JP3697038B2 - 電子写真感光体、該電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は単層型電子写真感光体並びに該電子写真感光体を備えたプロセスカ−トリッジ及び電子写真装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真感光体で用いる光導電材料としてはセレン、酸化亜鉛およびカドミウム等を主成分とする感光層を有する無機感光体が広く用いられてきた。これらはある程度の感光体としての基礎特性は備えているが、成膜が困難である、可塑性が悪い、製造コストが高い等の問題がある。更に無機光導電性材料は一般的に毒性が強く、製造上並びに取り扱い上にも大きな制約があった。
【0003】
一方、有機光導電材料を主成分とする感光体は、無機感光体の上記欠点を補う等多くの利点を有し、近年注目を集めており、これまで数多くの提案がされ、かつ、実用化されてきている。このような有機感光体としてはポリビニルカルバゾ−ルに代表される光導電性ポリマ−等と2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン等のルイス酸とから形成される電荷移動錯体を主成分とする電子写真感光体が提案されている。これらの有機光導電性ポリマ−は、無機光導電性材料に比べて軽量性、成膜性等の点では優れているが、感度、耐久性、安全性等の点で無機光導電性材料に比べて劣っており、必ずしも満足できるものではなかった。
【0004】
一方、電荷発生機能と電荷輸送機能とをそれぞれ別の物質に分担させた機能分離型電子写真感光体が、従来の有機感光体の欠点とされていた感度や耐久性に改善をもたらした。このような機能分離型感光体は、電荷発生物質と電荷輸送物質の各々の材料選択の範囲が広く、任意の特性を有する電子写真感光体を比較的容易に作成できるという利点を有している。
【0005】
しかし、これら機能分離型の感光体はその殆どが電荷発生層上に電荷輸送層をこの順に積層した積層型の感光体であり、この構成の感光体は負帯電プロセスで用いられる。このような構成を採る理由は、使用される材料を混合して単に単層として形成した感光体では帯電性、感度、静電的特性の疲労現象等が実用の程度以下である場合が多いのに対し、積層型感光体ではこれ等の欠点が抑えられ、かつ、機械的強度に富み膜厚の設計が可能な電荷輸送層を表面に配することで、電子写真プロセスに供された状態で十分な機械的耐久性を感光体に持たせることが可能となるからである。
【0006】
また、高速電子写真プロセスにおいても十分な電荷移動度を持つ有機材料が、これまで殆どの場合、正孔輸送の性質のみを有するドナ−化合物に限られ、また静電的特性の疲労現象を極力抑え、かつ、プロセスに供された状態で感光体の機械的強度を十分保持させるには、電荷発生と電荷移動との機能を層毎に分けた機能分離型構成とし、正孔輸送性の有機材料を有する電荷輸送層を表面に配した積層構造の感光体が最も合理的とされていたためである。しかしながら、このような機能分離型の電子写真感光体は新たな問題を生じているのが実情である。
【0007】
問題の一つとして負帯電で使用される有機感光体を用いた電子写真装置では、帯電に伴うオゾンの発生量が多く、このために環境を汚染したり、感光体が酸化されて劣化したりする恐れがあり、これを防ぐために、オゾンを発生させないシステムや、装置内のオゾンを回収するシステム等を必要とし、プロセスやシステムを複雑化するという欠点がある。また感光体の製造の面からも数回にわたる塗工工程及びそれらの層の膜厚の正確な管理などコストを引き上げる要因となっている。
【0008】
こうした問題を考慮すると、有機材料を用いた電子写真感光体としては、正帯電プロセス用、及び/または単層型(感光層が一層からなるタイプ)構成が望ましいことが理解される。更に、該感光体がそのまま、あるいは若干の変更で負帯電プロセスに用いることが可能であれば、安価で使用環境の自由度が高い利点を有する感光体を提供することが可能となる。
【0009】
これらを達成すべく近年単層型感光体が数多く提案されつつある。例えば特開平6−123985号公報、特開平6−130688号公報、特開平6−123981号公報、特開平6−123984号公報等に感光体中に電荷発生物質、有機正孔輸送物質及び有機電子輸送物質を結着樹脂中に分散した感光体が提案されている。しかし、それらの感光体の感度が十分でない、繰り返し使用で電位の変動が大きい、残留電位が高い等、更に改善すべき点が多く実用に満足できるものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電性、感度に優れ、また電子写真プロセスの繰り返しにおいても電位特性の安定性に富んだ単層型の感光層を用いた電子写真感光体を提供することである。また該電子写真感光体を用いたプロセスカ−トリッジ並びに電子写真装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の参考の一態様に係る単層型電子写真感光体は、導電性支持体上に直接または下引き層を介して単層の感光層を設けてなり、その感光層は少なくとも電荷発生物質、有機正孔輸送物質および有機電子輸送物質が結着樹脂中に分散され、かつ、該有機電子輸送物質が下記一般式(1)で示される化合物である単層型電子写真感光体から構成される:
