JP3696504B2 - モータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、モータに係り、詳しくはウォーム及びウォームホイール(減速部)を備えたモータに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パワーウインド装置等に用いられるモータは、モータ本体と減速部とを備えている。減速部のギヤハウジングには、モータ本体の回転軸と同軸状に連結されるウォーム軸及びウォーム軸に形成されるウォームと噛合されるウォームホイールが収容される。ウォーム軸はギヤハウジングに固定される軸受によってその両端で回転可能に支持される。
【0003】
このモータは、モータ本体の回転軸が回転駆動されると、回転軸の回転に伴ってウォーム軸が回転し、ウォーム軸が回転するとウォームホイールがウォーム軸の回転速度より遅く、高トルクで回転する。すると、ウォームホイールに連結された出力軸が回転し、外部の負荷に回転力を伝達する。
【0004】
上記のようなモータは、出力軸が低速、高トルクで回転することから、種々の装置に用いられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記モータでは、駆動中に出力軸側で過負荷が加わった場合等、ウォーム軸がモータ本体から伝達される回転力とウォームホイール側の過負荷により軸直交方向(ウォームホイールが配設される側と略反対の方向)に大きな力を受け、撓むことがある。よって、そのウォーム軸を支持する軸受に偏磨耗が生じたり、樹脂製であるギヤハウジングが変形したりするといった問題がある。このことは、モータの効率を低下させたり、騒音の発生を引き起こす原因となる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、ウォーム軸を支持する軸受の偏磨耗を低減し、ギヤハウジングの変形を防止することができるモータを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ウォーム軸とモータ本体の回転軸とを、軸ずれを許容可能な連結部材を介して連結し、前記ウォーム軸の両端をモータ本体に固定されるギヤハウジングに保持された軸受によって支持するモータであって、前記連結部材は、回転軸の回転力をウォーム軸に伝達し、ウォーム軸の回転力を回転軸に非伝達するクラッチであり、前記モータ本体側の軸受を、前記ウォーム軸の撓みに対して追従可能に設けたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のモータにおいて、前記ギヤハウジングに設けられ前記モータ本体側の軸受を保持する軸受保持部を、前記ウォーム軸の撓みに対して追従可能としたことを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、ウォーム軸の両端をモータ本体に固定されるギヤハウジングに保持された軸受によって支持するモータであって、前記モータ本体側の軸受を保持する軸受保持部を、前記ギヤハウジングに突設したことを要旨とする。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のモータにおいて、前記ウォーム軸と前記モータ本体の回転軸を、軸ずれを許容可能な連結部材を介して連結したことを要旨とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のモータにおいて、前記連結部材は、回転軸の回転力をウォーム軸に伝達し、ウォーム軸の回転力を回転軸に非伝達するクラッチであることを要旨とする。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1、2及び5のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記ギヤハウジングに軸線方向に延びる略円形の凹部を形成し、その凹部の底面から略円筒形状の前記軸受保持部を突設し、該軸受保持部の内周側で前記軸受を保持し、前記凹部の内周側に前記クラッチの一部を収容保持することを要旨とする。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項1、2及び5のいずれか1項に記載のモータにおいて、前記軸受保持部は、略円筒形状に形成され、その内周側で前記軸受を保持し、その外周側で前記クラッチを保持することを要旨とする。
【0014】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のモータにおいて、前記クラッチは、前記軸受保持部に外嵌される固定部を備え、前記軸受保持部の外周基端側にリブを設け、前記固定部を前記リブと当接する位置まで前記軸受保持部に外嵌したことを要旨とする。
【0015】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、クラッチにより回転軸の回転力はウォーム軸に伝達され、ウォーム軸の回転力は回転軸に伝達されない。また、前記モータ本体側の軸受は、前記ウォーム軸の撓みに対して追従可能に設けられる。よって、ウォーム軸が撓んでも、軸受がウォーム軸の撓みに追従するため、軸受の軸方向端部に局部的に集中した大きな力が加わらない。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、ギヤハウジングに設けられモータ本体側の軸受を保持する軸受保持部が、前記ウォーム軸の撓みに対して追従可能とされることで、モータ本体側の軸受がウォーム軸の撓みに対して追従可能とされる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、前記モータ本体側の軸受を保持する軸受保持部は、ギヤハウジングに突設されるため、軸直交方向に撓み可能とされる。よって、ウォーム軸が撓んでも、軸受保持部及び軸受がウォーム軸の撓みに追従して傾くため、軸受の軸方向端部に局部的に集中した大きな力が加わらない。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、連結部材でウォーム軸の撓みによる軸ずれが許容される。
