JP2008278763A - トランスジェニック非ヒト動物 - Google Patents

トランスジェニック非ヒト動物 Download PDF

Info

Publication number
JP2008278763A
JP2008278763A JP2007123514A JP2007123514A JP2008278763A JP 2008278763 A JP2008278763 A JP 2008278763A JP 2007123514 A JP2007123514 A JP 2007123514A JP 2007123514 A JP2007123514 A JP 2007123514A JP 2008278763 A JP2008278763 A JP 2008278763A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nhe1
activated
human animal
amino acid
animal
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2007123514A
Other languages
English (en)
Inventor
Hiroko Iwata
裕子 岩田
Tomoshige Nishitani
友重 西谷
Shigeo Wakabayashi
繁夫 若林
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Health Sciences Foundation
Original Assignee
Japan Health Sciences Foundation
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Health Sciences Foundation filed Critical Japan Health Sciences Foundation
Priority to JP2007123514A priority Critical patent/JP2008278763A/ja
Publication of JP2008278763A publication Critical patent/JP2008278763A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Abstract

【課題】本発明は、活性化型NHE1を心臓に発現させ、心肥大モデルまたは心不全モデルとして機能しうる新規非ヒト動物モデルを提供することを課題とする。
【解決手段】自己阻害ドメインを欠失するアミノ酸配列からなる活性化型NHE1を発現させてなる非ヒトトランスジェニック動物により、心肥大モデルまたは心不全モデルとして機能しうる新規非ヒト動物モデルを提供しうる。自己阻害ドメインは、例えばヒトNHE1のうち第637−656位のアミノ酸に該当する部分である。
【選択図】図2

