JP3695333B2 - 内燃機関制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用内燃機関の自動停止始動を実行する内燃機関制御装置に関し、特に、車室内空調装置が空調用熱源としている内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には自動停止始動の作動を禁止する内燃機関制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車車両において、車室内の空調を行うオートマチック・エアコンディショナ(以下、「オートエアコン」と略す)が知られている。このオートエアコンは、車室内を設定温度に自動的に維持する装置であり、温度センサにより外気温と室内温度とを検出し、電子制御装置の処理により、空気の吹出温度や風量を調整して、車室内を適切な空調状態に維持させるものである。このオートエアコンは、暖房時においては内燃機関の冷却水の熱を有効利用することにより、吹出温度を調整して車室内を快適な室温となるように暖めている(特開平5−221233号公報)。
【0003】
一方、燃費の改善などのために、車両が交差点等で走行停止した時に内燃機関を自動停止し発進操作時にモータジェネレータなどを回転させて内燃機関を自動始動して自動車を発進可能とする自動停止始動システム、いわゆるエコノミーランニング(以下、「エコラン」と称する)システムが搭載された車両が存在する。このような車両にオートエアコンが用いられた場合には、内燃機関の自動停止中に冷却水温度が低下して、冷却水による暖房が不可能となる場合がある。このような状態を回避するために、内燃機関の自動停止を禁止して内燃機関を始動させる制御が行われることがある。
【0004】
例えば、冷却水温度に閾値を設けて、冷却水温度が閾値から上であれば内燃機関の自動停止は許可するが、冷却水温度が閾値から低下すると内燃機関の自動停止を禁止して内燃機関を始動させるものである。この場合、オートエアコンの必要吹出温度が低い場合には内燃機関の停止により冷却水温度が低くなっていても暖房上は問題ないが、オートエアコンの必要吹出温度が高い場合には冷却水温度が低くなると要求されている暖房が不可能となる。このことから、必要吹出温度の高い方では閾値を高くして冷却水温度が低下した時は早い段階で内燃機関の運転を復帰させて冷却水温度を比較的高く維持するように制御している。このことにより広い範囲でオートエアコンによる暖房が十分に行われるように制御されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで内燃機関の自動停止や自動始動などにより内燃機関の熱量の停止や発生開始が生じるような冷却水温度の過渡時においては、冷却水温度の変化に対して室内温度は遅れを生じる。この遅れのため、自動停止時において温度が下がりつつある冷却水を用いて暖房を継続していても室内の快適性上は問題ない期間が存在する。しかし、従来では冷却水温度が上昇しつつある場合と同じ閾値(制御におけるハンチングを防止するために設定したヒステリシス幅を含む)に、冷却水温度が低下した時に、内燃機関の自動停止を禁止して、内燃機関の運転を再開させていた。このように暖房上は問題ないのにもかかわらず内燃機関の自動停止が終了するので、従来の閾値を用いたのでは燃費の改善効果が十分になされていないことが判る。
【0006】
又、必要吹出温度が低い領域では閾値が低く設定されている。このように低い閾値では内燃機関が停止した場合に冷却水温度が閾値に達するまでの時間が長くなることから、自動停止状態を長く維持できるので、燃費の改善効果が十分になされる。しかし、必要吹出温度が高い領域にては十分に吹出温度を上げる必要性から閾値が高くなっている。このために、内燃機関が自動停止した場合には、冷却水温が早期に閾値に達してしまい、自動停止が短時間で終了してしまう。ところが必要吹出温度が高い領域にある状態から冷却水温度が低下する場合は、充分高い室内温度で内燃機関が自動停止するため、冷却水温度が低下しても空調の快適性を比較的長く維持できることが判った。このように内燃機関の自動停止後に空調の快適性を比較的長く維持できるにもかかわらず、従来は自動停止が短時間で終了し、燃費の改善効果が十分になされているとは言えなかった。
【0007】
本発明は、車室内空調状態に対応して内燃機関の自動停止禁止領域を縮小することにより、内燃機関の自動停止状態を長くして燃費改善効果を高めることを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1記載の内燃機関制御装置は、車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する機関自動停止始動手段と、車室内空調装置が空調用熱源としている前記内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には前記自動停止を禁止する機関自動停止許否手段とを備えた内燃機関制御装置であって、前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度又は該車室内温度に関係する値に応じて可変とされると共に、前記閾値のヒステリシス幅は制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることを特徴とする。
【0009】
このように閾値のヒステリシス幅が、制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることにより、自ずと冷却媒体温度上昇時の閾値に比較して、冷却媒体温度下降時における閾値を十分に低温側に配置することができる。すなわち、冷却媒体温度の下降時においては、車室内温度又は車室内温度に関係する値は、過渡時の遅れのために現在の冷却媒体温度より高い冷却媒体温度に対応した状態となっている。このため冷却媒体温度上昇時における閾値に制御におけるハンチングを考慮した閾値よりも更に低い状態に閾値を配置できる。
【0010】
このように冷却媒体温度下降時の閾値を十分に低くできることから内燃機関の自動停止禁止領域を縮小することができる。したがって、内燃機関の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0011】
請求項2記載の内燃機関制御装置は、車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する機関自動停止始動手段と、車室内空調装置が空調用熱源としている前記内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には前記自動停止を禁止する機関自動停止許否手段とを備えた内燃機関制御装置であって、前記機関自動停止許否手段における前記閾値及び該閾値のヒステリシスの幅は、車室内温度又は該車室内温度に関係する値に応じて可変とされていることを特徴とする。
【0012】
このように機関自動停止許否手段における閾値及びこの閾値のヒステリシス幅を、車室内温度又は車室内温度に関係する値に応じて可変としている。このことにより、車室内温度又は車室内温度に関係する値に対応させて、閾値を変化させることにより一律の閾値に比較して低い閾値部分を設定することができるようになる。このことから内燃機関の自動停止禁止領域を縮小することができ、内燃機関の自動停止状態を長く維持することができるので、燃費改善効果を高めることができる。
【0013】
これと共に、車室内温度又は車室内温度に関係する値に応じてヒステリシス幅を拡大できる。特に車室内温度又は車室内温度に関係する値が高い領域では、冷却媒体温度が低下する場合の閾値を低く設定することができる。このため、特に車室内温度又は車室内温度に関係する値が高い領域では内燃機関の自動停止禁止領域を縮小するようにことができる。したがって、内燃機関の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0014】
請求項3記載の内燃機関制御装置では、請求項2記載の構成において、前記ヒステリシスの幅は、制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることを特徴とする。
【0015】
このように閾値のヒステリシス幅が、制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることにより、自ずと冷却媒体温度上昇時の閾値に比較して、冷却媒体温度下降時における閾値が十分に低温に配置される。すなわち、冷却媒体温度の下降時においては、車室内温度又は車室内温度に関係する値は過渡時の遅れのために現在の冷却媒体温度より高い冷却媒体温度の状態に対応している。このため冷却媒体温度上昇時における閾値に制御におけるハンチングを考慮して設定した閾値よりも、更に低い状態に閾値を配置できる。
【0016】
このように冷却媒体温度下降時の閾値を十分に低くでき内燃機関の自動停止禁止領域を更に縮小することができる。したがって内燃機関の自動停止状態をより長く維持することができ、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0017】
請求項4記載の内燃機関制御装置では、請求項1〜3のいずれか記載の構成において、前記ヒステリシスの幅は、前記機関自動停止許否手段にて前記自動停止が許可されている状態から前記冷却媒体の温度が低下する場合において室内快適性を損なわない範囲に設定されたことを特徴とする。
【0018】
このように冷却媒体の温度が低下する場合において室内快適性を損なわない範囲にヒステリシスの幅が設定されていることにより、空調において乗員に違和感を感じさせることなく、かつ内燃機関の自動停止禁止領域を十分に縮小して、燃費改善効果を十分に高めることができる。
【0019】
