JP3685482B2 - 電子写真感光体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真感光体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電式複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ装置などの画像形成装置に使用される電子写真感光体としては、下記の各成分を組み合わせて形成するいわゆる有機感光体が広く普及している。
(1) 光照射により電荷(正孔と電子)を発生する電荷発生剤。
(2)発生した電荷を輸送する電荷輸送剤(電荷輸送剤は、電荷のうち正孔を輸送する正孔輸送剤と、電子を輸送する電子輸送剤に大別される)。
(3) 成膜性を有する結着樹脂。
【0003】
有機感光体は、無機半導体材料を用いた無機感光体に比べて製造が容易で、安価に製造できるという利点がある。
【0004】
また有機感光体は、上記電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂などの材料の選択肢が多様であり、機能設計の自由度が大きいという利点もある。
【0005】
上記有機感光体は、導電性基体上に、単層型もしくは積層型の感光層を形成することで構成される。
【0006】
このうち単層型感光層は、電荷発生剤を、電荷輸送剤(正孔輸送剤および/または電子輸送剤)とともに結着樹脂中に分散することで形成される。
【0007】
また積層型感光層は、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤(正孔輸送剤または電子輸送剤)を含有する電荷輸送層とを積層することで形成される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
有機感光体は、上記のように様々な利点を有するものの、実使用環境下での感光層の削れ、傷などが発生しやすく、無機感光体に比べて耐久性が十分でないという問題がある。
【0009】
そこでこの問題を解決して、有機感光体の耐久性を向上すべく、最表層に表面保護層を積層することが検討されている。
【0010】
表面保護層の、広く一般に採用されている例としては、有機感光層との密着性、親和性、積層状態での一体性、成膜作業の一貫性などを考慮して、例えば成膜性を有する結着樹脂の層や、あるいは上記結着樹脂中に、金属酸化物等の導電性微粒子を分散させた層などの有機の層が挙げられる。
【0011】
しかしこの有機の層を表面保護層として使用した電子写真感光体は、繰り返し使用時の残留電位上昇や帯電性低下、環境(温度、湿度等)の変化による感度特性の変動等が大きいという問題がある。
【0012】
それゆえ近時、金属元素や炭素、あるいはこれら元素を含む無機の化合物等の、無機の材料からなる、高硬度でかつ耐磨耗性に優れた無機の層を表面保護層として、例えばスパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法等の気相成長法などによって、有機感光層上に積層、成膜することが検討されている。
【0013】
この、表面保護層は有機感光層を保護し、上記の問題点を解消するために用いられるものである。すなわち、有機感光層上に無機の表面保護層を設けた感光体は、有機感光層で電荷の発生や輸送などを受け持ち、表面保護層で感光体の耐久性や耐環境性を受け持つという、それぞれの層の特性に応じた機能を有するのである。
【0014】
しかしながら無機の表面保護層は、有機の層に比べて有機感光層との間で十分な密着性を得ることが難しい上、たとえ成膜方法や成膜条件の調整等によって成膜初期の密着性を確保できたとしても、実使用環境下や、あるいは長期の保管時等に感光体に加わる様々なストレスによってクラックが入ったり剥離したりしやすいという問題がある。
【0015】
すなわち、互いに異質の材料からなる有機感光層と無機の表面保護層とは、有機の層同士、あるいは無機の層同士のような緊密な密着性、親和性、一体性が得られず、非常に弱い結合力でもって互いに結合されているだけであることが多い。
【0016】
このため感光体が、例えば画像形成装置のクリーニングブレードの圧接等による機械的ストレスや、あるいは装置運転時の加熱と停止時の冷却の繰り返し、もしくは保管時の温度変化等による熱的ストレスなどを受けると、互いの硬度や柔軟性、膨張収縮特性等が大きく異なることが原因となって、前記のように無機の表面保護層にクラックが入ったり、表面保護層が有機感光層から剥離したりするのである。
【0017】
それゆえ従来の無機の表面保護層は、有機感光層の耐久性を向上する効果が未だ十分でないため、実用化されるに至っていないのが現状である。
【0018】
本発明の目的は、実使用環境下や長期の保管等によってクラックや剥離を生じにくい、物理的な安定性に優れた無機の表面保護層を有し、これまでよりも耐久性に優れた有機の電子写真感光体を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記課題を解決するために、発明者らは、無機の表面保護層の成膜過程について分析、検討を行った。
【0020】
その結果、有機感光層の最表面部における、表面保護層の成膜初期の状態が、当該表面保護層の、その後の物理的な安定性に大きく影響することを見出した。
【0021】
すなわち成膜初期の段階では、表面保護層を構成する無機材料と、有機感光層の最表面部に露出した材料の一部とが何らかの形で結合して膜成長の核となり、この核を中心として無機材料の膜が成長して表面保護層が形成され、また形成された表面保護層においては、上記核の部分が、有機感光層との結合点として機能して、両層間の密着性を確保する働きをする。
【0022】
このため個々の結合点での、有機感光層と無機材料との結合力の大小、並びに有機感光層と表面保護層との界面における、結合点の、単位面積あたりの個数、すなわち密度の高低が、表面保護層の、有機感光層との密着性、ひいては表面保護層の物理的安定性に大きく影響する。
【0023】
具体的には、個々の結合点での、有機感光層と無機材料との結合力が大きく、また両層の界面における上記結合点の密度が高いほど、表面保護層の、有機感光層に対する密着性が向上して、その物理的安定性が良好になる。
