JP3689138B2 - 椅子座部の傾斜調節及びロック機構 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、椅子の傾斜調節及びロック機構に関する。本発明は特に、ペデスタル形オフィス用椅子の使用者操作式座部傾斜調節及びロック機構に関する。
【０００２】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
本発明者の知るかぎり、ペデスタルベース形椅子の座部の傾斜具合を非常に迅速且つ容易に調節し、ロックできる装置が存在せず、本発明の目的は、使用者が迅速且つ容易に操作できる座部傾斜調節及びロック機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、ペデスタルベース形椅子の傾斜調節機構において、ペデスタルベースに取り付けられている椅子調節ハウジングが前フランジ部分を備えた椅子座部支持部材を回動自在に支持し、椅子座部支持部材の前フランジ部分は複数の横方向に離隔したタブを有し、椅子調節ハウジング内には横方向に可動の前停止部材が椅子座部支持部材の前フランジ部分に隣接して収納保持されており、横方向に可動の前停止部材は、下側の組の横方向に離隔した支承面と、該支承面により分離された上側の組の横方向に離隔した支承面とを有し、前停止部材を横方向に移動させて、上側の組の横方向に離隔した支承面又は下側の組の横方向に離隔した支承面のいずれかを前フランジ部分の複数の横方向に離隔したタブと横方向に整列させてこれらと接触させる手段と、前フランジ部分の複数の横方向に離隔したタブを前停止部材の上側の組の横方向に離隔した支承面又は下側の組の横方向に離隔した支承面のいずれかに対してロックする手段とを有することを特徴とするペデスタルベース形椅子の傾斜調節機構にある。
【０００３】
また、本発明の要旨は、回動式椅子座部支持部材を椅子調節ハウジングに対して一定の傾斜位置にロックする機構において、椅子座部支持部材の下側から実質的に下方に延びる一対の互いに離隔したフランジと、椅子調節ハウジングの鉛直側壁の各々に設けられた細長いスロットを通って椅子調節ハウジングの外部から延びる細長いレバー部材とを含み、該細長いレバー部材は、椅子調節ハウジングの鉛直側壁間の中央に位置する回動点の周りに回動でき、レバー部材は、前記一対の互いに離隔したフランジに設けられた２つの鉛直方向に離隔したレバー保持部分のうちいずれか一方に係合して椅子調節ハウジングの周りにおける椅子座部支持部材のそれ以上の回動を阻止するようになっていることを特徴とするロック機構にある。
【０００４】
さらに、本発明の要旨は、椅子調節ハウジングを椅子座部支持部材に回動自在に連結する軸ピンにおいて、一端にフランジを備えた円筒形管状プラスチック製部材と、管状プラスチック製部材内に設けられた状態でその内周面に固着された円筒形管状金属スリーブとから成ることを特徴とする軸ピンにある。
【０００５】
本発明の好ましい実施例を添付の図面を参照して以下に例示的に説明する。
【０００６】
【実施例】
図１及び図２はそれぞれ、本発明の椅子調節機構を備えたツーピース式オフィス用椅子１の等角図及び側面図である。椅子１は、座部２と、支柱５によってペデスタルベース４で支持された、別体ではあるが連結状態にある背もたれ３とで構成され、支柱５は、椅子座部高さの調節機構（図示せず）を内蔵しており、この座部高さ調節機構は、椅子調節ハウジング９の一方の側から延びる座部高さ調節レバー１１によって制御される空気圧シリンダであるのがよい。
【０００７】
本発明の機構の好ましい実施例の説明にあたり、「前」、「後」という用語は、座っている人の下腿及び膝を支える座部２の「前側」、「後側」を意味し、「横」という用語は、座部２の両側部間で座部２を横切って延びる横断面を意味する。
【０００８】
座部２と背もたれ３は共に、織布その他の椅子張り材料６で被覆されていて、射出成形プラスチック製外側シェル７，８に取り付けられた内側ライナ及び内側クッション（図示せず）で構成される。この実施例の座部２は座部支持部材１２に取り付けられ、この椅子座部支持部材１２は支柱５で支持された椅子調節ハウジング９に回動自在に取り付けられている。椅子調節ハウジング９は、後述のバネ、リンク装置及び調節機構を内臓し、これらにより、椅子の座部２及び椅子座部支持部材１２を回動点（pivot point)１０の周りに回動して傾斜させ、そして床及び使用者の作業面に対して所望の所定角度位置にロックできる。
