JP4303907B2 - ラディキシンノックアウト動物 - Google Patents

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【発明の属する技術分野】
本発明は、膜蛋白質とアクチンフィラメントを結合させるERM(エズリン・ラディキシン・モエシン)ファミリーの一つ、ラディキシンを欠失した非ヒト動物に関する。
【従来の技術】
ラディキシンはラットの肝臓より見出された分子量80 kDaの蛋白質で、エズリン(分子量82 kDa)・モエシン(分子量75 kDa)と、全アミノ酸レベルで各々75%、80%の相同性を示し、これらと合わせてERM(エズリン・ラディキシン・モエシン)ファミリーと称される蛋白質である。ERM蛋白質は広くいろいろな細胞で発現しており、微絨毛・ラッフリング膜・細胞分裂時の分裂溝・形成初期の細胞接着部位など、アクチンフィラメントが細胞膜に密に結合しているところに多く存在している(S. Tsukita et al., J. Biol. Chem 274, 34507-10, 1999)。
ERM蛋白質は、C端側の保存されている34アミノ酸からなるドメインで、アクチンフィラメントと結合し、N端側でCD43, CD44, ICAM-2などの接着分子と結合して、アクチンフィラメントを細胞膜に結びつける働きをしている。
【0001】
培養細胞に於いては、ERM蛋白質は一緒に発現し、同じ箇所に局在しているが、組織に於いては、ERM蛋白質の発現及び分布は、それぞれ組織特異的な制御を受け、必ずしもERM蛋白質全てが同じように局在しているわけではない(Sato,N. et al. J. Cell Sci. 103: 131143, 1992)。例えば肝臓に於いては、胆細管に接する側の細胞膜にはラディキシンが、血管内皮細胞と接する側の細胞膜にはモエシンが局在していることが知られている(Fouassier, L. et al. Hepatology o33: 166-176, 2001)。
ERM蛋白質それぞれに特有な機能を解析することは、培養細胞系では不可能であり、個体で解析する手段が待ち望まれていた。
【0002】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、ラディキシンをtargeted disruptionにより欠失させたノックアウトマウス(以下、ラディキシン-KOマウス)を作製し、ERMの中でも、特にラディキシンが、どの様な機能を担っているかを明らかにすることにある。
【0003】
【課題を解決するための手段】
ERM蛋白質が、互いに機能的に重複し、モエシンをノックアウトしたマウスに機能的な異常が認められない(Doi, Y. et al., J. Biol. Chem. 274 :2315-21, 1999)ことから、ラディキシン-KOマウスを作製しても、ラディキシンの機能の解析はできない可能性が考えられた。しかし、ERM蛋白質の発現が、それぞれ組織特異的な調節を受け、ラディキシンに特別な機能がある可能性もあると考え、ラディキシンをコードする遺伝子を、targeted disruptionにより欠失させたラディキシン-KOマウスを作製することを試みた。
その結果、ラディキシン-KOマウスは、生後4週頃から血中複合型ビリルビン濃度が上昇し、それに伴って軽度の肝障害が現れるという特有の性質を有することが明らかとなった。この症状は複合型ビリルビンを胆汁中に放出する多剤耐性蛋白質2(MRP2)の欠失により起こるDubin-Johnson症候群における複合型ビリルビン血症と類似していた(Medicine, 33: 155-179, 1954)。ラディキシン-KOマウスはラディキシンの生体内での機能の解析、及びラディキシンの欠失により起こる疾患の解析に有用であることが明らかとなった。
更にラディキシン-KOマウスは、ラディキシンの欠失に限らず、本来腸管に分泌される胆汁が血中に流入しておこる疾患、例えば胆道閉塞症のモデルとしても有用であることが示唆され、本発明を完成するに到った。
【0004】
