JP3694571B2 - 水素吸蔵合金を使用した冷却システム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水素吸蔵合金を使用した冷却システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、シェル&チューブタイプの熱交換器を用いた水素吸蔵合金を使用した冷却システムが知られている。
この冷却システムは、多数の切り替えバルブを使用する為、作動音が耳ざわりであるとともに、切り替えバルブが故障する確率が高い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、発明者らは、水素吸蔵合金を封入した、1片〜3片からなる中空板状のセルを回転軸に対して放射状となる様に配設したセル集合体とし、1片が集合した第1段を内包する第1熱交換槽、2片が集合した第2段を内包する第2熱交換槽、及び3片が集合した第3段を内包する第3熱交換槽からなる熱交換液槽とを備えたセル回転式の冷却システムを考案した。
しかし、熱交換液槽内において各循環路内を循環する熱媒体を、ポンプの吐出側から各熱交換槽、更に各区域に接続した場合、加熱用熱媒体と、放熱用熱媒体と、冷熱出力用熱媒体の各ポンプは、夫々の循環系に対応して吐出圧が大きく異なり、供給される各槽各区域内の熱媒体の圧力も異なるので、各熱交換槽の各区域間のシールを堅固にしても隣の区域との熱媒体の差圧から熱媒体が漏れ易く、混じり合う不具合が発生し易い。
【0004】
各系の熱媒体が混じり合うと、エネルギー効率が悪化するとともに、冷房能力が低下する。
尚、シールを強化すれば熱媒体の混じり合いは少なくなるが、シールが大掛かりになるとともに、熱交換液槽の大型化を招く。
本発明の目的は、熱交換液槽内において、各循環路内を循環する熱媒体の混じり合いを防止できる、水素吸蔵合金を使用した冷却システムの提供にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する為、本発明は、以下の構成を採用した。
同一平衡水素圧で水素平衡温度が最も高い高温度水素吸蔵合金(HM)を封入した第1片(S1)、水素平衡温度が中温度の中温度水素吸蔵合金(MM)を封入した第2片(S2)、水素平衡温度が最も低い低温度水素吸蔵合金(LM)を封入した第3片(S3)及び各片内の室間を連通する水素移動路(S4)を有するセルを、回転軸(80)に対して放射状となる様に配設したセル集合体(8)と、前記セル集合体(8)のうち、第1片(S1 ) が集合した第1段(81)を内包する第1熱交換槽(61)、第2片(S2 ) が集合した第2段(82)を内包する第2熱交換槽(62)、及び第3片(S3 ) が集合した第3段(83)を内包する第3熱交換槽(63)からなり、各熱交換槽を回転軸方向に、加熱用の熱媒体が出入りし前記第1片(S1)と熱交換する加熱域(α1)、昇圧用の熱媒体が出入りし前記第2片(S2)と熱交換する第1昇圧域(α2)、及び放熱用の熱媒体が出入りし前記第3片(S3)と熱交換する第1放熱域(α3)を有する水素駆動部(α)と、昇圧用の熱媒体が出入りし第1片(S1)と熱交換する第2昇圧域(β1)、放熱用の熱媒体が出入りし前記第2片(S2)と熱交換する第2放熱域(β2)、及び冷熱出力用の熱媒体が出入りし前記第3片(S3)と熱交換する第1冷熱出力域(β3)を有する第1冷熱出力部(β)と、放熱用の熱媒体が出入りし前記第1片(S1)と熱交換する第3放熱域(γ1)、及び冷熱出力用の熱媒体が出入りし前記第2片(S2)と熱交換する第2冷熱出力域(γ2)を有する第2冷熱出力部(γ)とに区分した熱交換液槽(6)とを具備した水素吸蔵合金を使用した冷却システムにおいて、加熱用の熱媒体、昇圧用の熱媒体、冷熱出力用の熱媒体、及び放熱用の熱媒体を循環させる為の循環ポンプ(P1、P2、P3、P4)の吸込口を前記熱交換槽(6)の排出側に接続して各区域内の熱媒体圧力を同程度の低圧にして各熱媒体の循環を行う。