請求項5に記載の発明によれば、クラッチにより回転軸の回転力はウォーム軸に伝達され、ウォーム軸の回転力は回転軸に伝達されない。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、ギヤハウジングに軸線方向に延びる略円形の凹部が形成され、その凹部の底面から略円筒形状の軸受保持部が突設される。そして、軸受保持部の内周側で軸受が保持され、凹部の内周側にクラッチの一部が収容保持される。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、略円筒形状の軸受保持部の内周側に前記軸受が保持され、外周側に前記クラッチが保持される。このように軸受保持部はクラッチを保持する機能を備えるため、言い換えると、クラッチを保持するための保持部を別構成としなくてよいため、ギヤハウジングの形状が複雑にならない。又軸受保持部の内外周で2つの部材を保持するため、モータの軸線方向の短縮化を図ることができる。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、軸受保持部の外周基端側にはリブが設けられる。よって、リブの大きさや数等により軸受保持部を撓ませるための力や、軸受保持部が撓む量を所定の値に設定することができる。又、前記クラッチの固定部は、リブと当接する位置まで軸受保持部に外嵌される。このように、クラッチの軸線方向の位置決めがリブにて容易となる。
【0022】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
以下、本発明をパワーウインド装置用のモータに具体化した第1の実施の形態について図1〜図8を参照して説明する。図1は、第1の実施形態におけるモータ1の要部断面図を示す。モータ1は、扁平型のモータ本体2と減速部3とクラッチC(図2参照)とを備えている。
【0023】
図1に示すように、上記モータ本体2は、ヨークハウジング(以下、単にヨークという)4、1対のマグネット5、回転軸6、アーマチャ(電機子)7、コンミテータ(整流子)8、樹脂製のブラシホルダ9及び給電用のブラシ10を備えている。
【0024】
ヨーク4は、略有底扁平円筒状に形成されている。そして、ヨーク4の軸直交方向断面の長手方向両端の内周面には、1対のマグネット5が対向して固着されている。また、ヨーク4の底部には、その中心軸に沿って上記回転軸6の基端部が回転可能に支持されている。この回転軸6の先端部には、図2に示すように、円柱形状から平行に面取りした2面巾凸部6aが形成されている。
【0025】
上記マグネット5の位置に対応する上記回転軸6の中間部には、前記アーマチャ7が固定されている。また、上記回転軸6の上記アーマチャ7よりも先端側には、コンミテータ8が固定されている。
【0026】
上記ヨーク4の開口部には、該ヨーク4の軸直交方向断面の長手方向の外側に延びるフランジ部4aが形成されている。各フランジ部4aには、それぞれ位置決め用孔4b,4cが形成されている。
【0027】
ヨーク4の開口部には、ブラシホルダ9が嵌合固定されている。このブラシホルダ9は、ヨーク4の開口部と対応し、同開口部を略覆う形状のホルダ本体9aと、一方(図1中、左側)のフランジ部4aより回転軸6の径方向外側に突出したコネクタ部9bとを備えている。ホルダ本体9aのヨーク4内部側にはコネクタ部9bと図示しない配線で接続された一対のブラシ10が配設されている。又、ホルダ本体9aの略中央には軸受11が設けられ、その軸受11によって上記回転軸6の先端側が回転可能に支持されている。
【0028】
ここで、上記ブラシ10は、上記コンミテータ8に対応した位置に配置されて同コンミテータ8と接触している。従って、コネクタ部9bに接続される図示しない制御装置(外部電源)からブラシ10及びコンミテータ8を介してアーマチャ7に巻装したコイル導線に電流が供給されると、同アーマチャ7、すなわちモータ本体2の回転軸6が回転駆動される。
【0029】
減速部3は、ギヤハウジング21と、第1及び第2軸受22a,22bと、ウォーム部材23と、ウォームホイール24と、出力軸25とを備える。
ギヤハウジング21は、樹脂製であって、そのモータ本体2に固定される側(図1中、上側)端部(以下、上側端部という)は、ヨーク4の開口部と対応した扁平型(略長方形)に形成されている。ギヤハウジング21の上側端部には、図3に示すように、ブラシホルダ9のホルダ本体9aが嵌合される嵌合凹部21aが形成されている。又、ギヤハウジング21の上側端部には、前記ヨーク4の各位置決め用孔4b,4cと対応した位置に、該孔4b,4cに嵌挿される位置決め用凸部21b,21cが形成されている。そして、ギヤハウジング21は、位置決め用凸部21b,21cがヨーク4の各位置決め用孔4b,4cに嵌挿され、ホルダ本体9aが嵌合凹部21aに嵌合された状態で、図示しないネジにてヨーク4にネジ止めされている。
【0030】
ギヤハウジング21には、嵌合凹部21aの底部中央から凹設され該嵌合凹部21aの長手方向に長く開口した長凹部21fが形成されている。又、ギヤハウジング21には、長凹部21fの底部中央から凹設した円形の凹部としてのクラッチ収容凹部21g、該クラッチ収容凹部21gの底部中央から回転軸6の軸線方向に沿って延びるように凹設したウォーム軸収容部21h(図2参照)が形成されている。又、ギヤハウジング21には、ウォーム軸収容部21hの中間部の軸線直交方向(図1中、右方向)に該ウォーム軸収容部21hと連通するホイール収容部21iが形成されている。
【0031】
クラッチ収容凹部21gの開口部には、環状のフランジ嵌合凹部21jが形成されている。フランジ嵌合凹部21jにおける長凹部21fの長手方向両端部には、同長手方向に延びる係合凹部21kが連続して形成されている。
【0032】
又、長凹部21fの底部には、2つの台座21mが形成されている。各台座21mは、前記係合凹部21kの周囲にそれぞれ形成されている。即ち、台座21mは、係合凹部21kの壁面と連続する壁面を有するように略コ字状に形成されている。各台座21mの上面における長凹部21fの短手方向両端部には、円柱形状の係合突起21nが形成されている。
【0033】
又、クラッチ収容凹部21gの底部には、図2に示すように、軸受保持部21pが軸直交方向に撓み可能に突出形成されている。この軸受保持部21pは、ウォーム軸収容部21hより内径が大きく、クラッチ収容凹部21gの内径より外径が小さい略円筒形状に形成されている。又、軸受保持部21pは、軸線方向にクラッチ収容凹部21gの略中央付近まで延びて形成されている。又、軸受保持部21pの外周面基端側には、図2及び図4に示すように、クラッチ収容凹部21gの内周面と連結されるリブ21qが等角度(45°)間隔に8個形成されている。このリブ21qにより、軸受保持部21pの耐撓み荷重(どれくらいの大きさの力で軸受保持部21pが軸直交方向に撓むか)や、軸受保持部21pの撓む量が所定の値に設定されている。
