JP3696528B2 - 二分割長尺材の接合構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、二分割した樹脂製長尺材の端部同士を係合手段にて接合する二分割長尺材の接合構造の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
樹脂製品からなる長尺材は、例えば車両用フロントスポイラ等の車両用部材として用いる比較的長い材料である。フロントスポイラは、車幅方向に延ばして車両の前下部に備える部材として知られている。以下、従来の車両用フロントスポイラを図9に基づき説明する。
【0003】
図9は従来の車両用フロントスポイラの説明図(その1)であり、車両100の前部下部に備えたフロントバンパフェイス101にフロントスポイラ102を多数のビス103にて取付けるようにしたことを示す。フロントスポイラ102は樹脂製長尺材からなる。このような長尺材を成形するには、大型の成形用金型が必要であり、金型代が増す。金型代を下げるには、長尺材を長手方向に二分割することで、成形用金型を小型にすることが考えられる。二分割したフロントスポイラを図10に示す。
【0004】
図10(a),(b)は従来の車両用フロントスポイラの説明図(その2)である。(a)は、車両110の前部下部に備えたフロントバンパフェイス111に、長手方向に二分割したフロントスポイラ112を多数のビス113にて取付けるようにしたことを示す。フロントスポイラ112は、スポイラ左半体114Lとスポイラ右半体114Rとに二分割した樹脂製長尺材である。(b)に示すように、スポイラ左半体114Lの端面115Lにスポイラ右半体114Rの端面115Rをボルト116にて接合することで、一体化することができる。左右一体化されたフロントスポイラ112をフロントバンパフェイス111にビス止めする。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記図10に示す従来のフロントスポイラ112は、スポイラ左半体114Lとスポイラ右半体114Rとを別々の金型で成形するものであるから、それぞれ固有の寸法精度を有する。フロントスポイラ112の全体としての寸法誤差が大き過ぎると、フロントバンパフェイス111に対するビス止めの位置がずれてしまい、ビス止めできない。このため、スポイラ左半体114L並びにスポイラ右半体114Rの寸法管理が面倒であり、管理工数が増す。しかも、端面115L,115R同士をボルト116にて接合するので、接合部品が多くなるとともに、接合工数が増加する。
【0006】
そこで本発明の目的は、二分割した樹脂製長尺材の寸法管理を容易にすることができる技術を提供することにある。さらに本発明の目的は、二分割した長尺材の端部同士を、接合部品を増すことなく容易に接合することができる技術を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1は、二分割した樹脂製長尺材の端部同士を対向させるとともに、これらの端部同士を係合手段にて接合する二分割長尺材の接合構造であって、前記係合手段は、前記二分割した長尺材のうち一方の長尺材に形成した係合爪部と、この係合爪部を掛け止めるべく他方の長尺材に形成した被係合部とからなり、これらの係合爪部並びに被係合部によって、前記二分割した長尺材の端部同士を互いに離反する方向への変位を阻止でき、且つ、互いに接近する方向への変位を許容できるように構成し、前記二分割した長尺材の前記係合手段から離れた位置に、前記二分割した長尺材同士の位置決めをする位置決め手段を設け、前記位置決め手段は、前記長尺部材の端部同士に設けた取付孔を有する合せ部を有し、前記取付孔は合せ部同士を重ねたときに概ね一致し、前記二分割した長尺部材は、前記取付孔を介して被取付部にそれぞれ共締めされることを特徴とする。
【0008】
二分割された樹脂製長尺材同士を係合手段で接合した後に、長尺材の長手方向へ一定の範囲内で長尺材同士を相対的に変位させることができる。従って、この変位可能な範囲内の寸法誤差であれば、長尺材同士を相対的に変位させることで、誤差を吸収することができる。このため、二分割した樹脂製長尺材の寸法管理を容易にすることができる。例えば、二分割された長尺材同士を係合手段で接合した後に、他の部材に組付ける場合であっても、ビス止め位置等の位置合せが容易である。
さらには、係合手段を、係合爪部と被係合部との組合せ構造としたので、ボルト接合の場合のように別部材を必要としない。接合部品数を増すことなく容易に接合することができるので、接合作業性を高めることができる。