【0007】
【作用及び発明の効果】
〔請求項1について〕
セル集合体(8;第1、2、3段)は、回転軸(80)の回転により、回転軸方向に水素駆動部(α)、第1冷熱出力部(β)及び第2冷熱出力部(γ)に区分された熱交換槽(6)内で回転{α→β→γ}する。
【0011】
水素駆動部(α)に位置する(又は進入した)セルは、第1片(S1)が加熱域(α1)において加熱用の熱媒体に晒され、第3片(S3)が第1放熱域(α3)において放熱用の熱媒体に晒される。
すると、第1片(S1)内の高温度水素吸蔵合金(HM)が加熱され、第3片(S3)内の低温度水素吸蔵合金(LM)が放熱されるので、第1片(S1)内の高温度水素吸蔵合金(HM)から水素が放出され、水素移動路(S4)を通って第3片(S3)内に移動し、低温度水素吸蔵合金(LM)が水素を吸蔵する。
尚、第2片(S2)は、第1昇圧域(α2)において昇圧用の熱媒体に晒されるが、第2片(S2)内の中温度水素吸蔵合金(MM)は水素の吸蔵/放出を行わない{第2片(S2)内の圧力が水素を吸蔵しない圧力に昇圧している為}。
【0012】
第1冷熱出力部(β)に位置する(又は進入した)セルは、第2片(S2)が第2放熱域(β2)において放熱用の熱媒体に晒され、第3片(S3)が第1冷熱出力域(β3)において冷熱出力用の熱媒体に晒される。
【0013】
すると、第2片(S2)が放熱するので第2片(S2)内の圧力が下がり、第2片(S2)内の中温度水素吸蔵合金(MM)が水素を吸蔵し、第3片(S3)内の低温度水素吸蔵合金(LM)が水素を放出する。低温度水素吸蔵合金(LM)が水素を放出する際に冷熱出力用の熱媒体を冷却する。
【0014】
この時、第1片(S1)は、第2昇圧域(β1)において昇圧用の熱媒体に晒され、第1片(S1)内の高温度水素吸蔵合金(HM)は水素の吸蔵/放出を行わない{第1片(S1)内の圧力が水素を吸蔵しない圧力に昇圧している為}。
【0015】
第2冷熱出力部(γ)に位置する(又は進入した)セルは、第1片(S1)が第3放熱域(γ1)において放熱用の熱媒体に晒され、第2片(S2)が第2冷熱出力域(γ2)において冷熱出力用の熱媒体に晒される。
【0016】
すると、第1片(S1)が放熱するので第1片(S1)内の圧力が下がり、第1片(S1)内の高温度水素吸蔵合金(HM)が水素を吸蔵し、第1片(S1)内の中温度水素吸蔵合金(MM)が水素を吸蔵し、第2片(S2)内の中温度水素吸蔵合金(MM)が水素を放出する。
【0017】
中温度水素吸蔵合金(MM)が水素を放出する際、冷熱出力用の熱媒体を冷却する。
この結果、第2片(S2)から第1片(S1)へ水素が移動するとともに、第2片(S2)の中温度水素吸蔵合金(MM)が水素の放出を行って冷熱出力が発生する。
【0018】
加熱用の熱媒体、昇圧用の熱媒体、冷熱出力用の熱媒体、及び放熱用の熱媒体を循環させる為の循環ポンプ(P1、P2、P3、P4)の各吸込口を、熱交換液槽(6)の排出側に接続して各区域内の熱媒体圧力を同程度の低圧にして各熱媒体の循環を行っている。
これにより、各熱交換槽(61、62、63)における、各域{加熱域、昇圧域、冷熱出力域、放熱域}の水圧を、略等しく且つ低くすることができる。
【0019】
よって、各熱交換槽(61、62、63)における、各域間のシールが簡略なものであっても、加熱用の熱媒体、昇圧用の熱媒体、及び冷熱出力用の熱媒体の各熱交換槽内(61、62、63)での混じり合いを防止できる。 故に、冷房能力に優れる(エネルギー効率に優れる為)とともに、熱交換液槽(6)を小型化できる(各域間のシールを大袈裟にする必要がない為)。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の第1実施例(請求項1に対応)を、図1〜図6に基づいて説明する。
