JP3694151B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プライステアを減じうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
空気入りタイヤ、例えばカーカスコードが放射状に配列されたラジアルタイヤにおいては、その半径方向外側かつトレッド部の内方に、コードをタイヤ赤道に対して比較的浅い角度で並列したカットエンドのベルトプライの2枚を、例えばコードが互いに交差するように重ね合わせることにより形成したベルト層が配される。このようなベルト層は、トレッド部の剛性を高めラジアルタイヤの性能を発揮させる。
【0003】
ところが、上記のベルト層の構造は、タイヤ赤道を中心としてベルトプライが左右非対称となるため、このベルトプライの構造に起因して、車両直進走行時にハンドルから手を離すと車両が横流れするいわゆるプライステアが生じやすいという問題がある。
【0004】
また、タイヤ赤道に対して比較的浅い角度、例えば35°以内の角度で交差する従来のカットエンドのベルトプライを重ね合わせたベルト層は、略円筒状をなし、タイヤのサイド部を補強するには不適である。
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、前記のようなプライステアを防止しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。また、請求項2記載の発明では、プライステアを防止ししつつ、さらにタイヤのサイド部をも効果的に補強しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部の両側からサイドウォール部を経てビード部のビードコアで折り返されて係止される折返し部を有するカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側に配されれた補強層とを具える空気入りタイヤであって、前記補強層は、コードを環状としたコード環状体を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチでずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライからなること特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記環状重ねプライは、前記カーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うトロイダル状に形成されることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記コード環状体は、1本又は引き揃えた複数本のコードをゴム引きした帯状体を環状に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記補強層は、1つの子午断面を通る全てのコードの、このコードのタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度は60〜90°かつタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数が1〜120本であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の空気入りタイヤである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態について図面に基づき説明する。空気入りタイヤは、トレッド部2の両側からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5で折り返されて係止される折返し部6Bを有するカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側に配されれた補強層7とを具え、本実施形態においては、トレッド端2e、2e間のタイヤ軸方向距離であるトレッド巾TWがタイヤ最大巾をなし、かつタイヤ子午断面においてトレッド面2aが外に凸で湾曲する自動二輪車用タイヤを例示している。
【0011】
前記カーカス6は、例えばカーカスコードをタイヤ赤道Cに対して70〜90°の角度で傾けて配列したラジアル構造のカーカスプライ6aであり、該プライの1枚又は複数枚にて形成される。本実施形態のカーカス6は、ナイロンコードをタイヤ赤道Cに対して90°の角度で傾けて並列した1枚のプライにて形成したものを例示している。なお前記カーカスコードには、ポリエステル、レーヨン、アラミド等の有機繊維コードをも適宜採用しうる。また前記カーカスの折返し部6Bのタイヤ半径方向外端の高さh1は、例えば操縦安定性を高めるべく、例えばタイヤ断面高さHの25〜60%とするのが望ましい。
【0012】
