JP5344732B2 - ヒトtpo受容体の膜貫通部位を有するキメラtpo受容体導入ノックイン非ヒト哺乳動物 - Google Patents

ヒトtpo受容体の膜貫通部位を有するキメラtpo受容体導入ノックイン非ヒト哺乳動物 Download PDF

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Description

本発明は、ヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部を有するキメラTPO受容体導入ノックイン非ヒト哺乳動物に関する。詳しくは、非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位がヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部で置換されているノックイン非ヒト哺乳動物(以下、「本発明のノックイン非ヒト哺乳動物」と称することもある。)に関する。本発明はまた、該本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作製方法、該本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を利用した試験物質の薬理評価方法に関する。
トロンボポエチン(TPO)は、c−mpl遺伝子にコードされているタンパク質(TPO受容体)のリガンドとして知られているポリペプチドサイトカインである。TPOは、主に肝臓で産生され、骨髄内で働き、TPO受容体を介して幹細胞の巨核球前駆体への分化や増殖を刺激することにより血小板産生を亢進する。血小板は血液凝固に不可欠であり、それらの数が非常に少ない場合には、患者は破局的な出血により死の危険にさらされる。そのため、TPOは、種々の血液疾患治療、血小板減少性症状等の血小板数の異常を伴う血液疾患の治療、特に、特発性血小板減少性紫斑病の治療、癌若しくはリンパ腫の治療法としての化学療法、肝炎の治療、C型肝炎のインターフェロン療法又は放射線療法若しくは骨髄移植に由来する血小板減少性症状の治療において用途を有する可能性がある。
上記から、TPO模倣物として作用することにより血小板減少性症状等の治療を可能にする化合物(TPOミメティクス)を得ることが望まれ、TPO受容体を利用した研究により様々なTPOミメティクスの開発が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
これらのTPOミメティクスの薬理評価は、現在のところ、ヒト由来細胞やヒトTPO受容体を発現するマウス由来細胞等を用いて行われている(例えば、非特許文献1参照)。また、特許文献2ではマウス由来のBa/F3細胞内に、ヒトTPO受容体の細胞外領域とマウスG-CSF受容体の膜貫通領域並びに細胞内領域のキメラ受容体を発現させ、薬理評価を行っている。しかし、マウスやラット等モデル動物そのものを用いたin vivoにおける薬効評価試験等はほとんど行われていない。これは、該TPOミメティクスがヒトTPO受容体には反応するが、マウス、ラット、イヌ、カニクイザル等、実験動物として汎用される、非ヒト哺乳動物のTPO受容体には反応しないためである。
また、特許文献3には、カニクイザルのTPO受容体膜貫通部位のアミノ酸配列の一部をヒトTPO受容体の膜貫通部位と相同なアミノ酸に置換したTPO受容体が記載されている。但し、ヒト培養細胞で生物活性評価を行っており、トランスジェニック動物及びノックイン動物に関する記載は無い。ヒトTPO受容体膜貫通部位における、1アミノ酸の変異が低分子化合物による活性化に関与しているという結論を開示している。
国際公開第2005/014561号パンフレット 国際公開第02/06838号パンフレット 国際公開第02/057300号パンフレット Mol Cells. 、1997年、7巻、6号、pp.699-704 J. Biol. Chem.、1992年、267巻、pp.25668‐25671
本発明は、ヒトTPO受容体に特異的に反応する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)、例えば、TPOミメティクスの薬理評価を行うことができるモデル動物を容易に作出するために、非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位がヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部で置換されている非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位がヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部で置換されているノックイン非ヒト哺乳動物を提供することを目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、マウスTPO受容体の膜貫通部位がヒトTPO受容体の膜貫通部位で置換されているキメラTPO受容体遺伝子を用いてノックインマウスを作出し、該ノックインマウスを用いてヒトTPO受容体に特異的に作用する試験物質の薬理評価が可能であることを見出した。
まず、本発明者らは、CMVプロモーターにヒトTPO受容体をコードする遺伝子をつないだコンストラクトを作製し、マイクロインジェクション法にてトランスジェニックマウスの作出を試みたが、トランスジェニックマウスを得ることはできなかった。
次に、ヒトTPOプロモーター下流にヒトTPO受容体をコードする遺伝子をつないだコンストラクトを作製し、マイクロインジェクション法にてトランスジェニックマウスの作出を試みたが、得られたトランスジェニックマウスにおいて、TPOミメティクスの薬効が認められなかった。
次に、部位特異的突然変異導入法により、塩基配列の置換を行い、マウスTPO受容体の膜貫通部位でヒトと異なる4つのアミノ酸をコードする塩基配列の全てをヒト型に置換したキメラTPO受容体のコンストラクトを作製した。該コンストラクトを用いてマイクロインジェクション法にてトランスジェニックマウスの作製を試みた。得られたトランスジェニックマウスから採取した骨髄細胞は、培養条件下で低分子リガンドによる巨核球のコロニー形成が認められ、ヒト型TPO受容体の膜貫通部位を導入したマウス細胞が、低分子リガンドに応答することが確認できた。しかし、その応答性はTPOそのものによる応答性と比べると十分なものではなく、トランスジェニックマウスそのものを用いた薬効評価は困難であった。
そこで、本発明者らは、前記キメラTPO受容体遺伝子のコンストラクトを含むターゲティングベクターを用いて、ES細胞内での相同組換えを行い、ノックインマウスの作製を試みた。得られたノックインマウスにおいて、薬効評価試験を行い、ヒト型のTPO受容体にしか作用しないTPOの低分子リガンドの薬効を評価するためのモデル動物として極めて有用であることを明らかにした。
すなわち、本発明は、
(1)TPO受容体の膜貫通部位が、
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、ノックイン非ヒト哺乳動物、
(2)非ヒト哺乳動物がげっ歯類であることを特徴とする(1)に記載のノックイン非ヒト哺乳動物、
(3)非ヒト哺乳動物がマウスであることを特徴とする(1)又は(2)に記載のノックイン非ヒト哺乳動物、
(4)a)TPO受容体の膜貫通部位が
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、非ヒト哺乳動物TPO受容体のゲノムDNA領域をクローニングする工程、
b)相同組換えによりES細胞に工程a)で得られた該非ヒト哺乳動物TPO受容体遺伝子を導入する工程、
c)凝集法又は注入法により、受精卵とES細胞を融合させ、キメラ胚を作出する工程、
d)偽妊娠非ヒト哺乳動物の子宮角にキメラ胚を移植してキメラ非ヒト哺乳動物を作出する工程、
