JP3689415B2 - バレル、バレルめっき装置及び液排出具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バレル、バレルを備えたバレルめっき装置及びバレル内の液を排出するための液排出具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、微小なめっき対象物にめっきをする際は、めっき対象物をバレル(筒状容器)に収容した後、そのバレルをめっき液中に浸漬させてめっきを行っていた(例えば特許文献1参照)。そして、バレルの壁部には、バレルの内外でめっき液が出入りするための孔やスリットが多数形成されている。あるいは、バレルの壁部をメッシュで構成している。なお、孔(スリット、メッシュ)の大きさは、めっき対象物が孔(スリット、メッシュ)からバレル外に抜け出ないような大きさに設定する必要がある。
【0003】
【特許文献1】
特開2002−241997号公報(第3頁、第5図)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のバレルでは、孔又はスリットをドリルやレーザにより穿設していたため、孔又はスリットの大ききをミクロンオーダ(0.001mmオーダ)まで小さくすることができないという問題があった。このことは、バレルの壁部をメッシュで構成した場合も同様である。
【0005】
バレルの孔(スリット、メッシュ)の大ききをミクロンオーダまで小さくすることができないと、めっき対象物がミクロンオーダの微小物である場合は、めっき対象物がバレルの孔(スリット、メッシュ)からバレル外に抜け出てしまう。また、孔やスリットを、ドリルやレーザにより穿設する作業は、大変手間がかかるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、めっき液が出入するための孔の大きさをミクロンオーダまで小さくすることができるバレルを提供することを課題とする。また、本発明は、容易に製作することができるバレルを提供することを課題とする。さらには、かかるバレルを備えたバレルめっき装置、及びバレル内の液を排出するための液排出具を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明に係るバレルは、めっき対象物を収容して、めっき液中に浸漬されるバレルであって、熱可塑性プラスチック原料を焼結し、多孔質体として成型したことを特徴とする。
【0008】
このように構成されたバレルは、熱可塑性プラスチック原料を焼結することにより、多孔質体として成型されるので、めっき液が出入するための孔の大きさを、ミクロンオーダまで小さくすることができる。したがって、めっき対象物がミクロンオーダの微小物である場合でも、めっき対象物がバレルの孔からバレル外に抜け出ることがない。また、めっき液が出入するための孔をドリルやレーザにより穿設する作業が不要になるので、バレルの製作が容易になる。なお、焼熱可塑性プラスチック原料としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂粉末を用いることができる。
【0009】
また、本発明に係るバレルめっき装置は、請求項1に記載されたバレルと、前記バレルをその軸心線回りに回転させる回転機構と、前記バレル内に前記めっき対象物と接触可能に配置される陰極と、前記陰極と対向して配置される陽極とを備え、前記回転機構により前記バレルを回転させながら、前記陰極と前記陽極との間を通電して前記めっき対象物を電解めっきするように構成したことを特徴とする。
【0010】
このように構成されたバレルめっき装置は、めっき液が出入するための孔の大きさがミクロンオーダのバレルを備えているので、ミクロンオーダの微小なめっき対象物を電解めっきするのに適している。
【0011】
また、本発明に係る液排出具は、請求項1に記載されたバレル内の液を排出するための液排出具であって、前記バレルを保持するバレル保持部と、前記バレル保持部と連通する液排出口とを備え、吸引具により前記液排出口から前記バレル内の液を吸引するように構成したことを特徴とする。
【0012】
このように構成された液排出具は、めっき後に、バレル保持部でバレルを保持した状態で、吸引具により液排出口からバレル内の液を吸引することにより、バレル内の液を素早くかつ容易に排出することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係るバレル、バレルめっき装置及び液排出具の一実施の形態について、適宜図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
まず、バレル10を含むバレルめっき装置1について、図1及び図2を参照して説明する。参照する図面において、図1は、バレルめっき装置1を示す部分破断側面図である。また、図2は、図1に示したバレルめっき装置1のバレル10付近を拡大して示す部分破断側面図である。
【0015】
(バレルめっき装置1)
図1に示すバレルめっき装置1は、めっき対象物Tを収容するバレル10、バレル10を保持するバレル保持具20、バレル保持具20を回転自在に保持するパイプ30、バレル保持具20をその軸心線回りに回転させる回転機構40、パイプ30及び回転機構40を支持する支持板50、バレル10内に配置される陽極60及び陰極球70、めっき液Lを貯水するめっき液槽80を備えている。以下、バレルめっき装置1の各部について詳細に説明する。
【0016】
(バレル10)
バレル10は、上端が開放された、底部を有する円筒状に形成されている。また、バレル10の上端部には、めっき後に、後記する液排出具90(図3及び図4参照)により保持された際に、バレル保持部91の係止部91aと係止するための鍔部10bが形成されている。
