JP2002107979A - 電子写真感光体 - Google Patents

電子写真感光体

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JP2002107979A
JP2002107979A JP2000293943A JP2000293943A JP2002107979A JP 2002107979 A JP2002107979 A JP 2002107979A JP 2000293943 A JP2000293943 A JP 2000293943A JP 2000293943 A JP2000293943 A JP 2000293943A JP 2002107979 A JP2002107979 A JP 2002107979A
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Japan
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surface protective
protective layer
photosensitive layer
formula
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Application number
JP2000293943A
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English (en)
Inventor
Eiichi Miyamoto
栄一 宮本
Yoshio Inagaki
義雄 稲垣
Hideaki Fukunaga
秀明 福永
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Kyocera Corp
Kyocera Document Solutions Inc
Original Assignee
Kyocera Corp
Kyocera Mita Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 実使用環境下や長期の保管等によってクラッ
クや剥離を生じにくい、物理的な安定性に優れた無機の
表面保護層を有し、これまでよりも耐久性に優れた有機
の電子写真感光体を提供する。 【解決手段】 有機感光層と、無機の表面保護層とをこ
の順に積層してなり、このうち有機感光層の、少なくと
も表面保護層に接する最表面部が、式(1): 【化1】 〔式中、R1はアルキル基またはアリール基を示す。〕
または、式(2): 【化2】 〔式中、R2およびR3はアルキル基またはアリール基を
示す。〕または、式(3): 【化3】 〔式中、R4はアルキル基またはアリール基を示す。R5
はアルキル基、アリール基または式(4): 【化4】 (式中、R6はアルキル基、アリール基を示す。)で表
される基を示す。〕で表されるナフトキノン誘導体を含
有する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真感光体に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】静電式複写機、レーザープリンタ、普通
紙ファクシミリ装置などの画像形成装置に使用される電
子写真感光体としては、下記の各成分を組み合わせて形
成するいわゆる有機感光体が広く普及している。 ・光照射により電荷(正孔と電子)を発生する電荷発生
剤。 ・発生した電荷を輸送する電荷輸送剤(電荷輸送剤は、
電荷のうち正孔を輸送する正孔輸送剤と、電子を輸送す
る電子輸送剤に大別される)。 ・成膜性を有する結着樹脂。
【0003】有機感光体は、無機半導体材料を用いた無
機感光体に比べて製造が容易で、安価に製造できるとい
う利点がある。
【0004】また有機感光体は、上記電荷発生剤、電荷
輸送剤、結着樹脂などの材料の選択肢が多様であり、機
能設計の自由度が大きいという利点もある。
【0005】上記有機感光体は、導電性基体上に、単層
型もしくは積層型の感光層を形成することで構成され
る。
【0006】このうち単層型感光層は、電荷発生剤を、
電荷輸送剤(正孔輸送剤および/または電子輸送剤)と
ともに結着樹脂中に分散することで形成される。
【0007】また積層型感光層は、電荷発生剤を含有す
る電荷発生層と、電荷輸送剤(正孔輸送剤または電子輸
送剤)を含有する電荷輸送層とを積層することで形成さ
れる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】有機感光体は、上記の
ように様々な利点を有するものの、実使用環境下での感
光層の削れ、傷などが発生しやすく、無機感光体に比べ
て耐久性が十分でないという問題がある。
【0009】そこでこの問題を解決して、有機感光体の
耐久性を向上すべく、最表層に表面保護層を積層するこ
とが検討されている。
【0010】表面保護層の、広く一般に採用されている
例としては、有機感光層との密着性、親和性、積層状態
での一体性、成膜作業の一貫性などを考慮して、例えば
成膜性を有する結着樹脂の層や、あるいは上記結着樹脂
中に、金属酸化物等の導電性微粒子を分散させた層など
の有機の層が挙げられる。
【0011】しかしこの有機の層を表面保護層として使
用した電子写真感光体は、繰り返し使用時の残留電位上
昇や帯電性低下、環境(温度、湿度等)の変化による感
度特性の変動等が大きいという問題がある。
【0012】それゆえ近時、金属元素や炭素、あるいは
これら元素を含む無機の化合物等の、無機の材料からな
る、高硬度でかつ耐磨耗性に優れた無機の層を表面保護
層として、例えばスパッタリング法、プラズマCVD
法、光CVD法等の気相成長法などによって、有機感光
層上に積層、成膜することが検討されている。
【0013】この、表面保護層は有機感光層を保護し、
上記の問題点を解消するために用いられるものである。
すなわち、有機感光層上に無機の表面保護層を設けた感
光体は、有機感光層で電荷の発生や輸送などを受け持
ち、表面保護層で感光体の耐久性や耐環境性を受け持つ
という、それぞれの層の特性に応じた機能を有するので
ある。
【0014】しかしながら無機の表面保護層は、有機の
層に比べて有機感光層との間で十分な密着性を得ること
が難しい上、たとえ成膜方法や成膜条件の調整等によっ
て成膜初期の密着性を確保できたとしても、実使用環境
下や、あるいは長期の保管時等に感光体に加わる様々な
ストレスによってクラックが入ったり剥離したりしやす
いという問題がある。
【0015】すなわち、互いに異質の材料からなる有機
感光層と無機の表面保護層とは、有機の層同士、あるい
は無機の層同士のような緊密な密着性、親和性、一体性
が得られず、非常に弱い結合力でもって互いに結合され
ているだけであることが多い。
【0016】このため感光体が、例えば画像形成装置の
クリーニングブレードの圧接等による機械的ストレス
や、あるいは装置運転時の加熱と停止時の冷却の繰り返
し、もしくは保管時の温度変化等による熱的ストレスな
どを受けると、互いの硬度や柔軟性、膨張収縮特性等が
大きく異なることが原因となって、前記のように無機の
表面保護層にクラックが入ったり、表面保護層が有機感
光層から剥離したりするのである。
【0017】それゆえ従来の無機の表面保護層は、有機
感光層の耐久性を向上する効果が未だ十分でないため、
実用化されるに至っていないのが現状である。
【0018】本発明の目的は、実使用環境下や長期の保
管等によってクラックや剥離を生じにくい、物理的な安
定性に優れた無機の表面保護層を有し、これまでよりも
耐久性に優れた有機の電子写真感光体を提供することに
ある。
【0019】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課
題を解決するために、発明者らは、無機の表面保護層の
成膜過程について分析、検討を行った。
【0020】その結果、有機感光層の最表面部におけ
る、表面保護層の成膜初期の状態が、当該表面保護層
の、その後の物理的な安定性に大きく影響することを見
出した。
【0021】すなわち成膜初期の段階では、表面保護層
を構成する無機材料と、有機感光層の最表面部に露出し
た材料の一部とが何らかの形で結合して膜成長の核とな
り、この核を中心として無機材料の膜が成長して表面保
護層が形成され、また形成された表面保護層において
は、上記核の部分が、有機感光層との結合点として機能
して、両層間の密着性を確保する働きをする。
【0022】このため個々の結合点での、有機感光層と
無機材料との結合力の大小、並びに有機感光層と表面保
護層との界面における、結合点の、単位面積あたりの個
数、すなわち密度の高低が、表面保護層の、有機感光層
との密着性、ひいては表面保護層の物理的安定性に大き
く影響する。
【0023】具体的には、個々の結合点での、有機感光
層と無機材料との結合力が大きく、また両層の界面にお
ける上記結合点の密度が高いほど、表面保護層の、有機
感光層に対する密着性が向上して、その物理的安定性が
良好になる。
【0024】通常の有機感光層は、前記のように電荷発
生剤、電荷輸送剤等の低分子の機能性材料を、層を構成
する結着樹脂中に分散した構造を有している。
【0025】このため、上記結合点に関する知見に鑑み
れば、層自体を構成し、しかも層の大半を占める結着樹
脂が、膜成長の核として、表面保護層を構成する無機材
料と結合するのが理想的であると考えられる。
【0026】しかし実際には、分子自体の安定性や反応
性、あるいは反応部位の関係から、電荷発生剤、電荷輸
送剤等の、層中に分散した低分子の材料のうち、有機感
光層の最表面部に露出したものが膜成長の核として機能
して、表面保護層の成膜が進行することが多い。
【0027】それゆえ上記低分子の材料の、無機材料と
の反応性の良否、および結合力の大小や、有機感光層を
構成する結着樹脂に対する相溶性、親和性の強弱、ある
いは材料自体の大きさ(分子量だけでなく、分子的、空
間的な広がりも含めた大きさ)なども、表面保護層の、
有機感光層との密着性、並びに物理的安定性に大きく影
響する。
【0028】つまり低分子の材料の、無機材料との反応
性が良好で、かつ結合力が大きいほど、表面保護層の、
有機感光層との密着性、並びに物理的安定性が向上す
る。
【0029】また低分子の材料の、有機感光層を構成す
る結着樹脂に対する相溶性、親和性が良好で、かつ材料
自体の大きさが大きいほど、いわゆるアンカー効果(投
錨効果)によって、やはり表面保護層の、有機感光層と
の密着性、物理的安定性が向上する。
【0030】また上記低分子の材料と無機材料との結合
形態としては、結合力の強弱を考慮すると分子結合が最
も好ましいが、この結合によって分子構造が変化する結
果、電荷のトラップが生成されるようなことがあると、
感光体の感度低下を引き起こすおそれがある。
【0031】したがって低分子の材料は、反応によって
電気的な特性を低下させる分子状態に移行しないことも
重要である。
【0032】このように、従来の感光層上に単に硬度の
大きい材料を積層するだけで、良好な画像形成ができる
感光体を、簡単に作製できるのではないことを見出し
た。また、上記のような条件で作製された感光体は、有
機感光層の電気的特性をそのまま維持しつつ、表面保護
層による耐久性、耐環境性を向上させることが可能にな
る。
【0033】そこで発明者らは、これらの知見を考慮し
つつ、有機感光層を構成する種々の材料について検討を
行った結果、正孔輸送剤として用いられる、式(1):
【0034】
【化5】
【0035】〔式中、R1はアルキル基またはアリール
基を示す。〕または、式(2):
【0036】
【化6】
【0037】〔式中、R2およびR3はアルキル基または
アリール基を示す。〕または、式(3):
【0038】
【化7】
【0039】〔式中、R4はアルキル基またはアリール
基を示す。R5はアルキル基、アリール基または式
(4):
【0040】
【化8】
【0041】(式中、R6はアルキル基、アリール基を
示す。)で表される基を示す。〕で表されるナフトキノ
ン誘導体が、これらの要求を満足する好適な材料である
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0042】すなわち本発明の電子写真感光体は、導電
性基体上に、有機感光層と、無機の表面保護層とをこの
順に積層したものであって、上記有機感光層の、少なく
とも表面保護層に接する最表面部が、上記式(1)、式
(2)または式(3)で表されるナフトキノン誘導体を
含有することを特徴としている。
【0043】上記式(1)、式(2)または式(3)で
表されるナフトキノン誘導体は、その分子全体にπ電子
共役系が広がっており、成膜初期の段階で、表面保護層
を構成する無機材料のうちとくに金属元素や炭素等を引
きつける機能を有しており、無機材料との反応性が高
い。
【0044】また上記の機能により、有機感光層の最表
面部に露出したナフトキノン誘導体が無機材料と結合し
て膜成長の核となる率が高いため、両層の界面における
結合点の密度が高い。
【0045】また膜成長の速度も速いため、有機感光層
が、気相成長法などによる表面保護層の成膜時に受ける
ダメージを極力減らすこともできる。
【0046】またナフトキノン誘導体は、分子中の二重
結合のうちπ結合が切れて、上記金属元素や炭素等と、
分子結合によって強固に結合される。特に、カルボニル
基のπ結合は炭素と酸素の電気陰性度が大きく異なるの
で、炭素が正、酸素が負となった双極性の共鳴構造に寄
与する反応性が大きくなり、有機感光層と無機材料との
結合力は非常に強いものとなる。
【0047】しかもナフトキノン誘導体は、平面状に拡
がった分子構造を有しており、分子的、空間的な広がり
も大きく、しかも結着樹脂との相溶性、親和性にも優れ
ているため、結着樹脂に対して良好なアンカー効果を示
す。
【0048】それゆえ有機感光層と無機材料との結合力
も大きい。
【0049】したがって本発明によれば、無機の表面保
護層の、有機感光層に対する密着性を向上して、当該表
面保護層の物理的安定性を改善できるため、実使用環境
下や長期の保管等によるクラックや剥離の発生を防止し
て、これまでよりも耐久性に優れた電子写真感光体を得
ることが可能となる。
【0050】またナフトキノン誘導体は、それ自体の電
子輸送能が高い上、前記のように金属元素や炭素等と分
子結合して分子構造が変化した状態でも、深い電荷のト
ラップを生成することがなく、しかも上記の結合は有機
感光層の最表面部に露出したごく一部のナフトキノン誘
導体のみで発生し、有機感光層内部の大多数のナフトキ
ノン誘導体は、元の、電子輸送能に優れた状態を維持し
ているため、感光体の感度低下を引き起こすおそれもな
い。
【0051】このため上記ナフトキノン誘導体が、前記
のように結着樹脂との相溶性に優れており、有機感光層
中に、凝集等を生じることなく均一に、しかも多量に分
散できることと相まって、本発明の電子写真感光体は、
感度特性にも優れたものとなる。
【0052】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を説明する。 〈ナフトキノン誘導体〉本発明の電子写真感光体におい
て、有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表
面部に含有されるナフトキノン誘導体は、前記のように
式(1):
【0053】
【化9】
【0054】〔式中、R1はアルキル基またはアリール
基を示す。〕または、式(2):
【0055】
【化10】
【0056】〔式中、R2およびR3はアルキル基または
アリール基を示す。〕または、式(3):
【0057】
【化11】
【0058】〔式中、R4はアルキル基またはアリール
基を示す。R5はアルキル基、アリール基または式
(4):
【0059】
【化12】
【0060】(式中、R6はアルキル基、アリール基を
示す。)で表される基を示す。〕で表されるものであ
る。
【0061】式中の基R1〜R6に相当するアルキル基と
しては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプ
ロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t
ert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オク
チル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの、
炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0062】式中の基R1〜R6に相当するアリール基と
しては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ビフェニ
リル、o−テルフェニル、ナフチル、アントリル、フェ
ナントリルなどの、炭素数6〜14のアリール基が挙げ
られる。
【0063】基R1〜R6に相当するアルキル基、アリー
ル基は置換基を有していても良く、具体的にはヒドロキ
シアルキル基、アルコキシアルキル基、モノアルキルア
ミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲ
ン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、
カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル
基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒド
ロキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル
基、シアノ基などの他、前述と同様の炭素数1〜12の
置換基を有してもよいアルキル基や炭素数1〜12の置
換基を有してもよいアルコキシ基などがあげられる。な
お、これらの置換基の置換位置については特に限定され
ない。
【0064】このようなナフトキノン誘導体の具体例と
しては、これに限定されないが、式(1)のナフトキノ
ン誘導体として、例えば下記式(1−1)〜(1−6)
で表される化合物等が挙げられる。
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】また、式(2)のナフトキノン誘導体とし
て、例えば下記式(2−1)〜(2−23)で表される
化合物等が挙げられる。
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
【化18】
【0072】
【化19】
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】また、式(3)のナフトキノン誘導体とし
て、例えば下記式(3−1)〜(3−11)で表される
化合物等が挙げられる。
【0076】
【化22】
【0077】
【化23】
【0078】
【化24】
【0079】上記ナフトキノン誘導体は、それぞれ1種
単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。 〈有機感光層〉有機感光層には、前述したように単層型
感光層と積層型感光層とがあるが、本発明には、このい
ずれのものも適用可能である。
【0080】このうち単層型感光層は、正孔輸送剤と、
電荷発生剤とを、結着樹脂とともに適当な有機溶媒に溶
解または分散した塗工液を、塗布などの手段によって導
電性基材上に塗布し、乾燥させることで形成されるのが
一般的である。本発明においては、さらに塗工液中に電
子輸送剤としての、前記式(1)、式(2)または式
(3)で表されるナフトキノン誘導体を溶解または分散
させて、単層型感光層を形成する。
【0081】以上に述べた単層型感光層は、層構成が簡
単で生産性に優れており、両極性の電荷輸送剤を併用し
ているので感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電に
も対応できるという利点がある。
【0082】一方、積層型感光層は、まず導電性基体上
に、塗布または蒸着などの手段によって、電荷発生剤を
含有する電荷発生層を形成し、ついでこの電荷発生層上
に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗工液を、塗布など
の手段によって塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成す
るか、もしくは上記と逆に、導電性基体上に電荷輸送層
を形成し、その上に電荷発生層を形成することで構成さ
れる。
【0083】また上記のうち電荷発生層には、電荷輸送
層と逆極性の電荷輸送剤を含有させることができる。
【0084】積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸
送層の形成順序と、両層に含有させる電荷輸送剤の極性
によって種々の組み合わせが考えられるが、本発明にお
いては、上記のうち表面保護層と接する最表面部に位置
する上側の層が、正孔輸送剤として機能する、式
(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導体
を含有している必要がある。
【0085】したがって積層型感光層の具体例として
は、(a)導電性基体上に、電荷発生剤と、必要に応じ
て電子輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、その上
に、正孔輸送剤を含有する(本発明においては、さらに
電子輸送剤としての前記式(1)、式(2)または式
(3)のナフトキノン誘導体を含有する)電荷輸送層を
積層した負帯電型の積層型感光層、(b)導電性基体上
に、電子輸送剤を含有する電荷輸送層を形成し、その上
に、電荷発生剤と、必要に応じて正孔輸送剤とを含有す
る(本発明においては、さらに電子輸送剤としての前記
式(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導
体を含有する)電荷発生層を積層した負帯電型の積層型
感光層、(c)導電性基体上に、電化発生剤と、必要に
応じて正孔輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、そ
の上に、電子輸送剤としての前記式(1)、式(2)ま
たは式(3)のナフトキノン誘導体を含有する電荷輸送
層を積層した正帯電型の積層型感光層、(d)導電性基
体上に、正孔輸送剤を含有する正孔輸送層を形成し、そ
の上に、電荷発生剤と、必要に応じて正孔輸送剤とを含
有する電荷発生層を形成し、さらにその上に、電子輸送
剤としての前記式(1)、式(2)または式(3)で表
されるナフトキノン誘導体を含有する電子輸送層を積層
した、正帯電型の積層型感光層、が挙げられる。
【0086】これらの内、負帯電型の積層型感光層の方
が正帯電型に比べて、光感度や残留電位などの電気的特
性が優れているため、負帯電型の構成が好ましい。
【0087】また、電荷発生層は、電荷輸送層に比べて
膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体
上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成し
た上記(a)の構成がさらに好ましい。
【0088】上記単層型もしくは積層型感光層に使用さ
れる電荷発生剤としては、例えばセレン、セレン−テル
ル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、α−シリコンなど
の無機光導電材料の粉末、式(CG−1):
【0089】
【化25】
【0090】で表される無金属フタロシアニン、式(C
G−2):
【0091】
【化26】
【0092】で表されるチタニルフタロシアニン等のフ
タロシアニン化合物の、種々の結晶型を有する結晶から
なるフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔
料、ペリレン系顔料、アンサンスロン系顔料、インジゴ
系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、ト
ルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔
料、ジチオケトピロロピロール系顔料などの、従来公知
の種々の顔料が挙げられる。
【0093】電荷発生剤は、感光層が所望の波長域に感
度を有するように、それぞれ1種単独で、あるいは2種
以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】特に半導体レーザー等の赤外光を利用し
た、レーザービームプリンタや普通紙ファクシミリ装置
等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以
上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、
電荷発生剤として、前記例示のうちフタロシアニン系顔
料が好適に使用される。
【0095】本発明においては、電子輸送剤である前記
式(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導
体とともに、他の電子輸送剤を併用しても良い。
【0096】当該他の電子輸送剤としては、従来公知の
種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0097】特にベンゾキノン系化合物、ジフェノキノ
ン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テ
トラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサ
ントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−ト
リニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼ
ン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニト
ロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジ
ブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオ
レノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイ
ミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプト
アントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合
物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテ
ン系化合物、ジフェノキノン系化合物、2−フェニル−
1,4−ベンゾキノン系化合物、5,12−ナフタセン
キノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4′
−ニトロスチルベン系化合物、ならびに、ベンゾキノン
系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電
子吸引性化合物が好適に使用される。
