JP3686965B2 - 断熱防水工法及び断熱塗料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の防水断熱工法及びこの工法に使用する断熱塗料に関する。
【0002】
【従来の技術】
建物内部の居住環境を考慮すると、外気温の変動に左右されない内部環境が快適であり、即ち夏は涼しく、冬は暖かく過ごせる室内が理想的であるといえる。このため、建物を建築する時には、屋根部の内側に合成樹脂成形フォーム材、合成樹脂吹付けフォーム材、グラスウール材などを配置施工することが行われており、建物内部の断熱処理工法であることから、内断熱と言われている。
【0003】
内断熱工法は、断熱に対して相応の効果があるものの、以下の様な欠点を有する。
建物内部への工事となるため、建物新築時には工事が容易であるが、既設の建物への工事は大掛かりとなり、居住者への負担が大きい。
また、屋上スラブに大きな熱応力がかかり、その結果スラブにひび割れが発生しやすく、漏水等の原因になる。
【0004】
このため、建物の外側、即ち屋根部のスラブ上層に断熱層を施工する、外断熱工法が開発されている。外断熱工法であれば、新築時の工事は無論のこと、既設建物への施工も、外部の工事であるため、居住者への負担は最小限に抑えられるという利点がある。また、建物外部への断熱層の施工には、同時に防水層の施工も必要となり、断熱と防水の2層を組み合わせて施工される事が必要となる。シラスバルーンを主材とした断熱塗材について特開平6−100796号に開示されている様に、信頼性の高い断熱塗料の開発はなされている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、九州鹿児島県地方、沖縄県地方などでは、年間の降雨量が多く、かつ太陽の直射光線も激しいため、建物の断熱性への要求は高く、かつ長期にわたって断熱性、防水性が維持できる信頼性の高さが求められている。
【0006】
そこで本発明においては、外断熱工法の利点を生かし、更なる断熱性能の向上と、防水性能、断熱性能の長期にわたる性能維持が可能な、高い信頼性を有する工法、及びその工法に使用する塗料の開発を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決せんとして、本発明者は鋭意研究の結果、次のような工法及び塗料を開発したものであり、その要旨は以下の通りである。
建物の屋上、ベランダ、屋根部等への断熱防水工法であって、
1)プライマーの塗布
2)骨材の無機発泡粒からなり当該骨材の8割以上の粒度分布が0.6〜4.75mmの範囲にある無機発泡粒の表面を磁器質のスキン層で覆った高強度無機発泡粒を含む断熱塗料の塗布
3)防水塗料の1回以上の塗布
4)上塗塗料の塗布
を順次施工する事を特徴とする断熱防水工法。
骨材の無機発泡粒からなり当該骨材の8割以上の粒度分布が、0.6〜4.75mmの範囲にある無機発泡粒の表面を磁器質のスキン層で覆った高強度無機発泡粒を含み、混和液と、前記高強度無機発泡粒との混合比が、1:0.5〜1:3.0(質量比)であり、その他充填材を含むことを特徴とする断熱塗料。
以下に詳細に説明する。
【0008】
まず本発明の断熱防水工法を、順を追って説明する。本発明は、コンクリート建物のルーフバルコニー等の陸屋根、スレート屋根、金属屋根、ベランダ、開放廊下等への施工が可能である。まず、施工面にあるゴミ、苔、砂礫等を除去して表面を清浄にし、プライマーを塗布する。プライマーは、以下に説明する断熱塗料を施工面に付着させるために必須である。本発明の断熱塗料を付着するものであれば特に制限はないが、無機系のシリコン樹脂エマルジョン、 アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル樹脂エマルジョン等が例示できる。
これらは塗装に適当な粘度に水等で希釈して使用するのが一般的である。
【0009】
プライマーは、刷毛、ローラー、スプレー等の方法で塗布される。塗布量としては、0.1〜0.3kg/m2が適当である。0.1kg/m2未満の塗布量であると下記する断熱塗料の基材への付着性が十分ではなく、断熱塗料が剥離してしまう虞が生じる。0.3kg/m2を超えて塗装しても、付着性は変化せず、余計なコストがかかり不利である。
【0010】