e)該キメラ非ヒト哺乳動物を交配する工程を含む、
(1)〜(3)のいずれかに記載のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法、
(5)f)TPO受容体の膜貫通部位が
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、非ヒト哺乳動物TPO受容体のゲノムDNA領域をクローニングする工程、
g)相同組換えにより初期化した非ヒト哺乳動物の体細胞又は生殖細胞に工程f)で得られた該非ヒト哺乳動物TPO受容体遺伝子を導入する工程、
h)g)で得られた細胞核を、非ヒト哺乳動物の受精卵又は未受精卵に核移植する工程を含む、
(1)〜(3)のいずれかに記載のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法、
(6)(1)〜(3)記載のノックイン非ヒト哺乳動物に由来する細胞、
(7)造血幹細胞、多能性幹細胞、巨核球前駆細胞、巨核球又は血小板である、(6)記載の細胞、
(8)(1)〜(3)記載のノックイン非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体に対する試験物質の薬理効果の評価方法、
(9)(1)〜(3)記載のノックイン非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体が関与する疾患の治療剤のスクリーニング方法。
(10)ヒトTPO受容体が関与する疾患が抗癌剤による血小板減少性症状である(9)記載の治療剤のスクリーニング方法。
(11)(6)または(7)記載の細胞を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体に対する試験物質の薬理効果の評価方法。
(12)(6)または(7)記載の細胞を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体が関与する疾患の治療剤のスクリーニング方法。
(13) ヒトTPO受容体が関与する疾患が抗癌剤による血小板減少性症状である(12)記載の治療剤のスクリーニング方法。


に関する。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、ヒトTPO受容体に作用する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)、特にヒトTPO受容体に特異的に作用する試験物質の薬理評価において有用である。該ノックイン非ヒト哺乳動物は、TPO受容体が関連する疾患、つまり、種々の血液疾患、血小板減少性症状等の血小板数の異常を伴う血液疾患の治療、特に、特発性血小板減少性紫斑病の治療、癌若しくはリンパ腫の治療法としての化学療法、肝炎の治療、C型肝炎のインターフェロン療法又は放射線療法若しくは骨髄移植に由来する血小板減少性症状の治療を目的とした治療薬のスクリーニングにおいて使用することができる。
本明細書において使用される用語は、特に言及する場合を除いて、当該分野で通常用いられる意味で用いられる。
「TPO受容体」は、サイトカインの一種であり、血小板の前駆体である巨核球の増殖分化刺激因子として働くTPOの受容体を意味する。TPO受容体は、細胞外領域、膜貫通部位及び細胞内領域からなる1回膜貫通型受容体である。例えば、ヒトTPO受容体のアミノ酸配列はGenBank Accession Number; AAB08424 とNP005364に、遺伝子配列はGenBank Accession Number;AH003655に記載されている。マウスTPO受容体のアミノ酸配列はGenBank Accession Number; AAI03514, AAI03516, NP_034953に、遺伝子配列はGenBank Accession Number;Z22657に記載されている。ラットTPO受容体のアミノ酸配列はGenBank Accession Number;XP_345573に、mRNA配列はGenBank Accession Number;XM_345572に記載されている。
本明細書において、「ヒトTPO受容体の膜貫通部位」とは、ヒトTPO受容体の一部であり、
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。
「1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列」とは、例えば、(A)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1又は2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは数(1〜3)個)のアミノ酸が置換したアミノ酸配列、(B)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1又は2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは数(1〜3)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(C)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1又は2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは数(1〜3)個)のアミノ酸が付加されたアミノ酸配列、(D)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1又は2個以上(好ましくは、1〜10個程度、好ましくは1〜5個程度、さらに好ましくは数(1〜3)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で挿入されたアミノ酸配列、又は(E)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質が挙げられる。アミノ酸配列が置換、欠失又は挿入されている場合、その置換、欠失又は挿入の位置としては、特に限定されない。但し、本明細書における「ヒトTPO受容体の膜貫通部位」は、置換、欠失、付加又は挿入によっても、該ポリペプチドを有するキメラTPO受容体が、非ヒト哺乳動物細胞においてヒトTPO受容体に作用する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)に対し細胞応答を示すTPO受容体であることを特徴とするポリペプチドである。
「非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位」とは非ヒト哺乳動物TPO受容体の一部であり、例えば、マウスのTPO受容体の膜貫通部位はGenBank Accession Number; AAI03514に記載のアミノ酸配列の482位のIleから503位のLeuまで、又はGenBank Accession Number; AAI03516に記載のアミノ酸配列の490位のIleから511位のLeuまで、又はGenBank Accession Number; NP_034953に記載のアミノ酸配列の483位のIleから504位のLeuまでに相当する。また、Blood First Edition Paper, prepublished online February 16, 2006; DOI 10.1182/blood-2005-11-4433のFigure.4に各種動物におけるTPO受容体膜貫通部位のアミノ酸配列を比較した図が記載されている。
「非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位がヒトTPO受容体の膜貫通部位、もしくはその一部で置換されているキメラTPO受容体」(以下、「本発明のキメラTPO受容体」と称することもある。)とは、非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位が
