JP3686331B2 - スターリングエンジン - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スターリングエンジンに関し、より特定的には、スターリングエンジンの各摺動部に適用されるガスベアリングのガス流出構造において、ガス流出部で目詰まりすることなく、運転中に信頼性高くガスを流出することを可能とするスターリングエンジンの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
スターリングエンジンに用いられる摺動部での摩擦は、スターリングエンジンの性能および信頼性に大きく影響をおよぼすため、従来のスターリングエンジンにおいては、摺動部にガスベアリング効果を用いたガス流出構造を採用することにより、摺動部での低摩擦化が図られている。
【0003】
従来のガスベアリング効果を用いたガス流出構造として、一般に以下に示す2例を挙げることができる。第1のガス流出構造の概略を図12に示す。図に示すように、シリンダ2内に設けられた運動体であるピストン3のガス流出口に、ドリル加工によって形成された小孔21を設け、この小孔21からガスを流出するすることにより、シリンダ2とピストン3との摺動面に静圧気体軸受を構成する。この方式は、オリフィス方式と呼ばれる。
【0004】
第2のガス流出構造の概略を図13に示す。図に示すように、シリンダ2内に設けられた作動体であるピストン3のガス流出口に、材料に無数の小孔が存在し、通気性を有する多孔質体22を配置し、この多孔質体22からガスを流出することにより、シリンダ2とピストン3との摺動面に静圧気体軸受を構成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
スターリングエンジンの摺動部に上記ガスベアリング効果を用いた静圧気体軸受を採用した場合の課題を以下に示す。
【0006】
図12に示す第1のガス流出構造によるオリフィス方式においては、スターリングエンジンの性能を向上させるために、ガス流出口からのガスの流量損失を低減させる必要がある。そこで、ガス流出口の孔径を大変小さくしていた。しかし、スターリングエンジンの組立時の塵や、運転中の摩擦により発生した摩耗粉が、凝集してガス流出口に詰まり、各ガス流出口からのガス流出量の不均一によりピストンが一方向に押付けられ、スターリングエンジンの運転の信頼性の低下に繋がるという問題が存在した。
【0007】
また、図13に示す第2のガス流出構造においては、オリフィス方式と異なり多孔質体22に気孔が多数存在するため、各ガス流出口からのガス流出量を絞り込むには、多孔質体22の気孔径を大変小さくしなければならないが、気孔径を小さくすると、気孔に摩耗粉等が詰まるという問題が存在した。
【0008】
したがって、この発明の目的は、ガス流出口での目詰まりによるスターリングエンジン性能の低下や、信頼性の低下を抑制することを可能とした、スターリングエンジンを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明に基づいたスターリングエンジンの一つの局面においては、シリンダ内に配置される作動体の往復運動により発生する高圧ガスを上記作動体の内部に設けられる加圧室に蓄え、上記作動体内の上記高圧ガスを上記シリンダと上記作動体との摺動部に流出するガスベアリングを備えるスターリングエンジンであって、上記作動体の側壁部に設けられる上記高圧ガスの流出口には、上記高圧ガスの流出上流側に第1多孔質体が配設され、上記高圧ガスの流出下流側に、上記第1多孔質体よりも空孔率の小さい第2多孔質体が配設される。
【0010】
この構成により、第1多孔質体と第2多孔質体を通過させてガスを流出することにより、第1多孔質体で大きな塵を捕捉するとともにガスを絞り、第2多孔質体で更にガスの絞り込みを実施することにより、従来の多孔質体単体では得ることが難しかったガス流量を絞り、かつ、目詰まりがしにくいという両方の特性を得ることが可能となる。また、上記発明において好ましくは、上記第1多孔質体と、上記第2多孔質体とは、上記加圧室の内部において、上記シリンダの径方向に沿って積層配置される。