【0098】これらはそれぞれ単独で使用される他、2
種以上を併用することもできる。
【0099】正孔輸送剤としては、従来公知の種々の正
孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0100】特にスチルベン系化合物、ベンジジン系化
合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミ
ン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキ
サジアゾール系化合物〔例えば2,5−ジ(4−メチル
アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールな
ど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4−ジエチルア
ミノスチリル)アントラセンなど〕、カルバゾール系化
合物〔例えば式(HT−1):
【0101】
【化27】
【0102】で表される繰り返し単位を有するポリ−N
−ビニルカルバゾールなど〕、式(HT−2):
【0103】
【化28】
【0104】〔式中、Ra、Rbは同一または異なって、
アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラル
キル基を示す。〕で表される繰り返し単位を有する有機
ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物〔例えば1−フ
ェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリ
ンなど〕、ヒドラゾン系化合物〔例えば式(HT−
3):
【0105】
【化29】
【0106】で表されるジエチルアミノベンズアルデヒ
ドジフェニルヒドラゾンなど〕、トリフェニルアミン系
化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、
イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チア
ジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾー
ル系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合
物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合
物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒ
ドラゾン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、
およびジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用
される。
【0107】これらはそれぞれ単独で使用される他、2
種以上を併用することもできる。
【0108】結着樹脂としては、例えばスチレン系重合
体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリ
ロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、
アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポ
リエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポ
リエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド
樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、
ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹
脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエー
テル樹脂などの熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポ
キシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂そ
の他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレ
ート、ウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂など
があげられる。
【0109】これらはそれぞれ単独で使用できるほか、
2種以上を併用することもできる。
【0110】また、前記例示の正孔輸送剤うち、ポリ−
N−ビニルカルバゾールや有機ポリシラン化合物等の高
分子の正孔輸送剤を用いる場合は、当該化合物を結着樹
脂としても機能させて、上記例示の通常の結着樹脂を省
略することもできる。
【0111】感光層には、上記各成分の他に、例えばフ
ルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性
剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添加することも
できる。また感光体の感度を向上させるために、例えば
ターフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレンな
どの増感剤を添加してもよい。
【0112】単層型感光層においては、結着樹脂100
重量部に対して、電荷発生剤を0.1〜50重量部、特
に0.5〜30重量部の割合で、また正孔輸送剤を5〜
500重量部、特に25〜200重量部の割合で、それ
ぞれ含有させるのが好ましい。また、電子輸送剤は、結
着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、特に1
0〜80重量部の割合で含有させるのが好ましい。
【0113】このうち電子輸送剤の含有割合は、式
(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導体
を単独で用いる場合は、当該ナフトキノン誘導体の含有
割合であり、ナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤とを
併用する場合は、両者の合計の含有割合である。
【0114】またナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤
とを併用する場合、当該他の電子輸送剤は、前述したナ
フトキノン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有さ
せるのが好ましい。具体的には他の電子輸送剤を、ナフ
トキノン誘導体100重量部に対して30重量部以下の
割合で配合するのが好ましい。
【0115】またこの際、正孔輸送剤と電子輸送剤との
総量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重
量部、特に30〜200重量部が好ましい。
【0116】単層型感光層の厚みは5〜100μm、特
に10〜50μm程度が好ましい。
【0117】積層型感光層のうち電荷発生層は前述した
とおり、電荷発生剤単独で形成される場合と、結着樹脂
中に、電荷発生剤と、前記のように必要に応じて電荷輸
送剤(電子輸送剤または正孔輸送剤)とを分散させて形
成される場合とがあり、このうち後者の構成では、結着
樹脂100重量部に対して、電荷発生剤を5〜1000
重量部、特に30〜500重量部の割合で、また電子輸
送剤を含有させる場合は、当該電子輸送剤を1〜200
重量部、特に5〜100重量部の割合で、それぞれ含有
させるのが好ましい。正孔輸送剤を含有させる場合は1
〜200重量部、特に5〜100重量部の割合で含有さ
せるのが好ましい。
【0118】また電荷輸送層においては、結着樹脂10
0重量部に対して、電子輸送剤を含有させる場合は、当
該電子輸送剤を0.1〜250重量部、特に0.5〜1
50重量部の割合で、正孔輸送剤を含有させる場合は、
当該正孔輸送剤を10〜500重量部、特に25〜20
0重量部の割合でそれぞれ含有させるのが好ましい。
【0119】電子輸送剤の含有割合は、先の、単層型感
光層の場合と同様に、式(1)、式(2)または式
(3)のナフトキノン誘導体を単独で用いる場合は、当
該ナフトキノン誘導体の含有割合であり、ナフトキノン
誘導体と他の正孔輸送剤とを併用する場合は、両者の合
計の含有割合である。
【0120】またナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤
とを併用する場合、当該他の電子輸送剤は、前述したナ
フトキノン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有さ
せるのが好ましい。具体的には他の正孔輸送剤を、ナフ
トキノン誘導体100重量部に対して30重量部以下の
割合で配合するのが好ましい。
【0121】積層型感光層の厚みは、電荷発生層が0.
01〜5μm、特に0.1〜3μm程度、電荷輸送層が
2〜100μm、特に5〜50μm程度が好ましい。
【0122】上記単層型、または積層型の有機感光層と
導電性基体との間や、あるいは積層型感光層を構成する
電荷発生層と電荷輸送層との間には、感光体の特性を阻
害しない範囲で中間層、バリア層を形成しても良い。
【0123】感光体を構成する各層を、塗布の方法によ
り形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送
剤、結着樹脂などを、前述したテトラヒドロフランなど
の有機溶媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミ
ル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカーある
いは超音波分散器などを用いて分散混合して塗工液を調
整し、これを公知の手段により塗布、乾燥すればよい。
【0124】塗工液を作るための有機溶媒としては、例
えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタ
ノールなどのアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、
シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、ベンゼン、ト
ルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタ
ン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなど
のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエ
ーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エ
チレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコ
ールジメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メ
チルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、
酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルホ
ルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシドなどの1種または2種以上があげられる。
【0125】さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散
性、感光層表面の平滑性をよくするため、塗工液には界
面活性剤、レベリング剤などを添加してもよい。 〈表面保護層〉上記有機感光層の上に積層、形成される
無機の表面保護層としては金属元素〔長周期型周期表の
うちホウ素(B)とアスタチン(At)とを結ぶ線より
左側にある元素〕、および炭素からなる群より選ばれた
少なくとも1種の元素、またはこれらの元素を含む無機
の化合物からなる、従来公知の種々の表面保護層が挙げ
られる。
【0126】この表面保護層は、例えばプラズマCVD
法、光CVD法等の化学蒸着法、スパッタリング法、真
空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法な
ど、従来公知の種々の気相成長法によって形成すること
ができる。
【0127】このうちプラズマCVD法等の化学蒸着法
では、(1)14族元素のうち炭素(C)および/また
はケイ素(Si)からなる膜、すなわち炭素(C)の
膜、ケイ素(Si)の膜、またはケイ素−炭素(Si
C)複合膜、(2)上記炭素(C)および/またはケイ
素(Si)と、13族元素のうちホウ素(B)、アルミ
ニウム(Al)、15族元素のうち窒素(N)、リン
(P)、16族元素のうち酸素(O)、イオウ(S)、
17族元素のうちフッ素(F)、塩素(Cl)、および
臭素(Br)からなる群より選ばれた少なくとも1種の
元素との化合物からなる膜、例えばケイ素−窒素(Si
N)複合膜、ケイ素−酸素(SiO)複合膜、炭素−フ
ッ素(CF)複合膜、炭素−窒素(CN)複合膜、炭素
−ホウ素(CB)複合膜、炭素−酸素(CO)複合膜
等、(3)13族元素のうちホウ素(B)および/また
はアルミニウム(Al)と、上述した窒素(N)、リン
(P)、酸素(O)、イオウ(S)、フッ素(F)、塩
素(Cl)、および臭素(Br)からなる群より選ばれ
ら少なくとも1種の元素との化合物からなる膜、例えば
ホウ素−窒素(BN)複合膜、アルミニウム−窒素(A
lN)複合膜等、が形成される。
【0128】またこれらの膜には、表面保護層の電気的
特性を向上するために、微量の水素(H)を含有させる
こともできる。
【0129】化学蒸着法において、表面保護層の構成元
素を導入するために使用できる原料ガスとしては、各構
成元素の分子、酸化物、水素化物、窒化物、ハロゲン化
物等の、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは成膜
条件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。また
必要に応じてこれらの化合物を、水素ガス(H2)、ヘ
リウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等のガスによっ
て希釈しても良い。
【0130】原料ガスの具体例としては、例えばケイ素
導入用としてシランガス(SiH4)、ジシランガス(S
26)、炭素導入用としてメタンガス(CH4)、エ
タンガス(C26)、プロパンガス(C38)、エチレ
ンガス(C24)、フッ素導入用としてフッ素ガス(F
2)、一フッ化臭素ガス(BrF)、二フッ化塩素ガス
(ClF2)、四フッ化炭素ガス(CF4)、四フッ化ケ
イ素ガス(SiF4)、窒素導入用として窒素ガス
(N2)、アンモニアガス(NH3)、窒素酸化物ガス
(NOX)、ホウ素導入用として水素化ホウ素ガス〔ジ
ボランガス(B26)、テトラボランガス(B410
等〕などがそれぞれ挙げられる。
【0131】その他の構成元素についても同様であっ
て、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは膜形成条
件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。
【0132】また物理蒸着法、特にスパッタリング法や
イオンプレーティング法では、前記各膜に加えて、例え
ば13族であればガリウム(Ga)、インジウム(I
n)等、14族であればゲルマニウム(Ge)、スズ
(Sn)、鉛(Pb)、15族であればヒ素(As)、
アンチモン(Sb)等、16族であればセレン(Se)
等を含む各種金属元素の1種または2種以上からなる膜
や、あるいは上記金属元素を含む無機の化合物からなる
膜を形成することができる。
【0133】このうち無機の表面保護層として好適な膜
としては、例えば炭素(C)の膜やケイ素−炭素(Si
C)複合膜などが挙げられる。
【0134】無機の表面保護層の厚みは0.01〜30
μm、特に0.1〜10μm程度が好ましい。
【0135】表面保護層を形成する無機の膜は非晶質、
マイクロクリスタル、および結晶のいずれの形態の膜で
あっても良く、非晶質と結晶とが混在した膜であっても
良い。 〈導電性基体〉上記各層が形成される導電性基体として
は、導電性を有する種々の材料を使用することができ
る。例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バ
ナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、
ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真
鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上記金属が
蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる
基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化イ
ンジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示さ
れる。
【0136】要するに基体自体が導電性を有するか、あ
るいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、
導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有す
るものが好ましい。
【0137】導電性基体の形状は使用する画像形成装置
の構造に合わせて、シート状、ドラム状などのいずれで
あってもよい。
【0138】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。 [実施例1] 〈単層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式
(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶
5重量部と、正孔輸送剤と結着樹脂とを兼ねる、前記式
(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポリビニ
ルカルバゾール(数平均分子量Mn=9500)100
重量部と、電子輸送剤としての、前記式(1−5)で表
されるナフトキノン誘導体40重量部と、テトラヒドロ
フラン800重量部とともにボールミルを用いて50時
間、混合、分散させて単層型感光層用の塗工液を作製し
た。
【0139】次いでこの塗工液を、導電性基材であるア
ルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布
し、100℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚25μ
mの単層型感光層を形成した。 〈表面保護層の形成〉上記のようにして単層型感光層が
形成されたアルミニウム素管をプラズマCVD装置のチ
ャンバ内にセットしたのち、到達真空度0.67Paま
で真空引きするとともに、装置のヒータを使用して素管
の温度を50℃に調整した。
【0140】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、シランガス(SiH4)および水素ガス(H2
を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47h
Paに調整した。
【0141】メタンガス:208SCCM シランガス:2.5SCCM 水素ガス:300SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力133Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.2μm/hrの成膜速度で、非晶質のケイ
素−炭素(SiC)複合膜からなる、厚み0.5μmの
表面保護層を成膜して、実施例1の電子写真感光体を製
造した。 [実施例2〜7]電子輸送剤として、それぞれ表1に示
す式番号のナフトキノン誘導体40重量部を使用したこ
と以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7の電子写
真感光体を製造した。 [比較例1]電子輸送剤としてのナフトキノン誘導体を
用いないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の
電子写真感光体を製造した。 [実施例8〜14、比較例2]正孔輸送剤と結着樹脂と
を兼ねる、前記式(HT−1)で表される繰り返し単位
を有するポリビニルカルバゾールに代えて、正孔輸送剤
としての前記式(HT−3)で表されるジエチルアミノ
ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン80重量部、お
よび結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重量平均
分子量20000)100重量部を用いる以外は、実施
例1〜7、比較例1と同様にして、それぞれ実施例7〜
14、比較例2の電子写真感光体を製造した。 〈感度特性試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加
え、グリッド電圧調整することでその表面を+800±
20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定し
た。
【0142】次いで試験機の露光光源であるハロゲンラ
ンプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長7
80nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW
/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒
間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2に
なるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μ
J/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経
過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として
測定した。 〈繰り返し試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて、感度特性試験(1)と同様にし
て帯電−露光を行った後、除電ランプ(波長660n
m)により感光体表面の除電を行った。この帯電−露光
−除電のプロセスを連続で2000回繰り返して行い、
その時の表面電位V0(V)、半減露光量E1/2(μJ/
cm2)および残留電位Vr(V)を測定し、初期値との
変化にて安定性を評価した。このときの感光体ドラムの
回転速度は40rpmとした。 〈耐溶剤性試験(1)〉表面保護層と有機感光層との密
着性を調べるために、各実施例、比較例の電子写真感光
体の表面に、メタノールをスポイドにて滴下し、その時
の剥離、クラックの有無を確認した。
【0143】○:感光体表面に全く変化が無かった。
【0144】△:クラックが多少あるが剥離まで至らな
かった。
【0145】×:表面保護層の剥離が認められた。
【0146】以上の結果を表1および表2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】表より、前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例1、2の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離またはクラックが認められ、溶
剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を向上す
る効果が得られないことが判った。
【0150】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0151】これに対し、実施例1〜14の感光体はい
ずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラック
や剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0152】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例15〜21、比較例3]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素(C)からなる厚み0.5μmの表面
保護層を成膜したこと以外は実施例1〜7、比較例1と
同様にして、それぞれ実施例15〜21、比較例3の電
子写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0153】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)と水素ガス(H2)とを、それぞれ下記の流量で供
給して真空度を0.47hPaに調整した。
【0154】メタンガス:300SCCM 水素ガス:300SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力200Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.15μm/hrの成膜速度で、非晶質の炭
素(C)からなり、前記厚みを有する表面保護層を成膜
した。 [実施例22〜28、比較例4]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例8〜14、比較例2と同様にして、それぞれの
電子写真感光体を製造した。
【0155】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性
試験(1)を行って、その特性を評価した。結果を表3
および表4に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】表より、表面保護層の種類を違えても、下
地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と同じ結
果が得られることが確認された。
【0159】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例3、4の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して無機
の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られ