次に、プライマーが乾燥したら、断熱塗料を塗布する。断熱塗料は、高強度無機発泡粒を含むことを必須とする。高強度無機発泡粒とは、骨材の8割以上の粒度分布が、0.6〜4.75mmの範囲にある無機発泡粒の表面を磁器質のスキン層で覆ったものである。骨材の粒度とは、骨材の大小粒の混合割合をいい、当該粒度の測定は、通常、JIS A 1102(骨材のふるい分け法)により、所定の各種寸法のふるいで骨材試料のふるい分けを行い、各ふるいを通過する試料の重量百分率、あるいは、ふるいにとどまる試料の重量百分率で、その結果を表す。前記粒度分布は、骨材の80%以上が0.6〜4.75mmの粒度範囲内にあることを意味し、ここに、骨材の例としては、パーライト(真珠岩)、ひる石などが挙げられ、当該骨材による無機発泡粒の例としては、膨張スラグ、パーライト、ひる石を焼成・膨張させたもの、砕石状にしたけつ岩(頁岩)、あるいは、けつ岩・フライアッシュ・粘土などを球状に成形したものを、それぞれ1000−1200℃の温度で焼成・膨張させたもの等が挙げられ、その内部には微少な独立した気泡が無数に分布しており、スキン層はガラス質鉱物とカオリナイト(Al2O3・2SiO2・2H2O)含有鉱物とを主原料として用いて形成される。無機発泡粒を、上記スキン層で覆われた高強度無機発泡粒とするには、例えば無機発泡粒を焼成することにより達成される。粘土は、磁器、土器、陶器及びせっ器に分類され、陶磁器をその質により分類すると、磁器質、半磁器質(硬質陶器)、陶器質、せっ器質になる。磁器質は、長石、石英及び粘土の共融によるガラス相が生成されているものである。ガラス質鉱物とは、石英、長石、雲母などからなる鉱物で、実際の原料は、花崗岩、風化花崗岩で、これらは概ね石英が40%、長石が55%、雲母が5%の割合からなっている。カオリナイト含有鉱物は、鉱物上のカオリナイトの他、加水ハロイサイト、デッカイト、ナクラナイト等を主体とする鉱物を含んでおり、又、カオリン鉱物を主体とする粘土までも含んで総称される。実際の鉱物としては、チャイナグレー、ジョージアクレー等のクレー類、礬土頁岩、蛙目粘土などが挙げられる。上記粒度範囲において、十分な断熱効果を得る等のためには、8割以上の粒度分布が、0.6〜4.75mmの範囲にあることが必要で、又、粒径が0.6mm未満のものを使用した場合、十分な断熱効果が得られない虞れがあり、4.75mmを超えるものを使用した場合、断熱塗料の塗布量によっては塗布面が凹凸になってしまう虞れがあり、好ましくない。断熱塗料を構成する、他のものとしては、混和液、充填材等が必要である。混和液は酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル共重合樹脂エマルジョン等を使用することができ、充填材としてはセメント、硅砂、 体質顔料、顔料等を使用することができる。その他必要に応じて、各種添加剤等を使用することも可能である。
【0011】
断熱塗料は、塗装の直前に、混和液と充填材を混合し、その混合液に高強度無機発泡粒を混合する。混和液と、前記高強度無機発泡粒との混合比は、混和液:高強度無機発泡粒=1:0.5〜1:3.0(質量比)であることが望ましい。1:0.5より高強度無機発泡粒の混合割合が小さいと、断熱効果が十分ではなく、1:3.0より高強度無機発泡粒の混合割合が大きくても、高強度無機発泡粒の添加に比例した断熱効果の向上は見られない。断熱塗料を混合後、ただちに塗布する。塗布方法には特に制限はないが、鏝塗り、刷毛塗り、ヘラ塗り等が好適である。塗布量としては、2.0〜4.0kg/m2が適当である。2.0kg/m2未満の塗布量であると必要な断熱効果が得られない虞れがある。4.0kg/m2を超えて塗装した場合、塗装仕上がり面の凹凸が激しく、上層の防水塗料の塗装前に平滑化をしなくてはならず、作業性が悪くなる。
【0012】
断熱塗料の乾燥後、防水塗料を塗装する。防水塗料としては、建築用に従来使用されている各種防水材が使用できるが、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン(EVA)に顔料を分散させたものが好適である。必要に応じて水を添加し、塗装作業性を改善させる。塗布方法には特に制限はないが、鏝塗り、刷毛塗り、ヘラ塗り等が好適である。塗布量としては、2.0〜6.0kg/m2が適当である。2.0kg/m2未満の塗布量であると必要な防水効果が得られない虞れがある。6.0kg/m2を超えて塗装した場合、防水効果としての信頼性は変わらず、コスト的には不利となる。なお、防水塗料の塗布は、必要に応じて1.0kg/m2〜2.0kg/m2の塗布量で2〜4回に分割して塗布することも可能であり、この場合には防水塗料の塗布1回目と2回目との間に、補強布を設置することもある。補強布は、各種の不織布が使用される。
