JP3696973B2 - 建物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建物内部の壁に大きな開口部を形成することができる建物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、建物の構築についてはその工業化が進み、例えば壁や床、屋根といった構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てることにより、建物を構築するといったパネル工法が一部に採用されている。このような建物において、建物内部の壁に開口部を設ける場合、例えば、平面視において壁パネルを一直線上に離間させて設け、これら壁パネルの上端部どうしの間に小壁パネルを設けることによって、該小壁パネルの下方に開口部を設けるようにしている。
一方、前記小壁パネルを含む壁パネルの上端部には、建物の屋根を構成する屋根パネルを支持するために、小屋パネルや、上部が屋根の勾配に対応して傾斜する異形の屋切パネル等が接合されている場合がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、上記構成の建物では、前記壁パネルの上に小屋パネルや屋切パネル等が接合されている場合において、建物内部の壁に開口部を設けるには、その開口部の上下方向の大きさは、小壁パネルの上下方向の幅によって規制されてしまうか、あるいは、小壁パネルを設けないにしても、最大限前記壁パネルの高さまでしか大きくできなかった。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、建物内部の壁に上下に大きな開口部を形成することができる建物を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の建物は、例えば、図1および図3に示すように、平面視において、ほぼ一直線上に離間して配置された壁17,17の上端部どうしの間に、架材21を架設し、かつ、該架材21を勾配屋根22,22の下面に沿って傾斜させており、互いに対向する前記壁17,17の側端面に、該壁17,17と同高さを有し架材21の下面を受ける支持材24,24を固定するとともに、前記壁17,17の上端面に前記架材21の側端面を受ける受材25,25を固定し、前記支持材24,24および受材25,25に前記架材21の端部を固定したものである。
【0006】
前記壁17の両側にはそれぞれ居室26,26や廊下が配設される。また、前記壁17,17どうしの間には、階段12が配設されたり、また、前記廊下や居室26,26に出入りするための開口部が配設される。
前記架材21は、例えば、角材等によって構成され、屋根を支持でき得る強度を有する。また、架材21を壁17,17の上端部どうしの間に架設するには、例えば、互いに対向する壁17,17の側端面に、該壁17,17と同高さの支持材24,24を固定しておき、一方、壁17,17の上端面に架材21の端面を受ける受材25,25を固定しておき、これら支持材24と受材25に架材21の端部を固定することにより行う。
【0007】
請求項1の建物にあっては、架材21が、一直線上に離間する壁17,17の上端部どうしに架設されており、この架材21が勾配屋根22,22に沿って傾斜しているので、該壁17,17どうしの間の開口部20は、その上端が屋根の裏面近傍まで達する大きな開口部となる。
また、この架材21によって勾配屋根22,22を支持することができるので、上述したような屋根を支持するための、小屋パネルや屋切パネル等が不要となり、当然、架材21に小屋パネルや屋切パネルの荷重がかかることがない。
【0008】
請求項2の建物は、例えば図1に示すように、請求項1において、前記架材21が、棟の左右の勾配に沿って傾斜する傾斜部21b,21bを有しているものである。
前記架材21は角材等で構成された、への字状の一体物であってもよいし、2本の角材21a,21aを所定の角度で接合して、への字状に構成したものでもよい。2本の角材21a,21aを接合する場合、その接合部に補強板23を取付けるのが好ましい。
【0009】
請求項2の建物にあっては、架材21が棟の左右の勾配に沿って傾斜する傾斜21b,21b部を有しているので、該架材21は、棟直下の壁17,17の上端部どうしの間に架設するのに好適なものとなる。また、棟直下の壁17,17の上端部どうしの間に架材21を架設することにより、壁17,17どうしの間に形成される開口部20の上下の大きさが最も大きくなる。
【0010】
請求項3の建物は、請求項1または2において、前記壁17の両側に位置する場所(図3においては居室26,26、図5においては階段12と廊下28、図6においては、廊下28と廊下30、図7においては廊下37とリビング36)の天井を、前記架材21の傾斜に沿って設けたものである。