Description

本発明は、心肥大または心不全の非ヒトモデル動物に関する。より具体的には、活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物の作製による心肥大または心不全の非ヒトモデル動物に関する。
細胞膜を介するCa2+、H+、Na+などのイオン輸送を担うトランスポーターやチャンネルは、循環器系組織に極めて重要で、その異常は重篤な疾患を招く。Na+/H+交換輸送体(Na+/H+ Exchangers:NHE)は、細胞内pH、Na+濃度、細胞容積の制御、および腎臓・小腸などの上皮細胞におけるNa+・HCO3-吸収に関わる主要な輸送体ファミリーである(図1参照)。NHEはイオン代謝が関与する多様な細胞機能に重要であることから、心臓病や癌など様々な疾患の成因に関与する。NHE1は、細胞の恒常性を保つ重要なイオントランスポーターであり、ホルモンやストレッチ刺激に反応して活性化されることも知られており、虚血性心疾患や慢性心臓疾患に関与するとりわけ重要なタンパク質である。
近年、高血圧、糖尿病等に起因する心肥大や心不全において、NHE1が異常亢進していること、NHE1の特異的阻害剤(例えばカリポライドなど)により、心肥大、心筋繊維化が抑制されること等から、NHE1の異常な活性化と心肥大・心不全発症との関連が示唆されている(図1)。心肥大は、一般に受容体刺激などにより、細胞内のCa2+濃度が上昇し、カルシニュリンの活性化を介してその下流のシグナルにより引き起こされると考えられているが、細胞内Na+上昇に起因する心肥大発症説はいまだ立証されていない。
各種ホルモンのリセプターを介して間接的にNHE1が活性化される心肥大・心不全モデル動物が報告されている(非特許文献1、2)。例えば、β−リセプター心臓特異的高発現トランスジェニックマウスや、ANPレセプターのノックアウトマウスでは、心肥大や心不全が観察されるが、これらのマウスでは間接的にNHE1が活性化される。これらの報告において、NHE1の活性化が、心肥大や心不全の成因として病態的に重要であることが示唆される。
NHE1はリセプターを介して間接的にNHE1が活性化される他、NHE1を構成するアミノ酸残基のうち、カルモデュリン(CaM)結合ドメインである第637−656位の領域、即ち自己阻害ドメインを欠損させることによりNHE1が活性化されることが報告されている(非特許文献3〜5)。しかし、自己阻害ドメインを欠損させることによる恒常的に活性化させたNHE1の機能と、心肥大や心不全との関係について報告されていない。
NHE1を構成するアミノ酸残基を変異させることにより、活性化させたNHE1を発現させたトランスジェニックマウスについて報告がある(非特許文献6)。しかしながら、得られたトランスジェニックマウスは、心疾患モデルとして使用できるほどの心機能の違いは認められていない。恒常的に活性化させたNHE1を心筋特異的に発現させ、心肥大・心不全を発症したマウスはこれまで存在しなかった。
Circ. Res. 90:814-819, 2002 Circulation 112:2307-2317, 2005 J. Biological Chemistry 269:13703-13709, 1994 J. Biological Chemistry 269:13710-13715, 1994 J. Biological Chemistry 270:26460-26465, 1995 Articles in Press. Am J Physiol Heart Circ Physiol (January 5, 2007).doi:10.1152/ajpheart.00855.2006
本発明は、活性化型NHE1を心臓に発現させ、心肥大モデルまたは心不全モデルとして機能しうる新規非ヒト動物モデルを提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、自己阻害ドメインを欠失するアミノ酸配列からなる活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物により、心肥大モデルまたは心不全モデルとして機能しうる新規非ヒト動物モデルを提供しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物。
2.活性化型NHE1が、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち自己阻害ドメインを欠失するアミノ酸配列からなる前項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
3.自己阻害ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち第637−656位のアミノ酸に該当する部分である、前項2に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
4.活性化型NHE1が、1)または2)に記載のアミノ酸配列である前項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物:
1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも第637−656位のアミノ酸に該当する部分を欠損するアミノ酸配列;
2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、第637−656位のアミノ酸に該当する領域内において、1〜複数個のアミノ酸が置換または欠失してなり、NHE1が活性型NHE1となりうるアミノ酸配列。
5.前項1〜4のいずれかに記載の活性化型NHE1をコードする遺伝子を組み込むことによる、活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物。
6.トランスジェニック動物が、心肥大モデル動物または心不全モデル動物である前項1〜5のいずれか1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
