JP3696699B2 - ポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定のスチレン系樹脂を含有し、表面状態、衝撃強度およびウェルド特性などが改善された成形材料として有用なポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリアセタールは、優れた機械的性質、電気的性質、耐薬品性、耐熱性を有するエンジニアリング・プラスチックとして広く利用されている。しかし、利用分野が拡大するのに伴って、ポリアセタールを含む材料の性質にもさらに一層の改良が要求されている。例えば、自動車部品などとして用いる成形品には、広い温度範囲に亘って高度の耐衝撃性が望まれている。
【0003】
従来、ポリアセタールの衝撃特性を改良する試みが数多く行われている。例えば、特公昭45−18023号公報にはいわゆるアイオノマーの添加、特公昭45−26231号公報にはエチレン−アクリル酸共重合体の添加、特公昭50−33095号公報には脂肪族ポリエーテルの添加が提案されている。また、特開昭59−145243号公報、特開昭61−19652号公報には、ポリアセタールへの熱可塑性ポリウレタンの添加が提案されている。
これらの組成物は、耐衝撃性などの物性に一応の改善が見られるものの、必ずしも十分ではない。また、前記添加樹脂は成形加工性だけでなく、成形品の表面状態に悪影響を及ぼし、ポリアセタール樹脂組成物を用いて成形した成形体では、表面で剥離現象が生じ、その外観を著しく損なう場合が多い。これらの原因は、ポリアセタールと添加樹脂との親和性、相溶性、ポリアセタールに対する添加樹脂の分散性が劣ることに起因する。そのため、添加された樹脂が微細に分散せず、耐衝撃性を大きく改善できないだけでなく、ポリアセタールと添加樹脂との界面での密着力が小さく、成形品の表面で剥離が生じるものと推測される。
【0004】
ポリアセタールは高結晶性樹脂であるため成形収縮率が大きく、成形品がソリやヒケを生じて寸法精度を出し難い欠点を有しているが、それを改善するため、ポリアセタールにスチレン系樹脂などの非晶性樹脂を添加する検討が試みられている。しかし、この組成物でも、ポリアセタールに対するスチレン系樹脂の相溶性が劣るため、ウェルド特性の低下をもたらし、実用的に大きな障害となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ポリアセタール樹脂とスチレン系樹脂との親和性、相溶性を改善し、分散性を高めることができる樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、高いウェルド特性を有するとともに、成形品外観と寸法精度が改善されたポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、成形性が高く、表面剥離のない成形品を得る上で有用なポリアセタール樹脂組成物およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討の結果、極微量であってもホスホニウム塩を添加すると、ポリアセタール樹脂とスチレン系樹脂との親和性、相溶性が大きく改善することを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂および(B)カルボキシル基又は酸無水物基を有するスチレン系樹脂に、(C)ホスホニウム塩を添加した樹脂組成物であって、前記( A )ポリアセタール樹脂100重量部に対して、( C )ホスホニウム塩0.005〜2.5重量部を含有する。
また、本発明のポリアセタール樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂およびスチレン系樹脂に、ホスホニウム塩を添加した組成物であって、前記スチレン系樹脂が、カルボキシル基又は酸無水物基を有するゴム変性スチレン系樹脂と、カルボキシル基及び酸無水物基で変性されていないゴム変性スチレン系樹脂とで構成されている。
本発明の方法では、(A)ポリアセタール樹脂、(B)カルボキシル基又は酸無水物基を有するスチレン系樹脂および(C)ホスホニウム塩を溶融状態で混合することにより、ポリアセタール樹脂組成物を製造する方法、相溶性又は親和性を改善する方法や成形品外観を改善する方法も含まれる。
【0007】
なお、本明細書において、「カルボキシル基」及び「酸無水物基」を単に「カルボキシル基」と総称する場合がある。また、「カルボキシル基」を有するスチレン系樹脂を「酸変性スチレン系樹脂」と、「カルボキシル基」を有していないスチレン系樹脂を「未変性スチレン系樹脂」と称する場合がある。「酸成分」「カルボン酸」とは、特に言及しない限り、カルボン酸の等価体、例えば、酸無水物、エステル結合が形成可能な誘導体(例えば、ジメチルエステルなどの低級アルキルエステル)などを含む意味に用いる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の樹脂組成物の構成成分について詳細に説明する。
