JP3688864B2 - 自動車用空気清浄器のエアインテーク構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車室内の空気を清浄化するため、車室後部のリヤパーセルシェルフに組付けられる自動車用空気清浄器のエアインテーク構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用空気清浄器の中には、例えば特開平4−222615号公報、特開平4−131115号公報等に示されているように、ケース内にファンと隣接してフィルターを横置きに配置して、ケース高さを極力小さくして車室内の上下方向の設置スペースを可及的に狭められるようにしたものが知られている。
【0003】
前述のファンとしては、ケース上壁に設けた吸気口から取り入れた空気の軸方向流成分を径方向流成分に変換する周方向に複数枚のブレードを備えた遠心式多翼ファンが用いられ、該遠心式多翼ファンをスクロール室に配設して吸入空気をこのスクロール室の通路断面積の小さなスクロール入口部から、通路断面積の大きなスクロール出口部へ流通させることによって圧力を増大させ、該スクロール出口部から隣接するフィルター室へ流入させるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
遠心式多翼ファンの場合、各ブレード間から流出する風速分布がブレードの下側が上側よりも風速が大きくなる分布となることから、ブレードの上側で乱流が発生し、騒音の発生原因となるばかりでなくファン効率が低下してしまう。
【0005】
このようなことから、図5に示すようにスクロール室30の上壁内面(31)をスクロール入口部側からスクロール出口部側に亘って全体的に遠心式多翼ファン32の各ブレード33間から流出する空気流Aの吹出し角度と略同一の角度θ1 で急傾斜して形成することにより、該空気流Aの整流作用を行わせるようにしたものが知られている(特開平5−302600号公報参照)。
【0006】
ところが、このようにスクロール室30の上壁内面31をスクロール室30のスクロール入口部側からスクロール出口部側に亘って全体的に前記角度θ1 で急傾斜して形成した場合、スクロール室30内には図5の矢印で示すように角運動量保存の法則にもとづいて各ブレード33間から流出する空気流Aと逆向きの2次渦aが発生し、これら空気流Aと2次渦aとの衝突によって運動量の損失が生じてしまうことは否めない。
【0007】
そこで、本発明はファン騒音が少なく、かつ、運動量の損失を可及的に抑制することができる遠心式多翼ファンを備えた自動車用空気清浄器のエアインテーク構造を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にあっては、ケースの上壁に形成した吸気口の下側に周方向に複数枚のブレードを有する遠心式多翼ファンを配設したスクロール室を設け、前記遠心式多翼ファンにより吸気口から吸い込んだ空気をスクロール室を経由して、スクロール出口部から該スクロール室に隣設したフィルター室に流入させるようにした自動車用空気清浄器のエアインテーク構造において、前記スクロール室の上壁内面を、スクロール入口部側の上壁内面を前記遠心式多翼ファンの各ブレード間から流出する空気の吹出し角度に略沿って急傾斜して形成すると共に、スクロール出口部側の上壁内面が前記角度よりも緩やかな角度の傾斜面となるように、漸次緩傾斜に徐変させて形成したことを特徴としている。
【0009】
【発明の効果】
通路断面積が小さくかつファン回転に伴う騒音発生の傾向が高いスクロール室のスクロール入口部側では、該スクロール室の上壁内面を遠心式多翼ファンの各ブレード間から流出する空気の吹出し角度と略同一の角度で急傾斜して形成してあるため、該吹出し空気流の整流作用が得られて騒音を低減することができる。
【0010】