図1に示す如く、家庭用冷房システムAは、大凡、電気的に制御を行う制御器1、水素吸蔵合金を加熱するヒートポンプサイクル2、水素吸蔵合金を加熱する為の温水を作り出す燃焼装置3及び水素吸蔵合金を放熱させる放熱水を冷却する冷却塔4とを備えた室外機5と、水素吸蔵合金の水素放出作用(吸熱)により冷却した冷水を用いて室内を冷房する複数(本実施例では3基)の室内機50とにより構成される。
【0021】
〔セル集合体8の説明〕
図5に示すセル集合体8(ステンレスや銅など)は、第1片S1、第2片S2、第3片S3(全て中空板状)及び各片を連結する棒状の連結部S5{各片内の空間を連通する水素移動路S4を有する}からなるセル(図3参照)を、放射状を呈する様に回転軸80に3段に配設したものである。
回転軸80は、シール材及び支持部材を介して熱交換水槽6に回転自在に支持され、図示しないセル移動手段(図示せず)により低速回転する。
【0022】
第1片S1の空間には、同一平衡水素圧下で水素平衡温度が最も高い粉末状の高温度水素吸蔵合金(以下、高温合金HMと略す)が封入されている。
第2片S2の空間には、同一平衡水素圧下で水素平衡温度が中程度の粉末状の中温度水素吸蔵合金(以下、中温合金MMと略す)が封入されている。
第3片S3の空間には、所定温度(同一温度)下で水素平衡温度が最も低い粉末状の低温度水素吸蔵合金(以下、低温合金LMと略す)が封入されている。
【0023】
各セルは、以下の工程により製造される。
各片内の空間へ水素吸蔵合金を充填→真空引き→活性化処理→溶接等により密封
【0024】
第1片S1、第2片S2及び第3片S3の夫々は、一方の面が凸状に湾曲し、他方の面が凹状に湾曲している。この様にしたことにより、真空引き時の低圧下や水素充填時の高圧下において、対向する面に引っ張り応力と圧縮応力がかかるので各空間の変形が小さく抑えられ、耐圧性の向上を図っている。
【0025】
〔熱交換水槽6の説明〕
図4に示す熱交換水槽6は、図5に示すセル集合体8の第1段81を内包する第1熱交換槽61、セル集合体8の第2段82を内包する第2熱交換槽62及びセル集合体8の第3段83を内包する第3熱交換槽63からなる。
【0026】
この熱交換水槽6は、図2に示す様に、加熱用の温水(例えば80℃)が出入りし第1片S1と熱交換する加熱域α1、昇圧用の温水(例えば56℃)が出入りし第2片S2と熱交換する第1昇圧域α2及び放熱用の温水(例えば28℃)が出入りし第3片S3と熱交換する第1放熱域α3を有する水素駆動部αと、昇圧用の温水(例えば58℃)が出入りし第1片S1と熱交換する第2昇圧域β1、放熱用の温水(例えば28℃)が出入りし第2片S2と熱交換する第2放熱域β2及び冷熱出力用の冷水(例えば13℃)が出入りし第3片S3と熱交換する第1冷熱出力域β3を有する第1冷熱出力部βと、放熱用の温水(例えば28℃)が出入りし第1片S1と熱交換する第3放熱域γ1、冷熱出力用の冷水(例えば13℃)が出入りし第2片S2と熱交換する第2冷熱出力域γ2及び不問域γ3を有する第2冷熱出力部γとに区分される。尚、熱交換水槽6は、図4に示す分割体を接合して形成される。
【0027】
上記第1、2、3熱交換槽内における各域(以下に示す)は、セルの先端面と各熱交換槽の内壁から内方に突出する区画壁{例えば、第1熱交換槽61では第1片S1の先端面801と区画壁611、612、613}とが接することにより略水密的に区画されている。
第1熱交換槽…加熱域α1- 第2昇圧域β1- 第3放熱域γ1
第2熱交換槽…第1昇圧域α2- 第2放熱域β2- 第2冷熱出力域γ2
第3熱交換槽…第1放熱域α3- 第1冷熱出力域β3- 不問域γ3
【0028】
〔昇圧水循環路9(主にヒートポンプサイクル2)の説明〕
