JP3681460B2 - 半導体レーザ素子およびその製造方法ならびに半導体レーザ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は半導体レーザ素子およびその製造方法ならびに半導体レーザ装置に関し、特に電気容量低減のため半導体レーザ素子の素子幅よりも光導波路形成領域を帯状に細くした電気容量低減型半導体レーザ素子の製造技術に関し、たとえば、戻り光雑音低減のために高周波重畳を掛けて使用する半導体レーザの製造に適用して有効な技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
光通信機器,光情報処理機器,光応用計測機器等の光源として、半導体レーザが使用されている。たとえば、高密度な光磁気ディスクや相変化光ディスクの光源として、680nm帯の赤色AlGaInP半導体レーザが使用されている。680nm帯の赤色AlGaInP半導体レーザは、780〜830nm帯の赤外レーザに比べて集光スポット径が小さく、さらに光ディスクの高密度化を図ることができる。
【0003】
しかし、680nm帯の赤色AlGaInP半導体レーザは、赤外レーザに比較して戻り光雑音を抑制するための高周波重畳が掛かり難く使用し難い。
【0004】
一方、光導波路の両側に1対の分離溝(ダブルチャンネル)を設けることによって電気容量を低減して高周波重畳を掛けやすくした680nm帯の赤色AlGaInP半導体レーザ(ダブルチャンネル構造半導体レーザ)が提案されている。
【0005】
ダブルチャンネル構造半導体レーザについては、「テクニカルダイジェスト オブ シンポジウム オン オプティカル メモリ(technical digest of Symposium on Optical Memory )」1994年7月、pp.95 〜96、あるいは「第55回応用物理学会学術講演会予稿集」No.3,20p-S-14 、pp.9〜38(1994・9)に記載されている。
【0006】
また、株式会社新技術コミュニケーションズ発行、「オー プラス イー(Oplus E)」1994年10月5日発行、P68〜P70には、一対の分離溝の間隔を30μm(レーザの横幅300μm)とした場合、電気容量は〜35pFとなり従来の1/3〜1/4となること、遮断周波数測定値は2.5〜5.0mW(読出し動作相当)において800MHzとなり従来の赤外レーザの220MHzに比較して3倍以上に改善されること、長時間動作信頼性は60℃,30mW,CWで2500時間以上安定すること等が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
光導波路の両側にそれぞれ分離溝を設けた電気容量低減型AlGaInP半導体レーザは、電気容量の低減から高周波重畳が効果的に掛かり戻り光による雑音の低減が図れる。
【0008】
しかし、このようなダブルチャンネル構造の半導体レーザ(半導体レーザ素子そのものまたは半導体レーザ素子を組み込んだ半導体レーザ装置)は、以下のような問題があることが本発明者によってあきらかにされた。
【0009】
(1)光導波路(共振器)の両側に分離溝を設けるため、光導波路の端面部分の放熱性が低下し、高出力化が図り難い。すなわち、一対の溝で挟まれた光導波路形成部は、30μmと細い短冊状となるため、光導波路を構成する活性層に近い電極(P電極)面を接合材を介してサブマウント等の支持体に固定した場合、活性層部分で発熱した熱は分離溝があることから素子の幅方向に広がらず、狭い光導波路形成部を介してサブマウントに伝達されることになり、放熱性の低下から高出力化が図り難い。
【0010】
(2)特に、光導波路の端(出射面)部分は放熱経路が少なくなるため、光導波路の中央部分に比較して放熱性が悪い。したがって、光出力を高めれば高める程、光導波路の端面部分での光吸収が増加して端面温度が上昇し、光学損傷が起き、素子が劣化し易くなる。この結果、高光出力での使用において半導体レーザの長寿命化が図れなくなる。
【0011】
(3)半導体レーザ素子の製造においては、最終工程で半導体基板を縦横に分断(劈開)して矩形状の半導体レーザ素子を製造するが、前記劈開時、前記分離溝底に応力集中が生じ、分離溝の底で劈開したり、あるいは分離溝の底にクラックが入ったりすることがある。これにより、半導体レーザ素子の製造歩留りの低下を引き起こしたり、あるいは半導体レーザ素子の信頼性を低下させる原因となる。特に、半導体基板を光導波路に直交する方向に沿って劈開して短冊体とした後、この短冊体の下縁にカッター等によって外力を加えて劈開を行って半導体レーザ素子とする場合、前記分離溝底での劈開やクラックが入り易い。不所望位置の劈開は製品不良を引き起こし、クラックは活性層破壊等によって半導体レーザ特性を劣化させる。
【0012】
本発明の目的は、電気容量低減型の半導体レーザ素子および半導体レーザ装置の高出力化を図ることにある。
【0013】
本発明の他の目的は、電気容量低減型の半導体レーザ素子および半導体レーザ装置の長寿命化を図ることにある。
【0014】