7.動物がマウスである、前項1〜6のいずれかに1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
本発明の活性化型NHE1遺伝子を過剰発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物により、従来のリセプターを介して間接的にNHE1が活性化される心肥大モデルとは異なり、恒常的にNHE1が活性化されており、細胞内Na+濃度上昇が引き金となっている心肥大・心不全モデルを構築することができた。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物である。
NHE1をコードする遺伝子は、GenBank Accession No. NM_003047(配列番号1)に示される塩基配列からなり、NHE1タンパク質は、配列番号2に示される、815個のアミノ酸からなる。
本発明において、活性化型NHE1とは、NHE1が活性型であれば良く、特に限定されない。具体的には、例えば配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち自己阻害ドメインを欠失するアミノ酸配列からなるNHE1が挙げられる。ここにおいて、自己阻害ドメインとは、カルモデュリン(CaM)結合ドメインをいう。NHE1におけるいわゆる自己阻害ドメインとは、NHE1の活性を抑制しうるドメインをいい、例えば図2に示す阻害ドメインが例示される。具体的には、自己阻害ドメインは、配列番号2に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも第637−656位のアミノ酸に該当する部分をいう。NHE1は、自己阻害ドメインとNHE1の他の領域との相互作用等により、自己阻害ドメインによってNHE1の活性が部分的に抑えられており、生体内の恒常性が維持される。しかし、例えばホルモン等の刺激により、自己阻害ドメインによるNHE1の部分的阻害効果が解除される場合がある。
本発明において、活性化型NHE1は、上述のように自己阻害ドメインを欠失しているものであっても良いし、自己阻害ドメインが変異していることにより、NHE1が活性型となりうるものであってもよい。例えば、自己阻害ドメインを構成するアミノ酸配列のうち、1〜複数個のアミノ酸が置換または欠失してなり、NHE1タンパク質が活性型NHE1となりうるアミノ酸配列からなるものであってもよい。さらには第637−656位の部分の欠失の他、他の部位を欠失しつつ、NHE1タンパク質が活性型NHE1となりうるアミノ酸配列からなるものであってもよい。
本発明における活性化型NHE1をコードする遺伝子(以下、単に「活性化型NHE1遺伝子」ともいう。)は、本発明における活性化型NHE1を発現しうる塩基配列からなるDNAであればよい。そのような塩基配列としては、上述の本発明の活性化型NHE1をコードする塩基配列からなるDNAの他、遺伝子コドンと縮重のため、活性化型NHE1と同じアミノ酸配列を有するタンパク質をコードするいずれかのDNAも含み、さらにはそれらの相補鎖も含まれる。
本発明におけるトランスジェニック非ヒト動物としては、ヒト以外の哺乳動物が挙げられ、例えば、ウシ、サル、ブタ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウスなどが挙げられる。特に、モルモット、ラット、マウスなどのげっ歯類の取扱いが容易であるため好ましく、中でもマウスが好ましい。
本発明のトランスジェニック非ヒト動物は、未受精卵、受精卵、精子及びその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)において、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより導入遺伝子である活性化型NHE1遺伝子を導入することにより作製することができる。また、該遺伝子導入方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする活性化型NHE1遺伝子を転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもできる。さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞配合法により融合させることによりトランスジェニック動物を作製することもできる。
活性化型NHE1cDNAを対象動物に導入させる際、活性化型NHE1cDNAを対象となる動物の細胞で発現させうるプロモーターの下流に連結した遺伝子構築物として導入することが好ましい。特に心筋特異的に活性化型NHE1を発現させるために、心筋α−ミオシン重鎖プロモーターに結合したプラスミドコンストラクションを行うのが好適である(図3参照)。このプロモーターの制御下では、心筋のみに目的遺伝子を発現させることができる。全身に発現させる場合には、各種哺乳動物由来のNHE1遺伝子を発現させうる各種プロモーターに結合したプラスミドコンストラクションを行うことが必要である。本発明の目的の主要な部分は、心肥大または心不全の非ヒトモデル動物を提供することであるから、心筋特異的に活性化型NHE1を発現させるのがより好適である。
