JP3652499B2 - ガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼構造物の製造に使用するガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、造船、橋梁、圧力容器等を初めとする溶接鋼構造物の製造分野においては、軟鋼及び490N/mm2 級高張力鋼用、590N/mm2 級高張力鋼用、低温用鋼用など各種のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ(以下、フラックス入りワイヤという。)の使用量が増加している。
図5に市販フラックス入りワイヤの代表的な断面構造例を示した。外皮部1に隙間がないシームレスタイプ(図5(a)、(b))と外皮部1に隙間2がある巻き締めタイプ(図5(c)、(d))とに大別できるが、シームレスタイプのフラックス入りワイヤ(以下、シームレスフラックス入りワイヤという。)は、製造過程で高温度で行う脱水素処理が可能で、また使用中にフラックス3の吸湿がないのでワイヤの持つ水素量が低く、耐割れ性や耐気孔性に優れている。
【0003】
外皮部の素材は軟鋼が一般的である。フラックスはスラグ形成剤、脱酸剤、合金剤、鉄粉及びその他アーク安定剤等種々の原料粉からなるが、全姿勢用ワイヤは良好な溶接作業性が得られるようにルチールを主体とするスラグ形成剤が比較的多く、高溶着用ワイヤはスラグ形成剤を殆ど含有しない鉄粉を主体とする金属粉系、すみ肉用ワイヤは耐プライマ性に配慮してスラグ形成剤を少な目にした中間タイプのものが一般的である。ワイヤ径は2.0mm以下のものが多く使用されている。
このような構成にあるフラックス入りワイヤは、製造過程の伸線加工性が良好な軟鋼外皮を用いることにより、フラックスに多量のSi、Mnの原料粉、さらにはNiの原料粉を含有させていることである。フラックス中に占めるこれらの原料粉の割合が多いということは、原料粉の特性がフラックス入りワイヤの溶接性能及び生産性に重要な影響を及ぼすことになる。
【0004】
すなわち、Si、Mnは脱酸剤及び合金剤として必須の成分であり、溶接金属の機械性質(強度、靱性等)の確保とともに、脱酸反応で生成したSiO2 、MnOは溶接スラグ組成の主要成分となりビード形成にも寄与する。仮にワイヤ長手方向にSi、Mnの偏析があると、溶接金属中へのSi、Mnの歩留まりが変化して強度、靱性にばらつきが生じるばかりでなく、スラグ生成量の少ないすみ肉用ワイヤを特に高速で水平すみ肉溶接を行うとスラグ被包性が劣化し良好なビード形成やスラグ剥離性が得られなくなる。また、フラックスにSi、MnとともにNiが同時に含有されている高張力鋼用ワイヤや低温用鋼ワイヤにおけるワイヤの成分偏析は、相乗作用により溶接金属の強度変化や靱性低下をもたらす。
【0005】
また、Si、Mn及びNiの原料粉の影響で製造過程の伸線加工中に外皮部肉厚の変動が大きくなったり、それら原料粉が外皮部に噛み込んでいると、断線発生の原因となる他、ワイヤの溶融状態(溶滴移行性)が乱れ、アーク不安定やスパッタの発生量が多くなる。図2に後述した本発明の実施例において確認された全姿勢用シームレスフラックスの外皮部肉厚の均一性とスパッタ発生量の関係を示した。外皮部肉厚の均一性が損なわれる(図3により測定したT1/T2の最小値が小さくなること)とスパッタ発生量が多くなることがわかる。
【0006】
さらに、シームレスフラックス入りワイヤが特公平4−72640号公報、特公平4−62838号公報及び特開平5−31594号公報等の提案に見られるように、帯鋼を管状体に成形する段階でフラックスを充填した後、帯鋼の合わせ目のシーム溶接を行い連続的に能率よく製造した場合、フラックスに溶着速度や溶接作業性の向上に効果的な鉄粉や溶接金属の強度、靱性の確保の効果的なNi粉のような強磁性を持つ原料粉が含有されていると、シーム溶接部にフラックスが磁着して融合不良や溶接スパッタ(この時のスパッタはフラックス中にも落下混入する)等が発生しやすくなり、フラックス入りワイヤの製造歩留まりの低下のみならずワイヤ溶接中に安定した溶接状態が得られにくくなることが問題となる。