さらにまた、2箇所で位置決めをすることができるので、より確実に且つ容易に位置決めをすることができる。
【0009】
請求項2は、二分割した長尺材のうち一方の長尺材の端面に突起部を一体に形成することで、二分割した長尺材の端面同士を突起部を介して対向させるように構成したことを特徴とする。
長尺材のうち、比較的広い端面の寸法管理をする場合に比べて、小型の突起部の突出寸法を管理する方が容易である。従って、突起部の突出寸法を管理することで、二分割した長尺材の長さを、より一層容易に管理することができる。このため、設計の自由度が高まる。
【0010】
請求項3は、被係合部が、他方の長尺材の側板の一部を表裏方向に折返すことで、その折返し板と側板との間に長尺材の長手方向に貫通した係合溝であり、係合爪部が、係合溝に嵌合することで二分割した長尺材同士の位置決めをなすとともに、係合溝の縁に掛け止める部材であることを特徴とする。
簡単な構成によって、二分割した長尺材同士の位置決めを容易に行うことができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付図面に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側を示す。また、図面は符号の向きに見るものとする。
【0012】
本発明に係る二分割した樹脂製長尺材を、車両用フロントスポイラに適用した例について説明する。
図1は本発明に係る車両前部の斜視図であり、車両10の前部下部にフロントバンパフェイス11を備え、このフロントバンパフェイス11の下端にフロントスポイラ12を多数のビス13・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)で取付けるようにしたことを示す。
【0013】
二分割した長尺部材を取り付ける被取付部材であるフロントバンパフェイス11は、車幅方向に延びるバンパビーム(図示せず)の前部を覆う樹脂製カバーであり、ラジエータ冷却用グリル14を備える。
フロントスポイラ12は、走行風を通過させることによって、車両10を下方へ押え付けるための下向き力を発生させて、揚力を軽減する部材である。このようなフロントスポイラ12はスポイラ長手方向、すなわち車幅方向にスポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとに二分割した樹脂製長尺材であり、例えばポリプロピレン樹脂からなる。
フロントバンパフェイス11の分割位置は、車幅中央位置であることが好ましい。スポイラ左半体20Lの成形用金型とスポイラ右半体20Rの成形用金型とを、同じ大きさにできるからである。
【0014】
このようなフロントスポイラ12は、二分割した長尺材に相当する。スポイラ右半体20Rは、二分割した長尺材のうちの一方の長尺材に相当する。スポイラ左半体20Lは、二分割した長尺材のうちの他方の長尺材に相当する。図中、15はフード、16,16はヘッドランプ、17,17はウインカである。
【0015】
図2は本発明に係るフロントバンパフェイスにスポイラ左半体を取付けた状態の縦断面図であり、スポイラ左半体20Lが、ほぼ垂直な側板21と、側板21の上端から後方へ水平に延びた上部フランジ22と、側板21の下端から後方へ水平に延びた短い下部フランジ23とからなる、略コ字状断面体であることを示す。側板21は、上半部に対して下半部が前方へ湾曲しつつ若干突出した断面形状を呈する。
【0016】
想像線にて示すフロントバンパフェイス11の下端にクリップ24を差込み、フロントバンパフェイス11の下端面にスポイラ左半体20Lの上部フランジ22を当て、クリップ24にビス13をねじ込むことで、フロントバンパフェイス11の下端にスポイラ左半体20Lをビス止めすることができる。
上記図1に示すスポイラ右半体20Rについても、同様の断面構成並びに止め構成であり、同一符号を付してその説明を省略する。
【0017】
図3は本発明に係るフロントスポイラの中央部を背面から見た分解図であり、スポイラ右半体20Rにおける接合側の端面25Rに突起部26を一体に形成することで、スポイラ左半体20Lの端面25Lとスポイラ右半体20Rの端面25Rとを、突起部26を介して対向させるようにしたことを示す。
突起部26は、端面25Rの大きさに比べて十分に小さい角形突起である。突起部26を設ける位置は、端面25Rのうち、端面25L,25R同士の位置合せが容易な部分であればよい。
