JP3686986B2 - スレート葺き屋根におけるスレートの固定方法 - Google Patents
スレート葺き屋根におけるスレートの固定方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スレート葺き屋根におけるスレート固定方法およびスレート連結体に関する。
【0002】
【従来の技術】
これまで屋根を葺くのに使用されるスレートは、次の3つの方法によって固定されていた。
(1)図9に示すように、重合されるスレートの下側となる見えない部分を複数個の釘cによってその下側の野地板材dに固定する(在来工法)。
(2)図10に示すように、前記(1)の方法によって固定されたスレートの重合部を釘iによってその下側の野地板材dに固定する(脳天釘打ち工法)。
(3)下側スレートaをJ形の吊り子bとともに釘cによりスレート下側の野地板材dに固定し、上側となる次列のスレートaは下端部をJ形の吊り子bに保持された状態で別のJ形の吊り子bとともに同じく野地板材dに固定する(引っ掛け式の吊り子工法、図11,12参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記第1の在来工法の固定方法では、台風や強風などが吹いた場合、上側のスレートから出ている下側スレートの部分fが、台風や強風などの負圧作用によって浮き上がる方向の力gを受けるため、てこの原理によって応力が集中する上側スレートの下端縁に当たる部分hで破損されたり、スレートを固定している釘cがゆるめられたりする不都合があった。
また、前記第2の脳天釘打ち工法による固定方法では、上側スレートと下側スレートの重合部分を固定している釘iの働きによってスレートが受ける浮き上がり力gは、前記第1の固定方法の場合に比べて軽減されるが、上側スレートと下側スレートの重合部分を固定している釘の頭が外側に露出しているため、釘の頭とスレートとの間の隙間部分から上下のスレートにあけられた下穴j,kと釘iとの隙間部分を通して屋根の内側に雨水が侵入してくるおそれがあり、この対策が大変であった。
【0004】
そして、前記第3の吊り子工法の固定方法では、重合される各スレートaの下端縁はJ形の吊り子bの折り返し部分によって保持されているため、台風や強風などの負圧作用を受けたときにも浮き上がりを防止されるが、吊り子bの厚さのために横に並んだ吊り子b,bの間の上下スレートa,aの隙間部分から吹き上げられた雨水が釘cに沿って屋根の内側に侵入する不都合があった。
また、破損されたスレートaを取り換える場合、J形の吊り子bが釘cの抜き取りを妨げるため、スレートaの取り換えが難しく、取り換え時に余分な手数と費用とがかかっていた。
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたもので、一部を重合されたスレートが台風などの負圧を受けた場合にも破損されにくく、スレート重合部の連結個所から雨水が侵入しないようにするとともに、破損されたスレートの取り換えを容易に行い得るようにしたスレート重合部の挟着連結方法およびそのスレート連結体の提供を目的としたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記目的を達成すべくなされたもので、第1の発明は、野地板材の上に第1列のスレートを並べ、第1列のスレートの上半部に重合して第2列のスレートを並べ、以下同様に一部を重合して配列するスレート葺き屋根において、各スレートの、次列のスレートを重合される位置を、釘によってスレート下側の野地板材に固定し、次列のスレートを重合した後、重合部分に、2枚のスレートを貫通して挟着用の下穴を設け、各下穴の上側から、基端にストッパーを備えたさや材とこのさや材の先端から基端に貫通されて頭部分で係止されるピンとからなるカシメ挟着部材を、頭側から挿入して重合された2枚のスレートの下側に突出し、カシメ挟着部材を上側スレートに押圧した状態でピンの基端突出部を引っ張ることにより、さや材の先端突出部を頭部分で押し拡げてカシメ、継続して加えられるピンへの引っ張り力により、ストッパーより先端側の位置に予め設けられているピンの切り欠きエッジの部分等の破断位置でピンを破断することを特徴とするスレート葺き屋根におけるスレート固定方法である。
【0006】
また、第2の発明は、板材の上に第1列のスレートが並べられ、第1列のスレートの略上半部に重合して第2列のスレートが並べられ、以下同様に一部を重合して配列されたスレート連結体であって、各スレートの、次列のスレートを重合される位置が、釘によってスレート下側の板材に固定され、次列のスレートを重合した重合部分に、2枚のスレートを貫通して挟着用の下穴が設けられ、各下穴に、基端にストッパーを備えたさや材とこのさや材の先端から基端に貫通されて頭部分で係止されるピンとからなるカシメ挟着部材が、頭側から挿入して重合された2枚のスレートの下側に突出され、カシメ挟着部材を上側スレートに押圧した状態でピンの基端突出部が引っ張られることにより、さや材の先端突出部を頭部分で押し拡げてカシメられ、継続して加えられるピンへの引っ張り力により、ストッパーより先端側の位置に予め設けられているピンの破断位置でピンを切断されてなることを特徴とするスレート連結体である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る実施例を図面に基づいて説明する。
