JP3697469B2 - 垂直磁気記録媒体及びそれを用いた磁気記憶装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンピュータの補助記憶装置などに用いる磁気記憶装置及びそれに用いる磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報化時代の進行により、日常的に扱う情報量は増加の一途を辿っている。これに伴い、磁気記録装置に対する高記録密度化と大容量化の要求が強くなっている。大容量の情報を扱う上では転送速度の高速化も必然的に要求される。磁気記録装置を高記録密度化していった場合、記録ビット当たりの媒体面積が小さくなるため、より高感度の再生ヘッドが使われ、記録媒体には低ノイズ化が求められる。媒体ノイズを低減するためには、磁性膜を薄くして結晶粒の微細化を図ることが効果的である。特に現在の磁気ディスクに用いられている面内磁気記録方式では、隣接ビット間の反磁界を低減してビット境界に生じるノイズを低減するためにも磁性膜の薄膜化が進められている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ただし磁性膜を薄くした場合、記録された磁化が熱的に不安定になるため、保磁力を大きくして記録磁化の安定性を確保しなければならない。特に、高い線記録密度で記録する場合には、ビット間に生じる反磁界に逆らって記録し、しかもその状態を安定に保つ必要があるため、媒体保磁力が大きいことが必須である。媒体保磁力が大きくなると、ヘッドに対して高い記録能力が求められることになり、これが不十分であるとオーバーライトに問題が生じる。このように、高密度化を進める上では、ヘッドの記録能力に限界があることを考えると、媒体の低ノイズ化と熱的安定性確保の両立はたいへん難しい課題である。
【0004】
一方、磁気記録装置の転送速度を高速化していった場合、媒体への高周波での記録が必要となる。このとき、媒体に印加されるヘッド磁界のパルス幅が短くなることにより、媒体の磁界を反転させるためにより大きな磁界が必要となる。この現象は、例えばIEEE Transactions on Magnetics第34巻(1998年)の1828〜1832頁に記載されている。反転磁界の増加により、ヘッドに対して高い記録能力が求められることになる。ヘッドの記録能力が限られている場合には、より低い磁界で記録できるように媒体の保磁力を小さくしなければならない。この要求に従って媒体保磁力を小さくした場合には、前述のように高密度記録が難しい。結局、高速転送と高記録密度を両立させた磁気記録装置の実現は現状の技術の改良だけではたいへん難しく、新しい技術の導入が必要である。
【0005】
高密度化を進めるための新しい技術の有力な候補として、垂直磁気記録方式が検討されている。垂直磁気記録方式には記録密度が高くなるにつれて反磁界が減少するという特徴があり、高密度に記録した場合に記録磁化状態が安定で媒体ノイズも小さく、高密度記録に適した方式であると考えられる。ただし、膜面垂直方向の反磁界のために、低密度に記録されたビットは不安定である。低密度記録状態の熱的安定性を確保するためには、記録膜の磁気異方性を高めるなどして媒体保磁力を高めることが有効である。このことは、Journal of Applied Physics第79巻(1996年)の7920〜7925頁に記載されている。媒体保磁力を高めた結果、熱的安定性は確保できても、高速転送のための高周波記録は前述の面内記録方式の場合と同様に困難になると予想される。
【0006】
本発明の目的は、線記録密度300kFCI以上の高密度記録が可能でかつ毎秒50メガバイト以上の高速転送が可能な磁気記憶装置及びこれに用いることのできる垂直磁気記録媒体を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的の磁気記録媒体は、垂直磁気記録層の残留磁化の飽和磁化に対する比を記録領域内でディスク外周ほど大きく、ディスク最内周で0.7以上とすることにより得られる。また、磁気記録層の保磁力を記録領域内でディスク外周ほど小さく、ディスク最外周で3000エルステッド以下とすることで本発明の効果が容易に得られる。さらに、垂直磁気記録層の膜厚を記録領域内でディスク外周ほど大きく、記録領域内のディスク最外周で30nm以下とすることが好ましく、下地層の膜厚は記録領域内でディスク外周ほど小さくすることが好ましい。