【0018】
フロントスポイラ12は、スポイラ左半体20Lの端部とスポイラ右半体20Rの端部とを係合手段30にて取外し可能に接合するようにした構成である。
係合手段30は、スポイラ右半体20Rに形成した係合爪部31と、この係合爪部31を掛け止めるべくスポイラ左半体20Lに形成した被係合部41とからなる。この係合手段30は、スポイラ左半体20L並びにスポイラ右半体20Rの端部同士を互いに離反する方向への変位を阻止でき、且つ、互いに接近する方向への変位を許容できるようにしたことを特徴とする。
【0019】
被係合部41は、スポイラ左半体20Lの側板21の一部を表裏方向、例えば裏側に折返すことで設けた折返し板42と、側板21と折返し板42との間に形成した略J字状又は略L字状の係合溝43とからなる。
折返し板42は、その上端部並びに中央部をステー部44,45を介して側板21に一体に固定されるように形成した部材である。このような折返し板42は樹脂成形品であるから、側板21の表裏方向に弾性変形可能である。
係合溝43は、フロントスポイラ12の長手方向に貫通した溝である。なお、この溝には貫通した孔を含む。
【0020】
一方、上記係合爪部31は、スポイラ右半体20Rにおける接合側の端部からスポイラ左半体20Lへ向って延びたアーム部32と、アーム部32の下部から後方へ突出した爪36とからなる。
【0021】
アーム部32は、係合溝43の形状に対応した概ねJ字状又はL字状の断面体であり、概ね起立した縦板部33と縦板部33の下端から後方へ延びた横板部34とからなる。このようなアーム部32は、係合溝43へ嵌合した際に、ステー部44,45に対する干渉を避けるために、先端を窪ませて回避凹部35とした構成である。爪36は、横板部34の後端から更に後方へ延びた、平面視二等辺三角形状の係合突起である。
【0022】
係合溝43にアーム部32を挿入したときに、係合溝43を通過して突き出た爪36が折返し板42の縁に当ることで、この縁に掛け止めることができる。
このように、係合溝43は、折返し板42と側板21との間に設けた、被係合部としての溝である。係合爪部31は、係合溝43に嵌合することで、二分割されたスポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとの位置決めをなすとともに、係合溝43の縁(即ち折返し板42の縁)に掛け止める部材である。
【0023】
さらにフロントスポイラ12は、係合手段30から離れた位置に、係合手段30の係合方向とは異なる方向で、スポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとの位置決めをする位置決め手段50を設けたことを特徴とする。
【0024】
位置決め手段50は、スポイラ左半体20Lの上部フランジ22から上に延した丸棒状の位置決め突起52と、スポイラ右半体20Rの上部フランジ22に上下貫通するように開けた位置決め孔53とからなる。位置決め孔53は、スポイラ右半体20Rの長手方向、すなわち車幅方向に長い長孔である。
【0025】
係合手段30について更に詳しく説明する。スポイラ左半体20Lの上部フランジ22及びスポイラ右半体20Rの上部フランジ22は、車幅中央位置で互いに上下方向に重ね合わせができるように、各端面25L,25Rよりも長手方向へ延すとともに、その重ね合わせる部分を合わせ部51L,51Rとする。合わせ部51L,51Rの厚みは、上部フランジ22,22の半分程度である。
【0026】
このようなスポイラ左半体20Lは、側板21の背面と合わせ部51Lとの間に隙間54を有する。この隙間54は、スポイラ左半体20Lの端面25Lにスポイラ右半体20Rの端面25Rを合せたときに、アーム部32が嵌合し得る上下貫通溝である。
【0027】
位置決め突起52はスポイラ左半体20Lの合わせ部51Rに有する。位置決め孔53はスポイラ右半体20Rの合わせ部51Rに有する。各合わせ部51L,51Rに有する取付孔であるビス孔55,55は、合わせ部51L,51R同士を重ねたときに概ね合致する、フロントスポイラ12の長手方向に長い長孔である。
【0028】
図4は本発明に係るスポイラ右半体の端部を正面から見た斜視図であり、スポイラ右半体20Rにおける接合側の端面25Rに対して、側板21の概ね厚み分だけ後方へずれた位置にアーム部32を設けたことを示す。
【0029】