しかしながら、従来のフラックス入りワイヤにおいては、基本的なワイヤ成分として必須のSi、Mnの原料粉及びNiの原料粉の影響に着目して溶接性能の一層の向上を図った検討が充分になされいないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、フラックスに必須成分として多量に含有させるSi、Mnの原料粉及びNiの原料粉に着目し、フラックスを充填後、帯鋼の合わせ目をシーム溶接して行う高能率な連続的製造方法で製造する場合の上記シーム溶接に係わる問題を解決し、さらに、成分の偏析や外皮部肉厚の不均一が極力なく優れた溶接性能が得られるシームレスフラックス入りワイヤを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨とするところは、
(1)重量%で、C:0.40〜1.20%、Si:5〜12%、Mn:19〜42%、N:0.0030〜0.0600%、残部Feからなり、かつ、
Si≧11.89−2.92C−0.077Mn、及び
Si≦8.3C+0.14Mnを満たし、
粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn合金粉を含み、比透磁率(μ)≦1.10の原料粉からなるフラックスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤ。
【0009】
(2)重量%で、C:0.30〜1.20%、Si:5〜12%、Mn:19〜42%、N:0.0030〜0.0600%、Ni:30%以下、残部Feからなり、かつ、
Si≧11.89−2.92C−0.077Mn−0.062Ni、及び
Si≦8.3C+0.14(Mn+Ni)を満たし、
粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn−Ni合金粉を含み、比透磁率(μ)≦1.10の原料粉からなるフラックスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤにある。
【0010】
【発明の実施の形態】
まず、フラックス入りワイヤに含有させるSi、Mnの原料としては、従来よりJIS規格に規定されたSi粉、Mn粉、フェロシリコン、フェロマンガン、シリコマンガンなどの合金粉が主に用いられている。入手した各原料の成分、粒度構成は厳格に管理されるが、原料種類毎、また原料の製造ロット単位毎にその成分範囲及び粒度構成には差異が生じている。従って、上記数種類のSi、Mnの原料粉を組み合わせて配合するよりも、目標成分と同じ成分を持った単一の鉄系Si−Mn合金粉を予め用意し、これをSi、Mnの原料として配合する方がワイヤ中のフラックス成分の偏析を防止し、フラックス充填率を安定にした。
【0011】
なお、本発明のシームレスフラックス入りワイヤに含有させる鉄系Si−Mn合金粉は従来一般的に用いられているシリコマンガン(JIS G2304−1986)の組成に比較して、Si及びMnの含有量が格段に少なく、Fe成分が多い組成のものである。すなわち、Si、Mnの品位が低く、その粒径もフラックス中に十分に均一分散できるものに限定したことにより、ワイヤ中のSi、Mnの偏析が殆ど認められなくなった。フラックス中にSiとMnを含む粒子が均一に分布し、しかもその粒子毎のSiとMn含有量の関係が一定であることは、溶接金属の機械的性質や水平すみ肉溶接用ワイヤにおけるスラグ被包性を良好にした。一方、鉄系Si−Mn合金粉のFe成分の含有量が多いことは、溶接性能に対して最適なSi、Mnやスラグ形成剤などの含有量のワイヤ組成のままでフラックス充填率を高くすることを可能にし、溶着速度やアーク安定性の向上という効果をもたらした。
【0012】
Niの原料粉としては、従来からJIS規格に規定されたフェロニッケル粉、またはNi粉などが一般的に用いられている。本発明のシームレスフラックス入りワイヤは上記限定した単一の鉄系Si−Mn−Ni合金粉を含有させることを基本とする。これによりフラックス中のSi、Mn及びNiの関係にばらつきがなくなり、溶接金属の機械的性質が安定した。