図1ないし図8は、本発明の屋根葺きに使用されるスレートを示すものである。
1は屋根葺きなどに使用される平形彩色スレート(以下スレートと略記する)で、このスレート1には方形や亀甲形などの形状のものが用いられる。
スレート1は使用時に一部を重合して配列されるが(図1,図2参照)、重合されたとき下側となる外から見えない部分には、複数個、例えば4個(スレート1の大きさ、形状によって異なる)の釘穴1aが予めあけられている。
1bはスレート1,1の重合部分にあけられる挟着用の下穴で(図4参照)、この下穴1bは1枚のスレート1に対し通常2個ずつあけられる。
釘穴1aと下穴1bは、重合された配列状態で同一直線上に位置しないよう位置決めされるのが好ましい。
【0008】
Aはスレート重合部を連結するカシメ挟着部材で、このカシメ挟着部材Aは、図3に示すように、基端に外側に湾曲する形状のストッパー2aを備えたさや材2と、このさや材2の先端(図の下側)から胴部3bを基端向き(図で上向き)に突出されて頭部分である丸頭3aの部分で係止されるピン3とからなる。
ピン3の丸頭3aの外径はさや材2の外径とほぼ同じ大きさに形成されている。ピン3の胴部3bは2枚のスレートが重ね合わされるスレート重合部から突出する十分な長さを有する他、丸頭3aからの設定された寸法位置に、切り欠きエッジ3cが設けられている。切り欠きエッジ3cは、ピン3に引っ張り力が加わった場合に最も早く破断する破断位置を形成する手段であって、さや材2の下端側をカシメた状態においてもストッパー2aから外側に出ないように位置決めされる。
さや材2とピン3はいずれも金属製で、たとえばアルミニウム、あるいはアルミニュウム合金を用いて作られる。
【0009】
スレート重合部の挟着連結方法は、上記の構成部材を用いて次の手順により行われる。
(1)傾斜した下地板材である野地板材4の上面に、下から順に各スレート1を、列毎に幅の1/2だけ横方向にずらした形で、縦方向の略半部を重合するように配列し、配列する度に各釘穴1aに挿入した釘5により、各スレート1を野地板材4に固定する。
(2)スレート重合部に、挟着用の下穴1bを、重合しているスレート1,1にのみあける。この場合、スレートより下側のアスファルトルーフィングのような下葺材6には穴をあけない。
(3)スレート重合部にあけられた下穴1bの上側から、ストッパー2aの下側にシリコンパッキン7を装着したカシメ挟着部材Aを挿入し、その先端部を下側のスレート1から突出させる(図4,図5参照)。
【0010】
(4)カシメ挟着部材Aのストッパー2aを上側スレート1に押圧した状態で、ストッパー2aより基端側(図で上側)に突出しているピン3の胴部3bを把持して上側に引っ張る(図6参照)。この操作により、下側スレート1から突出しているさや材2の内側にピン3の丸頭3aが引っ張り込まれるため、さや材2の下側突出端は内側から外側に向けて押し拡げる形でカシメられ、下側スレート1の下穴1bとさや材2との間の隙間だけでなく、さや材2の内面とピン3の丸頭3aとの間の隙間部分も確実に塞がれる(図7参照)。
しかも、この操作はさや材2の下側突出端をカシメるだけでなく、上側スレート1に押圧されたさや材2のストッパー2aを押圧してカシメるため、上側スレート1の下穴1bとさや材2との間の隙間も確実に塞がれる。
(5)カシメが終了した後も、ピン3の胴部3bを引っ張り続けると、ピン3はさや材2の内側に位置している破断位置である切り欠きエッジ3cの部分で切断され、それより基端側の胴部3bはさや材2の外側に取り出される(図8参照)。
(6)以上の連結作業を野地板材4の上面に配列されたスレート1の全体について行うと、スレート1による屋根葺きは終了する。
【0011】
スレート1を垂直な壁面等に用いる場合には、下地板材4は垂直方向となり、スレート1の各重合部分を前記手順によって連結していけば、垂直な壁用下地板材にスレート重合部を挟着状態に連結して固定することができる。
【0012】
【発明の効果】
本発明によれば、次に記載するすぐれた効果が得られる。
請求項1に記載の固定方法においては、スレート重合部は上側スレートに押圧されるさや材のストッパーと、ピンの頭により下側スレートにカシメられるさや材の下側突出部とによって挟着状態に連結されるため、連結されたスレートは、従来の脳天釘打ち工法や吊り子工法の場合と異なり、より強固な連板状態となる。