すなわち本発明は、ラディキシンをコードする遺伝子を欠失、好ましくはtargeted disruptionにより欠失させ、機能を持ったラディキシンを欠失させた非ヒト動物に関する。好ましくは非ヒト動物は齧歯類であり、更に好ましくはマウスであることが望ましい。
ここでtargeted disruptionは、標的となる遺伝子の塩基配列に変異を導入したDNA、好ましくは選択マーカ、更に好ましくは薬剤に対する耐性遺伝子を挿入したDNAを、細胞に導入し、導入したDNAと標的遺伝子との間で相同組換えを起こした細胞を選択して、標的遺伝子に変異を導入する技術を指す(Suzanne, L. et.al., Nature, 336, 348, 88)。ここでtargeted disruptionは、ラディキシンをコードする遺伝子の塩基配列の情報に基づいて該遺伝を欠失させる技術の例示であり、当該遺伝子の塩基配列の情報に基づいて欠失させたのであれば本発明に含まれるものである。またここで遺伝子を欠失させるとは、遺伝子に変異を導入して、その遺伝子産物の機能を失わせることを意味する。
また、機能を持ったラディキシンを欠失させたとは、 アクチンフィラメントがCD43, CD44, ICAM-2等の膜蛋白質と結合する部位に、免疫染色等で見出されるラディキシンが実質的に存在しないことを意味する。
本発明は、機能を持ったラディキシンを欠失したマウスが、個体発生して発育し、また血中ビリルビン濃度が高いといったラディキシンの欠失に伴った異常を示して、生体におけるラディキシンの機能の解析に有用であることを見出したものである。
ここでラディキシンをコードする遺伝子は、以下の(a)又は(b)のDNAを含んで成る遺伝子である。
(a)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、ラディキシンをコードするDNA。
またここでストリンジェントな条件の例としては、65℃ 4x SSCにおけるハイブリダイゼーション、次いで65℃で1時間0.1x SSC中での洗浄である。また別法としてストリンジェントな条件は、50%ホルムアミド中42℃ 4x SSCである。
更に本発明は、ラディキシンをコードする遺伝子を欠失させた動物と野生型の動物を比較し、ラディキシンをコードする遺伝子を欠失させた動物の表現形質を解析して、ラディキシンの機能を解析する方法にも関する。ここで機能には、ラディキシンが現在果たしている役割に加え、個体発生の過程で果たした役割も含まれる。
また本発明は、ラディキシンをコードする遺伝子を欠失させた動物を、ラディキシンが欠失して引き起こされた疾患のモデル動物として、該疾患の解析に使用する方法にも関する。
これに加え本発明は、ラディキシンをコードする遺伝子を欠失させた動物の、ビリルビンによる障害の程度を測定する工程を含んで成る、該動物を高ビリルビン血症のモデル動物として使用する方法、ラディキシンをコードする遺伝子を欠失させた動物の肝障害を測定する工程を含んで成る、該動物を肝障害のモデル動物として使用する方法も開示する。ここで高ビリルビン血症はラディキシンの欠失により引き起こされた疾患に限られず、例えば胆道閉塞症が挙げられる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。
最初にラディキシン遺伝子のTargeted disruptionについて、ラディキシン遺伝子のクローニング、Targeted disruptionに用いるターゲッティングベクターの構築、相同組換えを起こしたES細胞の取得の順に説明する。
1.ラディキシン遺伝子の一部を含むDNAのクローニング
ラディキシンをコードするDNAは、配列番号1に記載の塩基配列を基にプライマーを設定し、非ヒト動物のGenomic DNAあるいはcDNAよりPCRにより、あるいは非ヒト動物のRNAよりRT-PCRにより得ることができる。また別法としては、前述の引用文献に記載の塩基配列を基にプローブを合成して、非ヒト動物のGenomic DNA library あるいはcDNA libraryより、プローブとハイブリダイズするクローンを選び出し、塩基配列を決定して、ラディキシン遺伝子あるいはその一部、好ましくは500 bp以上、更に好ましくは1 kbp以上の塩基配列を含むクローンを選択しても良い。
