JP3687877B2 - イオン注入機用プラテン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、半導体集積回路の製造に際する半導体シリコンウェーハの保持に用いられる遠心締着方式のプラテンに関し、特にイオン注入工程において用いられるプラテンに関する。
【0002】
【従来技術】
半導体ウェーハの処理工程において、導電性を変化させる不純物を半導体ウェーハに導入するためにイオン注入機が使用されている。
また、搬送系から搬送されてきたウェーハを保持し、注入位置へウェーハをセットする保持板として、プラテンが使用されている。
この場合、イオン注入機中でイオンビームをウェーハに打ち込む際に発生する熱により、フォトレジスト層が劣化することを防ぐために、ウェーハを100℃以下に冷却する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、プラテン中に冷媒を循環させて冷却することが一般的に行われているが、ウェーハとプラテン界面の熱伝導率が真空中では極端に低下しているため、そのままではウェーハを効率よく冷却することができない。
そこで、物理的接触を良くする目的でプラテン表面に熱伝導性ポリマーを使用することが提案され、実用化されている。具体的には、米国特許第4139051号明細書において粘着性不活性ポリマー薄膜が提案されており、米国特許第428292号明細書には熱伝導性シリコーラバー層が提案されている。
【0004】
一方、プラテンへのウェーハの保持方法としては周縁締着リングによりウェーハ周縁部上面にリングを設置して保持する方法が実用化されているが、この方法ではウェーハ周縁部が半導体デバイスとして利用できないという問題がある。
そこで、周縁締着リングを排除しウェーハ全面を利用する保持方法として遠心締着が実用化されている。この方法では、ウェーハはプラテン上に保持されたまま回転軸の回りに回転する。プラテン表面には、遠心力プラテン表面に対してウェーハを押圧するように働くような角度が回転軸に対して付けられている。
【0005】
上記の遠心締着及び熱伝導性ポリマー層を利用する技術は米国特許第4832781号明細書に開示されており、何れもウェーハを保持、冷却するのに非常に有効である。
しかしながら、上記熱伝導性ポリマー層として熱伝導性シリコーンラバーを使用した場合には、イオン注入後にウェーハと熱伝導性シリコーンラバー表面が強固に密着して剥がれなくなり、無理に剥そうとした場合にウェーハが割れるという問題が指摘されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この問題は、歩留まりとスループットを早くすることが重要な半導体製造プロセスでは大きな問題であり、解決が望まれていた。
従って本発明の目的は、イオン注入処理中にウェーハに発生する熱を十分に冷却してレジスト層を保護することができる上、イオン注入処理後にウェーハと熱伝導性シリコーンゴム表面が強固に密着することなく、安定して使用することのできる、遠心締着方式のイオン注入機用プラテンを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の目的は、プラテン用の金属製ベース上に、表面にシボ模様を有する熱伝導性シリコーンゴムシートをシリコーンゴム層として湿気硬化型又は付加硬化型シリコーンゴム系接着剤を用いて張り合わせてなる、又は、その表面にシラン系若しくはチタン系プライマーを介して載せられた未硬化の熱伝導性シリコーンゴム組成物のプレフォームがシボ模様を有する金属表面を有する熱プレスにより一体成形された、表面に前記シボ模様が転写されたシリコーンゴム層を設けてなる、遠心締着方式のプラテンであって、前記シリコーンゴム層のJIS−A型硬度計で測定した硬度が50−83の範囲であり、かつ熱伝導率が1.0×10−3cal/cm・sec・℃以上であると共に、該シリコーンゴム層表面に、遠心締着力でウェーハが十分に接触する如く、高さが30−140μmのシボ模様が形成されてなることを特徴とするイオン注入機用プラテンによって達成された。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を参照しながら詳述する。
図1は本発明のプラテンの構造図である。図において、符号1はプラテン、2は熱伝導性シリコーンゴム層、3はプラテンベース、4は熱交換器、5は半導体ウェーハである。
金属製のプラテンベース3の表面には熱伝導性シリコーンゴム層2が形成されており、半導体ウェーハ5は熱伝導性シリコーンゴム層2の上に保持される。さらに、プラテンベース3の下面には冷媒循環式の熱交換器4が設置されており、イオン注入によってウェーハに発生する熱を冷却する仕組みになっている。
【0009】