【0024】
通常の有機感光層は、前記のように電荷発生剤、電荷輸送剤等の低分子の機能性材料を、層を構成する結着樹脂中に分散した構造を有している。
【0025】
このため、上記結合点に関する知見に鑑みれば、層自体を構成し、しかも層の大半を占める結着樹脂が、膜成長の核として、表面保護層を構成する無機材料と結合するのが理想的であると考えられる。
【0026】
しかし実際には、分子自体の安定性や反応性、あるいは反応部位の関係から、電荷発生剤、電荷輸送剤等の、層中に分散した低分子の材料のうち、有機感光層の最表面部に露出したものが膜成長の核として機能して、表面保護層の成膜が進行することが多い。
【0027】
それゆえ上記低分子の材料の、無機材料との反応性の良否、および結合力の大小や、有機感光層を構成する結着樹脂に対する相溶性、親和性の強弱、あるいは材料自体の大きさ(分子量だけでなく、分子的、空間的な広がりも含めた大きさ)なども、表面保護層の、有機感光層との密着性、並びに物理的安定性に大きく影響する。
【0028】
つまり低分子の材料の、無機材料との反応性が良好で、かつ結合力が大きいほど、表面保護層の、有機感光層との密着性、並びに物理的安定性が向上する。
【0029】
また低分子の材料の、有機感光層を構成する結着樹脂に対する相溶性、親和性が良好で、かつ材料自体の大きさが大きいほど、いわゆるアンカー効果(投錨効果)によって、やはり表面保護層の、有機感光層との密着性、物理的安定性が向上する。
【0030】
また上記低分子の材料と無機材料との結合形態としては、結合力の強弱を考慮すると分子結合が最も好ましいが、この結合によって分子構造が変化する結果、電荷のトラップが生成されるようなことがあると、感光体の感度低下を引き起こすおそれがある。
【0031】
したがって低分子の材料は、反応によって電気的な特性を低下させる分子状態に移行しないことも重要である。
【0032】
このように、従来の感光層上に単に硬度の大きい材料を積層するだけで、良好な画像形成ができる感光体を、簡単に作製できるのではないことを見出した。また、上記のような条件で作製された感光体は、有機感光層の電気的特性をそのまま維持しつつ、表面保護層による耐久性、耐環境性を向上させることが可能になる。
【0033】
そこで発明者らは、これらの知見を考慮しつつ、有機感光層を構成する種々の材料について検討を行った結果、正孔輸送剤として用いられる、式 1-3
【0034】
【化3】
Figure 0003685482
で表されるエナミン誘導体が、前記表面保護層がケイ素−と窒素の複合膜、または炭素と窒素の複合膜である場合にこれらの要求を満足する好適な材料であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0035】
すなわち本発明の電子写真感光体は、導電性基体上に、有機感光層と、無機の表面保護層とをこの順に積層したものであって、上記有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表面部が、上記式 1-3 で表されるエナミン誘導体を含有し、前記表面保護層がケイ素−と窒素の複合膜、または炭素と窒素の複合膜であることを特徴としている。
【0039】
上記式 1-3 で表されるエナミン誘導体は、その分子全体にπ電子共役系が広がっており、成膜初期の段階で、表面保護層を構成する無機材料のうちとくに金属元素や炭素等を引きつける機能を有しており、無機材料との反応性が高い。
【0036】
また上記の機能により、有機感光層の最表面部に露出したエナミン誘導体が無機材料と結合して膜成長の核となる率が高いため、両層の界面における結合点の密度が高い。
【0037】
また膜成長の速度も速いため、有機感光層が、気相成長法などによる表面保護層の成膜時に受けるダメージを極力減らすこともできる。
【0038】
またエナミン誘導体は、分子中の二重結合のうちπ結合が切れて、上記金属元素や炭素等と、分子結合によって強固に結合されるため、有機感光層と無機材料との結合力も大きい。
【0039】
しかもエナミン誘導体は、正孔輸送剤の中では比較的分子量が大きい上、平面状に拡がった分子構造を有しており、分子的、空間的な広がりも大きく、しかも結着樹脂との相溶性、親和性にも優れているため、結着樹脂に対して良好なアンカー効果を示す。
【0040】
それゆえ有機感光層と無機材料との結合力も大きい。
【0041】
したがって本発明によれば、無機の表面保護層の、有機感光層に対する密着性を向上して、当該表面保護層の物理的安定性を改善できるため、実使用環境下や長期の保管等によるクラックや剥離の発生を防止して、これまでよりも耐久性に優れた電子写真感光体を得ることが可能となる。
【0042】
またエナミン誘導体は、それ自体の正孔輸送能が高い上、前記のように金属元素や炭素等と分子結合して分子構造が変化した状態でも、深い電荷のトラップを生成することがなく、しかも上記の結合は有機感光層の最表面部に露出したごく一部のエナミン誘導体のみで発生し、有機感光層内部の大多数のエナミン誘導体は、元の、正孔輸送能に優れた状態を維持しているため、感光体の感度低下を引き起こすおそれもない。
【0043】
このため上記エナミン誘導体が、前記のように結着樹脂との相溶性に優れており、有機感光層中に、凝集等を生じることなく均一に、しかも多量に分散できることと相まって、本発明の電子写真感光体は、感度特性にも優れたものとなる。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を説明する。
〈エナミン誘導体〉本発明の電子写真感光体において、有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表面部に含有されるエナミン誘導体は、前記のように式 1-3
【0045】
【化5】
Figure 0003685482
で表されるものである。
【0046】
〈有機感光層〉有機感光層には、前述したように単層型感光層と積層型感光層とがあるが、本発明には、このいずれのものも適用可能である。
【0047】
このうち単層型感光層は、正孔輸送剤としての、前記式 1-3 で表されるエナミン誘導体と、電荷発生剤とを、結着樹脂とともに適当な有機溶媒に溶解または分散した塗工液を、塗布などの手段によって導電性基材上に塗布し、乾燥させることで形成される。