請求項5記載の内燃機関制御装置では、請求項1〜4のいずれか記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度に関係する値である車室内空調装置の自動空調時の必要吹出温度に応じて可変とされ、該必要吹出温度が高くなるほど高くなることを特徴とする。
【0020】
より具体的には、前記閾値は、車室内空調装置の自動空調時の必要吹出温度に応じて可変とされ、この必要吹出温度が高くなるほど高くなるように設定される。
【0021】
このことにより、外気温や乗員の要求に応じて、自動空調時の必要吹出温度が低く設定されている場合には必要吹出温度が高い場合に比較して、空調に影響することなく長く自動停止状態を維持でき、燃費改善効果を高めることができる。又、必要吹出温度が高く設定されている場合には必要吹出温度が低い場合に比較して、比較的早期に自動停止状態を禁止でき、空調に影響することがない。しかも、このように必要吹出温度が高く設定されている場合においても冷却媒体温度下降時の閾値を十分に低くでき内燃機関の自動停止禁止領域を縮小することができるので、内燃機関の自動停止状態をより長く維持することができる。したがって、燃費改善効果を十分に高めることができる。
【0022】
請求項6記載の内燃機関制御装置では、請求項5記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値のヒステリシスの幅は、前記必要吹出温度が高くなるほど大きくなることを特徴とする。
【0023】
必要吹出温度が高い方が、冷却媒体温度の低下に対する車室内温度の低下の遅れの程度は大きい。すなわち、冷却媒体温度が低下しても空調の快適性は維持され易くなるので、必要吹出温度が低い場合よりもヒステリシスの幅を大きくできる。このため、内燃機関の自動停止状態をより長く維持することができ、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0024】
請求項7記載の内燃機関制御装置では、請求項1〜4のいずれか記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度に応じて可変とされ、該車室内温度が高くなるほど低くなることを特徴とする。
【0025】
より具体的には、前記閾値は、車室内温度に応じて可変とされ、この車室内温度が高くなるほど低くなるように設定される。これは、車室内温度が高い方が、冷却媒体温度の低下に対して空調の快適性の低下の遅れの程度が大きいので、車室内温度が低い場合よりも閾値を低くできる。このため、内燃機関の自動停止状態をより長く維持することができ、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0026】
請求項8記載の内燃機関制御装置では、請求項7記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値のヒステリシスの幅は、車室内温度に関係する値である車室外気温に応じて可変とされ、該車室外気温が高くなるほど大きくなることを特徴とする。
【0027】
より具体的には、前記閾値のヒステリシスの幅は、車室外気温に応じて可変とされ、車室外気温が高くなるほど大きくなるように設定されている。これは、車室外気温が高い方が、冷却媒体温度の低下に対して空調の快適性の低下の程度が小さくなるので、車室外気温が低い場合よりもヒステリシスの幅を大きくできるからである。このため、内燃機関の自動停止状態をより長く維持することができ、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0028】
請求項9記載の内燃機関制御装置は、車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する機関自動停止始動手段と、車室内空調装置が空調用熱源としている前記内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には前記自動停止を禁止する機関自動停止許否手段とを備えた内燃機関制御装置であって、前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度又は該車室内温度に関係する値の内から選ばれた第1の値に応じて可変とされると共に、前記閾値は前記第1の値とは異なる車室内温度又は該車室内温度に関係する値の内から選ばれた第2の値に応じて増減補正されることを特徴とする。
【0029】
このように機関自動停止許否手段における閾値を、車室内温度又は車室内温度に関係する値の内から選ばれた第1の値に応じて可変としている。このことにより、第1の値が表す空調状況に適合させて閾値を十分に低い位置に設定できる。例えば第1の値の状態によって冷却媒体温度が低下する場合に閾値を低く設定できる。このため内燃機関の自動停止禁止領域を縮小することができる。
【0030】
更に、前記閾値は前記第1の値とは異なる車室内温度又は該車室内温度に関係する値の内から選ばれた第2の値に応じて増減補正される。このため、第2の値が表す空調状況に適合させて閾値を更に低い位置に設定できる。このため、内燃機関の自動停止禁止領域を十分に縮小することができる。したがって、内燃機関の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0031】
請求項10記載の内燃機関制御装置では、請求項9記載の構成において、前記第1の値は車室内温度であり、前記第2の値は車室外気温であることを特徴とする。
【0032】
より具体的には、前記第1の値として車室内温度を用いて、閾値を車室内温度に応じて可変とすると共に、第2の値として車室外気温を用いて、前記閾値を車室外気温に応じて増減補正することとしても良い。
【0033】
車室内温度が高い側では冷却媒体温度が低下する場合に閾値を低く設定できる。このため、特に車室内温度が高い領域で内燃機関の自動停止禁止領域を縮小することができる。更に、車室外気温が高い側では閾値が低くなるように補正することができる。このため、特に車室外気温が高い領域で、内燃機関の自動停止禁止領域を一層縮小することができる。
【0034】
このことにより、請求項9にて述べたごとく内燃機関の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
[実施の形態1]
図1は、上述した発明が適用された内燃機関及びその制御装置の概略構成を表すブロック図である。内燃機関(以下、「エンジン」と称する)10は、車両に搭載された火花点火式筒内噴射型のガソリンエンジンである。エンジン10のシリンダヘッド12には燃料噴射弁14が設けられ、シリンダブロック16、ピストン18及びシリンダヘッド12により区画された燃焼室20内に直接燃料を噴射可能としている。そして、燃焼室20の天井部分には点火プラグ22が配置されて、燃料噴射弁14から噴射された燃料により形成される混合気に対して点火可能としている。なお燃料噴射弁14には高圧燃料ポンプ(図示略)からデリバリパイプ14aを介して高圧燃料が供給されている。このことにより、圧縮行程末期においても燃料噴射弁14から燃焼室20内に燃料噴射が可能となっている。このデリバリパイプ14a内の燃料圧力は燃圧センサ14bにより検出されている。
【0036】
シリンダヘッド12に形成された吸気ポート24は吸気バルブ26により開閉される。吸気ポート24への吸気の供給は、吸気通路28を介してなされる。吸気通路28にはサージタンク30が設けられ、サージタンク30の上流にはスロットルバルブ32が設けられている。スロットルバルブ32は電動モータ34により開度(スロットル開度TA)が調整され、このスロットル開度TAはスロットル開度センサ36により検出されている。
【0037】
又、シリンダヘッド12に形成された排気ポート38は排気バルブ40により開閉される。燃焼室20から排気ポート38に排出された排気は、排気通路42及び排気浄化触媒(図示略)等を介して外部に排出される。
【0038】
燃焼室20内の混合気の燃焼に伴うピストン18の往復運動は、コンロッド44を介してクランクシャフト46の回転運動に変換される。クランクシャフト46は図示しないトルクコンバータや変速機を介して車輪に動力を伝達している。
【0039】
又、このような動力伝達系とは別に、クランクシャフト46の一端は電磁クラッチ48を介してプーリ50に接続されている。このプーリ50は、ベルト52により他の4つのプーリ53,54,56,58との間で動力の伝達が可能とされている。この内、プーリ53によりウォータポンプ59が駆動可能とされ、プーリ54によりエアコン用コンプレッサ60が駆動可能とされ、プーリ56によりパワーステアリングポンプ62が駆動可能とされている。
【0040】
もう一つのプーリ58は、モータジェネレータ64に連結されている。モータジェネレータ64はプーリ58側から伝達されるエンジン駆動力により発電を行う発電機としての機能と、プーリ58側へモータジェネレータ64の駆動力を供給する電動機としての機能とを併せ持っている。モータジェネレータ64が発電機として機能する場合は、発電した電力はインバータ66を介してバッテリ68へ送られる。この時、インバータ66の位相制御を通じてバッテリ68へ送られる電力を調整することで、モータジェネレータ64の発電量が調整される。一方、モータジェネレータ64が電動機として機能する場合は、バッテリ68に蓄電された電力がインバータ66を介してモータジェネレータ64に供給される。この時のモータジェネレータ64の駆動制御はインバータ66の位相制御により行われる。
【0041】