このため、連結されたスレートに台風などの負圧が作用した場合にも、下側スレートは上側スレートの下端縁に応力の集中を受けなくなり、この部分における破損の発生を防止することができる。
しかも、連結されたスレートが連板状態になると、各スレートを固定している釘に作用する負荷も少なくなるため、固定されたスレートがゆるみにくく、スレートが破損して落下するおそれをなくすことができる。
【0013】
また、スレートの下穴とさや材との間の隙間部分は、上側が、押圧によって変形されるさや材のストッパーによって塞がれ、下側が、さや材の突出部分のカシメによって完全に塞がれる他、さや材内部の隙間は、さや材の下側突出端をカシメているピンの頭部分によって塞がれるため、スレート重合部の連結個所からの雨水の侵入を確実に防止することができる。
また、スレートが何らかの原因により破損された場合には、上側スレート上に露出しているストッパー部分からドリルによって切除すると、カシメ挟着部材の残った部分を下穴から容易に除去できるため、破損されたスレートの取り換えも簡単な操作と少ない費用とにより効果的に行うことができる。
その上、スレート重合部の連結に用いるカシメ挟着部材は、スレートを葺いたのちに装着できるため従来用いられていたJ形の吊り子に比べて装着が容易であり、連結に要する時間が従来の場合より格段に短時間でなし得る。
【0014】
請求項2に記載のスレート連結体においては、スレート重合部は、下穴に挿入されるカシメ挟着部材の上下のカシメによって上側スレートと下側スレートとを挟着する形で連結するため、スレート連結体は、従来の場合に比べてより強固な連板状態となる。
それ故、スレート重合部の挟着連結方法について詳述した場合と同じく、スレートの破損や雨水の侵入をより効果的に防止し、破損したスレートの取り換えを少ない手数と費用とにより能率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す縦断面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】カシメ挟着部材の一例を示す縦断面図である。
【図4】スレート重合部の下穴にカシメ挟着部材を挿入する直前の状態を示す縦断面図である。
【図5】カシメ挟着部材の挿入後の状態を示す縦断面図である。
【図6】カシメ挟着部材によるカシメ方を示す縦断面図である。
【図7】カシメ挟着部材によるカシメ状態を示す縦断面図である。
【図8】カシメ挟着部材による連結状態を示す縦断面図である。
【図9】従来のスレートの固定状態を示す断面図である。
【図10】従来の他のスレートの固定状態を示す断面図である。
【図11】従来例のJ形吊り子を用いたスレートの固定状態を示す縦断面図である。
【図12】J形吊り子の取り付け状態を示す平面図である。
【符号の説明】
1 スレート
1b 下穴
2 さや材
2a ストッパー
3 ピン
3a 丸頭
3b 胴部
3c 切り欠きエッジ
4 野地板材
A カシメ挟着部材
Claims (2)
- 下地板材の上に第1列のスレートを並べ、第1列のスレートの略上半部に重合して第2列のスレートを並べ、以下同様に一部を重合して配列するスレート葺き屋根において、
各スレートの、次列のスレートを重合させる位置を、釘によってスレート下側の下地板材に固定し、
次列のスレートを重合した後、重合部分に、2枚のスレートを貫通して挟着用の下穴を設け、
各下穴の上側から、基端にストッパーを備えたさや材とこのさや材の先端から基端に貫通されて頭部分で係止されるピンとからなるカシメ挟着部材を、頭側から挿入して、重合された2枚のスレートの下側に突出し、
カシメ挟着部材を上側スレートに押圧した状態でピンの基端側突出部を引っ張ることにより、さや材の先端突出部を頭部分で押し拡げてカシメ、
継続して加えられるピンへの引っ張り力により、予め切り欠きエッジを形成するなどして設けられているピンの破断位置でピンを破断することを特徴とするスレート葺き屋根におけるスレート固定方法。 - 板材の上に第1列のスレートが並べられ、第1列のスレートの略上半部に重合して第2列のスレートが並べられ、以下同様に一部を重合して配列されたスレート連結体であって、
各スレートの、次列のスレートを重合される位置が、釘によってスレート下側の板材に固定され、
次列のスレートを重合した重合部分に、2枚のスレートを貫通して挟着用の下穴が設けられ、
各下穴に、基端にストッパーを備えたさや材とこのさや材の先端から基端に貫通されて頭部分で係止されるピンとからなるカシメ挟着部材が、頭側から挿入して重合された2枚のスレートの下側に突出され、
カシメ挟着部材を上側スレートに押圧した状態でピンの基端突出部が引っ張られることにより、さや材の先端突出部を頭部分で押し拡げてカシメられ、
継続して加えられるピンへの引っ張り力により、予め設けられているピンの破断位置でピンを切断されてなることを特徴とするスレート連結体。
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