昇圧水循環路9は、昇圧水循環ポンプP2(本発明の第2循環ポンプ)→第2昇圧域β1→第1昇圧域α2→昇圧水循環ポンプP2…と接続してなり、昇圧用の温水を循環させている。
尚、昇圧水は、加熱域α1で温度上昇した第1片S1及び第1熱交換槽61からの顕熱の伝熱により温度上昇した温水を用いたものであり、ヒートポンプサイクル2の作動中において、第2昇圧域β1の昇圧水の温度は例えば58℃程度であり、第1昇圧域α2の昇圧水の温度は例えば56℃程度である。
【0029】
〔加熱水循環路14(主にガス燃焼装置3)の説明〕
3は燃料であるガスを燃焼させて熱を発生させ、発生した熱によって加熱水を加熱するガス燃焼装置であり、ガスの燃焼を行うガスバーナ10、ガスの供給を行う、ガス量調節弁21及びガス開閉弁22を備えたガス供給回路11、ガスバーナ10へ燃焼用空気を供給する燃焼ファン12、及びガスの燃焼熱と加熱水とを熱交換する加熱用熱交換器13等により構成される。
そして、ガスバーナ10による加熱により80℃程度に昇温した加熱水は、加熱水循環ポンプP1(本発明の第1循環ポンプ)を備えた加熱水循環路14を介して加熱域α1に供給される。
【0030】
尚、本実施例では、加熱水循環ポンプP1と昇圧水循環ポンプP2とを、同一のモータにより回転するタンデムポンプ(1台)で構成している。この為、燃焼装置3から加熱水がヒートポンプサイクル2に供給される際には、昇圧水も昇圧水循環路9内を循環する。
【0031】
〔冷熱出力水循環路17(主に室内機50)の説明〕
室内機50は、冷房を行う室内に設置され、室内熱交換器15及び室内ファン16を備える。
室内熱交換器15には、第1冷熱出力域β3及び第2冷熱出力域γ2から供給される冷熱出力水を循環させる冷熱出力水循環路17が接続され、この冷熱出力水循環路17の途中(室外機5内)に冷熱出力水を循環させる冷熱出力水ポンプP3が配設されている。
【0032】
〔放熱水循環路18(主に冷却塔4)の説明〕
冷却塔4(蒸発形)は放熱水を上方から下方へ流すことにより外気と熱交換するとともに、一部を蒸発させて放熱水の冷却を行う。そして、冷却された放熱水は、放熱水循環路18中に配設した放熱水循環ポンプP4により、第1放熱域α3→第2放熱域β2→第3放熱域γ1に供給される。
又、冷却塔4は、放熱水の蒸発及び冷却の促進を行う為、放熱ファン(図示せず)を備えている。尚、冷却塔4は密閉形でも良い。
【0033】
〔各循環路に設けられたシスターンの説明〕
上記加熱水循環路14、冷熱出力水循環路17及び放熱水循環路18は、夫々、シスターンT1、T2、T3を備えており、シスターンT1、T2、T3内の水位が所定水位以下に低下すると、それぞれに設けられた給水バルブT4、T5、T6が開き、給水管19から供給される水道水をシスターンT1、T2、T3内に補充する様に設けられている。
又、ヒートポンプサイクル2に発生したドレン水を排水管20から排水する為にヒートポンプサイクル2の下部にドレンパンPを配置している。尚、冷却塔4で溢れた水も排水管20から排水できる様にドレンパンが設けられている。
【0034】
〔制御器1の説明〕
制御器1は、室内機50側に設けられたコントローラ(図示せず)からの操作指示や、複数設けられた各センサの入力信号に応じて、加熱水循環ポンプP1、昇圧水循環ポンプP2、冷熱出力水ポンプP3、放熱水循環ポンプP4、給水バルブT4、T5、T6、冷却塔4の放熱ファンなど、燃焼装置3の電気部品(燃焼ファン12、ガス量調節弁21、ガス開閉弁22、点火装置)を制御するとともに、室内機50に室内ファン16の作動指示を与える。
【0035】
制御器1による冷房運転の作動を、図6のPT冷凍サイクル線図を参照して説明する。
冷房運転が室内機50のコントローラによって指示されると、制御器1によって、燃焼装置3、セル移動手段、放熱ファン及び加熱水循環ポンプP1、昇圧水循環ポンプP2、冷熱出力水ポンプP3及び放熱水循環ポンプP4が作動するとともに、冷房が指示された室内機50が室内ファン16を作動させる。