クローニングされたDNAに含まれる制限酵素切断部位を確認して制限酵素地図を作製する。相同組換えするのに十分な長さのDNA、好ましくは7 kbp以上、更に好ましくは10 kbp以上のクローンが得られなかった場合は、複数のクローンより適切な制限酵素部位でDNAを切り出して繋ぎ合わせることも許される。
【0006】
2.ターゲッティングベクターの構築
得られた相同組換えに十分な長さのDNA中のエクソン領域の制限酵素部位に、薬剤耐性遺伝子などのポジティブ選択マーカー、好ましくはネオマイシン耐性遺伝子を導入する。またエクソンの一部を取り除いて、代わりに薬剤耐性遺伝子に置き換えることも許される。適当な制限酵素siteが無い場合にはPCR・制限酵素siteを含むオリゴヌクレオチドのligation等により、適当な制限酵素siteを導入してもよい。
好ましくは、導入されたDNAとラディキシン遺伝子の間に相同組換えが起こらず、導入されたDNAがラディキシン遺伝子以外の部位に挿入されてしまった胚性幹細胞(ES細胞)を除去するために、ベクター内にはネガティブ選択マーカー、例えばチミジンキナーゼ遺伝子、ジフテリア毒素遺伝子などを含むのが望ましい。
これらのDNAの塩基配列を操作する組換えDNA技術は、例えばSambruck, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY に記載された方法によって行うことができるが、適当な組換えDNAを得ることができれば、これらの方法に限られるものではない。
【0007】
3.相同組換えを起こしたES細胞の取得
作製したターゲティングベクターを、制限酵素で切断して直鎖状DNAとし、例えばフェノール・クロロフォルム抽出、アガロース電気泳動、超遠心等により精製して、ES細胞、例えばTT2へトランスフェクションする。トランスフェクションの方法としては、エレクトロポレーション、リポフェクチンなどが挙げられるが、本発明はこれに限られるものではない。
トランスフェクションした細胞は適当な選択培地中、例えばネオマイシン耐性遺伝子とチミジンキナーゼ遺伝子を組み込んだターゲティングベクターを構築した場合には、培地中にネオマイシンとガンシクロビルを含む選択培地中で培養する。
両薬剤に対し薬剤耐性を呈して増殖してきたES細胞に、導入遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子が組み込まれたことは、PCR等で容易に同定することができる。更にターゲティングベクターの外側の5上流もしくは3下流のDNA一部をプローブとしてサザンブロット解析する事により、相同組み換えを起こしたかどうかを確認する事もできる。また、ターゲティングベクターがランダムに挿入されていないことを確かめるために、ターゲティングベクター内のDNAをプローブとしてサザンブロット解析する事により確認できる。これらの方法を組み合わせることにより、相同組み換えを起こしたES細胞を取得することができる。
【0008】
続いて、ノックアウトマウスの作製法について述べるが本発明はこれに限られるものではない。
ノックアウトマウスは、受精後8細胞期胚あるいは胚盤胞の採取、相同組み換えを起こしたES細胞のマイクロインジェクション、偽妊娠マウスへの操作卵の移植、偽妊娠マウスの出産と産仔の育成、PCR法およびサザンブロット法による遺伝子導入マウスの選抜、導入遺伝子をもつマウスの系統樹立、のステップを経て作製する(Yagi, T. et. al., Analytical Biochem. 214, 70, 1993)。
1.8細胞期胚あるいは胚盤胞の採取
受精卵は、雌マウスに過剰排卵を誘発させるため、妊馬血清性生殖腺刺激ホルモン5国際単位とヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン2.5国際単位をそれぞれ腹腔内投与して、受精後2.5日目の雌マウスより卵管―子宮還流法により8細胞期胚を得る。なお胚盤胞を用いる場合は受精後3.5日目、雌マウスの子宮を取り出し、子宮還流により胚を得る。