【0034】
ここで、上記ギヤハウジング21は、図5に示すように、金型Kを用いて成形されている。詳しくは、軸線方向に移動可能な上下一対の金型の一方(上側)の金型Kには、前記ギヤハウジング21の軸受保持部21pを成形すべく(軸受保持部21pの外周面及びクラッチ収容凹部21gの内周面を成形すべく)、中央凸部Kaの周囲に筒形状に凸設された筒状部Kbが形成されている。そして、上下一対の金型内に溶融された樹脂材が充填され、樹脂材の硬化後、金型が離間されることで、ギヤハウジング21が成形されている。
【0035】
第1及び第2軸受22a,22bは、金属製で略円筒形状のすべり軸受(メタル軸受)であって、第1軸受22aは軸受保持部21pに内嵌されている。この第1軸受22aの内径は、ウォーム軸収容部21hの内径より小さく設定されている。又、第2軸受22bは、ウォーム軸収容部21hの底側(図1中、下側)に内嵌されている。
【0036】
ウォーム部材23は、金属材料よりなり、ウォーム軸28と、ウォーム軸28のモータ本体2側に一体形成された従動側回転体29とからなる(図3参照)。ウォーム軸28は、その中間部にウォーム28aが形成され、その両端部で第1及び第2軸受22a,22bに回転可能に支持されてウォーム軸収容部21h内に収容されている。
【0037】
ウォームホイール24は、ウォーム28aと噛合され、ウォーム軸28と直交する方向(図1の紙面直交方向)の軸中心で回転可能にホイール収容部21i内に収容されている。そして、出力軸25は、ウォームホイール24の回転に伴って同軸で回転するように該ウォームホイール24に連結されている。この出力軸25は、公知の図示しないレギュレータを介して図示しないウインドガラスに連結される。
【0038】
前記回転軸6は、クラッチCを介してウォーム軸28に連結されている。クラッチCは、図2及び図3に示すように、前記従動側回転体29と、カラー31と、複数(3つ)の転動体32と、サポート部材33と、ストッパ34と、駆動側回転体35と、ボール36とを備えている。カラー31は、円筒形状の外輪31aと外輪31aの一端(図2中、上端)から径方向外側に延びる環状のフランジ部31bと、フランジ部31bから180度間隔を有して更に径方向外側に延びる一対の係合部31cとからなる。
【0039】
カラー31は、その外輪31aがクラッチ収容凹部21gに内嵌され、フランジ部31bがフランジ嵌合凹部21jに嵌合されている。そして、係合部31cが係合凹部21kに嵌合されることで、カラー31の回り止めがなされている。尚、カラー31の外輪31aは、その他端(図2中、下端)が前記軸受保持部21pの先端(図2中、上端)位置の近傍まで内嵌され、軸受保持部21pの撓みを阻害しない。この外輪31aの内側には、前記従動側回転体29が配置されている。
【0040】
前記従動側回転体29は、図3に示すように、ウォーム軸28の基端部からモータ本体2側(回転軸6側)に同軸上に延びる軸部29aと、その軸部29aから等角度(120°)間隔で径方向外側に延びる3つの係合凸部29bとを備えている。係合凸部29bは、径方向外側に向かうほど周方向の幅が広がるように形成されている。又、係合凸部29bの径方向外側面は、図6に示すように、カラー31の外輪31aの内周面31dとの距離が回転方向に変化する制御面41とされている。本実施の形態の制御面41は、従動側回転体29の回転方向端部側ほどカラー31との距離が短くなる平面に形成されている。軸部29aのモータ本体2側(回転軸6側)の軸中心部には、図2及び図3に示すように、円形の凹部29cが凹設されている。又、従動側回転体29には、図3に示すように、係合凸部29bの補強リブ29dが設けられている。補強リブ29dは、係合凸部29bのウォーム軸28側端部で周方向に隣り合う係合凸部29bの周方向側面同士を繋げるように形成されている。
【0041】
各転動体32は、金属材料にて略円柱形状に形成され、図6に示すように、係合凸部29bの制御面41と外輪31aの内周面31dとの間に配置されている。転動体32の直径は、制御面41の中央部(回転方向中央部)41aと外輪31aの内周面31dの間隔の長さより小さく、制御面41の側部(回転方向端部)41b,41cと外輪31aの内周面31dの間隔の長さより大きく設定されている。即ち、転動体32の直径は、中央部41aと側部41b,41cとの間の中間部41dと、外輪31aの内周面31dの間隔の長さと等しく設定されている。
【0042】
サポート部材33は、前記各転動体32を回転可能にかつ略平行に等角度間隔で保持する。詳述すると、サポート部材33は、樹脂材よりなり、図2及び図3に示すように、リング部33aと、3つの内延部33bと、3対のローラサポート33cと、3つの連結部33dとからなる。リング部33aは、外輪31aより径の大きい円環状に形成されている。3つの内延部33bは、リング部33aの内周から径方向内側に等角度間隔で延設されている。各ローラサポート33cは内延部33bの径方向内側の周方向両端部から軸線方向に延設されている。各連結部33dは、隣り合うローラサポート33cを連結するように円弧状に形成されている。又、1対のローラサポート33cの先端には周方向に向い合う係止凸部33eが形成されている。そして、各転動体32は、各対のローラサポート33c間で、且つ内延部33bと係止凸部33eとの間で保持され、リング部33aに対して周方向及び軸線方向に移動不能に保持される。このように転動体32を保持したサポート部材33は、前述したように転動体32が制御面41と外輪31aの内周面31dとの間に配置されるように、各ローラサポート33cが外輪31aの内側に挿入され、リング部33aがカラー31の軸線方向外側でフランジ部31b上に当接されて配置される。
【0043】
ストッパ34は、金属製の均一な厚さの板材から形成されている、ストッパ34は、前記サポート部材33のリング部33aと略同径の環状に形成された当接部34aと、その当接部34aから180°間隔で径方向外側に延びる延設部34bとを備えている。当接部34aの内外径は、図2に示すように、前記カラー31の外輪31aの内外径と同径に設定されている。延設部34bには固定部34cが形成されている。固定部34cは、前記ギヤハウジング21の係合突起21nと対応するように、ストッパ34の四隅に形成されている。そして、ストッパ34は、固定部34cに係合突起21nが嵌入されることで、該ギヤハウジング21に固定されている。ストッパ34の当接部34aは、サポート部材33のリング部33aの上部(図1中、上部)に配置される。そして、ストッパ34は、サポート部材33のリング部33aが当接部34aに当接することで、該サポート部材33と共に転動体32の軸線方向の移動を規制している。