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、非ヒト哺乳動物TPO受容体を意味する。本発明のキメラTPO受容体は、非ヒト哺乳動物細胞においてヒトTPO受容体に作用する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)に対し細胞応答を示すTPO受容体であれば、膜貫通部位以外のアミノ酸配列は、上記GenBankに登録されている配列から1若しくは数個のアミノ酸が欠失、付加、挿入若しくは置換されたアミノ酸配列を有していてもよい。
「ノックイン非ヒト哺乳動物」とは、ノックイン法を用いて作出された非ヒト哺乳動物である。「ノックイン法」とは、発生研究用ツールとして開発された遺伝子置換技術の一種であり(ハンクスら、Science、vol.269、Aug.4、1995)、標的遺伝子不活化(ノックアウト法)の変法である。従来のトランスジェニックアプローチ(ランダム・トランスジェニック)では、遺伝子を初期発生段階において動物の胚細胞系に導入する。内在性遺伝子は正常のままの状態で、新たに、染色体DNAに外来遺伝子をコードするポリヌクレオチドを導入するが、その挿入位置を制御することは出来ない。このため、モデル動物では、内在性遺伝子と外来性遺伝子が共に発現している。導入された遺伝子が過剰発現している。挿入位置によっては、導入した遺伝子が発現しなかったり、内在性の他の遺伝子の発現を阻害したりすること等の欠点もある。ノックイン法の利点の1つは、相同組換え等の既知の方法を用いて、ゲノム上の特定部位に遺伝子を導入できることである。従って、ノックイン法を用いることにより、染色体DNAに存在する内在性遺伝子を外来性遺伝子に置換することが可能となる。つまり、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、相同的組換え等により、非ヒト哺乳動物のTPO受容体膜貫通部位の遺伝子座を、
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする遺伝子で置換することにより、該キメラTPO受容体を発現させる事を可能にした、非ヒト哺乳動物を意味する。
「非ヒト哺乳動物」とは、げっ歯類(マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ又はサル等が挙げられ、好ましくは、マウス、ラット、ウサギ、サル等が挙げられる。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、上記非ヒト哺乳動物において、該非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位が配列番号:1記載の配列であるノックイン非ヒト哺乳動物を意味する。該ノックイン非ヒト哺乳動物は、ヒトTPO受容体に作用する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)に対し、細胞応答を示すTPO受容体を発現する。そのため、ヒトTPO受容体に作用する薬物、特に、TPOミメティクス等、ヒトTPO受容体に特異的に作用する薬物を評価するために用いることができる。該ノックイン非ヒト哺乳動物は、TPO受容体が関連する疾患、つまり、種々の血液疾患、血小板減少性症状等の血小板数の異常を伴う血液疾患の治療、特に、特発性血小板減少性紫斑病の治療、癌若しくはリンパ腫の治療法としての化学療法、肝炎の治療、C型肝炎のインターフェロン療法又は放射線療法若しくは骨髄移植に由来する血小板減少性症状の治療を目的とした治療薬のスクリーニングにおいて使用することができる。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作出には、生殖系細胞、望ましくは受精胚の採取が可能であれば、全ての系統の非ヒト哺乳動物を使用することができる。例えば、実験動物として確立されている既知の非ヒト哺乳動物等を用いることができる。BDF1、BCF1、BALB/c−nu、BALB/c、129、FVB、AKR、NZW、HR−1、SKG、DBA、NOD、ICR、NZB、C3H、SCID及びC57BL/6等の系統のマウス、WBN、ACI、BN等の系統のラット等が挙げられる。現状では、ES細胞を使用せずにノックイン非ヒト哺乳動物を作製する事は、極めて困難である事から、ES細胞が樹立されている、BALB/c、129、FVB、DBA、C3H、C57BL/6系統のES細胞を用いて、ノックインマウスを作製する事が望ましい。これらのマウス系統は既にその性質がよく知られており、該系統を用いて作出された本発明のノックインマウスは、実験動物として極めて有用である。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法は、特に制限されず、公知のノックイン非ヒト哺乳動物作出方法を使用することができる。例えば、成書(八木健 編「ジーンターゲティングの最新技術」(株)羊土社、2000年4月15日、p.14−114)を参考に作出することができる。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法としては、例えば、TPO受容体遺伝子を有するES細胞を作成する工程を含む本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法等が挙げられる。
より具体的には、例えば、以下の方法を用いることができる。
a)TPO受容体の膜貫通部位が
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列ポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、非ヒト哺乳動物TPO受容体のゲノムDNA領域をクローニングする工程、
b)相同組換えによりES細胞に工程a)で得られた該非ヒト哺乳動物TPO受容体遺伝子を導入する工程、
c)凝集法又は注入法により、受精卵とES細胞を融合させ、キメラ胚を作出する工程、
d)偽妊娠非ヒト哺乳動物の子宮角にキメラ胚を移植してキメラ非ヒト哺乳動物を作出する工程、
e)該キメラ非ヒト哺乳動物を交配する工程を含む、
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法を使用することができる。
まず、対象とする非ヒト哺乳動物が有するTPO受容体をコードする領域を含む、ゲノミックDNAを単離し、膜貫通部位をヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部で置換する。非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位をヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部で置換する方法としては、化学合成、遺伝子工学的手法、突然変異誘発等の当分野で既知の任意の方法を用いることができ、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (2003)等に記載の方法に準じて行うことができる。詳しくは、非ヒト哺乳動物TPO受容体をコードする遺伝子及びヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部をコードする遺伝子を用いて公知の組換えDNA作製方法によって置換する方法を使用することができる。また、非ヒト哺乳動物TPO受容体をコードするDNAを用い、部位指定突然変異導入法により該膜貫通部位をヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部と同じ配列のアミノ酸に置換する方法も使用することができる。