【0009】
2.相同組換えを起こしたES細胞のマイクロインジェクション
得られた8細胞期胚または胚盤胞に、相同組換えを起こしたES細胞をマイクロインジェクションする。マイクロインジェクションは、例えばHogan, B.L.M., A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1986、(Yagi T. et. al., Analytical Biochem. 214, 70, 1993)の記載に基づき、倒立顕微鏡下で、マイクロマニピュレータ、マイクロインジェクター、インジェクションピペットおよびホールディングピペットを用いて行うことができる。また、インジェクション用ディッシュには、例えばFalcon 3002(Becton Dickinson Labware)に培地5μlの液滴およびES細胞を浮遊させた液滴を作り、流動パラフィンを重層したものを用いる。以下相同組換えを起こしたES細胞のマイクロインジェクションした8細胞期胚あるいは胚盤胞を操作卵と称す。
【0010】
3.偽妊娠マウスへの操作卵の移植
精管結紮雄マウスと正常雌マウスを交配させて偽妊娠マウスを作成し、操作卵を移植する。操作卵の移植は、例えばHogan, B.L.M., A laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1986、(Yagi T. et. al., Analytical Biochem. 214, 70, 1993)の記載に基づいて行うことができる。以下に具体的操作の例を記すが、本発明はこれに限られるものではない。
偽妊娠マウスを、例えば50mg/kg体重のペントバルビタールナトリウムにて全身麻酔を行い、両けん部を約1cm切開して卵巣および卵管を露出し、実体顕微鏡下で卵巣嚢をピンセットで切開し卵管采を露出させる。次に卵管あたり7〜8個の操作卵を卵管采に送り込む。この時、操作卵とともに入れた微小気泡によって、卵管内に移植されたことを確認する。このあと卵管および卵巣を腹腔に戻し両切開部を縫合し、マウスを麻酔から覚醒させる。場合によっては、操作卵を翌日まで培養し、胚盤胞に発生させてから子宮に移植しても良い。
【0011】
4.偽妊娠マウスの出産と産仔の育成
多くの場合、移植後17日目には仔マウスが得られる。仔マウスは通常、相同組換え起こしたES細胞と、受精卵を採取したマウス細胞のキメラとなる。例えばES細胞としてTT2を用い、ICRより採取した8細胞期胚に注入した場合、キメラ率の高い仔マウスは体毛色がアグウチ優位となり、キメラ率の低いマウスは体毛色が白色優位となる。
5.PCR法およびサザンブロット法による遺伝子導入マウスの選抜
導入遺伝子が生殖細胞に入っているかどうかは、体毛色が白色のマウス、たとえばICRと交配し、得られた仔マウスの体毛色により容易に確認することができる。あるいはキメラ率の高いマウスは生殖細胞も導入遺伝子を含んでいることが期待されることから、できるだけキメラ率の高いマウスを交配し、得られた仔マウスの尾よりDNAを抽出してPCRをすることにより、導入遺伝子の有無を確認できる。また、PCRの代わりにサザンブロット解析により、より確実な遺伝子型を同定できる。
【0012】
6.導入遺伝子をもつマウスの系統樹立
ヘテロマウス(以下、Heマウス)同士を交配することによって、得られた仔マウスの中に導入遺伝子がホモに存在するラディキシン-KOマウスを得ることができる。ラディキシン-KOマウスは、Heマウス同士、Heマウスとラディキシン-KOマウス、ラディキシン-KOマウス同士のいずれの交配でも得ることができる。
ラディキシン-KOマウスのmRNAの発現の有無はノーザンブロット解析、RT-PCR、RNAseプロテクションアッセイ、in situ等により確認できる。またラディキシンのタンパク質の発現を免疫組織染色により確認することができる。さらに、CD43, CD44, ICAM-2等の膜蛋白質がアクチンフィラメントと結合する部位に、ラディキシンが存在しないこと免疫染色等により確認することも可能である。