【0044】
又、図2及び図3に示すように、各延設部34bの略中央には、規制部34dが形成されている。規制部34dは、延設部34bの一部を切り起こすことにより形成されている。規制部34dは、その先端が前記カラー31の係合部31cと当接し該カラー31の軸線方向の移動を規制している。
【0045】
前記駆動側回転体35は、樹脂材にて形成され、軸部35aと、軸部35aよりも拡径された円盤部35bと、円盤部35bの軸中心から軸線方向(図2中、下方向)に延出した延出部35cとを有している。駆動側回転体35には、延出部35cの先端からボール収容凹部35dが凹設されている。ボール収容凹部35dは、軸直交方向の壁面が球をくり貫いた形状に形成されている。ボール収容凹部35dは、円盤部35bの途中まで形成されている。このボール収容凹部35dには、ボール36が、その一部が延出部35cの先端から突出した状態で保持されている。
【0046】
又、駆動側回転体35の軸中心には、軸部35aの基端(図2中、上端)から延び、断面に平行面を有する2面巾凹部35eが前記ボール収容凹部35dと連通するように形成されている。駆動側回転体35は、2面巾凹部35eに回転軸6の2面巾凸部6aが嵌合されることで、回転軸6に対して回転不能に連結されている。延出部35cは、従動側回転体29の凹部29c内に略収容され、その延出部35cの先端から一部が突出するボール36は、凹部29cの底部に当接されている。
【0047】
駆動側回転体35の円盤部35bの先端側(図2中、下側)には、図3に示すように、径方向外側に延び、その先端から軸線方向に突出する略扇形状の突設部42が等角度間隔(所定角度位置)に複数(3つ)形成されている。各突設部42は、図6に示すように、大きい円弧の面が外輪31aの内周面31dより若干小さな径で同内周面31dに沿って形成されている。即ち、駆動側回転体35は、その突設部42がストッパ34の当接部34aの中心孔から軸線方向に挿入可能に形成されている。突設部42には、径方向内側から突設部42の中間まで径方向に延びる嵌合溝42a(図6参照)が形成されている。突設部42は、外輪31a内において、従動側回転体29の各係合凸部29b間であって、各転動体32(各ローラサポート33c)間に配置されている。
【0048】
嵌合溝42aには、ゴムよりなる緩衝部材43が嵌合固定されている。緩衝部材43には、嵌合溝42aから突設部42の径方向内側に突出し、周方向に広がる緩衝部43aが形成されている。
【0049】
緩衝部43aの周方向の幅は、図6に示すように、突設部42の内周面の周方向の幅より若干大きく設定されている。
緩衝部43aの一側面(反時計回り側の面)43bは、駆動側回転体35が従動側回転体29に対して反時計回り方向(矢印Y方向)に所定位置まで回転すると、係合凸部29bの時計回り側の面の径方向内側に形成された第1緩衝面29eと当接する。又、突設部42の径方向内側に形成される一側面(反時計回り側の面)42bは、駆動側回転体35が前記所定位置より更に反時計回り方向(矢印Y方向)に回転すると、係合凸部29bの時計回り側の面の径方向外側に形成された第1当接面29fと当接する。尚、駆動側回転体35は、緩衝部43aが周方向に撓む(潰れる)ことにより、前記所定位置より更に反時計回り方向(矢印Y方向)に回転する(図7参照)。
【0050】
又、緩衝部43aの他側面(反時計回り側の面)43cは、駆動側回転体35が従動側回転体29に対して時計回り方向(矢印Z方向)に所定位置まで回転すると、係合凸部29bの反時計回り側の面の径方向内側に形成された第2緩衝面29gと当接する。又、突設部42の径方向内側に形成される他側面(時計回り側の面)42cは、駆動側回転体35が前記所定位置より更に時計回り方向(矢印Z方向)に回転すると、係合凸部29bの反時計回り側の面の径方向外側に形成された第2当接面29hと当接する。尚、駆動側回転体35は、緩衝部43aが周方向に撓む(潰れる)ことにより、前記所定位置より更に時計回り方向(矢印Z方向)に回転する。
【0051】
ここで、各部材32,42,29b,33cの形状は、図7に示すように、突設部42の一側面42bが係合凸部29bの第1当接面29fと当接し、突設部42の反時計回り側の面の径方向外側に形成された第1押圧面42dがローラサポート33cと当接した状態で、転動体32が制御面41の中央部41aと対応した位置に配置されるように設定されている。
【0052】
又、各部材32,42,29b,33cの形状は、突設部42の他側面42cが係合凸部29bの第2当接面29hと当接し、突設部42の時計回り側の面の径方向外側に形成された第2押圧面42eがローラサポート33cと当接した状態で、転動体32が制御面41の中央部41aと対応した位置に配置されるように設定されている。
【0053】
上記のように構成されたパワーウインド装置(モータ1)は、以下のように動作する。
モータ本体2が駆動され回転軸6が図6の反時計回り方向(矢印Y方向)に回転されると、回転軸6と共に駆動側回転体35(突設部42)が同方向(矢印Y方向)に一体回転する。そして、図7に示すように、突設部42の一側面42bが係合凸部29bの第1当接面29fと当接し、第1押圧面42dがローラサポート33cと当接すると、転動体32が制御面41の中央部41aと対応した位置(以下、中立位置という)に配置される。
【0054】
尚、突設部42の一側面42bが第1当接面29fに当接する前に、緩衝部43aの一側面43bが係合凸部29bの第1緩衝面29eに先に接触するため、該当接時の衝撃は小さくなる。
【0055】
この中立状態では、転動体32は係合凸部29bの制御面41と外輪31aの内周面31dにて挟持されないため、従動側回転体29はカラー31に対して回転可能となる。従って、駆動側回転体35が更に反時計回り方向に回転すると、その回転力が突設部42から従動側回転体29に伝達され、従動側回転体29が連れ回りする。尚、このとき転動体32には第1押圧面42dから同方向(矢印Y方向)の回転力が伝達され、転動体32は同方向に移動する。
【0056】
逆に、回転軸6が図4の時計回り方向(矢印Z方向)に回転されると、上記と同様に、突設部42により転動体32が中立位置に配置される。この状態では、転動体32は係合凸部29bの制御面41と外輪31aの内周面31dにて挟持されないため、従動側回転体29はカラー31に対して回転可能となる。従って、駆動側回転体35の回転力が突設部42から従動側回転体29に伝達され、従動側回転体29が連れ回りする。