活性化型NHE1遺伝子の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。遺伝子発現の調節を行うプロモーターとしては、たとえばウイルス(サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、など)由来遺伝子のプロモーター、各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)及び鳥類(ニワトリなど)由来遺伝子[例えば、アルブミン、インスリンII、エリスロポエチン、エンドセリン、オステオカルシン、筋クレアチンキナーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10及びK14、コラーゲンI型及びII型、心房ナトリウム利尿性因子、ドーパミンβ−水酸化酵素、内皮レセプターチロシンキナーゼ、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインI及びIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原、平滑筋αアクチン、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、α及びβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1及び2、ミエリン基礎タンパク、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、レニンなどの遺伝子]のプロモーターなどが挙げられる。上記ベクターは、トランスジェニック哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結するターミネターを有していてもよい。
その他、活性化型NHE1遺伝子をさらに高発現させる目的で、各遺伝子のスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核生物遺伝子のイントロンの一部をプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流に連結することも所望により可能である。
受精卵細胞段階における活性化型NHE1遺伝子の導入は、対象動物の胚芽細胞及び体細胞の全てに過剰に存在するように確保することが好ましい。トランスジェニック後の作出動物の胚芽細胞において活性化型NHE1遺伝子が過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞及び体細胞の全てに活性化型NHE1遺伝子を過剰に有することを意味する。遺伝子を受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞及び体細胞の全てに活性化型NHE1タンパク質を過剰に有する。導入遺伝子を相同染色体の両方に持つホモ接合体の動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該遺伝子を安定に保持し、また、該遺伝子を過剰に有することを確認して、通常の飼育環境で繁殖継代することができる。
トランスジェニック対象動物が有する内在性の遺伝子とは異なる遺伝子である外来性活性化型NHE1遺伝子を好ましくはマウスなどの対象動物、又はその先祖の受精卵に転移する際に用いられる受精卵は、同種の雄哺乳動物と雌哺乳動物を交配させることによって得られる。受精卵は自然交配によっても得られるが、雌哺乳動物の性周期を人工的に調節した後、雄哺乳動物と交配させる方法が好ましい。雌哺乳動物の性周期を人工的に調節する方法としては、例えば初めに卵胞刺激ホルモン(妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG))、次いで黄体形成ホルモン(ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG))を例えば腹腔注射などにより投与する方法が好ましい。
得られた受精卵に前述の方法により外来性活性化型NHE1遺伝子を導入した後、雌動物に人工的に移植、着床させることにより、外来性遺伝子を組み込んだDNAを有する非ヒト動物が得られる。好ましくは、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)を投与後、雄動物と交配させることにより、受精能を誘起された偽妊娠雌動物に得られた受精卵を人工的に移植・着床させることができる。遺伝子を導入する全能性細胞としては、マウスの場合、受精卵や初期胚を用いることができる。また培養細胞への遺伝子導入法としては、トランスジェニック動物個体の産出効率や次代への導入遺伝子の伝達効率を考慮した場合、DNAのマイクロインジェクションが好ましい。
遺伝子を注入した受精卵は、次に仮親の卵管に移植され、個体まで発生し出生した動物を里親につけて飼育させたのち、体の一部(マウスの場合には、例えば、尾部先端)からDNAを抽出し、サザン解析やPCR法により導入遺伝子の存在を確認することができる。導入遺伝子の存在が確認された個体を初代(Founder)とすれば、導入遺伝子はその子(F1)の50%に伝達される。さらに、このF1個体を野生型動物または他のF1動物と交配させることにより、2倍体染色体の片方(ヘテロ接合)または両方(ホモ接合)に導入遺伝子を有する個体(F2)を作成することができる。
あるいは、活性化型NHE1発現トランスジェニック非ヒト動物は、上記した活性化型NHE1遺伝子を導入遺伝子としてES細胞に導入することによって作製することもできる。例えば、正常マウス胚盤胞に由来するHPRT陰性(ヒポキサンチングアニン・フォスフォリボシルトランスフェラーゼ遺伝子を欠いている)ES細胞(embryonic stem cell)に、活性化型NHE1遺伝子を導入する。活性化型NHE1遺伝子がマウス内在性遺伝子上にインテグレートされたES細胞をHATセレクション法により選別する。次いで、選別したES細胞を、別の正常マウスから取得した受精卵(胚盤胞)にマイクロインジェクションする。該胚盤胞を仮親としての別の正常マウスの子宮に移植する。そうして該仮親マウスから、キメラトランスジェニックマウスが生まれる。該キメラトランスジェニックマウスを正常マウスと交配させることによりヘテロトランスジェニックマウスを得ることができる。該ヘテロトランスジェニックマウス同士を交配することにより、ホモトランスジェニックマウスが得られる。
上記した本発明のトランスジェニック非ヒト動物の子孫、並びに該トランスジェニック動物の一部も本発明の範囲内である。トランスジェニック非ヒト動物の一部としては、該トランスジェニック動物の組織、器官及び細胞などが挙げられる。
以下哺乳動物としてマウスを用いた場合を例にしてトランスジェニックマウスを製造する方法の一例についてさらに具体的に説明する。