本発明の他の目的は、信頼性の高い電気容量低減型半導体レーザ素子を高歩留りで製造する方法を提供することにある。
【0015】
本発明の前記ならびにそのほかの目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面からあきらかになるであろう。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0017】
(1)化合物半導体基板と、前記化合物半導体基板の主面側に直接または所望の化合物半導体層を介して設けられた化合物半導体層からなる第1導電型光導波層と、前記第1導電型光導波層上に設けられた化合物半導体層からなる活性層と、前記活性層上に設けられた化合物半導体層からなる第2導電型光導波層と、前記第2導電型光導波層側から設けられかつ前記活性層を貫いて前記第1導電型光導波層の表層部分にまで到達する2条の溝と、前記2条の溝に挟まれかつ光導波路を含む帯状の光導波路形成部と、前記光導波路形成部上に形成され前記第2導電型光導波層に電気的に接続される電極とを有する半導体レーザ素子であって、前記2条の溝は前記光導波路形成部の両端部分では相互に徐々に離れるように屈曲延在して前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなり、前記電極は徐々に広がる前記光導波路形成部の端部分にも設けられている。前記活性層は複数個の量子井戸層による量子井戸構造となっている。前記溝の側面はいずれの結晶方向においても順メサ構造となり、前記溝上には絶縁膜が設けられかつ一部の絶縁膜上には電極が形成されている。前記第1導電型光導波層,活性層および第2導電型光導波層はAlGaInP層またはGaInP層で形成されている。
【0018】
(2)化合物半導体基板の主面に直接または所望の化合物半導体層を介して化合物半導体層からなる第1導電型光導波層,化合物半導体層からなる活性層,化合物半導体層からなる第2導電型光導波層等を順次重ねて形成する工程と、前記第2導電型光導波層側から前記活性層を貫いて前記第1導電型光導波層の表層部分にまで到達する2条の溝を形成して前記2条の溝によって挟まれかつ光導波路を含む帯状の光導波路形成部を形成する工程と、前記光導波路形成部上に前記第2導電型光導波層に電気的に接続される電極を形成する工程と、を有する半導体レーザ素子の製造方法であって、前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなるように前記2条の溝を前記光導波路形成部の両端部分では徐々に離れて広がるように形成し、前記電極形成時には徐々に広がる前記光導波路形成部の端部分上に前記電極を形成する。たとえば、光導波路形成部の端部分は半導体レーザ素子の幅一杯または幅に近似した幅に広げて形成する。前記溝の形成時、前記溝の側面がいずれの結晶方向においても順メサ構造になるようなエッチング方法でエッチングする。前記活性層は複数個の量子井戸層を有する量子井戸構造となっている。前記第1導電型光導波層,活性層および第2導電型光導波層をAlGaInP層またはGaInP層で形成する。
【0019】
(3)支持体と、前記支持体に接合材を介して固定される半導体レーザ素子とを有し、前記半導体レーザ素子は化合物半導体基板の主面側に光導波路を形成する活性層等が設けられるとともに、前記化合物半導体基板の主面側に設けられた電極面が接合材を介して前記支持体に固定され、かつ前記化合物半導体基板の主面側に設けられ前記活性層を貫く2条の溝間に光導波路を含みかつ帯状となる光導波路形成部を有することを特徴とする半導体レーザ装置であって、前記半導体レーザ素子の前記溝は前記光導波路形成部の端側で屈曲し前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなり、前記2条の溝は前記光導波路形成部の両端部分では相互に徐々に離れるように屈曲延在して前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなり、前記電極は徐々に広がる前記光導波路形成部の端部分にも設けられている。
【0020】
前記(1)の手段によれば、2条の溝によって帯状の光導波路形成部を形成して電気容量を低減し、高周波重畳が掛かり易くして戻り光による雑音が発生し難くした半導体レーザ素子において、前記溝を屈曲させて前記光導波路形成部の両端部分を幅広くすることから、光導波路の端部分(出射面部分)の放熱性が向上する。このため、光出力の向上を図ることができる。また、光導波路の出射面部分の熱に伴う光学損傷を防ぐことができるため、半導体レーザ素子の長寿命化が達成できる。
【0021】
