JP3684694B2 - 熱可塑性樹脂発泡体の成形方法及び熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型 - Google Patents

熱可塑性樹脂発泡体の成形方法及び熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雄雌嵌合金型の雄金型と雌金型とを嵌合して形成される成形空間内に発泡性合成樹脂を充填したのち、蒸気等の加熱媒体を該発泡性合成樹脂に吹きつけることにより加熱融着させ、発泡体を成形するための熱可塑性樹脂発泡体の成形方法及び熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の成形方法においては、成形空間内に充填された発泡性合成樹脂に加熱媒体である蒸気を吹きつけるための円形の蒸気孔を複数個金型に形成し、これら円形の蒸気孔から発泡性合成樹脂に直接蒸気を吹きつけることによって、良好な加熱融着が行われるようにしている。ところで、段差部を有する複雑な形状の発泡体を成形する場合に、その段差部の角部に相当する部分に蒸気を吹きつけることによって、吹きつけられた部分の発泡性合成樹脂の伸びを良好にすることができるようにしている。しかし、上記のように段差部の角部よりも大きな寸法の円形の蒸気孔を該角部に形成することができないため、従来では、図9に示すように、段差部の角部に相当する部分に蒸気を吹きつけるための蒸気吹き出し口を、径の小さなキリ孔30の複数から構成していた。図に示したキリ孔30以外の番号は、後述と同一番号を付したものと同一であるため、説明を省略するものとする。
【0003】
上記のように金型1の周縁方向に沿って形成された径の小さなキリ孔30の複数から段差部に相当する部分に蒸気を吹きつけることによって、その吹きつけられた部分の発泡性合成樹脂の伸びを良好にすることができるものの、キリ孔30から外れた周縁部分の段差部の角部、つまりキリ孔30とキリ孔30との間に位置する段差部の角部では、良好な発泡性合成樹脂の伸びを行わせることができない。このため、段差部の角部における発泡性合成樹脂全体の伸びを周縁方向で均一にすることができず、蒸気が吹きつけられていない段差部の角部の一部が凹んでしまい、段差部の角部の一部に凹み(欠け)を発生してしまうことがあった。特に、発泡性合成樹脂がポリプロピレンやポリエチレンの場合に、発泡剤ガスの保持力が弱いため、前記凹み(欠け)を発生し易いものであり、改善の余地があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、段差部を有する発泡体を成形させるに際し、段差部における発泡性合成樹脂への加熱を均一にすることによって、段差部の角部に凹み(欠け)が発生することを回避することができるようにする点にある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題解決のために、雄雌嵌合金型の雄金型と雌金型とを嵌合して形成される成形空間内に発泡性合成樹脂を充填したのち、前記発泡性合成樹脂を加熱融着して得られる発泡体が段差部を有する熱可塑性樹脂発泡体の成形方法であって、前記雄金型を、第1金型部とこの第1金型部に固定された第2金型部とから構成して、前記第1金型部と第2金型部との間で前記段差部を形成するとともに、第1金型部と第2金型部との間で前記段差部の角部の金型周縁方向にスリットを形成し、前記第1金型部に形成した縦孔から前記スリットを介して前記成形空間内に蒸気を吹きつけることを特徴としている。従って、加熱媒体としての蒸気を雄雌嵌合金型の周縁方向に長いスリットを介して成形空間内に充填された発泡性合成樹脂に吹きつけることによって、成形空間内に充填された発泡性合成樹脂の周縁方向略全域に渡って均一に蒸気加熱を行うことができる。
【0006】