【0036】
セル駆動手段(図示せず)により、セル集合体8がゆっくり、連続回転する。これにより、セルは、水素駆動部α→第1冷熱出力部β→第2冷熱出力部γの順に移動する。
水素駆動部αを移動するセルSは、図2の“α”に示す様に、第1片S1が 加熱域α1で加熱水(約80℃)に触れ、第2片S2が第1昇圧域α2で昇温水(約56℃)に晒され、第3片S3が第1放熱域α3の放熱水(約28℃)に晒される。
【0037】
この結果、第1片S1内が80℃:1MPa、第2片S2内が56℃:1.0MPa、第3片S3内が28℃:0.9MPaとなる。
この時、第1片S1が80℃に加熱(図6の▲1▼)され、第3片S3が28℃に冷却(図6の▲2▼)されることにより、第1片S1の高温合金HMが水素を放出し、第3片S3の低温合金LMが水素を吸蔵する。尚、第2片S2は昇圧水によって加熱された内圧が高く、第2片S2の中温合金MMは水素の吸蔵を行わない。そして、水素駆動部αを通過したセルSは、その後、第1冷熱出力部βへ移動する。
【0038】
第1冷熱出力部βを移動するセルSは、図2の“β”に示す様に、第1片S1が第2昇圧域β1で昇圧水(約58℃)に晒され、第2片S2が第2放熱域β2で放熱水(約28℃)に晒され、第3片S3が第1冷熱出力域β3の冷熱出力水に晒される。
この結果、第1片S1内が58℃:0.5MPa、第2片S2内が28℃:0.4MPa、第3片S3が13℃:0.5MPaとなる。
【0039】
この時、第2片S2が28℃に冷却されて内圧が低下するため、第3片S3の低温合金LMが水素を放出し(図6の▲3▼)、第2片S2の中温合金MMが水素を吸蔵する(図6の▲4▼)。
第3片S3の低温合金LMが水素を放出する際、吸熱作用が発生し、第3片S2に晒される冷熱出力水から熱を奪う。この結果、第3片S3の冷熱出力水の温度が低下する(例えば13℃→10℃)。尚、第1片S1は昇圧水によって加熱されて内圧が高く、第1室S1の高温合金HMは水素の吸蔵を行わない。
【0040】
そして、第1冷熱出力部βを通過したセルSは、その後、第2冷熱出力部γへ移動する。
第2冷熱出力部γを移動するセルSは、図1の“γ”に示す様に第1片S1が第3放熱域γ1で放熱水(約28℃)に晒され、第2片S2が第2冷熱出力域γ2の冷熱出力水に晒され、第3片S3が不問域γ3の熱媒体(水)に晒される。この結果、第1片S1内が28℃:0.1MPa、第2片S2内が13℃:0.2MPa、第3片S3内は不問状態となる。
【0041】
この時、第1片S1が28℃に冷却された内圧が低下するため、第2片S2 の中温合金MMが水素を放出し(図6の▲5▼)、第1片S1の高温合金HMが水素を吸蔵する(図6の▲6▼)。
第2片S2の中温合金MMが水素を放出する際、吸熱作用が発生し、第2片S2に晒される冷熱出力水から熱を奪う。この結果、第2片S2の冷熱出力水の温度が低下する(例えば13℃→10℃)。尚、第3片S3の温度は無関係で、第3片S3の低温合金LMは水素の吸蔵を行わない。
そして、第2冷熱出力部γを通過したセルSは、その後、水素駆動部αへ移動する。
尚、ヒートポンプサイクル2の第1冷熱出力域β3及び第2冷熱出力域γ2で熱を奪われた冷熱出力水は、冷熱出力水循環路17を介して室内機50の室内熱交換器15に供給され、室内に吹き出される空気と熱交換して室内を冷房する。
【0042】
〔家庭用冷房システムAの利点について〕
加熱用の温水は、加熱水循環ポンプP1→加熱用熱交換器13→加熱域α1→加熱水循環ポンプP1…と加熱水循環路14内を循環する。
加熱水循環ポンプP1から排出された温水は、加熱用熱交換器13を通過した後に加熱域α1内へ流入するので加熱域α1内の水圧は低い。
【0043】