【0013】
本発明は、更にラディキシンを欠失させた非ヒト動物(ラディキシン-KO動物)の使用も開示する。
ラディキシン-KO動物は、ラディキシンの機能を解析する目的で用いることができる。ラディキシン-KO動物を野生型動物と比較し、ラディキシン-KO動物の表現形質から、ラディキシンが野生型動物で果たしていた機能を解析することが可能である。
ラディキシンは、培養細胞ではエズリン・モエシンと同様に挙動し、ラディキシンに特有の機能を見出すことはできない。しかし、ラディキシン-KO動物では、ラディキシンが特異的に発現する組織あるいは部位で、ラディキシンの欠失がエズリン・モエシンにより代償されず、ラディキシンの欠失により引き起こされた機能異常を見出すことができる。また、ラディキシン-KO動物を用いれば、その表現形質から、ラディキシンが個体発生に於いて果たした機能も解析することができる。
その端的に現れた例として、本発明者らは、ラディキシンが細胆管の形成に重要な役割を果たすこと見出した。その発端は、ラディキシン-KOマウスが黄疸を引き起こすことを見出したことであり、詳細な検討の結果、ラディキシン-KOマウスでは細胆管の形成が不十分となり、本来なら胆管より排泄される胆汁(ビリルビンを含む)が、血中に流入したためであることが明らかとなった。ラディキシンの欠失により、細胆管が形成される細胞膜にビリルビンを分泌するmulti-drug resistance protein2(MRP2) が配向できなくなったためであると考えられる。
従って、ラディキシン-KOマウス、及び野生型マウスの表現形質を比較観察することにより、ラディキシンが果たす特有の機能を解析できることを示している。
また本発明は、ラディキシン-KO動物をラディキシンの欠失により起こる疾患のモデル動物として使用することも、開示するものである。ラディキシン-KO動物はラディキシンの欠失により、毛細胆管の形成も不十分であり、また毛細胆管にMRP2が配向せず、肝細胞で作られる胆汁が行き場を失って黄疸を引き起こす。従ってラディキシン-KO動物は、ラディキシンの欠失に伴うこれら疾患のモデル動物として、その病態の解析、治療法あるいは治療薬の開発に使用することができる。
更にラディキシン-KO動物の使用は、ラディキシンが欠失した疾患に限られず、肝細胞で作られる胆汁が行き場を失って黄疸を引き起こす他の疾患、例えば胆道閉塞症等のモデル動物としても使用できる。これら疾患は、胆汁が行き場を失う原因が異なるものの、胆汁が血液に流入する点では同様であり、それによって引き起こされる障害に対し、対処する方法を研究するためのモデル動物となり得る。従ってラディキシン-KO動物は、胆道閉塞症等、胆汁が行き場を失って黄疸が起こる疾患の病態の解析、治療法あるいは治療薬の開発のためのモデル動物として用いることが可能である。
本発明で明らかにした、ラディキシン-KO動物の、ラディキシンの細胆管形成に果たす機能の解析のための使用、及びラディキシン-KO動物の胆道閉塞症モデル動物としての使用は、本発明の例示であり、本発明はこの例に限られるものではない。
【0014】
【発明の効果】
本発明は、ラディキシンが機能的に発現していないラディキシン-KO動物の作製法、及びその特徴を開示するものである。本発明により、ラディキシンに特有の機能を解析することが可能となっただけでなく、ラディキシン-KO動物を、ラディキシンの欠失により起こる疾患のモデル動物として、あるいは胆汁が行き場を失って黄疸を引き起こす疾患のモデル動物として使用することが可能となった。
【0015】
【実施例】
[実施例1]ラディキシン遺伝子のクローニング
配列番号1に記載のマウスラディキシン遺伝子の塩基配列を基に、1090塩基のプローブとし、129SVJ由来のマウスゲノムライブラリー(λFIXII)から、ラディキシン遺伝子の一部を含むファージDNAクローンを単離した。
【0016】
[実施例2] ターゲティングベクターの構築