前記壁17の両側に位置する場所とは、例えば、壁17の両側に位置する上述したような居室26、リビング36、廊下28,30、階段12等が挙げられる。
【0011】
請求項3の建物にあっては、壁17の両側に位置する場所の天井が架材21の傾斜に沿っているので、つまり、壁17,17どうしの間に形成される開口部20の上縁を構成する架材21と、前記天井とが前記開口部20を正面視した際においてほぼ面一になるので、壁17の一方の側に位置する場所から、他方の側に位置する場所を開口部20を通して一望することができ、また、空間的な拡がりを得ることができる。
【0012】
請求項4の建物は、例えば図1に示すように、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記架材21が架設される壁17を壁パネル18…で構成したものである。
前記壁パネル18は、例えば、桟材を矩形状に組んでなる枠体の両面側に、合板等からなる面材を貼設したものであり、この壁パネル1枚で前記壁を構成してもよいし、複数枚で構成してもよい。
【0013】
請求項4の建物にあっては、壁パネル18…を床パネル上に立設することによって、平面視において、ほぼ一直線上に離間する壁を容易に形成することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の建物の実施の形態例を説明する。
(第1実施形態例)
図1〜図3は、本発明に係る建物の第1例を示すもので、図1は、建物の縦断面図、図2は建物の1階の平面図、図3は2階の平面図である。
これらの図に示す建物は、壁や床、屋根といった構成要素を予め工場にてパネル化しておき、施工現場でこれらのパネルを組み立てることにより、構築されたもので、棟部1の下方に位置する建物内部の1階の壁2は、図1および図2に示すように、複数枚の壁パネル3…によって構成されており、該壁2には開口部4,5が形成されている。
【0015】
前記開口部4は、壁パネル3,3を一直線上に離間して配置するとともに、これら壁パネル3,3の対向する側端面に支持材(方立)6,6を固定し、さらに前記壁パネル3,3間に、小壁パネル7を支持材6,6に支持させた状態で設けることによって、形成されたものである。
また、前記開口部5も、前記開口部4と同様に、壁パネル3,3を一直線上に離間して配置するとともに、これら壁パネル3,3の対向する側端面に支持材(方立)6,6を固定し、さらに前記壁パネル3,3間に、小壁パネル7を支持材6,6に支持させた状態で設けることによって、形成されたものである。
【0016】
前記開口部4は、図2に示すように、南側の食堂兼居間8と、北西側の台所9とを行き来するためのものであり、該開口部4には扉は設けられていない。一方、前記開口部5は、前記食堂兼居間8と玄関ホール10とを行き来するためのものであり、該開口部5には扉5aが取付けられている。
また、前記台所9と玄関ホール10との間には廊下11が配設されており、該廊下11の南側には2階に上る階段12が配設されている。また、廊下11の北側には、西側から東側に向けて順に、ユーティリティ13、トイレ14、洗面所15、浴室16が配設されている。
【0017】
一方、棟部1の下方に位置する建物内部の2階の壁17,17は、図1および図3に示すように、複数枚の壁パネル18…によって構成されており、該壁17,17の間には開口部20が形成されている。
前記前記壁パネル17は複数の壁パネル18を接合することによって構成されたもので、前記開口部20は、壁パネル18,18を一直線上に離間して配置するとともに、これら壁パネル18,18の上端部どうしの間に架材21を架設することによって形成されたものである。
【0018】
前記架材21は、2本の角材21a,21aを、勾配屋根22,22の傾斜角と等しい角度で接合して、への字状に構成されたもので、前記角材21a,21aの上面は、棟の左右の勾配に沿って傾斜する傾斜部21b,21bとされている。また、角材21a,21aの接合部には補強板23が固定されている。
前記架材21は、勾配屋根22,22を支持でき得る強度を有するもので、該架材21を前記壁パネル18,18の上端部どうしの間に架設するには、互いに対向する壁パネル18,18の側端面に、該壁パネル18,18と同高さの支持材24,24を固定しておき、一方、壁パネル18,18の上端面に架材21の端面を受ける三角形状のパネルからなる受材25,25を固定しておき、これら支持材24と受材25に架材21の端部を固定することにより行われている。
【0019】
このように、本例の建物においては、前記架材21が、一直線上に離間する壁パネル18,18の上端部どうしに架設されており、この架材21の傾斜部21b,21bが勾配屋根22,22に沿って傾斜しているので、該壁パネル18,18どうしの間の前記開口部20は、その上端が勾配屋根22,22の裏面近傍まで達する大きな開口部となる。