一般式(1)
【化13】
式中、R1、R2およびR3は−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R4
または
【化14】
pおよびqは0、1、2のいずれかの整数、rは0、1のいずれかの整数であり、R4およびR5はニトロ基を有する芳香環基またはニトロ基を有する複素環基を示し、R6はアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基または置換基を有してもよい複素環基を示し、Xは置換基を有してもよい2価の芳香族炭化水素環基または隣接する炭素原子と共に飽和炭化水素環を形成するのに必要な残基を示す。
【0012】
本発明の参考の一態様に係る単層型電子写真感光体は、導電性支持体上に直接または下引き層を介して単層の感光層を設けてなり、その感光層は少なくとも電荷発生物質、有機正孔輸送物質および有機電子輸送物質が結着樹脂中に分散され、かつ、該有機電子輸送物質が下記一般式(2)で示される化合物である単層型電子写真感光体から構成される:
一般式(2)
【化15】
式中、R7、R8、R9、R10、R11およびR12は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基、−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R13または
【化16】
R7〜R12のうち少なくとも2つ以上は−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R13または
【化17】
であり、R13及びR14はニトロ基を有する芳香環基またはニトロ基を有する複素環基を示し、R15はアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基または置換基を有してもよい複素環基を示し、pおよびqは0、1、2のいずれかの整数、rは0、1のいずれかの整数であり、R14及びR15は互いに直接または飽和炭化水素、不飽和炭化水素、酸素原子、硫黄原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0013】
また、本発明は導電性支持体上に直接または下引き層を介して単層の感光層を塗布により設けてなり、その感光層は少なくとも電荷発生物質、有機正孔輸送物質および有機電子輸送物質が結着樹脂中に分散され、かつ、該有機電子輸送物質が下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする単層型電子写真感光体空構成される:
一般式(3)
【化18】
式中、R16、R17、R18、R19、R20及びR21は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基、−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R22または
【化19】
R16〜R21のうち少なくとも2つ以上は−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R22または
【化20】
であり、かつ、R 16 〜R 21 のうちの少なくとも1つは、−CH=CH−NO 2 、−(CH=CH) 2 −NO 2 、−(CH=CH)q−R 22 および
【化21】
からなる群から選ばれる何れかであり、R22及びR23はニトロ基を有する芳香環基またはニトロ基を有する複素環基を示し、R24はアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基または置換基を有してもよい複素環基を示し、pおよびqは0、1、2のいずれかの整数、rは0、1のいずれかの整数であり、R23及びR24は互いに直接または飽和炭化水素、不飽和炭化水素、酸素原子、硫黄原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0014】
また、本発明の参考の一態様に係る単層型電子写真感光体は、導電性支持体上に直接または下引き層を介して単層の感光層を設けてなり、その感光層は少なくとも電荷発生物質、有機正孔輸送物質および有機電子輸送物質が結着樹脂中に分散され、かつ、該有機電子輸送物質が下記一般式(4)で示される化合物である単層型電子写真感光体から構成される。
一般式(4)
【化22】