【0013】
次に、図3に模式的に拡大して示したようなワイヤ長手方向断面の観察で見られる外皮部1の肉厚減少部分5やフラックス原料粉6が外皮部に噛み込んだ部分7は、フラックス部が伸線加工の進行に伴ない外皮部から連続的な押し圧力を受け、順次圧縮され堅く締まった状態となり、フラックス原料の個々の粒子の自由な移動が妨げられ、外皮部の延びに対するフラックス部の追従性を保持出来なくなったことによって生じる。このような外皮部肉厚の変化は、フラックス充填率が高くなる程、また金属粉の含有量が多くなる程生じやすくなる。
【0014】
これに対し、本発明のシームレスフラックス入りワイヤに含有させる鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉はワイヤ製造過程の伸線加工中に破砕しやすく、フラックス部の追従性を良好にして外皮部肉厚の変動をなくすように働く。上記鉄系合金粉のこのような好ましい特性は特にSiの下限をC、Mnとの関係で規制した組成のものに限定することにより得られる。すなわち、上記鉄系合金粉はいずれも組成的に非常に脆く、しかも、個々の粒子には原料粉製造過程の通常の機械的粉砕で与えられた衝撃により微小な亀裂(ひび割れ)を生じているものが多く、これらが伸線加工中に破砕しやすくしている。
【0015】
図4に本発明のシームレスフラックス入りワイヤを伸線加工の中間段階で採取して観察したワイヤ長手方向断面のフラックス充填状態を模式的に示した。外皮部肉厚の均一性は良好で、フラックス原料の噛み込みは見られない。フラックス部2に分布する鉄系Si−Mn合金粉(または鉄系Si−Mn−Ni合金粉)8(拡大図)に注目すると、その大部分の粒子が細かく破砕された状態、或いは粒子に亀裂が見られ、この鉄系合金粉の良好な破砕性が外皮部1の伸びに対するフラックス部2の追従性を良好にして外皮部肉厚を均一にするように作用する。
【0016】
すなわち、フラックス充填後、一般にダイス群あるいはロール群により伸線加工されるが、ワイヤが縮径される毎にフラックス部は押し圧力を受け、このとき非常に脆い鉄合金粉であればその粒子は押し圧力に抗しきれず破砕される。また、粒子に元々亀裂が入っている原料粉であることは、さらに破砕性に効果的である。伸線加工中、縮径毎にこの破砕挙動が繰り返される結果、鉄合金粉自身及び周囲近傍のフラックス粒子を移動しやすくし、細径段階まで外皮部1の延びに対するフラックス部2の追従性が良好となり、外皮部肉厚の均一性が保たれる。
【0017】
次に、本発明のシームレスフラックス入りワイヤ(図5(b))は、前記各公報の提案に記載された帯鋼の合わせ目のシーム溶接に係わる問題点を解決するために実質的に非磁性の鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉を含有させる。上記鉄系合金粉は前記のようにMnを少なくしてFe成分の含有量を多くした組成のものがあればフラックス充填率を高めることができ、溶接性能面から好ましい。しかし、上記鉄合金粉においてMnを減少(Fe成分の増加)するにともない伸線加工中の破砕性が劣化する。
【0018】
これに対し、本発明のシームレスフラックス入りワイヤはSiを積極的に含有させた鉄系Si−Mn合金粉あるいは鉄系Si−Mn−Ni合金粉を含有させることによって、上記鉄系合金粉のMnの含有量が少ない組成のもであっても伸線加工中の破砕性を改善することに成功した。一方、上記鉄系合金粉はSiの増加によって磁性が生じてくるので、図1に示したように破砕性と非磁性化の両面からSiの含有量をCとMn(またはC、MnとNi)との関係において制約した組成ものにすることによって良好なシーム溶接が可能となり、フラックス入りワイヤとしての溶接性能も向上した。なお、図1中、実線で囲まれた領域はCが0.40%の場合、一点鎖線で囲まれた領域はCが0.60%の場合、破線で囲まれた領域はCが1.20%の場合にそれぞれ可能なSiとMnの範囲を示したものである。
【0019】