マイクロコンピュータを中心として構成されているエンジン制御用電子制御装置(以下、「エンジンECU」と称する)70は、前述した燃圧センサ14bから燃料圧力、スロットル開度センサ36からスロットル開度TA、モータジェネレータ64内蔵の回転数センサからモータジェネレータ回転数、バッテリ68の電圧あるいは充放電時の電流量、イグニッションスイッチ72のスイッチ状態、車速センサ74から車速SPD、アクセル開度センサ76からアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度ACCP)、ブレーキスイッチ78からブレーキペダルの踏み込み有無、エンジン回転数センサ80からクランクシャフト46の回転数(エンジン回転数NE)、エアフロメータ82から吸入空気量GA、冷却水温センサ84からエンジン冷却水温度THW(冷却媒体温度に相当する)、アイドルスイッチ86からアクセルペダルの踏み込み有無状態、排気通路42に設けられた空燃比センサ88から空燃比検出値Voxを検出している。
【0042】
このようにして得られたデータに基づいて、エンジンECU70は、電動モータ34を駆動してスロットル開度TAを調整する。更に燃料噴射弁14からの噴射時期を調整することにより、吸気行程時に燃焼室20内に燃料を噴射することにより均質燃焼を実行したり、圧縮行程末期に燃焼室20内に燃料を噴射することにより成層燃焼を実行する。更に後述するごとくの自動停止条件が成立すると、燃料噴射弁14からの燃料噴射を停止して、エンジン10の運転を自動停止させる。又、後述するごとくの自動始動条件が成立するとモータジェネレータ64の駆動力により、プーリ58、ベルト52、プーリ50及び接続状態の電磁クラッチ48を介してクランクシャフト46を回転させ、エンジン10を始動させる。これ以外にエンジンECU70は、点火時期制御、その他の必要な制御を実行している。
【0043】
図2に自動車の車室内を空調するエアコンユニット106の構成を示す。エアコンユニット106は、マイクロコンピュータを中心として構成されているエアコン制御用電子制御装置(以下、「エアコンECU」と称する)107によって制御されることにより、車室内の温度を常に設定温度に保つよう自動制御するように構成されたオートエアコンである。エアコンユニット106は、車室内に空調空気を導く空気通路を形成する空調ダクト110、この空調ダクト110内において空気流を発生させる遠心式送風機130、空調ダクト110内を流れる空気を冷却して車室内を冷房するための冷凍サイクル140、および空調ダクト110内を流れる空気を加熱して車室内を暖房するためにエンジン10からの冷却水(冷却媒体に相当する)を導入する冷却水回路150等から構成されている。
【0044】
空調ダクト110は、車室内の前方側に配設されている。その空調ダクト110の最も上流側(風上側)は、車室内空気(以下「内気」と言う)を取り入れる内気吸込口111、および車室外空気(以下「外気」と言う)を取り入れる外気吸込口112を有している。
【0045】
さらに、内気吸込口111および外気吸込口112の内側には、内外気(吸込口)切替ダンパ113が回動自在に取り付けられている。この内外気切替ダンパ113は、サーボモータ等のアクチュエータ114により駆動されて、吸込口モードを内気循環モード、外気導入モード等に切り替える。
【0046】
又、空調ダクト110の最も下流側(風下側)には、吹出口切替箱を構成する部分であり、デフロスタ開口部、フェイス開口部およびフット開口部が形成されている。そして、デフロスタ開口部には、デフロスタダクト115が接続されて、このデフロスタダクト115の最下流端には、自動車のフロント窓ガラスの内面に向かって主に温風を吹き出すデフロスタ吹出口118が開口している。
【0047】
又、フェイス開口部には、フェイスダクト116が接続されて、このフェイスダクト116の最下流端には、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出すフェイス吹出口119が開口している。さらに、フット開口部には、フットダクト117が接続されて、このフットダクト117の最下流端には、乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出すフット吹出口120が開口している。
【0048】
そして、各吹出口の内側には、2個の吹出口切替ダンパ121,122が回動自在に取り付けられている。2個の吹出口切替ダンパ121,122は、サーボモータ等のアクチュエータ123,124によりそれぞれ駆動されて、吹出口モードをフェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフモード又はデフロスタモードのいずれに切り替える。
【0049】
遠心式送風機130は、空調ダクト110と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容された遠心式ファン131、およびこの遠心式ファン131を回転駆動するブロワモータ132を有している。そして、ブロワモータ132は、ブロワ駆動回路133を介して印加されるブロワ端子電圧に基づいて、送風量(遠心式ファン131の回転速度)が制御される。
【0050】
冷凍サイクル140は、エンジン10又はモータジェネレータ64の駆動力により冷媒を圧縮するコンプレッサ60、圧縮された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ142、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すレシーバ143、液冷媒を減圧膨張させるエキスパンションバルブ144、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるエバポレータ145、およびこれらを環状に接続する冷媒配管等から構成されている。
【0051】
コンプレッサ60には、エンジン10又はモータジェネレータ64からコンプレッサ60への駆動力の伝達を断続する電磁クラッチ146が連結されている。この電磁クラッチ146は、クラッチ駆動回路147により制御されている。電磁クラッチ146がオンされた時には、エンジン10又はモータジェネレータ64の駆動力がコンプレッサ60に伝達されて、エバポレータ145による空気冷却作用が行われる。又、電磁クラッチ146がオフされた時には、エンジン10又はモータジェネレータ64とコンプレッサ60との間が遮断され、エバポレータ145による空気冷却作用が停止される。ここで、コンデンサ142は、車両が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に配設され、内部を流れる冷媒と冷却ファン148により送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器である。
【0052】
冷却水回路150は、エンジン10又はモータジェネレータ64により駆動されるウォータポンプ59によって、エンジン10のウォータジャケットで熱交換した冷却水を循環させる回路で、ラジエータ、サーモスタット(いずれも図示せず)およびヒータコア151を有している。このヒータコア151は、加熱用熱交換器に相当するもので、内部にエンジン10を冷却することにより暖められた冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として冷風を加熱する。
【0053】
ヒータコア151は、空気通路を部分的に塞ぐように空調ダクト110内においてエバポレータ145よりも下流側に配設されている。ヒータコア151の空気上流側には、エアミックスダンパ152が回動自在に取り付けられている。このエアミックスダンパ152は、サーボモータ等のアクチュエータ153に駆動されて、その停止位置によって、ヒータコア151を通過する空気量とヒータコア151を迂回する空気量との割合を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整している。
【0054】
エアコンECU107は、エンジンECU70とは通信可能に接続されて、制御に必要にデータがエアコンECU107との間で交信される。又、エアコンECU107には、車室内前面に設けられたコントロールパネルP、車室内の気温を検出する内気温度センサ171、車室外の気温を検出する外気温度センサ172、車室内への日射量の強さを検出する日射センサ173及びエバポレータ145の出口での空気冷却温度を検出するエバポレータ出口温度センサ174等が接続されている。このことによりエアコンECU107はコントロールパネルP上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号を入力している。尚、コントロールパネルP上の各スイッチとは、電磁クラッチ146の断続によるコンプレッサ60の起動および停止を指令するためのエアコンスイッチ、吸込口モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ、車室内の温度を所望の温度に設定するための温度設定レバー、遠心式ファン131の送風量を切り替えるための風量切替レバー、および吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ等である。
【0055】
次にエンジンECU70にて行われる自動停止処理及び自動始動処理について説明する。図3は自動停止処理のフローチャートを、図4は自動始動処理のフローチャートを示す。これらの処理は短時間周期で繰り返し実行される処理である。尚、フローチャート中の個々の処理ステップを「S〜」で表す。
【0056】
自動停止処理(図3)が開始されると、まず自動停止実行を判定するための運転状態が読み込まれる(S410)。例えば、冷却水温センサ84から検出されるエンジン冷却水温度THW、アイドルスイッチ86から検出されるアクセルペダルの踏み込み有無、バッテリ68の蓄電量、ブレーキスイッチ78から検出されるブレーキペダルの踏み込み有無、および車速センサ74から検出される車速SPD等を、エンジンECU70内部のRAMの作業領域に読み込む。
【0057】
