JP3685488B2 - 流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、流体式トルク伝達装置、例えば、トルクコンバータやフリュード・カップリングのフロントカバーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、トルクコンバータは、流体により動力を伝達するために加速及び減速をスムーズに行うことができる。しかし、流体の滑りによりエネルギーロスが生じ、燃費が悪い。
【0003】
そこで従来のトルクコンバータには、入力側のフロントカバーと出力側のタービンとを機械的に連結するロックアップ装置が取り付けられたものがある。ロックアップ装置はフロントカバーとタービンとの間の空間に配置されている。ロックアップ装置は、主に、フロントカバーに連結可能な円板状ピストンと、タービンの背面側に取り付けられたドリブンプレートと、ピストンとドリブンプレートとを回転方向に弾性的に連結するトーションスプリングとから構成されている。ピストンには、フロントカバーの平坦な摺接面に対向する位置に円環状のフェーシング部が接着されている。
【0004】
前記従来のロックアップ装置では、ピストンの作動はトルクコンバータ本体内の油圧変化により制御されている。具体的には、ロックアップ連結解除時にピストンとフロントカバーとの間に外部の油圧回路から作動油が供給される。この作動油はフロントカバーとピストンとの間の空間を半径方向外側に流れ、さらに外周部側においてトルクコンバータ本体内に流れ込む。ロックアップ連結時には、フロントカバーとピストンとの間の空間の作動油が内周側からドレンされ、油圧差によってピストンがフロントカバー側に移動する。この結果ピストンに設けられたフェーシング部がフロントカバーの摺接面に押し付けられる。このようにしてフロントカバーのトルクがロックアップ装置を介してタービン側に伝達される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
フロントカバーは、プレス成形により成形された板金製の円板状部材である。フロントカバーは、主に、ロックアップクラッチのフェーシング部に対応する摺接面が形成された半径方向フランジ部と、その外周縁から軸方向に延びポンプインペラのシェルが溶接により固定される軸方向フランジ部と、半径方向フランジ部の内周側に形成された内周側部分とから構成されている。フロントカバーの内周縁すなわち内周側部分の内周縁には溶接によってセンターボスが溶接されている。
【0006】
フロントカバーにはトルクコンバータ内の油圧と回転による内圧に耐えうるための一定の強度が必要である。したがって、強度確保のために肉厚の大きな素材を用意する必要がある。その場合は、完成したフロントカバーの重量が大きくなり、コストも高くなってしまう。したがって、従来はフロントカバーの軽量化と強度維持との両立が困難である。
【0007】
本発明の課題は、フロントカバーの軽量化と強度維持とを両立させることにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法は、入力軸に固定されたフロントカバーと、出力軸に連結されたタービンと、フロントカバーに連結されたポンプインペラとを備えた流体式トルク伝達装置のフロントカバーに適用され、以下の工程を有している。
【0009】
◎プレス加工の打ち抜きにより円板状の金属製部材を形成する工程。
◎円板状の金属製部材の中心部を保持して中心軸の回りに回転させるとともに、第1回転工具保持部及び第1回転工具保持部に保持された第1ローラからなり軸方向及び半径方向に移動可能な第1回転工具の第1ローラを円板状の金属製部材に押し付けながら移動させることにより、フロントカバーの内周側の肉厚の一部を外周側に移動させて、半径方向フランジ部の肉厚を増大させる工程。
【0010】
このフロントカバーの製造方法では、半径方向フランジ部の肉厚をフロントカバーの内周側部分の肉厚より厚くすることで、半径方向フランジ部の耐圧強度を向上させた上で全体の軽量化を達成している。半径方向フランジ部は一定の耐圧強度が必要であるが内周側部分はそれより小さな耐圧強度で済むため、内周側部分の肉厚を薄くしたことによって耐圧強度の点で問題が生じることはない。以上より、このフロントカバーでは耐圧強度と軽量化の両立が実現されている。
【0011】
さらに、フロントカバーの内周側の肉厚の一部を外周側に移動させて、半径方向フランジ部の肉厚を増大させているため、肉厚の薄い素材を用いることができ、製造コストを下げることができる。
【0012】