ないことが判った。
【0160】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0161】これに対し、実施例15〜28の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0162】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例29〜32、比較例5]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質のケイ素−窒素(SiN)複合膜からなる厚
み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例29〜32、比較例5の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0163】次いでチャンバ内に、シランガス(SiH
4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、それ
ぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに調
整した。
【0164】シランガス:15SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:75SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.75μm/hrの成膜速度で、ケイ素−窒
素(SiN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保
護層を成膜した。 [実施例33〜36、比較例6]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−窒素(CN)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例33〜36、比較例6の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0165】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、そ
れぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに
調整した。
【0166】メタンガス:100SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−窒素
(CN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護層
を成膜した。 [実施例37〜40、比較例7]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−ホウ素(CB)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例37〜40、比較例7の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0167】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、ジボランガス(B26)および水素ガス(H2
を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47h
Paに調整した。
【0168】メタンガス:100SCCM ジボランガス:200SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−ホウ
素(CB)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。 [実施例41〜44、比較例8]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−フッ素(CF)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例41〜44、比較例8の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0169】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、四フッ化炭素ガス(CF4)および水素ガス(H
2)を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.4
7hPaに調整した。
【0170】メタンガス:100SCCM 四フッ化炭素ガス:100SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−フッ
素(CF)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。 [実施例45〜48、比較例9]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質のホウ素−窒素(BN)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例45〜48、比較例9の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0171】次いでチャンバ内に、ジボランガス(B2
6)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、そ
れぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに
調整した。
【0172】ジボランガス:200SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:150SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.08μm/hrの成膜速度で、ホウ素−窒
素(BN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。
【0173】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性
試験(1)を行って、その特性を評価した。結果を表3
に示す。
【0174】
【表5】
【0175】表より、表面保護層の種類をさらに違えて
も、下地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と
同じ結果が得られることが確認された。
【0176】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例5〜9の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離またはクラックが認められ、溶
剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を向上す
る効果が得られないことが判った。
【0177】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0178】これに対し、実施例29〜48の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0179】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例49] 〈積層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式
(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶
2.5重量部と、結着樹脂としてのポリビニルブチラー
ル1重量部とを、テトラヒドロフラン15重量部ととも
にボールミルを用いて混合、分散させて、積層型感光層
のうち電荷発生層用の塗工液を作製した。
【0180】次いでこの塗工液を、導電性基材であるア
ルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布
し、110℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚0.5
μmの電荷発生層を形成した。
【0181】次に、正孔輸送剤と結着樹脂とを兼ねる、
前記式(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポ
リビニルカルバゾール(数平均分子量Mn=9500)
1重量部と、電子輸送剤としての、前記式(1−5)で
表されるナフトキノン誘導体0.2重量部と、テトラヒ
ドロフラン10重量部とともにとともにボールミルを用
いて混合、分散させて、積層型感光層のうち電荷輸送層
用の塗工液を作製した。
【0182】そしてこの塗工液を、上記電荷発生層上
に、ディップコート法によって塗布し、110℃で30
分間、熱風乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形
成して、負帯電型の積層型感光層を形成した。 〈表面保護層の形成〉上記のようにして形成した積層型
感光層上に、前記実施例1と同条件で、プラズマCVD
法により、非晶質のケイ素−炭素(SiC)複合膜から
なる、厚み0.5μmの表面保護層を成膜して、実施例
49の電子写真感光体を製造した。 [実施例50〜55]電子輸送剤として、それぞれ表6
に示す式番号のナフトキノン誘導体0.2重量部を使用
したこと以外は実施例49と同様にして、実施例50〜
55の電子写真感光体を製造した。 [比較例10]電子輸送剤としてのナフトキノン誘導体
を用いないこと以外は実施例49と同様にして、比較例
10の電子写真感光体を製造した。 [実施例56〜62、比較例11]正孔輸送剤と結着樹
脂とを兼ねる、前記式(HT−1)で表される繰り返し
単位を有するポリビニルカルバゾールに代えて、正孔輸
送剤としての前記式(HT−3)で表されるジエチルア
ミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン0.8重量
部、および結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重
量平均分子量20000)1重量部を用いる以外は、実
施例49〜55、比較例10と同様にして、それぞれ実
施例56〜62、比較例11の電子写真感光体を製造し
た。 〈感度特性試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加
え、グリッド電圧調整することでその表面を−800±
20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定し
た。
【0183】次いで試験機の露光光源であるハロゲンラ
ンプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長7
80nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW
/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒
間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2に
なるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μ
J/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経
過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として
測定した。 〈繰り返し試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて、感度特性試験(1)と同様にし
て帯電−露光を行った後、除電ランプ(波長660n
m)により感光体表面の除電を行った。この帯電−露光
−除電のプロセスを連続で2000回繰り返して行い、
その時の表面電位V0(V)、半減露光量E1/2(μJ/
cm2)および残留電位Vr(V)を測定し、初期値との
変化にて安定性を評価した。このときの感光体ドラムの
回転速度は40rpmとした。 〈耐溶剤性試験(2)〉表面保護層と有機感光層との密
着性を調べるために、各実施例、比較例の電子写真感光
体の表面に、メタノールをスポイドにて滴下し、その時
の剥離、クラックの有無を確認した。
【0184】○:感光体表面に全く変化が無かった。
【0185】△:クラックが多少あるが剥離まで至らな
かった。
【0186】×:表面保護層の剥離が認められた。
【0187】以上の結果を表6および表7に示す。
【0188】
【表6】
【0189】
【表7】
【0190】表より、単層型感光層を積層型感光層に代
えても、その最表面部である電荷輸送層の構成に基づい
て、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0191】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例10、11の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して
無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得
られないことが判った。
【0192】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0193】これに対し、実施例49〜62の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0194】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例63〜69、比較例12]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例49〜55、比較例10と同様にして、それぞ
れの電子写真感光体を製造した。 [実施例70〜76、比較例13]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例56〜62、比較例11と同様にして、それぞ
れの電子写真感光体を製造した。
【0195】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性
試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表8
および表9に示す。
【0196】
【表8】
【0197】
【表9】
【0198】表より、表面保護層の種類を違えても、下
地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に基づい
て、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0199】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例12、13の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して
無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得
られないことが判った。
【0200】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0201】これに対し、実施例63〜76の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0202】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例77〜80、比較例14]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例29〜3
2、比較例5と同じ工程により、非晶質のケイ素−窒素
(SiN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層
を成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比
較例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製
造した。 [実施例81〜84、比較例15]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例33〜3
6、比較例6と同じ工程により、非晶質の炭素−窒素
(CN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を
成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比較
例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造
した。 [実施例85〜88、比較例16]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例37〜4
0、比較例7と同じ工程により、非晶質の炭素−ホウ素
(CB)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を
成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比較
例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造
した。 [実施例89〜92、比較例17]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例41〜4
4、比較例8と同じ工程により、非晶質の炭素−フッ素
(CF)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を
成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比較
例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造
した。 [実施例93〜96、比較例18]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例45〜4
8、比較例9と同じ工程により、非晶質のホウ素−窒素
(BN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を
成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比較
例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造
した。
【0203】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性
試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表1
0に示す。
【0204】
【表10】
【0205】表より、表面保護層の種類をさらに違えて
も、下地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に
基づいて、前記と同じ結果が得られることが確認され
た。
【0206】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例14〜18の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離またはクラックが認めら
れ、溶剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を
向上する効果が得られないことが判った。
【0207】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0208】これに対し、実施例77〜96の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0209】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年7月9日(2001.7.9)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 電子写真感光体
【特許請求の範囲】
【化1】 〔式中、R1はアルキル基またはアリール基を示す。〕
または、式(2):
【化2】 〔式中、R2およびR3はアルキル基またはアリール基を
示す。〕または、式(3):
【化3】 〔式中、R4はアルキル基またはアリール基を示す。R5
はアルキル基、アリール基または式(4):
【化4】 (式中、R6はアルキル基、アリール基を示す。)で表
される基を示す。〕で表されるナフトキノン誘導体を含
有することを特徴とする電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真感光体に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】静電式複写機、レーザープリンタ、普通
紙ファクシミリ装置などの画像形成装置に使用される電
子写真感光体としては、下記の各成分を組み合わせて形
成するいわゆる有機感光体が広く普及している。 ・光照射により電荷(正孔と電子)を発生する電荷発生
剤。 ・発生した電荷を輸送する電荷輸送剤(電荷輸送剤は、
電荷のうち正孔を輸送する正孔輸送剤と、電子を輸送す
る電子輸送剤に大別される)。 ・成膜性を有する結着樹脂。
【0003】有機感光体は、無機半導体材料を用いた無
機感光体に比べて製造が容易で、安価に製造できるとい
う利点がある。
【0004】また有機感光体は、上記電荷発生剤、電荷
輸送剤、結着樹脂などの材料の選択肢が多様であり、機
能設計の自由度が大きいという利点もある。
【0005】上記有機感光体は、導電性基体上に、単層
型もしくは積層型の感光層を形成することで構成され
る。
【0006】このうち単層型感光層は、電荷発生剤を、
電荷輸送剤(正孔輸送剤および/または電子輸送剤)と
ともに結着樹脂中に分散することで形成される。
【0007】また積層型感光層は、電荷発生剤を含有す
る電荷発生層と、電荷輸送剤(正孔輸送剤または電子輸
送剤)を含有する電荷輸送層とを積層することで形成さ
れる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】有機感光体は、上記の
ように様々な利点を有するものの、実使用環境下での感
光層の削れ、傷などが発生しやすく、無機感光体に比べ
て耐久性が十分でないという問題がある。
【0009】そこでこの問題を解決して、有機感光体の
耐久性を向上すべく、最表層に表面保護層を積層するこ
とが検討されている。
【0010】表面保護層の、広く一般に採用されている
例としては、有機感光層との密着性、親和性、積層状態
での一体性、成膜作業の一貫性などを考慮して、例えば
成膜性を有する結着樹脂の層や、あるいは上記結着樹脂
中に、金属酸化物等の導電性微粒子を分散させた層など
の有機の層が挙げられる。
【0011】しかしこの有機の層を表面保護層として使
用した電子写真感光体は、繰り返し使用時の残留電位上
昇や帯電性低下、環境(温度、湿度等)の変化による感
度特性の変動等が大きいという問題がある。
【0012】それゆえ近時、金属元素や炭素、あるいは
これら元素を含む無機の化合物等の、無機の材料からな
る、高硬度でかつ耐磨耗性に優れた無機の層を表面保護
層として、例えばスパッタリング法、プラズマCVD
法、光CVD法等の気相成長法などによって、有機感光
層上に積層、成膜することが検討されている。
【0013】この、表面保護層は有機感光層を保護し、
上記の問題点を解消するために用いられるものである。
すなわち、有機感光層上に無機の表面保護層を設けた感
光体は、有機感光層で電荷の発生や輸送などを受け持
ち、表面保護層で感光体の耐久性や耐環境性を受け持つ
という、それぞれの層の特性に応じた機能を有するので
ある。
【0014】しかしながら無機の表面保護層は、有機の
層に比べて有機感光層との間で十分な密着性を得ること
が難しい上、たとえ成膜方法や成膜条件の調整等によっ
て成膜初期の密着性を確保できたとしても、実使用環境
下や、あるいは長期の保管時等に感光体に加わる様々な
ストレスによってクラックが入ったり剥離したりしやす
いという問題がある。
【0015】すなわち、互いに異質の材料からなる有機
感光層と無機の表面保護層とは、有機の層同士、あるい
は無機の層同士のような緊密な密着性、親和性、一体性
が得られず、非常に弱い結合力でもって互いに結合され
ているだけであることが多い。
【0016】このため感光体が、例えば画像形成装置の
クリーニングブレードの圧接等による機械的ストレス
や、あるいは装置運転時の加熱と停止時の冷却の繰り返
し、もしくは保管時の温度変化等による熱的ストレスな
どを受けると、互いの硬度や柔軟性、膨張収縮特性等が
大きく異なることが原因となって、前記のように無機の
表面保護層にクラックが入ったり、表面保護層が有機感
光層から剥離したりするのである。
【0017】それゆえ従来の無機の表面保護層は、有機
感光層の耐久性を向上する効果が未だ十分でないため、
実用化されるに至っていないのが現状である。
【0018】本発明の目的は、実使用環境下や長期の保
管等によってクラックや剥離を生じにくい、物理的な安
定性に優れた無機の表面保護層を有し、これまでよりも
耐久性に優れた有機の電子写真感光体を提供することに
ある。
【0019】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課
題を解決するために、発明者らは、無機の表面保護層の
成膜過程について分析、検討を行った。
【0020】その結果、有機感光層の最表面部におけ
る、表面保護層の成膜初期の状態が、当該表面保護層
の、その後の物理的な安定性に大きく影響することを見
出した。
【0021】すなわち成膜初期の段階では、表面保護層
を構成する無機材料と、有機感光層の最表面部に露出し
た材料の一部とが何らかの形で結合して膜成長の核とな
り、この核を中心として無機材料の膜が成長して表面保
護層が形成され、また形成された表面保護層において
は、上記核の部分が、有機感光層との結合点として機能
して、両層間の密着性を確保する働きをする。
【0022】このため個々の結合点での、有機感光層と
無機材料との結合力の大小、並びに有機感光層と表面保
護層との界面における、結合点の、単位面積あたりの個
数、すなわち密度の高低が、表面保護層の、有機感光層
との密着性、ひいては表面保護層の物理的安定性に大き
く影響する。
【0023】具体的には、個々の結合点での、有機感光
層と無機材料との結合力が大きく、また両層の界面にお
ける上記結合点の密度が高いほど、表面保護層の、有機
感光層に対する密着性が向上して、その物理的安定性が
良好になる。
【0024】通常の有機感光層は、前記のように電荷発
生剤、電荷輸送剤等の低分子の機能性材料を、層を構成
する結着樹脂中に分散した構造を有している。