[(A)ポリアセタール樹脂]
ポリアセタール樹脂はオキシメチレン基(−CH2 O−)を主たる構成単位として含む高分子化合物であり、ポリアセタール樹脂には、ポリオキシメチレンホモポリマーおよびポリアセタールコポリマーが含まれる。このコポリマーは、オキシメチレン基以外に、炭素数2〜6程度、好ましくは炭素数2〜4程度のオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン基(−CH2 CH2 O−)、オキシプロピレン基、オキシテトラメチレン基など)を構成単位として含んでいる。炭素数2〜6程度のオキシアルキレン基の割合は、ポリアセタールの用途などに応じて適当に選択でき、例えば、ポリアセタール全体に対して、0.1〜30モル%、好ましくは1〜20モル%程度である。
【0009】
ポリアセタールコポリマーは、二成分で構成されたコポリマー、三成分で構成されたターポリマーなどの複数の成分で構成されていてもよく、ブロックコポリマーなどであってもよい。また、ポリアセタール樹脂は、線状のみならず分岐構造であってもよく、架橋構造を有していてもよい。さらに、ポリアセタール樹脂の末端は、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸などのカルボン酸とのエステル化などにより安定化されていてもよい。ポリアセタール樹脂の重合度、分岐度や架橋度も特に制限はなく、溶融成形可能であればよい。
【0010】
好ましいポリアセタール樹脂には、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリアセタールコポリマー(例えば、少なくともオキシメチレン単位とオキシエチレン単位とで構成されたコポリマー)が含まれる。熱安定性の点からは、ポリアセタールコポリマーが好ましい。
前記ポリアセタール樹脂の分子量は特に制限されず、例えば、5,000〜500,000,好ましくは10,000〜400,000程度である。
【0011】
前記ポリアセタール樹脂は、慣用の方法、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類、トリオキサン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,3−ジオキソランなどの環状エーテルを重合することにより製造できる。
【0012】
[(B)カルボキシル基を有するスチレン系樹脂]
カルボキシル基又は酸無水物基を有するスチレン系樹脂は、少なくともスチレン系単量体の単位とカルボキシル基含有単量体の単位とを含む限り特に制限されない。スチレン系単量体には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体が含まれる。これらのスチレン系単量体は単独で又は二種以上使用できる。好ましいスチレン系単量体には、スチレン、α−メチルスチレンおよびビニルトルエン、特にスチレンが含まれる。
【0013】
カルボキシル基含有単量体としては、カルボキシル基含有不飽和化合物、例えば、(メタ)アクリル酸、プロピロール酸、クロトン酸などの脂肪族不飽和モノカルボン酸、ケイ皮酸などの芳香族不飽和モノカルボン酸、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などの脂肪族不飽和ジカルボン酸、マレイン酸モノエステル(マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ2−エチルヘキシルなどのマレイン酸モノC1-10アルキルエステル)やこれらに対応するフマル酸モノエステルなどの不飽和ジカルボン酸モノエステルなどが挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は単独で又は二種以上組合わせて使用できる。
好ましいカルボキシル基含有単量体には、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステルなどが含まれる。
【0014】
