JP3693789B2 - 粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金または鉄系Si−Mn−Ni合金およびその合金粉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に粉砕性の優れた鉄系Si−Mn合金または鉄系Si−Mn−Ni合金およびその合金粉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、主として鉄鋼製造時の脱酸、脱硫、造滓及び合金成分添加剤として用いられるフェロマンガン、フェロシリコン及びシリコマンガンは、そのJIS規格(G2301,G2302,G2304−1986)に規定されているように、何れも合金成分が高く[例えば、Mn≧73%、(Mn+Si)≧74%等]、かつ炭素含有量も極めて高い(例えば、FMnM2:C≦2.0%、SiMn0:C≦1.5%)。そして、これらの合金鉄はその用途上、規定されている粒度に従って、合金粉又は粒として供給されることになっている。すなわち、これらの合金鉄はJISの中のロットの作り方にも示されているように、大量にかつ粉粒状で供給されるという性状の特徴があり、これは夫々の合金鉄の中の合金量と炭素量が高いために、溶解後の冷却後に容易に粉粒状の形状が得られることによって実現している。
【0003】
一方、近年、鉄鋼成品の多様化に伴い、従来のJIS規格よりも、Si,Mn等の合金量、さらには炭素含有量のより少ない粉状合金鉄の必要性が高くなって来ている。例えば、鋼構造物の溶接に適用するアーク溶接用フラックス入りワイヤのフラックスには、目的に応じてスラグ形成剤、脱酸剤、合金剤、鉄粉等の種々の粉末原料が含まれ、具体的には上記の粉状のフェロマンガン、フェロシリコン、シリコマンガン及び鉄粉等が合計で数10%も含まれている。この混合フラックスから生ずる成分の偏析は、鋼材溶接時の溶接品質に悪影響を及ぼす場合がある。
【0004】
従って、上記数種類の粉末原料を配合して揃えた成分と同じ成分を持った単一合金鉄粉を予め製造し、これをフラックス中に使用する方法が強く望まれるところである。しかしながら、一般的にフェロアロイ中のSi,Mnさらには炭素等を下げてゆくと、その延性、靱性が次第に良くなり、通常の生産設備では、中々粉粒状の製品を得ることが難しくなる。また、これを改善するための成分調整を行なうと、磁性を帯び易くなり、磁性を帯びた合金鉄粉を混合したフラックスを用いて、例えば特公平4−72640号公報の提案に見られるような、帯鋼の成形とフラックスの充填、シーム溶接を連続に行なって、フラックス入りワイヤを作る場合には、その製造作業条件によっては、成分の偏析、シーム部の融合不良等が発生し、フラックス入りワイヤの製造歩留及び鋼材溶接時の溶接品質に悪影響を及ぼす場合がある。
【0005】
さらに、例えば高張力鋼や低温用鋼等の鋼構造物の溶接に適用するアーク溶接用フラックス入りワイヤのフラックスには、Si,Mn,Ni及び鉄粉等を同時に含有しているものが一般的である。これらの原料としては、単体原料(Si粉、Mn粉及びNi粉)の他、上記の粉粒状のフェロシリコン、フェロマンガン、シリコマンガン、フェロニッケルなどが主に使用されている。これらの合金成分であるSi,Mn及びNiは溶接部の品質に対し相互に強く作用し合う成分である。従って、原料を配合、混合したフラックスには、原料ロット毎の成分変動や原料種類毎の粒径差が原因で生じやすい成分偏析がなく、所定量のSi,Mn及びNiを含有するフラックス組成となっていることが好ましい。このためには、Niを含有する鉄系Si−Mnの単一鉄合金粉が必要となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、上記のような鉄分を多く含有する鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉を製造するにあたり、粉体として大量生産するためには、製造過程において容易に粉砕が可能であることが必要である。鉄分含有量の多い合金粉として、特公平4−62838号公報、特開平5−31594号公報にFe−Mn系合金粉が記載されているが、それらは常法の機械的粉砕では粉砕性が極めて悪いという難点があり、従来においては、これら鉄合金であって、しかも容易に粉砕して多量生産が可能な鉄系Si−Mn合金粉体または鉄系Si−Mn−Ni合金粉体は存在していないのが実状である。また、その合金粉が非磁性であることはさらに種々の用途拡大が可能となる。