ターゲティングベクターはラディキシン遺伝子のエクソンにプロモーターを含まず、ネオマイシン耐性遺伝子、及びその上流にネオマイシン耐性遺伝子の発現を増強するエングレイルド-2遺伝子、インターナルリボソームエントリーサイトを持つターゲティングベクターを作成した。従って、ターゲティングベクターが適当な位置プロモーター配列の下流に導入された場合にのみ、ネオマイシン耐性が発現することとなる。
ファージDNAクローンをNdeIとKpnIで切断し、1.0Kbの5側の相同領域とした。同様に、SacIとEcoRVで切断することで7.4Kbの3側の相同領域を得た。Pbluescript SK-に5側の相同領域、ネオマイシン耐性遺伝子3側の相同領域の順に導入することで最終的にターゲティングベクターを作製した。(図1)。
【0017】
[実施例3] 相同組み換えES細胞の取得
ターゲティングベクターをXhoIで切断して直鎖上のDNA(1 mg/ml)とした。マウス(A129)胚性幹細胞(ES細胞)はJ1を用い、直鎖ターゲッテイングベクター(100μg /100μl)をES細胞(5x107 cells/400μl)へエレクトロポレーション(400 V、25μF、室温)によりトランスフェクションし、培養1日後よりG418(175μg/ml)を含んだ培地で7日間培養した。生じたES細胞コロニーの一部からDNAを抽出し、相同組み換えのみが起きているクローンをサザンブロット解析によって同定した。ターゲッテイングベクターにふくまれない部分の5側のゲノムDNAをプローブとして、サザンブロット解析を行ったが、野生型の10.3 Kbに対して相同組換えでは5.5 KbのDNA断片を検出することができた。
【0018】
[実施例4]ラディキシンKOマウスの作製
雌マウスに、妊馬血清性生殖腺刺激ホルモン(pregnant mare's serum gonadotropin,PMSG:セロトロピン: 帝国臓器, 東京)5国際単位とヒト絨毛性生殖腺刺激ホルモン(human chorionic gonadotropin, hCG:ゴナトロピン:帝国臓器,東京)2.5国際単位をそれぞれ腹腔内投与して、受精2.5日目に卵管―子宮還流法により8細胞期胚を得た。
得られた8細胞期胚へ、相同組み換えしたES細胞を倒立顕微鏡(ダイアフォトTMD:日本光学工業,東京)下で、マイクロマニピュレータ(粗動電動マニピュレータに懸架式ジョイスティック3次元油圧マイクロマニピュレータを装着:ナリシゲ,東京)、マイクロインジェクター(ナリシゲ,東京)、インジェクションピペットおよびホールディングピペットを用いてマイクロインジェクションした。また、インジェクション用ディッシュには、Falcon 3002(Becton Dickinson Labware)に培地5μlの液滴およびES細胞を浮遊させた液滴を作り、流動パラフィンを重層したものを用いた。
精管結紮雄マウスと正常雌マウスとの交配させて偽妊娠マウスを作成し、異なる3つの相同組換えES細胞クローンをマイクロインジェクションした操作卵を移植した。偽妊娠マウスを50mg/kg体重のペントバルビタールナトリウム(Nembutal:Abbott Laboratories)にて全身麻酔を行い、両けん部を約1cm切開して卵巣および卵管を露出し、実体顕微鏡下で卵巣嚢をピンセットで切開し卵管采を露出させ、次いで卵管あたり7〜8個の操作卵を卵管采に送り込んだ。その後、卵管および卵巣を腹腔に戻し両切開部を縫合した。
操作卵を移植し妊娠したマウスより、体毛色が黒い100%キメラマウスを出産させた。得られた100%キメラマウスの生殖細胞がES細胞由来であることを確認するために、ICRメスマウスと交配して産仔を確認したところ、全ての産仔の体毛色が黒色であり、キメラマウスの生殖細胞はES細胞由来であることが確認された。キメラマウスをC57BL/6と交配することによってHeマウスを得て、Heウス同士の交配によってXXKOマウスを得た。