1.遺伝子のクローニング
本発明の病理モデル動物を製造するには、まず、NHE1遺伝子をクローニングする。このクローニング方法としては公知の様々な方法が可能である。例えば、NHE1のmRNAからcDNAを作製し、そのcDNAをプラスミド等のベクターのDNAに組込み、更に該DNA組替えベクターを大腸菌等の宿主に組込んで、大腸菌を増殖させる。大量に産生された大腸菌からDNA組替えベクターを取りだし、活性化型NHE1遺伝子をカラムクロマトグラフ法、あるいは電気泳動法等により分取、精製することによりクローニングすることができる。目的の塩基配列をもつ遺伝子が精製されていることの確認は、DNAシーケンシングなどにより確定することが望ましい。
2.活性化型NHE1遺伝子のスクリーニング
ヒト遺伝子ライブラリーから得られた本件活性化型NHE1をコードするcDNA、あるいは、マウスmRNAから直接RT−PCR等の方法により得られた同cDNAをプラスミドベクター等にライゲーションにより挿入する。活性化型NHE1は、NHE1を構成するアミノ酸残基から、一部のアミノ酸を欠失しているものであるので、RT−PCR等の方法により得られた同cDNAを用いることができる。さらには、非特許文献3に記載の方法に従い、活性化型NHE1のcDNAを得ることができる。
3.ベクター
クローニング用ベクターとしては、宿主内で特定遺伝子を増幅できる細菌プラスミド由来、酵母プラスミド由来、バクテリオファージ由来、トランスポゾン由来及びこれらの組合せに由来するベクター、例えば、コスミドやファージミドのようなプラスミドとバクテリオファージの遺伝的要素に由来するものを挙げることができる。
4.宿主
本発明の活性化型NHE1遺伝子は、好ましくはベクターを経由して宿主細胞により増殖させる。本件活性化型NHE1遺伝子の宿主細胞への導入は、Davisら(BASIC METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, 1986)及びSambrookら(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL, 2nd Ed., Cold Spring Habor LABORATORY Press, Cold Spring Habor, NY., 1989)などの自体公知の実験室マニュアルに記載される形質転換や感染等により行うことができる。
そして、上記宿主細胞としては、大腸菌、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカス等の細菌原核細胞や、酵母、アスペルギルス等の真菌細胞等を挙げることができる。
5.トランスジェニックマウスの製造
活性化型NHE1過剰発現トランスジェニックマウスを製造するには、例えばマウスの受精卵の細胞核に上記方法で得た活性化型NHE1遺伝子をマイクロインジェクトする。注入する遺伝子の量は1個の受精卵当り200〜1000コピーであることが好ましい。別に精管切断術を施した雄マウスと交尾させ偽妊娠状態にした仮親を用意して、この仮親の卵管内にこの受精卵を移植し、マウスを誕生させる。
活性化型NHE1遺伝子を導入する方法としては、他に受精卵にレトロウイルスベクターを感染させる方法も採用しうる。また、受精卵の代わりにES細胞を用いて同様の方法により活性化型NHE1を発現するマウスを製造することができる。
上記方法でクローニングされた活性化型NHE1をコードするcDNAを、心筋−αミオシン重鎖プロモーターに結合してプラスミドコンストラクションを行い、トランスジーンベクターを作製する。作製されたトランスジーンベクターを線状化し、マイクロインジェクション法やレトロウイルスを用いた感染等によって受精卵に導入する。
マイクロインジェクション後、一般的には、生まれた胚の10−40%に染色体への導入遺伝子の安定な組み込みが起こっている。選択されたマウス染色体に目的とする遺伝子の組み込みが起こっているかどうかをPCR法、サザンブロット法等により確認することが好ましい。このマウスを野生型のマウスとインタークロスさせると、ヘテロ接合体マウスを得ることができ、本発明の本件活性化型NHE1発現マウスを作製することができる。
本件活性化型NHE1発現マウスが生起しているか否かを確認する方法としては、例えば、上記の方法により得られたマウスからRNAを単離してノーザンブロット法等により調べ、またはタンパク質を抽出してウェスタンブロット法等により調べる方法がある。
以下、本発明の理解を深めるために実施例により本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではないことはいうまでもない。
(実施例1)活性型NHE1発現用細胞
NHE1タンパク質を構成するアミノ酸残基は、GenBank Accession No. NM_003047(配列番号2)に示される。本実施例において、前記アミノ酸配列のうち、第637−656位のアミノ酸残基を欠損させた恒常的活性型NHE1変異体を発現したトランスジェニックマウスを構築した。
ヒトNHE1遺伝子はヒトcDNAライブラリーからクローニングし、哺乳動物発現ベクターpECEのマルチクローニングサイトにクローニングされている。そのプラスミドを元にして、PCR法により第637−656位のアミノ酸残基を欠損したcDNAを得た(非特許文献3)。
上記調製したcDNAを基にして、PCR法で制限酵素Sal1及びXba1認識部位、polyA配列と制限酵素Sal1を付加したcDNAを作製し、あらかじめ制限酵素Sal1で消化切断したサイトメガロウイルスプロモーターを有するphCMVトランスファーベクターに組込み、発現ベクターpCMV−活性化型NHE1を作製し、トランスジーンを作製した。
C57BL/6L雌マウスにPMS及びhCGを腹腔投与して過排卵を誘発し、C57BL/6L雄マウスと同居・交配した。交尾の成立した雌マウスを頚椎脱臼により殺し、腹腔を開き卵管膨大部を切り出して、ヒアルロニダーゼを含むM16培地中に移し、実体顕微鏡下で卵管膨大部を裂いて受精卵を培地中に移し、ガラスピペットを用いて受精卵を回収した。