【0025】このため、上記結合点に関する知見に鑑み
れば、層自体を構成し、しかも層の大半を占める結着樹
脂が、膜成長の核として、表面保護層を構成する無機材
料と結合するのが理想的であると考えられる。
【0026】しかし実際には、分子自体の安定性や反応
性、あるいは反応部位の関係から、電荷発生剤、電荷輸
送剤等の、層中に分散した低分子の材料のうち、有機感
光層の最表面部に露出したものが膜成長の核として機能
して、表面保護層の成膜が進行することが多い。
【0027】それゆえ上記低分子の材料の、無機材料と
の反応性の良否、および結合力の大小や、有機感光層を
構成する結着樹脂に対する相溶性、親和性の強弱、ある
いは材料自体の大きさ(分子量だけでなく、分子的、空
間的な広がりも含めた大きさ)なども、表面保護層の、
有機感光層との密着性、並びに物理的安定性に大きく影
響する。
【0028】つまり低分子の材料の、無機材料との反応
性が良好で、かつ結合力が大きいほど、表面保護層の、
有機感光層との密着性、並びに物理的安定性が向上す
る。
【0029】また低分子の材料の、有機感光層を構成す
る結着樹脂に対する相溶性、親和性が良好で、かつ材料
自体の大きさが大きいほど、いわゆるアンカー効果(投
錨効果)によって、やはり表面保護層の、有機感光層と
の密着性、物理的安定性が向上する。
【0030】また上記低分子の材料と無機材料との結合
形態としては、結合力の強弱を考慮すると分子結合が最
も好ましいが、この結合によって分子構造が変化する結
果、電荷のトラップが生成されるようなことがあると、
感光体の感度低下を引き起こすおそれがある。
【0031】したがって低分子の材料は、反応によって
電気的な特性を低下させる分子状態に移行しないことも
重要である。
【0032】このように、従来の感光層上に単に硬度の
大きい材料を積層するだけで、良好な画像形成ができる
感光体を、簡単に作製できるのではないことを見出し
た。また、上記のような条件で作製された感光体は、有
機感光層の電気的特性をそのまま維持しつつ、表面保護
層による耐久性、耐環境性を向上させることが可能にな
る。
【0033】そこで発明者らは、これらの知見を考慮し
つつ、有機感光層を構成する種々の材料について検討を
行った結果、電子輸送剤として用いられる、式(1):
【0034】
【化5】
【0035】〔式中、R1はアルキル基またはアリール
基を示す。〕または、式(2):
【0036】
【化6】
【0037】〔式中、R2およびR3はアルキル基または
アリール基を示す。〕または、式(3):
【0038】
【化7】
【0039】〔式中、R4はアルキル基またはアリール
基を示す。R5はアルキル基、アリール基または式
(4):
【0040】
【化8】
【0041】(式中、R6はアルキル基、アリール基を
示す。)で表される基を示す。〕で表されるナフトキノ
ン誘導体が、これらの要求を満足する好適な材料である
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0042】すなわち本発明の電子写真感光体は、導電
性基体上に、有機感光層と、無機の表面保護層とをこの
順に積層したものであって、上記有機感光層の、少なく
とも表面保護層に接する最表面部が、上記式(1)、式
(2)または式(3)で表されるナフトキノン誘導体を
含有することを特徴としている。
【0043】上記式(1)、式(2)または式(3)で
表されるナフトキノン誘導体は、その分子全体にπ電子
共役系が広がっており、成膜初期の段階で、表面保護層
を構成する無機材料のうちとくに金属元素や炭素等を引
きつける機能を有しており、無機材料との反応性が高
い。
【0044】また上記の機能により、有機感光層の最表
面部に露出したナフトキノン誘導体が無機材料と結合し
て膜成長の核となる率が高いため、両層の界面における
結合点の密度が高い。
【0045】また膜成長の速度も速いため、有機感光層
が、気相成長法などによる表面保護層の成膜時に受ける
ダメージを極力減らすこともできる。
【0046】またナフトキノン誘導体は、分子中の二重
結合のうちπ結合が切れて、上記金属元素や炭素等と、
分子結合によって強固に結合される。特に、カルボニル
基のπ結合は炭素と酸素の電気陰性度が大きく異なるの
で、炭素が正、酸素が負となった双極性の共鳴構造に寄
与する反応性が大きくなり、有機感光層と無機材料との
結合力は非常に強いものとなる。
【0047】しかもナフトキノン誘導体は、平面状に拡
がった分子構造を有しており、分子的、空間的な広がり
も大きく、しかも結着樹脂との相溶性、親和性にも優れ
ているため、結着樹脂に対して良好なアンカー効果を示
す。
【0048】それゆえ有機感光層と無機材料との結合力
も大きい。
【0049】したがって本発明によれば、無機の表面保
護層の、有機感光層に対する密着性を向上して、当該表
面保護層の物理的安定性を改善できるため、実使用環境
下や長期の保管等によるクラックや剥離の発生を防止し
て、これまでよりも耐久性に優れた電子写真感光体を得
ることが可能となる。
【0050】またナフトキノン誘導体は、それ自体の電
子輸送能が高い上、前記のように金属元素や炭素等と分
子結合して分子構造が変化した状態でも、深い電荷のト
ラップを生成することがなく、しかも上記の結合は有機
感光層の最表面部に露出したごく一部のナフトキノン誘
導体のみで発生し、有機感光層内部の大多数のナフトキ
ノン誘導体は、元の、電子輸送能に優れた状態を維持し
ているため、感光体の感度低下を引き起こすおそれもな
い。
【0051】このため上記ナフトキノン誘導体が、前記
のように結着樹脂との相溶性に優れており、有機感光層
中に、凝集等を生じることなく均一に、しかも多量に分
散できることと相まって、本発明の電子写真感光体は、
感度特性にも優れたものとなる。
【0052】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を説明する。 〈ナフトキノン誘導体〉本発明の電子写真感光体におい
て、有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表
面部に含有されるナフトキノン誘導体は、前記のように
式(1):
【0053】
【化9】
【0054】〔式中、R1はアルキル基またはアリール
基を示す。〕または、式(2):
【0055】
【化10】
【0056】〔式中、R2およびR3はアルキル基または
アリール基を示す。〕または、式(3):
【0057】
【化11】
【0058】〔式中、R4はアルキル基またはアリール
基を示す。R5はアルキル基、アリール基または式
(4):
【0059】
【化12】
【0060】(式中、R6はアルキル基、アリール基を
示す。)で表される基を示す。〕で表されるものであ
る。
【0061】式中の基R1〜R6に相当するアルキル基と
しては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプ
ロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t
ert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オク
チル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの、
炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0062】式中の基R1〜R6に相当するアリール基と
しては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ビフェニ
リル、o−テルフェニル、ナフチル、アントリル、フェ
ナントリルなどの、炭素数6〜14のアリール基が挙げ
られる。
【0063】基R1〜R6に相当するアルキル基、アリー
ル基は置換基を有していても良く、具体的にはヒドロキ
シアルキル基、アルコキシアルキル基、モノアルキルア
ミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲ
ン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、
カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル
基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒド
ロキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル
基、シアノ基などの他、前述と同様の炭素数1〜12の
置換基を有してもよいアルキル基や炭素数1〜12の置
換基を有してもよいアルコキシ基などがあげられる。な
お、これらの置換基の置換位置については特に限定され
ない。
【0064】このようなナフトキノン誘導体の具体例と
しては、これに限定されないが、式(1)のナフトキノ
ン誘導体として、例えば下記式(1−1)〜(1−6)
で表される化合物等が挙げられる。
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】また、式(2)のナフトキノン誘導体とし
て、例えば下記式(2−1)〜(2−23)で表される
化合物等が挙げられる。
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
【化18】
【0072】
【化19】
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】また、式(3)のナフトキノン誘導体とし
て、例えば下記式(3−1)〜(3−11)で表される
化合物等が挙げられる。
【0076】
【化22】
【0077】
【化23】
【0078】
【化24】
【0079】上記ナフトキノン誘導体は、それぞれ1種
単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。 〈有機感光層〉有機感光層には、前述したように単層型
感光層と積層型感光層とがあるが、本発明には、このい
ずれのものも適用可能である。
【0080】このうち単層型感光層は、正孔輸送剤と、
電荷発生剤とを、結着樹脂とともに適当な有機溶媒に溶
解または分散した塗工液を、塗布などの手段によって導
電性基材上に塗布し、乾燥させることで形成されるのが
一般的である。本発明においては、さらに塗工液中に電
子輸送剤としての、前記式(1)、式(2)または式
(3)で表されるナフトキノン誘導体を溶解または分散
させて、単層型感光層を形成する。
【0081】以上に述べた単層型感光層は、層構成が簡
単で生産性に優れており、両極性の電荷輸送剤を併用し
ているので感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電に
も対応できるという利点がある。
【0082】一方、積層型感光層は、まず導電性基体上
に、塗布または蒸着などの手段によって、電荷発生剤を
含有する電荷発生層を形成し、ついでこの電荷発生層上
に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗工液を、塗布など
の手段によって塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成す
るか、もしくは上記と逆に、導電性基体上に電荷輸送層
を形成し、その上に電荷発生層を形成することで構成さ
れる。
【0083】また上記のうち電荷発生層には、電荷輸送
層と逆極性の電荷輸送剤を含有させることができる。
【0084】積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸
送層の形成順序と、両層に含有させる電荷輸送剤の極性
によって種々の組み合わせが考えられるが、本発明にお
いては、上記のうち表面保護層と接する最表面部に位置
する上側の層が、電子輸送剤として機能する、式
(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導体
を含有している必要がある。
【0085】したがって積層型感光層の具体例として
は、(a)導電性基体上に、電荷発生剤と、必要に応じ
て電子輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、その上
に、正孔輸送剤を含有する(本発明においては、さらに
電子輸送剤としての前記式(1)、式(2)または式
(3)のナフトキノン誘導体を含有する)電荷輸送層を
積層した負帯電型の積層型感光層、(b)導電性基体上
に、電子輸送剤を含有する電荷輸送層を形成し、その上
に、電荷発生剤と、必要に応じて正孔輸送剤とを含有す
る(本発明においては、さらに電子輸送剤としての前記
式(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導
体を含有する)電荷発生層を積層した負帯電型の積層型
感光層、(c)導電性基体上に、電化発生剤と、必要に
応じて正孔輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、そ
の上に、電子輸送剤としての前記式(1)、式(2)ま
たは式(3)のナフトキノン誘導体を含有する電荷輸送
層を積層した正帯電型の積層型感光層、(d)導電性基
体上に、正孔輸送剤を含有する正孔輸送層を形成し、そ
の上に、電荷発生剤と、必要に応じて正孔輸送剤とを含
有する電荷発生層を形成し、さらにその上に、電子輸送
剤としての前記式(1)、式(2)または式(3)で表
されるナフトキノン誘導体を含有する電子輸送層を積層
した、正帯電型の積層型感光層、が挙げられる。
【0086】これらの内、負帯電型の積層型感光層の方
が正帯電型に比べて、光感度や残留電位などの電気的特
性が優れているため、負帯電型の構成が好ましい。
【0087】また、電荷発生層は、電荷輸送層に比べて
膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体
上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成し
た上記(a)の構成がさらに好ましい。
【0088】上記単層型もしくは積層型感光層に使用さ
れる電荷発生剤としては、例えばセレン、セレン−テル
ル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、α−シリコンなど
の無機光導電材料の粉末、式(CG−1):
【0089】
【化25】
【0090】で表される無金属フタロシアニン、式(C
G−2):
【0091】
【化26】
【0092】で表されるチタニルフタロシアニン等のフ
タロシアニン化合物の、種々の結晶型を有する結晶から
なるフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔
料、ペリレン系顔料、アンサンスロン系顔料、インジゴ
系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、ト
ルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔
料、ジチオケトピロロピロール系顔料などの、従来公知
の種々の顔料が挙げられる。
【0093】電荷発生剤は、感光層が所望の波長域に感
度を有するように、それぞれ1種単独で、あるいは2種
以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】特に半導体レーザー等の赤外光を利用し
た、レーザービームプリンタや普通紙ファクシミリ装置
等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以
上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、
電荷発生剤として、前記例示のうちフタロシアニン系顔
料が好適に使用される。
【0095】本発明においては、電子輸送剤である前記
式(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導
体とともに、他の電子輸送剤を併用しても良い。
【0096】当該他の電子輸送剤としては、従来公知の
種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0097】特にベンゾキノン系化合物、ジフェノキノ
ン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テ
トラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサ
ントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−ト
リニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼ
ン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニト
ロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジ
ブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオ
レノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイ
ミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプト
アントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合
物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテ
ン系化合物、ジフェノキノン系化合物、2−フェニル−
1,4−ベンゾキノン系化合物、5,12−ナフタセン
キノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4′
−ニトロスチルベン系化合物、ならびに、ベンゾキノン
系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電
子吸引性化合物が好適に使用される。
【0098】これらはそれぞれ単独で使用される他、2
種以上を併用することもできる。
【0099】正孔輸送剤としては、従来公知の種々の正
孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0100】特にスチルベン系化合物、ベンジジン系化
合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミ
ン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキ
サジアゾール系化合物〔例えば2,5−ジ(4−メチル
アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールな
ど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4−ジエチルア
ミノスチリル)アントラセンなど〕、カルバゾール系化
合物〔例えば式(HT−1):
【0101】
【化27】
【0102】で表される繰り返し単位を有するポリ−N
−ビニルカルバゾールなど〕、式(HT−2):
【0103】
【化28】
【0104】〔式中、Ra、Rbは同一または異なって、
アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラル
キル基を示す。〕で表される繰り返し単位を有する有機
ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物〔例えば1−フ
ェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリ
ンなど〕、ヒドラゾン系化合物〔例えば式(HT−
3):
【0105】
【化29】
【0106】で表されるジエチルアミノベンズアルデヒ
ドジフェニルヒドラゾンなど〕、トリフェニルアミン系
化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、
イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チア
ジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾー
ル系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合
物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合
物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒ
ドラゾン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、
およびジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用
される。
【0107】これらはそれぞれ単独で使用される他、2
種以上を併用することもできる。
【0108】結着樹脂としては、例えばスチレン系重合
体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリ
ロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、
アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポ
リエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポ
リエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド
樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、
ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹
脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエー
テル樹脂などの熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポ
キシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂そ
の他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレ
ート、ウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂など
があげられる。
【0109】これらはそれぞれ単独で使用できるほか、
2種以上を併用することもできる。
【0110】また、前記例示の正孔輸送剤うち、ポリ−
N−ビニルカルバゾールや有機ポリシラン化合物等の高
分子の正孔輸送剤を用いる場合は、当該化合物を結着樹
脂としても機能させて、上記例示の通常の結着樹脂を省
略することもできる。
【0111】感光層には、上記各成分の他に、例えばフ
ルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性
剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添加することも
できる。また感光体の感度を向上させるために、例えば
ターフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレンな
どの増感剤を添加してもよい。
【0112】単層型感光層においては、結着樹脂100
重量部に対して、電荷発生剤を0.1〜50重量部、特
に0.5〜30重量部の割合で、また正孔輸送剤を5〜
500重量部、特に25〜200重量部の割合で、それ
ぞれ含有させるのが好ましい。また、電子輸送剤は、結
着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、特に1
0〜80重量部の割合で含有させるのが好ましい。
【0113】このうち電子輸送剤の含有割合は、式
(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導体
を単独で用いる場合は、当該ナフトキノン誘導体の含有
割合であり、ナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤とを
併用する場合は、両者の合計の含有割合である。
【0114】またナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤
とを併用する場合、当該他の電子輸送剤は、前述したナ
フトキノン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有さ
せるのが好ましい。具体的には他の電子輸送剤を、ナフ
トキノン誘導体100重量部に対して30重量部以下の
割合で配合するのが好ましい。
【0115】またこの際、正孔輸送剤と電子輸送剤との
総量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重
量部、特に30〜200重量部が好ましい。
【0116】単層型感光層の厚みは5〜100μm、特
に10〜50μm程度が好ましい。
【0117】積層型感光層のうち電荷発生層は前述した
とおり、電荷発生剤単独で形成される場合と、結着樹脂
中に、電荷発生剤と、前記のように必要に応じて電荷輸
送剤(電子輸送剤または正孔輸送剤)とを分散させて形
成される場合とがあり、このうち後者の構成では、結着
樹脂100重量部に対して、電荷発生剤を5〜1000
重量部、特に30〜500重量部の割合で、また電子輸
送剤を含有させる場合は、当該電子輸送剤を1〜200
重量部、特に5〜100重量部の割合で、それぞれ含有
させるのが好ましい。正孔輸送剤を含有させる場合は1
〜200重量部、特に5〜100重量部の割合で含有さ
せるのが好ましい。
【0118】また電荷輸送層においては、結着樹脂10
0重量部に対して、電子輸送剤を含有させる場合は、当
該電子輸送剤を0.1〜250重量部、特に0.5〜1
50重量部の割合で、正孔輸送剤を含有させる場合は、
当該正孔輸送剤を10〜500重量部、特に25〜20
0重量部の割合でそれぞれ含有させるのが好ましい。
【0119】電子輸送剤の含有割合は、先の、単層型感
光層の場合と同様に、式(1)、式(2)または式
(3)のナフトキノン誘導体を単独で用いる場合は、当
該ナフトキノン誘導体の含有割合であり、ナフトキノン
誘導体と他の電子輸送剤とを併用する場合は、両者の合
計の含有割合である。
【0120】またナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤
とを併用する場合、当該他の電子輸送剤は、前述したナ
フトキノン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有さ
せるのが好ましい。具体的には他の電子輸送剤を、ナフ
トキノン誘導体100重量部に対して30重量部以下の
割合で配合するのが好ましい。
【0121】積層型感光層の厚みは、電荷発生層が0.