【0007】
本発明は上述のような、現在においては存在していない鉄合金であって、しかも容易に粉砕して多量生産が可能な鉄系Si−Mn合金または鉄系Si−Mn−Ni合金とその粉体を提供するものである。その発明の要旨とするところは、
(1)重量%で、
C:0.40〜1.20%、
Si:5.0〜12.0%、
Mn:19.0〜42.0%、
P:0.40%以下を含み、
残部Feからなり、かつ、Pが0.10%以上の場合、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn、Pが0.10%未満の場合、Si≧12.51−2.92C−0.077Mnを満たし、さらに、ビッカース硬度(Hv)≧550、組織のデンドライト面積率≦50%であることを特徴とする粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金。
【0008】
(2)重量%で、
C:0.40〜1.20%、
Si:5.0〜12.0%、
Mn:19.0〜42.0%、
P:0.40%以下を含み、
残部Feからなり、かつ、Pが0.10%以上の場合、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn、Pが0.10%未満の場合、Si≧12.51−2.92C−0.077MnおよびSi≦8.3C+0.14Mnを満たし、さらに、ビッカース硬度(Hv)≧550、組織のデンドライト面積率≦50%および比透磁率(μ)≦1.10であることを特徴とする粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金。
【0009】
(3)P:0.10〜0.40%を含有することを特徴とする前記(1)または(2)記載の粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金。
(4)前記(1)〜(3)に記載の鉄系粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金を粒径212μm以下としたことを特徴とする鉄系Si−Mn合金粉。
(5)Niを30%以下含有することを特徴とする前記(1)〜(3)記載の粉砕性の良好な鉄系Si−Mn−Ni合金。
(6)前記(5)に記載の鉄系粉砕性の良好な鉄系Si−Mn−Ni合金を粒径212μm以下としたことを特徴とする鉄系Si−Mn−Ni合金粉にある。
【0010】
以下、本発明について図面に従って詳細に説明する。
図1は本発明に係る合金鉄鋳片のビッカース硬度(Hv)とその光学顕微鏡観察時のデンドライト相の面積率(%)との関係を示す図である。図1から、この種合金鉄の粉砕性は鋳片の硬度(Hv)とデンドライト面積率(%)と強い相関があり、デンドライト面積率を50%以下にし、硬度(Hv)を550以上にすることにより、粉砕性が容易となることが確認される。
【0011】
図2は本発明を含むSi−Mn合金鉄において鋳片の化学成分と磁性の関係を求めた結果である。縦軸は鋳片に含まれる強磁性分をフェライトメーターで測定した値(%)であり、横軸の値、A/F(以下、オーステナイト指数と言う)は、図に示すように、鋳片のC,Si及びMn含有量によって求められる値であり、右に行く程(大きな値になる程)、オーステナイト化傾向が強くなると言う意味をもっている。この図2から、オーステナイト指数が大きくなる程、磁性を示すフェライト量がほゞ直線的に減少し、ばらつきを考慮しても、このオーステナイト指数が2.40〜2.80になるとフェライト量は殆ど消失し、いわゆる、非磁性化することが確認される。
【0012】