【0011】
また、上記発明において好ましくは、上記第1多孔質体と、上記第2多孔質体とは、上記加圧室において、上記シリンダの軸線方向に沿って積層配置される。このように、軸線方向に多孔質体を並べて配置していることから、第1多孔質体と第2多孔質体との外径寸法および内径寸法を同じにすることができるため、多孔質体の作成において同じ金型を用いて製作することが可能になる。
【0012】
また、上記第1多孔質体と、上記第2多孔質体とは、上記作動体の側壁部に径方向に向かって設けられている孔の内部において、上記シリンダの径方向に沿って積層配置される。
【0013】
この構成を採用することにより、第1多孔質体および第2多孔質体を孔に挿入することのみで実現できるため、治具を必要とせず、組込み作業の効率化を図ることが可能になる。
【0014】
また、上記発明において好ましくは、上記第1多孔質体、および、上記第2多孔質体の、少なくともいずれか一方は、樹脂から構成される。この構成を採用することにより、スターリングエンジンの軽量化を図ることが可能になる。また、振動や騒音レベルを低減することも可能になる。
【0015】
この発明に基づいたスターリングエンジンの他の局面においては、シリンダ内に配置される作動体の往復運動により発生する高圧ガスを上記作動体の内部に設けられる加圧室に蓄え、上記作動体内の上記高圧ガスを上記シリンダと上記作動体との摺動部に流出するガスベアリングを備えるスターリングエンジンであって、上記作動体は、上記シリンダとの摺動面と上記加圧室とを含む領域が多孔質体から構成される。
【0016】
このように、作動体を多孔質体から構成することにより、上記発明の構成と比較した場合、2種類の多孔質材のうち1つの多孔質材を組込む工程が省けるのため、コスト削減を図ることが可能になる。
【0017】
また上記各発明において、上記作動体はピストン、または、ディスプレーサである。
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施の形態1)
以下、本発明に基づいた実施の形態1におけるスターリングエンジンについて、図を参照しながら説明する。
【0019】
(スターリングエンジンの概略構造)
図1を参照して、本実施の形態におけるスターリングエンジンの概略構造を説明する。本実施の形態においては、圧力容器1内に媒体として高圧のヘリウムガス(以下、単に「ガス」と称する。)が封入されている。1つのシリンダ2内に作動体としてのピストン3とディスプレーサ4とが配置され、ピストン3とディスプレーサ4とがそれぞれ往復運動を行なう。
【0020】
圧力容器1とシリンダ2により形成される空間は、ピストン3によって2つの空間に分割される。第1の空間は、ピストン3のディスプレーサ4側に規定される作動空間5である。第2の空間は、ピストン3のディスプレーサ4側と反対側に規定される背面空間6である。
【0021】
第1の空間である作動空間5は、ディスプレーサ4でさらに2つの空間に分割される。第1の分割空間は、ピストン3とディスプレーサ4とに挟まれた領域からなる圧縮空間5aである。第2の分割空間は、シリンダ2の先端部の領域からなる膨張空間5bである。圧縮空間5aと膨張空間5bとは再生器7を介して連結されている。
【0022】
背面空間6はシリンダ2を取囲むように圧力容器1によって形成されている。圧縮空間5aと膨張空間5bの圧力は、圧力容器1内に封入したガス圧力を基準としてピストン3の往復運動の変位に対応して変動する。
【0023】
ピストン3は、圧力容器1に対してピストンスプリング8によって支持されている。ピストン3は、リニアモータ等からなるピストン駆動体(図示省略)により圧力容器1の軸線方向にリニア駆動され、シリンダ2内を往復運動して、ガスの圧縮、膨張を行なっている。
【0024】