【0013】
防水塗料が乾燥した後、上塗塗料を塗布する。上塗塗料としては、各種の樹脂エマルジョンに必要に応じて充填材、着色顔料、添加剤、水等を加えて混合分散したものが例示される。樹脂エマルジョンとしては、アクリル樹脂エマルジョン、変性アクリル樹脂エマルジョン、変性シリコン樹脂エマルション、等が使用できる。充填材としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、亜鉛華等が使用できる。着色顔料としては、チタンホワイト(酸化チタン)、カーボンブラック、チタンイエロー、シアニンブルー、その他公知の顔料類が使用できる。断熱効果が特に高いのは、可視光線を反射する能力の高い、チタンホワイトを使用した白色の上塗塗料である。
【0014】
上塗塗料の塗布量としては、0.3〜1.5kg/m2が適当である。
0.3kg/m2未満の塗布量であると防水層の保護、隠蔽性が得られない虞れがある。1.5kg/m2を超えて塗装した場合、塗布量に比例した効果が得られず、コスト的には不利となる。塗装方法には特に制限はないが、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装等の従来公知の塗装方法が適宜使用できる。また、上塗塗料の塗装にあたっても、複数回の塗装に分割して行なうことも可能である。
【0015】
なお、上塗塗膜に苔、藻類、カビ等が発生し、塗膜表面が汚れると、太陽光線の反射率が低下し、断熱効果が落ちる虞れが生じるばかりでなく、防水塗膜の寿命を短くしてしまう虞れもある。また建物外観の美観も損ねる。このため、上塗塗料に防カビ剤、抗菌作用のある薬剤を適当量混合分散し、苔、藻類、カビの発生を防止することは有効である。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の理解に供するため、以下に実施例を記載する。いうまでもなく、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0017】
【実施例1】
沖縄県中部の、鉄筋コンクリート造の建物のルーフバルコニー部を使用して、以下の工法を実施した。
シリコン樹脂エマルジョンからなるプライマーを刷毛、及びローラーを用いて塗布量、0.2kg/m2で塗装した。
プライマーが乾燥した後、高強度無機発泡粒(80%の粒度分布が、0.6〜4.75mmの範囲にあるパーライトの焼成・膨張品を更に焼成したもの)と、混和液としてアクリル樹脂エマルジョンを混合分散(混和液:高強度無機発泡粒=1:0.5、質量比)して断熱塗料となし、該断熱塗料を、鏝を用いて塗布量、3.0kg/m2塗布した。
断熱塗料が乾燥した後、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる防水塗料を、鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(2回目)した。
防水塗料が乾燥した後、変性アクリル樹脂エマルジョンに酸化チタンを分散した白色の上塗塗料を、ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布し断熱防水構造1を得た。
【0018】
【実施例2】
沖縄県中部の、鉄筋コンクリート造の建物のルーフバルコニー部を使用して、以下の工法を実施した。
アクリル樹脂エマルジョンからなるプライマーを刷毛、及びローラーを用いて塗布量、0.2kg/m2で塗装した。
プライマーが乾燥した後、高強度無機発泡粒(80%の粒度分布が、0.6〜4.75mmの範囲にあるパーライトの焼成・膨張品を更に焼成したもの)と、混和液として酢酸樹脂エマルジョンを混合分散して(混和液:高強度無機発泡粒=1:0.5、質量比)断熱塗料となし、該断熱塗料を、鏝を用いて塗布量、3.0kg/m2塗布した。