そして本実施形態では、前記補強層7は、図2、図3に示すように、コードを環状としたコード環状体9a、9b、9c、9d、9e、…を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチPでずれる半径方向の中心線N1、N2、N3、N4、N5、…の回りに配することによりコード環状体9がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライ7aからなること特徴としており、本例では前記環状重ねプライ7aは、前記図1に示したように、カーカス6の両側の折返し部6Bを軸方向外側から覆うトロイダル状かつタイヤ赤道Cに対して実質的にコードが左右対称に形成されたものを示している。なお、図2、図6は、環状重ねプライ7aの構造を理解し易いように、小角度ピッチPを大きく表示して表した説明用の概念図である。
【0013】
このような環状重ねプライ7aは、コード環状体9が、前記タイヤ周方向に小角度ピッチPでずれる半径方向の中心線回りに配されることにより、タイヤ赤道に対して左右対称構造になしうる結果、従来のような非対象構造のカットエンドのベルトプライを重ね合わせたベルト層に比べプライステアを大幅に減じることができる。
【0014】
前記コード環状体9は、例えば図3に示すように、1本又は引き揃えた複数本のコード11をトッピングゴム12にてゴム引きした帯状体10を環状に形成したものを例示し、環状重ねプライ7aは同一サイズのコード環状体9の複数個を用いて形成されるものを示す。前記コード11の複数本としては、2本以上かつ10本以下が好ましい。
【0015】
本実施形態では、図3(A)に示すごとく同心円状に配されたアラミドからなる3本のコード11をゴム引きすることにより、断面が略長方形かつ小巾の長尺体をなすものを例示し、その巾Woは、好ましくは5〜15mmとするのがプライ成形性の観点から望ましい。このように複数本のコード11を平行に配列した帯状体10を用いることにより、1本のコードを用いたものに比べ、環状重ねプライ7aの成形作業を能率化できタイヤの生産性を向上しうる。
【0016】
なお、コード11には、アラミド以外にもレーヨン、ナイロン、ポリエステル等の有機繊維コード、又はスチールコードさらにはこれらの複合コードなどを適宜採用することができる。またコード環状体9は、コード11の両端を接着することにより、該コードが連続して環状をなすものの他、図3(A)に示したように、小長さの帯状体10の両端を継ぎ部10aで継ぐことによりコード11がトッピングゴム内部において非連続で環状をなすものも採用できる。
【0017】
さらに、1本のコードを渦巻状に巻回したものをトッピングゴムで被覆してコード環状体9を形成することもできる。また、コード環状体9は、図3(B)に示すように、帯状体10の一部が途切れる途切れ部10bを有して環状をなすものでも良い。この途切れ部10bは、例えば180°未満、より好ましくは90°未満、さらに好ましくは45°未満、さらに好ましくは30°未満の円弧角βとするのが好ましい。なおコード環状体9に途切れ部10bがある場合には、この途切れ部10bの存在により、タイヤ赤道に対してコードが対称となるように配置するのが好ましい。
【0018】
また、前記半径方向の中心線N1、N2、…の周方向の小角度ピッチPとしては、コード環状体9の巾Wo、或いは帯状体のコードの打ち込み密度との兼ね合いなどから種々の角度を定めうるが、この小角度ピッチPが大きすぎると環状重ねプライ7aにおいて周方向に隣り合うコード環状体9が離間し、効果的な補強をなしえない。したがって、この小角度ピッチPは、例えば、また好ましくは0.1〜5°、好ましくは0.1〜2°、より好ましくは0.1〜0.5°、さらに好ましくは0.1〜0.3°の範囲とするのが望ましい。また本例では小角度ピッチPは、タイヤ周方向において均一とした好ましいものを例示している。これによって、コード11はタイヤ赤道Cの位置において、例えばタイヤ周方向に隣り合うコード間隔が1〜5mmとなるものが好ましい。
【0019】
このような本実施形態の環状重ねプライ7aは、図2、図4、図5に示すように、コード環状体9がタイヤ周方向に位置ずれして並ぶことにより、その位置ずれ量、すなわち前記小角度ピッチPを調節することでトレッド部2、サイドウォール部3においてコード11が互いに交差することが可能となり、とりわけサイドウォール部3においてコード11を交差させることが可能となるため、補強層7の剛性を高めることができ、とりわけタイヤサイド部において、クロスプライ状のコード交差部を形成しうる結果、1つの補強層で、ラジアルタイヤのトレッド部とサイドウォール部との双方の剛性を大幅に高めることができる。
【0020】
このような環状重ねプライ7aは、小角度ピッチPにてタイヤ周上を1周した場合、コード11がタイヤ半径方向で重なり合い、実質的に2層のコード層が形成される。そして、環状重ねプライ7aのコード11は、タイヤ赤道Cの位置において、タイヤ赤道Cに対して略90度で交差し、タイヤ軸方向外側に近づくにつれてタイヤ周方向線とのなす角が小さくなっていく。そして、補強層7の端縁でコード11は、タイヤ周方向に対して0度となる。
【0021】