ディスプレーサ4は、ピストン3内部を貫通する貫通軸部4aを備え、この貫通軸部4aが圧力容器1に対してディスプレーサスプリング9によって支持されている。ディスプレーサ4はディスプレーサスプリング9の共振効果を利用して往復運動する。その結果、作動空間5内のガスが、圧縮空間5aと膨張空間5bとの間を往復移動する。
【0025】
ピストン3の往復運動により圧縮空間5aで圧縮されたガスが、シリンダ2に設けられた一方向弁10を通じてピストン3内部の加圧室11に流入することにより、加圧室11は高い圧力状態が維持される。この加圧室11からガスをピストン3とシリンダ2との間摺動部に流出し、ガスベアリング効果によって静圧気体軸受を構成し、ピストン3はシリンダ2に対して非接触状態で往復運動が可能となる。
【0026】
なお、本実施の形態においては、加圧室11から摺動部に流出するガスは、後述する構造を採用することにより、ガス流出量が絞り込まれているため、ガス流量損失はほとんどなく、加圧室11内には圧縮空間5aのガス圧変動の最高圧力と等しい程度のガス圧が蓄えられている。
【0027】
たとえば、加圧室11内のガス圧力は、運転条件によっても異なるが、圧縮空間5a内のガス圧力変動の最高圧力と略同等のガス圧力となり、スターリングエンジン内の封入ガス圧力が約2.5MPaの場合、加圧室11内のガス圧力は、約2.7MPa程度となる。
【0028】
なお、図1に示す構成を用いたスターリングサイクルに関しては、一般によく知られているので、ここでの詳細な説明は省略する。
【0029】
(ガス流出口部の構造)
図2〜図4を参照して、本実施の形態におけるガス流出口部の構造について説明する。なお、ピストン3の形状は、シリンダ2の軸線に対して対称形状を有しているため、図においては、図1に示すピストン3の上側の断面形状のみを図示するものとする(以下に示す、各実施の形態においても同様とする)。ここで、図2はピストン3の断面形状を示す図であり、図3は図2中X線矢視断面図であり、図4は図2中Y線矢視断面図である。
【0030】
図2を参照して、ピストン3には、通気孔15およびポケット16からなるガス流出口が、円周上に複数(たとえば、90°ピッチ、4箇所)設けられている。通気孔15はφ0.5mmの小孔からなり、ポケット16は、φ8mm、深さ1.0mmの凹部形状を有する。
【0031】
ガス流出口の加圧室11の内側には、ガスの流れ方向の上流側に空孔率の大きい第1多孔質体12Aが配設され、ガスの流量方向の下流側に空孔率の小さい第2多孔質体13Aとが配設されるように、シリンダ2の径方向に沿って積層して配置されされている。なお、空孔率とは単位体積あたりに対する空孔の合計体積の占める割合を示すものとする。また、シリンダ2の径方向とは、図1中に示すように、シリンダ2の半径方向に沿った方向を意味する。
【0032】
また、第1多孔質体12Aおよび第2多孔質体13Aを加圧室11内に固定するためのリング14が設けられている。加圧室11内の内径寸法は、L1がφ20mm、L2がφ25mmである。また、ピストン3の外径L3はφ32mmである。
【0033】
第1多孔質体12Aおよび第2多孔質体13Aは、図3に示すように、ドーナッツ形状を有している。第1多孔質体12Aは、寸法が、外径φ22mm、内径φ20mmであり、材質として空孔率60%のポリエチレンが用いられている。第2多孔質体13Aは、寸法が、外径φ25mm、内径φ22mmであり、材質として空孔率30%のポリエチレンが用いられている。
【0034】
第1多孔質体12A、第2多孔質体13A、および、リング14の加圧室11内への挿入は、ピストン3の底部に開閉可能な蓋体3aが設けられており、第1多孔質体12A、第2多孔質体13A、および、リング14を加圧室11内の所定位置に位置決めした後に、蓋体3aによりピストン3の底部を閉じる構造が採用される。
【0035】