【０００９】
図３及び図４はそれぞれ、本発明の椅子調節機構の好ましい実施例の平面図及び断面図である。図３及び図４に示すように、椅子調節ハウジング９は、鋳造又は打抜きのいずれかが行われた金属で構成され、本質的には、底部１３、一対の互いに平行な直立側壁部１４、長さの短い直立前壁１５及び後壁１６で構成されている。互いに平行な直立側壁部１４はそれぞれ、特徴のある中空のプラスチック製軸ピン又はピボットピン１７を受け入れるよう回動点１０のところに設けられ、これら中空軸ピン１７は側壁部１４を貫通し、そして椅子座部支持部材１２の互いに平行な下向き側部１９に設けられた互いに整列する開口部内に嵌め込まれているプラスチック製ブッシュ１８を貫通する。軸ピン１７は、椅子座部支持部材１２が椅子調節ハウジング９に対して回動する中心となる回動点１０となり、これにより椅子座部２の傾斜度の調節、即ち角度調節が可能になる。
【００１０】
図３及び図４に示すように、椅子座部支持部材１２は必須構成要素として、平らな上方金属プレート部分２０で構成され、パッド入り布張り座部２の下側及び椅子座部２のプラスチック製外側シェル７に取り付けられている。この実施例では、椅子座部支持部材１２は前フランジ２１及び後フランジ２２を備え、これらフランジは椅子支持部材１２を補強すると共に前傾動停止手段及び後傾動停止手段としても役立つ。
【００１１】
椅子調節ハウジング９の側壁１４の間でバネ支持案内部材２３が水平に取り付けられている。バネ支持スリーブ２３を包囲した状態で二重コイルトーションバネ（double coil torsion spring）３０が設けられており、かかるトーションバネ３０は二重バネコイル２４、一対の前方に延びる脚部２５及びバネコイル２４の両方に連結された後方に延びるレバーアーム２６で構成されている。
【００１２】
図２及び図４に示すように、バネ３０の引張力調節ノブ２７が引張力調節ネジ２８に取り付けられており、かかる引張力調節ネジ２８は、椅子調節ハウジング９の底部１３の前に設けられた開口部を貫通し、二重トーションバネ３０の前方に延びる脚部２５の間で上方に延びる。ネジ付きナット組立体２９が、バネ３０の前方に延びる脚部２５の頂部で引張力調節ネジ２８の前端部に締結されている。引張力調節ノブ２７を回すと、二重トーションバネ３０の初期引張力が所望に応じて増減することになる。
【００１３】
図４、図７及び図８に示すように、椅子座部支持部材１２の前フランジ２１は下方に湾曲し、複数の互いに横方向に離隔したタブ３２を備えている。横方向に運動自在な前停止部材３３は、椅子座部支持部材１２に形成された前フランジ２１及びタブ３２に隣接すると共にその真下で椅子調節ハウジング９に取り付けられた案内の中に保持されている。前停止部材３３は、下側の組をなす横方向に互いに離隔した支承面３５で分けられている上側の組をなす横方向に互いに離隔した支承面３４を有する。上側の横方向離隔支承面３４の組は、下側の横方向離隔支承面３５の組よりも高い位置にあり、かかる高さ位置は、本発明を用いて中立の「休息」位置からの椅子座部２の前方傾斜の度合いを決定することになる。
【００１４】
横方向可動の前停止部材３３は、椅子座部支持部材１２の一方の側部に隣接して椅子座部２の下側に取り付けられた傾斜位置選択レバー組立体３６によって案内の中で横方向に運動することができる。図３、図５及び図６に最もよく示されているように、傾斜位置選択レバー組立体３６は、外側ハウジング３７及び内側傾斜位置セレクタ３８で構成されている。内側傾斜位置セレクタ３８はレバー３９の一端と一体であるか、或いはこれに固定されており、外側ハウジング３７に取り付けられた軸ピン４０の周りに回動できる。薄くて細長い板バネ４１の一端が外側ハウジング３７内の固定連結部４２に取り付けられ、その他端は外側ハウジング３７内の回転連結部４３に取り付けられており、この板バネ４１はスライドキャリヤ部材４４のスロット内に嵌まり、かかるスライドキャリヤ部材４４は外側ハウジング３７に形成された案内４５の間を横方向に摺動し、中空のプラスチック製軸ピン１７のうち一つを貫通する円筒形連結リンク部材４７の一端部に固定されている。バネ４１はまた、内側ハウジング３８に形成されている一対のＶ形リテーナ４６の間に嵌まっている。傾斜選択レバー組立体３６及びその構成要素は好ましくは、強化射出成形プラスチックで構成されるが、これらを金属で作ってもよい。
【００１５】