上記で作製した非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位をヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部に置換し、その両端に相同組換えを行うための、マウスゲノム配列と相同な配列(ベクターアーム)を付加すると共に、相同組換えにより、目的とする膜貫通部位の置換が行われたES細胞を選択するために必要な、薬剤耐性遺伝子等を付加したDNAを、プラスミドベクター等のベクターに挿入し、ターゲティングベクターを作製する。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作出するためには、上記ターゲティングベクターを所望の非ヒト哺乳動物(例えば、マウス等)の胚性幹細胞(ES細胞)に導入し、細胞ゲノムDNAのTPO受容体遺伝子がターゲティングベクター中の本発明のキメラTPO受容体をコードする遺伝子配列に相同組換えされた細胞を選択する。このような遺伝子組換え細胞の選択は、例えば、ターゲティングベクターに薬剤耐性遺伝子としてネオマイシン耐性遺伝子を付加した場合には、G418を細胞培地に添加してネオマイシン耐性遺伝子を持たない非組換え細胞を除去することによって行うことができる。
上記で得られたES細胞からゲノミックDNAを抽出し、TPO受容体の膜貫通部位を含む領域をPCR法により増幅後にシークエンスを行う、又は特定の制限酵素によってDNA切断後、サザンハイブリダイゼーションによって検出されるDNA断片のサイズから組換え位置を調べることにより、所望の相同組換えを起こした細胞を選別することができる。
相同組換え法等により本発明のキメラTPO受容体遺伝子をノックインさせる元のES細胞としては、例えば、既に樹立された公知のES細胞を用いてもよく、また公知の方法〔Robertson, E. T., Teratocarcinomas and Embryonic Stem Cells: A PracticalApproach (ed. E.J. Robertson), IBL Press, Oxford. 等〕に準じて新しく樹立した細胞でもよい。また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常、雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに好ましい。
次に、本発明のキメラTPO受容体遺伝子を有するES細胞を用いて本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作製する。遺伝子相同組換えにより、非ヒト哺乳動物TPO受容体遺伝子が本発明のキメラTPO受容体遺伝子に置換された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚又は胚盤胞に注入し、キメラ胚を作製する(注入法)。注入法の代わりに、過排卵処理した後に雄非ヒト哺乳動物と交配した雌非ヒト哺乳動物の卵巣から採取した8細胞期の受精卵から透明帯を除去し、ES細胞と共培養することにより凝集させて作製した、キメラ胚を用いることもできる(凝集法)。作製したキメラ胚を偽妊娠雌非ヒト哺乳動物の子宮あるいは卵管内に移植し、仔を出産させる事によりキメラ非ヒト哺乳動物を得ることができる。作出されたキメラ非ヒト哺乳動物への遺伝子の導入の成否は仔から抽出したDNAのPCR法及びシークエンスによる遺伝子型判定により確認できるが、ES細胞を作出するために用いる系統とキメラ胚作製に用いる受精卵を提供する系統を適切に選択することにより、遺伝子の導入率(キメラ率)を生まれた仔の毛色や眼球の色で判定することも可能である。得られたキメラ非ヒト哺乳動物を通常の非ヒト哺乳動物と交配する事により得た産仔の中に、導入した本発明のキメラTPO受容体遺伝子を相同染色体の片側のみに持つヘテロ接合型のノックイン非ヒト哺乳動物を見出すことができる。ノックイン非ヒト哺乳動物の選抜には、仔から抽出したDNAのPCR法、サザンハイブリダイゼーション法、及びシークエンスによる遺伝子型判定の結果を用いることができる。
また、以下の方法を用いて本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作出することもできる。
f)TPO受容体の膜貫通部位が
(I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
(II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、非ヒト哺乳動物TPO受容体のゲノムDNA領域をクローニングする工程、
g)相同組換えにより初期化した非ヒト哺乳動物の体細胞又は生殖細胞に工程f)で得られた該非ヒト哺乳動物TPO受容体遺伝子を導入する工程、
h)工程g)で得られた細胞核を、非ヒト哺乳動物の受精卵又は未受精卵に核移植する工程を含む、
請求項1〜3のいずれかに記載のノックイン非ヒト哺乳動物の作出方法。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作出するためには、上記ターゲティングベクターを所望の非ヒト哺乳動物(例えば、マウス等)の初期化した体細胞に導入し、細胞ゲノムDNAのTPO受容体遺伝子がターゲティングベクター中の本発明のキメラTPO受容体をコードする遺伝子配列に相同組換えされた細胞を選択する。このような遺伝子組換え細胞の選択は、例えば、ターゲティングベクターに薬剤耐性遺伝子としてネオマイシン耐性遺伝子を付加した場合には、G418を細胞培地に添加してネオマイシン耐性遺伝子を持たない非組換え細胞を除去することによって行うことができる。
上記で得られた体細胞又は生殖細胞からゲノミックDNAを抽出し、TPO受容体の膜貫通部位を含む領域をPCR法により増幅後にシークエンスを行う、又は特定の制限酵素によってDNA切断後、サザンハイブリダイゼーションによって検出されるDNA断片のサイズから組換え位置を調べることにより、所望の相同組換えを起こした細胞を選別することができる。
相同組換え法等により本発明のキメラTPO受容体遺伝子をノックインさせる元の「初期化した体細胞又は生殖細胞」としては、例えば、既に樹立された公知の初期化した体細胞又は生殖細胞を用いてもよく、また公知の方法〔Science, 292: 740-743, 2001〕に準じて作製した細胞でもよい。
次に、本発明のキメラTPO受容体遺伝子を有する体細胞又は生殖細胞を用いて本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作製する。遺伝子相同組換えにより、非ヒト哺乳動物TPO受容体遺伝子が本発明のキメラTPO受容体遺伝子に置換された細胞の核を卵細胞、好ましくは受精胚に核移植し、偽妊娠マウスへ移植する事によりノックイン非ヒト哺乳動物を得ることができる。
「核移植」とは、核を除去した卵母細胞に他の細胞から取り出した核、又は核を含む細胞を挿入することを意味する。卵母細胞への核移植を行う方法については、任意の適切な方法、例えば、マイクロマニピュレーターを使用した、微小ガラスキャピラリーによる操作などを用いることができる。
作出されたノックイン非ヒト哺乳動物への遺伝子の導入の成否は仔から抽出したDNAのPCR法及びシークエンスによる遺伝子型判定により確認できる。
上記方法により作出されたノックイン非ヒト哺乳動物と、作出を希望する系統の非ヒト哺乳動物とを掛け合わせ、戻し交配を行うことによって、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物の特性を、異なった遺伝的背景や様々な病態を有する非ヒト哺乳動物へ導入する方法もある。例えば、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を、すでに生理学的、遺伝学的、生化学的な特性が良く調べられている近交系非ヒト哺乳動物、あるいは病態モデル非ヒト哺乳動物に戻し交配することにより、これらの非ヒト哺乳動物に「ヒトTPO受容体に特異的に作用する試験物質の薬理評価が可能である」という新たなノックイン非ヒト哺乳動物の有する形質を導入することが可能になる。