前記(2)の手段によれば、2条の溝によって帯状の光導波路形成部を形成して電気容量を低減し、高周波重畳が掛かり易くして戻り光による雑音が発生し難くした半導体レーザ素子の製造方法において、前記溝を屈曲させて前記光導波路形成部の両端部分を幅広くすることから、光導波路の端部分(出射面部分)の放熱性を向上できる半導体レーザ素子を製造することができる。したがって、光出力を高くできる半導体レーザ素子を製造することができる。また、光導波路の出射面部分の熱に伴う光学損傷を防ぐことができるため、寿命の長い半導体レーザ素子を製造することができる。また、半導体基板を縦横に分断(劈開)して半導体レーザ素子を製造する場合、光導波路形成部の幅が広い部分を劈開させるため、劈開時の応力集中によって半導体レーザ素子の劈開不良やクラック発生を防止でき、信頼性の高い半導体レーザ素子を高歩留りで製造することができる。
【0022】
前記(3)の手段によれば、高周波重畳が掛けやすい構造からなる半導体レーザ素子は光導波路形成部上に設けられる電極を支持体に接合材を介して固定するが、光導波路形成部の両端部分は幅広となっていることから、光導波路の端面である出射面部分での放熱性が向上するため、半導体レーザ装置の高出力化が達成できるとともに、長寿命化が達成できる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、発明の実施の形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0024】
図1乃至図5は本発明の一実施形態である半導体レーザ素子に係わる図であって、図1は半導体レーザ素子の斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は半導体レーザ素子における多重量子井戸活性層の構造を示す一部の断面図、図4は図1のB−B線に沿う断面図、図5は図1のC−C線に沿う断面図である。
【0025】
本実施形態1では、GaInP/AlX Ga1-X InP系の680nmの赤外半導体レーザに本発明を適用した例について説明する。
【0026】
最初に半導体レーザ素子の概略構造について説明する。半導体レーザ素子1は、図1に示すように、光導波路(共振器)2の両端(出射面)からレーザ光3(図では前方光のみを示す)を出射する。半導体レーザ素子1の大きさは、光導波路2の延在方向に沿う縦が600μm、光導波路2と直交する方向の幅が300μm、高さが100μmとなっている。
【0027】
半導体レーザ素子1は、第1導電型の化合物半導体基板5、たとえば、n型GaAs基板5の(100)面からなる主面にGaInP/AlX Ga1-X InP系の多層成長層6を形成するとともに、この多層成長層6内の活性層7を一対の溝10で分断し、帯状の光導波路形成部11を形成した構造となっている。また、前記光導波路形成部11の両端、すなわち、光導波路2の端部分では、幅が広くなり、放熱部12を形成している。したがって、前記光導波路形成部11は、その殆どの部分を構成する細幅部13と、この細幅部13の両端にそれぞれ連なる幅広の放熱部12となる。前記細幅部13は、たとえば、35μmとなり、放熱部12の幅は180μmとなる。
【0028】
また、半導体レーザ素子1の主面の両側には、縁に沿って一定幅の溝14が形成されている。この溝14は、半導体基板を縦横に分断して半導体レーザ素子を形成する際の半導体基板における劈開領域の一部であり、たとえば、120μm幅の劈開領域の中心を劈開することによって生ずることから、60μmの幅となる。
【0029】
前記光導波路形成部11を形成するための2条の溝10は、その殆どの部分で35μmの間隔を隔てて平行に延在するが、光導波路形成部11の両端部分では相互に徐々に離れるように延在し、再び180μmの間隔を隔てて平行に延在している。光導波路形成部11の広がり部分から端までの長さは、50μm程度となる。
【0030】
前記溝10および溝14は、結晶方向の如何を問わず、図1,図2および図4に示すように、その側面は順メサ構造となっている。これは、溝形成時、BrとCH3OHの混合液(たとえば、Br:CH3OH=1:100)やHBr系のエッチング液によるウエットエッチングによってGaInP/AlX Ga1-X InP系化合物半導体をエッチングすることによって形成される。この結果、前記溝上には絶縁膜を介して電極が形成されるが、溝が順メサ構造となり、垂直面や逆メサ構造とならないことから、絶縁膜が途切れなくなり、電極と化合物半導体層が直接接触するショートが防止でき、信頼性の高い半導体レーザ素子となる。
【0031】
本実施形態では、前記溝10によって活性層7を分断することによって、半導体レーザ素子1の略全面に電気容量を形成することなく、光導波路形成部11上にのみ電気容量が形成されるようにして電気容量低減型としている。
【0032】
一方、n型GaAs基板5の主面側にはアノード電極(p電極))16が設けられている。また、n型GaAs基板5の裏面側にはカソード電極(n電極)17が設けられている。
【0033】
前記アノード電極16およびカソード電極17間に所定の電圧を印加することによって、活性層7の略中央部分に形成される光導波路2の端からレーザ光3を出射する。
【0034】
つぎに、半導体レーザ素子1の詳細な構造について説明する。半導体レーザ素子1は、図2および図5に示すように、厚さ100μm弱のn型GaAs基板5の(100)面からなる主面上に、n型GaAsバッファ層20,n型AlGaInP光導波層21,活性層7,第2導電型(p型)AlGaInP光導波層22,p型GaInPバッファ層23が順次積層形成されている。