【0057】
すると、従動側回転体29と共にウォーム軸28が回転し、その回転に応じてウォームホイール24及び出力軸25が回転する。従って、出力軸25に連結されるウインドガラスが開閉される。
【0058】
一方、モータ1が停止している状態で、出力軸25側に負荷がかかると、その負荷は従動側回転体29を回動させようとする。そして、従動側回転体29が図6の時計回り方向(矢印Z方向)に回転されると、転動体32は係合凸部29bの制御面41の側部41b側(中間部41d側)に相対移動する。やがて、図8に示すように、転動体32が中間部41dまで相対移動すると、転動体32は、制御面41と外輪31aの内周面31dで挟持される(ロック状態となる)。そして、外輪31aが固定されているため、従動側回転体29のそれ以上の回転は阻止され、駆動側回転体35を連れ回りさせることはない。
【0059】
逆に、従動側回転体29が図6の反時計回り方向(矢印Y方向)に回転されると、駆動側回転体35が停止しているため、転動体32は係合凸部29bの制御面41の側部41c側(中間部41d側)に相対移動する。やがて、転動体32が中間部41dまで相対移動すると、転動体32は、制御面41と外輪31aの内周面31dで挟持される(ロック状態となる)。そして、外輪31aが固定されているため、従動側回転体29のそれ以上の回転は阻止され、駆動側回転体35を連れ回りさせることはない。
【0060】
このように、出力軸25側に大きな負荷をかけても、従動側回転体29の回転は阻止される。従って、出力軸25に連結されるウインドガラスが自重や、外力により開閉されることは防止される。
【0061】
又、このクラッチCでは、駆動側回転体35の外形(突設部42の大きい円弧の面)と外輪31aの内周面31dとの間に若干の隙間があることなどから、駆動側回転体35と、カラー31と、従動側回転体29との軸ずれ(径方向の移動と傾き)が所定範囲許容されている。即ち、このクラッチCは、回転軸6とウォーム軸28との軸ずれ(径方向の移動と傾き)を所定範囲許容する。
【0062】
そして、上記したような駆動中に、出力軸25側で過負荷が加わると、ウォーム軸28は回転軸6から伝達される回転力とウォームホイール24側の過負荷により、その中間部分が軸直交方向(図1中、略矢印X方向)に大きな力を受け撓むことになる。このとき、軸受保持部21pがギヤハウジング21全体に対して撓み可能であるため、第1軸受22a及び軸受保持部21pがウォーム軸28の撓みに追従して傾き、第1軸受22aの軸方向端部に局部的に集中した大きな摩擦力が加わらない。
【0063】
又、モータ停止中に出力軸25に回転力が加わると、ウォーム軸28はウォームホイール24から回転力を受けることとクラッチCにより逆回転が防止されることにより、その中間部分が軸直交方向(図1中、略矢印X方向)に大きな力を受け撓むことになる。このとき、上記と同様に、軸受保持部21pが撓み可能であるため、第1軸受22a及び軸受保持部21pがウォーム軸28の撓みに追従して傾き、第1軸受22aの軸方向端部に局部的に集中した大きな摩擦力が加わらない。
【0064】
次に、上記第1の実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)軸受保持部21pは突出形成され、軸直交方向に撓み可能とされる。よって、ウォーム軸28が撓んでも、第1軸受22a及び軸受保持部21pがウォーム軸28の撓みに追従して傾くため、第1軸受22aの軸方向端部に局部的に集中した大きな力が加わらない。これにより、第1軸受22aの偏磨耗が低減される。又、ウォーム軸収容部21hとホイール収容部21iの位置関係が変化するようにギヤハウジング21が塑性変形することは防止される。その結果、モータ効率の低下や騒音の発生が防止される。
【0065】
(2)回転軸6とウォーム軸28とは、両軸6,28を連結するクラッチCによりその軸ずれが所定範囲許容される。これにより、モータ停止中に出力軸25に回転力が加わった場合等、ウォーム軸28及び軸受保持部21pが撓んでも、その撓みに応じて回転軸6が撓むことは前記所定範囲と対応した範囲で防止される。
【0066】
(3)軸受保持部21pの外周面基端側にリブ21qを設けたため、軸受保持部21pの耐撓み荷重や、軸受保持部21pの撓む量を所定の値に設定することができる。
【0067】
(4)ギヤハウジング21の軸受保持部21pは、金型K(中央凸部Ka及び筒状部Kb)により突出形成されるため、その軸中心が成形時のひけの影響によりウォーム軸収容部21hの軸中心からズレてしまうといったことが抑制される。よって、回転軸6とウォーム軸28は、精度良く同軸状に配置され、クラッチCを介して良好に連結される。
【0068】
(5)第1軸受22aを保持する軸受保持部21pをウォーム軸28の撓みに追従して傾くようにすることで第1軸受22aをウォーム軸28に対して追従させたため、調心軸受等の高価な軸受を用いることなく、安価な略円筒形状の第1軸受22aを用いながら、その偏磨耗を低減することができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図9〜図14に従って説明する。
図9は、モータの要部断面図を示す。モータは、モータ本体51と、減速部52と、クラッチ53とを備えている。モータ本体51は、略有底円筒形状のヨーク54と、ヨーク54に対して固定された軸受55a,55bと、軸受55a,55bに回転可能に支持された回転軸56と、回転軸56に固定された電機子57とを備える。回転軸56の先端部(ヨーク4の開口部側の端部であって、図9中、右側端部)には、断面D字状の嵌合部56aが形成されている。
【0070】
減速部52は、ギヤハウジング58と、第1及び第2軸受59,60と、ウォーム軸61と、ウォームホイール62と、出力軸63とを備える。ギヤハウジング58は、樹脂製であって、その一端部(図1中、左側端部)がヨーク54にネジ止めされる。
【0071】
ギヤハウジング58には、一端部(図1中、左側端部)から回転軸56の軸線方向に沿って延びるようにウォーム軸収容部64が形成されている。又、ギヤハウジング58には、ウォーム軸収容部64の中間部の軸線直交方向(図1中、上方向)に該ウォーム軸収容部64と連通するホイール収容部65が形成されている。
【0072】
ギヤハウジング58のウォーム軸収容部64の一端部(開口側端部)には、図11に示すように、該ウォーム軸収容部64より内径の大きい凹部66が形成されている。
【0073】