01〜5μm、特に0.1〜3μm程度、電荷輸送層が
2〜100μm、特に5〜50μm程度が好ましい。
【0122】上記単層型、または積層型の有機感光層と
導電性基体との間や、あるいは積層型感光層を構成する
電荷発生層と電荷輸送層との間には、感光体の特性を阻
害しない範囲で中間層、バリア層を形成しても良い。
【0123】感光体を構成する各層を、塗布の方法によ
り形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送
剤、結着樹脂などを、前述したテトラヒドロフランなど
の有機溶媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミ
ル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカーある
いは超音波分散器などを用いて分散混合して塗工液を調
整し、これを公知の手段により塗布、乾燥すればよい。
【0124】塗工液を作るための有機溶媒としては、例
えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタ
ノールなどのアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、
シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、ベンゼン、ト
ルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタ
ン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなど
のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエ
ーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エ
チレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコ
ールジメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メ
チルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、
酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルホ
ルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシドなどの1種または2種以上があげられる。
【0125】さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散
性、感光層表面の平滑性をよくするため、塗工液には界
面活性剤、レベリング剤などを添加してもよい。〈表面
保護層〉上記有機感光層の上に積層、形成される無機の
表面保護層としては金属元素〔長周期型周期表のうちホ
ウ素(B)とアスタチン(At)とを結ぶ線より左側に
ある元素〕、および炭素からなる群より選ばれた少なく
とも1種の元素、またはこれらの元素を含む無機の化合
物からなる、従来公知の種々の表面保護層が挙げられ
る。
【0126】この表面保護層は、例えばプラズマCVD
法、光CVD法等の化学蒸着法、スパッタリング法、真
空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法な
ど、従来公知の種々の気相成長法によって形成すること
ができる。
【0127】このうちプラズマCVD法等の化学蒸着法
では、(1)14族元素のうち炭素(C)および/また
はケイ素(Si)からなる膜、すなわち炭素(C)の
膜、ケイ素(Si)の膜、またはケイ素−炭素(Si
C)複合膜、(2)上記炭素(C)および/またはケイ
素(Si)と、13族元素のうちホウ素(B)、アルミ
ニウム(Al)、15族元素のうち窒素(N)、リン
(P)、16族元素のうち酸素(O)、イオウ(S)、
17族元素のうちフッ素(F)、塩素(Cl)、および
臭素(Br)からなる群より選ばれた少なくとも1種の
元素との化合物からなる膜、例えばケイ素−窒素(Si
N)複合膜、ケイ素−酸素(SiO)複合膜、炭素−フ
ッ素(CF)複合膜、炭素−窒素(CN)複合膜、炭素
−ホウ素(CB)複合膜、炭素−酸素(CO)複合膜
等、(3)13族元素のうちホウ素(B)および/また
はアルミニウム(Al)と、上述した窒素(N)、リン
(P)、酸素(O)、イオウ(S)、フッ素(F)、塩
素(Cl)、および臭素(Br)からなる群より選ばれ
ら少なくとも1種の元素との化合物からなる膜、例えば
ホウ素−窒素(BN)複合膜、アルミニウム−窒素(A
lN)複合膜等、が形成される。
【0128】またこれらの膜には、表面保護層の電気的
特性を向上するために、微量の水素(H)を含有させる
こともできる。
【0129】化学蒸着法において、表面保護層の構成元
素を導入するために使用できる原料ガスとしては、各構
成元素の分子、酸化物、水素化物、窒化物、ハロゲン化
物等の、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは成膜
条件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。また
必要に応じてこれらの化合物を、水素ガス(H2)、ヘ
リウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等のガスによっ
て希釈しても良い。
【0130】原料ガスの具体例としては、例えばケイ素
導入用としてシランガス(SiH4)、ジシランガス(S
26)、炭素導入用としてメタンガス(CH4)、エ
タンガス(C26)、プロパンガス(C38)、エチレ
ンガス(C24)、フッ素導入用としてフッ素ガス(F
2)、一フッ化臭素ガス(BrF)、二フッ化塩素ガス
(ClF2)、四フッ化炭素ガス(CF4)、四フッ化ケ
イ素ガス(SiF4)、窒素導入用として窒素ガス
(N2)、アンモニアガス(NH3)、窒素酸化物ガス
(NOX)、ホウ素導入用として水素化ホウ素ガス〔ジ
ボランガス(B26)、テトラボランガス(B410
等〕などがそれぞれ挙げられる。
【0131】その他の構成元素についても同様であっ
て、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは膜形成条
件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。
【0132】また物理蒸着法、特にスパッタリング法や
イオンプレーティング法では、前記各膜に加えて、例え
ば13族であればガリウム(Ga)、インジウム(I
n)等、14族であればゲルマニウム(Ge)、スズ
(Sn)、鉛(Pb)、15族であればヒ素(As)、
アンチモン(Sb)等、16族であればセレン(Se)
等を含む各種金属元素の1種または2種以上からなる膜
や、あるいは上記金属元素を含む無機の化合物からなる
膜を形成することができる。
【0133】このうち無機の表面保護層として好適な膜
としては、例えば炭素(C)の膜やケイ素−炭素(Si
C)複合膜などが挙げられる。
【0134】無機の表面保護層の厚みは0.01〜30
μm、特に0.1〜10μm程度が好ましい。
【0135】表面保護層を形成する無機の膜は非晶質、
マイクロクリスタル、および結晶のいずれの形態の膜で
あっても良く、非晶質と結晶とが混在した膜であっても
良い。 〈導電性基体〉上記各層が形成される導電性基体として
は、導電性を有する種々の材料を使用することができ
る。例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バ
ナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、
ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真
鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上記金属が
蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる
基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化イ
ンジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示さ
れる。
【0136】要するに基体自体が導電性を有するか、あ
るいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、
導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有す
るものが好ましい。
【0137】導電性基体の形状は使用する画像形成装置
の構造に合わせて、シート状、ドラム状などのいずれで
あってもよい。
【0138】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。 [実施例1] 〈単層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式
(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶
5重量部と、正孔輸送剤と結着樹脂とを兼ねる、前記式
(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポリビニ
ルカルバゾール(数平均分子量Mn=9500)100
重量部と、電子輸送剤としての、前記式(1−5)で表
されるナフトキノン誘導体40重量部と、テトラヒドロ
フラン800重量部とともにボールミルを用いて50時
間、混合、分散させて単層型感光層用の塗工液を作製し
た。
【0139】次いでこの塗工液を、導電性基材であるア
ルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布
し、100℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚25μ
mの単層型感光層を形成した。 〈表面保護層の形成〉上記のようにして単層型感光層が
形成されたアルミニウム素管をプラズマCVD装置のチ
ャンバ内にセットしたのち、到達真空度0.67Paま
で真空引きするとともに、装置のヒータを使用して素管
の温度を50℃に調整した。
【0140】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、シランガス(SiH4)および水素ガス(H2
を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47h
Paに調整した。
【0141】メタンガス:208SCCM シランガス:2.5SCCM 水素ガス:300SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力133Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.2μm/hrの成膜速度で、非晶質のケイ
素−炭素(SiC)複合膜からなる、厚み0.5μmの
表面保護層を成膜して、実施例1の電子写真感光体を製
造した。 [実施例2〜7]電子輸送剤として、それぞれ表1に示
す式番号のナフトキノン誘導体40重量部を使用したこ
と以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7の電子写
真感光体を製造した。 [比較例1]電子輸送剤としてのナフトキノン誘導体を
用いないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の
電子写真感光体を製造した。 [実施例8〜14、比較例2]正孔輸送剤と結着樹脂と
を兼ねる、前記式(HT−1)で表される繰り返し単位
を有するポリビニルカルバゾールに代えて、正孔輸送剤
としての前記式(HT−3)で表されるジエチルアミノ
ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン80重量部、お
よび結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重量平均
分子量20000)100重量部を用いる以外は、実施
例1〜7、比較例1と同様にして、それぞれ実施例7〜
14、比較例2の電子写真感光体を製造した。 〈感度特性試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加
え、グリッド電圧調整することでその表面を+800±
20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定し
た。
【0142】次いで試験機の露光光源であるハロゲンラ
ンプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長7
80nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW
/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒
間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2に
なるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μ
J/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経
過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として
測定した。 〈繰り返し試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて、感度特性試験(1)と同様にし
て帯電−露光を行った後、除電ランプ(波長660n
m)により感光体表面の除電を行った。この帯電−露光
−除電のプロセスを連続で2000回繰り返して行い、
その時の表面電位V0(V)、半減露光量E1/2(μJ/
cm2)および残留電位Vr(V)を測定し、初期値との
変化にて安定性を評価した。このときの感光体ドラムの
回転速度は40rpmとした。 〈耐溶剤性試験(1)〉表面保護層と有機感光層との密
着性を調べるために、各実施例、比較例の電子写真感光
体の表面に、メタノールをスポイドにて滴下し、その時
の剥離、クラックの有無を確認した。
【0143】○:感光体表面に全く変化が無かった。
【0144】△:クラックが多少あるが剥離まで至らな
かった。
【0145】×:表面保護層の剥離が認められた。
【0146】以上の結果を表1および表2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】表より、前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例1、2の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離またはクラックが認められ、溶
剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を向上す
る効果が得られないことが判った。
【0150】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0151】これに対し、実施例1〜14の感光体はい
ずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラック
や剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0152】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例15〜21、比較例3]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素(C)からなる厚み0.5μmの表面
保護層を成膜したこと以外は実施例1〜7、比較例1と
同様にして、それぞれ実施例15〜21、比較例3の電
子写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0153】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)と水素ガス(H2)とを、それぞれ下記の流量で供
給して真空度を0.47hPaに調整した。
【0154】メタンガス:300SCCM 水素ガス:300SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力200Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.15μm/hrの成膜速度で、非晶質の炭
素(C)からなり、前記厚みを有する表面保護層を成膜
した。 [実施例22〜28、比較例4]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例8〜14、比較例2と同様にして、それぞれの
電子写真感光体を製造した。
【0155】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性
試験(1)を行って、その特性を評価した。結果を表3
および表4に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】表より、表面保護層の種類を違えても、下
地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と同じ結
果が得られることが確認された。
【0159】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例3、4の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して無機
の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られ
ないことが判った。
【0160】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0161】これに対し、実施例15〜28の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0162】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例29〜32、比較例5]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質のケイ素−窒素(SiN)複合膜からなる厚
み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例29〜32、比較例5の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0163】次いでチャンバ内に、シランガス(SiH
4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、それ
ぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに調
整した。
【0164】シランガス:15SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:75SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.75μm/hrの成膜速度で、ケイ素−窒
素(SiN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保
護層を成膜した。 [実施例33〜36、比較例6]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−窒素(CN)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例33〜36、比較例6の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0165】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、そ
れぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに
調整した。
【0166】メタンガス:100SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−窒素
(CN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護層
を成膜した。 [実施例37、比較例7]単層型感光層の表面に、前記
ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程により、非晶
質の炭素−ホウ素(CB)複合膜からなる厚み0.5μ
mの表面保護層を成膜したこと以外は実施例8、比較例
2と同様にして、それぞれ実施例37、比較例7の電子
写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0167】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、ジボランガス(B26)および水素ガス(H2
を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47h
Paに調整した。
【0168】メタンガス:100SCCM ジボランガス:200SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−ホウ
素(CB)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。 [実施例38〜41、比較例8]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−フッ素(CF)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例38〜41、比較例8の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0169】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、四フッ化炭素ガス(CF4)および水素ガス(H
2)を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.4
7hPaに調整した。
【0170】メタンガス:100SCCM 四フッ化炭素ガス:100SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−フッ
素(CF)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。 [実施例42、比較例9]単層型感光層の表面に、前記
ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程により、非晶
質のホウ素−窒素(BN)複合膜からなる厚み0.5μ
mの表面保護層を成膜したこと以外は実施例8、比較例
2と同様にして、それぞれ実施例42、比較例9の電子
写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0171】次いでチャンバ内に、ジボランガス(B2
6)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、そ
れぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに
調整した。
【0172】ジボランガス:200SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:150SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.08μm/hrの成膜速度で、ホウ素−窒
素(BN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。
【0173】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性
試験(1)を行って、その特性を評価した。結果を表5
に示す。
【0174】
【表5】
【0175】表より、表面保護層の種類をさらに違えて
も、下地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と
同じ結果が得られることが確認された。
【0176】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例5〜9の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離またはクラックが認められ、溶
剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を向上す
る効果が得られないことが判った。
【0177】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0178】これに対し、実施例29〜42の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0179】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例43] 〈積層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式
(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶
2.5重量部と、結着樹脂としてのポリビニルブチラー
ル1重量部とを、テトラヒドロフラン15重量部ととも
にボールミルを用いて混合、分散させて、積層型感光層
のうち電荷発生層用の塗工液を作製した。
【0180】次いでこの塗工液を、導電性基材であるア
ルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布
し、110℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚0.5
μmの電荷発生層を形成した。
【0181】次に、正孔輸送剤と結着樹脂とを兼ねる、
前記式(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポ
リビニルカルバゾール(数平均分子量Mn=9500)
1重量部と、電子輸送剤としての、前記式(1−5)で
表されるナフトキノン誘導体0.2重量部と、テトラヒ
ドロフラン10重量部とともにとともにボールミルを用
いて混合、分散させて、積層型感光層のうち電荷輸送層
用の塗工液を作製した。
【0182】そしてこの塗工液を、上記電荷発生層上
に、ディップコート法によって塗布し、110℃で30
分間、熱風乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形
成して、負帯電型の積層型感光層を形成した。 〈表面保護層の形成〉上記のようにして形成した積層型
感光層上に、前記実施例1と同条件で、プラズマCVD
法により、非晶質のケイ素−炭素(SiC)複合膜から
なる、厚み0.5μmの表面保護層を成膜して、実施例
43の電子写真感光体を製造した。 [実施例44〜49]電子輸送剤として、それぞれ表6
に示す式番号のナフトキノン誘導体0.2重量部を使用
したこと以外は実施例43と同様にして、実施例44〜
49の電子写真感光体を製造した。 [比較例10]電子輸送剤としてのナフトキノン誘導体
を用いないこと以外は実施例43と同様にして、比較例
10の電子写真感光体を製造した。 [実施例50〜56、比較例11]正孔輸送剤と結着樹
脂とを兼ねる、前記式(HT−1)で表される繰り返し
単位を有するポリビニルカルバゾールに代えて、正孔輸
送剤としての前記式(HT−3)で表されるジエチルア
ミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン0.8重量
部、および結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重
量平均分子量20000)1重量部を用いる以外は、実
施例43〜49、比較例10と同様にして、それぞれ実
施例50〜56、比較例11の電子写真感光体を製造し
た。 〈感度特性試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加
え、グリッド電圧調整することでその表面を−800±
20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定し
た。
【0183】次いで試験機の露光光源であるハロゲンラ
ンプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長7
80nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW
/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒
間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2に
なるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μ
J/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経
過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として
測定した。 〈繰り返し試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて、感度特性試験(1)と同様にし
て帯電−露光を行った後、除電ランプ(波長660n
m)により感光体表面の除電を行った。この帯電−露光
−除電のプロセスを連続で2000回繰り返して行い、
その時の表面電位V0(V)、半減露光量E1/2(μJ/
cm2)および残留電位Vr(V)を測定し、初期値との
変化にて安定性を評価した。このときの感光体ドラムの
回転速度は40rpmとした。 〈耐溶剤性試験(2)〉表面保護層と有機感光層との密
着性を調べるために、各実施例、比較例の電子写真感光
体の表面に、メタノールをスポイドにて滴下し、その時
の剥離、クラックの有無を確認した。
【0184】○:感光体表面に全く変化が無かった。
【0185】△:クラックが多少あるが剥離まで至らな
かった。
【0186】×:表面保護層の剥離が認められた。
【0187】以上の結果を表6および表7に示す。
【0188】
【表6】
【0189】
【表7】
【0190】表より、単層型感光層を積層型感光層に代
えても、その最表面部である電荷輸送層の構成に基づい
て、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0191】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例10、11の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して
無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得
られないことが判った。
【0192】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0193】これに対し、実施例43〜56の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0194】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例57〜63、比較例12]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例43〜49、比較例10と同様にして、それぞ
れの電子写真感光体を製造した。 [実施例64〜70、比較例13]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例50〜56、比較例11と同様にして、それぞ
れの電子写真感光体を製造した。
【0195】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性
試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表8
および表9に示す。
【0196】
【表8】
【0197】
【表9】
【0198】表より、表面保護層の種類を違えても、下
地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に基づい
て、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0199】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例12、13の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して
無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得
られないことが判った。
【0200】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0201】これに対し、実施例57〜70の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0202】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例71〜75]電子輸送剤として、それぞれ表1
0に示す式番号のナフトキノン誘導体0.2重量部を使
用し、積層型感光層の表面に前記ケイ素−炭素複合膜に
代えて、実施例30と同じ工程により、非晶質のケイ素
−窒素(SiN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面
保護層を成膜したこと以外は比較例11と同様にして、
それぞれの電子写真感光体を製造した。 [実施例76〜79、比較例14]電子輸送剤として、
それぞれ表10に示す式番号のナフトキノン誘導体0.
2重量部を使用し、積層型感光層の表面に前記ケイ素−
炭素複合膜に代えて、実施例37と同じ工程により、非
晶質の炭素−ホウ素(CB)複合膜からなる厚み0.5
μmの表面保護層を成膜したこと以外は比較例11と同
様にして、それぞれの電子写真感光体を製造した。 [実施例80〜83、比較例15]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例38〜4
1、比較例8と同じ工程により、非晶質の炭素−フッ素
(CF)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を
成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比較
例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造
した。 [実施例84〜87]積層型感光層の表面に、前記ケイ
素−炭素複合膜に代えて、実施例42と同じ工程によ
り、非晶質のホウ素−窒素(BN)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は比較例1
1と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造し
た。
【0203】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性
試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表1
0に示す。
【0204】
【表10】
【0205】表より、表面保護層の種類をさらに違えて
も、下地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に
基づいて、前記と同じ結果が得られることが確認され
た。
【0206】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例14〜15の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離またはクラックが認めら
れ、溶剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を
向上する効果が得られないことが判った。
【0207】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0208】これに対し、実施例71〜87の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0209】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 ─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成13年11月2日(2001.11.