得られたマウスの遺伝子型を、PCRによって生じるDNA断片のサイズに確かめた。マウスの尾を2-3mm程度切り、ProteinaseK 0.25 mg/ml)によって消化(55゜、一晩)する。以降、ゲノムDNAを常法に従って抽出し、蒸留水100-200μlにて溶解してPCRのテンプレートとした。エングレイルド-2遺伝子に含まれる配列(配列番号3)と、ラディキシン遺伝子の2つの部位にプライマーを設計し(配列番号4及び配列番号5)、PCRを行うと変異を起こした遺伝子は210bp(配列番号3、配列番号4)、野生型の遺伝子は800bp(配列番号3、配列番号5)のPCR産物を生じ、各個体の遺伝子型を同定した。
また必要に応じて、サザンブロット解析によっても遺伝子型を確認した。マウスの尾より抽出したゲノムDNAをEcoRVにより切断し、5.5Kbが検出されるXXKOマウスを得た。
ラディキシンKOマウスにおけるradixinの発現をウエスターンブロットにより確認した。各遺伝子型のマウス3匹の肝臓および腎臓から、3%ドデシル硫酸ナトリウム、1%メルカプトエタノールを含む溶液でタンパク質を抽出した。15%アクリルアミドゲルにて電気泳動を行い、抗ERM抗体TK89(Kondo, T. et al. J. Cell Biol. 139: 749758,1997)を用いてラディキシンの欠損を確認した。また、マウス肝臓凍結切片を使った免疫組織検査でもラディキシンは完全に欠損していた。
【0019】
[実施例5]ラディキシンKOマウスの血中ビリルビン濃度の測定
50mg/kg体重のペントバルビタールナトリウム(Nembutal:Abbott Laboratories)にて全身麻酔を行い、縦隔を開けて直視下に心臓の右心室から採血した。定法によって血清を分離して、血中ビリルビン濃度(生後8, 12, 16, 32週)、及び肝障害の指標としてALP・AST(生後16週)を測定した。
その結果図2に示す通り、ラディキシンKOマウス(-/-)では生後8週から総ビリルビン・複合型ビリルビンともwild type(+/+)と比較して高値を示した。また表1に示すように、16週後のALP・ASTは若干の高値を示し、軽度の肝障害が起きていることが示された。
【表1】
Figure 0004303907
また、電顕による観察によりラディキシンKOマウスでは微絨毛が形成されておらず、それに伴ってMRP2の量が減少していた。ラディキシンKOマウスで起きているビリルビン血症は、本来ならMRP2により胆管に排泄されるビリルビンが、血中へ流入した結果であると考えられた。
【0020】
【配列表】
Figure 0004303907
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【0021】
Figure 0004303907
Figure 0004303907
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【0022】
Figure 0004303907
【0023】
Figure 0004303907
【0024】
Figure 0004303907
【0025】
【図面の簡単な説明】
【図1】ラディキシンKOマウス作製に用いるターゲッティングベクター。
【図2】ラディキシンKOマウスにおける、総ビリルビン値及び複合型ビリルビン値の推移。

Claims (5)

  1. ラディキシンをコードする遺伝子を欠失させ、機能を持ったラディキシンを欠失させたマウス。
  2. ラディキシンをコードする遺伝子をtargeted disruptionにより欠失させた、請求項1に記載のマウス。
  3. 配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAを含んでなる遺伝子を欠失させた請求項1または2に記載のマウス。
  4. 請求項1〜のいずれか一項に記載のマウスの、ビリルビンによる障害の程度を測定する工程を含んで成る、該動物を高ビリルビン血症のモデル動物として使用する方法。
  5. 請求項1〜のいずれか一項に記載のマウスの肝障害を測定する工程を含んで成る、該動物を肝障害のモデル動物として使用する方法。
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