【0035】
前記各層の不純物濃度および厚さ等の一例を挙げると、n型GaAsバッファ層20はドナー濃度Ndが1×1018cm~3で厚さが0.5μm、n型AlGaInP光導波層21はドナー濃度Ndが5〜10×1017cm~3で厚さが2μm、p型AlGaInP光導波層22はアクセプタ濃度Naが3.5×1017cm~3で厚さが1.4μm、p型GaInPバッファ層23はアクセプタ濃度Naが1.0×1018cm~3で厚さが20nmとなっている。
【0036】
また、活性層7はGaInP/AlX Ga1-X InP多重量子井戸構造となり、図3に示すように、2層の膜厚13nmのアンドープGaInP量子井戸層30と、1層の膜厚4〜6nmのアンドープAlX Ga1-X InP量子障壁層(x=0.3〜0.5)31と、2層の膜厚5〜20nmのアンドープAlX Ga1-X InPガイド層(x=0.4〜0.65)32によって形成されている。前記2層のアンドープGaInP量子井戸層30間にアンドープAlX Ga1-X InP量子障壁層31を挟み、全体をアンドープAlX Ga1-X InPガイド層32で挟む構造となっている。
【0037】
また、n型GaAs基板5の主面中央には、リッジ33が形成されている。このリッジ33は、前記p型GaInPバッファ層23をエッチング除去するとともに、p型GaInPバッファ層23の下層のp型AlGaInP光導波層22の表層部分に亘るエッチングによって形成されている。リッジ33は、たとえば、幅が4〜5μm程度となる。
【0038】
一方、前記リッジ33の両側のエッチング除去空間を埋めるように、前記p型AlGaInP光導波層22上にはn型GaAs電流狭窄層24が設けられている。このn型GaAs電流狭窄層24は、たとえば、アクセプタ濃度Naが2×1018cm~3で厚さが1.4μm程度となっている。また、前記リッジ33およびn型GaAs電流狭窄層24の上面はp型GaAsコンタクト層25によって被われている。このp型GaAsコンタクト層25は、電極との間でオーミックをとるため不純物濃度は1020cm~3程度の高不純物濃度となるとともに、膜厚は2.0μmとなっている。
【0039】
また、前記n型GaAs基板5の主面側の両側部分は、縁に沿って溝14が設けられている。この溝14は、n型GaAs基板5の主面に設けられた多層成長層6の一部をエッチングすることによって形成されている。すなわち、前記p型GaAsコンタクト層25から前記活性層7を貫きn型AlGaInP光導波層21の表層部分に到達するようにエッチングがなされ、溝14が形成されている。
【0040】
他方、前記光導波路形成部11を形成するために、n型GaAs基板5の主面側の多層成長層6の一部をエッチングして溝10が形成されている。すなわち、前記p型GaAsコンタクト層25から前記活性層7を貫きn型AlGaInP光導波層21の表層部分に到達するように2条の溝10が形成される。前記溝10は、中間に前記リッジ33を位置させかつ35μm程度離れた平行な2条の溝となるが、前記リッジ33の両端部分では徐々に離れ、その後再び180μm程度の間隔を隔てて平行に延在する。これによって、図2および図4に示すように、光導波路形成部11は、光導波路形成部11の両端部分の幅広の放熱部12と、幅の狭い細幅部13とが形成される。前記溝10および溝14は、同一のエッチングによって同時に形成されている。
【0041】
また、前記n型GaAs基板5の主面側は、前記リッジ33上のp型GaAsコンタクト層25領域を除いてPSG/SiO2による絶縁膜層26で被われている。また、前記露出するp型GaAsコンタクト層25上および絶縁膜層26上にはアノード電極16が設けられている。たとえば、アノード電極16は、Cr/Auで形成されている。また、n型GaAs基板5の裏面にはカソード電極17が設けられている。たとえば、カソード電極17は、AuGeNi/Cr/Auで形成されている。
【0042】
なお、AlGaInP結晶は、GaAsと同様に閃亜鉛鉱形結晶構造となるため、結晶方向(結晶面)によってエッチング面は順メサ構造、または庇状の逆メサ構造となる。そこで、本実施形態では、GaInP/AlX Ga1-X InPをエッチングする際、BrとCH3OHの混合液(たとえば、Br:CH3OH=1:100)やHBr系のエッチング液を使用してウエットエッチングを行い、いかなる結晶方向でも溝の側面が順メサ構造となるようにしてある。これによって絶縁膜層26によるステップカバレッジ性が良好となり、前記絶縁膜層26上に設けられたアノード電極16と、絶縁膜層26の下のp型GaAsコンタクト層25やn型GaAs電流狭窄層24等の化合物半導体層との電気的短絡は発生しなくなり、半導体レーザ素子1の信頼性が高くなる。
【0043】