図5は本発明に係るフロントスポイラの中央下部の正面図であり、スポイラ左半体20Lの端面25Lに突起部26の先端を当てるとともに、スポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとを接合した状態を示す。
【0030】
図6は図5の6−6線断面図であり、スポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとを接合した状態で、想像線にて示すフロントバンパフェイス11の下端にビス止めしたことを示す。
【0031】
詳しくは、スポイラ左半体20Lの略J字状又は略L字状の係合溝43にスポイラ右半体20Rの略J字状又は略L字状のアーム部32を嵌合することで、両者の位置決めをすることができる。
【0032】
J字・L字状の係合溝43にJ字・L字状のアーム部32を嵌合するので、スポイラ左半体20Lに対してスポイラ右半体20Rが前後方向や上下方向に相対的に変位することはない。すなわち、スポイラ長手方向に対して交差する方向へ、相対的に変位することはない。
【0033】
また、スポイラ左半体20Lの合わせ部51Lにスポイラ右半体20Rの合わせ部51Rを重ね合わせるとともに、位置決め突起52を位置決め孔53に挿入することで、両者の位置決めすることができる。
さらには、係合溝43に対するアーム部32の位置合せと、位置決め突起52に対する位置決め孔53の位置合せとを、2箇所で位置決めをすることができるので、より確実に且つ容易に位置決めをすることができる。
【0034】
フロントバンパフェイス11の下端にクリップ24を差込み、フロントバンパフェイス11の下端面に左右一体化されたフロントスポイラ12の上端を当て、クリップ24にビス13をねじ込むことで、フロントバンパフェイス11の下端にフロントスポイラ12をビス止めすることができる。
【0035】
図7(a),(b)は本発明に係るフロントスポイラの中央下部の構成図であり、スポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとを接合したことを示す。
(a)は、図5の7−7線断面に相当する断面構成を示し、スポイラ左半体20Lの端面25Lとスポイラ右半体20Rの端面25Rとを対向させるとともに、スポイラ左半体20Lの端面25Lに突起部26を突き当てたことを示す。
【0036】
突起部26の突出長さはL1であり、折返し板42の幅はL2である。爪36のうち、折返し板42の縁42a(係合溝43の縁)に当ることで掛け止る点を係合点P1とする。端面25Lに突起部26が当ったときに、縁42aから係合点P1までの隙間S1の寸法(大きさ)はδ1である。従って、突起部26の突出端から係合点P1までの寸法L3は、折返し板42の幅L2に隙間S1の大きさδ1を加えた寸法である(L3=L2+δ1)。
【0037】
(b)は、上記(a)の状態から、スポイラ右半体20Rをスポイラ長手方向の外側へ引くことで、スポイラ左半体20Lの端面25Lから突起部26を離したことを示す。このとき、折返し板42の縁42aに爪36の係合点P1が当ることで掛け止っている。突起部26の突出端からスポイラ左半体20Lの端面25Lまでの隙間S2の寸法(大きさ)はδ2である。従って、スポイラ左半体20Lの端面25Lからスポイラ右半体20Rの端面25Rまでの距離L4は、突起部26の突出長さL1に隙間S2の大きさδ2を加えた寸法である(L4=L1+δ2)。隙間S1の寸法δ1は隙間S2の寸法δ2と等しい。
【0038】
以上の図7(a),(b)の説明をまとめると、次の(1),(2)の通りである。
(1) スポイラ左半体20L並びにスポイラ右半体20Rの端部25L,25R同士を互いに接近する方向へ変位させたとき、(a)に示すように、スポイラ左半体20Lの端面25Lに突起部26が当ることで、これ以上の変位を阻止できる。(b)から(a)へ変位するときの、許容変位量は隙間S1,S2の寸法δ1,δ2に相当する量だけである。
【0039】
(2) スポイラ左半体20L並びにスポイラ右半体20Rの端部25L,25R同士を互いに離反する方向へ変位させたとき、(b)に示すように、折返し板42の縁42aに爪36の係合点P1が当ることで、これ以上の変位を阻止できる。(a)から(b)へ変位するときの、許容変位量は隙間S1,S2の寸法δ1,δ2に相当する量だけである。
【0040】
このように、二分割された長尺材同士を長手方向へ、すなわちスポイラ左半体20Lとスポイラ右半体20Rとをスポイラ長手方向へ、相対的に隙間S1,S2の寸法δ1,δ2の分だけ変位させることができる。