次に、これらの運転状態から自動停止条件が成立したか否かが判定される(S420)。例えば、(1)エンジン10が暖機後でありかつ過熱していない状態(エンジン冷却水温度THWが水温上限値THWmaxよりも低く、かつ水温下限値THWminより高い)、(2)アクセルペダルが踏まれていない状態(アイドルスイッチ86:オン)、(3)バッテリ68の蓄電量がある程度以上である状態、(4)ブレーキペダルが踏み込まれている状態(ブレーキスイッチ78:オン)、および(5)車両が停止している状態(車速SPDが0km/h)であるとの条件(1)〜(5)がすべて満足された場合に自動停止条件が成立したと判定する。
【0058】
上記条件(1)〜(5)の一つでも満足されていない場合には自動停止条件は不成立として(S420で「NO」)、一旦本処理を終了する。
一方、運転者が交叉点等にて車両を停止させたことにより、自動停止条件が成立した場合には(S420で「YES」)、次にエコラン実行許可フラグexecookが「ON」か否かが判定される(S430)。このエコラン実行許可フラグexecookは、後述するごとく空調に連動してエコランによるエンジン10の停止を許可するか禁止するかを判定するエコラン実行許否判定処理にて設定されるフラグである。
【0059】
execook=「OFF」であれば(S430で「NO」)、エンジン10の自動停止が禁止されていることから、このまま一旦本処理を終了する。すなわち、自動停止条件が成立しているにもかかわらず、エンジン10の自動停止は実行しない。
【0060】
一方、execook=「ON」であれば(S430で「YES」)、エンジン10の自動停止が許可されていることから、エンジン停止処理が実行される(S440)。例えば、燃料噴射弁14からの燃料噴射が停止され、更に点火プラグ22による燃焼室20内の混合気への点火制御も停止される。このことにより燃料噴射と点火とが停止して、直ちにエンジン10の運転は停止する。こうして、一旦本処理を終了する。このようにして、自動停止処理を実行することができる。
【0061】
次に、自動始動処理(図4)について説明する。自動始動処理が開始されると、まず自動始動実行を判定するための運転状態が読み込まれる(S510)。ここでは、例えば、自動停止処理(図3)のステップS410にて読み込んだデータと同じ、エンジン冷却水温度THW、アクセルペダルの踏み込み有無、バッテリ68の蓄電量、ブレーキペダルの踏み込み有無、および車速SPD等をRAMの作業領域に読み込む。
【0062】
次に、前述した自動停止処理(図3)によってエンジン10が自動停止されている状態か否かが判定される(S520)。自動停止中で無ければ(S520で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0063】
一方、自動停止中で有れば(S520で「YES」)、ステップS510で読み込んだ運転状態から自動始動条件が成立したか否かが判定される(S530)。例えば、(1)エンジン10が暖機後でありかつ過熱していない状態(エンジン冷却水温度THWが水温上限値THWmaxよりも低く、かつ水温下限値THWminより高い)、(2)アクセルペダルが踏まれていない状態(アイドルスイッチ86:オン)、(3)バッテリ68の蓄電量がある程度以上である状態、(4)ブレーキペダルが踏み込まれている状態(ブレーキスイッチ78:オン)、および(5)車両が停止している状態(車速SPDが0km/h)であるとの条件(1)〜(5)の内の1つでも満足されなかった場合に自動始動条件が成立したと判定する。上述した自動始動条件の(1)〜(5)は、自動停止条件にて用いた各条件と同じ内容であったが、これに限る必要はなく、条件(1)〜(5)以外の条件を設定しても良く。又、条件(1)〜(5)の内のいくつかに絞っても良い。
【0064】
上記条件(1)〜(5)の一つでも満足されなくなった場合には自動始動条件は成立したとして(S530で「YES」)、エンジン始動処理の開始設定を行い(S540)、一旦、本処理を終了する。このステップS540によるエンジン始動処理の開始設定により、エンジンECU70においては、まず電磁クラッチ48が接続状態にされ、モータジェネレータ64が駆動される。このことによりエンジン10のクランクシャフト46が回転される。そして更に始動時の燃料噴射処理と点火時期制御処理とが実行されて、エンジン10が自動始動される。そして始動が完了すれば、通常の燃料噴射制御処理、点火時期制御処理、その他のエンジン運転に必要な処理が開始される。
【0065】
一方、上記条件(1)〜(5)のすべてが満足されている場合には自動始動条件は不成立として(S530で「NO」)、次にエコラン実行許可フラグexecookが「OFF」か否かが判定される(S550)。ここで、execook=「OFF」に設定されていれば(S550で「YES」)、エンジン10の自動停止が禁止されていることから、次に前述したステップS540の処理に移り、エンジン始動処理の開始設定を行う。
【0066】
一方、execook=「ON」に設定されていれば(S550で「NO」)、エンジン10の自動停止が許可されていることから、このまま一旦本処理を終了する。
【0067】
次に、エアコンECU107にて行われるエコラン実行許否判定処理について説明する。図5のフローチャートに、エコラン実行許否判定処理を示す。本処理は短時間周期で繰り返し実行される処理である。
【0068】
エコラン実行許否判定処理が開始されると、まず必要吹出温度TAO及びエンジン冷却水温度THWの読み込みがなされる(S610)。この必要吹出温度TAOは、エアコンECU107において実行されるエアコン制御処理にて算出されている値であり、車室内に吹き出す空気の目標吹出温度に相当する。例えば、内気温度センサ171、外気温度センサ172、日射センサ173及びエバポレータ出口温度センサ174の検出値と設定温度とから、予めROMに記憶された次式1に基づいて車室内に吹き出す空気の目標吹出温度として算出したものである。
【0069】
【数1】
TAO ←
KSET×TSET−KR×TR−KAM×TAM−KS×TS+C
… [式1]
ここで、TSETはコントロールパネルP上の温度設定レバーにて設定した設定温度、TRは内気温度センサ171にて検出した内気温度、TAMは外気温度センサ172にて検出した外気温度、TSは日射センサ173にて検出した日射量である。又、KSET、KR、KAM及びKSはゲインで、Cは補正用の定数である。尚、前記式1から判るように内気温度TR及び外気温度TAMが低くなるほど必要吹出温度TAOは高くなる傾向にある。日射量TSも少なくなるほど必要吹出温度TAOは高くなる傾向にある。
【0070】
次に必要吹出温度TAOが基準温度T1以上か否かが判定される(S620)。この基準温度T1は図6のエンジン自動停止許否域説明図に示すごとく、エンジン10の自動停止禁止域が設けられる範囲の境界を示すものである。TAO<T1であれば(S620で「NO」)、エンジン自動停止許可域であるので、エコラン実行許可フラグexecookに「ON」を設定して(S690)、このまま一旦本処理を終了する。すなわち、TAO<T1であれば、暖房の観点からはエンジン自動停止は許可される。
【0071】
一方、TAO≧T1であれば(S620で「YES」)、次に必要吹出温度TAOの値に基づいて、昇温時閾値マップから昇温時閾値Txを算出する(S630)。この昇温時閾値マップは、図6に示すTAO≧T1の領域における昇温時閾値のラインLUに相当する。すなわち、昇温時閾値マップの値は必要吹出温度TAOの上昇に応じて高くなり、必要吹出温度TAOの高温側ではほぼ一定の値に安定する。
【0072】
尚、ステップS620における基準温度T1にはヒステリシスが設けられていて、制御におけるハンチングが生じないようにされている。
次に必要吹出温度TAOの値に基づいて、降温時閾値マップから降温時閾値Tyを算出する(S640)。この降温時閾値マップは、図6に示すTAO≧T1の領域における降温時閾値のラインLDに相当する。すなわち、降温時閾値マップの値は、昇温時閾値マップより低い状態にて、必要吹出温度TAOの上昇に応じて高くなり、必要吹出温度TAOの高温側ではほぼ一定の値に安定する。
【0073】
尚、昇温時閾値のラインLUと降温時閾値のラインLDとの間の領域は、ヒステリシス域である。すなわち、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」の状態でエンジン冷却水温度THWが上昇している場合には、昇温時閾値のラインLUが、エコラン実行許可フラグexecookを「ON」とするための閾値となる。一方、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」の状態でエンジン冷却水温度THWが下降している場合には、降温時閾値のラインLDが、エコラン実行許可フラグexecookを「OFF」とするための閾値となる。
【0074】
上述した昇温時閾値のラインLUは、エンジン冷却水温度THWの上昇に対する室温の遅れを考慮して設定したラインであり、昇温によりこのラインLUに一旦到達すれば、不快感を感じさせない吹出温度となるように設定したラインである。このラインLUに到達した後は、室温がエンジン冷却水温度THWに対して遅れて上昇してくるため、エンジン10の自動停止が行われて、エンジン冷却水温度THWが昇温時閾値のラインLUから下降しはじめても、しばらくの期間は吹出温度は乗員にとって不快感を感じさせるものとはならない。
【0075】
そして、エンジン冷却水温度THWの下降に対する室温の遅れを考慮して設定したラインが降温時閾値のラインLDである。したがって昇温時閾値のラインLUと降温時閾値のラインLDとの間には、制御におけるハンチング(ここではエコラン実行許可と禁止との間での頻繁な切り替え)を防止するために設定するヒステリシス幅(例えば1℃)よりも可成り広いヒステリシス幅が設定される。例えば図6においては、必要吹出温度TAOの高温側での幅Tu1−Td1は約15℃に、低温側での幅Tu2−Td2は約5℃に設定されている。
【0076】