断熱塗料が乾燥した後、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる防水塗料を、鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後不織布による補強布を載置し、該補強布の上に再び同じ防水塗料を鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(2回目)した。
防水塗料が乾燥した後、変性アクリル樹脂エマルジョンに、酸化チタンを分散した白色の上塗塗料を、ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布し断熱防水構造2を得た。
【0019】
【実施例3】
沖縄県中部の、鉄筋コンクリート造の建物のルーフバルコニー部を使用して、以下の工法を実施した。
酢酸樹脂エマルジョンからなるプライマーを刷毛、及びローラーを用いて塗布量、0.2kg/m2で塗装した。
プライマーが乾燥した後、高強度無機発泡粒(80%の粒度分布が、0.6〜4.75mmの範囲にあるひる石の焼成・膨張品を更に焼成したもの)と、混和液としてアクリル樹脂エマルジョンを混合分散(混和液:高強度無機発泡粒=1:0.5、質量比)して断熱塗料となし、該断熱塗料を、鏝を用いて塗布量、3.0kg/m2塗布した。
断熱塗料が乾燥した後、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる防水塗料を、鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(2回目)した。
防水塗料が乾燥した後、アクリル樹脂エマルジョンに藻類の発生を防止する防カビ剤、及び酸化チタンを分散した白色の上塗塗料を、ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布し断熱防水構造3を得た。
【0020】
【比較例】
沖縄県中部の、鉄筋コンクリート造の建物のルーフバルコニー部を使用して、以下の工法を実施した。
シリコン樹脂エマルジョンからなるプライマーを刷毛、及びローラーを用いて塗布量、0.2kg/m2で塗装した。
プライマーが乾燥した後、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンからなる防水塗料を、鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度鏝、ローラーを用いて、1.7kg/m2塗布(2回目)した。
防水塗料が乾燥した後、変性アクリル樹脂エマルジョンに酸化チタンを分散した白色の上塗塗料を、ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布(1回目)し、乾燥後もう一度ローラーを用いて、0.3kg/m2塗布し防水塗膜を得た。
【0021】
【試験方法】
断熱防水構造1〜3、及び防水塗膜を施工したルーフバルコニーの7〜8月の表面温度を測定し、一日の最高温度の平均を比較した。
【0022】
【結果】
【0023】
【発明の効果】
本発明の断熱塗料を使用した断熱防水工法によれば、屋根部への夏季の太陽の直射光線による、室内の温度上昇を効果的に防ぎ、快適な居住空間を作ることができる。同時に冷房のための電力使用を低減することができるため、省エネルギーに寄与することができる。また、高い信頼性の防水効果を有するため、建物の使用年限の延長につながる。
Claims (2)
- 建物の屋上、ベランダ、屋根部等への断熱防水工法であって、
1)プライマーの塗布
2)骨材の無機発泡粒からなり当該骨材の8割以上の粒度分布が0.6〜4.75mmの範囲にある無機発泡粒の表面を磁器質のスキン層で覆った高強度無機発泡粒を含む断熱塗料の塗布
3)防水塗料の1回以上の塗布
4)上塗塗料の塗布
を順次施工する事を特徴とする断熱防水工法。 - 骨材の無機発泡粒からなり当該骨材の8割以上の粒度分布が0.6〜4.75mmの範囲にある無機発泡粒の表面を磁器質のスキン層で覆った高強度無機発泡粒を含み、混和液と、前記高強度無機発泡粒との混合比が、1:0.5〜1:3.0(質量比)であり、その他充填材を含むことを特徴とする断熱塗料。
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