない雄マウスと交配させるホルモン処理により擬制妊娠
させた仮親マウスに、ES細胞を導入した胚盤胞(B5
7BL/6J)を移植し、出産させてキメラマウスを得
た。マウスの毛の色とサザンブロットハイブリダイゼー
ションにより、産まれたマウスの形質を確認した。
【0046】(ノックアウトマウスの取得のための交
配)図4に示す計画に従って交配を行い、目的とするノ
ックアウトマウスの取得を試みた。ここでも、毛の色と
サザンブロットハイブリダイゼーションにより、産まれ
たマウスの形質を確認した。そして、B57BL/6J
を相手としてキメラマウスと交配させて、fxotr/fx
otrマウス及びotr−/−マウスを得た。本発明に
おいては既に述べたように、Cre−Ioxpシステム
を用いた手法を応用して、遺伝子ノックアウトを行っ
た。
【0047】B57BL/6Jとキメラマウスを交配す
ることによって得たヘテロの遺伝子型を有するマウスを
用いて、全身でcre酵素を発現しているCAG−cr
eマウスと交配させて、完全にotrが欠損しているヘ
テロマウス(otr−/−)を作製した。得られたot
r(−/−)マウスにおいては、otr遺伝子の発現が
完全に欠損していると考えられる。ヘテロマウス同士を
交配して得たホモ型の fxotr/fxotrマウスにおい
ては、otr遺伝子座にネオマイシン耐性遺伝子(ne
o)が挿入されている。よって、本来のotr遺伝子の
効果が維持できないためにotr遺伝子の発現の低下が
起こり、ノックアウトマウスと野生型の中間的な表現型
を表す。それら2系統のマウスにつき、下記の解析を行
った。
【0048】(fxotr/fxotrマウスの形質の解
析)fxotr/fxotrマウスの遺伝子型をサザンブロ
ットハイブリダイゼーションにより解析した結果を、図
5に示す。図5より、野生型(WT)マウスにおいては
6.25kbpの位置にバンドが認められた。一方、fx
otr/fxotrマウス(fxotr/fxotr)におい
てはその位置にはバンドが認められず、代わりに8.4
8bpの位置にバンドが認められた。なお、ヘテロマウ
ス(fxotr/WT)においては6.25kbpの位置
と8.48kbpの位置の両方において、バンドが認め
られた。
【0049】ヘテロ型であるfxotr/+マウスの特性
について解析したところ、雄のfxotr/+マウスは、
生殖行動において正常であった。一方、雌fxotr/+
マウスにおいては初産の子数が1〜6匹程度と少なかっ
た。また、生後の子マウスにおける死亡率において、高
い値を示した。
【0050】更にfxotr/fxotrホモマウスの特性
について解析を行った。交配において、fxotr/fx
trマウスは雌雄共に健康に産まれてきた。fxotr/
fxotr雄マウスにおいて、生殖行動・性行動等に異常
は見られないと認められた。しかし、fxotr/fxot
r雌マウスに関しては乳汁射出に異常が見られた。これ
は、発明者らが過去にオキシトシンをノックアウトした
マウスにおいて得られた知見と同様であった。fxotr
fxotr雌マウスから子は無事に産まれてくるが、雌
親から十分に乳汁の摂取ができないために、子が死亡す
ることが認められた(図6)。図6において、左側は野
生型の母親に保育させた新生マウス、右側はfxotr/
fxotrマウスの母親に保育させたために死亡した新生
マウスを示す。fxotr/fxotrマウス同士の交配に
よる子を野生型の仮親に育てさせたところ、子マウスは
乳汁を摂取して健康に生育することがわかり、子の死亡
は母親側によるものであると考えられる。なお、fxot
r/fxotr雌親マウスは上記の様に乳汁射出が不全で
あったものの、授乳行動や保育行動を示すことができ
た。
【0051】(otr−/−マウスの形質の解析)上記
で説明したように、CAG−creトランスジェニック
マウスとヘテロ型 fxotr/+マウスを交配することに
より、Cre酵素の作用によりotr遺伝子座のエクソ
ン2から3の領域が欠損したotr+/−ヘテロマウス
を取得することができた。そしてotr+/−ヘテロマ
ウスマウス同士の交配により、ホモマウスを更に取得し
た。otr−/−マウスの遺伝子型をサザンブロットハ
イブリダイゼーションにより解析した結果を、図7に示
す。図7より、野生型(WT)マウスにおいては6.2
5kbpの位置にバンドが認められた(レーン1、3、
4、7)。一方、otr−/−マウスにおいてはその位
置にはバンドが認められず(−/−)、代わりに4.0
5bpの位置にバンドが認められた(レーン2)。な
お、ヘテロマウス(−/+)においては6.25kbp
の位置と4.05kbpの位置の両方において、バンド
が認められた(レーン5、6)。
【0052】ヘテロ型であるotr+/−マウスの特性
を解析した。雄のotr+/−マウスと交配した雌は妊
娠をすることができ、この結果から、雄のotr+/−
マウスの生殖行動と性機能は正常であることがわかっ
た。一方雌のotr+/−マウスは、1回の出産におい
て産む子マウスの数が少ない(5.2匹/1回)という
知見が得られた。なお、野生型においては平均出産数は
8.6匹/1回である。この原因としては、受精の異
常、排卵の異常、受精卵の着床異常等が考えられる。
【0053】完全なノックアウトマウスであるホモ型o
tr−/−マウスの特性を解析した。otr−/−雄マ
ウスと交配した雌は妊娠し、otr−/−雄マウスの生
殖行動と性機能は正常であった。しかし、otr−/−
の雌マウスに関しては、otr+/−の雌マウスと同様
に、一度に産まれてくる子マウスの数は少なく(4.2
匹/回)、野生型の半分程度であった。そしてotr−
/−雌親マウスより産まれた新生マウスは24時間以内
に100%死亡した。そして新生マウスの死因は、ot
r−/−雌親マウスから乳汁が射出されないことであ
り、otr−/−雌マウスもまた、乳汁の射出に異常を
示した。野生型、otr+/−、otr−/−の知見を