さらに、半導体レーザ素子1の両出射面はコーティング膜によって被われている。すなわち、図5に示すように、半導体レーザ素子1の端面には前方コーティング膜(ARコート)35または後方コーティング膜(HRコート)36が設けられている。前方コーティング膜35は、115nmの厚さのSiO2膜で形成され、反射率が5%程度となっている。また、後方コーティング膜36は、出射面にλ/4の厚さのSiO2膜を付けた後それぞれλ/4の厚さのSiO2膜とa−Si;H膜を交互に重ね、全体で4層となる膜となっていて、反射率は94%程度となっている。
【0044】
前記コーティング膜の構成によって、しきい値,発光効率(スロープ効率)等は変化する。また、遮断周波数(fc)特性は、しきい値が低くなる程、また発光効率が高くなる程高くなることが実験的にも確認されている。
【0045】
本実施形態の半導体レーザ素子1は、支持体にpダウンで固定してレーザ発振させた場合、しきい値は46mA程度となり、発光効率は0.7mW/mA程度となり、遮断周波数(fc)は800MHz程度と高くなる。
【0046】
本実施形態の半導体レーザ素子1は、2条の溝10によって光導波路形成部11を形成する構造となることから、電気容量が低減される。たとえば、溝10を設けない構造の場合、CR時定数は800〜1000pFΩであるが、本実施形態の半導体レーザ素子1の場合、CR時定数は230pFΩと1/4程度に低減できる。これにより、戻り光雑音を低減するための高周波重畳が掛けやすくなる。
【0047】
つぎに、本実施形態の半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
【0048】
最初に、図6および図7に示すように、400μm前後の厚さの第1導電型の化合物半導体基板、たとえば、n型GaAs基板5を用意する。このn型GaAs基板5は、その主面が(100)となっている。
【0049】
つぎに、前記n型GaAs基板5の主面に、MOCVD(Metalorganic Chemical Vapor Deposition)法によって、n型GaAsバッファ層20,n型AlGaInP光導波層21,活性層(多重量子井戸構造活性層)7,p型AlGaInP光導波層22,p型GaInPバッファ層23を順次積層形成する。
【0050】
図7において、活性層7は黒塗りの層で示してある。なお、図が不明瞭となることを避けるため、多くの箇所のハッチングを省略し、一部のみにハッチングを施してある。
【0051】
前記各層の1例を挙げればつぎの通りである。n型GaAsバッファ層20は、ドナー濃度Ndが1×1018cm~3であり、厚さが0.5μmである。
【0052】
n型AlGaInP光導波層21は、ドナー濃度Ndが5〜10×1017cm~3であり、厚さが2μmである。
【0053】
p型AlGaInP光導波層22は、アクセプタ濃度Naが3.5×1017cm~3であり、厚さが1.4μmである。
【0054】
p型GaInPバッファ層23は、アクセプタ濃度Naが1.0×1018cm~3であり、厚さが20nmである。
【0055】
また、活性層7は、GaInP/AlX Ga1-X InP多重量子井戸構造となり、図3に示すように、n型AlGaInP光導波層21上にアンドープAlX Ga1-X InPガイド層32が設けられるとともに、このアンドープAlX Ga1-X InPガイド層32上に膜厚13nmのアンドープGaInP量子井戸層30と、膜厚4〜6nmのアンドープAlX Ga1-X InP量子障壁層(x=0.3〜0.5)31が交互に重なり、前記アンドープGaInP量子井戸層30が2層となり、アンドープAlX Ga1-X InP量子障壁層31が1層となる。また、最上層は前記アンドープGaInP量子井戸層30上に載るアンドープAlX Ga1-X InPガイド層32となり、全体で5層となっている。
【0056】
つぎに、図8に示すように、前記p型GaInPバッファ層23上に厚さ0.2μmのSiO2膜を形成した後、このSiO2膜を選択的にエッチングして5〜6μm程度の幅の帯状のエッチングマスク40を形成する。エッチングマスク40は、図では中央に示すが、たとえば、300μm程度の間隔で多数平行に形成される。これは幅300μmの半導体レーザ素子1を製造するためである。
【0057】
つぎに、前記エッチングマスク40をマスクとしてエッチングを行う。エッチングは前記活性層7を貫いて活性層7の下のn型AlGaInP光導波層21の表層部分に到達するまで行われる。この結果、前記エッチング用マスク40の下には順メサ構造のリッジ33が形成される。このリッジ33の幅は4〜5μm程度となる。なお、前記エッチングにおいて、n型AlGaInP光導波層21は0.1〜0.2μm程度の厚さが残留するようにエッチングする。
【0058】
つぎに、図9に示すように、MOCVD法によって、エッチングされたp型AlGaInP光導波層22上にn型GaAs電流狭窄層24を形成して、リッジ33の両側の窪みを埋め込む。GaAs電流狭窄層24は不純物濃度が2×1018cm~3となり、厚さは、約1.4μm程度となる。
【0059】