【0048】
以上に述べた単層型感光層は、層構成が簡単で生産性に優れている。
【0049】
また単層型感光層には、さらに電子輸送剤を含有させても良く、両極性の電荷輸送剤を併用した感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電にも対応できるという利点がある。
【0050】
一方、積層型感光層は、まず導電性基体上に、塗布または蒸着などの手段によって、電荷発生剤を含有する電荷発生層を形成し、ついでこの電荷発生層上に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗工液を、塗布などの手段によって塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成するか、もしくは上記と逆に、導電性基体上に電荷輸送層を形成し、その上に電荷発生層を形成することで構成される。
【0051】
また上記のうち電荷発生層には、電荷輸送層と逆極性の電荷輸送剤を含有させることができる。
【0052】
積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸送層の形成順序と、両層に含有させる電荷輸送剤の極性によって種々の組み合わせが考えられるが、本発明においては、上記のうち表面保護層と接する最表面部に位置する上側の層が、正孔輸送剤として機能する、式(1-3)のエナミン誘導体を含有している必要がある。
【0053】
したがって積層型感光層の具体例としては、(a)導電性基体上に、電荷発生剤と、必要に応じて電子輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、その上に、正孔輸送剤としての式(1-3)のエナミン誘導体を含有する電荷輸送層を積層した負帯電型の積層型感光層、(b)導電性基体上に、電子輸送剤を含有する電荷輸送層を形成し、その上に、電荷発生剤と、正孔輸送剤としての式(1-3)のエナミン誘導体とを含有する電荷発生層を積層した負帯電型の積層型感光層の2種が挙げられる。
【0054】
但し電荷発生層は、電荷輸送層に比べて膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成した上記(a)の構成がさらに好ましい。
【0055】
上記単層型もしくは積層型感光層に使用される電荷発生剤としては、例えばセレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、α−シリコンなどの無機光導電材料の粉末、式(CG−1):
【0056】
【化19】
Figure 0003685482
で表される無金属フタロシアニン、式(CG−2):
【0057】
【化20】
Figure 0003685482
で表されるチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン化合物の、種々の結晶型を有する結晶からなるフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔料、ペリレン系顔料、アンサンスロン系顔料、インジゴ系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料、ジチオケトピロロピロール系顔料などの、従来公知の種々の顔料が挙げられる。
【0058】
電荷発生剤は、感光層が所望の波長域に感度を有するように、それぞれ1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0059】
特に半導体レーザー等の赤外光を利用した、レーザービームプリンタや普通紙ファクシミリ装置等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、電荷発生剤として、前記例示のうちフタロシアニン系顔料が好適に使用される。
【0060】
また電子輸送剤としては、従来公知の種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0061】
特にベンゾキノン系化合物、ジフェノキノン系化合物〔例えば式(ET−1):
【0062】
【化21】
Figure 0003685482
で表される2,6−ジメチル−2‘,6’−t−ブチルベンゾキノンなど〕、ナフトキノン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオレノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプトアントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテン系化合物、2−フェニル−1,4−ベンゾキノン系化合物、2−フェニル−1,4−ナフトキノン系化合物、5,12−ナフタセンキノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4′−ニトロスチルベン系化合物、ならびに、ベンゾキノン系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電子吸引性化合物が好適に使用される。
【0063】
これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
【0064】
本発明においては、正孔輸送剤である前記式(1-3)のエナミン誘導体とともに、他の正孔輸送剤を併用しても良い。
【0065】
当該他の正孔輸送剤としては、従来公知の種々の正孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0066】
特にスチルベン系化合物、ベンジジン系化合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキサジアゾール系化合物〔例えば2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールなど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセンなど〕、カルバゾール系化合物〔例えば式(HT−1):