次に、現在エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」か否かが判定される(S650)。ここでエコラン実行許可フラグexecook=「ON」の場合には(S650で「NO」)、次にエンジン冷却水温度THWが降温時閾値Ty以下か否かが判定される(S660)。THW>Tyである場合(S660で「NO」)は、このまま一旦本処理を終了する。
【0077】
例えば、自動停止処理(図3)にてexecook=「ON」の状態にて、自動停止条件が成立することで、ステップS440が実行されてエンジン10の運転が停止し、エンジン冷却水温度THWが低下しつつある場合を考える。図6に示すごとく点Adの状態から、点Bdの状態にエンジン冷却水温度THWが低下しても、点BdではTHW>Tyであることからエコラン実行許可フラグexecook=「ON」が維持される。したがって、前述した自動始動処理(図4)のステップS530にて自動始動条件が成立していない場合(S530で「NO」)にはステップS550では「NO」と判定され、自動停止状態が継続する。
【0078】
そして、図6の点Cdで示したごとく、エンジン10の自動停止が継続して次第にエンジン冷却水温度THWが低下し、THW≦Tyとなると(S660で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecookに「OFF」が設定される(S670)。このことにより、前述した自動始動処理(図4)のステップS530にて自動始動条件が成立していない場合(S530で「NO」)においてもステップS550では「YES」と判定されることになるので、ステップS540が実行されて、エンジン10の運転が開始される。そして、前述した自動停止処理においても、ステップS420にて自動停止条件が成立していても(S420で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」となっていることから次のステップS430にて「NO」と判定されて、エンジン10の運転状態が維持される。
【0079】
このようにエコラン実行許可フラグexecook=「OFF」に設定されると、エコラン実行許否判定処理(図5)における次の制御周期では、ステップS650にて「YES」と判定されて、次にエンジン冷却水温度THWが昇温時閾値Tx以上か否かが判定される(S680)。THW<Txで有る限りは(S680で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0080】
前述したごとく、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」となったことによりエンジン10の運転が開始された場合に、エンジン冷却水温度THWが次第に上昇し始める。例えば図6に示すごとく点Auの状態から、点Buの状態にエンジン冷却水温度THWが上昇しても、点BuではTHW<Txであることからエコラン実行許可フラグexecook=「OFF」が維持される。したがって、前述した自動停止処理(図3)のステップS420にて自動停止条件が成立していても(S420で「YES」)、ステップS430では「NO」と判定され、エンジン10の運転状態が継続する。
【0081】
そして、図6の点Cuで示したごとく、エンジン10の運転が継続して次第にエンジン冷却水温度THWが上昇し、THW≧Txとなると(S680で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecookに「ON」が設定される(S690)。このことにより、自動始動処理(図3)のステップS420にて自動停止条件が成立した場合(S420で「YES」)においては、ステップS430では「YES」と判定されることになるので、ステップS440が実行されて、エンジン10の自動停止が実行可能となる。そして自動始動処理(図4)においても、自動始動条件が成立していない場合(S530で「NO」)に、ステップS550にて「NO」と判定されて、エンジン10の強制始動がなされることはない。このようにして、通常のエコラン制御による自動停止自動始動の実行が可能となる。
【0082】
尚、エコラン実行許可フラグexecookの設定はエコラン実行許否判定処理(図5)によりなされていたが、必要に応じてこれ以外の条件にて、エコラン実行許可フラグexecookの設定がなされても良い。例えば、内気温度TRが可成り低温(例えば15℃以下)となっている場合等に、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」としてエコラン制御を禁止するようにしても良い。
【0083】
上述した実施の形態1の構成において、自動停止処理(図3)のステップS410,S420,S440及び自動始動処理(図4)のステップS510〜S540が機関自動停止始動手段としての処理に、自動停止処理(図3)のステップS430、自動始動処理(図4)のステップS550及びエコラン実行許否判定処理(図5)が機関自動停止許否手段としての処理に相当する。
【0084】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).エンジン冷却水温度THWの閾値Tx,Ty間のヒステリシス幅が、制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることにより、自ずと冷却水温度THW上昇時の閾値Txに比較して、冷却水温度THW下降時における閾値Tyが十分に低温側に配置される。すなわち、エンジン10の自動停止により冷却水温度THWが下降する時には、車室内温度は過渡時の遅れのために現在の冷却水温度THWより高い冷却水温度THWの状態に対応している。このため冷却水温度THW上昇時における閾値Txに対して、制御におけるハンチングを考慮した閾値よりも更に低い状態に閾値Tyを配置できる。
【0085】
このように冷却水温度下降時の閾値Tyを十分に低くできることから、図6に示したごとくエンジン10の自動停止禁止領域を縮小することができる。したがって、エンジン10の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0086】
(ロ).図6に示したごとく、閾値Tx,Tyは、エアコンユニット106の必要吹出温度TAOに応じて可変とされ、この必要吹出温度TAOが高くなるほど高くなるように設定されている。このことにより、外気温度TAMや乗員の要求に応じて、必要吹出温度TAOが低く設定されている場合には必要吹出温度TAOが高い場合に比較して、空調に影響することなく長く自動停止状態を維持でき、燃費改善効果を一層高めることができる。又、必要吹出温度TAOが高く設定されている場合には必要吹出温度TAOが低い場合に比較して、比較的早期に自動停止状態を禁止でき、空調に影響することがない。しかも、このように必要吹出温度TAOが高く設定されている場合においても冷却水温度THW下降時の閾値Tyを十分に低くできエンジン10の自動停止禁止領域を縮小することができるので、エンジン10の自動停止状態をより長く維持することができる。したがって、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0087】
(ハ).閾値Tx,Tyのヒステリシスの幅は、必要吹出温度TAOが高くなるほど大きく設定されている。このように必要吹出温度TAOが高い方が、冷却水温度THWの低下に対して空調の快適性の低下の遅れの程度が大きいので、必要吹出温度TAOが低い場合よりもヒステリシスの幅を大きくできる。このため、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0088】
(ニ).前記ヒステリシスの幅は、エンジン10の自動停止が許可されている状態から冷却水温度THWが低下する場合においては室内快適性を損なわない範囲に設定されている。このように冷却水温度THWが低下する場合において室内快適性を損なわない範囲にヒステリシスの幅が設定されていることにより、空調において乗員に違和感を感じさせることなく、かつエンジン10の自動停止禁止領域を更に縮小して、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0089】
[実施の形態2]
本実施の形態2においては、前記実施の形態1に対してエコラン実行許否判定処理(図5)の代わりに、図7のフローチャートに示すエコラン実行許否判定処理が実行される点が異なる。又、このことに関連して、図6のエンジン自動停止許否域説明図に示した昇温時閾値マップ及び降温時閾値マップの代わりに図8に示す昇温時閾値マップ及び降温時閾値マップが用いられる点が前記実施の形態1と異なる。これ以外の構成は、特に説明しない限り前記実施の形態1と同じである。
【0090】
本エコラン実行許否判定処理が開始されると、まず内気温度TR及びエンジン冷却水温度THWの読み込みがなされる(S710)。
次に内気温度TRの値に基づいて、昇温時閾値マップから昇温時閾値TRxを算出する(S720)。この昇温時閾値マップは、図8に示す昇温時閾値のラインLRUに相当する。すなわち、昇温時閾値マップの値は内気温度TRの上昇に応じて低くなる傾向を示している。
【0091】
次に内気温度TRの値に基づいて、降温時閾値マップから降温時閾値TRyを算出する(S730)。この降温時閾値マップは、図8に示す降温時閾値のラインLRDに相当する。すなわち、降温時閾値マップの値は、昇温時閾値マップより低い状態にて、内気温度TRの上昇に応じて低くなる傾向を示している。
【0092】