鉄系Si−Mn合金粉あるいは鉄系Si−Mn−Ni合金粉にNを添加することにより伸線加工中の破砕性及びシーム溶接性を良好にすることができる。これは上記鉄系合金粉に添加したN自体による破砕性の向上効果と、またNはその鉄系合金粉の非磁性化を促進するように作用するため、破砕性に有効なC及びSiの含有量の上限を拡大できることによる。
【0020】
なお、前記特公平4−62838号公報及び特開平5−31594号公報には非磁性でFe成分の多いFe−Mn系合金粉を用いたシームレスフラックス入りワイヤが記載されている。しかし、その実施例からも明らかなようにフラックス入りワイヤに必要な所定量のSiは別種の原料粉から含有させるものであり、本発明のシームレスフラックス入りワイヤのように単一の鉄系Si−Mn合金粉を含有させるものではない。また、軟鋼外皮を用いたシームレスフラックス入りワイヤに必須のSi、Mnのワイヤ中の偏析防止及びワイヤ製造過程の伸線加工中の破砕性改善を含めた溶接性能の向上については記載されていない。
【0021】
以下に、本発明のフラックス入りワイヤに用いる鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の限定理由について説明する。
Cは鉄系Si−Mn合金粉の伸線加工中の破砕性及び非磁性化にも有効に作用する成分である。上記鉄系合金粉のCが0.40%未満では伸線加工中に破砕しにくく外皮部肉厚が不均一になりやすく溶接作業性が劣化する。一方、上記鉄系合金粉のCが1.20%を超えても鉄合金粉の伸線加工中の破砕性及び非磁性化に対する効果は殆ど変わらず、ワイヤのC含有量が過剰になりスパッタ発生や溶接金属の強度過大や靱性低下などの悪影響を及ぼすので上限を1.20%に限定した。なお、鉄系Si−Mn−Ni合金粉においては、Niにより破砕性及び非磁性化が促進されるので、Cの下限を0.30%にまで拡大することが出来る。
【0022】
Siはフラックス入りワイヤの脱酸剤及び合金剤としての役割以外に、鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の伸線加工中の破砕性を良好にするために不可欠で、5%以上必要である。Siが5%未満では伸線加工中の破砕効果が充分に発揮されず外皮部肉厚が不均一になる。一方、Siが12%を超えても伸線加工中の破砕性に対する効果は殆ど変わらないことと、ワイヤのSi含有量が過剰になり溶接金属の強度過大や靱性低下の原因となるので上限を12%に限定した。
【0023】
鉄系Si−Mn合金粉の場合、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn(▲1▼式)を満たす組成であれば、原料粉の製造過程の通常の粉砕工程で与えられる衝撃により大部分が粒子状に粉砕され、かつ、個々の粒子には亀裂(ひび割れ)が生じるようになり、伸線加工中の破砕効果が発揮できるので外皮部肉厚が不均一にならず、アークが安定しスパッタ発生量も少ない。
【0024】
他方、鉄系Si−Mn合金粉が非磁性であるためには、Si≦8.3C+0.14Mn(▲2▼式)により規制される。つまり、C、Mn増加は上記鉄系合金粉のオーステナイト化傾向を高めるが、Siはフェライト形成能が高い成分であり磁性化の方に働く。この▲2▼式を満たすSiの範囲においては、フェライト量が殆ど消失し、振動試料型磁力計により測定した比透磁率(μ)が1.10以下となった。比透磁率(μ)が1.10以下という値は磁性を僅かに帯びる性質を有する限界値であって実質的に非磁性と言える。前記帯鋼の合わせ目のシーム溶接をともなうフラックス入りワイヤの製造方法に用いてもシーム溶接部に溶接欠陥が全く発生しないで、断線がなく良好な生産性とともにスパッタの多発やアーク状態に変動のない優れた溶接性能が得られる。
【0025】
Mnは脱酸剤及び合金剤として含有させるが、鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の伸線加工中の破砕性及び非磁性化のために19%以上必要である。Mnが42%を超えても伸線加工中の破砕性及び上記鉄系合金粉の非磁性化への効果が変わらないことと、上記鉄合金中のFe成分を多くして高充填率のシームレスフラックス入りワイヤの設計が可能となるように上限を42%に限定した。