【0067】
【化22】
Figure 0003685482
で表される繰り返し単位を有するポリ−N−ビニルカルバゾールなど〕、式(HT−2):
【0068】
【化23】
Figure 0003685482
〔式中、Ra、Rbは同一または異なって、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラルキル基を示す。〕で表される繰り返し単位を有する有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物〔例えば1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリンなど〕、ヒドラゾン系化合物〔例えば式(HT−3):
【0069】
【化24】
Figure 0003685482
で表されるジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾンなど〕、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒドラゾン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、およびジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用される。
これらはそれぞれ単独で使用される他、2種以上を併用することもできる。
【0070】
結着樹脂としては、例えばスチレン系重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂などの熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレ―ト、ウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂などがあげられる。
【0071】
これらはそれぞれ単独で使用できるほか、2種以上を併用することもできる。
【0072】
また、前記例示の正孔輸送剤うち、ポリ−N−ビニルカルバゾールや有機ポリシラン化合物等の高分子の正孔輸送剤を、式(1-3)のエナミン誘導体と併用する場合は、当該化合物を結着樹脂としても機能させて、上記例示の通常の結着樹脂を省略することもできる。
【0073】
感光層には、上記各成分の他に、例えばフルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添加することもできる。また感光体の感度を向上させるために、例えばターフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレンなどの増感剤を添加してもよい。
【0074】
単層型感光層においては、結着樹脂100重量部に対して、電荷発生剤を0.1〜50重量部、特に0.5〜30重量部の割合で、また正孔輸送剤を5〜500重量部、特に25〜200重量部の割合で、それぞれ含有させるのが好ましい。
【0075】
このうち正孔輸送剤の含有割合は、式(1-3)のエナミン誘導体を単独で用いる場合は、当該エナミン誘導体の含有割合であり、エナミン誘導体と他の正孔輸送剤とを併用する場合は、両者の合計の含有割合である。
【0076】
またエナミン誘導体と他の正孔輸送剤とを併用する場合、当該他の正孔輸送剤は、前述したエナミン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有させるのが好ましい。具体的には他の正孔輸送剤を、エナミン誘導体100重量部に対して30重量部以下の割合で配合するのが好ましい。
【0077】
また電子輸送剤を併用する場合は、結着樹脂100重量部に対して、当該電子輸送剤を5〜100重量部、特に10〜80重量部の割合で含有させるのが好ましい。またこの際、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重量部、特に30〜200重量部が好ましい。
【0078】
単層型感光層の厚みは5〜100μm、特に10〜50μm程度が好ましい。
【0079】
積層型感光層のうち電荷発生層は、電荷発生剤単独で形成される場合と、結着樹脂中に、電荷発生剤と、前記のように必要に応じて電子輸送剤とを分散させて形成される場合とがあり、このうち後者の構成では、結着樹脂100重量部に対して、電荷発生剤を5〜1000重量部、特に30〜500重量部の割合で、また電子輸送剤を1〜200重量部、特に5〜100重量部の割合で、それぞれ含有させるのが好ましい。
【0080】
また電荷輸送層においては、結着樹脂100重量部に対して、正孔輸送剤を10〜500重量部、特に25〜200重量部の割合で含有させるのが好ましい。
【0081】
正孔輸送剤の含有割合は、先の、単層型感光層の場合と同様に、式(1-3)のエナミン誘導体を単独で用いる場合は、当該エナミン誘導体の含有割合であり、エナミン誘導体と他の正孔輸送剤とを併用する場合は、両者の合計の含有割合である。
【0082】
またエナミン誘導体と他の正孔輸送剤とを併用する場合、当該他の正孔輸送剤は、前述したエナミン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有させるのが好ましい。具体的には他の正孔輸送剤を、エナミン誘導体100重量部に対して30重量部以下の割合で配合するのが好ましい。
【0083】
積層型感光層の厚みは、電荷発生層が0.01〜5μm、特に0.1〜3μm程度、電荷輸送層が2〜100μm、特に5〜50μm程度が好ましい。
【0084】
上記単層型、または積層型の有機感光層と導電性基体との間や、あるいは積層型感光層を構成する電荷発生層と電荷輸送層との間には、感光体の特性を阻害しない範囲で中間層、バリア層を形成しても良い。
【0085】
感光体を構成する各層を、塗布の方法により形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送剤、結着樹脂などを、前述したテトラヒドロフランなどの有機溶媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカーあるいは超音波分散器などを用いて分散混合して塗工液を調整し、これを公知の手段により塗布、乾燥すればよい。