請求項2に記載の流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法では、請求項1において、筒状の保持具を、その中心軸を円板状の金属製部材の中心軸に一致させて円板状の金属製部材を保持し、中心軸を中心に円板状の金属製部材を回転させるとともに、第2回転工具保持部及び第2回転工具保持部に保持された第2ローラからなり軸方向及び半径方向に移動可能な第2回転工具の第2ローラにより、円板状の金属製部材を筒状の保持具の外周面に押し付けながら移動させることにより、半径方向フランジ部の外周端から軸方向に延びる軸方向フランジ部の先端側の肉厚の一部を根元側に移動させ、根元側の肉厚を増大させる工程をさらに有している。
【0013】
このフロントカバーの製造方法では、軸方向フランジ部において根元側の肉厚を先端側の肉厚より厚くすることで、軸方向フランジ部の根元側の耐圧強度を向上させた上で全体の軽量化を達成している。軸方向フランジ部の根元側は一定の耐圧強度が必要であるが先端側はそれより小さな耐圧強度で済むため、先端側の肉厚を薄くしたことによって耐圧強度の点で問題が生じることはない。以上より、このフロントカバーでは耐圧強度と軽量化の両立が実現されている。
【0014】
さらに、半径方向フランジ部の外周端から軸方向に延びる軸方向フランジ部の先端側の肉厚の一部を根元側に移動させ、根元側の肉厚を増大させているため、肉厚の薄い素材を用いることができ、製造コストを下げることができる。
【0015】
請求項3に記載の流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法では、請求項1又は2において、軸方向エンジン側に突出する筒状のボスをフロントカバーの内周側部分の中心に一体に形成する工程をさらに有している。このフロントカバーの製造方法では、フロントカバーにおいてボスも一体成形され、製造が容易になっている。
【0016】
【発明の実施の形態】
(1)トルクコンバータの基本構造
図1は本発明の一実施形態が採用されたトルクコンバータ1の縦断面概略図である。トルクコンバータ1は、エンジンのクランクシャフト2(入力軸)からトランスミッションの入力シャフト3(出力軸)にトルクを伝達するための装置である。図1の左側に図示しないエンジンが配置され、図1の右側に図示しないトランスミッションが配置されている。図1に示すO−Oがトルクコンバータ1の回転軸である。
【0017】
トルクコンバータ1は、主に、フレキシブルプレート4とトルクコンバータ本体5とから構成されている。フレキシブルプレート4は、円板状の薄い部材からなり、トルクを伝達するとともにクランクシャフト2からトルクコンバータ本体5に伝達される曲げ振動を吸収するための部材である。したがって、フレキシブルプレート4は、回転方向にはトルク伝達に十分な剛性を有しているが、曲げ方向には剛性が低くなっている。
【0018】
トルクコンバータ本体5は、3種の羽根車(インペラー21、タービン22、ステータ23)からなるトーラス形状の流体作動室6と、ロックアップ装置7とから構成されている。
【0019】
フロントカバー11は、各部分が一体に形成された円板状の部材であり、フレキシブルプレート4に近接して配置されている。図2に示すように、フロントカバー11は、板金製の円板状部材であり、円板状部41と、その外周縁から軸方向エンジン側に延びる筒状の軸方向フランジ部42と、その内周縁から軸方向エンジン側に延びる筒状のセンターボス43とから構成されている。フロントカバー11の内周側部分45は、円板状の部分であり、半径方向フランジ部44とともに流体室の軸方向エンジン側面を構成している。センターボス43は、内周側部分45から一体に形成された軸方向に延びる円筒形状の部材であり、クランクシャフト2の中心孔内に挿入されている。
【0020】
フレキシブルプレート4の内周部は複数のボルト13によってクランクシャフト2の先端面に固定されている。フロントカバー11の外周側かつエンジン側面には、円周方向に等間隔で複数のナット12が固定されている。このナット12内に螺合するボルト14がフレキシブルプレート4の外周部をフロントカバー11に固定している。
【0021】
フロントカバー11の円板状部41は、外周側の半径方向フランジ部44と、内周側の内周側部分45とから構成されている。半径方向フランジ部44は、半径方向に所定の長さを有する環状かつ円板状の部分である。半径方向フランジ部44の内側すなわち軸方向トランスミッション側には環状かつ平坦な摺接面44aが形成されている。軸方向フランジ部42は、半径方向フランジ部44の外周縁から軸方向トランスミッション側に延び筒状部分である。軸方向フランジ部42の先端には、溶接によってインペラー21のインペラーシェル26が固定されている。以上の結果、フロントカバー11とインペラー21とによって、内部に作動油が充填された流体室が形成されている。