式中、R25、R26、R27及びR28は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基、−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R29または
【化23】
R16〜R21のうち少なくとも2つ以上は−(CH=CH)p−NO2、−(CH=CH)q−R29または
【化24】
であり、R29及びR30はニトロ基を有する芳香環基またはニトロ基を有する複素環基を示し、R31はアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよい芳香環基または置換基を有してもよい複素環基を示し、pおよびqは0、1、2のいずれかの整数、rは0、1のいずれかの整数であり、R30及びR31は互いに直接または飽和炭化水素、不飽和炭化水素、酸素原子、硫黄原子を介して結合して環を形成してもよい。
【0015】
また、本発明は前記本発明の単層型電子写真感光体、及び帯電手段、現像手段及びクリ−ニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカ−トリッジから構成される。
【0016】
また、本発明は前記本発明の単層型電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置から構成される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の単層型電子写真感光体は帯電性と感度に優れ、低速から高速までの電子写真プロセスに好適であり、また電荷発生物質の選択により、分光感度域が制御でき、白黒またはフルカラ−用の複写機から書き込み用にLEDやレ−ザ−を用いたペ−ジプリンタ−の感光体にまで適用することが可能である。
【0018】
従来の電荷発生物質を樹脂に分散させた形態の単層型電子写真感光体では電荷発生物質が電荷輸送機能も兼ねており、かつ、正孔及び電子の両方の輸送性の良好な電荷発生物質がないため、感度が低い、電荷の輸送性が低いために繰り返し使用時に残留電位の上昇や帯電電位の低下が起こる等の欠点があった。これらの欠点を解決するために電荷発生物質と正孔輸送物質を樹脂中に分散した感光体も提案されたが、単に正孔輸送物質を添加した感光体では、正孔輸送機能は向上するが電子輸送は引き続き電荷発生物質が担っているために十分ではなく、残留電位が高い、繰り返し使用時の電位安定性が低い等の問題点を克服できなかった。
【0019】
本発明においては、その感光層に少なくとも電荷発生物質、有機正孔輸送物質及び有機電子輸送物質が結着樹脂中に分散され、かつ、該有機電子輸送物質が一般式(3)で示される化合物を用いることにより、上記問題点を解決するものである。これら問題点が解決される理由は完全には明らかではないが、一つには一般式(3)で示される化合物の分子内における電子軌道の共役が広範囲に広がっているために電子輸送性が優れていること、更には一般式(3)で示される化合物の非結合準位のエネルギ−レベルが低いために電荷発生物質から一般式(3)で示される化合物への電子の注入性が高いこと等によって、電荷発生物質内の光吸収によって発生した電子及び正孔が各々一般式(3)で示される化合物及び有機正孔輸送物質に容易に注入、輸送されることに起因するものと考えられる。
【0020】
本発明の単層型電子写真感光体を図面に沿って更に詳細に説明する。図1は本発明の単層型電子写真感光体の1例を示しており、1Aは導電性支持体、1Bは感光層、1B1は電荷発生物質、1B2は結着樹脂中に有機正孔輸送物質と有機電子輸送物質(一般式(3)で示される化合物)とが分子状に分散されたマトリックスを表わしている。
【0021】
本発明の感光体においては前述したように一般式(3)で示される化合物が有機電子輸送物質として添加される。
【0022】
次に、本発明の参考例に係る単層型電子写真感光体に用いられる一般式(1)、一般式(2)または一般式(4)で示される化合物の代表例、並びに本発明に係る単層型電子写真感光体に用いられる一般式(3)で示される化合物の代表例を列挙する。ただし、これらの化合物に限定されるものではない。
【0023】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【0024】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【0025】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【表29】
【0026】
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【表34】
【表35】
【表36】
【表37】
【表38】
【0027】
【表39】
【表40】
【表41】
【表42】
【表43】
【表44】