凹部66の底部には、軸受保持部67が軸直行方向に撓み可能に突出形成されている。この軸受保持部67は、ウォーム軸収容部64より内径が大きく、凹部66の内径より外径が小さい略円筒形状に形成されている。又、軸受保持部67は、軸線方向に凹部66の略中央付近まで延びて形成されている。又、軸受保持部67の一端部(図3中、右側端部)内周とウォーム軸収容部64内周とを繋ぐ面(以下、軸受保持底面)67aは、軸受保持部67の外周と凹部66内周とを繋ぐ底面より突出する側(図11中、左側)に位置している。
【0074】
軸受保持部67の外周面基端側(図9及び図11中、右側)には、図11に示すように、凹部66の内周面と連結されるリブ68が等角度(45°)間隔に8個形成されている。このリブ68により、軸受保持部67の耐撓み荷重(どれくらいの大きさの力で軸受保持部67が軸直交方向に撓むか)や、軸受保持部67の撓む量が所定の値に設定されている。
【0075】
又、軸受保持部67の外周面先端側には略三角形状の歯溝からなるセレーション69が形成されている。
第1軸受59は、略円筒形状のすべり軸受であって、その一端部(図9及び図11中、右側端部)が軸受保持底面67aと当接するまで軸受保持部67に内嵌されている。この第1軸受59の内径は、ウォーム軸収容部64の内径より小さく設定されている。又、第2軸受60は、ウォーム軸収容部64の底側(図9中、右側)に内嵌されている。
【0076】
ウォーム軸61は、その中間部にウォーム70が形成され、その両端部で第1及び第2軸受59,60に回転可能に支持されてウォーム軸収容部64内に収容されている。ウォーム軸61の一端部(図9中、左側端部)には、断面略四角形状の係合凹部61aが形成されている。
【0077】
ウォームホイール62は、ウォーム70と噛合され、ウォーム軸61と直交する方向(図1の紙面直交方向)の軸中心で回転可能にホイール収容部65内に収容されている。そして、出力軸63は、ウォームホイール62の回転に伴って同軸で回転するように該ウォームホイール62に連結されている。
【0078】
回転軸56は、クラッチ53を介してウォーム軸61に連結されている。クラッチ53は、図12に示すように、クラッチハウジング71と、駆動側回転体72と、ボール73と、従動側回転体74と、複数(3つ)の転動体75と、リング76とを備えている。
【0079】
駆動側回転体72は、樹脂材にて形成され、軸部72a及び軸部72aよりも拡径された円盤部72bを有している。この駆動側回転体72の中心部には、略球状の軸心孔72cが形成されている。この軸心孔72cの基端側(図12の下側)には、断面略D字状の嵌合孔72dが形成されている。この嵌合孔72dは、図12に示すように、前記回転軸56の嵌合部56aに回転不能に連結固定される。
【0080】
又、この嵌合孔72dには、回転軸56(嵌合部56a)が嵌挿される開口部側に向かって漸次拡開するテーパ部72eが設けられる。
円盤部72bの先端側(図12の上側)には、外周面に沿って軸方向と平行に突出する突設部81が等角度間隔に複数(3つ)形成されている。突設部81の内壁面(径方向内側の面)には、図13に示すように、中心側に向かって突出する突出片81aが形成されている。そして、各隣接する突出片81aの間には、等角度ごとに扇形状に形成され、中心軸で互いに連通した複数(3つ)の係合溝82が形成されている。この突設部81には、外側に開放された開口部83が形成されている。
【0081】
ボール73は、金属製であり、図12に示すように、軸心孔72cに回転可能、かつ脱落不能に収容される。
従動側回転体74は、円盤部74a、及び円盤部74aの中心部においてその先端側(図12の上側)に断面略四角形状に突出する嵌合部74bを有している。この嵌合部74bは、図11に示すように、ウォーム軸61の係合凹部61aに回転不能に連結固定される。
【0082】
円盤部74aには、図13に示すように、径方向外側に延びる略扇形状に形成された係合凸部84が等角度間隔に複数(3つ)形成されている。この係合凸部84は、前記係合溝82内に回動可能に収容される。尚、この従動側回転体74は、軸心孔72cに収容されたボール73と点接触するため、その回転が円滑なものとされる。
【0083】
各係合凸部84の外周面には、両側から中央部に向かって肉薄となるように直線的に切り欠いた制御面84aが形成されている。
従動側回転体74を収容した駆動側回転体72は、クラッチハウジング71の内周面との間に若干の隙間を有して同クラッチハウジング71に回転可能に内装される。
【0084】
クラッチハウジング71は、図12に示すように、略円筒形状の外輪部71a及び底部71bにより形成され、その底部71b中央には軸心孔71cが形成されている。この軸心孔71cには、駆動側回転体72の軸部72aが回転可能に挿通される。又、外輪部71aの内周面開口側には、複数の略三角形状の歯溝からなるセレーション71dが形成されている。そして、そのセレーション71dは、図11に示すように、外輪部71aの開口側端部がリブ68と当接される位置まで、前記軸受保持部67のセレーション69に外嵌される。
【0085】
図13に示すように、外輪部71aの内周面、開口部83の第1及び第2面83a,83b、及び係合凸部84の制御面84aとで形成される空間には、転動体75が配設される。
【0086】
転動体75は、円柱体であって、その中心軸線がクラッチ53の軸中心と平行になるように配設されている。この転動体75の直径は、制御面84aの中央部と外輪部71aの内周面間の間隔より短く、制御面84aの端部と外輪部71aの内周面間の間隔より長く設定されている。
【0087】
従動側回転体74の先端側(図12の上側)には、リング76が配置される。このリング76は、樹脂材よりなり、クラッチハウジング71の外輪部71aに圧入固定される。これにより転動体75の軸線方向の移動が規制される。
【0088】
上記クラッチ53では、駆動側回転体72が図14(a)において矢印方向(時計回り方向)に回転すると、係合凸部84の一側面(反時計回り側の面)84bが突出片81aの一側面(時計回り側の面)81bと当接し押圧される。逆に、駆動側回転体72が反時計回り方向に回転すると、係合凸部84の他側面(時計回り側の面)84cが突出片81aの他側面(反時計回り側の面)81cと当接し押圧される。尚、これらのとき、転動体75は開口部83に押圧されて制御面84aの中央部と対応した位置に配置されるため、従動側回転体74の回転が阻止されることはない。よって、従動側回転体74は、駆動側回転体72と共に回転する。
【0089】