【0086】
塗工液を作るための有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエ―テル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコ―ルジメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの1種または2種以上があげられる。
【0087】
さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散性、感光層表面の平滑性をよくするため、塗工液には界面活性剤、レベリング剤などを添加してもよい。〈表面保護層〉上記有機感光層の上に積層、形成される無機の表面保護層としては金属元素〔長周期型周期表のうちホウ素(B)とアスタチン(At)とを結ぶ線より左側にある元素〕、および炭素からなる群より選ばれた少なくとも1種の元素、またはこれらの元素を含む無機の化合物からなる、従来公知の種々の表面保護層が挙げられる。
【0088】
この表面保護層は、例えばプラズマCVD法、光CVD法等の化学蒸着法、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法など、従来公知の種々の気相成長法によって形成することができる。
【0089】
このうちプラズマCVD法等の化学蒸着法では、ケイ素−窒素(SiN)複合膜、炭素−窒素(CN)複合膜が形成される。
【0090】
またこれらの膜には、表面保護層の電気的特性を向上するために、微量の水素(H)を含有させることもできる。
【0091】
化学蒸着法において、表面保護層の構成元素を導入するために使用できる原料ガスとしては、各構成元素の分子、酸化物、水素化物、窒化物、ハロゲン化物等の、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは成膜条件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。また必要に応じてこれらの化合物を、水素ガス(H2)、ヘリウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等のガスによって希釈しても良い。
【0092】
原料ガスの具体例としては、例えばケイ素導入用としてシランガス(SiH4)、ジシランガス(Si26)、炭素導入用としてメタンガス(CH4)、エタンガス(C26)、プロパンガス(C38)、エチレンガス(C24)、窒素導入用として窒素ガス(N2)、アンモニアガス(NH3)、窒素酸化物ガス(NOX)などがそれぞれ挙げられる。
【0093】
その他の構成元素についても同様であって、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは膜形成条件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。
【0094】
また物理蒸着法、特にスパッタリング法やイオンプレーティング法では、前記各膜に加えて、例えば13族であればガリウム(Ga)、インジウム(In)等、14族であればゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、15族であればヒ素(As)、アンチモン(Sb)等、16族であればセレン(Se)等を含む各種金属元素の1種または2種以上からなる膜や、あるいは上記金属元素を含む無機の化合物からなる膜を形成することができる。
【0095】
無機の表面保護層の厚みは0.01〜30μm、特に0.1〜10μm程度が好ましい。
【0096】
表面保護層を形成する無機の膜は非晶質、マイクロクリスタル、および結晶のいずれの形態の膜であっても良く、非晶質と結晶とが混在した膜であっても良い。
〈導電性基体〉上記各層が形成される導電性基体としては、導電性を有する種々の材料を使用することができる。例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上記金属が蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示される。
【0097】
要するに基体自体が導電性を有するか、あるいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有するものが好ましい。
【0098】
導電性基体の形状は使用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状、ドラム状などのいずれであってもよい。
【0099】
【実施例】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明する。
[実施例1]
〈単層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶5重量部と、正孔輸送剤としての、前記式(1−3)で表されるエナミン誘導体100重量部と、電子輸送剤としての、前記式(ET−1)で表される2,6−ジメチル−2‘,6’−t−ブチルベンゾキノン80重量部と、結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重量平均分子量20000)100重量部とを、テトラヒドロフラン800重量部とともにボールミルを用いて50時間、混合、分散させて単層型感光層用の塗工液を作製した。
【0100】
次いでこの塗工液を、導電性基材であるφ60のアルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布し、100℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚25μmの単層型感光層を形成した。〈表面保護層の形成〉上記のようにして単層型感光層が形成されたアルミニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセットしたのち、到達真空度0.67Paまで真空引きするとともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に調整した。