【表45】
【表46】
【表47】
【表48】
【表49】
【表50】
【表51】
【表52】
【0028】
本発明における有機電子輸送物質(一般式(3)で示される化合物)の感光層1B全体に占める量は1〜50wt%、好ましくは5〜40wt%である。
【0029】
本発明の感光体においては、必須成分として有機正孔輸送物質が含まれる。感光層中での有機正孔輸送物質の役割は電荷発生物質で発生した正孔を感光層中で移動させることである。この輸送機能により電荷発生物質中で正孔が蓄積されずに、電荷発生物質の電荷発生機能を十分に発揮させることができる。
【0030】
本発明において用いられる有機正孔輸送物質としては、分子中にトリフェニルアミン部位を有する化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、ピラゾリン化合物、オキサジアゾ−ル化合物、カルバゾ−ル化合物、スチリル化合物、ブタジエン系化合物、ポリシラン化合物、ポリビニルカルバゾ−ル等のドナ−性化合物が挙げられる。有機正孔輸送物質の感光層1Bに占める割合は15wt%以上、好ましくは20〜50wt%の範囲である。
【0031】
感光層1Bにおける結着樹脂の役割は電荷発生物質の良好な分散と有機電子輸送物質及び有機正孔輸送物質の分子状の分散ばかりではなく、電子写真プロセスで必要とされる感光層の機械的強度も担っている。このため、結着樹脂の組成比が低い場合には、これらの諸特性が損なわれることとなる。従って、感光層に占める結着樹脂の量は極端に低くはできない。結着樹脂の感光層1B全体に占める割合は30〜90wt%、好ましくは40〜70wt%が適当である。
【0032】
本発明において用いられる結着樹脂としては特に限定されるものではなく、市販の樹脂を使用することができる。感光層の結着樹脂として使用可能な樹脂の例としてはポリエステル樹脂、ポリカ−ボネ−ト樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、セルロ−ス、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコ−ン樹脂、アルキド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂等が挙げられる。
【0033】
本発明では電荷発生物質も感光層内の必須成分である。本発明において用いることのできる電荷発生物質としてはセレン化合物、アモルファスシリコン、硫化カドミウム、酸化亜鉛等の無機光導電性物質の粒子や、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、多環キノン顔料等が挙げられる。これらの電荷発生物質の感光層1Bに含まれる量は0.1〜40wt%、好ましくは0.3〜20wt%の範囲が最適である。
【0034】
本発明の感光層1Bの厚さは5〜100μm、最適には7〜35μmの範囲である。
【0035】
本発明で用いる導電性支持体1Aとしてはアルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス等の金属板、金属ドラムまたは金属箔、酸化スズ、ヨウ化銅等の薄膜を蒸着あるいは塗布したプラスチックフィルムあるいはガラス等が挙げられる。
【0036】
本発明の感光体においては、導電性及び支持体と感光層の密着性の改良を目的として支持体と感光層との間に下引き層を設けることもできる。下引き層の材料としては前記感光層に用いる結着樹脂例に挙げた樹脂のほかに、ポリアミド樹脂、ポリビニルアルコ−ル、カゼイン、ポリビニルピロリドン等を用いることができる。下引き層の膜厚は0.01〜20μm、最適には0.1〜5μmの範囲である。
【0037】
更に本発明の感光体は感光層1Bの上に耐久性等の向上を目的として表面保護層を設けてもよい。
【0038】
本発明の感光体の作成は、前記材料を有機溶媒中に溶解またはボ−ルミル、サンドミル、超音波等で分散して感光層形成液を調製し、これを浸漬法やブレ−ド塗布法、スプレ−塗布法等で導電性支持体1A上に塗布し乾燥して感光層1Bを形成すればよい。
【0039】
図2に本発明の電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す。図において、1はドラム状の本発明の電子写真感光体であり、じく2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。感光体1は回転過程において、一次帯電手段3によりその周面に正または負の所定電位の均一帯電を受け、次いで、スリット露光やレ−ザ−ビ−ム走査露光等の像露光手段(不図示)からの画像露光光4を受ける。こうして感光体1の周面に静電潜像が順次形成されていく。
【0040】