第1多孔質体12A、および、第2多孔質体13Aのピストン3への組付けは、まず円管状の第2多孔質体13Aをピストン3に圧入する。加圧室11内部には、多孔質体を組付けるための段部11aが設けられており、多孔質体の軸方向位置が決定されるようになっている。なお、軸方向とは図中に示すように、シリンダ2の軸方向に沿った方向を意味する。
【0036】
次に、第1多孔質体12Aを第2多孔質体13Aの内周部に圧入する。その後、第1多孔質体12A、および、第2多孔質体13Aの底面側の端部にリング14を挿入する。このように、リング14を設けることにより、多孔質体の端部からのガス流入を遮断でき、ガスの流入経路を1つにすることが可能となり、ガス流量を安定させることが可能になる。
【0037】
なお、リング14の挿入に代わり、第1多孔質体12A、および、第2多孔質体13Aの端部に、多孔質体の空隙を閉じる目潰し処理を施しても、同等の効果が得られる。ここで、目潰し処理には、旋盤を用いた機械加工を施すことにより、多孔質体の空孔を潰す方法や、多孔質体を金型で作成する場合に、多孔質体の内周面分部に樹脂フィルムを巻付けて多孔質体の焼結を行なうことにより多孔質体の空孔を潰す方法が挙げられる。
【0038】
また、加圧室11の内周面と第2多孔質体13Aとの締付け代、および、第1多孔質体12Aと第2多孔質体13Aとの締付け代が、ガス損失量に大きく影響する。この締付け代は、第1多孔質体12A、および、第2多孔質体13Aが損傷することなく、かつ、十分な締付けが可能な寸法に設定する必要がある。今回の実施の形態においては、それぞれの直径方向の締付け代を約0.1mmとしている。
【0039】
上記構造からなるガス流出口部において、加圧室11に蓄えられているガスは第1多孔質体12Aと第2多孔質体13Aを通過して、ピストン3に設けた通気孔15からピストン3とシリンダ2との間の摺動部にガスを流出する。このときのガスの流出量は約60ml/min程度である。
【0040】
(作用・効果)
以上、本実施の形態におけるスターリングエンジンに適用されるガス流出口部の構造においては、第1多孔質体12Aに空孔率の大きい多孔質体を用いることにより、運転中に発生した大きな塵を捕捉するとともに、ガス流出を絞る働きをする。また、第2多孔質体13Aに空孔率の小さい多孔質体を用いることにより、更にガス流出の絞り込みを行なう。
【0041】
このように、第1多孔質体12Aと第2多孔質体13Aを通過させてガスを流出することにより、第1多孔質体12Aで大きな塵を捕捉するとともにガスを絞り、第2多孔質体13Aで更にガスの絞り込みを実施することにより、従来の多孔質体単体では得ることが難しかったガス流量を絞り、かつ、目詰まりがしにくいという両方の特性を得ることが可能となる。
【0042】
なお、第1多孔質体12Aと第2多孔質体13Aとの2層構造を採用した場合について説明したが、内側から外側に向かうにしたがって、多孔質体の空孔率が次第に小さくなる多層構造を採用しても、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0043】
また、上記実施の形態においては、ピストン3に設けられるガス流出口部の構造について説明したが、図1に示す、ディスプレーサ4側においても、同構造のガス流出口部の構造を採用することが可能である。
【0044】
(実施の形態2)
次に、本発明に基づいた実施の形態2におけるスターリングエンジンについて、図を参照しながら説明する。なお、実施の形態1と同一構成については、詳細な説明を省略する。また、本実施の形態におけるスターリングエンジンの特徴は、ピストンに設けられるガス流出口部の構造にあるため、ここではこのガス流出口部の構造にのみ言及する。
【0045】
図5〜図7を参照して、本実施の形態におけるガス流出口部の構造について説明する。なお、図5はピストン3の断面形状を示す図であり、図6は図5中X線矢視断面図であり、図7は図5中Y線矢視断面図である。
【0046】