スチレン系樹脂は、前記スチレン系単量体とカルボキシル基含有単量体との共重合体に限らず、他の共重合性成分との共重合体であってもよい。共重合性成分には、例えば、共重合性不飽和単量体の他、エラストマーなども含まれ、共重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸C1-18アルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピルなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなど]、マレイミド系単量体[マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミドなど]、ジエンモノマー(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、ブテンなど)などが例示できる。エラストマーには、例えば、ポリブタジエン、エチレン−プロピレンゴム(EPDMゴム)、アクリルゴム、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレンなどのハロゲン化ポリオレフィンなどが例示でき、水素添加物であってもよい。これらの共重合性不飽和単量体およびエラストマーは、それぞれ、単独で又は二種以上組合わせて使用できる。
スチレン系樹脂において、ランダム、ブロック、グラフトなどの共重合の形態、重合度、側鎖や分岐の有無とその程度、共重合組成割合などは特に制限されない。また、スチレン系樹脂には水素添加された共重合体も含まれる。
【0015】
具体的には、カルボキシル基が導入されていない未変性スチレン系樹脂には、例えば、(B-1)スチレン系単量体の単独又は共重合体(特にポリスチレン)、(B-2)スチレン系単量体と他のビニル単量体との共重合体[例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体(例えば、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体など)]、(B-3)ゴム成分で改質されたゴム変性スチレン系樹脂[例えば、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体(ABS樹脂)、ABS樹脂の水素添加物、スチレン−アクリロニトリル−エチレン共重合体、スチレン系ブロックコポリマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン共重合体など)]などが含まれる。好ましい未変性スチレン系樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ゴム変性スチレン系樹脂(耐衝撃性ポリスチレン、ABS樹脂など)が挙げられる。
カルボキシル基を有するスチレン系樹脂は、前記未変性スチレン系樹脂の重合過程又は重合後にカルボキシル基含有単量体を共重合することにより得ることができる。
スチレン系樹脂中に導入されたカルボキシル基含有単量体の量は、例えば、スチレン系樹脂全体に対して、0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.5〜5重量%程度である。
カルボキシル基を有するスチレン系樹脂(B)は、単独で又は複数組み合わせて使用でき、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂を用いる限り、前記未変性スチレン系樹脂と併用してもよい。カルボキシル基を有するスチレン系樹脂と未変性スチレン系樹脂とを組合わせると、カルボキシル基を有するスチレン系樹脂の使用量が比較的少量であっても、ポリアセタール樹脂と未変性スチレン系樹脂との親和性を改善できる。カルボキシル基含有スチレン系樹脂と未変性スチレン系樹脂との割合は、例えば、前者/後者=1/99〜100/0(重量%)、好ましくは5/99〜95/5(重量%)(例えば、10/90〜90/10(重量%))、さらに好ましくは20/80〜80/20(重量%)(例えば、30/70〜70/30(重量%))程度である。
【0016】
カルボキシル基を有するスチレン系樹脂(B)の使用量は、スチレン系樹脂の種類、所望する成形品の特性などに応じて選択でき、例えば、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対して、1〜100重量部、好ましくは2〜75重量部、さらに好ましくは5〜60重量部程度であり、3〜50重量部程度である場合が多い。(B)成分の添加量が1重量部未満では、成形品外観がさほど改善されず、100重量部を越えると、ポリアセタール樹脂の特性である高温剛性や荷重撓み温度などが低下し易い。
【0017】
[(C)ホスホニウム塩]
本発明の特色は、(A)ポリアセタール樹脂と(B)カルボキシル基を有するスチレン系樹脂とが共存する系に(C)ホスホニウム塩を添加することにより、前記双方の樹脂(A)(B)の親和性、相溶性を改善し、成形加工時の表層剥離を抑制するとともに、成形品外観、ウェルド特性などに優れた成形材料を得る点にある。