一方、このようにスクロール室の上壁内面を各ブレード間から流出する空気の吹出し角度と略同一の傾斜角度とした場合でも、角運動量保存の法則にもとづいて該吹出し空気流と逆向きの2次渦が発生し、吹出し空気流との衝突により運動量の損失が生じるが、スクロール室の上壁内面はスクロール入口部側からスクロール出口部側に至るに従って漸次緩傾斜面となるように傾斜角度を徐変して形成してあるため、スクロール出口部側をスクロール入口部側と同じ急傾斜の上壁内面としたものと較べて、該スクロール出口部側のスクロール室断面積が大きくなって内圧が高められ、前記2次渦との衝突による運動量の損失を可及的に小さくすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0012】
図1〜3において、1は平面略長方形に形成した樹脂製のケースで、アッパケース2とロアケース3とで構成され、これらアッパケース2とロアケース3とをそれらの4隅部でビス等の止着手段で着脱自在に締結固定するようにしてある。
【0013】
アッパケース2の上壁2aには吸気口4と排気口5とを隣接して形成してある。
【0014】
ケース1の前記吸気口4の下側には遠心式多翼ファン11を配設したスクロール室6を形成してある一方、排気口5の下側にはスクロール室6のスクロール出口部8で連通したフィルター室9を形成して、該フィルター室9にフィルター15を横置きに配置し、前記ファン11により吸気口4から吸い込んだ空気をスクロール室6を経由してスクロール出口部8からフィルター室9のフィルター15の下側に流入させ、該フィルター15を通過させて排気口5より排出することにより空気の清浄化作用を行わせるようにしてある。
【0015】
遠心式多翼ファン11は、周方向に列設した複数枚のブレード12と、ブレード上端側に設けられて各ブレード間から流出する空気流Aの吹出し角度に略沿った角度θ1 で傾斜成形したシュラウド13と、該ブレード12の下端側に設けた底部プレート14とを備えている。
【0016】
ケース1の内側にはその一側壁から内側に向けて突出成形されて、前記スクロール室6のスクロール出口部8の一側を構成すると共に、該スクロール室6のスクロール巻き初めとなるスクロール入口部7と、前記フィルター室9とを隔成するノーズ部10を形成してある。
【0017】
ノーズ部10には、その先端からスクロール入口部7の周壁6aの曲面の略延長上に延出するスロープ部16を形成してある。
【0018】
このスロープ部16は漸次高さが低くなる円弧状に形成されて先端がスクロール室6の底面に連なっている。
【0019】
また、該スロープ部16の背面、即ち、フィルター室9側の側面を、弯曲して膨んだ通風ガイド面17として形成してある。
【0020】
更に、ノーズ部10のフィルター室9側の側面には、スロープ部16の通風ガイド面17に連なって棚部18をフィルター室9内に張り出して形成してあり、前記フィルター15の一側部を該棚部18上に載置して、フィルター15をフィルター室9に斜状に載置固定できるようにしてある。
【0021】
一方、前記吸気口4の口縁部は、遠心式多翼ファン11のシュラウド13の内周縁に立上がり形成したフランジ13aを囲繞するベルマウス4aとして形成してあり、このベルマウス4aに続くスクロール室6の上壁内面19は、スクロール入口部7側の上壁内面19aをシュラウド13と略同じ角度θ1 で急傾斜して形成すると共に、スクロール出口部8側の上壁内面19bの傾斜角度θ2 が緩やかになるように、該上壁内面19bに至るに従って漸次緩斜面に徐変させて形成してある。
【0022】
図中、20はフィルター室15の一側に設けたフィルター挿入口で、常態にあっては図外の着脱自在なリッドで閉塞されるもので、該挿入口20の一側部には前記棚部18と共働してフィルター15の一側部を定置する支持座21を形成してある。
【0023】
以上の実施形態の構造によれば、ノーズ部10の先端に延設したスロープ部16は、スクロール入口部7の周壁6aの曲面の略延長上に延出してあって、漸次高さが低くなる円弧状に形成されて先端がスクロール室6の底面に連なるように形成してあるため、スクロール出口部8は実質的に該円弧状のスロープ部16によってスクロール室6のスクロール出口部8の近傍の奥部から徐々に開口が絞られるようになり、該スクロール出口部8とフィルター室9との連通部分で圧力の急激な変化が抑制される。
【0024】