図5を参照して、ガスの流れ方向の上流側に空孔率の大きい第1多孔質体12Bが配設され、ガスの流れ方向の下流側に空孔率の小さい第2多孔質体13Bが配設されるように、シリンダ2の軸線方向に沿って連続して配置されており、第1多孔質体12B、および、第2多孔質体13Bの内面にリング14が挿入されている。したがって、ガス経路は図5中の矢印のように、多孔質体に対して軸線方向にガスが流れるようになっている。このようなガス流量を取ることにより、第1多孔質体12Bで大きな塵を捕捉するとともにガスを絞り込み、第2多孔質体13Bでガスを絞るということが可能である。
【0047】
上記実施の形態1の場合と同様に、加圧室11内の内径寸法は、L1がφ20mm、L2がφ25mmである。また、ピストン3の外径L3はφ32mmである。また、第1多孔質体12Bおよび第2多孔質体13Bは、図6および図7に示すように、ドーナッツ形状を有している。第1多孔質体12Bおよび第2多孔質体13Bは、ともに寸法が、外径φ25mm、内径φ22mmであり、材質として第1多孔質体12Bには空孔率60%のポリエチレンが用いられ、第2多孔質体13Bには、空孔率30%のポリエチレンが用いられている。
【0048】
第1多孔質体12Bおよび第2多孔質体13Bのピストン3への組付けは、まず円管状の第2多孔質体13Bを加圧室内11に設けられた段部11aまで圧入する。次に、第1多孔質体12Bを第2多孔質体13Bに接触するまで圧入する。その後、最後にリング14を多孔質体12,13の内周面に圧入することにより、容易に空孔率の異なる多孔質体を得ることが可能である。
【0049】
また、加圧室11の内周面と第2多孔質体13Bとの締付け代、および、加圧室11の内周面と第1多孔質体12Aとの締付け代が、ガス損失量に大きく影響する。この締付け代は、第1多孔質体12A、および、第2多孔質体13Aが損傷することなく、かつ、十分な締付けが可能な寸法に設定する必要がある。今回の実施の形態においては、それぞれの直径方向の締付け代を約0.1mmとしている。
【0050】
なお、図5の説明において、第1多孔質体12B、および、第2多孔質体13Bを挿入後、第1多孔質体12B、および、第2多孔質体13Bの内面側にリング14を挿入することにより、図5中の矢印のようなガス流量を可能としているが、この構成以外で、第1多孔質体12B、および、第2多孔質体13Bの内周面に目潰し処理(実施の形態1の場合と同様の処理)を施すことによっても、同等の効果を得ることが可能である。
【0051】
(作用・効果)
このように第1多孔質体12Bと第2多孔質体13Bを通過させてガスを流出することにより、上記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。また、本実施の形態においては、軸線方向に多孔質体を並べて配置していることから、第1多孔質体12Bと第2多孔質体13Bとの外径寸法および内径寸法を同じにすることができるため、多孔質体の作成において同じ金型を用いて製作することが可能になる。
【0052】
なお、第1多孔質体12Bと第2多孔質体13Bとの2層構造を採用した場合について説明したが、軸線方向において、通気孔15に向かうにしたがって、多孔質体の空孔率が次第に小さくなる多層構造を採用しても、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0053】
また、上記実施の形態においては、ピストン3に設けられるガス流出口部の構造について説明したが、実施の形態1の場合と同様に、ディスプレーサ4側においても、同構造のガス流出口部を採用することが可能である。
【0054】
(実施の形態3)
次に、本発明に基づいた実施の形態3におけるスターリングエンジンについて、図を参照しながら説明する。なお、実施の形態1と同一構成については、詳細な説明を省略する。また、本実施の形態におけるスターリングエンジンの特徴は、ピストンに設けられるガス流出口部の構造にあるため、ここではこのガス流出口部の構造にのみ言及する。
【0055】
図8および図9を参照して、本実施の形態におけるガス流出口部の構造について説明する。なお、図8はピストン3の断面形状を示す図であり、図9は図8中X線矢視断面図である。