このようにして本発明のキメラTPO受容体遺伝子がノックインされている個体は、交配により得られた哺乳動物個体も該遺伝子がノックインされていることを確認した後、通常の飼育環境で継代飼育を行なうことができる。さらに、生殖系列の取得及び保持についても常法に従えばよい。即ち、本発明のキメラTPO受容体遺伝子を保有する雌雄の哺乳動物を交配することにより、該本発明のキメラTPO受容体遺伝子を相同染色体の両方に持つホモ接合型非ヒト哺乳動物を取得することができる。
本発明には、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体に対する試験物質の薬理効果の評価方法も含有される。本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、ヒトTPO受容体に作用する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)、特に、ヒトTPO受容体に特異的に作用する試験物質(例えば、TPOミメティクス)の薬理評価において使用することができる。該薬理評価は、当業者であれば、従来から行われている方法で行うことができる。該薬理評価は、例えば、実施例3に記載の方法を用いることができる。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物に試験物質、例えば、ヒトTPO受容体に作用する試験物質(アゴニスト又はアンタゴニスト)を投与し、該病態モデル動物の血圧、呼吸数、体重等の種々の身体的パラメーターの測定、病態や、外見、行動の観察、病理組織学的検討等を、試験物質を投与しない該病態モデル動物と比較して行なうことにより、該試験物質の該疾患に対する有効性及び副作用等の薬理評価を行なうことができる。また、この評価に基づき、該病態の治療薬として好ましい物質を選択することができる。特に、ヒトTPO受容体に対する結合量やアゴニスト又はアンタゴニストとしての活性が、該受容体の非哺乳動物のオーソログと比較して高いヒトTPO受容体に選択的な薬物では、通常の病態モデル動物を用いた薬理評価は困難であったが、上記の遺伝子改変病態モデル動物を用いることにより、薬理評価を行なうことが可能となる。本発明のノックイン非ヒト哺乳動物に誘発させる疾患としては、種々の血液疾患、血小板減少性症状等の血小板数の異常を伴う血液疾患、特発性血小板減少性紫斑病、癌、リンパ腫等があげられる。病態モデル動物の作製は、「マニュアル疾患モデルマウス」〔Molecular Medicine, 31 臨時増刊号, 中山書店(1994)〕、「病態動物モデル」〔続 医薬品の開発 2巻、廣川書店(1993)〕等に記載の方法を用いることができる。
また、本発明には、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物に由来する細胞も包含される。本発明のキメラTPO受容体の遺伝子を有する非ヒト哺乳動物細胞(好ましくは胚幹細胞)は、本発明のノックイン非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。該非ヒト哺乳動物細胞としては、例えば、造血幹細胞、多能性幹細胞、巨核球前駆細胞、巨核球、血小板等が挙げられる。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物から得られるES細胞を分化誘導することにより、さまざまな種類の細胞を得ることができる。分化の誘導方法としては、ES細胞を同種同系統の動物の皮下に移植することにより、様々な組織が混じりあった奇形腫瘍(テラトーマ)を誘導する方法(マニピュレーティング・マウス・エンブリオ第2版)、適当な条件でインビトロ培養することにより、内胚葉細胞、外胚葉細胞、中胚葉細胞、血液細胞、内皮細胞、軟骨細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経細胞、グリア細胞、上皮細胞、メラノサイト、ケラチノサイトに分化誘導する方法(Reprod. Fertil. Dev., 10, 31, 1998)をあげることができる。この分化後の細胞と、試験物質とを接触させ、試験物質非存在下での細胞と比較して、細胞内のセカンドメッセンジャーの上昇等、種々の細胞応答や細胞形態の変化等の薬理作用を調べることにより、試験物質の該細胞に対する薬理評価を行なうことができる。これらの方法によって、ヒトの生体から摘出しにくい細胞や少数しか存在しない細胞等に対する試験物質の薬理評価を行うことができる。該薬理評価は、例えば、実施例2に記載の方法を用いることができる。
ヒトTPO受容体に特異的に作用する試験物質としては、具体的には、例えば、国際公開第01/07423号パンフレット、国際公開第01/53267号パンフレット、国際公開第02/059099号パンフレット、国際公開第02/059100号パンフレット、国際公開第2005/014561号パンフレット、特願2005−373994、国際公開第02/062775号パンフレット、国際公開第03/062333号パンフレット、国際公開第04/029049号パンフレット、国際公開第2005/007651号パンフレット、国際公開第99/022733号パンフレット、国際公開第00/028987号パンフレット、国際公開第00/066112号パンフレット、国際公開第01/017439号パンフレット、国際公開第01/021180号パンフレット、国際公開第01/034585号パンフレット、国際公開第01/039773号パンフレット、国際公開01/089457号パンフレット、国際公開第02/085343号パンフレット、国際公開第03/098992号パンフレット、国際公開第03/103686号パンフレット、国際公開第04/054515号パンフレット、国際公開第05/041867号パンフレット、国際公開第99/022734号パンフレット、国際公開第00/035446号パンフレット、国際公開第02/049413号パンフレット、国際公開第05/118551号パンフレット、国際公開第04/016264号パンフレット、国際公開第04/033433号パンフレット、国際公開第04/108683号パンフレット、特開2003−238565、特開平11−001477、特開平11−152276、特開2001−097948、国際公開第01/092211号パンフレット、国際公開第2006/017822号パンフレット、米国特許第5384331号明細書に記載の化合物等が挙げられる。本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、これらの化合物のインビボ薬効評価に使用することができる。
上記薬効評価により選択された化合物は、TPO受容体が関連する疾患、つまり、種々の血液疾患、血小板減少性症状等の血小板数の異常を伴う血液疾患の治療、特に、特発性血小板減少性紫斑病の治療、癌若しくはリンパ腫の治療法としての化学療法、肝炎の治療、C型肝炎のインターフェロン療法又は放射線療法若しくは骨髄移植に由来する血小板減少性症状の治療を目的とした治療薬として使用することができる。
以下に、本発明の実施例を示す。以下実施例は、例示のために提供され、そして限定するためではない。遺伝子操作的手法として、特に断らない限りMolecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons (2003)に記載された方法を用いた。
参考例1
BaF3細胞へのTPO受容体遺伝子導入と発現確認
ヒト及びマウスTPO受容体遺伝子は、cDNAライブラリーから既知のmRNA配列情報を基に設定したPCRプライマーを用いてPCR法によりクローニングし、動物細胞発現プラスミドの強制発現(CMV)プロモーターの下流に組み込んだ。構築した動物細胞発現プラスミドをマウス白血球由来の培養細胞であるBaF3細胞にトランスフェクションし、薬剤耐性マーカーを用いた選択により、受容体遺伝子が導入されたBaF3細胞を単離した。