次に、本発明における成分規制の理由について、粉砕性と非磁性化の観点から説明する。先ず粉砕性に重要な影響をもつ、鋳片のビッカース硬度(Hv)と化学成分の関係を、一連の試験によって求め、関係式で表すことが出来た。この式を次に示す。
Hv=380C+130Si+10Mn+[P]−1076
但し、各成分は重量%、[P]=80(P≧0.10%)及び[P]=0(P<0.10%)
【0013】
ビッカース硬度(Hv)が約550以上になると、粉砕性が良くなると言う前記図1の結果から、粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金を得るための、C,Si,Mn及びP含有量の組合わせは上記式によって自ら決まる。この式からC,Si,Mnの硬度(Hv)に及ぼす影響は、Mn<Si<Cの順に大きくなるが、本発明で請求している夫々の成分の範囲から考えると、実用的には、Siの影響(係数=130)が最も強いことが判る。
【0014】
そこで、例えば、Siの含有量が請求範囲の下限の5%の時にも、この合金鉄のビッカース硬度(Hv)が550以上を確保するに必要なC,Mn及びPの値を実験によって求めた。その実施例を表1のNo1、No2に示す。No1は、Siが4%で低すぎるために粉砕性は不充分であるが、No2のこのデータからC及びMnを夫々本発明のほゞ上限値(C:1.20%,Mn:42.0%)に保持し、さらに0.15%前後のPを添加してやれば、Siが約5%でも、良好な粉砕性が得られ、かつ、この値がほゞ下限であることが明らかとなった。なお、Siを5%以上にして行くと、必要なC,Mn及びPの含有量は少なくてよいが、この値が約12%をこえると粉砕性は良いが、非磁性を確保することが困難になる。そこでSi量の範囲を5.0〜12.0%とした。
【0015】
次に、Cの影響について述べる。表1のNo3,No4,No5に実施例を示す。No3、No4の結果からSiが約7%、Mnが約24%の時には、Cを1%以上にすると、良好な粉砕性が得られる。また、No5の結果からCが約0.4%のときには、安定した粉砕性を確保するためSiおよびMnを増加する必要がある。なお、Cの上限値については、この値が1.20%を超えても、粉砕性および非磁性に対する効果は殆んど変わらない。そこでC量の範囲を0.40〜1.20%とした。
【0016】
Mnに関しては、ビッカース硬度(Hv)に対する寄与度が小さい(前式の係数:10)ことから、粉砕性に対する影響は、CやSi程に強くはないが、この合金鉄を非磁性の安定したオーステナイト相に保持するためにも、最低19%程度は必要であり、前述したようにフェライト形成能の強いSiが12%程度になると、Mnは40%以上必要になって来る。そこでMn量の範囲は19.0〜42.0%とした。
【0017】
【表1】
【0018】
また、本発明の合金鉄に微量のPを添加すると、硬度(Hv)の上昇、すなわち、粉砕性の改良に極めて有効であることが初めて明らかとなった。その他実施例を踏まえて、総合的に整理すると、Pを0.1%以上添加するとビッカース硬度(Hv)は約80も上昇する。しかしながら、余り多量に添加すると本発明の合金粉を使用した鋼成品の材質を脆化させる危険性があるので本発明での範囲を0.10〜0.40%とした。
【0019】
以上、本発明の鉄系Si−Mn合金の粉砕性に及ぼすC,Si,Mn及びPの成分限定の理由について述べたが、その請求の範囲内で各元素のバランスした組合わせを選び、Hv≧550とすることにより、本発明合金鉄は、常に良好な粉砕性を確保することが出来る。なお、上記硬度(Hv)の計算式は、
Hv=380C+130Si+10Mn+[P]−1076 … (1)
良好な粉砕性を得る条件Hv≧550と[P]=80を代入して、整理すると
Si≧11.89−2.92C−0.077Mn … (2)
なる式が得られる。Pの含有量が0.10%未満の場合には、Si≧12.51−2.92C−0.077Mnの式となり、硬度(Hv)≧550を得るためには、(2)式によるよりもSiを約0.6%多目に含有させれば良い。
【0020】