【0056】
図8を参照して、ピストン3内部の加圧室11に向かって垂直(シリンダ2の径方向)に通気孔15が設けられており、この通気孔15において、ガスの流れ方向の上流側に第1多孔質体12Cが配設され、ガスの流れ方向の下流側に第2多孔質体13Cが配設されるように挿入されている。材質としては、第1多孔質体12Cには空孔率60%のポリエチレンが用いられ、第2多孔質体13Cには、空孔率30%のポリエチレンが用いられている。
【0057】
加圧室11に蓄えられているガスは第1多孔質体12Cと第2多孔質体13Cを通過してピストン3とシリンダ2との間の摺動部にガスを流出する。ここで空孔率の大きい第1多孔質体12Cにて塵を捕捉するとともに、ガス流量を絞り込み、空孔率の小さい第2多孔質体13Cにて更にガスを絞り込む。
【0058】
多孔質体のピストン3への組付けには、まず円管状の第1多孔質体12Cをピストン3外部から加圧室内11に向かって設けられている通気孔15に圧入する。次に、第2多孔質体13Cを第1多孔質体12Cに接触するまで圧入することにより、容易に空孔率の異なる多孔質体を得ることが可能である。
【0059】
(作用・効果)
このように第1多孔質体12Cと第2多孔質体13Cを通過させてガスを流出することにより、上記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。また、上記各実施の形態においては、多孔質体をピストン内部に挿入するための治具が必要であったが、本実施の形態の構成においては、第1多孔質体12Cおよび第2多孔質体13Cを通気孔15に挿入することのみで実現できるため、組込み作業の効率化を図ることが可能になる。
【0060】
なお、第1多孔質体12Bと第2多孔質体13Bとの2層構造を採用した場合について説明したが、通気孔15に外方に向かうにしたがって、多孔質体の空孔率が次第に小さくなる多層構造を採用しても、同様の作用効果を得ることが可能である。
【0061】
また、上記実施の形態においては、ピストン3に設けられるガス流出口部の構造について説明したが、実施の形態1の場合と同様に、ディスプレーサ4側においても、同構造のガス流出口部を採用することが可能である。
【0062】
(実施の形態4)
次に、本発明に基づいた実施の形態4におけるスターリングエンジンについて、図を参照しながら説明する。なお、実施の形態1と同一構成については、詳細な説明を省略する。また、本実施の形態におけるスターリングエンジンの特徴は、ピストンに設けられるガス流出口部の構造にあるため、ここではこのガス流出口部の構造にのみ言及する。
【0063】
図10を参照して、本実施の形態におけるガス流出口部の構造について説明する。なお、図10はピストン3の断面形状を示す図である。
【0064】
図10を参照して、実施の形態1に示す構造と同様に、ピストン3内部の段部11aに樹脂製の第2多孔質体13Dを配設し、その内面に第1多孔質体12Dが配設されている。ガスの流れ方向から見た場合、ガスの流れの上流側に第1多孔質体12Dが配設され、ガスの流れの下流側に第2多孔質体13Dが配設されている。また、第1多孔質体12D、および、第2多孔質体13Dの端部には、リング14を挿入することにより、実施の形態1の場合と同様に多孔質体の端部からのガス流入を遮断している。
【0065】
したがって、ガス流量としては、まず第1多孔質体12Dでガス流量を絞った後に、第2多孔質体13Dでさらにガスが絞られ、ガスはピストン3とシリンダ2との間の摺動部に流出される。第1多孔質体12Dおよび第2多孔質体13Dの寸法は、実施の形態1の場合と同様である。
【0066】