つぎに、前記エッチングマスク40を除去した後、図9に示すように、n型GaAs基板5の主面側全域にp型GaAsコンタクト層25を形成する。このp型GaAsコンタクト層25は、上面に形成される電極との間でオーミックコンタクトをとるため、不純物濃度が1020cm~3程度の高不純物濃度とされる。また、厚さは2.0μmとなる。
【0060】
つぎに、図10に示すように、前記p型GaAsコンタクト層25上に0.3μmの厚さのSiO2膜を形成した後、このSiO2膜を選択的にエッチングしてエッチングマスク41を形成し、このエッチングマスク41をマスクとして、エッチングを行い、活性層7を貫きn型AlGaInP光導波層21の表層に到達する2条の溝10および2本の溝14を形成する。前記溝14は、図11に示すように、二点鎖線で示される分割線a,bで囲まれる単位素子形成領域42(幅W,長さL)の両側に沿って形成され、たとえば、その幅dは120μmとなる。前記単位素子形成領域42の幅は300μm、長さは600μmとなる。n型GaAs基板5を分断して半導体レーザ素子1を製造する場合、前記幅dの中心線に沿って劈開が行われる。
【0061】
また、2条の溝10は、前記単位素子形成領域42の長さ方向に沿って平行に延在し細幅部13を形成するが、前記溝10は分割線bの近傍、すなわち、半導体レーザ素子1の光導波路2の端近傍で徐々に離れて広がった後、再び平行となり幅広部43を形成する。この幅広部43は前記細幅部13に比較して充分広く面積が大きいことから放熱部12を形成する。たとえば、前記細幅部13の幅は35μmとなり、幅広部43の幅は180μmとなる。また、溝10の側面は前記幅広部43の部分では溝14の側面と一致する。
【0062】
GaInP/AlX Ga1-X InPは、閃亜鉛鉱形結晶構造となることから、一般のエッチング手法では、結晶方向によっては、比較的なだらかな順メサ構造(順メサ形状)以外に、庇状の逆メサ構造や垂直面構造となってしまう。すなわち、本実施形態では、前記溝10は直線とはならず、途中で斜めに曲がったりすることから、溝10の全ての縁部分を順メサ構造とすることができない。
【0063】
そこで、本実施形態では、エッチングは、BrとCH3OHの混合液(たとえば、Br:CH3OH=1:100)やHBr系のエッチング液を使用したウエットエッチングによって行う。
【0064】
したがって、前記溝10,14を被うように絶縁膜を設けた場合、絶縁膜は溝の縁で途切れるようなこともなく、ステップカバレッジ性の高いものとなる。この結果、前記絶縁膜上に電極を形成した場合、電極と絶縁膜の下の化合物半導体との電気的絶縁は確実に維持され、短絡が起きなくなる。
【0065】
つぎに、図12に示すように、n型GaAs基板5の主面側全域に厚さ0.2〜0.3μmのPSG/SiO2からなる絶縁膜層26を形成するとともに、常用のホトリソグラフィによって、前記リッジ33上の絶縁膜層26を除去してコンタクト穴を形成する。その後、表面ライトエッチを行い、露出するp型GaAsコンタクト層25の表面の清浄化を図る。
【0066】
つぎに、図13に示すように、前記n型GaAs基板5の主面側に電極材料45を蒸着によって形成する。たとえば、電極材料45として、Cr,Auを順次蒸着する。その後、前記電極材料45上にホトレジスト膜を塗布した後、常用のホトリソグラフィによってパターニングしてエッチングマスク46を形成する。ついで、前記エッチングマスク46をマスクとして前記電極材料45をエッチングして、選択的にアノード電極(p電極)16を形成する。図15には、p電極16をハッチングで示してある。
【0067】
つぎに、前記エッチングマスク46を除去する。その後、図14に示すように、前記n型GaAs基板5の裏面を研磨(バックラップ)するとともに、エッチング(バックエッチ)して、全体の厚さを100μm程度とする。その後、n型GaAs基板5の裏面に電極材料を蒸着した後、前記電極材料を選択的にエッチングして所望パターンのカソード電極(n電極)17を形成する。このカソード電極17は、たとえば、AuGeNi/Cr/Auで形成される。
【0068】
つぎに、図15に示されるn型GaAs基板5を、二点鎖線で示す分割線a,bに沿って縦横に分断して半導体レーザ素子1を製造する。
【0069】
具体的には、先ず、n型GaAs基板5を光導波路に直交する分割線bに沿って分断、すなわち、溝10や溝14に直交する方向に沿って劈開して短冊体を製造する。
【0070】
つぎに、前記短冊体の前記溝14の裏側縁にカッターによって外力を加え、溝14の中心線(分割線a)に沿って劈開を行って分断し、半導体レーザ素子1を製造する。この際、前記溝14の中心線部分の裏側にカッターで外力を加えても、前記幅広部43には溝10が存在しないことから、幅広部43には溝に掛かる応力集中に起因する劈開やクラックが発生しなくなる。
【0071】
また、短冊体の裏面の縁にカッターによって劈開力が加えられるため、縁から外れた光導波路形成部11の細幅部13を形成する溝10の部分での劈開やクラックの発生は防止できる。
【0072】