次に、図1でデンドライト面積率が小さくなると、粉砕性が良くなることを示したが、その理由について述べる。図3は鋳片の凝固組織の光学顕微鏡写真を示す。この図3(a)はデンドライト面積率24%、硬さ(Hv)が682の組織であり、その粉砕性は良好で、一方、図3(b)はデンドライト面積率73%、硬さ(Hv)が347の組織であり、その粉砕性は悪い。図3(a)、図3(b)を比べると、図3(b)ではデンドライトが多く、かつ破面の電子顕微鏡写真でも凹凸が多く、これに比べ図3(a)は平滑である。破面は両者共に、劈開破面の特徴をもっているが、外力によってデンドライト組織の間で発生した亀裂が進行する際に、亀裂の尖端が金属学的な特性の異なるデンドライト組織に衝突すると、更にこれを破壊して前進するためにデンドライト組織の少ない場合に比べて、余分の破壊エネルギーを必要とし、従って、デンドライト面積率を少なくすることは、硬度の外に粉砕性を改善する効果がある。
【0021】
次に、非磁性と成分との関係について述べる。
図2において、A/F(オーステナイト指数)が2.80又は2.40以上になると、その合金鉄はほゞ完全に非磁性化することを明らかにしたが、この夫々の点を通るA/Fとαの関係直線を求めると、夫々図2の中の(3)、(4)式の如くなる。この夫々の場合、非磁性(α≦0)の条件を入れると(3)、(4)式は、(3)式より
[133−47.4(30C+0.5Mn)/1.5Si]≦0 … (3´)
(4)式より
[114−47.4(30C+0.5Mn)/1.5Si]≦0 … (4´)
となり、これを整理すると、
(3´)式は、Si≦7.1C+0.12Mn (A/F≧2.80)
(4´)式は、Si≦8.3C+0.14Mn (A/F≧2.40)…(5)
なる関係が得られ、本発明の合金鉄が非磁性であるための、C,Si,Mn量及びそれらの間の関係は、この関係式で規制されることになる。なお、多くの試験から非磁性化には、実用上A/F≧2.40[式(5)]でほゞ充分であることが確認された。
【0022】
さらに、前述した(2)、(5)式を用いて、CとMnを大幅に変化させた場合、良好な粉砕性(Hv≧550)と非磁性(A/F≧2.40)を共に維持するSi規制量を計算してみると、表2の如くなる。この表2から夫々のC,Mn量に対して、目的に応じて太枠内のSi量(但し、12.0%以下)を選べば、良好な粉砕性と非磁性化が得られることが判る。この表2からも明らかなように、本発明ではSiが粉砕性及び非磁性化の両方に対し極めて重要な役割を果していることが特徴である。
【0023】
以上、本発明の鉄系Si−Mn合金粉の基本成分であるC,Si,Mn及びこれに微量のPを添加した場合の限定理由を述べたが、これに含有させることが出来るその他の成分としては、Al:1.0%以下、Ti:2.0%以下をそれぞれの範囲で含有させると、粉砕性を若干改善する効果がある。その他BやMo,Cr,VおよびNb等も粉砕性及び非磁性化を損わない範囲で含有させることができる。
【0024】
【表2】
【0025】
鉄系Si−Mn合金粉の比透磁率(μ)を1.10以下としたのは、比透磁率(μ)が1.10という値は磁性を僅かに帯びる性質を有する限界値であって、例えば、溶接用フラックス入りワイヤでのフラックス原料として使用する場合の用途等を考慮すると、比透磁率(μ)1.10以下であればフラックス入りワイヤ製造工程のシーム溶接に際しても溶接欠陥が全く発生しないことから、今回、非磁性化の目安を得るために測定して来た鋳片のフェライト量で表はすと、比透磁率(μ)1.10は丁度フェライト量で1〜2%(A/F≧2.40)に対応していることが明らかとなった。この事実が上記合金粉の比透磁率(μ)を1.10以下とした。
【0026】
また、鉄系Si−Mn合金粉の粒径を212μm以下とした理由は、これも例えば、溶接用ワイヤ等でのフラックス原料に使用する場合の用途等を考慮した場合に、粒径212μm以下の粉体であればワイヤの製造工程における歩留りの向上、また、フラックス成分の偏析防止及び溶接性能のばらつき減少などの利点があるため、その粒径を212μm以下とした。
【0027】