また前記補強層7は、図5に示すように、タイヤ軸を含む1つの子午断面を通る全てのコード11の、このコード11のタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度θ(小さい方で測定する)は60〜90°が好ましい。また補強層7のタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数は、1〜120本とするのが好ましい。前記角度θが60度未満であると、タイヤの周方向剛性が相対的に低下する傾向がある。
【0022】
また、前記コード打ち込み数が1本未満であると、補強層7の剛性が低下する傾向があり、逆に120本を超えるとコード密度が過度に増し、トレッド部、サイドウォール部の剛性が著しく高められるとともにタイヤ生産性が低下する傾向がある。このような観点より、前記コード打ち込み数は、好ましくは20〜80本、より好ましくは30〜50本とするのが望ましい。
【0023】
また、本実施形態において前記環状重ねプライ7aは、カーカス6の両側の折返し部6Bを軸方向外側から覆うトロイダル状に形成されるが、そのタイヤ半径方向の内端7e、7eは、ビードベースラインBLからタイヤ断面高さHの10〜40%とするのが好ましく、またカーカスの折返し部との重なり部のタイヤ半径方向長さ(h1−h2)が、タイヤ断面高さHの10〜30%とするのが望ましい。これによって、カーカスの折返し部6Bの外端が剥離するプライルースなどを好適に防止することができ、タイヤの耐久性をも高めることができる。なおビードベースラインBLはビードヒール点を通るタイヤ軸方向線である。
【0024】
このような環状重ねプライ7aは、図6に示すように、例えばカーカスプライ6aをビードコア5の回りで折返して折返し部6Bを形成したトロイダル状のカーカス基体13にコード環状体9を、小角度ピッチで周方向にずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体9がタイヤ周方向に位置ずれし、このとき、カーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うように配置して加硫することにより、図1に示すようなトロイダル状の環状重ねプライ7aを形成しうる。なお環状重ねプライのコード層数などは種々定めることができる。
【0025】
また、環状重ねプライ7aは、図6に示したようにカーカス基体13の上に直接コード環状体9を配するものの他、別途成形用のドラムなどの上でトロイダル状に成形し、これをカーカス基体13に装着してタイヤ生カバーを形成し、これを加硫することによっても製造しうる。なお環状重ねプライ7aは、成形ドラムを円筒状とすることにより、円筒状にも形成でき、例えば乗用車用タイヤの補強層としても好適に用いうる。
【0026】
以上、本発明の実施形態についてトレッド面が外向きに凸となる自動二輪車用タイヤを用いて説明したが、本発明は自動二輪車のみならず、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤなど、種々のカテゴリの空気入りタイヤに採用することができる。
【0027】
【実施例】
タイヤサイズが160/80R16であり、かつ図1に示した本発明の自動二輪車用の空気入りタイヤを試作し(実施例品)、片流れ、バネ定数、操縦安定性についてテストした。また、従来の2枚のカットエンドのベルトプライを有する自動二輪車用タイヤ(従来品)についても同様にテストし、性能を比較した。なお実施例品ではh1/H=0.42、h2/H=0.11とした。
テストの内容は次の通りである。
【0028】
<片流れ>
タイヤを回転させたときに働く横向きの力のうち回転方向に関係なく一定の方向に発生する力であるコニシティフォースをユニフォミティ試験機を用いて測定し、従来品を100とする指数で表示した。数値が小さいほどコニシティフォースが小さく、したがって片流れも少なく良好である。
【0029】
<バネ定数>
試験タイヤをリム組みし(リムサイズ:MT3.50×16、内圧225Kpa)、荷重200kgf を作用させてキャンバ角0°の縦バネ及び横バネ定数をそれぞれ測定した。
【0030】
<操縦安定性>
排気量1500ccの自動二輪車(4サイクル)の後輪に試験タイヤを装着し(リムサイズ:MT3.50×16、内圧225Kpa)、乾燥舗装路を走行してドライバーの官能により評価した。評価は、従来品を100とする指数で表示し数値が大きいほど優れている。
テストの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
テストの結果、実施例品は従来品に比べ片流れを減じ、しかもタイヤの縦バネ、とりわけ横バネが高められたことにより操縦安定性、とりわけふんばり感が著しく向上していることが確認できた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明では、カーカスの外側に配された補強層が、コードを環状としたコード環状体を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチでずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライにて形成され、左右対称構造になしうる結果、プライステアを防止することができる。