一方、従動側回転体74が図14(b)に示すように、矢印方向(反時計回り方向)に回転すると、転動体75が制御面84aの端部側に相対移動し、転動体75が制御面84aと外輪部71aの内周面で挟持される(ロック状態となる)。逆に、従動側回転体74が時計回り方向に回転する場合も同様に、転動体75が制御面84aの端部側に相対移動し、転動体75が制御面84aと外輪部71aの内周面で挟持される。そして、外輪部71aは減速部52(軸受保持部67)に固定されるため、従動側回転体74のそれ以上の回転は阻止され、駆動側回転体72を連れ回りさせることはない。
【0090】
又、このクラッチ53では、駆動側回転体72の外周面とクラッチハウジング71の内周面との間に若干の隙間があり、駆動側回転体72がクラッチハウジング71に対して径方向へ移動することが所定範囲(隙間分)許容されている。そして、嵌合孔72dのテーパ部72eにより、回転軸56が嵌合孔72dの中心軸線に対して傾くことが所定範囲(テーパ部72eの傾き分)許容されている。即ち、このクラッチ53は、回転軸56とウォーム軸61との軸ずれ(径方向の移動と傾き)を所定範囲許容する。
【0091】
上記のように構成されたモータは、モータ本体51の回転軸56が回転駆動されると、その回転力がクラッチ53を介してウォーム軸61に伝達され、ウォーム軸61が回転する。すると、ウォームホイール62がウォーム軸61の回転速度より遅く、高トルクで回転する。すると、ウォームホイール62の回転に伴って出力軸63が回転し、外部の負荷に回転力を伝達する。
【0092】
このような駆動中に、出力軸63側で過負荷が加わると、ウォーム軸61は回転軸56から伝達される回転力とウォームホイール62側の過負荷により、その中間部分が軸直交方向(図9中、略矢印X方向)に大きな力を受け撓むことになる。このとき、軸受保持部67がギヤハウジング58全体に対して撓み可能であるため、第1軸受59及び軸受保持部67がウォーム軸61の撓みに追従して傾き、第1軸受59の軸方向端部に局部的に集中した大きな摩擦力が加わらない。
【0093】
又、モータ停止中に出力軸63に回転力が加わると、ウォーム軸61はウォームホイール62から回転力を受けることとクラッチ53により逆回転が防止されることにより、その中間部分が軸直交方向(図9中、略矢印X方向)に大きな力を受け撓むことになる。このとき、上記と同様に、軸受保持部67が撓み可能であるため、第1軸受59及び軸受保持部67がウォーム軸61の撓みに追従して傾き、第1軸受59の軸方向端部に局部的に集中した大きな摩擦力が加わらない。
【0094】
次に、上記第2の実施の形態の特徴的な効果を以下に記載する。
(1)軸受保持部67は突出形成され、軸直交方向に撓み可能とされる。よって、ウォーム軸61が撓んでも、第1軸受59及び軸受保持部67がウォーム軸61の撓みに追従して傾くため、第1軸受59の軸方向端部に局部的に集中した大きな力が加わらない。これにより、第1軸受59の偏磨耗が低減される。又、ウォーム軸収容部64とホイール収容部65の位置関係が変化するようにギヤハウジング58が塑性変形することは防止される。その結果、モータ効率の低下や騒音の発生が防止される。
【0095】
(2)回転軸56とウォーム軸61とは、両軸56,61を連結するクラッチ53によりその軸ずれが所定範囲許容される。これにより、モータ停止中に出力軸63に回転力が加わった場合等、ウォーム軸61及び軸受保持部67が撓んでも、その撓みに応じて回転軸56が撓むことは前記所定範囲と対応した範囲で防止される。
【0096】
(3)軸受保持部67には、第1軸受59が内嵌される。又、軸受保持部67のセレーション69には、クラッチ53のセレーション71dが外嵌される。このように、軸受保持部67はクラッチ53を保持する機能を備えるため、クラッチ53の保持部を別構成としなくてよく、ギヤハウジング58の形状が複雑にならない。しかも、軸受保持部67の内外周で2つの部材59,53を保持するため、モータの軸線方向の短縮化を図ることができる。
【0097】
(4)軸受保持部67の外周面基端側にリブ68を設けたため、軸受保持部67の耐撓み荷重や、軸受保持部67の撓む量を所定の値に設定することができる。
【0098】
(5)軸受保持部67の外周面基端側にリブ68を設け、クラッチハウジング71のセレーション71dを外輪部71aの開口側端部がリブ68と当接される位置まで軸受保持部67のセレーション69に外嵌するようにしたため、クラッチ53の軸線方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0099】
(6)第1軸受59を保持する軸受保持部67をウォーム軸61の撓みに追従して傾くようにすることで第1軸受59をウォーム軸61に対して追従させたため、調心軸受等の高価な軸受を用いることなく、安価な略円筒形状の第1軸受59を用いながら、その偏磨耗を低減することができる。
【0100】
上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記各実施の形態では、軸受保持部21p,67を突出形成したが、第1軸受22a,59が、ウォーム軸28,61の撓みに対して追従可能に設けられれば、突出形成しなくてもよい。例えば、軸受保持部21p,67を単にギヤハウジング21,58に形成された凹部に変更し、第1軸受22a,59を調心軸受(調心メタル軸受等)に変更する。このようにしても、ウォーム軸28,61が撓んでも、調心軸受がウォーム軸28,61の撓みに追従するため、調心軸受の軸方向端部に局部的に集中した大きな力が加わらない。これにより、調心軸受の偏磨耗が低減される。又、ウォーム軸収容部21h,64とホイール収容部21i,65の位置関係が変化するようにギヤハウジング21,58が塑性変形することは防止される。その結果、モータ効率の低下や騒音の発生が防止される。
【0101】
・上記各実施の形態では、軸受保持部21p,67を略円筒形状に突出形成したが、突出形成され第1軸受22a,59を保持できれば、他の形状としてもよい。例えば、円筒形状を90°分切り取った形状の第1保持片と、同形状の第2保持片を対向するように突出形成し軸受保持部としてもよい。このようにしても上記実施の形態の効果と同様の効果を得ることができる。
【0102】
・上記各実施の形態では、回転軸6,56とウォーム軸28,61とを別部材で構成し、クラッチC,53により連結したが、回転軸6,56とウォーム軸28,61とを連続する一本の部材で構成してもよい。このようにしても上記各実施の形態の効果(1)と同様の効果を得ることができる。
【0103】