雄雌嵌合金型の雄金型と雌金型とを嵌合して形成される成形空間内に発泡性合成樹脂を充填したのち、前記発泡性合成樹脂を加熱融着して得られる発泡体を成形するための金型であって、前記雄金型に段差部を備えてなる熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型において、前記雄金型を、第1金型部とこの第1金型部に固定された第2金型部とから構成して、前記第1金型部と第2金型部との間で前記段差部を形成するとともに、第1金型部と第2金型部との間で前記段差部の角部の金型周縁方向にスリットを形成して、前記成形空間内に充填された発泡性合成樹脂に加熱媒体を吹きつけるための吹き出し口を前記雄雌嵌合金型の前記段差部における角部の周縁方向にスリット状に形成するとともに、前記第1金型部に前記スリット状の吹き出し口に連通する縦孔を設けて、熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型を構成した。従って、上述同様に、加熱媒体としての蒸気を雄雌嵌合金型の周縁方向に長いスリットを介して成形空間内に充填された発泡性合成樹脂に吹きつけることによって、成形空間内に充填された発泡性合成樹脂の周縁方向略全域に渡って均一に蒸気加熱を行うことができる。
【0007】
前記段差部を雄雌嵌合金型の嵌合方向に沿った第2金型部の面とこの面に直交する第1金型部の垂直面とから構成するとともに、この垂直面に前記吹き出し口を形成することによって、形成された発泡体の垂直面の一部に欠けが発生することが有効に防止できる。一方、従来、加熱媒体としての蒸気が吹きつけられた部分の一部又は全部が盛り上がった出っ張り部、つまりバリが形成されるのであるが、本発明においては、バリは嵌合方向に垂直な面に形成されるため、この発泡体の段差部を嵌合方向から見たとき、バリが嵌合方向に沿った面に形成された場合に比べて目立ち難く、商品価値の高いものとなる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に、本発明の成形方法を用いて熱可塑性樹脂発泡体を成形するための成形用金型を示している。この金型は、可動側の雄金型(コア型)1と、この雄金型1に対して嵌合する固定側の雌金型(キャビティ型)2とからなる雄雌嵌合金型3に構成されている。このような雄雌嵌合金型3に充填するものとしては、プロパン、ブタン、ペンタン等の発泡剤により発泡させたビーズ状の発泡性合成樹脂よりなる成形材料を用い、それら成形材料をそのまま、或いは予備発泡したものを雄雌嵌合金型3に充填して加熱することによって、発泡体を得るようにしている。前記雄雌嵌合金型3に充填する成形材料を発泡性合成樹脂と称し、雄雌嵌合金型3に充填して加熱して得られた成形品を発泡体と称するものとする。そして、この金型には、前記のように予備発泡(一次発泡)させたものを二次発泡させたり、発泡体相互の融着が良好に行われるのに必要な温度に加熱するために加熱媒体としての蒸気を発泡性合成樹脂に吹きつけるための加熱機構並びに離型に必要な温度まで低下させるための水冷機構を備えている。前記水冷機構については、説明を省略する。前記成形材料としては、ポリスチレン系樹脂の他、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂等の各種合成樹脂材料を用いることができ、成形材料としてはこれらのものに限定されるものではない。
【0009】
前記雄金型(コア型)1について説明すれば、図1及び図3に示すように、嵌合方向に3つの段差部4,5,6を備えた雄金型(コア型)1を固定プレート7にビス8・・により固定し、この固定プレート7に蒸気室9を形成するための枠体10を固定するとともに、この枠体10にそれの上側開口部を閉じるバックプレート11を固定している。従って、図外の蒸気発生装置からの蒸気が供給された蒸気室9内の蒸気を固定プレート7の中央部に形成の開口部7Aを通して雄金型(コア型)1内に蒸気を充填することができる加熱機構を構成している。
【0010】
前記段差部4又は5又は6は、雄雌嵌合金型3の嵌合方向に沿った面4A又は5A又は6Aと、この面に直交する垂直面4B又は5B又は6Bとから構成されている。
【0011】