なお、このような隙間S1,S2の寸法δ1,δ2は、突起部26の突出長さL1又は爪36の形状や大きさを変更することで、容易に且つ任意に設定することができる。
【0041】
言い換えると、二分割された長尺材20L,20R同士を係合手段30で接合した後に、スポイラ長手方向へ一定の範囲内、すなわち隙間S1,S2の寸法δ1,δ2の範囲内で、長尺材20L,20R同士を相対的に変位させることができる。従って、この変位可能な範囲内の寸法誤差であれば、長尺材20L,20R同士を相対的に変位させることで、誤差を吸収することができる。このため、二分割した樹脂製長尺材20L,20Rの寸法管理を容易に行うことができる。
【0042】
例えば、二分割された長尺材20L,20R同士を係合手段30で接合した後に、他の部材に組付ける場合であっても、ビス止め位置等の位置合せが容易である。
さらには、係合手段30を、係合爪部31と被係合部41との組合せ構造としたので、ボルト接合の場合のように別部材を必要としない。接合部品数を増すことなく容易に接合することができるので、接合作業性を高めることができる。
【0043】
二分割された長尺材20L,20R同士のうち、比較的広い端面25L,25Rの寸法管理を行う場合に比べて、小型の突起部26の突出寸法を管理する方が容易である。従って、突起部26の突出寸法を管理することで、二分割した長尺材20L,20Rの長さを、ひいては隙間S1,S2の寸法δ1,δ2を、より一層容易に管理することができる。このため、設計の自由度が高まる。
【0044】
また、スポイラ左半体20Lの背面にアーム部32を重ね合わせたので、端面25L,25R間に隙間があるにもかかわらず、この隙間を通してフロントスポイラ12の後方を目視することはできない(図5も参照)。従って、フロントスポイラ12の外観性が高まる。
【0045】
図8(a)〜(d)は本発明に係るフロントスポイラの作用図であり、フロントスポイラ12の接合手順を示す。
(a)は、スポイラ左半体20Lの端面25Lにスポイラ右半体20Rの端面25Rを対向させたことを示す。この状態から、スポイラ左半体20Lに対してスポイラ右半体20Rをスポイラ長手方向へ移動させることで、係合溝43に係合爪部31を差込む。
【0046】
(b)は、係合溝43に係合爪部31を差込む途中を示す。爪36の先端で折返し板42を外方へ押出して弾性変形させることができる。この結果、係合溝43は広がり、爪36を受入れる。
(c)は、爪36が係合溝43を貫通して突き出たことを示す。このときに、折返し板42の縁42aに爪36の係合点P1が当ることで、掛け止る。突起部26の突出端は、スポイラ左半体20Lの端面25Lから離れた位置にあり、その隙間S2の寸法はδ2である。
(d)は、係合溝43に係合爪部31を更に差込むことで、突起部26の突出端をスポイラ左半体20Lの端面25Lに当てたことを示す。
【0047】
このように、係合溝43にアーム部32を挿入したときに、係合溝43を貫通して突き出た爪36を折返し板42の縁42aに当てることで、この縁42aに掛け止めることができる。
【0048】
なお、上記本発明の実施の形態において、二分割した樹脂製長尺材は、車両用フロントスポイラ12に限定されるものではなく、車両用部材に限定されるものでもない。
突起部26の形状や寸法については任意であり、角形の他に円形、円錐形、台形であってもよい。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上記構成により次の効果を発揮する。
請求項1は、二分割した樹脂製長尺材の端部同士を対向させるとともに、これらの端部同士を係合手段にて接合する二分割長尺材の接合構造であって、係合手段は、二分割した長尺材のうち一方の長尺材に形成した係合爪部と、この係合爪部を掛け止めるべく他方の長尺材に形成した被係合部とからなり、これらの係合爪部並びに被係合部によって、二分割した長尺材の端部同士を互いに離反する方向への変位を阻止でき、且つ、互いに接近する方向への変位を許容できるように構成し、二分割した長尺材の前記係合手段から離れた位置に、二分割した長尺材同士の位置決めをする位置決め手段を設け、位置決め手段は、長尺部材の端部同士に設けた取付孔を有する合せ部を有し、取付孔は合せ部同士を重ねたときに概ね一致し、二分割した長尺部材は、前記取付孔を介して被取付部にそれぞれ共締めされるようにしたので、まず、二分割された樹脂製長尺材同士を係合手段で接合した後に、長尺材の長手方向へ一定の範囲内で長尺材同士を相対的に変位させることができる。