まとめた結果を、表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【発明の効果】本発明により、オキシトシン受容体遺伝
子が欠損したノックアウトマウスが与えられた。本発明
のノックアウトマウスは、オキシトシン受容体に関連す
る医薬の開発や、オキシトシン又はオキシトシン受容体
が関係する疾患のメカニズムの解析に有用であると考え
られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、ES細胞を経由してノックアウトマ
ウスを作製する手法の概要を示した模式図である。
【図2】 図2は、Cre/loxpシステムの手法の
概要を示した模式図である。
【図3】 図3は、本発明において行われた遺伝子相同
組み換えの概要を示した模式図である。
【図4】 図4は、本発明のノックアウトマウスを作製
するために行った交配を示した模式図である。
【図5】 図5は、fxotr/WTマウスおよびfxot
r/fxotrマウスにおいてサザンブロット解析を行っ
た写真である。
【図6】 図6は、野生型マウスの雌親およびfxotr
fxotrの雌親に育てられた新生マウスを示す写真で
ある。
【図7】 図7は、+/−マウスおよび−/−マウスに
おいてサザンブロット解析を行った写真である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA01 AA10 BA63 CA02 DA02 FA20 GA11 HA20 4B065 AA91X AB01 AC20 BA02 CA44 CA46

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDN
    Aの一部または全部の改変により、当該オキシトシン受
    容体遺伝子の機能が欠損している、オキシトシン受容体
    欠損マウス。
  2. 【請求項2】 前記改変が、オキシトシン受容体遺伝子
    のゲノムDNAにおいて、その一部または全部を欠失さ
    せること、またはその一部または全部を他の遺伝子によ
    り置換すること、若しくはオキシトシン受容体遺伝子の
    ゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させることである、
    請求項1記載のオキシトシン受容体欠損マウス。
  3. 【請求項3】 オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDN
    Aにおいて、エクソン2からエクソン3の領域が除去さ
    れた変異を有することによりオキシトシン受容体遺伝子
    の機能が欠損している、請求項1記載のオキシトシン受
    容体欠損マウス。
  4. 【請求項4】 オキシトシン受容体遺伝子のゲノムDN
    Aにおいて、エクソン3領域の下流にネオマイシン耐性
    遺伝子が挿入されている変異を有することによりオキシ
    トシン受容体遺伝子の機能が欠損している、請求項1記
    載のオキシトシン受容体欠損マウス。
  5. 【請求項5】 雌個体において乳汁射出機能が不全であ
    ることを特徴とする、請求項3または4記載の、オキシ
    トシン受容体欠損マウス。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれか1項記載のオ
    キシトシン受容体欠損マウスを使用して、平滑筋収縮薬
    をスクリーニングする方法。
  7. 【請求項7】 前記平滑筋収縮薬が、乳腺収縮薬または
    子宮平滑筋収縮薬である、請求項6記載の方法。
  8. 【請求項8】 請求項1から5のいずれか1項記載のオ
    キシトシン受容体欠損マウスを、オキシトシン受容体欠
    損を有する疾患のモデル動物として使用する方法。
  9. 【請求項9】 オキシトシン受容体欠損マウスの作製方
    法であって、(1)オキシトシン受容体遺伝子のゲノム
    領域をクローニングする過程、(2)オキシトシン受容
    体遺伝子のゲノムDNAにおいて、その一部または全部
    を欠失させること、またはその一部または全部を他の遺
    伝子により置換すること、若しくはオキシトシン受容体
    遺伝子のゲノムDNA中に他の遺伝子を付加させること
    により改変し、オキシトシン受容体遺伝子の機能が欠損
    したターゲティングベクターを作製する過程、(3)マ
    ウス胚性幹細胞を前記ターゲティングベクターにより相
    同組み換えを行うことにより、前記オキシトシン受容体
    遺伝子のゲノムDNAの一部または全部を改変し、オキ
    シトシン受容体遺伝子の機能が欠損した胚性幹細胞を作
    製する過程、(4)前記オキシトシン受容体遺伝子の機
    能が欠損した胚性幹細胞を、胚盤胞内に注入するかまた
    は8細胞期胚と凝集させることにより、キメラマウスを
    作製する過程:および(5)前記キメラマウスを交配
    し、オキシトシン受容体遺伝子を欠損したホモ接合体マ
    ウスを作製する過程;を含むことを特徴とする、オキシ
    トシン受容体欠損マウスの作製方法。
  10. 【請求項10】 オキシトシン受容体欠損マウスの作製
    において、前記ターゲティングベクターを作製する過程
    において、欠失させる対象であるゲノム領域の両端にI
    oxp配列を挿入すること、及び前記ホモ接合体マウス
    を作製する過程において、前記キメラマウスを交配する
    ことにより得たヘテロ接合体マウスを用いてCre酵素
    を発現している形質転換マウスと交配することを更に含
    み、Cre酵素の作用によりIoxp配列で挟まれたゲ
    ノム領域が欠失していることを特徴とする、請求項9記
    載の方法。
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