第2の多孔質体13Dに樹脂製の材料を使用することにより、銅やステンレスなどの金属製の多孔質材に比べて、ピストンの軽量化を図ることが可能である。特に、本スターリングエンジンの場合は、ピストンの重量がエンジン本体の振動で騒音レベルに大きく影響するため、ピストンの共振系を崩すことなく、軽量化を図ることが可能である。樹脂材料としては、ポリエチレンが水分の吸水率が低く、多孔質材でありながら水分を吸入しにくく、取扱が容易で、安価であるため、量産向きでよい。なお、第1多孔質体12Dの材質は、樹脂でも金属でもどちらでも構わない。金属を使用する場合は、重量の軽量化を図るため、使用する金属量を少なくした方が好ましい。
【0067】
たとえば、第1多孔質体12Dに設けられる小孔は、φ1mmの孔が、軸方向に4箇所設けられるものが、円周方向に8箇所設けられている(合計32個)。このように、第1多孔質体12Dに小孔を形成することにより、全面開放されている場合に比べて、ガス流出を絞ることが可能になる。なお、小孔の開口径の大きさ、個数は、実験的にガス流出量を測定して決定される。
【0068】
(作用・効果)
このように第1多孔質体12Dと第2多孔質体13Dを通過させてガスを流出することにより、上記実施の形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
(実施の形態5)
次に、本発明に基づいた実施の形態5におけるスターリングエンジンについて、図を参照しながら説明する。なお、実施の形態1と同一構成については、詳細な説明を省略する。また、本実施の形態におけるスターリングエンジンの特徴は、ピストンの構造にあるため、ここではこのピストンの構造にのみ言及する。
【0070】
図11を参照して、本実施の形態におけるガス流出口部の構造について説明する。なお、図11はピストン3の断面形状を示す図である。
【0071】
図11を参照して、本実施の形態においては、ピストン3において、シリンダ2との摺動面と加圧室11とを含む領域を多孔質体から構成するため、ピストン3自体を空孔率の大きい第1多孔質材で形成している。さらに、ピストン3内の加圧室11の両端部に、空孔率の小さい第2多孔質材18を挿入する。これは、ピストン3の両端部からのガス流出は、ピストン3の浮上に寄与する割合がガス流出量に対して低く、ガス損失に繋がる可能性が高いためであり、両端部でのガス流出を絞るほうが効率的だからである。なお、ピストン3とシリンダ2間の摺動部以外の箇所は、ガス損失に繋がるため、目潰し処理(実施の形態1の場合と同様の処理)17を施す。また、蓋体3aには、軽量化を図る観点から、アルミ等が用いられている。
【0072】
第1多孔質材には、空孔率60%のポリエチレンが用いられる。また、第2多孔質材18には、空孔率20%のポリエチレンが用いられる。
【0073】
(作用・効果)
以上、本実施の形態におけるスターリングエンジンに適用されるピストンの構造においては、ピストン3の素材を多孔質体を主成分にすることにより、2種類の多孔質材のうち1つの多孔質材を組込む工程が省けるので、コスト削減を図ることが可能になる。
【0074】
また、ピストン3を樹脂製の材料で作製することにより、ピストン3の軽量化を図ることができ、本体の振動レベルを低下させることが可能となる。ここでの樹脂材料も水分の吸収量が低い、ポリエチレン等を用いることが望ましい。
【0075】
また、上記実施の形態においては、ピストン3に設けられるガス流出口部の構造について説明したが、図1に示す、ディスプレーサ4側においても、同構造のガス流出口部を採用することが可能である。
【0076】
また、上記実施の形態1〜4に示すガス流出口部の構造はいわゆるオリフィス絞りタイプの静圧気体軸受の場合について説明しているが、毛細管絞りタイプ、スロット絞りタイプ、自成絞りタイプ、多孔質絞りタイプ、表面絞りタイプ等の静圧気体軸受に適用することが可能である。
【0077】
また、上記実施の形態1〜4に示すガス流出口部の構造においては、ピストン3の内部側に、多孔質材の多層構造を配置するようにしているが、ピストン3の運動面側である外周面側に凹部を設け、この凹部に多孔質材の多層構造を配置する構造を採用することも可能である。
【0078】