この結果、n型GaAs基板5の不所望部分での劈開(分断)やクラックの発生がなくなるため、半導体レーザ素子1の製造歩留りが向上するとともに、製造された半導体レーザ素子1の信頼性が高くなる。
【0073】
つぎに、レーザ光の発光特性の調整のため、常用の方法によって前記半導体レーザ素子1の両出射面にコーティング膜を形成する。すなわち、図5に示すように、コーティング膜は、半導体レーザ素子1の前方出射面には前方コーティング膜(ARコート)35が形成され、後方出射面には後方コーティング膜(HRコート)36が設けられる。
【0074】
前方コーティング膜35は、115nmの厚さの単層のSiO2膜からなり、出射面に直接形成される。この前方コーティング膜35の反射率は5%程度となる。
【0075】
また、後方コーティング膜36は、後方出射面に直接形成される波長(λ)の1/4の厚さのSiO2膜と、このλ/4のSiO2膜上にλ/4の厚さのa−Si;H膜とSiO2膜を交互に積層した層とからなり、全体で4層の多層膜となる。後方コーティング膜36の反射率は94%程度となる。
【0076】
製造された半導体レーザ素子1は、幅300μm,長さ600μm,厚さ100μmとなり、長さ方向に680μmの波長のレーザ光を出射する。
【0077】
本実施形態の半導体レーザ素子1は、たとえば、図16に示すようなパッケージに組み込まれ半導体レーザ装置となる。図16は本実施形態の半導体レーザ装置を示す一部を切り欠いた斜視図、図17は半導体レーザ素子の固定状態を示す断面図である。
【0078】
半導体レーザ装置は、図16に示されるように、それぞれアセンブリの主体部品となる板状のステム50と、このステム50の主面側に気密固定されたキャップ51とからなっている。前記ステム50は数mmの厚さの円形の金属板となっていて、その主面(上面)の中央部には銅製のヒートシンク52が鑞材等で固定されている。このヒートシンク52の側面にはサブマウント53を介して半導体レーザ素子1が固定されている。この半導体レーザ素子1は、その上下端からレーザ光3を発光する。
【0079】
前記サブマウント53は、熱伝導性が良好なSiCで形成されている。また、図17に示すように、半導体レーザ素子1は、pダウン、すなわち活性層7が近接するアノード電極(p電極)16の電極面が、PbSnからなる接合材54を介してサブマウント53に設けられたメタライズ層53a上に固定されている。アノード電極16をサブマウント53に固定するpダウン構造は、熱源となる活性層7までの距離が、数μmとカソード電極17の場合に比較して大幅に短いことから熱抵抗が低くなり放熱性が向上する。
【0080】
しかし、電気容量を低減するために2条の溝を設けた半導体レーザ素子は、前記溝が熱発生源からの放熱の抵抗となるが、本実施形態の半導体レーザ素子1は、熱が溜まりやすい光導波路の端部分を構成する光導波路形成部11の端部分を幅広部43として放熱部12を構成しているため、放熱面積が増大し、光導波路の端の部分の放熱性が高くなる。
【0081】
これによって光出力の向上を高くすることができるとともに、光導波路の端部分が光学的損傷を受け難くなるため半導体レーザ素子の長寿命化が図れる。
【0082】
一方、前記ステム50の主面には半導体レーザ素子1の下端から発光されるレーザ光3を受光し、レーザ光3の光出力をモニターする受光素子55が固定されている。また、前記ステム50には3本のリード56が固定されている。1本のリード56はステム50の裏面に電気的および機械的に固定され、他の2本のリード56はステム50を貫通し、かつガラスのような絶縁体57を介してステム50に対し電気的に絶縁されて固定されている。前記ステム50の主面に突出する2本のリード56の上端は、それぞれワイヤ60を介して半導体レーザ素子1および受光素子55の各電極に接続されている。
【0083】
他方、前記ステム50の主面には窓61を有する金属製のキャップ51に固定され、半導体レーザ素子1およびヒートシンク52を封止している。前記窓61はキャップ51の天井部に設けた円形孔を透明なガラス板62で気密的に塞ぐことによって形成されている。したがって、半導体レーザ素子1の上端から出射したレーザ光3は、前記透明なガラス板62を透過してステム50とキャップ51とによって形成されたパッケージ外に放射される。なお、前記ステム50の外周部分には、相互に対峙して設けられる一対のV字状切欠部65と、矩形状切欠部66が設けられ、組立時の位置決めに使用されるようになっている。
【0084】
本実施形態の半導体レーザ装置は、所定のリード56に所定の電圧を印加することによって半導体レーザ素子1からレーザ光3を発光する。
【0085】
本実施形態の半導体レーザ素子は、2条の溝10によって帯状の光導波路形成部11を形成して電気容量を低減し、高周波重畳が掛かり易くして戻り光による雑音が発生し難くした構造となっているが、前記溝10は屈曲して前記光導波路形成部11の両端部分を幅広くして放熱部12を形成してあることから、光導波路(共振器)2の端部分(出射面部分)の放熱性を向上させることができる。
【0086】