【0101】
次いでチャンバ内に、シランガス(SiH 4 )、窒素ガス(N 2 および水素ガス(H2)を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに調整した。
シランガス:15SCCM
窒素ガス:150SCCM
水素ガス:75SCCM
次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MHz、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の表面に、0. 2μm/hrの成膜速度で、ケイ素−窒素(SiN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護層を成膜した。
【0102】
[比較例1]正孔輸送剤として、前記式(HT−3)で表されるジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン80重量部を使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の電子写真感光体を製造した。
【0103】
〈感度特性試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加え、グリッド電圧調整することでその表面を+800±20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定した。
【0104】
次いで試験機の露光光源であるハロゲンランプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長780nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2になるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μJ/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として測定した。
〈耐久性試験(1)〉各実施例、比較例の電子写真感光体を静電式複写機〔京セラミタ(株)製の商品名Creage7350〕に搭載して連続10万枚の複写を行い、途中1万枚、2万枚、5万枚の複写後と、10万枚の複写後にそれぞれ表面保護層を目視にて観察して、下記の基準で、電子写真感光体の耐久性を評価した。
○:表面保護層に、クラックや剥離などは全く見られず、感光体の耐久性は良好であった。
△:表面保護層は剥離していなかったが、その全面にクラックが入っており、感光体の耐久性はやや不良であった。
×:表面保護層が剥離しており、感光体の耐久性は不良であった。
以上の結果を表1に示す。
【0105】
【表1】
Figure 0003685482
表より、エナミン誘導体に代えてエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾンを使用した比較例 1の感光体は連続2万枚の複写後に、表面保護層が剥離しているのが確認され、このことからこれらの化合物では、無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られないことが判った。
【0106】
また比較例の感光体は、露光後の残留電位が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下することも判明した。
【0107】
これに対し、実施例の感光体はいずれも、連続10万枚の複写後も、表面保護層にクラックや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことから、エナミン誘導体を使用することで、無機の表面保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0108】
また上記各実施例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、良好な感度を有することも確認された。
【0109】
実施例2、比較例2]単層型感光層の表面に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程により、非晶質の炭素−窒素(CN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例1、比較例1と同様にして、それぞれ実施例2、、比較例2の電子写真感光体を製造した。
〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセットしたのち、到達真空度0.67Paまで真空引きするとともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に調整した。
【0110】
次いでチャンバ内に、メタンガス(CH4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに調整した。
【0111】
メタンガス:100SCCM
窒素ガス:150SCCM
水素ガス:100SCCM
次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MHz、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−窒素(CN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護層を成膜した。上記実施例、比較例の電子写真感光体について、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表2に示す。
【0112】
【表2】
Figure 0003685482
表より、表面保護層の種類をさらに違えても、下地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0113】