【0017】
また、バレル10は、バレル保持具20と着脱自在に構成されており、めっき時には、バレル保持具20により保持される。そして、めっき前とめっき後は、バレル保持具20からバレル10を取り外して、バレル10内にめっき対象物Tを収容する、又はバレル内に収容されているめっき対象物Tを取り出す。なお、バレル10内に収容されるめっき対象物Tとしては、例えば、ICチップ,抵抗,コンデンサ等の電子部品、セラミック,ガラス繊維,樹脂等からなる微細機械部品、微小な粉体等がある。
【0018】
このバレル10は、熱可塑性プラスチック原料を焼結することにより、多孔質体として成型されている。熱可塑性プラスチック原料としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂粉末を用いることができる。このバレル10によれば、めっき液出入用の孔の大きさをミクロンオーダまで小さくすることができるので、めっき対象物Tがミクロンオーダの微小物である場合でも、めっき対象物Tがバレル10の孔からバレル10外に抜け出ることがない。また、孔をドリルやレーザにより穿設する作業が不要となるので、バレル10の製作が容易になる。
【0019】
また、バレル10は多孔質体であるので、その内壁は滑らかである。したがって、めっき対象物Tがミクロンオーダの微小物である場合でも、めっき対象物Tがバレル10の内壁に引っかかることがない。なお、従来のバレルでは、めっき対象物がミクロンオーダの微小物である場合は、めっき対象物がバレルの内壁の凹凸にひっかかるという問題があった。電解めっきでは、めっき対象物は陰極と常に接している必要があるので、バレルの内壁の凹凸にめっき対象物が引っかかると、通電が途切れ、めっき不良の原因となる。この問題点は、本実施形態に係るバレル10では解決されている。
【0020】
(バレル保持具20)
バレル保持具20は、両端が開放された円筒状に形成されている。また、バレル保持具20の側部には、バレル10から溢れためっき液Lをめっき液槽80に排出するための開口部20aが複数形成されている。なお、この開口部20aは、めっき時に発生したガスをバレル10外に排出する役割も果たす。このバレル保持具20は、上端部20bが、パイプ30に外嵌され固定されたリング31と係止することにより、パイプ30に回転自在に保持されている。なお、リング31は、パイプ30にネジ等により固着されている。また、バレル保持具20の上端部20bは、後記する回転機構40のギア43にネジ等により固着される。
【0021】
(パイプ30)
パイプ30は、中空の棒状に形成されており、支持板50により支持されている。なお、パイプ30は支持板50を貫通している。このパイプ30は、例えば銅やステンレス等の通電性を有する金属であり、その外面には、絶縁のためのテフロン(R)コーティングがなされている。そして、パイプ30の上端部30aには、図示しない陽極電源に接続される接続部32がネジ等により固着されている。つまり、このパイプ30は、接続部32を介して図示しない陽極電源と接続している。また、パイプ30の下端部30bは、バレル10内に位置している。
【0022】
(回転機構40)
回転機構40は、モータ41、モータ41の回転軸41aに取着されたギア42、ギア42と噛み合うギア43から構成されている。モータ41は、支持板50にネジ等により固着されている。また、ギア43は、パイプ30に回転自在に外嵌されている。この回転機構40によれば、モータ41を駆動し、モータ41の回転軸41aの回転を、ギア42を介してギア43に伝達してギア43を回転させることにより、ギア43に固着されたバレル保持具20を回転させることができる。なお、ギア43と支持板50との間には、ギア43を支持するためのリング44が設けられる。リング44は、パイプ30に外嵌され、パイプ30にネジ等により固着されている。
【0023】
(支持板50)
支持板50は、例えばアクリル板からなり、直方体状に形成されている。支持板50の下端部50aには、支持板50をめっき液槽80の上縁80aに取り付けるための取付部51がネジ等により固着されている。取付部51は、めっき液槽80の上縁80aと係合する係合部51aと、係合部51aをめっき液槽80の上縁80aに固定するためのネジ51bとを有している。この支持板50は、取付部51により、めっき液槽80に貯水されためっき液Lの上方に突出するように、水平面に対して約45°の角度で傾斜した状態でめっき液槽80に取り付けられている。
【0024】
(陽極60)
陽極60は、図2に示すように、例えば銅やニッケル等からなり、両端が開放された略円筒状に形成されている。つまり、陽極60の内部には通路60aが形成されており、この通路60aはパイプ30の中空部30cと接続している。この陽極60は、パイプ30の下端部30bに固着され、バレル10内において、陰極球70と対向して配置される。
【0025】
(陰極球70)
陰極球70は、図2に示すように、バレル10の底部に、めっき液Lに全浸漬され、バレル10の底部に収容されためっき対象物Tと接触可能な状態で配置される。この陰極球70は、絶縁被覆された陰極線71と接続している。そして、陰極線71は、陽極60の通路60aとパイプ30の中空部30cとを貫通して、図示しない陰極電源と接続している(図1参照)。
【0026】
(めっき液槽80)
めっき液槽80は、図1に示すように、例えば透明なアクリル板からなる水槽である。このめっき液槽80には、例えば銅イオンやニッケルイオン等の金属イオンを含んだめっき液Lが貯水される。
【0027】