【0022】
インペラー21(ポンプインペラ)は、主に、インペラーシェル26と、その内側に固定された複数のインペラーブレード27と、インペラーシェル26の内周部に固定されたインペラーハブ28とから構成されている。
【0023】
タービン22は流体室内でインペラー21に対して軸方向に対向して配置されている。タービン22は、主に、タービンシェル30と、そのインペラー側の面に固定された複数のタービンブレード31と、タービンシェル30の内周縁に固定されたタービンハブ32とから構成されている。タービンシェル30とタービンハブ32とは複数のリベット33によって固定されている。タービンハブ32の内周面には、入力シャフト3に係合するスプラインが形成されている。これによりタービンハブ32は入力シャフト3と一体回転するようになっている。
【0024】
ステータ23は、タービン22からインペラー21に戻る作動油の流れを整流するための機構である。ステータ23は樹脂やアルミ合金等で鋳造により一体に製作された部材である。ステータ23はインペラー21の内周部とタービン22の内周部と間に配置されている。ステータ23は、主に、環状のステータシェル35と、シェル35の外周面に設けられた複数のステータブレード36とから構成されている。ステータシェル35はワンウェイクラッチ37を介して筒状の固定シャフト39に支持されている。固定シャフト39は入力シャフト3の外周面とインペラーハブ28の内周面との間を延びている。
【0025】
以上に述べた各羽根車21,22,23の各シェル26,30,35によって、流体室内にトーラス形状の流体作動室6が形成されている。なお、流体室内においてフロントカバー11と流体作動室6の間には環状の空間9が確保されている。
【0026】
(2)ロックアップ装置の構造
ロックアップ装置7(ロックアップクラッチ)は、タービン22とフロントカバー11との間の空間9に配置されており、必要に応じて両者を機械的に連結するための機構である。ロックアップ装置7はフロントカバー11とタービン22との軸方向間の空間に配置されている。ロックアップ装置7は、全体が円板状になっており、空間9を概ね軸方向に分割している。ここでは、フロントカバー11とロックアップ装置7との間の空間を第1油圧室Aとし、ロックアップ装置7とタービン22との間の空間を第2油圧室Bとする。
【0027】
ロックアップ装置7は、クラッチ及び弾性連結機構の機能を有し、主に、クラッチを構成するピストン71と、ピストン71に固定されダンパー入力部材を構成するドライブプレート72と、タービン22に固定されダンパー出力部材を構成するドリブンプレート73と、プレート72,73を回転方向に弾性的に連結する複数のトーションスプリング74と、複数のスプリング74を回転方向に直列に連結しさらにスプリングを半径方向に支持するためのスプリングホルダー75とから構成されている。
【0028】
ピストン71は、クラッチ連結・遮断を行うための部材であり、さらには弾性連結機構としてのロックアップ装置7における入力部材として機能する。ピストン71は中心孔が形成された円板形状である。ピストン71は空間9を概ね軸方向に分割するように、空間9内の半径全体にわたって延びている。ピストン71の内周縁には軸方向トランスミッション側に延びる内周側筒状部71bが形成されている。内周側筒状部71bはタービンハブ32の外周面によって回転方向及び軸方向に移動可能に支持されている。なお、タービンハブ32の外周面には、内周側筒状部71bに当接することでピストン71の軸方向トランスミッション側への移動を制限するためのフランジ32aが形成されている。さらに、タービンハブ32の外周面には内周側筒状部71bの内周面に当接する環状のシールリング又はOリング32bが設けられている。これにより、ピストン71の内周縁において軸方向のシールがされている。さらに、ピストン71の外周側には摩擦連結部71cが形成されている。摩擦連結部71cは、半径方向に所定の長さを有する環状部分であり、軸方向両面が軸方向に対して垂直な面となっている平面形状である。摩擦連結部71cの軸方向エンジン側には環状の摩擦フェーシング76(フェーシング部)が張られている。摩擦フェーシング76は、フロントカバー11の摺接面44aに対向しており、両者によってロックアップ装置7のクラッチを構成している。
【0029】
(3)フロントカバーの構造