TPO受容体遺伝子が導入されたBaF3細胞からRNAを抽出し、RT-PCRで導入した遺伝子のmRNA発現を確認した。
参考例2
TPO受容体遺伝子を導入したBaF3細胞を用いた、TPOミメティクスのスクリーニング
ヒト型TPO受容体遺伝子を導入したBaF3細胞がTPO低分子リガンドに反応して増殖する活性を指標として、ハイスループットスクリーニングを実施し、ヒット化合物を得た。このようにして得られた化合物は国際公開第01/07423号パンフレット、国際公開第01/53267号パンフレット、国際公開第02/059099号パンフレット、国際公開第02/059100号パンフレット、国際公開第2005/014561号パンフレットに記載されている。以下の参考例、実施例においては、上記特許文献に記載された化合物を用いた。このようにして得られた化合物は、マウスのTPO受容体には反応しなかった。
参考例3
CMVプロモーター下流にヒトTPO受容体遺伝子cDNAを繋いだコンストラクトを作製、マイクロインジェクション法にてトランスジェニックマウスを作製したが、Tgマウスは得られなかった。
参考例4
ヒトTPOプロモーター下流にヒトTPO受容体遺伝子cDNAを繋いだコンストラクトを作製、マイクロインジェクション法にてトランスジェニックマウスを作製した。
Founderマウスから、Tgマウス3系統が樹立された。3系統共に、系統化を開始した初期の段階では、骨髄細胞におけるヒト型TPO受容体遺伝子mRNAの発現が観察されたが、継代を重ねた後では、系統1及び系統4のTgマウスにおけるヒト型TPO受容体遺伝子mRNAの発現は認められなかった。系統2においては、調べた同腹の3個体及び親の異なる6個体全てヒト型TPO受容体遺伝子mRNAの発現が認められた事から、この系統を用いて、in vitro及びin vivoの薬効試験を実施したが、参考例2で得られた化合物による血小板あるいは、巨核球の増殖促進作用は認められなかった。
参考例5
ヒト・マウスキメラTPO受容体遺伝子を導入したトランスジェニックマウスの作出と作出したマウスを用いた薬効試験
文献情報(Ziegler S, et al., Blood. 2002; 100(3): 1072-4.)を基に、プロモーター活性を有すると推測される、マウスTPO受容体遺伝子上流約2Kbpの領域を、マウスゲノムDNAをテンプレートとしてPCR によりクローニングした。cDNAライブラリーからPCRによりクローニングしたマウスTPO cDNA配列を基に、部位特異的突然変異導入法(Kunkel TA., Proc Natl Acad Sci U S A., 1985; 82(2):488-92.)を用いて塩基配列の置換を行い、マウスTPO受容体の膜貫通部位でヒトと異なる4つのアミノ酸をコードする塩基配列の全てを、ヒト型に置換した。哺乳動物細胞発現ベクターであるpCIベクター(プロメガ)にプロモーター領域と膜貫通部位をヒト型に置き換えたマウスTPO受容体cDNAを組み込み、大腸菌に形質転換を行った後に培養を行った。培養した大腸菌からプラスミドDNAを抽出し、Hind III及びPvu I で切り出して直鎖状にした約4.4 kbpのコンストラクトを精製後、C57BLマウス初期胚の雄性前核にマイクロインジェクションした。マイクロインジェクションした胚を仮親マウスの子宮に移植し、得られた産仔の尾部組織から抽出したゲノムDNAを用いて、PCR法及びゲノミックサザンハイブリダイゼーション法により、遺伝子型を判定してTgマウスを得た。得られた17匹のfounderマウスから最終的に13系統のTgマウスラインを樹立し、薬効試験に用いた。樹立したTgマウス系統におけるTg個体は、複数コピーのヒト型TPO受容体遺伝子を保有しており、そのコピー数は確立した系統間で異なっていた(図1)。さらに、作製したTgマウスの大腿骨より骨髄細胞を採取し、抽出したRNAを用いてRT-PCRによりmRNAの発現解析を行った。RT-PCRで得られた膜貫通部位を含むcDNAを、制限酵素(Esp I)で切断することにより、ヒト型、マウス型mRNAの区別が可能となるが、確立した全ての系統でヒト型のTPO受容体mRNAが発現している事を確認した(図2)。
系統が確立されたTgマウスから採取した骨髄細胞を用いて、in vitro の培養条件下でヒトTPOあるいは参考例2で得られた化合物Aによる巨核球への分化誘導を行うcolony forming unit (CFU)アッセイを行い、TPO低分子リガンド(化合物A)への細胞の応答性について検討を行った。その結果、対照となる野生型マウスの骨髄細胞を用いた場合には、化合物Aによるコロニー形成はほとんど認められなかったのに対して、9系統のTgマウスでは化合物Aによるコロニー形成が認められ、ヒト型TPO受容体の膜貫通部位を導入したマウス細胞が、TPO低分子リガンドに応答する事が確認できた。しかしながら、その応答性はTPOそのものによる応答性と比べると十分なものではなかった(図3)。
in vitro でのCFUアッセイで化合物Aへの応答性が最も高かった系統2のTgマウスを用いてin vivoにおけるTPO低分子リガンドの薬効評価を行った。化合物A 5mg/kg を1日1回、2週間連続で皮下投与し、末梢血中の血小板数を計測したが血小板数の顕著な上昇は観察されす、この投与量では化合物Aの薬効を確認することが出来なかった(図4)。
マウスTPO受容体遺伝子の膜貫通部位をヒト型に置換したノックインマウスの作出
参考例5で作製したトランスジェニックマウスにおいて、in vivoでの薬効評価が困難であった事を受けて、相同組換えの技術により、マウスゲノム上でTPO受容体遺伝子をコードしている核酸配列のうち、膜貫通部分に相当する配列のみををヒト型の遺伝子に置き換えたノックインマウスを作製し、薬効試験を行った。ノックインマウスの作製方法については、成書(八木健 編 「ジーンターゲティングの最新技術」(株)羊土社、2000年4月15日、p.14−114)や総説等で広く紹介されており、本マウスについてもこれらの公知の技術を用いて作製された。
ターゲティングベクターの構築
NCBIやEBI等の公的なデータベースから入手可能なマウスゲノム配列のデータから、マウスTPO受容体遺伝子周辺の配列データを入手して、ターゲティングベクターの設計を行った。公的なデータベースから得た情報を元に、マウスTPO受容体遺伝子の膜貫通部位であると予想される領域がExon10に含まれる事を確認した(GenBank Accession Number; Z22657)。
参考例5で作製したトランスジェニックマウスの作製に使用した、DNAコンストラクトにおいては、すでにExon10に含まれるマウスTPO受容体遺伝子の膜貫通部位においてヒト型の遺伝子配列と異なる4つのアミノ酸配列をコードする核酸配列が、ヒト型に置換されているので、このコンストラクトから、Exon10を含む領域を切り出し、組換え体ES細胞の選択に利用するLoxP配列で挟んだNEO耐性遺伝子の配列を挿入すると共に、その両端に相同組換えに用いる、マウスゲノム配列と相同な左右のアーム部分をマウスゲノム配列からPCRによりクローニングし、結合した。さらに、ターゲティングベクターが染色体上にランダムに挿入された場合には、得られた組換えES細胞が死滅する様に、チロシンキナーゼ遺伝子の配列を、右側アーム部分の末端に付加し、ターゲティングベクターを構築した(図5)。構築したターゲティングベクター配列を、制限酵素サイトを利用したライゲーションにより、pBluescript SK+ ベクターに組み込み、ターゲティングベクターコンストラクトプラスミドを作製した(図6)。
作製したプラスミドを大腸菌に形質転換し、培養した後にプラスミドを抽出し、制限酵素(Not I)で切断した直鎖状のターゲティングベクターを精製し、ES細胞へのエレクトロポレーションに用いた。