形成された静電潜像は、次いで現像手段5によりトナ−現像され、現像されたトナ−現像像は、不図示の給紙部から感光体1と転写手段6との間に感光体1の回転と同期取りされて給送された転写材7に、転写手段6により順次転写されていく。像転写を受けた転写材7は感光体面から分離されて像定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより複写物(コピ−)として装置外へプリントアウトされる。像転写後の感光体1の表面は、クリ−ニング手段9によって転写残りトナ−の除去を受けて清浄面化され、更に前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理がされた後、繰り返し画像形成に使用される。なお、一次帯電手段3が帯電ロ−ラ−等を用いた接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0041】
本発明においては、上述の感光体1、一次帯電手段3、現像手段5及びクリ−ニング手段9等の構成要素のうち、複数のものをプロセスカ−トリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカ−トリッジを複写機やレ−ザ−ビ−ムプリンタ−等の電子写真装置本体に対して着脱可能に構成してもよい。例えば一次帯電手段3、現像手段5及びクリ−ニング手段9の少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカ−トリッジ化し、装置本体のレ−ル12等の案内手段を用いて装置本体に着脱可能なプロセスカ−トリッジ11とすることができる。また、画像露光光4は、電子写真装置が複写機やプリンタ−である場合には、原稿からの反射光や透過光を用いる、あるいは、センサ−で原稿を読み取り、信号化し、この信号に従って行われるレ−ザ−ビ−ムの走査、LEDアレイの駆動及び液晶シャッタ−アレイの駆動等により照射される光である。
【0042】
一方、ファクシミリのプリンタ−として使用する場合には、画像露光光4は受信デ−タをプリントするための露光光になる。図2はこの場合の1例をブロック図で示したものである。コントロ−ラ−14は画像読取部13とプリンタ−22を制御する。コントロ−ラ−14の全体はCPU20により制御されている。画像読取部13からの読取りデ−タは、送信回路16を通して相手局に送信される。相手局から受けたデ−タは受信回路15を通してプリンタ−22に送られる。画像メモリには所定の画像デ−タが記憶される。プリンタ−コントロ−ラ−21はプリンタ−22を制御している。17は電話である。回線18から受信された画像(回線を介して接続されたリモ−ト端末からの画像情報)は、受信回路15で復調された後、CPU20によって画像情報を複号処理され順次画像メモリ19に格納される。そして、少なくとも1頁の画像が画像メモリ19に格納されると、その頁の画像記録を行う。CPU20は、画像メモリ19から1頁の画像情報を読み出し、プリンタ−コントロ−ラ−21に複号化された1頁の画像情報を送出する。プリンタ−コントロ−ラ−21は、CPU20からの1頁の画像情報を受け取ると、その頁の画像情報記録を行うべくプリンタ−22を制御する。CPU20は、プリンタ−22による記録中に、次ぎの頁の受信を行っている。このようにして、画像の受信と記録が行われる。
【0043】
【実施例】
参考例1
オキシチタニルフタロシアニン4gをポリビニルブチラ−ル(ブチラ−ル化度65%、重量平均分子量35000)7gをシクロヘキサノン溶媒85gに溶解した液と共にサンドミルで48時間分散した。
【0044】
化合物例(1)の有機電子輸送物質5g、下記構造式(a)の有機正孔輸送物質4g
【化9】
及びZ型ポリカ−ボネ−ト樹脂(重量平均分子量30000)9gをクロルベンゼン70gに溶解した液に、先に調製したオキシチタニルフタロシアニンの分散液5gを加え、更にボ−ルミルで1時間分散して感光層用の塗工液を調製した。
【0045】
次に、アルミニウム基板上にポリアミド樹脂(商品名アミランCM−8000、東レ(株)製)の5%メタノ−ル溶液をマイヤ−バ−で塗布し0.5μmの下引き層を形成した上に、更にマイヤ−バ−で先に調製した感光層塗工液を塗布し、乾燥後の膜厚が16μmの単層型電子写真感光体を作成した。
【0046】
この電子写真感光体を川口電機(株)製静電複写紙試験装置(EPA−8100)を用い±6KVの印加電圧を加え、その表面電位を正または負に帯電させて初期の表面電位Va(V)、3秒間暗減衰させた後の表面電位Vd(V)と20luxの光源で光照射して表面電位が1/2に減衰するのに要する露光量E1/2 (lux・sec)を測定した。
【0047】
また、得られた感光体シ−トをアルミニウム製シリンダ−上に貼り付けた後、複写機NP−6060(キヤノン(株)製)の改造機に装着し、表面電位:Vd=+650V、露光後電位:Vl=+200Vになるように設定した後、1000回複写を繰り返し行い、その後の表面電位:Vd’及び露光後電位:Vl’を表面電位計を用いて測定した。更に1000回複写後の表面電位の変動分:ΔVd=Vd−Vd’及び露光後電位の変動分:ΔVl=Vl−Vl’を算出し、結果を表53に示す。