(i)軸方向フランジ部における厚み関係
図2に示すように、軸方向フランジ部42は、軸方向エンジン側部分46と軸方向トランスミッション側部分47とから構成されている。軸方向トランスミッション側部分47は、軸方向エンジン側部分46より肉厚すなわち半径方向長さが短く、剛性が低くなっている。
【0030】
軸方向エンジン側部分46は、半径方向フランジ部44に連結された第1端部48を有している。第1端部48は、半径方向フランジ部44と同程度の肉厚を有しており、連結部51を介して半径方向フランジ部44に一体に形成されている。連結部51は、フロントカバー11の外周側角部を構成している。すなわち、第1端部48は、連結部51を含む肉厚一定の領域である。
【0031】
軸方向トランスミッション側部分47は第2端部49を有している。第2端部49は、外周部にインペラーシェル26の外周縁26aが当接して溶接部53によって溶接されている部分である。すなわち、第2端部49は、溶接部を含む肉厚が一定の領域である。なお、第2端部49は一定の肉厚を有しているが、その肉厚は第1端部48の肉厚より小さい。
【0032】
軸方向トランスミッション側部分47は、さらに、中間部50を有している。中間部50は第1端部48と第2端部49とを連結している部分であり、第1端部48から第2端部49に向かって徐々に肉厚が小さくなっている。
【0033】
なお、軸方向フランジ部42は、内周面が軸方向にストレートになっており全体の内径が一定であるため、外周面においては第1端部48の外径が第2端部49の外径より大きくなっている。
【0034】
以下の説明では、第1端部48の肉厚(半径方向寸法)をT1とし、第2端部49の肉厚(半径方向寸法)をT2とする。また、第1端部48の軸方向長さをL1とし、第2端部49の軸方向長さをL2とし、軸方向フランジ部42の軸方向長さをLとする。L及びL1の軸方向エンジン側起点は、連結部51の縁すなわち角部先端(半径方向フランジ部44の軸方向エンジン側面に一致している)である。
【0035】
T2がT1より小さくなっていることによって、第2端部49の剛性が第1端部48より小さくなっている。したがって、溶接によってインペラーシェル26の外周縁26aが第2端部49に固定される際に、溶接熱によって主に第2端部49さらには中間部50が歪む。このため、第1端部48や半径方向フランジ部44での歪みが生じにくくなり、結果としてフロントカバー11の摺接面44aの平坦度が維持される。この結果、ロックアップ時の摩擦連結における摩擦性能が低下しにくく、また車両振動の発生が生じにくい。
【0036】
特に、この実施形態では、連結部51すなわち角部の肉厚V(外側角縁から内側角縁までの長さ)が第1端部48の肉厚T1よりさらに大きくなっている。したがって、第1端部48や半径方向フランジ部44の溶接熱による歪みがより生じにくくなっている。
【0037】
第2端部49の肉厚T2は第1端部48の肉厚T1の20〜90%の範囲にあることが好ましい。20%未満の場合は軸方向フランジ部の強度低下の問題が生じ、90%を超える場合は肉厚を減らした効果が十分に得られない。さらに、第2端部49のT2は第1端部48のT1の30〜80%の範囲にあることがより好ましい。
【0038】
第2端部49の軸方向長さL2は軸方向フランジ部42の軸方向長さLに対して30〜90%の範囲にあることが好ましい。30%未満の場合は肉厚を減らした効果が十分に得られず、90%を越える場合は軸方向フランジ部の強度低下の問題が生じる。以上より、第2端部49の軸方向長さL2は軸方向フランジ部42の軸方向長さLに対して80〜90%の範囲にあることが好ましい。特に、第2端部49の軸方向長さL2は軸方向フランジ部42の軸方向長さLに対して50%を超えていること、及び/又は、第2端部49の軸方向長さL2が第1端部48の軸方向長さL1より長いことが好ましい。
【0039】
第1端部48の肉厚T1は軸方向フランジ部42の軸方向長さLに対して5〜20%の範囲にあることが好ましい。第1端部48の肉厚T1が概ね半径方向フランジ部44の肉厚と同じ程度であるとすると、5%未満の場合は軸方向フランジ部42の剛性が低くなりすぎ、20%を超えると軸方向フランジ部42全体の剛性が高くなりすぎる。10%の場合は、第2端部49の軸方向長さL2が第1端部48の軸方向長さL1より小さい場合でも、15%の場合に比べて、溶接熱による摺接面44aの歪みが生じにくくなっている。さらに、10%の場合で第2端部49の軸方向長さL2を第1端部48の軸方向長さL1よりと大きくすると、溶接熱による摺接面44aの歪みがさらに生じにくくなっている。
【0040】