すなわちエナミン誘導体に代えてジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾンを使用した比較例 2の感光体は連続2万枚の複写後に表面保護層が剥離しているのが確認された。そしてこのことから、上記化合物では、無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られないことが判った。
【0114】
また各比較例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下することも判明した。
【0115】
これに対し、実施例の感光体はいずれも、連続10万枚の複写後も、表面保護層にクラックや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことから、エナミン誘導体を使用することで、無機の表面保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0116】
また上記各実施例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、良好な感度を有することも確認された。
【0117】
なお、感光層が実施例1、2と同様で表面保護層のない感光体および、実施例1〜4の感光体について、耐久性試験(1)と同様にして複写試験を行ない、画像を評価した。その結果、前者では2万枚〜8万枚で画像濃度が低下して、ベタ黒部のかすれ等が発生したが、後者では10万枚複写後も画像不良がなく、表面保護層の形成により感光体の耐久性が向上したことが確認された。
【0118】
感光層が比較例1、2と同様で表面保護層のない感光体について、上記と同様の複写試験を行なったところ、比較例については3〜5万枚程度で画像濃度が低下しベタ黒部のかすれ等が発生した。これらの結果と、それぞれに対応する比較例の耐久試験(1)の結果とを比べると、表面保護層を形成しても耐久性が変わらないか、低下することがわかる。
【0119】
これらのことより、有機感光層に表面保護層を形成すれば,一様に感光体の耐久性が向上するわけではなく、正孔輸送剤の選択を誤ると、むしろ耐久性が低下してしまうのである。単層型感光層に式(1−3)のエナミンを有する実施例1〜18の感光体は、表面保護層の形成によりその耐久性を大幅に向上させることができた。
実施例3
〈積層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶2.5重量部と、結着樹脂としてのポリビニルブチラール1重量部とを、テトラヒドロフラン15重量部とともにボールミルを用いて混合、分散させて、積層型感光層のうち電荷発生層用の塗工液を作製した。
【0120】
次いでこの塗工液を、導電性基材であるφ100のアルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布し、110℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚0.5μmの電荷発生層を形成した。
【0121】
次に、正孔輸送剤としての、前記式(1−3)で表されるエナミン誘導体0.8重量部と、結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重量平均分子量Mw=20000)1重量部とを、テトラヒドロフラン10重量部とともにボールミルを用いて混合、分散させて、積層型感光層のうち電荷輸送層用の塗工液を作製した。
【0122】
そしてこの塗工液を、上記電荷発生層上に、ディップコート法によって塗布し、110℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形成して、負帯電型の積層型感光層を形成した。
〈表面保護層の形成〉上記のようにして形成した積層型感光層上に、前記実施例1と同条件で、プラズマCVD法により、非晶質の炭素−窒素(CN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜して、実施例の電子写真感光体を製造した。
【0123】
比較例3]正孔輸送剤として、前記式(HT−3)で表されるジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン0.8重量部を使用したこと以外は実施例19と同様にして、比較例3の電子写真感光体を製造した。
【0124】
〈感度特性試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加え、グリッド電圧調整することでその表面を−800±20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定した。
【0125】
次いで試験機の露光光源であるハロゲンランプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長780nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2になるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μJ/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として測定した。
【0126】
耐久性試験(2)
各実施例、比較例の電子写真感光体を静電式複写機〔京セラミタ(株)製の商品名Vi7360〕に搭載して連続10万枚の複写を行い、途中1万枚、2万枚、5万枚の複写後と、10万枚の複写後にそれぞれ表面保護層を目視にて観察して、下記の基準で、電子写真感光体の耐久性を評価した。
○:表面保護層に、クラックや剥離などは全く見られず、感光体の耐久性は良好であった。
△:表面保護層は剥離していなかったが、その全面にクラックが入っており、感光体の耐久性はやや不良であった。
×:表面保護層が剥離しており、感光体の耐久性は不良であった。
以上の結果を3に示す。
【0127】
【表3】
Figure 0003685482
表より、単層型感光層を積層型感光層に代えても、その最表面部である電荷輸送層の構成に基づいて、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0128】