また、前記架材21によって勾配屋根22,22を支持することができるので、従来のような屋根を支持するための、小屋パネルや屋切パネル等が不要となるという利点もある。
さらに、前記架材21が架設される壁17を壁パネル18…によって構成しているので、壁パネル18を床パネル上に立設することによって、平面視において、ほぼ一直線上に離間する壁17を容易に形成することができる。
【0020】
また、本例の建物においては、図3に示すように、前記壁17の南北両側には、居室26,26が配設され、前記開口部20には、前記階段12が北側の居室26側に寄せて配設されている。また、前記居室26,26の天井は、前記架材21の傾斜に沿って設けられている、つまり勾配天井となっている。
したがって、前記開口部20の上縁を構成する架材21と、前記天井とが前記開口部20を正面視した際においてほぼ面一になるので、壁17の一方の側に位置する居室26から、他方の側に位置する居室26を開口部20を通して一望することができ、また、空間的な拡がりを得ることができる。
さらに、階段11を前記開口部20の中央側に配置することによって、階段12の左右(東西)両側に、居室26,26を行き来する開口をそれぞれ形成することができ、動線が有利となる。
【0021】
(第2実施形態例)
図4および図5は、本発明の建物の第2例を示すものであり、図4は建物の1階の平面図、図5は2階の平面図である。これらの図に示す建物が、前記図1〜図3に示す建物と異なる点は、1階および2階の間取りの構成であるので、この点についてのみ説明し、他の共通分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0022】
まず、1階については、図2に示す食堂兼居間8が、食堂8aと和室8bとに分割され、和室8bの南側に、食堂8aに連接する広縁8cが配設されている。
また、2階については、図3に示す居室26,26が、それぞれ左右(東西)に分割されて、居室26a〜26dとされている。そして、本例では、前記架材21が架設されている壁17の南側の壁27と前記階段12との間に廊下28が配設されており、この廊下28を通って、前記居室26a〜26dに出入りできるようになっている。
本例では、前記開口部20において、その北側に階段12を配置し、南側に廊下28を配置することによって、居室26a〜26dのそれぞれに出入りする動線が優れたものになる。
【0023】
(第3実施形態例)
図6は、本発明の建物の第3例を示すものであり、建物の2階の平面図である。この図に示す建物が、前記図1〜図3、または図4および図5に示す建物と異なる点は、2階の間取りの構成であるので、この点についてのみ説明し、他の共通分には同一符号を付してその説明を省略する。なお、本例の建物では、1階の間取りの構成は、前記図2または図4に示す間取りのいずれの構成をとってもよい。
【0024】
本例の建物の2階については、前記北側の居室26a,26bの南側を画成する壁29と、前記階段12との間に廊下30が配設されており、この廊下30から居室26a,26bに出入りできるようになっている。
そして本例では、前記開口部20において、その北側に階段12を配置し、南側に廊下28を配置し、さらに、階段12の北側に廊下30を配置することによって、階段12を上って来た住人は、左右に曲がることによって、廊下28,30に入ることができ、よって、居室26a〜26dのそれぞれに出入りする動線が前記第2例の建物より優れたものになる。
【0025】
(第4実施形態例)
図7は、本発明の建物の第4例を示すものであり、建物の2階の平面図である。この図に示す建物が、前記図1〜図3、図4および図5、または図6に示す建物と異なる点は、2階の間取りの構成であるので、この点についてのみ説明し、他の共通分には同一符号を付してその説明を省略する。なお、本例の建物では、1階の間取りの構成は、前記図2または図4に示す間取りのいずれの構成をとってもよい。
【0026】
本例の建物の2階については、前記開口部20の東側の前記壁17の南側に居室31が配設され、該壁17の北側に居室32が配設されている。また、前記開口部20の西側の壁17の南側には、所定間隔を隔てて壁33が配設されており、この壁33の南側に居室34が配設されている。なお、この壁33と前記壁17との間にはトイレ35が配設されている。
また、前記開口部20の西側の壁17の北側には、リビング36が配設されており、前記階段12は、開口部20においてリビング36側に寄せて配設されている。また、この階段12に南側には廊下37が配設されており、この廊下37から居室31,34に出入りできるようになっている。
【0027】