(ii)フロントカバー全体における厚み関係
以下の説明では、半径方向フランジ部44の肉厚(軸方向寸法)をT3とし、内周側部分45の肉厚(軸方向寸法)をT4とする。半径方向フランジ部44の肉厚T3は内周側部分45の肉厚T4より厚くなっている。また、前述したように、軸方向フランジ部42の根元側の肉厚T1は先端側の肉厚T2に対して厚くなっている。このように、トルクコンバータの耐圧強度が特に必要とされる半径方向フランジ部44及び軸方向フランジ部42の根元側の肉厚が大きくなっていため、耐圧強度の問題は生じない。一方、内周側部分45及び軸方向フランジ部42の第2端部49の厚みが薄くなっているため、全体としての軽量化も十分に達成されている。つまり、この実施形態では、フロントカバー11の耐圧強度と軽量化が両立している。
【0041】
半径方向フランジ部の肉厚は素材板厚の105〜200%の範囲にあり、フロントカバーの内周側部分の肉厚が素材板厚の50〜95%の範囲にあるため、肉厚の比較的小さな素材を用いている。したがって、フロントカバーの軽量化をより進めることができる。半径方向フランジ部の肉厚が素材板厚の150〜200%の範囲にあり、フロントカバーの内周側部分の肉厚は素材板厚の50〜75%の範囲にある場合は、より好ましい。
【0042】
フロントカバーの内周側部分45の肉厚T4が、半径方向フランジ部44の肉厚T3の90〜50%の範囲にある場合は、フロントカバーの耐圧強度と軽量化のバランスがよく、90〜70%の範囲にある場合はさらによい。
【0043】
(4)フロントカバーの製造方法
フロントカバー11の製造方法について説明する。フロントカバー11は、円板状のブランク(素材)から回転成形加工によって形成される。
【0044】
(i)面形状成形工程
図4を用いて、回転成形加工を行う回転流動成形機80について説明する。回転流動成形機80は保持機構81と第1回転工具82とから構成されている。保持機構81は、マンドレル84と第1保持具85とから構成されており、中心軸S1−S1回りに回転可能である。マンドレル84は、大径の円柱形状の部材であり、先端面84aの中心に凹部84bを有している。第1保持具85は、小径の円柱形状の部材であり、先端面85aの中心に凸部85bを有している。第1保持具85はマンドレル84に対して軸方向に対向しており、凸部85bは凹部84b内に挿入可能である。
【0045】
第1回転工具82は、第1回転工具保持部89と、それに保持された第1ローラ90とから構成されている。第1回転工具保持部89は軸方向及び半径方向に移動可能である。第1ローラ90は、ブランクBの肉をマンドレル84の先端面84aに押し付けながら材料を移動させることで成形を行うためのものである。第1ローラ90は、第1回転工具保持部89に対して中心軸S2−S2回りに回転可能である。中心軸S2−S2は中心軸S1−S1に対して傾いている。
【0046】
ブランクBは、プレス加工により打ち抜かれて形成された円板状の金属製部材であり、あらかじめセンターボス43が形成されている。図4に示す状態で、ブランクBはマンドレル84と第1保持具85との間に挟まれて保持されている。具体的には、センターボス43がマンドレル84の凹部84b内に配置され、さらに第1保持具85の凸部85bがセンターボス43内に配置されている。このため、センターボス43部分のみならず、その外周側のブランク内周部が、マンドレル84の先端面84aと第1保持具85の先端面85aとの間に挟持されている。
【0047】
このようにブランクBの中心部を拘束したまま、マンドレル84及び第1保持具85は中心軸S1−S1回りに回転する。続いて、第1回転工具82が、ブランクBに接近し、さらに第1ローラ90を回転軸S2−S2回りに回転するように半径方向に移動する。すると、第1ローラ90がブランクBをマンドレル84の先端面84aに押し付けていき、フロントカバー11の円板状部分を形成する。この動作中、第1回転工具82は、ブランクBの円板状部分の内周側部分の肉厚の一部をさらに中心側に移動させる。この結果、フロントカバー11において内周側部分45の肉厚が半径方向フランジ部44の肉厚より小さくなる。
【0048】
(ii)外径形状成形工程
次に、図5に示すように、第2保持具86を準備する。第2保持具86は中心孔が形成された筒状の部材である。第2保持具86は第1保持具85の回りに配置され、先端面86aを有している。先端面86aは、マンドレル84の先端面84aとの間にブランクBの外周面を挟んでいる。
【0049】