尚、昇温時閾値のラインLRUと降温時閾値のラインLRDとの間の領域は、ヒステリシス域である。すなわち、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」の状態でエンジン冷却水温度THWが上昇している場合には、昇温時閾値のラインLRUがエコラン実行許可フラグexecookを「ON」とするための閾値となる。一方、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」の状態でエンジン冷却水温度THWが下降している場合には、降温時閾値のラインLRDが、エコラン実行許可フラグexecookを「OFF」とするための閾値となる。
【0093】
上述した昇温時閾値のラインLRUは、エンジン冷却水温度THWの上昇に対する室温の遅れを考慮して設定したラインであり、昇温によりこのラインLRUに一旦到達すれば、吹出温度が不快感を感じさせない室温となるように設定したラインである。このラインLRUに到達した後は、室温がエンジン冷却水温度THWに対して遅れて上昇してくるため、エンジン10の自動停止が行われて、エンジン冷却水温度THWが昇温時閾値のラインLRUから下降しはじめても、しばらくの期間はこの室温中に存在する乗員にとってはエアコンユニット106からの吹出温度は不快感を感じさせるものとはならない。
【0094】
そして、このようなエンジン冷却水温度THWの下降に対する室温の遅れを考慮して設定したラインが降温時閾値のラインLRDである。このため昇温時閾値のラインLRUと降温時閾値のラインLRDとの間には、前記実施の形態1にて述べたごとく、制御におけるハンチングを防止するために必要とされるヒステリシス幅(例えば1℃)よりも可成り広い幅が設定されている。例えば図8においてヒステリシス幅は約5〜15℃の範囲に設定されている。
【0095】
次に、現在エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」か否かが判定される(S740)。例えば、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」の状態にて自動停止(図3のステップS440)が実行されてエンジン冷却水温度THWが低下しつつある状況では(S740で「NO」)、次にエンジン冷却水温度THWが降温時閾値TRy以下か否かが判定される(S750)。THW>TRyである間は(S750で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。したがってエコラン実行許可フラグexecook=「ON」が維持され、前述した自動始動処理(図4)のステップS530にて自動始動条件が成立していない場合(S530で「NO」)には、ステップS550では「NO」と判定されて、自動停止状態が継続する。
【0096】
そして、エンジン10の自動停止が継続して次第にエンジン冷却水温度THWが低下し、THW≦TRyとなると(S750で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecookに「OFF」を設定する(S760)。このことにより、前述した自動始動処理(図4)のステップS530にて自動始動条件が成立していない場合(S530で「NO」)においてもステップS550では「YES」と判定されることになるので、ステップS540が実行されて、エンジン10の運転が開始される。そして、前述した自動停止処理(図3)においては、自動停止条件が成立しても(S420で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」となっていることから(S430で「NO」)、エンジン10の運転状態が維持される。
【0097】
このようにエコラン実行許可フラグexecook=「OFF」が設定されると、エコラン実行許否判定処理(図7)における次の制御周期では、ステップS740にて「YES」と判定されて、次にエンジン冷却水温度THWが昇温時閾値TRx以上か否かが判定される(S770)。THW<TRxで有る限りは(S770で「NO」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0098】
すなわち、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」となったことによりエンジン10の運転が開始されると、エンジン冷却水温度THWが次第に上昇し始める。しかし最初はTHW<TRxであることからエコラン実行許可フラグexecook=「OFF」が維持される。したがって、前述した自動停止処理(図3)のステップS420にて自動停止条件が成立しても(S420で「YES」)、ステップS430では「NO」と判定され、エンジン10の運転状態が継続する。
【0099】
そして、エンジン10の運転が継続することで次第にエンジン冷却水温度THWが上昇し、THW≧TRxとなると(S770で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecookに「ON」を設定する(S780)。このことにより、自動始動処理(図3)のステップS420にて自動停止条件が成立した場合(S420で「YES」)においては、ステップS430では「YES」と判定されることになるので、エンジン10の自動停止(S440)が実行可能となる。そして自動始動処理(図4)においても、自動始動条件が成立していない場合(S530で「NO」)に、ステップS550にて「NO」と判定されて、エンジン10の強制始動がなされることはない。このようにして、通常のエコラン制御が可能となる。
【0100】
上述した実施の形態2の構成において、自動停止処理(図3)のステップS410,S420,S440及び自動始動処理(図4)のステップS510〜S540が機関自動停止始動手段としての処理に、自動停止処理(図3)のステップS430、自動始動処理(図4)のステップS550及びエコラン実行許否判定処理(図7)が機関自動停止許否手段としての処理に相当する。
【0101】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).前記実施の形態1の(イ)で述べたごとく、エンジン冷却水温度THWの閾値TRx,TRyのヒステリシス幅が、制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることにより、自ずと冷却水温度THW上昇時の閾値TRxに比較して、冷却水温度THW下降時における閾値TRyが十分に低温側に配置される。すなわち、冷却水温度THWの下降時においては、内気温度TRは過渡時の遅れのために現在の冷却水温度THWより高い冷却水温度THWの状態に対応している。このため冷却水温度THW上昇時における閾値TRxに対して、制御におけるハンチングを考慮した閾値よりも更に低い状態に閾値TRyを配置できる。
【0102】
このように冷却水温度下降時の閾値TRyを十分に低くできることから、図8に示したごとくエンジン10の自動停止禁止領域を縮小することができる。したがって、エンジン10の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0103】
(ロ).前記ヒステリシスの幅は、エンジン10の自動停止が許可されている状態から冷却水温度THWが低下する場合においては室内快適性を損なわない範囲に設定されている。このように冷却水温度THWが低下する場合において室内快適性を損なわない範囲にヒステリシスの幅が設定されていることにより、空調において乗員に違和感を感じさせることなく、かつエンジン10の自動停止禁止領域を更に縮小して、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0104】
(ハ).図8に示したごとく、閾値TRx,TRyは、内気温度TRに応じて可変とされ、この内気温度TRが高くなるほど低くなるように設定されている。このことにより、内気温度TRが高い場合には内気温度TRが低い場合に比較して、空調に影響することなく長く自動停止状態を維持でき、燃費改善効果を一層高めることができる。又、内気温度TRが低い場合には内気温度TRが高い場合に比較して、比較的早期に自動停止状態を禁止でき、空調に影響することがない。しかも、このように内気温度TRが低い場合においても、上述したごとく冷却水温度THW下降時の閾値TRyを十分に低くしている。このため、エンジン10の自動停止禁止領域を十分に縮小することができるので、エンジン10の自動停止状態をより長く維持することができる。したがって、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0105】
[実施の形態3]
本実施の形態3においては、前記実施の形態1に対してエコラン実行許否判定処理(図5)の代わりに、図9のフローチャートに示すエコラン実行許否判定処理が実行される点が異なる。又、このことに関連して、図6のエンジン自動停止許否域説明図に示した昇温時閾値マップ及び降温時閾値マップの代わりに図10に示す昇温時閾値マップ及び図11に示す閾値補正マップが用いられる点が前記実施の形態1と異なる。これ以外の構成は、特に説明しない限り前記実施の形態1と同じである。
【0106】
本エコラン実行許否判定処理が開始されると、まず内気温度TR、外気温度TAM及びエンジン冷却水温度THWの読み込みがなされる(S800)。
次に内気温度TRの値に基づいて、昇温時閾値マップから補正前昇温時閾値TRsを算出する(S810)。この昇温時閾値マップは、図10に示す昇温時閾値のラインLRUである。すなわち、昇温時閾値マップの値は内気温度TRの上昇に応じて低くなる傾向を示している。
【0107】
次に外気温度TAMの値に基づいて、閾値補正マップから閾値補正量dTRを算出する(S820)。この閾値補正マップは、図11に示したごとくであり、閾値補正量dTR値は、外気温度TAMの上昇に応じて大きくなる傾向を示している。
【0108】
次に次式2に示すごとく、補正前昇温時閾値TRsと閾値補正量dTRとから昇温時閾値TRxが算出される(S830)。
【0109】
【数2】
TRx ← TRs − dTR … [式2]