本例では、階段12を上って来た住人は、すぐにリビング36に入ることができるとともに、階段12を上りながらリビング36の様子を知ることができ、さらに、階段12から廊下37を通って容易に居室31,34に出入りすることができる。
【0028】
そして、本発明の第1例〜第4例においては、2階のほぼ中央部に大きな開口部20を設け、この開口部20において階段12を、壁17の北側の居室に寄せて配置することによって、2階の間取りを、家族やライフスタイルの変化に対応させて簡単に変更することができる。なお、階段12は、壁17の南側の居室に寄せて配置しても、同様の効果を得ることができる。
なお、前記第2〜第4例においても、第1例と同様の効果を得ることができるのは勿論のことである。
【0029】
また、前記第1〜第4例では、架材21をへの字状に構成したが、本発明は、これに限ることなく、平面視において、ほぼ一直線上に離間して配置された壁の上端部どうしの間に、架材を架設し、かつ、該架材を勾配屋根の下面に沿って傾斜させればよい。例えば、建物の内部の壁において、棟の下方に位置しない壁においては、壁の上端部どうしの間に勾配屋根の傾斜に沿う斜めの架材を架設すればよい。
さらに、前記第1〜第4例では、本発明をパネル工法によって構築される建物に適用した場合を例にとって説明したが、本発明はこれに限ることなく、在来の軸組工法、ツーバイフォー工法等の各種工法によって構築される建物にも適用することができるのは勿論である。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1の建物は、平面視において、ほぼ一直線上に離間して配置された壁の上端部どうしの間に、架材を架設し、かつ、該架材を勾配屋根の下面に沿って傾斜させたものであるから、該壁どうしの間の開口部を、その上端が屋根の裏面近傍まで達する大きな開口部とすることができる。
また、この架材によって屋根を支持することができるので、従来のような屋根を支持するための、小屋パネルや屋切パネル等が不要となる。
【0031】
請求項2の建物は、請求項1において、前記架材が棟の左右の勾配に沿って傾斜する傾斜部を有しているものであるから、該架材は、棟直下の壁の上端部どうしの間に架設するのに好適なものとなる。また、棟直下の壁の上端部どうしの間に架材を架設することにより、壁どうしの間に形成される開口部の上下の大きさを最も大きくすることができる。
【0032】
請求項3の建物は、請求項1または2において、前記壁の両側に位置する場所の天井を、前記架材の傾斜に沿って設けたものであるから、壁どうしの間に形成される開口部の上縁を構成する架材と、前記天井とが前記開口部を正面視した際においてほぼ面一になり、よって、壁の一方の側に位置する場所から、他方の側に位置する場所を開口部を通して一望することができ、また、空間的な拡がりを得ることができる。
【0033】
請求項4の建物は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記架材が架設される壁を壁パネルで構成したものであるから、壁パネルを床パネル上に立設することによって、平面視において、ほぼ一直線上に離間する壁を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の建物の第1実施形態例を示すもので、建物の縦断面図である。
【図2】同、建物の1階の平面図である。
【図3】同、建物の2階の平面図である。
【図4】本発明の建物の第2実施形態例を示すもので、建物の1階の平面図である。
【図5】同、建物の2階の平面図である。
【図6】本発明の建物の第3実施形態例を示すもので、建物の2階の平面図である。
【図7】本発明の建物の第4実施形態例を示すもので、建物の2階の平面図である。
【符号の説明】
17 壁
18 壁パネル
20 開口部
21 架材
21b 傾斜部
22 勾配屋根
Claims (4)
- 平面視において、ほぼ一直線上に離間して配置された壁の上端部どうしの間に、架材が架設され、かつ、該架材が勾配屋根の下面に沿って傾斜しており、
互いに対向する前記壁の側端面に、該壁と同高さを有し前記架材の下面を受ける支持材が固定されているとともに、前記壁の上端面に前記架材の側端面を受ける受材が固定され、前記支持材および受材に前記架材の端部が固定されていることを特徴とする建物。 - 請求項1記載の建物において、
前記架材が棟の左右の勾配に沿って傾斜する傾斜部を有していることを特徴とする建物。 - 請求項1または2記載の建物において、
前記壁の両側に位置する場所の天井が、前記架材の傾斜に沿って設けられていることを特徴とする建物。 - 請求項1〜3のいずれかに記載の建物において、前記架材が架設される壁が壁パネルで構成されていることを特徴とする建物。
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