しかも、スロープ部16のフィルター室9側の側面は弯曲して膨んだ通風ガイド面17として形成してあるため、スクロール出口部8の一側では該スクロール出口部8からフィルター室9に流入する空気流が、図1の矢印で示すようにこの通風ガイド面17の弯曲面に沿って流れるようになって、ノーズ部10の背面の下流側で乱流が発生することがなく、従って、この乱流の発生に起因する空気流の剥離現象が生じるのを回避することができる。
【0025】
この結果、前述のスクロール出口部8での急激な圧力変化を抑制できることと相俟って騒音を著しく低減することができて、品質感および信頼性を一段と高めることができる。
【0026】
また、この実施形態によれば、フィルター15の一側部を定置する棚部18は、スロープ部16の通風ガイド面17に連なってフィルター室9内に張り出して形成してあるため、専用のフィルターサポート部材をフィルター室9に設けるものと異なり、前記棚部18がスクロール出口部8からフィルター室9に流入してくる空気流の通気抵抗および乱流発生源となることがなく、従って、風量の低下や騒音の発生を伴うことなくフィルター15を確実に定置固定することができる。
【0027】
ここで、前述の遠心式多翼ファン11を配設したエアインテーク部分では、通路断面積が小さくファン回転に伴う騒音発生の傾向が高いスクロール室6のスクロール入口部7は、その上壁内面19aを遠心式多翼ファン11の各ブレード12間から流出する空気流Aの吹出し角度と略同一の傾斜角度θ1 で急傾斜して形成してあるため、該吹出し空気流の整流作用が得られて騒音を低減することができる。
【0028】
一方、このようにスクロール室6のスクロール入口部7側の上壁内面19aを各ブレード12間から流出する空気流Aの吹出し角度と略同一の傾斜角度θ1 とした場合でも、角運動量保存の法則にもとづいて該吹出し空気流Aと逆向きの2次渦aが発生し、吹出し空気流Aとの衝突により運動量の損失が生じるが、スクロール室6の上壁内面19はスクロール入口部7側からスクロール出口部8側に至るに従って漸次緩傾斜面となるように傾斜角度θ1 からθ2 へと徐変させて形成してあるため、図3の鎖線で示すようにスクロール出口部8側をスクロール入口部7側と同じ急傾斜の上壁内面19bとしたものと較べて、該スクロール出口部8側のスクロール室断面積が大きくなって内圧が高められるから、前記2次渦aとの衝突による運動量の損失を可及的に小さくすることができる。
【0029】
なお、図4に示すようにスクロール出口部8側の上壁内面19bを傾斜の途中から平坦に、即ち、傾斜角度を0にするようにしても騒音の上昇を伴うことなく前述と等価の効果を奏せられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を示す分解斜視図。
【図2】同実施形態のアッパケースを下側から見た斜視図。
【図3】同実施形態のエアインテーク部分の断面図。
【図4】本発明の第2実施形態のエアインテーク部分の断面図。
【図5】従来のエアインテーク構造を示す部分断面図。
【符号の説明】
1 ケース
4 吸気口
6 スクロール室
7 スクロール入口部
8 スクロール出口部
9 フィルター室
11 遠心式多翼ファン
12 ブレード
19 スクロール室の上壁内面
19a スクロール入口部側の上壁内面
19b スクロール出口部側の上壁内面
Claims (1)
- ケース(1)の上壁(2a)に形成した吸気口(4)の下側に周方向に複数枚のブレード(12)を有する遠心式多翼ファン(11)を配設したスクロール室(6)を設け、前記遠心式多翼ファン(11)により吸気口(4)から吸い込んだ空気をスクロール室(6)を経由して、スクロール出口部(8)から該スクロール室(6)に隣設したフィルター室(9)に流入させるようにした自動車用空気清浄器のエアインテーク構造において、前記スクロール室(6)の上壁内面(19)を、スクロール入口部(7)側の上壁内面(19a)を前記遠心式多翼ファン(11)の各ブレード(12)間から流出する空気の吹出し角度に略沿った角度θ1 で急傾斜して形成すると共に、スクロール出口部(8)側の上壁内面(19b)が前記角度(θ1 )よりも緩やかな角度(θ2 )の傾斜面となるように、漸次緩傾斜に徐変させて形成したことを特徴とする自動車用空気清浄器のエアインテーク構造。
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