第1昇圧域α2- 第2昇圧域β1間に配設した昇圧水循環ポンプP2により、第2昇圧域β1→第1昇圧域α2→昇圧水循環ポンプP2…と昇圧水循環路9内を昇圧水が循環する。尚、昇圧水循環ポンプP2の出力は小さいので、第2昇圧域β1及び第1昇圧域α2内の水圧は低い。
【0044】
冷熱出力用の冷水は、冷熱出力水ポンプP3→室内熱交換器15→第2冷熱出力域γ2及び第1冷熱出力域β3→冷熱出力水ポンプP3…と冷熱出力水循環路17内を循環する。
冷熱出力水ポンプP3から排出された温水は、室内熱交換器15を通過した後に第2冷熱出力域γ2及び第1冷熱出力域β3内へ流入するので、第2冷熱出力域γ2及び第1冷熱出力域β3内の水圧は低い。
【0045】
放熱用の温水は、放熱水循環ポンプP4→冷却塔4→第1、第2、第3放熱域α3、β2、γ1→放熱水循環ポンプP4…と放熱水循環路18内を循環する。
放熱水循環ポンプP4から排出された温水は、冷却塔4を通過した後に第1、第2、第3放熱域α3、β2、γ1内へ流入するので、第1、第2、第3放熱域α3、β2、γ1内の水圧は低い。
【0046】
つまり、以下に示す第1、2、3熱交換槽61、62、63内における、各域間の水圧を、略等しく且つ低くすることができる。
第1、2、3熱交換槽内における各域(以下に示す)は、セルの先端面と各熱交換槽の内壁から内方に突出する区画壁{例えば、第1熱交換槽61では第1片S1の先端面801と区画壁611、612、613}とが接することにより略水密的に区画されている。
第1熱交換槽61…加熱域α1- 第2昇圧域β1- 第3放熱域γ1
第2熱交換槽62…第1昇圧域α2- 第2放熱域β2- 第2冷熱出力域γ2
第3熱交換槽63…第1放熱域α3- 第1冷熱出力域β3- 不問域γ3
【0047】
よって、第1、2、3熱交換槽61、62、63内における、上記各域間のシール(セルの先端面- 区画壁)が簡単なものであるにも関わらず、加熱用の温水、昇圧用の温水、冷熱出力用の冷水及び放熱用の温水の第1、第2、第3熱交換槽61、62、63内での混じり合いを防止できる。
故に、冷房能力に優れる(エネルギー効率に優れる為)とともに、熱交換水槽6が小容積であるので室外機5の小形化が図れる。
【0048】
本発明は、上記実施例以外に、つぎの実施態様を含む。
a.水素吸蔵合金を使用した冷房システムは、暖房も可能な家庭用空調システムB(図7に示す)の様な構成であっても良い。
家庭用空調システムB(第2実施例)は、上記の実施例で示した冷房運転の実施に加え、暖房運転時に、燃焼装置3で加熱された加熱水を室内機50の熱交換器15に導いて室内暖房を行うもので、第1実施例で示した加熱水循環路14と冷熱出力水循環路17とを接続し、その接続部分に流路切替用の3つの切り替えバルブV1、V2、V3(冷房⇔暖房の切り替えバルブ)を設けたものである。更に、図8に示す様に、室内機50の他、床暖房マットや浴室乾燥機等を接続して、加熱水も供給によって床暖房や浴室暖房を行う構成でも良い{家庭用空調システムC(第3実施例)}。
又、この様な複数の端末機を接続する構成(マルチ運転)で無く、単一の端末機を接続する構成(例えばルームエアコン)でも良い。
【0049】
b.加熱水循環ポンプP1と昇圧水循環ポンプP2とを別個のポンプで構成しても良い。
c.上記の実施例では2段式で説明したが、1段や3段以上でも良い。
d.上記の実施例では冷房で説明したが、冷房、冷凍運転に用いても良い。
e.上記の実施例では、加熱様の熱媒体(実施例中では加熱水)を加熱する加熱手段としてガスを燃焼するガス燃焼装置を用いたが、石油を燃焼する石油燃焼装置等、他の燃焼装置を用いても良いし、内燃機関の排熱によって加熱用の熱媒体を加熱する加熱手段や、電気ヒータを用いた加熱手段など、他の加熱手段を用いても良い。尚、内燃機関の排熱を利用する際には車両に用いることができる。
【0050】