次に、上記本発明の鉄系Si−Mn合金にNiを含有させた場合の粉砕性及び磁性について調査した。その結果、Niが30%以下の範囲において良好な粉砕性及び実質的な非磁性を確保できることを確認した。なお、Niの含有量を増加させるにともなって、粉砕性および非磁性化は向上するが、鋳片のビッカース硬度(Hv)の上昇に対する効果はMnよりもやや小さく、また、フェライト量(α)の減少に対してはMnと同等の効果を示した。
【0028】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。
(実施例1)
所定の成分となるように配合した溶解原料を、高周波誘導加熱炉(溶解量2kg)を用いて溶解し、鋳型に鋳込み、厚さ10〜25mmの鋳片を得た。この鋳片をハンマーで粗粉砕後、図4に形状を示すリングミル粉砕機で粉砕性を評価した。図4(a)はリングミル粉砕機の図4(b)のB−B´平面図、図4(b)は図4(a)のA−A´断面図であり、底部材3と一体である外筒1の中に内リング2が装入されており、底部材3を所定の条件で水平振動を付与すると、内リング2は移動し、外筒1と内リング2の間に挿填された鋳片は衝撃を受けて粉砕される。粉砕性の評価は上記リングミル粉砕機に粗粉砕した鋳片(平均サイズ10〜20mm塊)を約100g入れて、振幅100mm、振動数1800回/分、60秒間衝撃を与えた後、粒径212μm以下の割合が90%以上の場合を評価記号◎印(極めて良)、50%以上の場合を○印(良)、50%未満の場合を△印(不充分)とした。試験結果は、表1に示し、前記SiおよびC含有量の限定範囲等について説明した通りである。なお、表1においてNo1は比較例、No2〜5は本発明例で良好な粉砕性が得られた。
【0029】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で少量溶解(2kg溶解)を行った。表3に合金粉の化学成分およびその鋳片での調査結果(硬度、デンドライト面積率、フェライト量および粉砕性)を示す。表中のNo1〜12およびNo18,No19およびNo21はいずれも粉砕性が優れている。また、No2,No4,No5,No7,No8,No11,No12,No21はフェライト量も殆どなく、実質的に非磁性の鉄系Si−Mn合金粉が得られていることが判る。なお、No11,No12は夫々Ti,Alを少量添加した場合である。これに対して、比較材No13〜No17およびNo20は粉砕性が不充分であり、何れもビッカース硬度(Hv)<550、デンドライト面積率>50%となっている。
また、表中のNo18〜21は硬度(Hv)およびデンドライト面積率に及ぼすPの添加効果を示したもので、他成分が殆んど変わらないNo18とNo19及びNo20とNo21を比べるとその添加効果が顕著であることが判る。
【0030】
【表3】
【0031】
(実施例3)
表4に、実施例1と同様に少量溶解を行い、その合金粉の化学成分、磁性およびその他の特性値を示す。本発明例のNo1〜No4はオーステナイト指数が何れも2.40以上で、そのフェライト量も0.14%以下となり、(良好な)非磁性を示し、かつ、粉砕性も良好である。一方、これに比べ、比較例No5,No6およびNo7はオーステナイト指数が夫々1.44、1.75および2.14と何れも低く、かつ多量のフェライト相が析出して強い磁性を持っていることが判る。そして、この場合には硬度(Hv)と粉砕性の間にも異常な関係があることが伺はれる。
【0032】
【表4】
【0033】
(実施例4)
高周波誘導加熱炉(溶解量250kg)を用いて、多量溶解により本発明の効果をさらに確認した。原料を溶解、鋳込み、厚さ20〜50mmの鋳片を得た。この鋳片をジョークラッシャー粉砕機で粗粉砕し、更にこれをロッドミルで微粉砕した後、粒径212μmでの篩分けという一貫工程により合金粉を製造した。表5に得られた合金粉の化学成分、粒度構成及び振動試料型磁力計で測定した比透磁率(μ)、また鋳片で測定したビッカース硬度(Hv)、デンドライト面積率(%)及びフェライトメーターによるフェライト量(%)を示す。 その結果、表5に示すように本発明の範囲に該当する実施例No1、2、3はいずれも常法の機械的粉砕方法において充分な粉砕性を有し、かつ比透磁率(μ)も小さく、多量溶解においても、前記少量溶解結果を再現することが確かめられた。