この式2では、外気温度TAMが高くなるほど、昇温時閾値TRxが低く設定されることを示している。
【0110】
次に次式3に示すごとく、昇温時閾値TRxと制御におけるハンチングを防止するためのヒステリシス幅dHとから降温時閾値TRyが算出される(S840)。
【0111】
【数3】
TRy ← TRx − dH … [式3]
この式3で用いられるヒステリシス幅dHは、制御におけるハンチングを防止するのみであるため前述の実施の形態1,2に比較して可成り小さい値が設定されている。例えば、ヒステリシス幅dH=1℃が設定されている。
【0112】
次に、現在、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」か否かが判定される(S850)。尚、本ステップS850〜S890の各処理は、前記実施の形態2のステップS740〜S780の処理と同じである。すなわち、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」の状態にて(S850で「NO」)、THW>TRyである間は(S860で「NO」)、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」が維持され、エンジン10の自動停止は許可状態を継続する。しかし、THW≦TRyとなれば(S860で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」となり(S870)、エンジン10の自動停止は禁止され、エンジン10が自動停止されている場合は強制的に始動される。
【0113】
又、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」の状態にて(S850で「YES」)、THW<TRxである間は(S880で「NO」)、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」が維持され、エンジン10の自動停止禁止状態が継続される。しかし、THW≧TRxとなれば(S880で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」となり(S890)、エンジン10の自動停止実行が許可される。
【0114】
上述した実施の形態3の構成において、自動停止処理(図3)のステップS410,S420,S440及び自動始動処理(図4)のステップS510〜S540が機関自動停止始動手段としての処理に、自動停止処理(図3)のステップS430、自動始動処理(図4)のステップS550及びエコラン実行許否判定処理(図9)が機関自動停止許否手段としての処理に相当する。
【0115】
以上説明した本実施の形態3によれば、以下の効果が得られる。
(イ).閾値TRx,TRyを、内気温度TRに応じて可変としている。このことにより、内気温度TRが表す空調状況に適合させて閾値TRx,TRyを十分に低い位置に設定できる。すなわち、内気温度TRが高い側ではエンジン冷却水温度THWが低下する場合に閾値TRx,TRyを低く設定できる。このため、特に内気温度TRが高い領域で、エンジン10の自動停止禁止領域を縮小することができる。
【0116】
更に、前記閾値TRx,TRyは内気温度TRとは異なる外気温度TAMに応じて増減補正、ここでは減少補正のみがなされる。このため、外気温度TAMが表す空調状況に適合させて閾値TRx,TRyを更に低い位置に設定できる。すなわち、外気温度TAMが高い側では閾値補正量dTRが大きくなるので、閾値TRx,TRyを低くなるように補正することができる。このため、特に外気温度TAMが高い領域で、エンジン10の自動停止禁止領域を一層縮小することができる。
【0117】
したがって、エンジン10の自動停止状態を長く維持することができ、燃費改善効果を高めることができる。
[実施の形態4]
本実施の形態4においては、前記実施の形態1に対してエコラン実行許否判定処理(図5)の代わりに、図12のフローチャートに示すエコラン実行許否判定処理が実行される点が異なる。又、このことに関連して、図6のエンジン自動停止許否域説明図に示した昇温時閾値マップ及び降温時閾値マップの代わりに図13に示す昇温時閾値マップ及び図14に示すヒステリシス幅マップが用いられる点が前記実施の形態1と異なる。これ以外の構成は、特に説明しない限り前記実施の形態1と同じである。
【0118】
本エコラン実行許否判定処理が開始されると、まず内気温度TR、外気温度TAM及びエンジン冷却水温度THWの読み込みがなされる(S900)。
次に内気温度TRの値に基づいて、昇温時閾値マップから昇温時閾値TRxを算出する(S910)。この昇温時閾値マップは、図13に示す昇温時閾値のラインLRUに相当する。すなわち、昇温時閾値マップの値は内気温度TRの上昇に応じて低くなる傾向を示している。
【0119】
次に外気温度TAMの値に基づいて、ヒステリシス幅マップからヒステリシス幅dHisを算出する(S920)。このヒステリシス幅マップは、図14に示すごとくであり、ヒステリシス幅dHisは、外気温度TAMの上昇に応じて大きくなる傾向を示している。
【0120】
次に次式4に示すごとく、降温時閾値TRyが算出される(S930)。
【0121】
【数4】
TRy ← TRx − dHis … [式4]
この式4では、外気温度TAMが高くなるほど、降温時閾値TRyが低く設定されることを示している。
【0122】
次に、現在、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」か否かが判定される(S940)。尚、本ステップS940〜S980の各処理は、前記実施の形態2のステップS740〜S780の処理と同じである。すなわち、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」の状態にて(S940で「NO」)、THW>TRyである間は(S950で「NO」)、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」が維持され、エンジン10の自動停止許可が継続される。しかし、THW≦TRyとなれば(S950で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」となり(S960)、エンジン10の自動停止が禁止され、自動停止していた場合には強制的に始動される。
【0123】
又、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」の状態にて(S940で「YES」)、THW<TRxである間は(S970で「NO」)、エコラン実行許可フラグexecook=「OFF」が維持され、自動停止の禁止が継続される。しかし、THW≧TRxとなれば(S970で「YES」)、エコラン実行許可フラグexecook=「ON」となり(S980)、自動停止処理の実行が許可される。
【0124】
上述した実施の形態4の構成において、自動停止処理(図3)のステップS410,S420,S440及び自動始動処理(図4)のステップS510〜S540が機関自動停止始動手段としての処理に、自動停止処理(図3)のステップS430、自動始動処理(図4)のステップS550及びエコラン実行許否判定処理(図12)が機関自動停止許否手段としての処理に相当する。
【0125】
以上説明した本実施の形態4によれば、以下の効果が得られる。
(イ).昇温時閾値TRxを、内気温度TRに応じて可変としている。このことにより、内気温度TRが表す空調状況に適合させて昇温時閾値TRxを十分に低い位置に設定できる。すなわち、内気温度TRが高い側ではエンジン冷却水温度THWが上昇する場合に昇温時閾値TRxを低く設定できる。このため、特に内気温度TRが高い領域で、エンジン10の自動停止禁止領域を縮小することができる。このため、特に外気温度TAMが高い領域で、エンジン10の自動停止禁止領域を縮小することができ、燃費改善効果を高めることができる。
【0126】
(ロ).更に、降温時閾値TRyは外気温度TAMに応じて設定されるヒステリシス幅dHisにて昇温時閾値TRxより下に設定される。このヒステリシス幅dHisは、外気温度TAMに応じて可変とされ、外気温度TAMが高くなるほど広く設定されている。これは、外気温度TAMが高い方が、エンジン冷却水温度THWの低下に対して空調の快適性の低下の程度が小さいので、外気温度TAMが低い場合よりもヒステリシス幅dHisを大きくできるからである。このため、エンジン10の自動停止状態をより長く維持することができ、燃費改善効果を一層高めることができる。
【0127】
[その他の実施の形態]
・前記各実施の形態においては、閾値、閾値補正量あるいはヒステリシス幅を算出するのにマップを用いたが、関数による計算により求めても良い。
【0128】
・前記実施の形態1の昇温時閾値マップ及び降温時閾値マップは、図6に示したごとく直線状に形成されていたが、図15に示すごとく更に精密に形成しても良い。このことにより、より適切に自動停止始動処理を制御でき、空調状態を悪化させることなく、一層、燃費改善効果を高めることができる。
【0129】
・前記各実施の形態において、閾値あるいはヒステリシス幅を、必要吹出温度TAO、内気温度TRあるいは外気温度TAMにより設定した。この内、必要吹出温度TAO及び外気温度TAMは車室内温度に関係する値であるが、これ以外に、車室内温度に関係する値として、必要吹出温度TAOあるいは外気温度TAMに関係する値を用いて、閾値あるいはヒステリシス幅を設定しても良い。
【0130】
・前記各実施の形態においては、モータジェネレータ64は、エンジン10から駆動輪への駆動力の伝達経路には存在しないタイプのエンジンであったが、本発明は、モータジェネレータがエンジンから駆動輪への駆動力の伝達経路に存在するハイブリッドタイプのエンジンにも適用することができる。
【0131】