図５及び図６に最もよく示されているように、使用者がレバー３９を動かすと、これに連結されているセレクタ３８が軸ピン４０の周りに回動し、またＶ形リテーナ４６からの圧力により板バネ４１が逆向きに湾曲することになる。板バネ４１の逆向きの動きにより、スロット付きのスライドキャリア部材は横方向に動き、そして連結リング４７を横方向に動かし、その結果前停止部材３３が短い距離に亘って横方向に動く（運動距離は約３／８インチ）。図７及び図８に示すように、前停止部材３８の短い横方向の動きにより、前停止部材３８の下側の組をなす支承面３４または上側の組をなす支承面３５のいずれかが動いて椅子座部支持部材１２の前フランジ２１のタブ３２と横方向に整列するようになる。タブ３２が下側の組をなす支承面３４上に乗ってこれに接触すると、椅子座部２は前方傾斜位置にあり、タブ３２が上側の組を成す支承面３５上に乗ってこれらに接触すると、椅子座部２は図７及び図８に最もよく示すように中立の「休息」位置にあることになる。
【００１６】
上述のように傾斜選択レバー組立体３６の重要な特徴は、レバー３９の操作による連結リンク４７の横方向の運動（この運動は、前停止部材３３の横方向位置を変化させる）が中空軸ピン１７（これはまた、椅子傾斜調節機構の回動点１０である）の軸線を介して行なわれ、椅子を種々の位置に傾動させても位置の変化がないということである。横方向の運動を回動点１０を介して伝えることにより、傾斜選択レバー組立体３６は効率が一層良くなり、製造及び操作の複雑さが軽減される。
【００１７】
本実施例で用いられている中空プラスチック製軸ピン１７は図１０に示されており、一端に円形フランジ５５及び他端に面取り部５６を備えた円筒形管状のプラスチック製部材５４で構成され、また、かかる軸ピン１７はピン１７の外周部を開口部にスナップ止めする係止スナップタブ５９を備えている。円筒形管状金属スリーブ５７が図１０に示すように、管状金属スリーブ５７の両端にわたって延びるプラスチック製管状部材５４の各端部の部分によって管状プラスチック製部材５４内に設けられた状態でその内周面に固着される。管状金属スリーブ５７は、摺動連結リンク４７の保持支承面として役立つだけではなく、椅子座部２及び使用者の重量を支える軸ピン１７の強度を増す。
【００１８】
上述のように傾斜選択レバー組立体３６を用いて使用者によって選択された傾斜位置を、図３及び図４に最もよく示されているロック機構によって定位置に固定できる。椅子座部支持部材１２の必須構成要素である平らな上方金属プレート部分２０は、その下側から実質的に下方に延びる一対の互いに離隔したフランジ４８を有する。固定レバー４９が椅子調節ハウジング９の外部から椅子調節ハウジング９の鉛直側壁１４の各々に設けられた細長いスロット５０を通って延びている。この実施例の固定レバー４９はハンドルが付いていて、固定レバー４９が椅子調節ハウジング９の鉛直側壁１４の各々の細長いスロット５０を貫通する横断面において細長い、または平らにされている短い部分５８を備える円筒形ロッドである。スロットは好ましくは、固定レバー４９の横断面部を収容すると共に、確実な「スナップ止め」作用を発揮するような形になっており、かかるスナップ止め作用により使用者はロック機構が働いたことが容易に分かるようになる。固定レバー４９は、椅子調節ハウジング９の直立側壁１４の間で中央に位置する回動軸５１を中心として前後に回動できる。使用者により固定レバー４９を少し回動させると、レバーロッド４９は互いに離隔しているフランジ４８の各々のスロット５２に係合するか、或いはこれらフランジ４８の各々の底端部５３に係合するが、それにより、使用者が固定レバー４９をスロット５２または底端部５３から離脱させるまで、回動点１０周りの椅子座部支持部材１２の回動が阻止される。固定レバー４９がスロット５２内にあると、椅子座部２は上述の中立の「休息」位置に固定され、固定レバーがフランジ４８の底端部５３に接触した状態にあるときには、椅子座部は上述の前方傾斜位置に固定されることになる。リテーナ部材６０が固定レバー４９を椅子調節ハウジング内に保持し、これを回動点５１の頂部に心出し状態に保つよう用いられる。
【００１９】
本発明の椅子傾斜調節機構を用いると、椅子に座っている人は、接近容易で便利な２つのレバーを用いて、座部を中立の「休息」位置から前方傾斜位置へ、或いはその逆に、迅速且つ容易に動かすことができ、また椅子を選択された傾斜位置に固定することができる。
【００２０】
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の椅子調節機構を備えたツーピース式オフィス用椅子の等角図である。