【0026】
Nは鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の伸線加工中の破砕性及び非磁性化を促進する成分であり、0.0030%以上含有させるが、0.0600%を超えるとワイヤの持つ全N量が過剰となり、溶接金属の靱性が低下する。
なお、溶接金属の衝撃靱性への悪影響を考慮し、上記鉄系合金粉のN、その他のフラックス原料や外皮金属の成分としてのN、また製造過程のシーム溶接時に混入しワイヤ中に残留する空気によるNなどからなる全N量はワイヤ全重量に対して0.0050%以下にすることが好ましい。
【0027】
Niは特に溶接金属の強度及び低温靱性向上に効果的な成分である。上記限定した鉄系Si−Mn合金粉にNiを30%以下の範囲で含有させた鉄系Si−Mn−Ni合金粉は伸線加工中の破砕性が良好で、かつ、実質的な非磁性化も確保出来る。これを含有させたシームレスフラックス入りワイヤは外皮部肉厚の均一性及び帯鋼の合わせ目のシーム溶接性が良好であることを確認した。
【0028】
なお、Niは鉄系合金粉の伸線加工中の破砕性及び非磁性化にも有効に作用し、上記鉄系Si−Mn合金粉において破砕性が良好になるために規制した▲1▼式は、Si≧11.89−2.92C−0.077Mn−0.062Ni(▲3▼式)となり、また、非磁性化のために規制した▲2▼式は、Si≦8.3C+0.14(Mn+Ni)(▲4▼式)となり、Si量の範囲を拡大できる。
鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の残部は、実質的にFeからなる。このFe成分はフラックス中に鉄粉を含有させてフラックス充填率を高めた場合と同様に溶着速度やアーク安定性の向上効果をもたらす。
【0029】
以上、本発明のシームレスフラックス入りワイヤに含有させる鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の成分限定理由を述べたが、これら鉄系合金粉に伸線加工中の破砕性に効果を示すP(溶接金属を脆化させる危険性があるので、0.4%以下が好ましい)、また通常の溶接金属の脱酸あるいは機械的性質の調整成分としてのAl、Ti、B、Mo、Cr、V及びNbなどを鉄系合金粉の伸線加工中の破砕性及び非磁性化を損なわない範囲で含有させることが出来る。また、上記鉄系合金粉のHについては溶接金属の耐割れ性の面からできるだけ少ない方が良い。Sは溶接金属の耐割れ性や機械的性質には少ない方がよいが、水平すみ肉溶接におけるスラグ剥離性やビード形状の改善には積極的な少量添加が有効である。
【0030】
鉄系Si−Mn合金粉及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉の粒径は212μm以下に限定した。粒径が212μm以下の細粒であれば、フラックス中に粒子が充分均一に分布しフラックス成分の偏析防止に効果的で、溶接時のSi、Mnの作用及び溶接金属への歩留りが安定する。また、このような細粒にまで粉砕することによって、個々の粒子に鉄系合金粉の製造時の機械的粉砕による衝撃によって十分な亀裂(ひび割れ)を与えることが出来るようになり伸線加工時の破砕性が良好になる。一方、粒径が212μmを超えて粗粒のものを含有させた場合、フラックス中に粒子を充分に均一に分布させることが出来ずSi、Mn、Niが偏析しやすくなる。また伸線加工の縮径1回毎の破砕効果が小さくなり、フラックス部の追従性が不充分で外皮部肉厚の不均一が生じやすくなる。なお、粒径212μm以下において、仕上がりワイヤ径、充填フラックス中の含有量及びフラックス充填率、充填時のフラックス供給方法などを考慮して最適な粒径のものを選択することが好ましい。
【0031】