・前記各実施の形態におけるエンジン10は筒内噴射型ガソリンエンジンにて説明したが、本発明はポート噴射型のガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのその他のエンジンにも適用できる。
【0132】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態には、次のような形態を含むものであることを付記しておく。
(1).車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する自動停止始動モードを実行するとともに、車室内空調装置が空調用熱源とする前記内燃機関の冷却媒体の温度低下に応じて前記自動停止始動モードの禁止を実行する内燃機関制御装置であって、
前記冷却媒体の温度が低下する場合において、室温快適性を損なわない範囲で前記自動停止始動モードの実行範囲を設定したことを特徴とする内燃機関制御装置。
【0133】
(2).車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する自動停止始動モードを実行するとともに、車室内空調装置が空調用熱源とする前記内燃機関の冷却媒体の温度低下に応じて前記自動停止始動モードの禁止を実行する内燃機関制御装置であって、
前記冷却媒体の温度が低下する場合において、空調状況に応じて室温快適性を損なわない範囲で前記自動停止始動モードの実行範囲を設定したことを特徴とする内燃機関制御装置。
【0134】
(3).請求項5又は6記載の構成において、車室外気温又は車室内気温が高いほど、前記閾値を減少補正することを特徴とする内燃機関制御装置。
(4).請求項5記載の構成において、車室外気温又は車室内気温が高いほど、閾値のヒステリシスの幅を広げることを特徴とする内燃機関制御装置。
【0135】
(5).請求項5記載の構成において、車室外気温又は車室内気温が高いほど、閾値のヒステリシスの幅を低温側に広げることを特徴とする内燃機関制御装置。
【0136】
(6).請求項6記載の構成において、前記必要吹出温度が高くなるほど、閾値のヒステリシスの幅を低温側に広げることを特徴とする内燃機関制御装置。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1のエンジン及びその制御装置の概略構成を表すブロック図。
【図2】実施の形態1の自動車の車室内を空調するエアコンユニットの構成説明図。
【図3】実施の形態1のエンジンECUが実行する自動停止処理のフローチャート。
【図4】実施の形態1のエンジンECUが実行する自動始動処理のフローチャート。
【図5】実施の形態1のエアコンECUが実行するエコラン実行許否判定処理のフローチャート。
【図6】実施の形態1のエコラン実行許否判定処理にて用いられる閾値の状態を示すエンジン自動停止許否域説明図。
【図7】実施の形態2のエアコンECUが実行するエコラン実行許否判定処理のフローチャート。
【図8】実施の形態2のエコラン実行許否判定処理にて用いられる閾値の状態を示すエンジン自動停止許否域説明図。
【図9】実施の形態3のエアコンECUが実行するエコラン実行許否判定処理のフローチャート。
【図10】実施の形態3のエコラン実行許否判定処理にて用いられる閾値の状態を示すエンジン自動停止許否域説明図。
【図11】実施の形態3のエコラン実行許否判定処理にて用いられる閾値補正マップの構成説明図。
【図12】実施の形態4のエアコンECUが実行するエコラン実行許否判定処理のフローチャート。
【図13】実施の形態4のエコラン実行許否判定処理にて用いられる閾値の状態を示すエンジン自動停止許否域説明図。
【図14】実施の形態4のエコラン実行許否判定処理にて用いられるヒステリシス幅マップの構成説明図。
【図15】実施の形態1の変形例における閾値の状態を示すエンジン自動停止許否域説明図。
【符号の説明】
10…エンジン、12…シリンダヘッド、14…燃料噴射弁、14a…デリバリパイプ、14b…燃圧センサ、16…シリンダブロック、18…ピストン、20…燃焼室、22…点火プラグ、24…吸気ポート、26…吸気バルブ、28…吸気通路、30…サージタンク、32…スロットルバルブ、34…電動モータ、36…スロットル開度センサ、38…排気ポート、40…排気バルブ、42…排気通路、44…コンロッド、46…クランクシャフト、48…電磁クラッチ、50,53,54,56,58…プーリ、52…ベルト、59…ウォータポンプ、60…エアコン用コンプレッサ、62…パワーステアリングポンプ、64…モータジェネレータ、66…インバータ、68…バッテリ、70…エンジンECU、72…イグニッションスイッチ、74…車速センサ、76…アクセル開度センサ、78… ブレーキスイッチ、80…エンジン回転数センサ、82…エアフロメータ、84…冷却水温センサ、86…アイドルスイッチ、88…空燃比センサ、106…エアコンユニット、107…エアコンECU、110…空調ダクト、111…内気吸込口、112…外気吸込口、113…内外気切替ダンパ、114…アクチュエータ、115…デフロスタダクト、116…フェイスダクト、117…フットダクト、118…デフロスタ吹出口、119…フェイス吹出口、120…フット吹出口、121,122…吹出口切替ダンパ、123,124…アクチュエータ、130… 遠心式送風機、131…遠心式ファン、132…ブロワモータ、133…ブロワ駆動回路、140…冷凍サイクル、142…コンデンサ、143…レシーバ、144…エキスパンションバルブ、145…エバポレータ、146…電磁クラッチ、147…クラッチ駆動回路、148…冷却ファン、150…冷却水回路、151…ヒータコア、152…エアミックスダンパ、153…アクチュエータ、171…内気温度センサ、172…外気温度センサ、173…日射センサ、174…エバポレータ出口温度センサ、P…コントロールパネル。

Claims (10)

  1. 車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する機関自動停止始動手段と、車室内空調装置が空調用熱源としている前記内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には前記自動停止を禁止する機関自動停止許否手段とを備えた内燃機関制御装置であって、
    前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度又は該車室内温度に関係する値に応じて可変とされると共に、前記閾値のヒステリシス幅は制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることを特徴とする内燃機関制御装置。
  2. 車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する機関自動停止始動手段と、車室内空調装置が空調用熱源としている前記内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には前記自動停止を禁止する機関自動停止許否手段とを備えた内燃機関制御装置であって、
    前記機関自動停止許否手段における前記閾値及び該閾値のヒステリシスの幅は、車室内温度又は該車室内温度に関係する値に応じて可変とされていることを特徴とする内燃機関制御装置。
  3. 請求項2記載の構成において、前記ヒステリシスの幅は、制御におけるハンチングを防止する幅を越えて設定されていることを特徴とする内燃機関制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか記載の構成において、前記ヒステリシスの幅は、前記機関自動停止許否手段にて前記自動停止が許可されている状態から前記冷却媒体の温度が低下する場合において室内快適性を損なわない範囲に設定されたことを特徴とする内燃機関制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度に関係する値である車室内空調装置の自動空調時の必要吹出温度に応じて可変とされ、該必要吹出温度が高くなるほど高くなることを特徴とする内燃機関制御装置。
  6. 請求項5記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値のヒステリシスの幅は、前記必要吹出温度が高くなるほど大きくなることを特徴とする内燃機関制御装置。
  7. 請求項1〜4のいずれか記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度に応じて可変とされ、該車室内温度が高くなるほど低くなることを特徴とする内燃機関制御装置。
  8. 請求項7記載の構成において、前記機関自動停止許否手段における前記閾値のヒステリシスの幅は、車室内温度に関係する値である車室外気温に応じて可変とされ、該車室外気温が高くなるほど大きくなることを特徴とする内燃機関制御装置。
  9. 車両用内燃機関の運転状態が自動停止条件を満足した場合に該内燃機関を自動停止し、自動始動条件を満足した場合に該内燃機関を自動始動する機関自動停止始動手段と、車室内空調装置が空調用熱源としている前記内燃機関の冷却媒体温度が閾値より高い場合には前記自動停止を許可し閾値より低い場合には前記自動停止を禁止する機関自動停止許否手段とを備えた内燃機関制御装置であって、
    前記機関自動停止許否手段における前記閾値は、車室内温度又は該車室内温度に関係する値の内から選ばれた第1の値に応じて可変とされると共に、前記閾値は前記第1の値とは異なる車室内温度又は該車室内温度に関係する値の内から選ばれた第2の値に応じて増減補正されることを特徴とする内燃機関制御装置。
  10. 請求項9記載の構成において、前記第1の値は車室内温度であり、前記第2の値は車室外気温であることを特徴とする内燃機関制御装置。
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