【図２】図１に示すツーピース式オフィス用椅子の側面図である。
【図３】本発明の椅子調節機構の好ましい実施例の平面図である。
【図４】図３に示すIV-IV 線における本発明の椅子調節機構の断面図である。
【図５】本発明の前方傾斜調節機構を、座部を「休息」位置にした状態で示す平面図である。
【図６】本発明の前方傾斜調節機構を、座部を「前方傾斜」位置にした状態で示す平面図である。
【図７】前傾斜停止組立体を、座部を「休息」位置にした状態で示す正面図である。
【図８】前傾斜停止組立体を、座部を「前方傾斜」位置にした状態で示す正面図である。
【図９】前傾斜停止部材の等角図である。
【図１０】本発明の椅子調節機構の好ましい実施例で用いられた特徴のある中空軸ピンの拡大断面図である。
【符号の簡単な説明】
１ ペデスタルベース形椅子
２ 座部
４ ペデスタルベース
９ 椅子調節ハウジング
１２ 椅子座部支持部材
１７ 軸ピン
２１ 前フランジ
３３ 前停止部材
３９ レバー部材

Claims (6)

1. ペデスタルベース形椅子（１）の傾斜調節機構において、
   ペデスタルベース（４）に取り付けられている椅子調節ハウジング（９）が前フランジ部分（２１）を備えた椅子座部支持部材（１２）を回動自在に支持し、
   椅子座部支持部材（１２）の前フランジ部分（２１）は複数の横方向に離隔したタブ（３２）を有し、
   椅子調節ハウジング（９）内には横方向に可動の前停止部材（３３）が椅子座部支持部材（１２）の前フランジ部分（２１）に隣接して収納保持されており、
   横方向に可動の前停止部材（３３）は、下側の組の横方向に離隔した支承面（３４）と、該支承面により分離された上側の組の横方向に離隔した支承面（３５）とを有し、
   前停止部材（３３）を横方向に移動させて、上側の組の横方向に離隔した支承面（３５）又は下側の組の横方向に離隔した支承面（３４）のいずれかを前フランジ部分（２１）の複数の横方向に離隔したタブ（３２）と横方向に整列させてこれらと接触させる手段（３６）と、
   前フランジ部分（２１）の複数の横方向に離隔したタブ（３２）を前停止部材（３３）の上側の組の横方向に離隔した支承面（３５）又は下側の組の横方向に離隔した支承面（３４）のいずれかに対してロックする手段（４９、５１、５２、５３）とを有することを特徴とするペデスタルベース形椅子（１）の傾斜調節機構。
2. 前停止部材（３３）を横方向に移動させる前記手段（３６）は、椅子座部（２）の下側に取り付けられたレバー部材（３９）を有することを特徴とする請求項１の傾斜調節機構。
3. 前停止部材（３３）を横方向に移動させる前記手段（３６）は、レバー部材（３９）により横方向に移動されて前停止部材に当接する連結リンク部材（４７）であり、連結リンク部材（４７）は、椅子調節ハウジング（９）を椅子座部支持部材（１２）に回動自在に連結する一対の中空軸ピン（１７）のうち一方のボアを貫通していることを特徴とする請求項２の傾斜調節機構。
4. レバー部材（３９）は、バネ（４１）押し式であることを特徴とする請求項２の傾斜調節機構。
5. バネ（４１）は、椅子座部支持部材（１２）の一方の側に隣接して椅子座部（２）の下側に取り付けられている外側ハウジング（３７）内に収納された回動自在なセレクタ（３８）内に設けられていることを特徴とする請求項４の傾斜調節機構。
6. 前フランジ部分（２１）の複数の横方向に離隔したタブ（３２）を前停止部材（３３）の上側の組の横方向に離隔した支承面（３５）又は下側の組の横方向に離隔した支承面（３４）のいずれかに対してロックする前記手段は、
   椅子座部支持部材（１２）の下側から実質的に下方に延びる一対の互いに離隔したフランジ（４８）と、
   椅子調節ハウジング（９）の外部から該椅子調節ハウジング（９）の鉛直の各側壁（１４）に設けられた細長いスロット（５０）を貫通する細長いレバー部材（４９）とより成り、
   該細長いレバー部材（４９）は、椅子調節ハウジング（９）の鉛直側壁（１４）間の中央に位置する回動点（５１）の周りに回動でき、
   該細長いレバー部材（４９）は、前記一対の互いに離隔したフランジ（４８）に設けられた２つの鉛直方向に離隔したレバー保持部分（５２、５３）のうちいずれか一方に係合して椅子調節ハウジング（９）の周りにおける椅子座部支持部材（１２）のさらなる回動を阻止するようになっていることを特徴とする請求項１の傾斜調節機構。

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