【0008】
上記目的の磁気記憶装置は、磁気記録媒体と、磁気記録媒体駆動部と、磁気ヘッドと、磁気ヘッド駆動部と、記録再生信号処理系を有する磁気記憶装置において、磁気記録媒体として前述の垂直磁気記録媒体を用い、記録周波数を250MHz以上、最高線記録密度を300kFCI以上に設定することにより得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明による磁気記録媒体の基本的な構成の一例を、図2の断面模式図に示した。図2において21はガラス、Ni−P合金メッキアルミ合金、シリコン、カーボン、チタン合金などの材料で作られたディスク基板である。22は稠密六方構造のチタンあるいはチタン系合金又は非晶質構造のコバルト系合金などから成る第1の下地層、23は稠密六方構造のCo−Cr系合金から成る第2の下地層である。24はコバルトとクロムを主成分とし、例えばCo−Cr−Ta、Co−Cr−Pt、Co−Cr−Pt−Ta、Co−Cr−Nb、Co−Cr−Pt−Nb、Co−Cr−Wなどのような強磁性薄膜を用いた垂直磁気記録層である。25はカーボン、あるいは窒素、水素、シリコン、ボロンなどを含有したカーボンから成る保護膜と有機系潤滑膜で構成される保護潤滑層である。
【0010】
作製した磁気記録媒体は、スピンスタンドにおいて記録再生特性の評価を行った。評価の条件としては、ギャップ長0.2μm、トラック幅0.95μm、巻線数20ターンの電磁誘導型ヘッドにより記録し、シールド間隔0.2μm、トラック幅0.85μmの巨大磁気抵抗効果型ヘッドにより再生を行った。媒体の回転速度や測定半径を広範囲に渡って設定して測定するために、ヘッドのスライダーは磁気スペーシングが回転速度や測定半径に依らず15nm前後の一定値になるようなものを選んで用いた。また、高周波記録においてヘッド磁界の立上りの影響を抑えるために、ヘッドアンプとヘッド素子の配線距離を短くするなどの対策を施した。
【0011】
オーバーライト特性は、次のようにして評価した。線記録密度35kFCIの信号を記録した場合の出力強度N′をスペクトラムアナライザで測定し、その後ある線記録密度D(又は記録周波数F)で重ね書きしたときの35kFCI信号の消え残り強度Nを測定し、線記録密度D(又は記録周波数F)のオーバーライト特性として次式の値を求めた。
【0012】
オーバーライト特性(dB)=20Log(N′/N)
媒体S/Nは、線記録密度2kFCIの信号を記録した場合の出力S(μV_0−P)とある線記録密度(ここでは300kFCI)の信号を記録した場合の0Hzから400MHzの周波数帯域において積算した媒体ノイズN(μV_rms)を測定し、次式により求めた。
【0013】
媒体S/N(dB)=20Log(S/N)
保磁力、残留磁化及び飽和磁化などの磁気記録媒体の磁気特性は、ディスクから切り出した一辺6mmの正方形の試料について振動試料型磁力計で磁化曲線を測定することにより求めた。
【0014】
〔実施の形態1〕
基板として表面粗さRaが3nm以下の直径3.5インチの結晶化ガラス製ディスクを用い、下地層、磁気記録層及び保護層の膜形成は直流マグネトロンスパッタ法により、以下の条件で行った。スパッタ装置内の到達真空度は1×10-8トール以下、放電用アルゴンガス圧力は3×10-3トール、投入電力は直径6インチのターゲットに対して1kWとした。スパッタ時の基板温度は260℃に設定した。垂直磁気記録媒体の第1の下地層として、厚さ30nmのTi−10at%Cr合金を基板上に直接形成した。第2の下地層として、厚さ20nmのCo−35atCr合金を形成した。記録層としては、厚さ25nmのCo−19at%Cr−10at%Ptを形成した。保護潤滑層としては、厚さ5nmの窒素含有カーボン膜と厚さ2nmの有機系潤滑膜を形成した。また、比較検討用の面内磁気記録媒体として、厚さ50nmのCr−20at%Ti合金を下地として形成した上に、厚さ20nmのCo−19at%Cr−10at%Ptを形成し、上記と同様の保護潤滑層を形成したものを作製した。
【0015】