2)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 電子写真感光体
【特許請求の範囲】
【化1】 〔式中、R1はアルキル基またはアリール基を示す。〕
または、式(2):
【化2】 〔式中、R2およびR3はアルキル基またはアリール基を
示す。〕または、式(3):
【化3】 〔式中、R4はアルキル基またはアリール基を示す。R5
はアルキル基、アリール基または式(4):
【化4】 (式中、R6はアルキル基、アリール基を示す。)で表
される基を示す。〕で表されるナフトキノン誘導体を含
有することを特徴とする電子写真感光体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子写真感光体に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】静電式複写機、レーザープリンタ、普通
紙ファクシミリ装置などの画像形成装置に使用される電
子写真感光体としては、下記の各成分を組み合わせて形
成するいわゆる有機感光体が広く普及している。 ・光照射により電荷(正孔と電子)を発生する電荷発生
剤。 ・発生した電荷を輸送する電荷輸送剤(電荷輸送剤は、
電荷のうち正孔を輸送する正孔輸送剤と、電子を輸送す
る電子輸送剤に大別される)。 ・成膜性を有する結着樹脂。
【0003】有機感光体は、無機半導体材料を用いた無
機感光体に比べて製造が容易で、安価に製造できるとい
う利点がある。
【0004】また有機感光体は、上記電荷発生剤、電荷
輸送剤、結着樹脂などの材料の選択肢が多様であり、機
能設計の自由度が大きいという利点もある。
【0005】上記有機感光体は、導電性基体上に、単層
型もしくは積層型の感光層を形成することで構成され
る。
【0006】このうち単層型感光層は、電荷発生剤を、
電荷輸送剤(正孔輸送剤および/または電子輸送剤)と
ともに結着樹脂中に分散することで形成される。
【0007】また積層型感光層は、電荷発生剤を含有す
る電荷発生層と、電荷輸送剤(正孔輸送剤または電子輸
送剤)を含有する電荷輸送層とを積層することで形成さ
れる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】有機感光体は、上記の
ように様々な利点を有するものの、実使用環境下での感
光層の削れ、傷などが発生しやすく、無機感光体に比べ
て耐久性が十分でないという問題がある。
【0009】そこでこの問題を解決して、有機感光体の
耐久性を向上すべく、最表層に表面保護層を積層するこ
とが検討されている。
【0010】表面保護層の、広く一般に採用されている
例としては、有機感光層との密着性、親和性、積層状態
での一体性、成膜作業の一貫性などを考慮して、例えば
成膜性を有する結着樹脂の層や、あるいは上記結着樹脂
中に、金属酸化物等の導電性微粒子を分散させた層など
の有機の層が挙げられる。
【0011】しかしこの有機の層を表面保護層として使
用した電子写真感光体は、繰り返し使用時の残留電位上
昇や帯電性低下、環境(温度、湿度等)の変化による感
度特性の変動等が大きいという問題がある。
【0012】それゆえ近時、金属元素や炭素、あるいは
これら元素を含む無機の化合物等の、無機の材料からな
る、高硬度でかつ耐磨耗性に優れた無機の層を表面保護
層として、例えばスパッタリング法、プラズマCVD
法、光CVD法等の気相成長法などによって、有機感光
層上に積層、成膜することが検討されている。
【0013】この、表面保護層は有機感光層を保護し、
上記の問題点を解消するために用いられるものである。
すなわち、有機感光層上に無機の表面保護層を設けた感
光体は、有機感光層で電荷の発生や輸送などを受け持
ち、表面保護層で感光体の耐久性や耐環境性を受け持つ
という、それぞれの層の特性に応じた機能を有するので
ある。
【0014】しかしながら無機の表面保護層は、有機の
層に比べて有機感光層との間で十分な密着性を得ること
が難しい上、たとえ成膜方法や成膜条件の調整等によっ
て成膜初期の密着性を確保できたとしても、実使用環境
下や、あるいは長期の保管時等に感光体に加わる様々な
ストレスによってクラックが入ったり剥離したりしやす
いという問題がある。
【0015】すなわち、互いに異質の材料からなる有機
感光層と無機の表面保護層とは、有機の層同士、あるい
は無機の層同士のような緊密な密着性、親和性、一体性
が得られず、非常に弱い結合力でもって互いに結合され
ているだけであることが多い。
【0016】このため感光体が、例えば画像形成装置の
クリーニングブレードの圧接等による機械的ストレス
や、あるいは装置運転時の加熱と停止時の冷却の繰り返
し、もしくは保管時の温度変化等による熱的ストレスな
どを受けると、互いの硬度や柔軟性、膨張収縮特性等が
大きく異なることが原因となって、前記のように無機の
表面保護層にクラックが入ったり、表面保護層が有機感
光層から剥離したりするのである。
【0017】それゆえ従来の無機の表面保護層は、有機
感光層の耐久性を向上する効果が未だ十分でないため、
実用化されるに至っていないのが現状である。
【0018】本発明の目的は、実使用環境下や長期の保
管等によってクラックや剥離を生じにくい、物理的な安
定性に優れた無機の表面保護層を有し、これまでよりも
耐久性に優れた有機の電子写真感光体を提供することに
ある。
【0019】
【課題を解決するための手段および発明の効果】上記課
題を解決するために、発明者らは、無機の表面保護層の
成膜過程について分析、検討を行った。
【0020】その結果、有機感光層の最表面部におけ
る、表面保護層の成膜初期の状態が、当該表面保護層
の、その後の物理的な安定性に大きく影響することを見
出した。
【0021】すなわち成膜初期の段階では、表面保護層
を構成する無機材料と、有機感光層の最表面部に露出し
た材料の一部とが何らかの形で結合して膜成長の核とな
り、この核を中心として無機材料の膜が成長して表面保
護層が形成され、また形成された表面保護層において
は、上記核の部分が、有機感光層との結合点として機能
して、両層間の密着性を確保する働きをする。
【0022】このため個々の結合点での、有機感光層と
無機材料との結合力の大小、並びに有機感光層と表面保
護層との界面における、結合点の、単位面積あたりの個
数、すなわち密度の高低が、表面保護層の、有機感光層
との密着性、ひいては表面保護層の物理的安定性に大き
く影響する。
【0023】具体的には、個々の結合点での、有機感光
層と無機材料との結合力が大きく、また両層の界面にお
ける上記結合点の密度が高いほど、表面保護層の、有機
感光層に対する密着性が向上して、その物理的安定性が
良好になる。
【0024】通常の有機感光層は、前記のように電荷発
生剤、電荷輸送剤等の低分子の機能性材料を、層を構成
する結着樹脂中に分散した構造を有している。
【0025】このため、上記結合点に関する知見に鑑み
れば、層自体を構成し、しかも層の大半を占める結着樹
脂が、膜成長の核として、表面保護層を構成する無機材
料と結合するのが理想的であると考えられる。
【0026】しかし実際には、分子自体の安定性や反応
性、あるいは反応部位の関係から、電荷発生剤、電荷輸
送剤等の、層中に分散した低分子の材料のうち、有機感
光層の最表面部に露出したものが膜成長の核として機能
して、表面保護層の成膜が進行することが多い。
【0027】それゆえ上記低分子の材料の、無機材料と
の反応性の良否、および結合力の大小や、有機感光層を
構成する結着樹脂に対する相溶性、親和性の強弱、ある
いは材料自体の大きさ(分子量だけでなく、分子的、空
間的な広がりも含めた大きさ)なども、表面保護層の、
有機感光層との密着性、並びに物理的安定性に大きく影
響する。
【0028】つまり低分子の材料の、無機材料との反応
性が良好で、かつ結合力が大きいほど、表面保護層の、
有機感光層との密着性、並びに物理的安定性が向上す
る。
【0029】また低分子の材料の、有機感光層を構成す
る結着樹脂に対する相溶性、親和性が良好で、かつ材料
自体の大きさが大きいほど、いわゆるアンカー効果(投
錨効果)によって、やはり表面保護層の、有機感光層と
の密着性、物理的安定性が向上する。
【0030】また上記低分子の材料と無機材料との結合
形態としては、結合力の強弱を考慮すると分子結合が最
も好ましいが、この結合によって分子構造が変化する結
果、電荷のトラップが生成されるようなことがあると、
感光体の感度低下を引き起こすおそれがある。
【0031】したがって低分子の材料は、反応によって
電気的な特性を低下させる分子状態に移行しないことも
重要である。
【0032】このように、従来の感光層上に単に硬度の
大きい材料を積層するだけで、良好な画像形成ができる
感光体を、簡単に作製できるのではないことを見出し
た。また、上記のような条件で作製された感光体は、有
機感光層の電気的特性をそのまま維持しつつ、表面保護
層による耐久性、耐環境性を向上させることが可能にな
る。
【0033】そこで発明者らは、これらの知見を考慮し
つつ、有機感光層を構成する種々の材料について検討を
行った結果、電子輸送剤として用いられる、式(1):
【0034】
【化5】
【0035】〔式中、R1はアルキル基またはアリール
基を示す。〕または、式(2):
【0036】
【化6】
【0037】〔式中、R2およびR3はアルキル基または
アリール基を示す。〕または、式(3):
【0038】
【化7】
【0039】〔式中、R4はアルキル基またはアリール
基を示す。R5はアルキル基、アリール基または式
(4):
【0040】
【化8】
【0041】(式中、R6はアルキル基、アリール基を
示す。)で表される基を示す。〕で表されるナフトキノ
ン誘導体が、これらの要求を満足する好適な材料である
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0042】すなわち本発明の電子写真感光体は、導電
性基体上に、有機感光層と、無機の表面保護層とをこの
順に積層したものであって、上記有機感光層の、少なく
とも表面保護層に接する最表面部が、上記式(1)、式
(2)または式(3)で表されるナフトキノン誘導体を
含有することを特徴としている。
【0043】上記式(1)、式(2)または式(3)で
表されるナフトキノン誘導体は、その分子全体にπ電子
共役系が広がっており、成膜初期の段階で、表面保護層
を構成する無機材料のうちとくに金属元素や炭素等を引
きつける機能を有しており、無機材料との反応性が高
い。
【0044】また上記の機能により、有機感光層の最表
面部に露出したナフトキノン誘導体が無機材料と結合し
て膜成長の核となる率が高いため、両層の界面における
結合点の密度が高い。
【0045】また膜成長の速度も速いため、有機感光層
が、気相成長法などによる表面保護層の成膜時に受ける
ダメージを極力減らすこともできる。
【0046】またナフトキノン誘導体は、分子中の二重
結合のうちπ結合が切れて、上記金属元素や炭素等と、
分子結合によって強固に結合される。特に、カルボニル
基のπ結合は炭素と酸素の電気陰性度が大きく異なるの
で、炭素が正、酸素が負となった双極性の共鳴構造に寄
与する反応性が大きくなり、有機感光層と無機材料との
結合力は非常に強いものとなる。
【0047】しかもナフトキノン誘導体は、平面状に拡
がった分子構造を有しており、分子的、空間的な広がり
も大きく、しかも結着樹脂との相溶性、親和性にも優れ
ているため、結着樹脂に対して良好なアンカー効果を示
す。
【0048】それゆえ有機感光層と無機材料との結合力
も大きい。
【0049】したがって本発明によれば、無機の表面保
護層の、有機感光層に対する密着性を向上して、当該表
面保護層の物理的安定性を改善できるため、実使用環境
下や長期の保管等によるクラックや剥離の発生を防止し
て、これまでよりも耐久性に優れた電子写真感光体を得
ることが可能となる。
【0050】またナフトキノン誘導体は、それ自体の電
子輸送能が高い上、前記のように金属元素や炭素等と分
子結合して分子構造が変化した状態でも、深い電荷のト
ラップを生成することがなく、しかも上記の結合は有機
感光層の最表面部に露出したごく一部のナフトキノン誘
導体のみで発生し、有機感光層内部の大多数のナフトキ
ノン誘導体は、元の、電子輸送能に優れた状態を維持し
ているため、感光体の感度低下を引き起こすおそれもな
い。
【0051】このため上記ナフトキノン誘導体が、前記
のように結着樹脂との相溶性に優れており、有機感光層
中に、凝集等を生じることなく均一に、しかも多量に分
散できることと相まって、本発明の電子写真感光体は、
感度特性にも優れたものとなる。
【0052】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を説明する。 〈ナフトキノン誘導体〉本発明の電子写真感光体におい
て、有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表
面部に含有されるナフトキノン誘導体は、前記のように
式(1):
【0053】
【化9】
【0054】〔式中、R1はアルキル基またはアリール
基を示す。〕または、式(2):
【0055】
【化10】
【0056】〔式中、R2およびR3はアルキル基または
アリール基を示す。〕または、式(3):
【0057】
【化11】
【0058】〔式中、R4はアルキル基またはアリール
基を示す。R5はアルキル基、アリール基または式
(4):
【0059】
【化12】
【0060】(式中、R6はアルキル基、アリール基を
示す。)で表される基を示す。〕で表されるものであ
る。
【0061】式中の基R1〜R6に相当するアルキル基と
しては、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプ
ロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t
ert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オク
チル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどの、
炭素数1〜12のアルキル基が挙げられる。
【0062】式中の基R1〜R6に相当するアリール基と
しては、例えばフェニル、トリル、キシリル、ビフェニ
リル、o−テルフェニル、ナフチル、アントリル、フェ
ナントリルなどの、炭素数6〜14のアリール基が挙げ
られる。
【0063】基R1〜R6に相当するアルキル基、アリー
ル基は置換基を有していても良く、具体的にはヒドロキ
シアルキル基、アルコキシアルキル基、モノアルキルア
ミノアルキル基、ジアルキルアミノアルキル基、ハロゲ
ン置換アルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、
カルボキシアルキル基、アルカノイルオキシアルキル
基、アミノアルキル基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒド
ロキシ基、エステル化されていてもよいカルボキシル
基、シアノ基などの他、前述と同様の炭素数1〜12の
置換基を有してもよいアルキル基や炭素数1〜12の置
換基を有してもよいアルコキシ基などがあげられる。な
お、これらの置換基の置換位置については特に限定され
ない。
【0064】このようなナフトキノン誘導体の具体例と
しては、これに限定されないが、式(1)のナフトキノ
ン誘導体として、例えば下記式(1−1)〜(1−6)
で表される化合物等が挙げられる。
【0065】
【化13】
【0066】
【化14】
【0067】また、式(2)のナフトキノン誘導体とし
て、例えば下記式(2−1)〜(2−23)で表される
化合物等が挙げられる。
【0068】
【化15】
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
【化18】
【0072】
【化19】
【0073】
【化20】
【0074】
【化21】
【0075】また、式(3)のナフトキノン誘導体とし
て、例えば下記式(3−1)〜(3−11)で表される
化合物等が挙げられる。
【0076】
【化22】
【0077】
【化23】
【0078】
【化24】
【0079】上記ナフトキノン誘導体は、それぞれ1種
単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。 〈有機感光層〉有機感光層には、前述したように単層型
感光層と積層型感光層とがあるが、本発明には、このい
ずれのものも適用可能である。
【0080】このうち単層型感光層は、正孔輸送剤と、
電荷発生剤とを、結着樹脂とともに適当な有機溶媒に溶
解または分散した塗工液を、塗布などの手段によって導
電性基材上に塗布し、乾燥させることで形成されるのが
一般的である。本発明においては、さらに塗工液中に電
子輸送剤としての、前記式(1)、式(2)または式
(3)で表されるナフトキノン誘導体を溶解または分散
させて、単層型感光層を形成する。
【0081】以上に述べた単層型感光層は、層構成が簡
単で生産性に優れており、両極性の電荷輸送剤を併用し
ているので感光層は、単独の構成で正負いずれの帯電に
も対応できるという利点がある。
【0082】一方、積層型感光層は、まず導電性基体上
に、塗布または蒸着などの手段によって、電荷発生剤を
含有する電荷発生層を形成し、ついでこの電荷発生層上
に、電荷輸送剤と結着樹脂とを含む塗工液を、塗布など
の手段によって塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成す
るか、もしくは上記と逆に、導電性基体上に電荷輸送層
を形成し、その上に電荷発生層を形成することで構成さ
れる。
【0083】また上記のうち電荷発生層には、電荷輸送
層と逆極性の電荷輸送剤を含有させることができる。
【0084】積層型感光層は、上記電荷発生層、電荷輸
送層の形成順序と、両層に含有させる電荷輸送剤の極性
によって種々の組み合わせが考えられるが、本発明にお
いては、上記のうち表面保護層と接する最表面部に位置
する上側の層が、電子輸送剤として機能する、式
(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導体
を含有している必要がある。
【0085】したがって積層型感光層の具体例として
は、(a)導電性基体上に、電荷発生剤と、必要に応じ
て電子輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、その上
に、正孔輸送剤を含有する(本発明においては、さらに
電子輸送剤としての前記式(1)、式(2)または式
(3)のナフトキノン誘導体を含有する)電荷輸送層を
積層した負帯電型の積層型感光層、(b)導電性基体上
に、電子輸送剤を含有する電荷輸送層を形成し、その上
に、電荷発生剤と、必要に応じて正孔輸送剤とを含有す
る(本発明においては、さらに電子輸送剤としての前記
式(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導
体を含有する)電荷発生層を積層した負帯電型の積層型
感光層、(c)導電性基体上に、電化発生剤と、必要に
応じて正孔輸送剤とを含有する電荷発生層を形成し、そ
の上に、電子輸送剤としての前記式(1)、式(2)ま
たは式(3)のナフトキノン誘導体を含有する電荷輸送
層を積層した正帯電型の積層型感光層、(d)導電性基
体上に、正孔輸送剤を含有する正孔輸送層を形成し、そ
の上に、電荷発生剤と、必要に応じて正孔輸送剤とを含
有する電荷発生層を形成し、さらにその上に、電子輸送
剤としての前記式(1)、式(2)または式(3)で表
されるナフトキノン誘導体を含有する電子輸送層を積層
した、正帯電型の積層型感光層、が挙げられる。
【0086】これらの内、負帯電型の積層型感光層の方
が正帯電型に比べて、光感度や残留電位などの電気的特
性が優れているため、負帯電型の構成が好ましい。
【0087】また、電荷発生層は、電荷輸送層に比べて
膜厚がごく薄いため、その保護のためには、導電性基体
上に電荷発生層を形成し、その上に電荷輸送層を形成し
た上記(a)の構成がさらに好ましい。
【0088】上記単層型もしくは積層型感光層に使用さ
れる電荷発生剤としては、例えばセレン、セレン−テル
ル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、α−シリコンなど
の無機光導電材料の粉末、式(CG−1):
【0089】
【化25】
【0090】で表される無金属フタロシアニン、式(C
G−2):
【0091】
【化26】
【0092】で表されるチタニルフタロシアニン等のフ
タロシアニン化合物の、種々の結晶型を有する結晶から
なるフタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、ビスアゾ系顔
料、ペリレン系顔料、アンサンスロン系顔料、インジゴ
系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、ト
ルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔
料、ジチオケトピロロピロール系顔料などの、従来公知
の種々の顔料が挙げられる。
【0093】電荷発生剤は、感光層が所望の波長域に感
度を有するように、それぞれ1種単独で、あるいは2種
以上を組み合わせて使用することができる。
【0094】特に半導体レーザー等の赤外光を利用し
た、レーザービームプリンタや普通紙ファクシミリ装置
等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以
上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、
電荷発生剤として、前記例示のうちフタロシアニン系顔
料が好適に使用される。
【0095】本発明においては、電子輸送剤である前記
式(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導
体とともに、他の電子輸送剤を併用しても良い。
【0096】当該他の電子輸送剤としては、従来公知の
種々の電子輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0097】特にベンゾキノン系化合物、ジフェノキノ
ン系化合物、マロノニトリル、チオピラン系化合物、テ
トラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサ
ントン、フルオレノン系化合物〔例えば2,4,7−ト
リニトロ−9−フルオレノンなど〕、ジニトロベンゼ
ン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニト
ロアントラキノン、無水こはく酸、無水マレイン酸、ジ
ブロモ無水マレイン酸、2,4,7−トリニトロフルオ
レノンイミン系化合物、エチル化ニトロフルオレノンイ