【0034】
【表5】
【0035】
(実施例5)
高周波誘導加熱炉(容量250kg)を用いて、実施例4と同様の方法でNiを含有させた合金粉を製造した。表6に得られた合金粉の化学成分、粒度構成及び比透磁率(μ)、また鋳片で測定したビッカース硬度(Hv)、デンドライト面積率(%)及びフェライト量(%)を示す。その結果、Niを含有させた実施例No.1〜7のいずれも機械的な粉砕方法によって容易に粉砕が可能で、また、実施例No.1〜5は比透磁率(μ)が1.10以下で実質的に非磁性化している。なお、実施例No.5において、粒径212μmよりも粗粒部分が9%生じたが、同ロッドミル粉砕機で再粉砕することにより全量を粒径212μm以下にすることができた。
【0036】
【表6】
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によって鉄成分の含有量が多く実質的に非磁性鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉を、製造工程において、極めて粉砕性良く、しかも容易に多量生産することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る合金鉄鋳片のビッカース硬度(Hv)とその光学顕微鏡観察時のデンドライト相の面積率(%)との関係を示す図である。
【図2】本発明を含むSi−Mn合金鉄において鋳片の化学成分と磁性の関係を求めた結果を示す図である。
【図3】鋳片の凝固組織の光学顕微鏡写真を示す図である。
【図4】粉砕性評価に使用したリングミル粉砕機を示す概略図である。
【符号の説明】
1 外筒
2 内筒リング
3 底部材
4 上蓋
5 鋳片
Claims (6)
- 重量%で、
C:0.40〜1.20%、
Si:5.0〜12.0%、
Mn:19.0〜42.0%、
P:0.40%以下を含み、
残部Feからなり、かつ、Pが0.10%以上の場合、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn、Pが0.10%未満の場合、Si≧12.51−2.92C−0.077Mnを満たし、さらに、ビッカース硬度(Hv)≧550、組織のデンドライト面積率≦50%であることを特徴とする粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金。 - 重量%で、
C:0.40〜1.20%、
Si:5.0〜12.0%、
Mn:19.0〜42.0%、
P:0.40%以下を含み、
残部Feからなり、かつ、Pが0.10%以上の場合、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn、Pが0.10%未満の場合、Si≧12.51−2.92C−0.077MnおよびSi≦8.3C+0.14Mnを満たし、さらに、ビッカース硬度(Hv)≧550、組織のデンドライト面積率≦50%および比透磁率(μ)≦1.10であることを特徴とする粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金。 - P:0.10〜0.40%を含有することを特徴とする請求項1または2記載の粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金。
- 請求項1〜3に記載の鉄系粉砕性の良好な鉄系Si−Mn合金を粒径212μm以下としたことを特徴とする鉄系Si−Mn合金粉。
- Niを30%以下含有することを特徴とする請求項1〜3記載の粉砕性の良好な鉄系Si−Mn−Ni合金。
- 請求項5に記載の鉄系粉砕性の良好な鉄系Si−Mn−Ni合金を粒径212μm以下としたことを特徴とする鉄系Si−Mn−Ni合金粉。
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