保磁力、及び残留磁化の飽和磁化に対する比(以下、これを角形比と呼ぶ)の異なる3種類の垂直磁気記録媒体と保磁力の異なる2種類の面内磁気記録媒体について、媒体の回転速度(10000rpm)及び測定半径(40.4mm)を一定にした条件(周速42.3m/s)で、記録密度を変えてオーバーライト特性の記録周波数依存性を測定した結果、図1に示す結果が得られた。図1において、黒丸で測定値をプロットした曲線11は保磁力3000エルステッドで角形比0.98の垂直磁気記録媒体のオーバーライト特性、測定値を黒い三角でプロットした曲線12は保磁力3020エルステッドで角形比0.72の垂直磁気記録媒体のオーバーライト特性、測定値を黒い四角でプロットした曲線13は保磁力3470エルステッドで角形比0.98の垂直磁気記録媒体のオーバーライト特性である。また、測定値を白丸でプロットした曲線14は保磁力2520エルステッドの面内磁気記録媒体のオーバーライト特性、測定値を白い四角でプロットした曲線15は保磁力3010エルステッドの面内磁気記録媒体のオーバーライト特性である。
【0016】
オーバーライト特性については、信頼性の高い記録再生装置に用いる基準を30dB以上と考えて結果を判断した。面内磁気記録媒体の場合は150MHzを超える記録周波数からオーバーライト特性の劣化が始まる。保磁力が2520エルステッドの媒体では250MHz以上の記録周波数が可能であるが、保磁力が3010エルステッドの媒体では250MHzの記録周波数で十分なオーバーライト特性が得られない。保磁力2520エルステッドの面内磁気記録媒体は、線記録密度300kFCIの記録信号の経時変化を測定すると10時間で約10%の減衰が認められ、記録磁化の熱的安定性に問題があることがわかった。面内磁気記録媒体を用いた場合は、250MHz以上の記録周波数を可能にするために保磁力を小さくすると記録磁化の安定性が損なわれ、逆に記録磁化の安定性を確保するために保磁力を大きくすると高周波記録時のオーバーライト特性が低下するため、この2つの特性を両立させることは困難であると考えられる。
【0017】
これに対して、垂直磁気記録媒体のオーバーライト特性は記録周波数が200MHzを超えても劣化が見られず、劣化が始まってもその変化が面内磁気記録媒体に比べて緩やかである。保磁力が3000エルステッド程度であれば、250MHzにおいても30dB以上のオーバーライト特性が得られ、特に角形比の高い媒体についてはオーバーライト特性の高周波における劣化の割合が小さく、使用可能な周波数帯域が広いことがわかった。以上の結果から、面内磁気記録媒体を用いた場合に生じる高周波記録の問題が、同等の保磁力を持つ垂直磁気記録媒体を用いた場合に抑制されることから、垂直磁気記録媒体が高周波記録に適していることが判明した。
【0018】
次に同じ媒体について、記録密度(300kFCI)及び測定半径(40.4mm)を一定にした条件(記録周波数250MHz)で、ディスクの回転数を変えてオーバーライト特性の周速依存性を測定した。媒体の回転数を10000rpmから15000rpmに増加させて、周速を42.3m/sから63.5m/sに増加させたとき、2種類の面内磁気記録媒体はいずれもオーバーライト特性が約3dB劣化した。一方、角形比0.72及び角形比0.98の垂直磁気記録媒体はそれぞれ、同様の周速変化に対して約2dB及び約1dBのオーバーライト特性の劣化に止まった。この結果、周速を大きくしたときに、面内磁気記録媒体は垂直磁気記録媒体に比べて高周波記録がより厳しくなることが明らかとなった。すなわち、周速の大きな条件のもとで高周波記録を行う場合には、角形比の大きい垂直磁気記録媒体を用いるのが有効であることがわかった。
【0019】
〔実施の形態2〕
実施の形態1と同様の方法で垂直磁気記録媒体を作製した。ただし、ここでは装置に適用できる磁気記録媒体を作製するために、ディスクの外周と内周では周速が異なることを考慮して、磁気記録層の角形比、保磁力などをディスクの半径方向に変化させた種々の媒体を作製して比較した。これらの特性の制御は直流マグネトロンスパッタ用カソードの永久磁石の配置を変えて、ターゲット上のエロージョン領域の位置を変えることで容易に実現できる。
【0020】
通常の磁気記録媒体の作製においては、エロージョン領域はより均一で広範囲に及ぶように設定することで、ターゲットの使用効率を上げ、ディスクの特性を均一にすることが望ましいと考えられているが、ここではあえて磁気記録層の特性に分布ができるような条件でのスパッタを試みた。エロージョン領域を局在化させた場合にはターゲットと基板の間の距離を変えることによっても磁気記録層の特性に関するディスク半径方向の分布を調節することが可能である。その他にもターゲット組成に分布を持たせることやターゲット表面に細かい起伏を設けてスパッタ粒子の飛び出し角度を調節することによっても、上記のような媒体の作製が可能である。