f.上記の実施例では、熱媒体の一例として水道水を用いたが、不凍液やオイル等、他の熱媒体を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例に係る家庭用冷房システムの概略構成図である。
【図2】熱交換水槽の断面図である。
【図3】セルの斜視図である。
【図4】熱交換水槽の斜視図である。
【図5】セル集合体の斜視図である。
【図6】PT冷凍サイクル線図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る家庭用空調システムの概略構成図である。
【図8】本発明の第3実施例に係る家庭用空調システムの概略構成図である。
【符号の説明】
α 水素駆動部
α1 加熱域
α2 第1昇圧域
α3 第1放熱域
β 第1冷熱出力部
β1 第2昇圧域
β2 第2放熱域
β3 第1冷熱出力域
γ 第2冷熱出力部
γ1 第3放熱域
γ2 第2冷熱出力域
HM 高温合金(高温度水素吸蔵合金)
MM 中温合金(中温度水素吸蔵合金)
LM 低温合金(低温度水素吸蔵合金)
S1 第1片
S2 第2片
S3 第3片
S4 水素移動路
P1 加熱水循環ポンプ(第1循環ポンプ)
P2 昇圧水循環ポンプ(第2循環ポンプ)
P3 冷熱出力水ポンプ(第3循環ポンプ)
P4 放熱水循環ポンプ(第4循環ポンプ)
4 冷却塔
8 セル集合体
9 昇圧水循環路
13 加熱用熱交換器
14 加熱水循環路
15 室内熱交換器
17 冷熱出力水循環路
18 放熱水循環路
61 第1熱交換槽
62 第2熱交換槽
63 第3熱交換槽
80 回転軸
81 第1段
82 第2段
83 第3段

Claims (1)

  1. 同一平衡水素圧で水素平衡温度が最も高い高温度水素吸蔵合金(HM)を封入した第1片(S1)、水素平衡温度が中温度の中温度水素吸蔵合金(MM)を封入した第2片(S2)、水素平衡温度が最も低い低温度水素吸蔵合金(LM)を封入した第3片(S3)及び各片内の室間を連通する水素移動路(S4)を有するセルを、回転軸(80)に対して放射状となる様に配設したセル集合体(8)と、
    前記セル集合体(8)のうち、第1片(S1 ) が集合した第1段(81)を内包する第1熱交換槽(61)、第2片(S2 ) が集合した第2段(82)を内包する第2熱交換槽(62)、及び第3片(S3 ) が集合した第3段(83)を内包する第3熱交換槽(63)からなり、各熱交換槽を回転軸方向に、
    加熱用の熱媒体が出入りし前記第1片(S1)と熱交換する加熱域(α1)、昇圧用の熱媒体が出入りし前記第2片(S2)と熱交換する第1昇圧域(α2)、及び放熱用の熱媒体が出入りし前記第3片(S3)と熱交換する第1放熱域(α3)を有する水素駆動部(α)と、
    昇圧用の熱媒体が出入りし第1片(S1)と熱交換する第2昇圧域(β1)、放熱用の熱媒体が出入りし前記第2片(S2)と熱交換する第2放熱域(β2)、及び冷熱出力用の熱媒体が出入りし前記第3片(S3)と熱交換する第1冷熱出力域(β3)を有する第1冷熱出力部(β)と、
    放熱用の熱媒体が出入りし前記第1片(S1)と熱交換する第3放熱域(γ1)、及び冷熱出力用の熱媒体が出入りし前記第2片(S2)と熱交換する第2冷熱出力域(γ2)を有する第2冷熱出力部(γ)とに区分した熱交換液槽(6)とを具備した水素吸蔵合金を使用した冷却システムにおいて、
    加熱用の熱媒体、昇圧用の熱媒体、冷熱出力用の熱媒体、及び放熱用の熱媒体を循環させる為の循環ポンプ(P1、P2、P3、P4)の吸込口を前記熱交換槽(6)の排出側に接続して各区域内の熱媒体圧力を同程度の低圧にして各熱媒体の循環を行うことを特徴とする水素吸蔵合金を使用した冷却システム。
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