【0034】
また請求項2記載の発明では、前記補強層が環状重ねプライによりカーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うトロイダル状に形成していることにより、タイヤサイド部においてコードをいわゆるクロスプライ状に交差させることが可能となり、プライステアを防止ししつつ、タイヤのサイド部を効果的に補強でき、操縦安定性を大幅に高めることができる。
【0035】
また請求項3記載の発明では、1本又は引き揃えた複数本のコードをゴム引きした帯状体を環状に形成したコード環状体を用いることにより、タイヤの生産性を高めるのに役立ちうる。さらに、請求項4記載の発明では、前記補強層は、1つの子午断面を通る全てのコードの、このコードのタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度は60〜90°かつタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数が1〜120本であることにより、補強層の生産性、剛性などを最適化でき操縦安定性などを効率よく高めうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すタイヤ子午断面図である。
【図2】環状重ねプライを説明するために概念的に表した斜視図である。
【図3】コード環状体を説明する斜視図である。
【図4】環状重ねプライの平面図である。
【図5】環状重ねプライの側面図である。
【図6】環状重ねプライを製造の一例を説明するために概念的に表した斜視図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 補強層
7a 環状重ねプライ
9 コード環状体
10 帯状体
11 コード
【発明の属する技術分野】
本発明は、プライステアを減じうる空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
空気入りタイヤ、例えばカーカスコードが放射状に配列されたラジアルタイヤにおいては、その半径方向外側かつトレッド部の内方に、コードをタイヤ赤道に対して比較的浅い角度で並列したカットエンドのベルトプライの2枚を、例えばコードが互いに交差するように重ね合わせることにより形成したベルト層が配される。このようなベルト層は、トレッド部の剛性を高めラジアルタイヤの性能を発揮させる。
【0003】
ところが、上記のベルト層の構造は、タイヤ赤道を中心としてベルトプライが左右非対称となるため、このベルトプライの構造に起因して、車両直進走行時にハンドルから手を離すと車両が横流れするいわゆるプライステアが生じやすいという問題がある。
【0004】
また、タイヤ赤道に対して比較的浅い角度、例えば35°以内の角度で交差する従来のカットエンドのベルトプライを重ね合わせたベルト層は、略円筒状をなし、タイヤのサイド部を補強するには不適である。
【0005】
本発明のうち請求項1記載の発明は、前記のようなプライステアを防止しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。また、請求項2記載の発明では、プライステアを防止ししつつ、さらにタイヤのサイド部をも効果的に補強しうる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、トレッド部の両側からサイドウォール部を経てビード部のビードコアで折り返されて係止される折返し部を有するカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側に配されれた補強層とを具える空気入りタイヤであって、前記補強層は、コードを環状としたコード環状体を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチでずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライからなること特徴とする。
【0007】
また請求項2記載の発明は、前記環状重ねプライは、前記カーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うトロイダル状に形成されることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤである。
【0008】
また請求項3記載の発明は、前記コード環状体は、1本又は引き揃えた複数本のコードをゴム引きした帯状体を環状に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤである。
【0009】