【0048】
参考例2〜10
参考例1で用いた有機正孔輸送物質、有機電子輸送物質を表53に示すように代えた他は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し同様の評価を行った。結果を表53に示す。
【0049】
使用した有機正孔輸送物質は下記構造式(b)〜(i)の化合物である。
構造式(b)
【化10】
構造式(c)
【化11】
構造式(d)
【化12】
構造式(e)
【化13】
構造式(f)
【化14】
構造式(g)
【化15】
構造式(h)
【化16】
構造式(i)
【化17】
【0050】
比較例1
参考例1において、有機電子輸送物質を除いた他は、参考例1と同様の条件で電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表53に示す。
【0051】
比較例2及び3
参考例1において用いた有機電子輸送物質に代えて下記構造式(j)及び(k)を用いた他は、参考例1と同様にして電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表53に示す。
構造式(j)
【化25】
構造式(k)
【化26】
【0052】
参考例11
参考例1において用いたオキシチタニウムフタロシアニンを下記構造式のビスアゾ顔料に代えた他は、参考例1と同様の条件で電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表54に示す。
【化27】
【0053】
参考例12
参考例11で用いた有機正孔輸送物質(a)に代えて(b)2.5g及び(d)2.5gを用いた他は、参考例11と同様の条件で電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表54に示す。
【0054】
比較例4
参考例11において有機電子輸送物質を除いた他は、参考例11と同様の条件で電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表54に示す。
【0055】
比較例5
参考例12において有機電子輸送物質を除いた他は、参考例12と同様の条件で電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表54に示す。
【0056】
参考例13
参考例1に用いた感光層上に下記の方法で保護層を形成した。
【0057】
結着樹脂として下記構造式のアクリルモノマ−25部、
【化28】
光開始剤として2−メチルチオキサントン2部、平均粒径0.02μmのアンチモン含有酸化スズ微粒子(商品名T−1、三菱マテリアル(株)製)50部及びトルエン300部を混合しサンドミルで72時間分散して保護層用の塗工液を調製した。この塗工液を実施例1におけると同様の感光層上にスプレ−塗工にて成膜し、乾燥後高圧水銀灯にて800mW/cm2の光強度で5秒間紫外線照射して膜厚3μmの保護層を形成し、電子写真感光体を作成した。この電子写真感光体を参考例1と同様の評価を行った。結果を表54に示す。
【0058】
【表53】
【表54】
【0059】
参考例14
参考例1において用いた化合物例(1)の有機電子輸送物質に代えて化合物例(92)の有機電子輸送物質を用いた他は、参考例1と同様にして単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表55に示す。
【0060】
参考例15〜23
参考例14で用いた有機正孔輸送物質、有機電子輸送物質を表55に示すように代えた他は、参考例14と同様にして電子写真感光体を作成し同様の評価を行った。結果を表55に示す。
【0061】
参考例24
参考例14において用いたオキシチタニウムフタロシアニンを参考例11で用いたビスアゾ顔料に代えた他は、参考例14と同様の条件で単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表56に示す。
【0062】
参考例25
参考例23において用いた有機正孔輸送物質(a)に代えて(b)を2.5g及び(d)を2.5gを用いた他は、参考例23と同様の条件で単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表56に示す。
【0063】
参考例26
参考例14で形成した感光層上に参考例13におけると同様の条件で保護層を形成し、同様の評価を行った。結果を表56に示す。
【0064】
【表55】
【表56】
【0065】
実施例1
参考例1において用いた化合物例(1)の有機電子輸送物質に代えて化合物例(165)の有機電子輸送物質を用いた他は、参考例1と同様にして単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表57に示す。