【0018】
(C)ホスホニウム塩は、例えば、式[RPH3]+X−で表されるモノ置換ホスホニウム塩(モノアルキルホスホニウム塩など)、式[R2PH2]+X−で表されるジ置換ホスホニウム塩(ジアルキルホスホニウム塩など)、式[R3PH]+X−で表されるトリ置換ホスホニウム塩(トリアルキルホスホニウム塩など)であってよいが、式[R4P]+X−で表される4級ホスホニウム塩であるのが好ましい。なお、前記式中、Rは同一又は異なってアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基を示し、Xはハロゲン原子又は酸基を示す。
【0019】
ホスホニウム塩において、Rで表されるアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル基などの直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基が例示できる。好ましいアルキル基には直鎖状又は分岐鎖状C1-6アルキル基が含まれる。
アリール基には、フェニル、ナフチル基などのC6-12アリール基が含まれ、シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル基などのC4-10シクロアルキル基が例示でき、アラルキル基としては、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリル基などのC7-14アラルキル基が例示できる。
複数の置換基Rが置換したホスホニウム塩において、置換基Rの種類は、置換基の数によって異なっていてもよい。
また、ホスホニウム塩において、Xで表されるハロゲン原子には、塩素、臭素、ヨウ素原子が含まれ、酸基には、ギ酸、酢酸などの有機酸やオキシカルボン酸のアニオン残基が含まれる。Xは塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオンである場合が多い。
【0020】
好ましい4級ホスホニウム塩には、RがC1-6アルキル基、フェニル基、ベンジル基である化合物が含まれ、これらの置換基Rの置換数及び組み合わせは特に制限されない。4級ホスホニウム塩には、例えば、テトラ−C1-6アルキルホスホニウムハライド(例えば、テトラメチルホスホニウムブロマイド、テトラエチルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホスホニウムブロマイドなど)、テトラ−C6-10アリールホスホニウムハライド(例えば、テトラフェニルホスホニウムブロマイドなど)、C1-6アルキル−トリ−C6-10アリールホスホニウムハライド(例えば、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなど)、ジ−C1-6アルキル−ジ−C6-10アリールホスホニウムハライド(例えば、ジメチルジフェニルホスホニウムブロマイド、ジエチルジフェニルホスホニウムブロマイド、ジブチルジフェニルホスホニウムブロマイドなど)、トリ−C1-6アルキル−モノ−C6-10アリールホスホニウムハライド(例えば、トリメチルフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルフェニルホスホニウムブロマイド、トリブチルフェニルホスホニウムブロマイドなど)、トリ−C1-6アルキル−モノ−C7-14アラルキルホスホニウムハライド(例えば、トリメチルベンジルホスホニウムブロマイド、トリエチルベンジルホスホニウムブロマイド、トリプロピルベンジルホスホニウムブロマイド、トリブチルベンジルホスホニウムブロマイドなど)、C7-14アラルキル−トリ−C6-10アリールホスホニウムハライド(例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、フェネチルトリフェニルホスホニウムクロライドなど)などが含まれる。これらの4級ホスホニウム塩は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
4級ホスホニウム塩としては、例えば、テトラブチルホスホニウムブロマイドなどのテトラ−C1-6アルキルホスホニウムハライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドなどのテトラ−C6-10アリールホスホニウムハライド、メチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイドなどのC1-6アルキル−トリ−C6-10アリールホスホニウムハライド、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライドなどのC7-14アラルキル−トリ−C6-10アリールホスホニウムハライドなどを用いる場合が多い。