前記雄金型(コア型)1内に充填された蒸気は、該雄金型(コア型)1に形成の複数個の上下方向の縦孔12・・を通して下方に案内されたのち、この縦孔12・・に連通する金型の周縁方向に長いスリット状の周溝13を通して雄金型(コア型)1と雌金型(キャビティ型)2とにより形成される空間14内に充填された発泡性合成樹脂に吹きつけるようにしている。これによって、この吹きつけられた発泡性合成樹脂の周縁の角部20Cのどの位置にも凹み(欠け)が発生することがないようにしている。前記周溝13を形成するために、前記雄金型(コア型)1を、上部に位置する第1金型部1Aとこの第1金型部1Aの下端中央部にボルト25により固定される下部に位置する第2金型部1Bとから構成している。前記周溝13の発泡性合成樹脂側端部を、該発泡性合成樹脂に蒸気を吹きつけるための蒸気吹き出し口13Aと称し、この蒸気吹き出し口13Aを前記雄雌嵌合金型3の嵌合方向に沿った面4A又は5A又は6Aのうちの上下方向中間に位置する面5Aの角部5Cに形成している。尚、これら第1金型部1Aと第2金型部1Bを一体形成して構成してもよい。
【0012】
前記雌金型(キャビティ型)2は、固定プレート15にビス16により固定されている。
【0013】
前記雄金型(コア型)を、図4及び図6に示すように構成してもよい。つまり、図1では、蒸気吹き出し口13Aが雄雌嵌合金型3の嵌合方向に沿った面5Aの角部5Cに形成したが、これに代えて、図4では、蒸気吹き出し口13Aを雄雌嵌合金型3の嵌合方向に沿った面4A又は5A又は6Aに直交する垂直面4B又は5B又は6Bのうちの上下方向中間に位置する垂直面5Bの角部5Cに形成した例を示す。このように構成することによって、蒸気吹き出し口13Aからの蒸気を発泡性合成樹脂に吹きつけて形成された発泡体17には、図5に示すように、蒸気が吹きつけられた部分の一部又は全部が盛り上がった出っ張り部、つまりバリ18が形成される。しかしながら、このバリ18は、雄雌嵌合金型3の嵌合方向、図の矢印K方向から見たときにおいて、図2に例示されるケース、すなわち、バリ18が嵌合方向に沿った面に形成された場合に於いて出っ張り(バリ)が明確であるのに対して、商品が観察される方向から目立ち難いので、商品の美観が増し、好ましい結果となる。前記蒸気吹き出し口13Aを上下方向中間に位置する垂直面5Bの角部や雄雌嵌合金型3の嵌合方向に沿った面5Aの角部に形成した場合を示したが、他の面4A,4B,6A,6Bの角部にも形成してもよく、蒸気吹き出し口13Aの位置や個数は、図に示したものに限定されるものではない。
【0014】
前記雄雌嵌合金型3にて成形された発泡体17は、図7にも示すように、前記段差部4,5,6に対応した3つの段差部19,20,21を備えた孔22が複数個(実際には4個)形成された枠体形状にし、この枠体形状の発泡体17を左右に配置するとともに、これら左右2個を1セットにして医療用チューブの両端を左右の孔22,22に差し込んでシール用治具として使用するためのものである。そして、前記段差部19又は20又は21は、雄雌嵌合金型3の嵌合方向に沿った面19A又は20A又は21Aと、この面に直交する垂直面19B又は20B又は21Bとから構成されている。
【0015】
前記雄雌嵌合金型3の段差部4,5,6それぞれの形状は、図面で示した直線形状の他、曲線でもよいし、又、段差部4又は5又は6を構成する面4A,4B又は5A,5B又は6A,6B同士の角度を90度に設定する他、これ以外の角度に設定してもよい。
【0016】
前記蒸気吹き出し口13Aを、雄雌嵌合金型3の周縁方向全周に渡って連続するように形成したが、図8に示すように、雄雌嵌合金型3の周縁方向に沿って一定長さだけ連続するスリット状の孔に構成して実施してもよい。
【0018】
【発明の効果】