ミン系化合物、トリプトアントリン系化合物、トリプト
アントリンイミン系化合物、アザフルオレノン系化合
物、ジニトロピリドキナゾリン系化合物、チオキサンテ
ン系化合物、ジフェノキノン系化合物、2−フェニル−
1,4−ベンゾキノン系化合物、5,12−ナフタセン
キノン系化合物、α−シアノスチルベン系化合物、4′
−ニトロスチルベン系化合物、ならびに、ベンゾキノン
系化合物の陰イオンラジカルとカチオンとの塩などの電
子吸引性化合物が好適に使用される。
【0098】これらはそれぞれ単独で使用される他、2
種以上を併用することもできる。
【0099】正孔輸送剤としては、従来公知の種々の正
孔輸送性化合物がいずれも使用可能である。
【0100】特にスチルベン系化合物、ベンジジン系化
合物、フェニレンジアミン系化合物、ナフチレンジアミ
ン系化合物、フェナントリレンジアミン系化合物、オキ
サジアゾール系化合物〔例えば2,5−ジ(4−メチル
アミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾールな
ど〕、スチリル系化合物〔例えば9−(4−ジエチルア
ミノスチリル)アントラセンなど〕、カルバゾール系化
合物〔例えば式(HT−1):
【0101】
【化27】
【0102】で表される繰り返し単位を有するポリ−N
−ビニルカルバゾールなど〕、式(HT−2):
【0103】
【化28】
【0104】〔式中、Ra、Rbは同一または異なって、
アルキル基、アルコキシ基、アリール基、またはアラル
キル基を示す。〕で表される繰り返し単位を有する有機
ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物〔例えば1−フ
ェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリ
ンなど〕、ヒドラゾン系化合物〔例えば式(HT−
3):
【0105】
【化29】
【0106】で表されるジエチルアミノベンズアルデヒ
ドジフェニルヒドラゾンなど〕、トリフェニルアミン系
化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、
イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チア
ジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾー
ル系化合物、トリアゾール系化合物、ブタジエン系化合
物、ピレン−ヒドラゾン系化合物、アクロレイン系化合
物、カルバゾール−ヒドラゾン系化合物、キノリン−ヒ
ドラゾン系化合物、スチルベン−ヒドラゾン系化合物、
およびジフェニレンジアミン系化合物などが好適に使用
される。
【0107】これらはそれぞれ単独で使用される他、2
種以上を併用することもできる。
【0108】結着樹脂としては、例えばスチレン系重合
体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリ
ロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、
アクリル系重合体、スチレン−アクリル系共重合体、ポ
リエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポ
リエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アルキッド
樹脂、ポリアミド、ポリウレタン、ポリカーボネート、
ポリアリレート、ポリスルホン、ジアリルフタレート樹
脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエー
テル樹脂などの熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポ
キシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂そ
の他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシ−アクリレ
ート、ウレタン−アクリレートなどの光硬化性樹脂など
があげられる。
【0109】これらはそれぞれ単独で使用できるほか、
2種以上を併用することもできる。
【0110】また、前記例示の正孔輸送剤うち、ポリ−
N−ビニルカルバゾールや有機ポリシラン化合物等の高
分子の正孔輸送剤を用いる場合は、当該化合物を結着樹
脂としても機能させて、上記例示の通常の結着樹脂を省
略することもできる。
【0111】感光層には、上記各成分の他に、例えばフ
ルオレン系化合物、紫外線吸収剤、可塑剤、界面活性
剤、レベリング剤などの種々の添加剤を添加することも
できる。また感光体の感度を向上させるために、例えば
ターフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレンな
どの増感剤を添加してもよい。
【0112】単層型感光層においては、結着樹脂100
重量部に対して、電荷発生剤を0.1〜50重量部、特
に0.5〜30重量部の割合で、また正孔輸送剤を5〜
500重量部、特に25〜200重量部の割合で、それ
ぞれ含有させるのが好ましい。また、電子輸送剤は、結
着樹脂100重量部に対して5〜100重量部、特に1
0〜80重量部の割合で含有させるのが好ましい。
【0113】このうち電子輸送剤の含有割合は、式
(1)、式(2)または式(3)のナフトキノン誘導体
を単独で用いる場合は、当該ナフトキノン誘導体の含有
割合であり、ナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤とを
併用する場合は、両者の合計の含有割合である。
【0114】またナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤
とを併用する場合、当該他の電子輸送剤は、前述したナ
フトキノン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有さ
せるのが好ましい。具体的には他の電子輸送剤を、ナフ
トキノン誘導体100重量部に対して30重量部以下の
割合で配合するのが好ましい。
【0115】またこの際、正孔輸送剤と電子輸送剤との
総量は、結着樹脂100重量部に対して20〜500重
量部、特に30〜200重量部が好ましい。
【0116】単層型感光層の厚みは5〜100μm、特
に10〜50μm程度が好ましい。
【0117】積層型感光層のうち電荷発生層は前述した
とおり、電荷発生剤単独で形成される場合と、結着樹脂
中に、電荷発生剤と、前記のように必要に応じて電荷輸
送剤(電子輸送剤または正孔輸送剤)とを分散させて形
成される場合とがあり、このうち後者の構成では、結着
樹脂100重量部に対して、電荷発生剤を5〜1000
重量部、特に30〜500重量部の割合で、また電子輸
送剤を含有させる場合は、当該電子輸送剤を1〜200
重量部、特に5〜100重量部の割合で、それぞれ含有
させるのが好ましい。正孔輸送剤を含有させる場合は1
〜200重量部、特に5〜100重量部の割合で含有さ
せるのが好ましい。
【0118】また電荷輸送層においては、結着樹脂10
0重量部に対して、電子輸送剤を含有させる場合は、当
該電子輸送剤を0.1〜250重量部、特に0.5〜1
50重量部の割合で、正孔輸送剤を含有させる場合は、
当該正孔輸送剤を10〜500重量部、特に25〜20
0重量部の割合でそれぞれ含有させるのが好ましい。
【0119】電子輸送剤の含有割合は、先の、単層型感
光層の場合と同様に、式(1)、式(2)または式
(3)のナフトキノン誘導体を単独で用いる場合は、当
該ナフトキノン誘導体の含有割合であり、ナフトキノン
誘導体と他の電子輸送剤とを併用する場合は、両者の合
計の含有割合である。
【0120】またナフトキノン誘導体と他の電子輸送剤
とを併用する場合、当該他の電子輸送剤は、前述したナ
フトキノン誘導体の効果を妨げない範囲で少量、含有さ
せるのが好ましい。具体的には他の電子輸送剤を、ナフ
トキノン誘導体100重量部に対して30重量部以下の
割合で配合するのが好ましい。
【0121】積層型感光層の厚みは、電荷発生層が0.
01〜5μm、特に0.1〜3μm程度、電荷輸送層が
2〜100μm、特に5〜50μm程度が好ましい。
【0122】上記単層型、または積層型の有機感光層と
導電性基体との間や、あるいは積層型感光層を構成する
電荷発生層と電荷輸送層との間には、感光体の特性を阻
害しない範囲で中間層、バリア層を形成しても良い。
【0123】感光体を構成する各層を、塗布の方法によ
り形成する場合には、前記例示の電荷発生剤、電荷輸送
剤、結着樹脂などを、前述したテトラヒドロフランなど
の有機溶媒とともに、公知の方法、例えば、ロールミ
ル、ボールミル、アトライタ、ペイントシェーカーある
いは超音波分散器などを用いて分散混合して塗工液を調
整し、これを公知の手段により塗布、乾燥すればよい。
【0124】塗工液を作るための有機溶媒としては、例
えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタ
ノールなどのアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、
シクロヘキサンなどの脂肪族系炭化水素、ベンゼン、ト
ルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタ
ン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼンなど
のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエ
ーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エ
チレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコ
ールジメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メ
チルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、
酢酸エチル、酢酸メチルなどのエステル類、ジメチルホ
ルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスル
ホキシドなどの1種または2種以上があげられる。
【0125】さらに、電荷輸送剤や電荷発生剤の分散
性、感光層表面の平滑性をよくするため、塗工液には界
面活性剤、レベリング剤などを添加してもよい。 〈表面保護層〉上記有機感光層の上に積層、形成される
無機の表面保護層としては金属元素〔長周期型周期表の
うちホウ素(B)とアスタチン(At)とを結ぶ線より
左側にある元素〕、および炭素からなる群より選ばれた
少なくとも1種の元素、またはこれらの元素を含む無機
の化合物からなる、従来公知の種々の表面保護層が挙げ
られる。
【0126】この表面保護層は、例えばプラズマCVD
法、光CVD法等の化学蒸着法、スパッタリング法、真
空蒸着法、イオンプレーティング法等の物理蒸着法な
ど、従来公知の種々の気相成長法によって形成すること
ができる。
【0127】このうちプラズマCVD法等の化学蒸着法
では、(1)14族元素のうち炭素(C)および/また
はケイ素(Si)からなる膜、すなわち炭素(C)の
膜、ケイ素(Si)の膜、またはケイ素−炭素(Si
C)複合膜、(2)上記炭素(C)および/またはケイ
素(Si)と、13族元素のうちホウ素(B)、アルミ
ニウム(Al)、15族元素のうち窒素(N)、リン
(P)、16族元素のうち酸素(O)、イオウ(S)、
17族元素のうちフッ素(F)、塩素(Cl)、および
臭素(Br)からなる群より選ばれた少なくとも1種の
元素との化合物からなる膜、例えばケイ素−窒素(Si
N)複合膜、ケイ素−酸素(SiO)複合膜、炭素−フ
ッ素(CF)複合膜、炭素−窒素(CN)複合膜、炭素
−ホウ素(CB)複合膜、炭素−酸素(CO)複合膜
等、(3)13族元素のうちホウ素(B)および/また
はアルミニウム(Al)と、上述した窒素(N)、リン
(P)、酸素(O)、イオウ(S)、フッ素(F)、塩
素(Cl)、および臭素(Br)からなる群より選ばれ
ら少なくとも1種の元素との化合物からなる膜、例えば
ホウ素−窒素(BN)複合膜、アルミニウム−窒素(A
lN)複合膜等、が形成される。
【0128】またこれらの膜には、表面保護層の電気的
特性を向上するために、微量の水素(H)を含有させる
こともできる。
【0129】化学蒸着法において、表面保護層の構成元
素を導入するために使用できる原料ガスとしては、各構
成元素の分子、酸化物、水素化物、窒化物、ハロゲン化
物等の、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは成膜
条件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。また
必要に応じてこれらの化合物を、水素ガス(H2)、ヘ
リウムガス、アルゴンガス、ネオンガス等のガスによっ
て希釈しても良い。
【0130】原料ガスの具体例としては、例えばケイ素
導入用としてシランガス(SiH4)、ジシランガス(S
26)、炭素導入用としてメタンガス(CH4)、エ
タンガス(C26)、プロパンガス(C38)、エチレ
ンガス(C24)、フッ素導入用としてフッ素ガス(F
2)、一フッ化臭素ガス(BrF)、二フッ化塩素ガス
(ClF2)、四フッ化炭素ガス(CF4)、四フッ化ケ
イ素ガス(SiF4)、窒素導入用として窒素ガス
(N2)、アンモニアガス(NH3)、窒素酸化物ガス
(NOX)、ホウ素導入用として水素化ホウ素ガス〔ジ
ボランガス(B26)、テトラボランガス(B410
等〕などがそれぞれ挙げられる。
【0131】その他の構成元素についても同様であっ
て、常温常圧下でガス状を呈するか、もしくは膜形成条
件下で容易にガス化しうる化合物があげられる。
【0132】また物理蒸着法、特にスパッタリング法や
イオンプレーティング法では、前記各膜に加えて、例え
ば13族であればガリウム(Ga)、インジウム(I
n)等、14族であればゲルマニウム(Ge)、スズ
(Sn)、鉛(Pb)、15族であればヒ素(As)、
アンチモン(Sb)等、16族であればセレン(Se)
等を含む各種金属元素の1種または2種以上からなる膜
や、あるいは上記金属元素を含む無機の化合物からなる
膜を形成することができる。
【0133】このうち無機の表面保護層として好適な膜
としては、例えば炭素(C)の膜やケイ素−炭素(Si
C)複合膜などが挙げられる。
【0134】無機の表面保護層の厚みは0.01〜30
μm、特に0.1〜10μm程度が好ましい。
【0135】表面保護層を形成する無機の膜は非晶質、
マイクロクリスタル、および結晶のいずれの形態の膜で
あっても良く、非晶質と結晶とが混在した膜であっても
良い。 〈導電性基体〉上記各層が形成される導電性基体として
は、導電性を有する種々の材料を使用することができ
る。例えば鉄、アルミニウム、銅、スズ、白金、銀、バ
ナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、
ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真
鍮などの金属にて形成された導電性基体や、上記金属が
蒸着またはラミネートされたプラスチック材料からなる
基体、あるいはヨウ化アルミニウム、酸化スズ、酸化イ
ンジウムなどで被覆されたガラス製の基体などが例示さ
れる。
【0136】要するに基体自体が導電性を有するか、あ
るいは基体の表面が導電性を有していればよい。また、
導電性基体は、使用に際して、充分な機械的強度を有す
るものが好ましい。
【0137】導電性基体の形状は使用する画像形成装置
の構造に合わせて、シート状、ドラム状などのいずれで
あってもよい。
【0138】
【実施例】以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて
説明する。 [実施例1] 〈単層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式
(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶
5重量部と、正孔輸送剤と結着樹脂とを兼ねる、前記式
(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポリビニ
ルカルバゾール(数平均分子量Mn=9500)100
重量部と、電子輸送剤としての、前記式(1−5)で表
されるナフトキノン誘導体40重量部と、テトラヒドロ
フラン800重量部とともにボールミルを用いて50時
間、混合、分散させて単層型感光層用の塗工液を作製し
た。
【0139】次いでこの塗工液を、導電性基材であるア
ルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布
し、100℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚25μ
mの単層型感光層を形成した。 〈表面保護層の形成〉上記のようにして単層型感光層が
形成されたアルミニウム素管をプラズマCVD装置のチ
ャンバ内にセットしたのち、到達真空度0.67Paま
で真空引きするとともに、装置のヒータを使用して素管
の温度を50℃に調整した。
【0140】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、シランガス(SiH4)および水素ガス(H2
を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47h
Paに調整した。
【0141】メタンガス:208SCCM シランガス:2.5SCCM 水素ガス:300SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力133Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.2μm/hrの成膜速度で、非晶質のケイ
素−炭素(SiC)複合膜からなる、厚み0.5μmの
表面保護層を成膜して、実施例1の電子写真感光体を製
造した。 [実施例2〜7]電子輸送剤として、それぞれ表1に示
す式番号のナフトキノン誘導体40重量部を使用したこ
と以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7の電子写
真感光体を製造した。 [比較例1]電子輸送剤としてのナフトキノン誘導体を
用いないこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の
電子写真感光体を製造した。 [実施例8〜14、比較例2]正孔輸送剤と結着樹脂と
を兼ねる、前記式(HT−1)で表される繰り返し単位
を有するポリビニルカルバゾールに代えて、正孔輸送剤
としての前記式(HT−3)で表されるジエチルアミノ
ベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン80重量部、お
よび結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重量平均
分子量20000)100重量部を用いる以外は、実施
例1〜7、比較例1と同様にして、それぞれ実施例7〜
14、比較例2の電子写真感光体を製造した。 〈感度特性試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加
え、グリッド電圧調整することでその表面を+800±
20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定し
た。
【0142】次いで試験機の露光光源であるハロゲンラ
ンプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長7
80nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW
/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒
間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2に
なるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μ
J/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経
過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として
測定した。 〈繰り返し試験(1)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて、感度特性試験(1)と同様にし
て帯電−露光を行った後、除電ランプ(波長660n
m)により感光体表面の除電を行った。この帯電−露光
−除電のプロセスを連続で2000回繰り返して行い、
その時の表面電位V0(V)、半減露光量E1/2(μJ/
cm2)および残留電位Vr(V)を測定し、初期値との
変化にて安定性を評価した。このときの感光体ドラムの
回転速度は40rpmとした。 〈耐溶剤性試験(1)〉表面保護層と有機感光層との密
着性を調べるために、各実施例、比較例の電子写真感光
体の表面に、メタノールをスポイドにて滴下し、その時
の剥離、クラックの有無を確認した。
【0143】○:感光体表面に全く変化が無かった。
【0144】△:クラックが多少あるが剥離まで至らな
かった。
【0145】×:表面保護層の剥離が認められた。
【0146】以上の結果を表1および表2に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】表より、前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例1、2の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離またはクラックが認められ、溶
剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を向上す
る効果が得られないことが判った。
【0150】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0151】これに対し、実施例1〜14の感光体はい
ずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラック
や剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0152】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例15〜21、比較例3]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素(C)からなる厚み0.5μmの表面
保護層を成膜したこと以外は実施例1〜7、比較例1と
同様にして、それぞれ実施例15〜21、比較例3の電
子写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0153】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)と水素ガス(H2)とを、それぞれ下記の流量で供
給して真空度を0.47hPaに調整した。
【0154】メタンガス:300SCCM 水素ガス:300SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力200Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.15μm/hrの成膜速度で、非晶質の炭
素(C)からなり、前記厚みを有する表面保護層を成膜
した。 [実施例22〜28、比較例4]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例8〜14、比較例2と同様にして、それぞれの
電子写真感光体を製造した。
【0155】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性
試験(1)を行って、その特性を評価した。結果を表3
および表4に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】表より、表面保護層の種類を違えても、下
地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と同じ結
果が得られることが確認された。
【0159】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例3、4の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して無機
の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得られ
ないことが判った。
【0160】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0161】これに対し、実施例15〜28の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0162】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例29〜32、比較例5]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質のケイ素−窒素(SiN)複合膜からなる厚
み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例29〜32、比較例5の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0163】次いでチャンバ内に、シランガス(SiH
4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、それ
ぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに調
整した。
【0164】シランガス:15SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:75SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.75μm/hrの成膜速度で、ケイ素−窒
素(SiN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保
護層を成膜した。 [実施例33〜36、比較例6]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−窒素(CN)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例33〜36、比較例6の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0165】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、そ
れぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに
調整した。
【0166】メタンガス:100SCCM 窒素ガス:150SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−窒素
(CN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護層
を成膜した。 [実施例37、比較例7]単層型感光層の表面に、前記
ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程により、非晶
質の炭素−ホウ素(CB)複合膜からなる厚み0.5μ
mの表面保護層を成膜したこと以外は実施例8、比較例
2と同様にして、それぞれ実施例37、比較例7の電子
写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0167】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、ジボランガス(B26)および水素ガス(H2
を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47h
Paに調整した。
【0168】メタンガス:100SCCM ジボランガス:200SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−ホウ
素(CB)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。 [実施例38〜41、比較例8]単層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程によ
り、非晶質の炭素−フッ素(CF)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は実施例
8、10、12、13、比較例2と同様にして、それぞ
れ実施例38〜41、比較例8の電子写真感光体を製造
した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0169】次いでチャンバ内に、メタンガス(C
4)、四フッ化炭素ガス(CF4)および水素ガス(H
2)を、それぞれ下記の流量で供給して真空度を0.4
7hPaに調整した。
【0170】メタンガス:100SCCM 四フッ化炭素ガス:100SCCM 水素ガス:100SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.10μm/hrの成膜速度で、炭素−フッ
素(CF)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。 [実施例42、比較例9]単層型感光層の表面に、前記
ケイ素−炭素複合膜に代えて、下記の工程により、非晶
質のホウ素−窒素(BN)複合膜からなる厚み0.5μ
mの表面保護層を成膜したこと以外は実施例8、比較例
2と同様にして、それぞれ実施例42、比較例9の電子
写真感光体を製造した。 〈表面保護層の形成〉単層型感光層が形成されたアルミ
ニウム素管をプラズマCVD装置のチャンバ内にセット
したのち、到達真空度0.67Paまで真空引きすると
ともに、装置のヒータを使用して素管の温度を50℃に
調整した。
【0171】次いでチャンバ内に、ジボランガス(B2
6)、窒素ガス(N2)および水素ガス(H2)を、そ
れぞれ下記の流量で供給して真空度を0.47hPaに
調整した。
【0172】ジボランガス:200SCCM 窒素ガス:150SCCM水素ガス:150SCCM 次にこの状態で、チャンバ内に、周波数13.56MH
z、出力150Wの高周波電界を印加してグロー放電を
発生させて、プラズマCVD法により、単層型感光層の
表面に、0.08μm/hrの成膜速度で、ホウ素−窒
素(BN)複合膜からなり、前記厚みを有する表面保護
層を成膜した。
【0173】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(1)、および耐久性
試験(1)を行って、その特性を評価した。結果を表5
に示す。
【0174】
【表5】
【0175】表より、表面保護層の種類をさらに違えて
も、下地である単層型感光層の構成に基づいて、前記と
同じ結果が得られることが確認された。
【0176】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例5〜9の感光体は耐溶剤性
試験にて、感光体の剥離またはクラックが認められ、溶
剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を向上す
る効果が得られないことが判った。
【0177】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0178】これに対し、実施例29〜42の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0179】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例43] 〈積層型感光層の形成〉電荷発生剤としての、前記式
(CG−1)で表されるX型無金属フタロシアニン結晶
2.5重量部と、結着樹脂としてのポリビニルブチラー
ル1重量部とを、テトラヒドロフラン15重量部ととも
にボールミルを用いて混合、分散させて、積層型感光層
のうち電荷発生層用の塗工液を作製した。
【0180】次いでこの塗工液を、導電性基材であるア
ルミニウム素管上に、ディップコート法によって塗布
し、110℃で30分間、熱風乾燥させて、膜厚0.5
μmの電荷発生層を形成した。
【0181】次に、正孔輸送剤と結着樹脂とを兼ねる、
前記式(HT−1)で表される繰り返し単位を有するポ
リビニルカルバゾール(数平均分子量Mn=9500)
1重量部と、電子輸送剤としての、前記式(1−5)で
表されるナフトキノン誘導体0.2重量部と、テトラヒ
ドロフラン10重量部とともにとともにボールミルを用
いて混合、分散させて、積層型感光層のうち電荷輸送層
用の塗工液を作製した。
【0182】そしてこの塗工液を、上記電荷発生層上
に、ディップコート法によって塗布し、110℃で30
分間、熱風乾燥させて、膜厚20μmの電荷輸送層を形
成して、負帯電型の積層型感光層を形成した。 〈表面保護層の形成〉上記のようにして形成した積層型
感光層上に、前記実施例1と同条件で、プラズマCVD
法により、非晶質のケイ素−炭素(SiC)複合膜から
なる、厚み0.5μmの表面保護層を成膜して、実施例
43の電子写真感光体を製造した。 [実施例44〜49]電子輸送剤として、それぞれ表6
に示す式番号のナフトキノン誘導体0.2重量部を使用
したこと以外は実施例43と同様にして、実施例44〜
49の電子写真感光体を製造した。 [比較例10]電子輸送剤としてのナフトキノン誘導体
を用いないこと以外は実施例43と同様にして、比較例
10の電子写真感光体を製造した。 [実施例50〜56、比較例11]正孔輸送剤と結着樹
脂とを兼ねる、前記式(HT−1)で表される繰り返し
単位を有するポリビニルカルバゾールに代えて、正孔輸
送剤としての前記式(HT−3)で表されるジエチルア
ミノベンズアルデヒドジフェニルヒドラゾン0.8重量
部、および結着樹脂としてのZ型ポリカーボネート(重
量平均分子量20000)1重量部を用いる以外は、実
施例43〜49、比較例10と同様にして、それぞれ実
施例50〜56、比較例11の電子写真感光体を製造し
た。 〈感度特性試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて各感光体の表面に印加電圧を加
え、グリッド電圧調整することでその表面を−800±
20Vに帯電させた後、表面電位V0(V)を測定し
た。
【0183】次いで試験機の露光光源であるハロゲンラ
ンプの白色光から、バンドパスフィルタを用いて波長7
80nm、半値幅20nmに単色化した光強度10μW
/cm2の単色光を、上記電子写真感光体の表面に1秒
間、照射した際に、上記表面電位V0(V)が1/2に
なるのに要した時間を測定して、半減露光量E1/2(μ
J/cm2)を求めた。また露光開始から0.5秒、経
過した時点での表面電位を、残留電位Vr(V)として
測定した。 〈繰り返し試験(2)〉上記各実施例、比較例の電子写
真感光体について、ジェンテック(GENTEC)社製のドラ
ム感度試験機を用いて、感度特性試験(1)と同様にし
て帯電−露光を行った後、除電ランプ(波長660n
m)により感光体表面の除電を行った。この帯電−露光
−除電のプロセスを連続で2000回繰り返して行い、
その時の表面電位V0(V)、半減露光量E1/2(μJ/
cm2)および残留電位Vr(V)を測定し、初期値との
変化にて安定性を評価した。このときの感光体ドラムの
回転速度は40rpmとした。 〈耐溶剤性試験(2)〉表面保護層と有機感光層との密
着性を調べるために、各実施例、比較例の電子写真感光
体の表面に、メタノールをスポイドにて滴下し、その時
の剥離、クラックの有無を確認した。
【0184】○:感光体表面に全く変化が無かった。
【0185】△:クラックが多少あるが剥離まで至らな
かった。
【0186】×:表面保護層の剥離が認められた。
【0187】以上の結果を表6および表7に示す。
【0188】
【表6】
【0189】
【表7】
【0190】表より、単層型感光層を積層型感光層に代
えても、その最表面部である電荷輸送層の構成に基づい
て、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0191】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例10、11の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して
無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得
られないことが判った。
【0192】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0193】これに対し、実施例43〜56の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0194】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例57〜63、比較例12]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例43〜49、比較例10と同様にして、それぞ
れの電子写真感光体を製造した。 [実施例64〜70、比較例13]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例15〜2
1、比較例3と同じ工程により、非晶質の炭素(C)か
らなる厚み0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外
は実施例50〜56、比較例11と同様にして、それぞ
れの電子写真感光体を製造した。
【0195】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性
試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表8
および表9に示す。
【0196】
【表8】
【0197】
【表9】
【0198】表より、表面保護層の種類を違えても、下
地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に基づい
て、前記と同じ結果が得られることが確認された。
【0199】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例12、13の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離が認められ、溶剤に対して
無機の表面保護層の物理的な安定性を向上する効果が得
られないことが判った。
【0200】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0201】これに対し、実施例57〜70の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0202】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。 [実施例71〜75]電子輸送剤として、それぞれ表1
0に示す式番号のナフトキノン誘導体0.2重量部を使
用し、積層型感光層の表面に前記ケイ素−炭素複合膜に
代えて、実施例30と同じ工程により、非晶質のケイ素
−窒素(SiN)複合膜からなる厚み0.5μmの表面
保護層を成膜したこと以外は比較例11と同様にして、
それぞれの電子写真感光体を製造した。 [実施例76〜79、比較例14]電子輸送剤として、
それぞれ表10に示す式番号のナフトキノン誘導体0.
2重量部を使用し、積層型感光層の表面に前記ケイ素−
炭素複合膜に代えて、実施例37と同じ工程により、非
晶質の炭素−ホウ素(CB)複合膜からなる厚み0.5
μmの表面保護層を成膜したこと以外は比較例11と同
様にして、それぞれの電子写真感光体を製造した。 [実施例80〜83、比較例15]積層型感光層の表面
に、前記ケイ素−炭素複合膜に代えて、実施例38〜4
1、比較例8と同じ工程により、非晶質の炭素−フッ素
(CF)複合膜からなる厚み0.5μmの表面保護層を
成膜したこと以外は実施例8、10、12、13、比較
例11と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造
した。 [実施例84〜87]積層型感光層の表面に、前記ケイ
素−炭素複合膜に代えて、実施例42と同じ工程によ
り、非晶質のホウ素−窒素(BN)複合膜からなる厚み
0.5μmの表面保護層を成膜したこと以外は比較例1
1と同様にして、それぞれの電子写真感光体を製造し
た。
【0203】上記各実施例、比較例の電子写真感光体に
ついて、前記と同じ感度特性試験(2)、および耐久性
試験(2)を行って、その特性を評価した。結果を表1
0に示す。
【0204】
【表10】
【0205】表より、表面保護層の種類をさらに違えて
も、下地である積層型感光層のうち電荷輸送層の構成に
基づいて、前記と同じ結果が得られることが確認され
た。
【0206】すなわち前記式(1)で表されるナフトキ
ノン誘導体を用いない比較例14〜15の感光体は耐溶
剤性試験にて、感光体の剥離またはクラックが認めら
れ、溶剤に対して無機の表面保護層の物理的な安定性を
向上する効果が得られないことが判った。
【0207】また比較例の感光体は、露光後の残留電位
が高く、かつ半減露光量が大きいことから、表面保護層
を形成した際に大きく感度低下することも判明した。さ
らに、比較例の感光体は繰り返し試験において、残留電
位および半減露光量が著しく増大することから、繰り返
し複写時の耐久性にも劣ることがわかった。
【0208】これに対し、実施例71〜87の感光体は
いずれも、耐溶剤性試験において、表面保護層にクラッ
クや剥離などが全く見られなかった。そしてこのことか
ら、ナフトキノン誘導体を使用することで、無機の表面
保護層の物理的な安定性を改善して、これまでよりも感
光体の耐久性を向上できることが確認された。
【0209】また上記各実施例の感光体はいずれも、露
光後の残留電位が低く、かつ半減露光量が小さいことか
ら、表面保護層を形成した際に大きく感度低下せず、さ
らに、繰り返し試験後も値の変化が小さいことから、初
期および繰り返し複写時においても良好な感度を有する
ことも確認された。
フロントページの続き (72)発明者 福永 秀明 滋賀県八日市市蛇溝町長谷野1166番地の6 京セラ株式会社滋賀工場八日市ブロック 内 Fターム(参考) 2H068 AA02 AA20 AA31 AA35 AA37 BA14 BA22 BA63 BA64 BB44 BB46 CA03 CA05 CA60 EA24 FA08

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】導電性基体上に、有機感光層と、無機の表
    面保護層をこの順に積層した電子写真感光体であって、
    上記有機感光層の、少なくとも表面保護層に接する最表
    面部が、式(1): 【化1】 〔式中、R1はアルキル基またはアリール基を示す。〕
    または、式(2): 【化2】 〔式中、R2およびR3はアルキル基またはアリール基を
    示す。〕または、式(3): 【化3】 〔式中、R4はアルキル基またはアリール基を示す。R5
    はアルキル基、アリール基または式(4): 【化4】 (式中、R6はアルキル基、アリール基を示す。)で表
    される基を示す。〕で表されるナフトキノン誘導体を含
    有することを特徴とする電子写真感光体。
  2. 【請求項2】表面保護層が、気相成長法によって成膜さ
    れた層であることを特徴とする請求項1記載の電子写真
    感光体。
  3. 【請求項3】表面保護層が、金属元素および炭素からな
    る群より選ばれた少なくとも1種の元素、またはこれら
    の元素を含む無機の化合物からなることを特徴とする請
    求項1または2記載の電子写真感光体。
  4. 【請求項4】有機感光層が、結着樹脂中に、電荷発生剤
    と、正孔輸送剤と、電子輸送剤としての式(1)、式
    (2)または式(3)で表されるナフトキノン誘導体と
    を含有する単層型感光層であることを特徴とする請求項
    1記載の電子写真感光体。
  5. 【請求項5】有機感光層が、電荷発生剤を含有する電荷
    発生層と、結着樹脂中に、正孔輸送剤と、電子輸送剤と
    しての式(1)、式(2)または式(3)で表されるナ
    フトキノン誘導体を含有する電荷輸送層とをこの順に積
    層した積層型感光層であることを特徴とする請求項1記
    載の電子写真感光体。
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