次に、ガラスディッシュに受精卵を含むM16培地及び注入DNA(濃度は5ng/μl)のドロップをそれぞれ作製し、パラフィンオイルでカバーした。マイクロマニュピレーター付き倒立顕微鏡下でインジェクション用ピペットに注入DNAをおおよそ0.1μl吸引して、ホールディング用ピペットで固定した受精卵の前核内にDNAを注入した。
DNA注入した受精卵を移植するための偽妊娠雌マウス(ICRマウス)を、精管を切除した雄マウス(ICRマウス)と交配させることにより作製した。受精卵にDNAを注入した当日に、偽妊娠雌マウスを麻酔し、後背部より卵巣、卵管を引出し、卵管開口部を露出する。実体顕微鏡下で移植用ピペットを用いておよそ10個の受精卵を吸引して、左右の卵管開口部からそれぞれ受精卵を移植した。受精卵の移植後、偽妊娠雌マウスは約20日で子マウス(活性化NHE1−トランスジェニック(TG)マウス)初代(Founder)(ヘテロ)を出産した。
(実験例1)
本実験例では、活性化NHE1トランスジェニック(TG)マウスの心筋における活性化型NHE1の発現結果を確認した。
活性化型NHE1を導入していないC57BL/6Lを対照コントロールとし、活性化型NHE1TGマウスおよび、活性化型NHE1TGマウスにNHE阻害剤(カリポライド)を0.3mg/kg投与したものについて、各々心筋ホモジェネートをSDS−PAGEにかけ、活性化型NHE1の発現をウェスタンブロット法により確認した。また、内部コントロールとして、GAPDHについても並行して行った。
ウェスタンブロット法に用いた抗体は、ウサギで作製した抗ヒトNHE1抗体である(非特許文献3)。
その結果、活性化型NHE1TGマウスではNHE阻害剤(カリポライド)の投与の有無に関係なく、NHE1の高い発現を認めたのに対し、対照コントロールでは、ほとんど発現は認めなかった(図4)。
(実験例2)
本実験例では、活性化NHE1TGマウスでの心臓形態を調べた。
活性化型NHE1を導入していないC57BL/6Lを対照コントロールとし、活性化型NHE1TGマウスおよび、活性化型NHE1TGマウスにNHE阻害剤(カリポライド)を投与したものについて、心臓の形態を確認した。各々40日令のマウスについて確認し、NHE阻害剤は、20日令のマウスにカリポライドを0.3mg/kg/日で20日間腹腔内投与したものについて確認した。心臓の形態は、心臓を10%中性ホルマリン固定後パラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン染色した組織標本を位相差顕微鏡で調べた。
その結果、40日令の活性化型NHE1TGマウスでは、心室および心房筋の肥大を経過したのちに拡張型心筋症の様相を呈し、収縮能の著しい低下が観察された。一方、NHE阻害剤を投与した活性化型NHE1TGマウスでは、心肥大および心不全の抑制が認められ、収縮能についても著明な改善が観察された(図5〜7)。活性化型NHE1の存在は認められても、NHE阻害剤により心肥大および心不全の抑制が認められたことから、間接的にNHE1が活性化された場合のみならず、恒常的な活性化型NHE1により、心肥大および心不全の症状に影響することが示唆された。すなわち、Ca2+レベルのみならず、活性化型NHE1によるNa+レベルの上昇も心肥大および心不全の症状に影響することが示唆された。
(実験例3)
本実験例では、活性化NHE1TGマウスでの心筋細胞内のCa2+レベルを確認した。
活性化型NHE1を導入していないC57BL/6Jを対照コントロールとし、活性化型NHE1TGマウスについて、40日令における心筋細胞内のCa2+レベルをCa2+蛍光指示薬Indo−1 (sodium-binding benzofuran isophthalate)を用いた蛍光測定法により、確認した(図8)。
その結果、活性化型NHE1TGマウスのほうが、コントロールと比較して、明らかに高いCa2+レベルを示した。
(実験例4)
本実験例では、活性化NHE1TGマウスでの心筋細胞内のNa+濃度を確認した。
活性化型NHE1を導入していないC57BL/6Jを対照コントロールとし、活性化型NHE1TGマウスについて、40日令における心筋細胞内のNa+濃度をNa+蛍光指示薬SBFIを用いた蛍光測定法により、確認した(図9)。
その結果、活性化型NHE1TGマウスのほうが、対照コントロールと比較して、明らかに高いNa+レベルを示した。
以上説明したように、本発明の活性化型NHE1遺伝子を過剰発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物により、従来のリセプターを介して間接的にNHE1が活性化される心肥大モデルとは異なり、NHE1活性化による細胞内Na+濃度上昇が引き金となっている心肥大または心不全モデルを構築することができた。本モデルにより、心肥大・心不全発症を導く新たなシグナル経路の発見、特にイオン代謝異常に起因する心肥大・心不全発症のメカニズムの検討および治療法の開発に貢献することができる。さらに、新規経路を標的とした心不全治療薬、心筋保護薬の開発に貢献することができる。
心不全におけるNa+/H+交換輸送体(Na+/H+exchaner, NHE)の関与を説明する図である。 活性化型NHE1を示す図である。 トランスジェニックマウス作製における活性化型NHE1を組み込んだベクターを示す図である。(実施例1) トランスジェニックマウスの心筋における活性化型NHE1の発現結果を示す図である。(実験例1) 40日令のマウスの心臓を示す図である。(実験例2) 40日令の活性化型NHE1発現トランスジェニックマウスの心臓を示す図である。(実験例2) 40日令の活性化型NHE1発現トランスジェニックマウスにおいて、20日令からNHE阻害剤を投与したときの心臓を示す図である。(実験例2) 活性化型NHE1発現トランスジェニックマウスの心筋細胞内のCa2+レベルを示す図である。(実験例3) 活性化型NHE1発現トランスジェニックマウスの心筋細胞内のNa+濃度を示す図である。(実験例4)
符号の説明
TGマウス:トランスジェニックマウス