また請求項4記載の発明は、前記補強層は、1つの子午断面を通る全てのコードの、このコードのタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度は60〜90°かつタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数が1〜120本であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の空気入りタイヤである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態について図面に基づき説明する。空気入りタイヤは、トレッド部2の両側からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5で折り返されて係止される折返し部6Bを有するカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側に配されれた補強層7とを具え、本実施形態においては、トレッド端2e、2e間のタイヤ軸方向距離であるトレッド巾TWがタイヤ最大巾をなし、かつタイヤ子午断面においてトレッド面2aが外に凸で湾曲する自動二輪車用タイヤを例示している。
【0011】
前記カーカス6は、例えばカーカスコードをタイヤ赤道Cに対して70〜90°の角度で傾けて配列したラジアル構造のカーカスプライ6aであり、該プライの1枚又は複数枚にて形成される。本実施形態のカーカス6は、ナイロンコードをタイヤ赤道Cに対して90°の角度で傾けて並列した1枚のプライにて形成したものを例示している。なお前記カーカスコードには、ポリエステル、レーヨン、アラミド等の有機繊維コードをも適宜採用しうる。また前記カーカスの折返し部6Bのタイヤ半径方向外端の高さh1は、例えば操縦安定性を高めるべく、例えばタイヤ断面高さHの25〜60%とするのが望ましい。
【0012】
そして本実施形態では、前記補強層7は、図2、図3に示すように、コードを環状としたコード環状体9a、9b、9c、9d、9e、…を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチPでずれる半径方向の中心線N1、N2、N3、N4、N5、…の回りに配することによりコード環状体9がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライ7aからなること特徴としており、本例では前記環状重ねプライ7aは、前記図1に示したように、カーカス6の両側の折返し部6Bを軸方向外側から覆うトロイダル状かつタイヤ赤道Cに対して実質的にコードが左右対称に形成されたものを示している。なお、図2、図6は、環状重ねプライ7aの構造を理解し易いように、小角度ピッチPを大きく表示して表した説明用の概念図である。
【0013】
このような環状重ねプライ7aは、コード環状体9が、前記タイヤ周方向に小角度ピッチPでずれる半径方向の中心線回りに配されることにより、タイヤ赤道に対して左右対称構造になしうる結果、従来のような非対象構造のカットエンドのベルトプライを重ね合わせたベルト層に比べプライステアを大幅に減じることができる。
【0014】
前記コード環状体9は、例えば図3に示すように、1本又は引き揃えた複数本のコード11をトッピングゴム12にてゴム引きした帯状体10を環状に形成したものを例示し、環状重ねプライ7aは同一サイズのコード環状体9の複数個を用いて形成されるものを示す。前記コード11の複数本としては、2本以上かつ10本以下が好ましい。
【0015】
本実施形態では、図3(A)に示すごとく同心円状に配されたアラミドからなる3本のコード11をゴム引きすることにより、断面が略長方形かつ小巾の長尺体をなすものを例示し、その巾Woは、好ましくは5〜15mmとするのがプライ成形性の観点から望ましい。このように複数本のコード11を平行に配列した帯状体10を用いることにより、1本のコードを用いたものに比べ、環状重ねプライ7aの成形作業を能率化できタイヤの生産性を向上しうる。
【0016】
なお、コード11には、アラミド以外にもレーヨン、ナイロン、ポリエステル等の有機繊維コード、又はスチールコードさらにはこれらの複合コードなどを適宜採用することができる。またコード環状体9は、コード11の両端を接着することにより、該コードが連続して環状をなすものの他、図3(A)に示したように、小長さの帯状体10の両端を継ぎ部10aで継ぐことによりコード11がトッピングゴム内部において非連続で環状をなすものも採用できる。
【0017】
さらに、1本のコードを渦巻状に巻回したものをトッピングゴムで被覆してコード環状体9を形成することもできる。また、コード環状体9は、図3(B)に示すように、帯状体10の一部が途切れる途切れ部10bを有して環状をなすものでも良い。この途切れ部10bは、例えば180°未満、より好ましくは90°未満、さらに好ましくは45°未満、さらに好ましくは30°未満の円弧角βとするのが好ましい。なおコード環状体9に途切れ部10bがある場合には、この途切れ部10bの存在により、タイヤ赤道に対してコードが対称となるように配置するのが好ましい。
【0018】