したがって、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって画定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0079】
【発明の効果】
この発明に基づいたスターリングエンジンによれば、空孔率の大きい第1多孔質体と空孔率の小さい第2多孔質体を通過させてガスを流出することにより、第1多孔質体で大きな塵を捕捉するとともにガスを絞り、第2多孔質体で更にガスの絞り込みを実施することにより、従来の多孔質体単体では得ることが難しかったガス流量を絞り、かつ、目詰まりがしにくいという両方の特性を有するガスベアリングを備えた、スターリングエンジン得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施の形態1におけるスターリングエンジンの概略構造を示す図である。
【図2】 実施の形態1におけるピストン3の断面形状を示す図である。
【図3】 図2中X線矢視断面図である。
【図4】 図2中Y線矢視断面図である。
【図5】 実施の形態2におけるピストン3の断面形状を示す図である。
【図6】 図5中X線矢視断面図である。
【図7】 図5中Y線矢視断面図である。
【図8】 実施の形態3におけるピストン3の断面形状を示す図である。
【図9】 図8中X線矢視断面図である。
【図10】 実施の形態4におけるピストン3の断面形状を示す図である。
【図11】 実施の形態5におけるピストン3の断面形状を示す図である。
【図12】 従来技術における第1のガス流出構造の概略を示す断面図である。
【図13】 従来技術における第2のガス流出構造の概略を示す断面図である。
【符号の説明】
1 圧力容器、2 シリンダ、3 ピストン、3a 蓋体、4 ディスプレーサ、4a 貫通軸部、5 作動空間、5a 圧縮空間、5b 膨張空間、6 背面空間、7 再生器、8 ピストンスプリング、9 ディスプレーサスプリング、10 一方向弁、11 加圧室、11a 段部、12A,12B,12C,12D 第1多孔質体、13A,13B,13C,13D 第2多孔質体、14 リング、15 通気孔、16 ポケット、17 目潰し処理、18 第2多孔質材。

Claims (6)

  1. シリンダ内に配置される作動体の往復運動により発生する高圧ガスを前記作動体の内部に設けられる加圧室に蓄え、前記作動体内の前記高圧ガスを前記シリンダと前記作動体との摺動部に流出するガスベアリングを備える、スターリングエンジンであって、
    前記作動体の側壁部に設けられる前記高圧ガスの流出口には、前記高圧ガスの流出上流側に第1多孔質体が配設され、前記高圧ガスの流出下流側に、前記第1多孔質体よりも空孔率の小さい第2多孔質体が配設される、スターリングエンジン。
  2. 前記第1多孔質体と、前記第2多孔質体とは、前記加圧室において、前記シリンダの径方向に沿って積層配置される、請求項1に記載のスターリングエンジン。
  3. 前記第1多孔質体と、前記第2多孔質体とは、前記加圧室において、前記シリンダの軸線方向に沿って積層配置される、請求項1に記載のスターリングエンジン。
  4. 前記第1多孔質体と、前記第2多孔質体とは、前記作動体の側壁部に径方向に向かって設けられている孔の内部において、前記シリンダの径方向に沿って積層配置される、請求項1に記載のスターリングエンジン。
  5. 前記第1多孔質体、および、前記第2多孔質体の、少なくともいずれか一方は、樹脂から構成される、請求項1から4のいずれかに記載のスターリングエンジン。
  6. シリンダ内に配置される作動体の往復運動により発生する高圧ガスを前記作動体の内部に設けられる加圧室に蓄え、前記作動体内の前記高圧ガスを前記シリンダと前記作動体との摺動部に流出するガスベアリングを備える、スターリングエンジンであって、
    前記作動体は、前記シリンダとの摺動面と前記加圧室とを含む領域が多孔質体から構成される、スターリングエンジン。
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