すなわちエナミン誘導体に代えてジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾンを使用した比較例3の感光体はいずれも、連続2万枚の複写後に、表面保護層が剥離しているのが確認された。そしてこのことから、これらの化合物では、無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られないことが判った。
【0129】
また両比較例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下することも判明した。
【0130】
これに対し、実施例3の感光体はいずれも、連続10万枚の複写後も、表面保護層にクラックや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことから、エナミン誘導体を使用することで、無機の表面保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0131】
また上記各実施例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、良好な感度を有することも確認された。
実施例4、比較例4]積層型感光層の表面に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例2、比較例2と同じ工程により、非晶質のケイ素−窒素(SiN)厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例3比較例3と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造した。
【0132】
上記各実施例、比較例の電子写真感光体について、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表2に示す。
【0133】
表より、表面保護層の種類を違えても、下地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に基づいて、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0134】
すなわちエナミン誘導体に代えてジエチルアミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾンを使用した比較例4の感光体はいずれも、連続2万枚の複写後に、表面保護層が剥離しているのが確認された。また特に比較例の感光体は、連続1万枚の複写後に既に、表面保護層の全体にクラックが入っているのが確認された。そしてこのことから、これらの化合物では、無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られないことが判った。
【0135】
また両比較例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下することも判明した。
【0136】
これに対し、実施例4の感光体はいずれも、連続10万枚の複写後も、表面保護層にクラックや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことから、エナミン誘導体を使用することで、無機の表面保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0137】
また上記各実施例の感光体はいずれも、露光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことから、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、良好な感度を有することも確認された。
【0138】
なお、感光層が実施例3.、4と同様で表面保護層のない感光体および、実施例3、4の感光体について、耐久性試験(2)と同様にして複写試験を行ない、画像を評価した。その結果、前者では2万枚〜8万枚で画像濃度が低下して、ベタ黒部のかすれ等が発生したが、後者では10万枚複写後も画像不良がなく、表面保護層の形成により感光体の耐久性が向上したことが確認された。
【0139】
それぞれに対応する比較例の耐久試験(2)の結果とを比べると、表面保護層を形成しても耐久性が変わらないか、低下することがわかる。
【0140】
これらのことより、有機感光層に表面保護層を形成すれば,一様に感光体の耐久性が向上するわけではなく、正孔輸送剤の選択を誤ると、むしろ耐久性が低下してしまうのである。積層型感光層に式(1-3)のエナミンを有する実施例3、4の感光体は、単層型感光層の場合と同様に表面保護層の形成によりその耐久性を大幅に向上させることができた。

Claims (5)

  1. 導電性基体上に、有機感光層と、無機の表面保護層をこの順に積層した電子写真感光体であって、上記有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表面部が、式(1− 3
    Figure 0003685482
    で表されるエナミン誘導体を含有し、前記表面保護層がケイ素−と窒素の複合膜、または炭素と窒素の複合膜であることを特徴とする電子写真感光体。
  2. 表面保護層が、気相成長法によって成膜された層であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  3. 有機感光層が、結着樹脂中に、電荷発生剤と、正孔輸送剤としての式 1-3 で表されるエナミン誘導体とを含有する単層型感光層であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
  4. 前記結着樹脂中に電子輸送剤を含有することを特徴とする請求項記載の電子写真感光体。
  5. 有機感光層が、電荷発生剤を含有する電荷発生層と、結着樹脂中に、正孔輸送剤としての式 1-3 で表されるエナミン誘導体を含有する電荷輸送層とをこの順に積層した積層型感光層であることを特徴とする請求項1記載の電子写真感光体。
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