【0022】
ホスホニウム塩(C)は極めて少量の添加量でポリアセタール樹脂(A)とポリエステル系樹脂(B)との親和性を大きく改善する。そのためホスホニウム塩(C)の添加量は、成形品の特性を損なわない限り広い範囲から選択でき、例えば、ポリアセタール樹脂(A)100重量部に対して、0.001〜5重量部、好ましくは0.005〜2.5重量部、さらに好ましくは0.01〜1重量部程度であり、0.01〜0.5重量部程度である場合が多い。
【0023】
本発明の組成物は、用途などに応じて、各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐候(光)安定剤などの安定剤、潤滑剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、滑剤、有機高分子改良剤、着色剤、充填剤などを含んでいてもよく、充填剤としては、無機化合物、有機化合物、金属やセラミックスなどで構成された繊維状、粉粒状、板状などのフィラーが例示できる。これらの添加剤は1種又は2種以上混合して使用できる。
【0024】
本発明のポリアセタール樹脂組成物は、(A)ポリアセタール樹脂、(B)スチレン系樹脂および(C)ホスホニウム塩を混合することにより製造できる。ポリアセタール樹脂組成物は、各成分を乾式又は湿式で混合した組成物であってもよいが、通常、前記成分を混合して溶融混練した組成物である場合が多い。溶融混練は、慣用の方法、例えば、前記成分を混合し、一軸又は二軸押出し機などの溶融混練機を用いて混練し、ペレット状に押出すことにより行なうことができる。組成物は、溶融混練により成形用ペレットとして押出す場合が多いものの、組成物の調製は成形法に応じて成形過程で行うことも可能である。なお、各成分の分散混合効率および本発明の効果を高めるためには、樹脂成分の一部又は全部を粉砕して混合し、混合物を溶融混練して押出し、ペレットに成形する方法、組成物を構成する成分の一部(例えば、(A)成分と(C)成分の一部)を予め溶融混練処理してマスターバッチを調製し、このマスターバッチと残りの成分とを混練して所定の組成の組成物又は成形品とする方法などが有用である。
前記安定剤などの添加剤は成形工程の任意の段階で添加してもよく、最終成形品を得る直前に添加、混合してもよい。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、成形性が高く、押出し成形、射出成形、圧縮成形、真空成形、吹き込み成形、発泡成形などのいずれの成形法によっても高い精度で成形品を得ることができる。本発明の樹脂組成物又は成形品は、何ら処理することなく優れた物性を示すものの、組成物の調製後または成形品を成形後、熱処理すると、組成物又は成形品の特性を向上させつつ安定化できる場合がある。熱処理温度は樹脂組成物の成分とその割合などに応じて選択でき、通常、80℃以上であって樹脂組成物の熱変形温度を越えない温度、例えば、80〜130℃程度、好ましくは80〜120℃程度である。
【0026】
前記のように、(A)ポリアセタール樹脂及び(B)カルボキシル基を有するスチレン系樹脂の共存系に(C)ホスホニウム塩を添加すると、(A)ポリアセタール樹脂と(B)カルボキシル基を有するスチレン系樹脂との相溶性又は親和性を大きく改善できる。また、(A)ポリアセタール樹脂及び(B)カルボキシル基を有するスチレン系樹脂の共存系に(C)ホスホニウム塩を添加すると、成形品の外観が改善でき、成形品のソリやヒケを軽減でき、寸法精度の良好な成形品が得られる。また、ポリセタール樹脂に対するスチレン系樹脂の親和性を高めることができ、成形品のウェルド強度を大きく改善できる。従って、本発明の樹脂組成物は、種々の成形品を得る上で有用である。
【0027】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、ポリアセタール樹脂とスチレン系樹脂との親和性、相溶性を改善でき、高いウェルド特性を有するとともに、成形性が高く、成形品の外観を改善できる。さらには、極めて少量のホスホニウム塩によってポリアセタール樹脂とスチレン系樹脂との親和性、相溶性を大きく改善できるので、成形品の特性が低下することもない。
本発明の方法では、ポリアセタール樹脂と特定のスチレン系樹脂とホスホニウム塩とを混合するという簡単な操作で、前記の如き優れた特性を有するポリアセタール樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、成形品の機械的特性は次のようにして評価した。