【0021】
記録再生特性の評価はディスクの最内周から最外周まで広い範囲に渡って行い、記録周波数250MHzで線記録密度300kFCIの信号を記録したときの媒体S/Nとオーバーライト特性を測定した。この記録再生特性の測定終了後にディスクから磁気特性用試料を切り出し、最内周と最外周を含む5箇所の半径位置において角形比と保磁力の測定を行った。
【0022】
表1に、ディスクの半径方向における角形比の分布を変えた試料に対する測定結果を示した。保磁力はいずれのディスクも約3000エルステッドであった。No.1は角形比が半径方向に一定で0.92と大きな値を有する試料、No.2は最内周側の角形比が0.68でディスク外周に向かうほど角形比が大くなる試料、No.3は最内周側の角形比が0.75でディスク外周に向かうほど角形比が大きくなる試料、No.4は角形比がディスク外周に向かうほど小さくなる試料、No.5は角形比がディスク外周に向かうほど小さくなるが全体的にNo.4の試料よりは角形比の大きな試料である。
【0023】
【表1】
【0024】
表1から、オーバーライト特性を30dB以上にするためには角形比を大きな値にする必要があり、特に外周部における角形比の値を大きくすることが重要であることが明らかとなった。ただし、ディスク全面について角形比を大きくした場合には媒体S/Nを高いレベルにすることは難しく、ディスク全面に渡ってオーバーライト特性と媒体S/Nを同時に高いレベルにするためには角形比を外周ほど大きくすることが必要であることがわかった。ただし、角形比を0.7以下にするとオーバーライト特性が悪くなるため、角形比は少なくとも0.7以上にすることが重要である。
【0025】
表2に、ディスクの半径方向における保磁力の分布を変えた試料に対する測定結果を示した。角形比は、いずれのディスクも表1のNo.3の試料の分布に準じた値であった。No.1はディスク外周に向かうほど保磁力が大きくなる試料、No.2はディスク外周に向かうほど保磁力が小さくなる試料、No.3はディスク外周に向かうほど保磁力が小さくなるが全体的にNo.2の試料よりは小さな保磁力を有する試料、No.4はディスクの半径方向に保磁力が一定である試料、No.5はディスクの半径方向に保磁力が一定であるが全体的にNo.4の試料よりは大きな保磁力を有する試料である。
【0026】
【表2】
【0027】
オーバーライト特性を30dB以上にするためには保磁力を小さくする必要があり、特に外周部における保磁力の値を小さくすることが重要であることが明らかとなった。特に3000エルステッド以下にすることが重要であった。ただし、ディスク全面について保磁力を小さくした場合には媒体S/Nは低下し、ディスク全面に渡ってオーバーライト特性と媒体S/Nを同時に高いレベルにするためには保磁力を外周ほど小さくすることが望ましいことがわかった。
【0028】
上記のように、ディスクの外周ほど磁気記録膜の角形比を大きくし保磁力を小さくすることは、前記のエロージョン領域の調整などの方法を用いて、結果的に磁気記録層の膜厚をディスク外周ほど大きく、下地層の膜厚を外周ほど小さくなるようにすることで容易に達成できる。具体的には、表2のNo.3の媒体は、磁気記録層の膜厚を最内周で23nm、最外周で25nmとし、第2の下地層であるCo−35at%Cr合金層の膜厚を最内周で24nm、最外周で14nmとして作製したものである。しかも、このような膜厚構成を採用することで、最外周における低線記録密度の記録信号の経時変化を小さく抑える効果もあった。ただし、磁気記録層の膜厚を平均的に増加させた媒体を作製して記録再生特性を測定してみると、磁気記録層膜厚を30nmより大きくした領域のオーバーライト特性が約27dBまで劣化したため、磁気記録層膜厚は30nm以下にする必要がある。
【0029】
〔実施の形態3〕
本実施の形態では、垂直磁気記録媒体の第1の下地層として厚さ500nmのCo−11at%Nb−5at%Zr軟磁性膜を用いた。第2の下地層は実施の形態1と同様のCo−35at%Crを用いた。実施の形態2と同様の種々の磁気特性を持つディスク試料を作製し、同様にしてオーバーライト特性と媒体S/Nを測定したところ、全く同じ傾向の結果を得た。
【0030】