本発明によるシームレスフラックス入りワイヤは、上記限定した鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉を、ワイヤ成分として必要なSi、Mnの所定量を満足するように含有させるが、伸線加工中の破砕効果により外皮部肉厚の均一化を図るためには概略、フラックス中に10%以上配合することが好ましい。この場合、ワイヤ成分として必要なSi、Mn及びNiの所定量の大部分を前記限定した鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉から含有させ、他の種類のSi、Mn及びNiの非磁性原料粉の少量を合わせて用いたフラックス入りワイヤ、鉄系Si−Mn合金粉と鉄系Si−Mn−Ni合金粉の両方を用いたフラックス入りワイヤにおいても本発明の効果は充分に発揮できる。
【0032】
本発明によるシームレスフラックス入りワイヤは、鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉以外に、TiO2 、SiO2 、ZrO2 、MgO及びAl23 などのスラグ形成剤、NaやKなどのアーク安定剤、Al、Mgなどの脱酸剤など通常使用されている非磁性の原料粉をフラックス入りワイヤの用途に応じて含有する。フラックス充填率は重量%で10〜25%の範囲が好ましい。フラックス充填率が10%未満では目的とする溶接性能や高溶着性が得られにくく、一方、25%を超えると外皮部の肉厚が薄くなり過ぎて細径化が困難となる。鋼製外皮は、フラックス充填後の伸線加工性の点からフラックス入りワイヤに一般的に用いられている軟鋼が好ましいが、C、Si、Mnの調整やAl、Ti、B、Ni、Moなどを含む合金鋼を用いることも可能である。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
表1に示した軟鋼製帯鋼を管状体に成形する段階でフラックスを供給した後、管状体の相対するエッジ面を高周波誘導加熱によりシーム溶接して、引き続き連続的にロール群によりワイヤ径3.5mmまで縮径し、銅めっき処理した。以後、孔ダイス群により伸線を行い、表3に示したシームレスフラックス入りワイヤ(記号:B1〜B13、ワイヤ径1.2mm)を試作した。シーム溶接は入熱量140KVA、周波数520kHz、溶接速度30m/min、また加工硬化緩和のための中間焼鈍はワイヤ径10.7mmと3.5mmで実施した。表2にフラックスに配合した鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉を示した。
【0034】
【表1】
Figure 0003652499
【0035】
【表2】
Figure 0003652499
【0036】
【表3】
Figure 0003652499
【0037】
表4にシーム溶接時の管状体エッジ面へのフラックスの磁着状況、試作ワイヤの長手方向断面の観察結果及び溶接試験結果を示した。外皮部肉厚の均一性は、図3に要領を示したようにワイヤ長さ20mm(任意の連続しない3箇所から採取)について連続的に50倍で写真撮影し、この観察写真を用いて平均的な肉厚T1に対する肉厚が最も薄くなっている部分の肉厚T2の比率(T2/T1の最小値)によって評価した。フラックス原料の噛み込みについても同様にT1とT2を測定し、(T2/T1)が0.90よりも小さいときにフラックス原料の噛み込み発生有りとした。
【0038】
【表4】
Figure 0003652499
【0039】
溶接作業性試験は下向溶接と水平すみ肉溶接でアーク状態を観察し、下向溶接でスパッタ発生量を測定した。溶接条件は溶接電流270A、アーク電圧31V、溶接速度40cm/min、チップ・母材間距離25mm、シールドガスはCO2 ガス(流量20L/min)で行った。溶着金属試験はJIS Z 3313に準じて行った。溶接条件は溶接電流270A、アーク電圧31V、溶接速度30cm/min、チップ・母材間距離25mm、シールドガスはCO2 ガス(流量20L/min)で行った。
【0040】