第2回転工具87は、第2回転工具保持部92と、それに保持された第2ローラ93とから構成されている。第2回転工具保持部92は軸方向及び半径方向に移動可能である。第2ローラ93は、ブランクBの肉を第2保持具86の外周面86bに押し付けながら材料を移動させることで、成形を行うための構造である。第2ローラ93は、第2回転工具保持部92に対して中心軸S3−S3回りに回転可能である。中心軸S3−S3は中心軸S1−S1に対して平行である。
【0050】
このようにブランクBの中心部及び外周部を拘束したまま、マンドレル84、第1保持具85及び第2保持具86は、中心軸S1−S1回りに回転する。続いて、第2回転工具87が、ブランクBに接近し、さらに第2ローラ93を回転軸S3−S3回りに回転するように軸方向に移動する。すると、第2ローラ93がブランクBの外周部分を第2保持具86の外周面86bに押し付けていき、フロントカバー11の軸方向フランジ部42を形成していく。
【0051】
この動作中に、第2回転工具87は、軸方向フランジ部42の先端側の肉厚の一部を根元側に移動させる。この結果、フロントカバー11において、軸方向フランジ部42の第1端部48及び連結部51の肉厚が、第2端部49の肉厚より大きくなる。
【0052】
(5)他の実施形態
本発明は、トルクコンバータに限定されず、フルードカップリングにも適用できる。また、ロックアップ装置の種類や構造は前記実施形態に限定されない。
【0053】
【発明の効果】
本発明に係る流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法では、半径方向フランジ部の肉厚をフロントカバーの内周側部分の肉厚より厚くすることで、半径方向フランジ部の耐圧強度を向上させつつ、全体の軽量化を達成している。また、半径方向フランジ部の外周端から軸方向に延びる軸方向フランジ部の先端側の肉厚の一部を根元側に移動させ、根元の肉厚を増大させているため、肉厚の薄い素材を用いることができ、製造コストを下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態が採用されたトルクコンバータの縦断面概略図。
【図2】 本発明の一実施形態としてのフロントカバーの断面図。
【図3】 図2の部分拡大図。
【図4】 フロントカバーの面形状成形工程を説明するための概略図。
【図5】 フロントカバーの外径形状成形工程を説明するための概略図。
【符号の説明】
11 フロントカバー
41 円板状部
42 軸方向フランジ部
44 半径方向フランジ部
45 内周側部分
Claims (3)
- 入力軸に固定されたフロントカバーと、
出力軸に連結されたタービンと、
前記フロントカバーに連結されたポンプインペラとを備えた流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法であって、
プレス加工の打ち抜きにより円板状の金属製部材を形成する工程と、
前記円板状の金属製部材の中心部を保持して中心軸の回りに回転させるとともに、第1回転工具保持部及び前記第1回転工具保持部に保持された第1ローラからなり軸方向及び半径方向に移動可能な第1回転工具の前記第1ローラを前記円板状の金属製部材に押し付けながら移動させることにより、前記フロントカバーの内周側の肉厚の一部を外周側に移動させて、半径方向フランジ部の肉厚を増大させる工程と、
を含む、流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法。 - 筒状の保持具を、その中心軸を前記円板状の金属製部材の中心軸に一致させて前記円板状の金属製部材を保持し、前記中心軸を中心に前記円板状の金属製部材を回転させるとともに、第2回転工具保持部及び前記第2回転工具保持部に保持された第2ローラからなり軸方向及び半径方向に移動可能な第2回転工具の前記第2ローラにより、前記円板状の金属製部材を前記筒状の保持具の外周面に押し付けながら移動させることにより、前記半径方向フランジ部の外周端から軸方向に延びる軸方向フランジ部の先端側の肉厚の一部を根元側に移動させ、前記根元側の肉厚を増大させる工程をさらに有している、
請求項1に記載の流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法。 - 軸方向エンジン側に突出する筒状のボスを前記フロントカバーの内周側部分の中心に一体に形成する工程をさらに有している、請求項1又は2に記載の流体式トルク伝達装置のフロントカバーの製造方法。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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