ES細胞での相同組換えと組換えESクローンの単離及びCreベクターによる薬剤耐性遺伝子(NEO)配列の除去
C57BLマウス由来のES細胞にエレクトロポレーションでターゲティングベクターを導入し、ネオマイシンを添加したES細胞用培地で培養を行う事により、得られた273クローンを単離し、さらに培養を行いコロニーを得た。コロニーの一部からゲノミックDNAを抽出し、PCR及びサザンハイブリダイゼーションにより、目的とするTPO受容体遺伝子領域において正しく相同組換えが起こっていると考えられるクローンを選択した。その結果、28クローンについて相同遺伝子組換えが認められた。相同遺伝子組換えを確認した8クローンについて、膜貫通部位のヒト型配列挿入領域をPCRにより増幅し、シークエンスを行った結果、全てのクローンでヒト型の配列が確認された。この中から1クローンを選んでエレクトロポレーションによるCreベクターの導入を行い、ランダムにピックアップした118クローンについて、Neo耐性遺伝子削除領域でのPCRによる解析を行い、79クローンのNeo耐性遺伝子が削除されたクローンを単離した。この中から6クローン、対照としてNeo耐性遺伝子が削除されていない3クローンを選び、サザンハイブリダイゼーションによる解析並びに、ランダムインテグレーションの有無を確認する解析を行った。その結果、Creベクターの導入によりNeo耐性遺伝子領域が削除され、Creベクターによるランダムインテグレーションが起きていない4クローンが単離された。
凝集法によるキメラ胚の作製とキメラマウスの作製
Neo耐性遺伝子領域が削除され、Creベクターによるランダムインテグレーションが起きていない4クローンのES細胞から1クローンを選択し、ICRマウス8細胞期胚648個とES細胞を凝集させてキメラ胚を作製した。翌日に、発育状況が良好な胚を32匹の偽妊娠マウスの子宮角上部へ移植した。胚を移植した偽妊娠マウス22匹から46匹の産仔を得て、眼色から30匹のマウスがES細胞由来の体細胞を有するキメラマウスであることが判明した。その後これらのマウスを4週齡まで飼育し、体毛の毛色から、ES細胞由来の体細胞を有する割合がほぼ100%であると推定されるキメラ雄マウス6匹を得た。
野生型マウスとキメラマウスの交配によるヘテロマウスの作製とgermline transmissionの確認
作製したキメラ雄マウス6匹をそれぞれC57BL/6雌マウスと交配して産仔を得た。産仔の遺伝子型判定をPCR及びサザンハイブリダイゼーションで行ったところ、ほぼ半数がヒト型TPO受容体を片側のアリルに持つ、ヘテロマウスであることが確認された。また、6匹のキメラマウス全てについてヘテロマウスが得られた事から、ES細胞由来遺伝子のgermline transmissionが確認できた。
ヘテロマウス同士の交配によるホモマウスの作製
キメラ雄マウスとC57BL/6雌マウスと交配で得られたヘテロマウスの雌雄を交配し、産仔を得た。得られた産仔の遺伝子型は、野生型マウス:ヘテロマウス:ホモマウスの割合がほぼ1:2:1の割合で得られ、遺伝学的に予想される割合と一致した。得られたホモマウスは見かけ上は野生型マウスとの違いは観察できず、健康状態も良好であった。また、ホモマウス同士の交配により、ホモマウスの産仔が得られることから、生殖機能に関してもホモマウスには異常が無いことが確認された。
マウスTPO受容体遺伝子の膜貫通部位をヒト型に置換したノックインマウスを用いたin vitroでの薬効評価試験
マウスTPO受容体の膜貫通部位をヒト型に置換したノックインヘテロマウス(以下、h−TPO KIヘテロマウスと略す)大腿骨より骨髄細胞を採取し、赤血球を除去後、ナイロンメッシュを通過させ、BIT9500培地(StemCell Technologies社製)に2.2x10cells/mlになるよう調整した。このh−TPO KIヘテロマウスの骨髄細胞から巨核球を分化させるために、MegaCultTM-C(StemCell Technologies社製)を用いて1ウェル当り50000cellsとなるように細胞を調製し、更に被検化合物を添加して8日間培養した。形成されたマウス巨核球のコロニーはMegaCultTM-Cに添付の説明書に準じて脱水、固定(冷アセトン、10分)した後、巨核球の持つアセチルコリンエステラーゼ活性を測定する為の染色を行い、マウス巨核球コロニーを検出した。顕微鏡下でアセチルコリンエステラーゼ活性を有する巨核球細胞3個以上からなるコロニー数をカウントした。陽性対照としてマウス及びヒトのTPOを用い、マウスTPO受容体とは反応しないが、ヒトTPO受容体とのみ反応するヒトTPO(hTPO)様活性を有する化合物A(参考例2で得られた化合物)を被検化合物として用いた。
野生型マウス骨髄から採取した細胞を用いた場合には、化合物Aによる巨核球への分化誘導はほとんど起こらず、コロニーは形成されなかったが、hTPO KIヘテロマウスの骨髄細胞は化合物Aにより、巨核球への分化が誘導され、化合物Aを0.2μM培地に添加することにより、ほぼhTPOと同数の巨核球コロニーが形成された(図7)。この結果より、h−TPO KIヘテロマウスはマウスTPO受容体とは反応せず、ヒトTPO受容体にのみ反応する、hTPO様活性を有する低分子リガンドの薬効評価に非常に有用なモデルとなる事が証明された。
マウスTPO受容体遺伝子の膜貫通部位をヒト型に置換したノックインマウスを用いたin vivoでの薬効評価試験
実施例2に示した様に、h−TPO KIヘテロマウスがin vitroでの薬効評価試験に有用である事が確認されたので、化合物B(参考例2で得られた化合物)を用いたin vivoでの薬効試験を行った。
11週齡のh−TPO KIヘテロ雌マウスを試験に用い、対照群としては9週齡の野生型雄マウスを用いた。化合物の投与を行う前に、採血に伴う血小板数の変動の有無を、2週間の観察期間中、1週間に1回の採血を行い、末梢血中の血小板数を測定して調べた。採血は尾静脈から行い、採取した約50μlの血液を10mM EDTA-PBSにて5倍希釈し、Sysmex K-4500にて血小板数を測定した。化合物Bの投与量は25mg/kg に設定し、朝と夕方に1日2回(休日は1回)経口投与投与した。化合物Bの投与は2週間の連続投与とし、投与開始後3日目、1週間後、2週間後、3週間後に採血を行い、末梢血中の血小板数を測定した。
化合物Bの投与前2週間の観察期間において、マウスの末梢血小板数はほぼ一定の値を示した事から、1週間に1回の採血は血小板数にほとんど影響しない事が確認できた。一方、化合物Bの投与を行った場合には、投与開始後3日目でh−TPO KIヘテロマウスの血小板数は、Vhicle投与群及び野生型マウスへの化合物B投与群と比較して、約1.5倍に上昇し、投与開始1週間後には対照群の3.3倍、2週間後には6.6倍にまで上昇した。2週間の連続投与を終了した1週間後には、化合物Bを投与したh−TPO KIヘテロマウスの血小板数が対照群と比較して約2.6倍にまで低下して来る事から、化合物B投与による血小板数の上昇が可逆的である事が確認された(図8)。
以上の結果から、h−TPO KIマウスは、片側のアリルのみがヒト型のTPO受容体に置換されているヘテロマウスであっても、ヒト型のTPO受容体にしか作用しないTPOの低分子リガンドに良く応答し、末梢血中の血小板数の顕著な上昇を示す事が確認された。したがって、h−TPO KIマウスはヒト型のTPO受容体にしか作用しないTPOの低分子リガンドの薬効を評価するための動物モデルとして、極めて有用である事が示唆された。なお、本ノックインマウスのホモ接合型個体では、ヘテロ接合型個体と比較して、さらに低用量のTPO低分子リガンドに反応し、薬効評価を行える事が示唆されている。
マウスTPO受容体遺伝子の膜貫通部位をヒト型に置換したノックインマウスを用いたin vivoでの抗癌剤投与薬効評価試験
実施例3に示した様に、h−TPO KIヘテロマウスがin vitroでの薬効評価試験に有用である事が確認されたので、化合物C(参考例2で得られた化合物)を用いたin vivoでの抗癌剤投与薬効試験を行った。