金属製のプラテンベース3の素材としてはアルミニウム、ジュラルミンなどが使用される。また、プラテンベース3の表面は、遠心力がプラテン表面に対してウェーハを押圧するように、回転軸に対して角度が付けられている。
熱伝導性シリコーンゴム層2の表面には、図2に示すようにシボ模様が形成されており遠心締着前後では、1)図のように凹凸によりウェーハ裏面との接触面積が小さくなっているので容易に剥離できるが、遠心締着中(イオン注入中)には、遠心締着力により熱伝導性シリコーンゴム層2の表面の凹凸が弾性変形し、2)図のように変形してウェーハ裏面との接触面積が大きくなるので、界面接触熱抵抗が十分に低下し、ウェーハを効率良く冷却できる。
【0010】
熱伝導性シリコーンゴム層2のシボ模様の断面形状は、図3に示されているように、遠心締着前後ではウェーハとの接触面積は小さく、遠心締着中は、凹凸の弾性変形により十分に接触できる形状となっている。シボ模様の凹凸のさは、Rmax2〜200μm、特に5〜150μmの範囲が好適である。μm未満では遠心締着後のウェーハとの接触面積を十分小さくすることができないので、ウェーハの剥離が困難となる場合があり、200μmを越えると遠心締着力によるゴム表面の弾性変形が不十分となり、ウェーハとの接触熱抵抗を十分に小さくすることができないので、ウェーハの冷却効果が低下し、ウェーハ温度が上昇して一定温度に制御できなくなり、レジスト層の劣化などが発生するので集積回路製造の歩留まりが悪くなる。
【0011】
また、熱伝導性シリコーンラバー層2の平均膜厚は50〜1000μm、特に100〜500μmの範囲であることが好ましい。50μm未満では膜強度が不足するので耐久性が悪くなり、1000μmを越えると熱抵抗が大きくなるので、ウェーハの冷却効率が低下し、ウエハ温度が上昇して一定温度に制御できなくなる。
【0012】
熱伝導性シリコーンゴム層2に使用されるシリコーンゴム組成物は、硬化前の性状としてはミラブルタイプ、液状タイプの何れのものも使用可能であり、硬化形態としては過酸化物硬化型、付加反応硬化型、縮合硬化型、紫外線硬化型などの各種硬化型のものが使用できる。シート成形性及び作業性の観点から、ミラブルタイプの過酸化物硬化型または付加反応硬化型のものが好適である。
【0013】
また、上記シリコーンゴム組成物に高熱伝導性を付与するためのフィラーとしては、アルミナ粉、窒化アルミ粉、窒化ホウ素粉、窒化珪素粉、酸化マグネシウム粉、シリカ粉などの、高熱伝導性セラミックス粉が好適である。上記フィラーの配合量は0.001cal/cm・sec・℃以上、好ましくは0.002cal/cm・sec・℃以上の熱伝導性を付与するのに必要な量である。熱伝導率が0.001cal/cm・sec・℃未満では、ウエハの冷却効率が低いのでウェーハ温度が上昇して一定温度に制御できなくなり、レジスト層の劣化などが発生するので集積回路製造の歩留まりが悪くなる。
【0014】
さらに、上記シリコーンゴム組成物の硬化後の硬度は10〜90(JIS−A)の範囲であることが好ましいが、特に、30〜70の範囲であることが好ましい。10未満ではゴム強度が不足するために耐久性が悪くなる場合があり、90を越えると遠心締着力により弾性変形が小さくなるので十分な接着面積が得られなくなる。従ってこの場合には、ウェーハの冷却効果が低下しウェーハ温度が上昇して一定温度に制御できなくなるので、レジスト層の劣化などが発生し、集積回路製造の歩留まりが悪くなる。
【0015】
熱伝導性シリコーンゴム層2を金属製のプラテンベース3の表面に形成する方法としては、熱伝導性シリコーンゴムのシートを金属製のプラテンベースに公知の湿気硬化型や付加硬化型シリコーンゴム系接着剤を用いて張り合わせる方法、または、金属製プラテンベース表面にシラン系又はチタン系プライマーを塗布し、その上に未硬化の熱伝導性シリコーンゴム組成物のプレフォームを載せ、熱プレスにより一体成形する方法を用いる。更に熱伝導性シリコーンゴム層2の表面にシボ模様を形成する方法としては、図4に示すように、金属表面をエッチング加工、放電加工、電鋳、鋳造等により処理し、上記熱伝導性シリコーンゴムを熱プレス成形する際に、金属表面のシボ模様が熱伝導性シリコーンゴム表面に転写されるようにすればよい。
【0016】
【発明の効果】
本発明の遠心締着方式のイオン注入機用プラテンは、熱伝導率が高いので、真空中における半導体ウェーハへのイオン注入時に発生する熱をプラテンベースを介して放熱することができる上、シリコーンゴムの硬度が適当であると共に、その表面にシボ模様があるので、処理前後におけるウェーハのプラテン上への脱着が容易であり、集積回路ウェーハ製造の歩留まりを大巾に改善することができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
実施例1〜4
下記A〜Fより選ばれる原材料を使用して表1に示す実施例1〜4のシリコーンゴム組成物を配合し、シート状のプレフォームを作製した後に、プレス圧力5kgf/cm2 、170℃で30分間プレス成形を行った。次に、オーブン中で200℃、24時間のポストキュアを行い、シートを作製した。