従って、この変位可能な範囲内の寸法誤差であれば、長尺材同士を相対的に変位させることで、誤差を吸収することができる。このため、二分割した樹脂製長尺材の寸法管理を容易にすることができる。例えば、二分割された長尺材同士を係合手段で接合した後に、他の部材に組付ける場合であっても、ビス止め位置等の位置合せが容易である。
さらには、係合手段を、係合爪部と被係合部との組合せ構造としたので、ボルト接合の場合のように別部材を必要としない。接合部品数を増すことなく容易に接合することができるので、接合作業性を高めることができる。
また、上記したように、位置決め手段を設けたことにより、2箇所で位置決めをすることができるので、より確実に且つ容易に位置決めをすることができる。
【0050】
請求項2は、二分割した長尺材のうち一方の長尺材の端面に突起部を一体に形成することで、二分割した長尺材の端面同士を突起部を介して対向させるように構成したので、突起部の突出寸法を管理することにより、二分割した長尺材の長さを、より一層容易に管理することができる。このため、設計の自由度が高まる。
【0051】
請求項3は、被係合部が、他方の長尺材の側板の一部を表裏方向に折返すことで、その折返し板と側板との間に長尺材の長手方向に貫通した係合溝であり、係合爪部が、係合溝に嵌合することで二分割した長尺材同士の位置決めをなすとともに、係合溝の縁に掛け止める部材であるので、簡単な構成によって、二分割した長尺材同士の位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る車両前部の斜視図
【図2】 本発明に係るフロントバンパフェイスにスポイラ左半体を取付けた状態の縦断面図
【図3】 本発明に係るフロントスポイラの中央部を背面から見た分解図
【図4】 本発明に係るスポイラ右半体の端部を正面から見た斜視図
【図5】 本発明に係るフロントスポイラの中央下部を正面図
【図6】 図5の6−6線断面図
【図7】 本発明に係るフロントスポイラの中央下部の構成図
【図8】 本発明に係るフロントスポイラの作用図
【図9】 従来の車両用フロントスポイラの説明図(その1)
【図10】 従来の車両用フロントスポイラの説明図(その2)
【符号の説明】
11…被取付部、12…二分割した長尺材(フロントスポイラ)、20R…一方の長尺材(スポイラ右半体)、20L…他方の長尺材(スポイラ左半体)、21…側板、25R…一方の長尺材(スポイラ右半体)の端面、25L…他方の長尺材(スポイラ左半体)の端面、26…突起部、30…係合手段、31…係合爪部、41…被係合部、42…折返し板、43…係合溝、43a…係合溝の縁、50…位置決め手段、51L,51R…合せ部、55…取付孔、S1,S2…隙間、δ1,δ2…隙間の寸法。
Claims (3)
- 二分割した樹脂製長尺材の端部同士を対向させるとともに、これらの端部同士を係合手段にて接合する二分割長尺材の接合構造であって、
前記係合手段は、前記二分割した長尺材のうち一方の長尺材に形成した係合爪部と、この係合爪部を掛け止めるべく他方の長尺材に形成した被係合部とからなり、これらの係合爪部並びに被係合部によって、前記二分割した長尺材の端部同士を互いに離反する方向への変位を阻止でき、且つ、互いに接近する方向への変位を許容できるように構成し、
前記二分割した長尺材の前記係合手段から離れた位置に、前記二分割した長尺材同士の位置決めをする位置決め手段を設け、
前記位置決め手段は、前記長尺部材の端部同士に設けた取付孔を有する合せ部を有し、
前記取付孔は合せ部同士を重ねたときに概ね一致し、
前記二分割した長尺部材は、前記取付孔を介して被取付部にそれぞれ共締めされる、
ことを特徴とする二分割長尺材の接合構造。 - 前記二分割した長尺材のうち一方の長尺材の端面に突起部を一体に形成することで、二分割した長尺材の端面同士を突起部を介して対向させるように構成したことを特徴とした請求項1記載の二分割長尺材の接合構造。
- 前記被係合部は、前記他方の長尺材の側板の一部を表裏方向に折返すことで、その折返し板と側板との間に長尺材の長手方向に貫通した係合溝であり、
前記係合爪部は、前記係合溝に嵌合することで二分割した長尺材同士の位置決めをなすとともに、前記係合溝の縁に掛け止める部材であることを特徴とした請求項1又は請求項2記載の二分割長尺材の接合構造。
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