また、前記半径方向の中心線N1、N2、…の周方向の小角度ピッチPとしては、コード環状体9の巾Wo、或いは帯状体のコードの打ち込み密度との兼ね合いなどから種々の角度を定めうるが、この小角度ピッチPが大きすぎると環状重ねプライ7aにおいて周方向に隣り合うコード環状体9が離間し、効果的な補強をなしえない。したがって、この小角度ピッチPは、例えば、また好ましくは0.1〜5°、好ましくは0.1〜2°、より好ましくは0.1〜0.5°、さらに好ましくは0.1〜0.3°の範囲とするのが望ましい。また本例では小角度ピッチPは、タイヤ周方向において均一とした好ましいものを例示している。これによって、コード11はタイヤ赤道Cの位置において、例えばタイヤ周方向に隣り合うコード間隔が1〜5mmとなるものが好ましい。
【0019】
このような本実施形態の環状重ねプライ7aは、図2、図4、図5に示すように、コード環状体9がタイヤ周方向に位置ずれして並ぶことにより、その位置ずれ量、すなわち前記小角度ピッチPを調節することでトレッド部2、サイドウォール部3においてコード11が互いに交差することが可能となり、とりわけサイドウォール部3においてコード11を交差させることが可能となるため、補強層7の剛性を高めることができ、とりわけタイヤサイド部において、クロスプライ状のコード交差部を形成しうる結果、1つの補強層で、ラジアルタイヤのトレッド部とサイドウォール部との双方の剛性を大幅に高めることができる。
【0020】
このような環状重ねプライ7aは、小角度ピッチPにてタイヤ周上を1周した場合、コード11がタイヤ半径方向で重なり合い、実質的に2層のコード層が形成される。そして、環状重ねプライ7aのコード11は、タイヤ赤道Cの位置において、タイヤ赤道Cに対して略90度で交差し、タイヤ軸方向外側に近づくにつれてタイヤ周方向線とのなす角が小さくなっていく。そして、補強層7の端縁でコード11は、タイヤ周方向に対して0度となる。
【0021】
また前記補強層7は、図5に示すように、タイヤ軸を含む1つの子午断面を通る全てのコード11の、このコード11のタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度θ(小さい方で測定する)は60〜90°が好ましい。また補強層7のタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数は、1〜120本とするのが好ましい。前記角度θが60度未満であると、タイヤの周方向剛性が相対的に低下する傾向がある。
【0022】
また、前記コード打ち込み数が1本未満であると、補強層7の剛性が低下する傾向があり、逆に120本を超えるとコード密度が過度に増し、トレッド部、サイドウォール部の剛性が著しく高められるとともにタイヤ生産性が低下する傾向がある。このような観点より、前記コード打ち込み数は、好ましくは20〜80本、より好ましくは30〜50本とするのが望ましい。
【0023】
また、本実施形態において前記環状重ねプライ7aは、カーカス6の両側の折返し部6Bを軸方向外側から覆うトロイダル状に形成されるが、そのタイヤ半径方向の内端7e、7eは、ビードベースラインBLからタイヤ断面高さHの10〜40%とするのが好ましく、またカーカスの折返し部との重なり部のタイヤ半径方向長さ(h1−h2)が、タイヤ断面高さHの10〜30%とするのが望ましい。これによって、カーカスの折返し部6Bの外端が剥離するプライルースなどを好適に防止することができ、タイヤの耐久性をも高めることができる。なおビードベースラインBLはビードヒール点を通るタイヤ軸方向線である。
【0024】
このような環状重ねプライ7aは、図6に示すように、例えばカーカスプライ6aをビードコア5の回りで折返して折返し部6Bを形成したトロイダル状のカーカス基体13にコード環状体9を、小角度ピッチで周方向にずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体9がタイヤ周方向に位置ずれし、このとき、カーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うように配置して加硫することにより、図1に示すようなトロイダル状の環状重ねプライ7aを形成しうる。なお環状重ねプライのコード層数などは種々定めることができる。
【0025】
また、環状重ねプライ7aは、図6に示したようにカーカス基体13の上に直接コード環状体9を配するものの他、別途成形用のドラムなどの上でトロイダル状に成形し、これをカーカス基体13に装着してタイヤ生カバーを形成し、これを加硫することによっても製造しうる。なお環状重ねプライ7aは、成形ドラムを円筒状とすることにより、円筒状にも形成でき、例えば乗用車用タイヤの補強層としても好適に用いうる。
【0026】
以上、本発明の実施形態についてトレッド面が外向きに凸となる自動二輪車用タイヤを用いて説明したが、本発明は自動二輪車のみならず、乗用車用タイヤ、重荷重用タイヤなど、種々のカテゴリの空気入りタイヤに採用することができる。
【0027】
【実施例】
タイヤサイズが160/80R16であり、かつ図1に示した本発明の自動二輪車用の空気入りタイヤを試作し(実施例品)、片流れ、バネ定数、操縦安定性についてテストした。また、従来の2枚のカットエンドのベルトプライを有する自動二輪車用タイヤ(従来品)についても同様にテストし、性能を比較した。なお実施例品ではh1/H=0.42、h2/H=0.11とした。
テストの内容は次の通りである。
【0028】