【0018】
A:ジメチルシロキサン単位99.85モル%及びメチルビニルシロキサン単位0.15モル%から成る平均重合度8,000のメチルビニルポリシロキサン
B:ジ−t−ブチルパーオキサイド
C:アルミナ粉(AL24:昭和電工(株)製商品名)
D:窒化アルミ粉(XUS−35548:ダウケミカル(株)製商品名)
E:窒化ホウ素粉(KBN−(h)10:信越化学工業(株)製商品名)
F:シリカ粉(クリスタライトVX−5:龍森(株)製商品名)
得られたシートの硬度、シボ模様、表面粗さ、熱伝導率、シート厚みを測定した結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
尚、熱伝導率は、直径50mm、厚さ9mmのテストサンプルを上部ヒーター板(低温側)と下部ヒーター板(加熱側)の間に圧着し、温度が一定になったところで、放熱シリコーンゴム両面間の温度差及び熱流速を測定し、次式により算出した。
λ=(Q/A)×(L/ΔT)
Q=伝熱量(cal/sec)
λ=熱伝導率(cal/(cm・sec・℃))
A=試験片の断面積(cm2
L=試験片の厚さ(cm)
ΔT=試験片両面間の温度差(℃)
【0021】
アルミニウム製プラテンベース(φ200、回転軸に垂直な平面に対する傾斜角度=7°)に、湿気硬化型シリコーン系接着剤KE45(信越化学工業株式会社商品名)を膜厚が10μmとなるようにスクリーン印刷法で塗布した後、真空圧着機により表1に示した熱伝導性シリコーンシートを真空下で張り合わせ、大気下の室温中で7日間放置し、熱伝導性シリコーン層を有するプラテンを製造した。
【0022】
得られたプラテンを遠心締着方式のイオン注入機に取り付け、熱交換器の冷媒として、水道水(20℃)を流した。遠心締着回転数が1,500rpmで、8インチシリコンウェーハへの入力パワーが3,000w(イオンビーム電流0.05A、イオンビーム加速電圧60keV)の条件でイオン注入を10分間行った結果、ウェーハ温度は表2に示した如く高温にならず、良好であった。更に、イオン注入後のウェーハのプラテンからの剥離を容易に行うことができ、継続してウェーハ5万枚を処理してもウェーハが剥離できないという問題が発生することなく、イオン注入を行うことができた。
【0023】
【表2】
【0024】
比較例1〜
実施例の場合と同様にして、アルミニウム製のプラテンベース(φ200、回転軸に垂直な平面に対する傾斜角度=7°)に、湿気硬化型シリコーン系接着剤KE45(信越化学工業株式会社製)を膜厚が10μmとなるようにスクリーニング印刷法で塗布した後、表3に示した熱伝導性シリコーンシートを真空圧着機により真空下で張り合わせ、大気下の室温中で7日間放置し、熱伝導性シリコーン層を有するプラテンを製造した。
【0025】
【表3】
【0026】
得られたプラテンを遠心締着方式のイオン注入機に取り付け、熱交換器の冷媒として、水道水(20℃)を流した。遠心締着回転数が1,500rpmで8インチシリコンウェーハへの入力パワーが3,000w(イオンビーム電流0.05A、イオンビーム加速電圧60keV)の条件で、イオン注入を10分間行った結果、ウェーハ温度およびウェーハ剥離は表4に示す結果となり、何れも不具合が発生した。
【0027】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【図1】イオン注入機用プラテンの概念図である。
【図2】シリコーンゴム層に形成されたシボ模様の作用効果を説明するための図である。
【図3】シボ模様の例を示す図である。
【図4】シボ模様の成形方法を説明する図である。
【符号の説明】
1 プラテン
2 熱伝導性シリコーンゴム
3 プラテンベース
4 熱交換器
5 半導体ウェーハ
6 金型

Claims (1)

  1. プラテン用の金属製ベース上に、表面にシボ模様を有する熱伝導性シリコーンゴムシートをシリコーンゴム層として湿気硬化型又は付加硬化型シリコーンゴム系接着剤を用いて張り合わせてなる、又は、その表面にシラン系若しくはチタン系プライマーを介して載せられた未硬化の熱伝導性シリコーンゴム組成物のプレフォームがシボ模様を有する金属表面を有する熱プレスにより一体成形された、表面に前記シボ模様が転写されたシリコーンゴム層を設けてなる、遠心締着方式のプラテンであって、前記シリコーンゴム層のJIS−A型硬度計で測定した硬度が50−83の範囲であり、かつ熱伝導率が1.0×10−3cal/cm・sec・℃以上であると共に、該シリコーンゴム層表面に、遠心締着力でウェーハが十分に接触する如く、高さが30−140μmのシボ模様が形成されてなることを特徴とするイオン注入機用プラテン。
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