【0066】
実施例2〜9
実施例1で用いた有機正孔輸送物質、有機電子輸送物質を表57に示すように代えた他は、実施例1と同様にして電子写真感光体を作成し同様の評価を行った。結果を表57に示す。
【0067】
実施例10
実施例1において用いたオキシチタニウムフタロシアニンを実施例11で用いたビスアゾ顔料に代えた他は、実施例1と同様の条件で単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表58に示す。
【0068】
実施例11
実施例10において用いた有機正孔輸送物質(a)に代えて(b)を2.5g及び(d)を2.5gを用いた他は、実施例10と同様の条件で単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表58に示す。
【0069】
実施例12
実施例1で形成した感光層上に参考例13におけると同様の条件で保護層を形成し、同様の評価を行った。結果を表58に示す。
【0070】
【表57】
【表58】
【0071】
参考例27
参考例1において用いた化合物例(1)の有機電子輸送物質に代えて化合物例(217)の有機電子輸送物質を用いた他は、参考例1と同様にして単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表59に示す。
【0072】
参考例28〜36
参考例27で用いた有機正孔輸送物質、有機電子輸送物質を表59に示すように代えた他は、参考例27と同様にして電子写真感光体を作成し同様の評価を行った。結果を表59に示す。
【0073】
参考例37
参考例27において用いたオキシチタニウムフタロシアニンを参考例11で用いたビスアゾ顔料に代えた他は、参考例27と同様の条件で単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表60に示す。
【0074】
参考例38
参考例37において用いた有機正孔輸送物質(a)に代えて(b)を2.5g及び(d)を2.5gを用いた他は、参考例37と同様の条件で単層型電子写真感光体を作成し、同様の評価を行った。結果を表60に示す。
【0075】
参考例39
参考例27で形成した感光層上に参考例13におけると同様の条件で保護層を形成し、同様の評価を行った。結果を表60に示す。
【0076】
【表59】
【表60】
【0077】
【発明の効果】
本発明の単層型の感光層よりなる電子写真感光体は、感度、帯電性に優れ、かつ、複写プロセスを繰り返しても極めて電位特性が安定しており、質の高い画像を安定的に供給することができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
図1
本発明における単層型の感光層よりなる電子写真感光体の1例の該略図
【図2】本発明の電子写真感光体を有するプロセスカ−トリッジを有する電子写真装置の概略構成を示す図
【図3】本発明の電子写真感光体を有するファクシミリのブロックの例を示す図
【符号の説明】
1A 導電性支持体
1B 感光層
1B1 電荷発生物質
1B2 有機正孔輸送物質及び有機電子輸送物質が結着樹脂中に分子分散された層
1 本発明の電子写真感光体
2 軸
3 一次帯電手段
4 画像露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 像定着手段
9 クリ−ニング手段
10 前露光光
11 プロセスカ−トリッジ
12 レ−ル
13 画像読取部
14 コントロ−ラ−
15 受信回路
16 送信回路
17 電話
18 回線
19 画像メモリ
20 CPU
21 プリンタ−コントロ−ラ−
22 プリンタ−
Claims (4)
- 導電性支持体上に直接または下引き層を介して単層の感光層を塗布により設けてなり、その感光層は少なくとも電荷発生物質、有機正孔輸送物質および有機電子輸送物質が結着樹脂中に分散され、かつ、該有機電子輸送物質が下記一般式(3)で示される化合物であることを特徴とする単層型電子写真感光体。
一般式(3)
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体、及び帯電手段、現像手段及びクリ−ニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一つの手段を一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であることを特徴とするプロセスカ−トリッジ。
- 請求項1または2に記載の電子写真感光体、帯電手段、像露光手段、現像手段及び転写手段を有することを特徴とする電子写真装置。
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