すなわち、図1に示したようなオーバーライト特性の記録周波数依存性を測定すると、オーバーライト特性の高周波領域での劣化の割合が面内磁気記録媒体に比べて緩やかであり、より高い記録周波数まで使用可能であることが分かった。また、角形比を内周側から外周側へ0.77から0.97と傾斜を付けた場合に、媒体S/Nが30.6dBから31.0dBの範囲になり、オーバーライト特性は32.0dBから33.5dBの範囲の高い値を示した。角形比を均一にしたときには媒体S/Nが30dBを下回り、角形比を0.7未満にしたときにはオーバーライト特性に問題を生じた。保磁力に関しては、内周側から外周側へ3020エルステッドから2850エルステッドと傾斜を付けた場合に媒体S/Nとオーバーライト特性はいずれの領域でも31dB以上の優れた値を示し、ディスクの外周ほど保磁力を小さくすることの有効性が確認された。軟磁性の下地層の有無にかかわらず、本発明の効果があることがわかった。
【0031】
また、垂直磁気記録膜としてCo−Cr−Ta、Co−Cr−Pt−Ta、Co−Cr−Nb、Co−Cr−Pt−Nb、Co−Cr−Wを用いた垂直磁気記録媒体に対して実施の形態2と同様の実験を行ったところ、同等の磁気特性が得られた場合には同じ結果となった。
【0032】
〔実施の形態4〕
実施の形態2において作製した垂直磁気記録媒体の中から表2のNo.3に示した垂直磁気記録媒体を選び、それを図3に概略を示す磁気ディスク装置に組み込み、磁気ディスクの記録再生特性を評価した。この磁気ディスク装置は、図3(a)に概略平面図を、図3(b)にそのAA断面図を示すように、磁気ディスク駆動部32により回転駆動される磁気ディスク31、磁気ヘッド駆動部34により保持されて磁気ディスク31に対して記録および再生を行う磁気ヘッド33、磁気ヘッド33の記録信号および再生信号を処理する記録再生信号処理系35を備える周知の構成の装置である。
【0033】
ヘッドとしては、実施の形態1で使用したものと同様のものを用い、ヘッドと媒体の間の磁気スペーシングは20nm以下となるように調整した。その結果、線記録密度を300kFCI以上、記録周波数を250MHz以上に設定することで、毎秒50メガバイト以上の高速転送が可能であることを確認できた。これに対して、面内磁気記録媒体を用いた場合や表2のNo.1やNo.5に示した媒体を用いた場合は、高速転送での記録再生においてエラーが多発し、装置の信頼性に問題があった。
【0034】
【発明の効果】
本発明によると、線記録密度300kFCI以上の高密度記録が可能でかつ毎秒50メガバイト以上の高速転送が可能な磁気記憶装置及びこれに用いることのできる垂直磁気記録媒体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】オーバーライト特性の記録周波数依存性を示す図。
【図2】本発明による垂直磁気記録媒体の基本的構造を示す断面模式図。
【図3】磁気記憶装置の概略図。
【符号の説明】
21…ディスク基板、22…第1の下地層、23…第2の下地層、24…垂直磁気記録層、25…保護潤滑層、31…磁気ディスク、32…磁気ディスク駆動部、33…磁気ヘッド、34…磁気ヘッド駆動部、35…記録再生信号処理系
Claims (4)
- ディスク状基板の上に下地層と垂直磁気記録層とが積層して形成され、前記垂直磁気記録層の残留磁化の飽和磁化に対する比が記録領域内でディスク外周ほど大きく、前記垂直磁気記録層の残留磁化の飽和磁化に対する比が記録領域内のディスク最内周で0.7以上であり、前記垂直磁気記録層の保磁力が記録領域内でディスク外周ほど小さく、記録領域内のディスク最外周で3000エルステッド以下であることを特徴とする垂直磁気記録媒体。
- 前記垂直磁気記録層の膜厚が記録領域内でディスク外周ほど大きく、記録領域内のディスク最外周で30nm以下であることを特徴とする請求項1記載の垂直磁気記録媒体。
- 前記下地層の膜厚が記録領域内でディスク外周ほど小さいことを特徴とする請求項2記載の垂直磁気記録媒体。
- 磁気記録媒体と、磁気記録媒体駆動部と、磁気ヘッドと、磁気ヘッド駆動部と、記録再生信号処理系を有する磁気記憶装置において、前記磁気記録媒体として請求項1〜3のいずれか1項記載の垂直磁気記録媒体を用い、記録周波数が250MHz以上であり、最高線記録密度が300kFCI以上であることを特徴とする磁気記憶装置。
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