以上のように構成されたバレルめっき装置1により、めっき対象物Tのめっきを行う際は、めっき液槽80に貯水されためっき液L中にめっき対象物Tを収容したバレル10を浸漬させた状態で、モータ41を駆動して、バレル保持具20と共にバレル10を回転させる。そして、図示しない電源装置により、パイプ30の下端部30bに取着された陽極60と、バレル10内に配置された陰極球70との間を通電して、バレル10に収容しためっき対象物Tを電解めっきする。
【0028】
次に、めっき後に、バレル10内のめっき液Lを排出するための液排出具90について、図3〜図5を参照して説明する。参照する図面において、図3は、液排出具90及びその周辺を示す斜視図である。また、図4は、図3に示した液排出具90を拡大して示す破断斜視図である。また、図5は、液排出具90を水槽120に取り付けた状態を示す斜視図である。
【0029】
図3及び図4に示す液排出具90は、めっき後に、バレル10に収容されているめっき対象物Tを取り出すために、バレル10内のめっき液Lを排出するための治具である。液排出具90は、上端が開放された、底部を有する円筒状に形成されており、内部にバレル10を保持するためのバレル保持部91が形成されている。なお、バレル保持部91は、図4に示すように、バレル10を保持した際に、バレル10の底部10aと、バレル保持部91の底部91aとの間に空間ができるように形成されている。
【0030】
また、バレル保持部91の上端には、バレル10の鍔部10bと係止するための係止部91bが形成されている。また、液排出具90の底部には、アスピレータ100と接続されたチューブ110が挿入される液排出口92が形成されている。なお、アスピレータ100とチューブ110は、[特許請求の範囲]における「吸引具」に相当する。
【0031】
そして、バレル10内のめっき液Lを排出するときは、液排出具90のバレル保持部91aにバレル10を挿入した後、アスピレータ100を動作させ、液排出口92からバレル10内の液を吸引することにより、バレル10内のめっき液Lを排出する。このようにすることにより、バレル10内のめっき液Lを素早くかつ容易に排出することができる。
【0032】
この液排出具90は、図5に示すように、水槽120に取り付けて使用することもできる。その場合、液排出具90は、水槽120内の底部120aに固定される。また、水槽120の底部120aには、液排出具90の液排出口92と連通する第1の液排出路121が形成されており、第1の液排出路121の出口はチューブ110と接続している。そして、水槽120の底部120aには、水槽120内に溢れた液体(めっき液L)を排出するための第2の液排出路122が形成されおり、第2の液排出路122の出口には、コック123が設けられている。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらのような実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく限りにおいて、種々の変形が可能である。
【0034】
例えば、本実施形態では、バレル10を円筒状に形成したが、バレル10の形状は、多角筒状等の他の形状に形成しても構わない。その場合、液排出具120のバレル保持部91は、バレルの外形の形状と略同一の形状に形成される。また、陽極60をバレル10の内部に配置したが、バレル10は壁部に形成された孔を介してバレル10の外部と通電可能なので、陽極60はバレル10の外部に配置することもできる。さらに、本実施形態では、電解めっきを行う場合について説明したが、本発明に係るバレル10は無電解めっきを行う場合にも使用することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、めっき液が出入するための孔の大きさをミクロンオーダまで小さくすることができるバレルを提供することができる。また、本発明は、容易に製作することができるバレルを提供することができる。また、かかるバレルを備えたバレルめっき装置、及びバレル内の液を排出するための液排出具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】バレルめっき装置1を示す部分破断側面図である。
【図2】図1に示したバレルめっき装置1のバレル10付近を拡大して示す部分破断側面図である。
【図3】液排出具90及びその周辺を示す斜視図である。
【図4】図3に示した液排出具90を拡大して示す破断斜視図である。
【図5】液排出具90を水槽120に取り付けた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 バレルめっき装置
10 バレル
20 バレル保持具
30 パイプ
40 回転機構
50 支持板
60 陽極
70 陰極球
80 めっき液槽
90 液排出具
91 バレル保持部
92 液排出口
100 アスピレータ
110 チューブ
120 水槽
T めっき対象物
L めっき液
Claims (3)
- めっき対象物を収容して、めっき液中に浸漬されるバレルであって、熱可塑性プラスチック原料を焼結し、多孔質体として成型したことを特徴とするバレル。
- 請求項1に記載されたバレルと、
前記バレルをその軸心線回りに回転させる回転機構と、
前記バレル内に前記めっき対象物と接触可能に配置される陰極と、
前記陰極と対向して配置される陽極とを備え、
前記回転機構により前記バレルを回転させながら、前記陰極と前記陽極との間を通電して前記めっき対象物を電解めっきするように構成したことを特徴とするバレルめっき装置。 - 請求項1に記載されたバレル内の液を排出するための液排出具であって、
前記バレルを保持するバレル保持部と、
前記バレル保持部と連通する液排出口とを備え、
吸引具により前記液排出口から前記バレル内の液を吸引するように構成したことを特徴とする液排出具。
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