【0029】
[ウェルド引張強度及び伸度]
ゲートを両端に有し、厚み2mmのウェルド試験片を用い、ASTM D−638に準じて、ウェルド引張強度とウェルド引張伸度を測定した。
実施例及び比較例では、下記のABS樹脂及びホスホニウム塩を用いた。
[ABS樹脂]
ゴム変性スチレン系樹脂(ABS樹脂):
ダイセル化学工業(株)製,ABS樹脂,商品名「DP611」
酸変性スチレン系樹脂(酸変性ABS樹脂):
ダイセル化学工業(株)製,ABS樹脂,商品名「DPT651」
[ホスホニウム塩]
TBPB :テトラブチルホスホニウムブロマイド
ETPPB:エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド
実施例1〜4
ポリアセタール樹脂(ポリプラスチックス(株)製、M90)に、ABS樹脂、酸変性ABS樹脂と4級ホスホニウム塩(TBPB)を表1に示す割合で配合し、30mmの二軸押出機にて、設定温度200℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混練し、ペレット化した。次いで、射出成形機を用いてペレットから試験片を作製し、試験片について各種の特性を評価した。結果を表1に示す。
【0030】
実施例5〜7
4級ホスホニウム塩のTBPBに代えて、ETPPBを用いる以外、実施例1、2、4と同様にして試験片を作製し、各種の特性を評価した。結果を表2に示す。
【0031】
比較例1〜2
酸変性ABS樹脂又は4級ホスホニウム塩を添加することなく、表1及び表2に示す割合で配合し、実施例1と同様にして作製した試験片について、前記と同様の特性を評価した。結果を表1及び表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
表1及び表2から明らかなように、比較例に比べて実施例では、ウェルド強度及び伸度を大きく向上できる。
Claims (8)
- (A)ポリアセタール樹脂および(B)カルボキシル基又は酸無水物基を有するスチレン系樹脂に、(C)ホスホニウム塩を添加したポリアセタール樹脂組成物であって、前記( A )ポリアセタール樹脂100重量部に対して、( C )ホスホニウム塩0.005〜2.5重量部を含むポリアセタール樹脂組成物。
- (B)スチレン系樹脂が、ポリスチレン(B-1)、スチレンと他のビニル単量体との共重合体(B-2)およびゴム強化スチレン系樹脂(B-3)から選択された少くとも一種である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- (B-3)ゴム強化スチレン系樹脂が、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体に(メタ)アクリル酸が導入された共重合体である請求項2記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ホスホニウム塩(C)が式 [R4P]+X-(Rは同一又は異なってアルキル基、アリール基、シクロアルキル基、アラルキル基を示し、Xはハロゲン原子又は酸基を示す)で表される4級ホスホニウム塩である請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ホスホニウム塩(C)が、テトラ−C1-6アルキルホスホニウムハライド、テトラ−C6-10アリールホスホニウムハライド、C1-6アルキル−トリ−C6-10アリールホスホニウムハライド、ジ−C1-6アルキル−ジ−C6-10アリールホスホニウムハライド、トリ−C1-6アルキル−C6-10アリールホスホニウムハライド、トリ−C1-6アルキル−C7-14アラルキルホスホニウムハライド、C7-14アラルキル−トリ−C6-10アリールホスホニウムハライドから選択された少くとも一種である請求項1又は4記載のポリアセタール樹脂組成物。
- (A)ポリアセタール樹脂100重量部に対して、(B)カルボキシル基を有するスチレン系樹脂1〜100重量部および(C)ホスホニウム塩0.01〜1重量部を含む請求項1記載のポリアセタール樹脂組成物。
- ポリアセタール樹脂、スチレン系樹脂、およびホスホニウム塩を含む組成物であって、前記スチレン系樹脂が、カルボキシル基又は酸無水物基を有するゴム変性スチレン系樹脂と、カルボキシル基及び酸無水物基で変性されていないゴム変性スチレン系樹脂とで構成されているポリアセタール樹脂組成物。
- (A)ポリアセタール樹脂、(B)カルボキシル基又は酸無水物基を有するスチレン系樹脂および(C)ホスホニウム塩を溶融状態で混合するポリアセタール樹脂組成物の製造方法。
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