試作ワイヤはB1〜B3及びB7からB13が全姿勢用ワイヤ、B4〜B6がすみ肉用ワイヤである。本発明による全姿勢用ワイヤおよびすみ肉用ワイヤは、いずれも外皮部肉厚の変動が小さく、アークが安定し、スパッタ発生量も少ない。 これに対し、比較例のB7及びB13は、鉄系Si−Mn合金粉(A7)及び鉄系Si−Mn−Ni合金粉(A13)のN量が少ないために安定した伸線加工中の破砕性及び非磁性が得られず、管状体エッジ面へのフラックスの磁着が少し認められ、アーク状態がやや不安定になり、スパッタが増加した。
【0041】
B8は、鉄系Si−Mn合金粉(A8)のNが多すぎるために溶接金属の衝撃靱性が低下した。
B9は、鉄系Si−Mn合金粉(A9)のSiが前記▲1▼式の規制値よりも高すぎるために管状体エッジ面へのフラックスの磁着が多く、アーク状態が不安定になり、スパッタが多発した。
B10は、鉄系Si−Mn合金粉(A10)のSiが前記▲1▼式の規制値よりも低すぎるために伸線加工中の破砕性が不充分なため外皮部肉厚の変動が大きくアーク状態が不安定になり、スパッタが多発した。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤは、組成及び粒径を限定した鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉を含有することによって、ワイヤ中に充填されたフラックス成分の偏析がなく、また、伸線加工中の上記鉄系合金粉の破砕効果により外皮部肉厚を極めて均一に出来るため、安定した溶接金属の機械的性質と共に、アーク状態(溶滴移行性)が安定しスパッタ発生量の低減を含む溶接作業性改善が出来る。さらに、上記鉄合金粉のFe成分の含有量を多くし、かつ非磁性となる組成に限定することは、帯鋼の合わせ目のシーム溶接を伴う高能率な連続的製造方法で製造するシームレスタイプのフラックス入りワイヤの品質を一層高めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を含むシームレスフラックス入りワイヤに含有させた鉄系Si−Mn合金粉の成分限定範囲を示す図である。
【図2】本発明を含むシームレスフラックス入りワイヤにおける外皮部肉厚とスパッタ発生量の関係を示す図である。
【図3】フラックス入りワイヤの長手方向の断面状態例を示す図である。
【図4】本発明のシームレスフラックス入りワイヤのワイヤ方向の断面状態例を示す図である。
【図5】フラックス入りワイヤの断面構造例を示す図である。
【符号の説明】
1 外皮部
2 フラックス部
3 外皮部の隙間
4 シーム溶接部
5 外皮部肉厚の減少部分
6 フラックス原料
7 フラックス原料の噛み込み部分
8 鉄系Si−Mn合金粉または鉄系Si−Mn−Ni合金粉

Claims (2)

  1. 重量%で、
    C:0.40〜1.20%、
    Si:5〜12%、
    Mn:19〜42%、
    N:0.0030〜0.0600%、
    残部Feからなり、かつ、
    Si≧11.89−2.92C−0.077Mn、及び
    Si≦8.3C+0.14Mnを満たし、
    粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn合金粉を含み、比透磁率(μ)≦1.10の原料粉からなるフラックスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤ。
  2. 重量%で、
    C:0.30〜1.20%、
    Si:5〜12%、
    Mn:19〜42%、
    N:0.0030〜0.0600%、
    Ni:30%以下、
    残部Feからなり、かつ、
    Si≧11.89−2.92C−0.077Mn−0.062Ni、及び
    Si≦8.3C+0.14(Mn+Ni)を満たし、
    粒径が212μm以下の鉄系Si−Mn−Ni合金粉を含み、比透磁率(μ)≦1.10の原料粉からなるフラックスを鋼製外皮内に充填してなることを特徴とするガスシールドアーク溶接用シームレスフラックス入りワイヤ。
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