請求項1及び請求項2によれば、周縁方向に長い吹き出し口を介して加熱媒体である蒸気を発泡性合成樹脂に吹きつけることを特徴とする。本発明の構成を従来の複数のキリ孔を通して発泡性合成樹脂に蒸気を吹きつける場合に於いて、周縁方向で蒸気が吹きつけられない部分が多々発生するものに比べて、周縁方向での蒸気の吹きつけ面積を増大させることができるから、段差部の角部に凹み(欠け)が発生することを回避することができ、段差部を有する複雑な形状の発泡体を良好に成形することができる熱可塑性樹脂発泡体の成形方法及び成形用金型を提供することができる。特に、ポリプロピレンやポリエチレン等のような発泡剤ガスの保持力の弱い発泡性合成樹脂であっても、段差部の角部に凹み(欠け)が発生することがなく、良好な発泡体の成形を行うことができる。
【0019】
請求項3によれば、吹き出し口を垂直面に形成することによって、嵌合方向に沿った面に形成した場合に比べて、出っ張り部、つまりバリを目立ち難くすることができ、見た目を良好にすることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】雄雌嵌合金型の一例を示す断面図
【図2】図1の雄雌嵌合金型を使用して作成した発泡体の断面図
【図3】雄雌嵌合金型の一例の一部省略の斜視図
【図4】雄雌嵌合金型の一例を示す断面図
【図5】図4の雄雌嵌合金型を使用して作成した発泡体の断面図
【図6】雄雌嵌合金型の一例の一部省略の斜視図
【図7】発泡体の一部省略の斜視図
【図8】雄雌嵌合金型の一例の一部省略の水平方向で切断した平面図
【図9】 雄雌嵌合金型の従来例を示す断面図
【符号の説明】
1 雄金型 1A 第1金型部
1B 第2金型部 2 雌金型
3 雄雌嵌合金型 4 段差部
4A 面 4B 垂直面
5 段差部 5A 面
5B 垂直面 6 段差部
6A 面 6B 垂直面
7 固定プレート 7A 開口部
8 ビス 9 蒸気室
10 枠体 11 バックプレート
12 縦孔 13 周溝
13A 蒸気吹き出し口 14 空間
15 固定プレート 16 ビス
17 発泡体 18 バリ
19 段差部 19A 面
19B 垂直面 20 段差部
20A 面 20B 垂直面
21 段差部 21A 面
21B 垂直面 25 ボルト
5C,20C 角部 30 キリ孔
K 矢印

Claims (3)

  1. 雄雌嵌合金型の雄金型と雌金型とを嵌合して形成される成形空間内に発泡性合成樹脂を充填したのち、前記発泡性合成樹脂を加熱融着して得られる発泡体が段差部を有する熱可塑性樹脂発泡体の成形方法であって、前記雄金型を、第1金型部とこの第1金型部に固定された第2金型部とから構成して、前記第1金型部と第2金型部との間で前記段差部を形成するとともに、第1金型部と第2金型部との間で前記段差部の角部の金型周縁方向にスリットを形成し、前記第1金型部に形成した縦孔から前記スリットを介して前記成形空間内に蒸気を吹きつけることを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の成形方法。
  2. 雄雌嵌合金型の雄金型と雌金型とを嵌合して形成される成形空間内に発泡性合成樹脂を充填したのち、前記発泡性合成樹脂を加熱融着して得られる発泡体を成形するための金型であって、前記雄金型に段差部を備えてなる熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型において、前記雄金型を、第1金型部とこの第1金型部に固定された第2金型部とから構成して、前記第1金型部と第2金型部との間で前記段差部を形成するとともに、第1金型部と第2金型部との間で前記段差部の角部の金型周縁方向にスリットを形成して、前記成形空間内に充填された発泡性合成樹脂に加熱媒体を吹きつけるための吹き出し口を前記雄雌嵌合金型の前記段差部における角部の周縁方向にスリット状に形成するとともに、前記第1金型部に前記スリット状の吹き出し口に連通する縦孔を設けたことを特徴とする熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型。
  3. 前記段差部を雄雌嵌合金型の嵌合方向に沿った第2金型部の面とこの面に直交する第1金型部の垂直面とから構成するとともに、この垂直面に前記吹き出し口を形成してなる請求項2記載の熱可塑性樹脂発泡体の成形用金型。
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