Claims (7)

  1. 活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物。
  2. 活性化型NHE1が、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち自己阻害ドメインを欠失するアミノ酸配列からなる請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  3. 自己阻害ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち第637−656位のアミノ酸に該当する部分である、請求項2に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  4. 活性化型NHE1が、1)または2)に記載のアミノ酸配列である請求項1に記載のトランスジェニック非ヒト動物:
    1)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、少なくとも第637−656位のアミノ酸に該当する部分を欠損するアミノ酸配列;
    2)配列番号1に記載のアミノ酸配列のうち、第637−656位のアミノ酸に該当する領域内において、1〜複数個のアミノ酸が置換または欠失してなり、NHE1が活性型NHE1となりうるアミノ酸配列。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の活性化型NHE1をコードする遺伝子を組み込むことによる、活性化型NHE1を発現させてなるトランスジェニック非ヒト動物。
  6. トランスジェニック動物が、心肥大モデル動物または心不全モデル動物である請求項1〜5のいずれか1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
  7. 動物がマウスである、請求項1〜6のいずれかに1に記載のトランスジェニック非ヒト動物。
JP2007123514A 2007-05-08 2007-05-08 トランスジェニック非ヒト動物 Pending JP2008278763A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007123514A JP2008278763A (ja) 2007-05-08 2007-05-08 トランスジェニック非ヒト動物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007123514A JP2008278763A (ja) 2007-05-08 2007-05-08 トランスジェニック非ヒト動物