12週齡のh−TPO KIホモ雌マウスを試験に用いた。抗癌剤はパラプラチン注射液(カルボプラチン注射液、CBDCA ブリストル・マイヤーズ株式会社)を用いた。採血は眼窩静脈から行い、採取した約50μlの血液を10mM EDTA-PBSにて5倍希釈し、Sysmex K-4500にて血小板数を測定した。試験開始日にパラプラチン注射液114 mg/kgを尾静脈から投与した。パラプラチン注射液投与4時間後にVhicle(0.5%メチルセルロース水溶液)ならびに化合物Cを1日1回、14日間連日経口投与した。投与開始日、投与開始後4日目、7日目、11日目、14日目に採血を行い、末梢血中の血小板数を測定した。
パラプラチン注射液投与後のビークル投与群の血小板は投与4日目から減少し始め、投与11日目に投与前の8.7%まで減少し、その後回復傾向を示した。このことから、パラプラチン注射液を投与したh−TPO KIマウスは、ヒトにおける抗癌剤による血小板減少性症状を反映したモデルであることが確認された。
このマウスに化合物Cを投与した群では、化合物投与群の血小板数は,投与7日目に最低値を示したが、その後速やかに回復し、14日間投与によって投与前の52%まで回復した。ビークル群の血小板増加率が最低値を示した投与11日目では、血小板数、血小板増加率、いずれの平均値においても、化合物C投与群が有意に高値を示していた(図9)。
以上の結果から、このモデルは血小板減少性症状モデルとして有意義な病態モデルであり、こうした病態における血小板減少症治療薬の薬効評価を可能とするスクリーニング方法を提供する手段としても、極めて有用である事が示された。
本発明のノックイン非ヒト哺乳動物は、非ヒト哺乳動物TPO受容体の膜貫通部位がヒトTPO受容体の膜貫通部位又はその一部で置換されているキメラTPO受容体遺伝子が導入されており、ヒトTPO受容体に特異的に反応する試験物質、例えば、TPOミメティクスの薬理評価において使用することができる。該ノックイン非ヒト哺乳動物は、TPO受容体が関連する疾患、つまり、種々の血液疾患、血小板減少性症状等の血小板数の異常を伴う血液疾患の治療、特に、特発性血小板減少性紫斑病の治療、癌若しくはリンパ腫の治療法としての化学療法、肝炎の治療、C型肝炎のインターフェロン療法又は放射線療法若しくは骨髄移植に由来する血小板減少性症状の治療に対する治療薬のスクリーニングにおいて使用することができる。
サザンハイブリダイゼーションによるヒト・マウスキメラTPO受容体導入トランスジェニックマウス各系統の導入遺伝子コピー数解析を示す図である。マウス尾から抽出したゲノムDNA約15μgをSph I で切断し、約8μgを泳動。ナイロンメンブレンに転写後、ビオチン標識した410bpのPCRプローブをハイブリダイズさせ検出した。 ヒト・マウスキメラTPO受容体導入トランスジェニックマウス骨髄細胞におけるヒト型mRNAの発現を示す図である。 ヒト・マウスキメラTPO受容体導入トランスジェニックマウス骨髄細胞を用いたin vitro CFUアッセイの結果を示す図である。系統2, 4, 9, 10のTgマウスは評価化合物Aに反応し、巨核球への分化が誘導されたが、その数は最も多かった系統2でも、mTPO投与群と比較して約1/20の増加に止まっていた。 ヒト・マウスキメラTPO受容体導入トランスジェニックマウスを用いたin vivo薬効評価の結果を示す図である。系統2のTgマウスに2週間に渡り、化合物A 5mg/kg を皮下投与し、末梢血中の血小板数を計測した。 ノックインマウス作製に用いたターゲティングベクターの概要を示す図である。 ノックインマウス作製に用いたターゲティングベクターコンストラクトプラスミドの概要を示す図である。 ノックインへテロマウスの骨髄細胞を用いたin vitro CFUアッセイの結果を示す図である。 ノックインへテロマウスを用いたin vivoでの薬効評価試験の結果を示す図である。 抗癌剤投与を行ったノックインホモマウスを用いたin vivoでの薬効評価試験の結果を示す図である。
配列番号:1は、ヒトTPO受容体の膜貫通部位のアミノ酸配列を示す。

Claims (12)

  1. a)TPO受容体の膜貫通部位が
    (I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
    (II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、マウスTPO受容体のゲノムDNA領域をクローニングする工程、
    b)相同組換えによりES細胞に工程a)で得られた該マウスTPO受容体遺伝子を導入する工程、
    c)凝集法又は注入法により、受精卵とES細胞を融合させ、キメラ胚を作出する工程、
    d)偽妊娠マウスの子宮角にキメラ胚を移植してキメラマウスを作出する工程、
    e)該キメラマウスを交配する工程を含む、
    工程によって得られたヒトTPO受容体に作用する試験物質に対し細胞応答を示すノックインマウス。
  2. f)TPO受容体の膜貫通部位が
    (I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
    (II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドである、マウスTPO受容体のゲノムDNA領域をクローニングする工程、
    g)相同組換えにより初期化したマウスの体細胞又は生殖細胞に工程f)で得られた該マウスTPO受容体遺伝子を導入する工程、
    h)g)で得られた細胞核を、マウスの受精卵又は未受精卵に核移植する工程を含む、
    工程によって得られたヒトTPO受容体に作用する試験物質に対し細胞応答を示すノックインマウス。
  3. a)TPO受容体の膜貫通部位のみが
    (I)配列番号:1記載のアミノ酸配列を含むポリペプチド、又は
    (II)配列番号:1記載のアミノ酸配列において、8番目のヒスチジン以外の1〜3個のアミノ酸が置換、欠失、付加若しくは挿入されたアミノ酸配列を含むポリペプチドに置換されている請求項1または2記載のノックインマウス。
  4. TPO受容体の片側のアリルのみが置換されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のノックインマウス。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のノックインマウスに由来する細胞。
  6. 造血幹細胞、多能性幹細胞、巨核球前駆細胞、巨核球又は血小板である、請求項記載の細胞。
  7. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のノックインマウスを用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体に対する試験物質の薬理効果の評価方法。
  8. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のノックインマウスを用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体が関与する疾患の治療剤のスクリーニング方法。
  9. ヒトTPO受容体が関与する疾患が抗癌剤による血小板減少性症状である請求項記載の治療剤のスクリーニング方法。
  10. 請求項5または6記載の細胞を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体に対する試験物質の薬理効果の評価方法。
  11. 請求項5または6記載の細胞を用いることを特徴とする、ヒトTPO受容体が関与する疾患の治療剤のスクリーニング方法。
  12. ヒトTPO受容体が関与する疾患が抗癌剤による血小板減少性症状である請求項11記載の治療剤のスクリーニング方法。
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