・上記各実施の形態では、回転軸6,56とウォーム軸28,61とをクラッチC,53により連結したが、他の連結部材(例えば遊星運動装置(Sun and planet gear))に変更して実施してもよい。このようにしても上記各実施の形態の効果(1)と同様の効果を得ることができる。又、他の連結部材が回転軸6,56とウォーム軸28,61との軸ずれを許容する機能を備えれば、上記各実施の形態の効果(2)と同様の効果も得ることができる。
【0104】
・上記第2の実施の形態では、クラッチ53はクラッチハウジング71のセレーション71dが軸受保持部67のセレーション69に外嵌される構造としたが、ギヤハウジング58に軸受保持部67とは別にクラッチハウジング71を保持する保持部を形成し保持させてもよい。このようにしても上記第2の実施の形態の効果(1),(2),(4),(6)と同様の効果を得ることができる。
【0105】
・上記第2の実施の形態では、クラッチ53のクラッチハウジング71を軸受保持部67に外嵌させてクラッチ53を保持したが、これに限らず、クラッチハウジング71の外輪部71aをギヤハウジング58の凹部66に内嵌させてクラッチ53を保持してもよい。
【0106】
・上記各実施の形態では、軸受保持部21p,67の外周面基端側にリブ21q,68を設けたが、リブ21q,68は設けなくてもよい。このようにしても上記第1の実施の形態の効果(1),(2),(4),(5)、上記第2の実施の形態の効果(1)〜(3),(6)と同様の効果を得ることができる。
【0107】
・上記各実施の形態のリブ21q,68は、その大きさや数等を適宜変更してもよい。
上記実施の形態から把握できる技術的思想について、以下にその効果とともに記載する。
【0108】
(イ) 前記軸受保持部(21p,67)の基端側にリブ(21q,68)を設けた。
【0109】
このようにすると、軸受保持部を撓ませるための力や、軸受保持部が撓む量を所定の値に設定することができる。
【0110】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、ウォーム軸を支持する軸受の偏磨耗を低減し、ギヤハウジングの変形を防止することができるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態のモータの要部断面図。
【図2】第1の実施の形態のモータの要部拡大断面図。
【図3】第1の実施の形態のクラッチの分解斜視図。
【図4】第1の実施の形態のギヤハウジングの上側端面図。
【図5】ギヤハウジングの製造方法を説明するための説明図。
【図6】図2のA−A断面図。
【図7】第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための説明図。
【図8】第1の実施の形態のクラッチの動作を説明するための説明図。
【図9】第2の実施の形態のモータの要部断面図。
【図10】第2の実施の形態のギヤハウジングの側面図。
【図11】第2の実施の形態のモータの要部拡大断面図。
【図12】第2の実施の形態のクラッチの分解斜視図。
【図13】第2の実施の形態のクラッチの要部断面図。
【図14】(a)第2の実施の形態のクラッチの動作を説明するための説明図。(b)同じく、クラッチの動作を説明するための説明図。
【符号の説明】
2,51…モータ本体、6,56…回転軸、21,58…ギヤハウジング、21g…凹部としてのクラッチ収容部、21p,67…軸受保持部、22a,59…第1軸受、22b,60…第2軸受、28,61…ウォーム軸、68…リブ、71d…固定部としてのセレーション、C,53…連結部材としてのクラッチ。
Claims (8)
- ウォーム軸(28,61)とモータ本体(2,51)の回転軸(6,56)とを、軸ずれを許容可能な連結部材(C,53)を介して連結し、前記ウォーム軸(28,61)の両端をモータ本体(2,51)に固定されるギヤハウジング(21,58)に保持された軸受(22a,22b,59,60)によって支持するモータであって、
前記連結部材(C,53)は、回転軸(6,56)の回転力をウォーム軸(28,61)に伝達し、ウォーム軸(28,61)の回転力を回転軸(6,56)に非伝達するクラッチであり、
前記モータ本体(2,51)側の軸受(22a,59)を、前記ウォーム軸(28,61)の撓みに対して追従可能に設けたことを特徴とするモータ。 - 請求項1に記載のモータにおいて、
前記ギヤハウジング(21,58)に設けられ前記モータ本体(2,51)側の軸受(22a,59)を保持する軸受保持部(21p,67)を、前記ウォーム軸(28,61)の撓みに対して追従可能としたことを特徴とするモータ。 - ウォーム軸(28,61)の両端をモータ本体(2,51)に固定されるギヤハウジング(21,58)に保持された軸受(22a,22b,59,60)によって支持するモータであって、
前記モータ本体(2,51)側の軸受(22a,59)を保持する軸受保持部(21p,67)を、前記ギヤハウジング(21,58)に突設したことを特徴とするモータ。 - 請求項3に記載のモータにおいて、
前記ウォーム軸(28,61)と前記モータ本体(2,51)の回転軸(6,56)を、軸ずれを許容可能な連結部材(C,53)を介して連結したことを特徴とするモータ。 - 請求項4に記載のモータにおいて、
前記連結部材(C,53)は、回転軸(6,56)の回転力をウォーム軸(28,61)に伝達し、ウォーム軸(28,61)の回転力を回転軸(6,56)に非伝達するクラッチであることを特徴とするモータ。 - 請求項1、2及び5のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記ギヤハウジング(21)に軸線方向に延びる略円形の凹部(21g)を形成し、その凹部(21g)の底面から略円筒形状の前記軸受保持部(21p)を突設し、該軸受保持部(21p)の内周側で前記軸受(22a)を保持し、前記凹部(21g)の内周側に前記クラッチ(C)の一部を収容保持することを特徴とするモータ。 - 請求項1、2及び5のいずれか1項に記載のモータにおいて、
前記軸受保持部(67)は、略円筒形状に形成され、その内周側で前記軸受(59)を保持し、その外周側で前記クラッチ(53)を保持することを特徴とするモータ。 - 請求項7に記載のモータにおいて、
前記クラッチ(53)は、前記軸受保持部(67)に外嵌される固定部(71d)を備え、
前記軸受保持部(67)の外周基端側にリブ(68)を設け、
前記固定部(71d)を前記リブ(68)と当接する位置まで前記軸受保持部(67)に外嵌したことを特徴とするモータ。
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