<片流れ>
タイヤを回転させたときに働く横向きの力のうち回転方向に関係なく一定の方向に発生する力であるコニシティフォースをユニフォミティ試験機を用いて測定し、従来品を100とする指数で表示した。数値が小さいほどコニシティフォースが小さく、したがって片流れも少なく良好である。
【0029】
<バネ定数>
試験タイヤをリム組みし(リムサイズ:MT3.50×16、内圧225Kpa)、荷重200kgf を作用させてキャンバ角0°の縦バネ及び横バネ定数をそれぞれ測定した。
【0030】
<操縦安定性>
排気量1500ccの自動二輪車(4サイクル)の後輪に試験タイヤを装着し(リムサイズ:MT3.50×16、内圧225Kpa)、乾燥舗装路を走行してドライバーの官能により評価した。評価は、従来品を100とする指数で表示し数値が大きいほど優れている。
テストの結果を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
テストの結果、実施例品は従来品に比べ片流れを減じ、しかもタイヤの縦バネ、とりわけ横バネが高められたことにより操縦安定性、とりわけふんばり感が著しく向上していることが確認できた。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のうち請求項1記載の発明では、カーカスの外側に配された補強層が、コードを環状としたコード環状体を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチでずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライにて形成され、左右対称構造になしうる結果、プライステアを防止することができる。
【0034】
また請求項2記載の発明では、前記補強層が環状重ねプライによりカーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うトロイダル状に形成していることにより、タイヤサイド部においてコードをいわゆるクロスプライ状に交差させることが可能となり、プライステアを防止ししつつ、タイヤのサイド部を効果的に補強でき、操縦安定性を大幅に高めることができる。
【0035】
また請求項3記載の発明では、1本又は引き揃えた複数本のコードをゴム引きした帯状体を環状に形成したコード環状体を用いることにより、タイヤの生産性を高めるのに役立ちうる。さらに、請求項4記載の発明では、前記補強層は、1つの子午断面を通る全てのコードの、このコードのタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度は60〜90°かつタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数が1〜120本であることにより、補強層の生産性、剛性などを最適化でき操縦安定性などを効率よく高めうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すタイヤ子午断面図である。
【図2】環状重ねプライを説明するために概念的に表した斜視図である。
【図3】コード環状体を説明する斜視図である。
【図4】環状重ねプライの平面図である。
【図5】環状重ねプライの側面図である。
【図6】環状重ねプライを製造の一例を説明するために概念的に表した斜視図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 補強層
7a 環状重ねプライ
9 コード環状体
10 帯状体
11 コード
Claims (4)
- トレッド部の両側からサイドウォール部を経てビード部のビードコアで折り返されて係止される折返し部を有するカーカスと、このカーカスのタイヤ半径方向外側に配されれた補強層とを具える空気入りタイヤであって、
前記補強層は、コードを環状としたコード環状体を、タイヤ赤道面を通りかつタイヤ周方向に小角度ピッチでずれる半径方向の中心線回りに配することによりコード環状体がタイヤ周方向に位置ずれした環状重ねプライからなること特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記環状重ねプライは、前記カーカスの両側の折返し部を軸方向外側から覆うトロイダル状に形成されることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記コード環状体は、1本又は引き揃えた複数本のコードをゴム引きした帯状体を環状に形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の空気入りタイヤ。
- 前記補強層は、1つの子午断面を通る全てのコードの、このコードのタイヤ赤道面への投影線が前記子午断面となす角度は60〜90°かつタイヤ周方向5cm当たりのコード打ち込み数が1〜120本であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の空気入りタイヤ。
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