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2008278763A true JP2008278763A (ja) 2008-11-20

Family

ID=40140150

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007123514A Pending JP2008278763A (ja) 2007-05-08 2007-05-08 トランスジェニック非ヒト動物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2008278763A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103973963A (zh) * 2013-02-06 2014-08-06 聚晶半导体股份有限公司 图像获取装置及其图像处理方法

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103973963A (zh) * 2013-02-06 2014-08-06 聚晶半导体股份有限公司 图像获取装置及其图像处理方法
CN103973963B (zh) * 2013-02-06 2017-11-21 聚晶半导体股份有限公司 图像获取装置及其图像处理方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6192865B2 (ja) lincRNA欠失非ヒト動物
US7745688B2 (en) Model mouse of Alzheimer's disease expressing FAD APP 716 and use thereof
JP3765574B2 (ja) 逆向き反復配列を含む組み換え遺伝子及びその利用
WO2020204159A1 (ja) ノックイン細胞の作製方法
US20050125853A1 (en) Method for generating genetically modified animals
US8633348B2 (en) Genetic vasectomy by overexpression of PRML-EGFP fusion protein in spermatids
WO2017175745A1 (ja) 生殖細胞欠損動物を用いる遺伝子改変動物の作製方法
JP2008278763A (ja) トランスジェニック非ヒト動物
US20020148000A1 (en) HS-40 enhancer-containing vector in transgenic animals
JP5644026B2 (ja) Trpv2の部分ペプチド
JP4851041B2 (ja) 細胞内のカルシウムイオンの濃度変化をモニターするトランスジェニック非ヒト哺乳動物
WO2010047423A1 (ja) 変異遺伝子導入方法、変異導入遺伝子、変異導入カセットならびに変異導入ベクターおよびノックイン非ヒト哺乳動物
JP4811765B2 (ja) 外来遺伝子の誘導発現の制御が可能な発現ベクター
US20050229266A1 (en) Method for producing non-human mammal RNAi phenotype using papilloma virus vector
JP2008271913A (ja) トランスジェニック非ヒト動物
WO2015068411A1 (ja) 遺伝子組み換え非ヒト動物
JP2008220289A (ja) 非ヒトトランスジェニック動物
JP2004135657A (ja) ヒトa3アデノシン受容体を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物
JP4374438B2 (ja) rab8a遺伝子欠損マウス
JP2004242557A (ja) 筋ジストロフィー症の病態モデル哺乳動物、及びその製造方法
US20060242716A1 (en) Disease model animal carrying foreign ppar alpha gene transferred thereinto and use thereof
JP2001169684A (ja) ウリジンホスホリラーゼ発現不全動物
JP2004135656A (ja) キメラ7回膜貫通型受容体を発現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物
Zhen-Dan et al. Advances in the development of animal gene transfer
JP2006141283A (ja) 3−ホスホグリセレートデヒドロゲナーゼの発現が低下したノックアウト非ヒト哺乳動物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100426

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120423

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20120820