本実施形態の半導体レーザ素子は、2条の溝10によって帯状の光導波路形成部11を形成して電気容量を低減し、高周波重畳が掛かり易くして戻り光による雑音が発生し難くした構造となっているが、前記溝10は屈曲して前記光導波路形成部11の両端部分を幅広くして放熱部12を形成した構造となっていることから、化合物半導体基板を縦横に分断して半導体レーザ素子1を製造する場合、放熱部12の部分で劈開が発生したり、あるいはクラックが発生することがなくなり、半導体レーザ素子1の信頼性が高くなる。
【0087】
本実施形態の半導体レーザ素子の製造方法においては、2条の溝10によって帯状の光導波路形成部11を形成して電気容量を低減し、高周波重畳が掛かり易くして戻り光による雑音が発生し難くした半導体レーザ素子1の製造方法において、前記溝10を屈曲させて前記光導波路形成部11の両端部分を幅広くすることから、光導波路2の端部分(出射面部分)の放熱性を向上できる半導体レーザ素子1を製造することができる。
【0088】
したがって、光出力を高くできる半導体レーザ素子1を製造することができる。
【0089】
また、光導波路2の出射面部分の熱に伴う光学損傷を防ぐことができるため、寿命の長い半導体レーザ素子1を製造することができる。
【0090】
また、化合物半導体基板を縦横に分断(劈開)して半導体レーザ素子1を製造する場合、光導波路形成部11の幅が広い部分を劈開させるため、劈開時の応力集中によって劈開不良やクラック発生を防止でき、信頼性の高い半導体レーザ素子1を高歩留りに製造することができる。
【0091】
本実施形態の場合劈開時の端面ステップ発生を100%防ぐことができる。
【0092】
本実施形態の半導体レーザ装置においては、高周波重畳が掛けやすい電気容量低減構造からなる半導体レーザ素子1にあっては、光導波路形成部11上に設けられる電極(アノード電極16)を支持体(サブマウント53)に接合材54を介して固定する構造となっているが、前記光導波路形成部11の両端部分は幅広の放熱部12を構成していることから、熱伝達面積が多くなり、光導波路2の端面である出射面部分での放熱性が向上するため、半導体レーザ装置の高出力化が達成できるとともに、長寿命化が達成できる。
【0093】
たとえば、光導波路形成部を設けない従来の半導体レーザ素子(半導体レーザ装置)の場合、遮断周波数(fc)は200〜300MHz、最大光出力40〜50mWであるが、本実施形態の半導体レーザ装置(半導体レーザ素子)の場合、遮断周波数は800MHzと4倍程度向上させることができるとともに、25℃において80〜90mW、60℃において70〜80mWの最大光出力を得ることができた。
【0094】
また、半導体レーザ素子1の出射面に非対称コーティングを施すことにより、60℃において30mW定出力で2000時間以上の安定動作が得られた。
【0095】
以上本発明者によってなされた発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0096】
すなわち、光導波路形成部の細幅部の幅は前記実施例に限定されるものではなく、レーザ光の発光特性や放熱特性等を勘案して決定すればよい。たとえば、前記半導体レーザ素子1において、前記光導波路形成部11の細幅部13の幅を60〜80μmとした半導体レーザ素子の場合、遮断周波数(fc)は500MHzとなり、最大光出力は25℃で80〜90mW、60℃で70〜80mWとなる。また、信頼性に関しては、60℃において30mWの定出力動作で2000時間以上の安定動作が得られる。
【0097】
また、光導波路形成部の両端の放熱部の幅を半導体レーザ素子の幅一杯に広くしてもよい。この場合、さらに放熱性が向上する。
【0098】
また、図18に示すように、光導波路形成部11の両側部分全体を低く形成してもよい。
【0099】
また、前記実施形態では、活性層を多重量子井戸構造としたが単一の量子井戸構造であっても前記実施例同様な効果が得られる。
【0100】
以上の説明では主として本発明者によってなされた発明をその背景となった利用分野であるn型GaAs基板上にGaInPやAlX Ga1-X InPによる多層成長層を形成した半導体レーザに適用した場合について説明したが、それに限定されるものではなく、たとえば、他の化合物半導体による半導体レーザあるいは長波長帯の半導体レーザにも同様に適用できる。
【0101】
本発明は少なくともリッジ構造の半導体レーザ素子の製造技術には適用できる。
【0102】
【発明の効果】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
【0103】
(1)半導体レーザ素子は、2条の溝によって帯状の光導波路形成部を形成して電気容量を低減し、高周波重畳が掛かり易くして戻り光による雑音が発生し難くした構造となっているが、さらに前記溝は屈曲して前記光導波路形成部の両端部分を幅広くして放熱部を形成してあることから、光導波路の端部分の放熱性を向上させることができる。
【0104】
(2)光導波路の端部分の放熱性が向上することから、光出力の増大を図ることができる。
【0105】
(3)光導波路の端部分の放熱性が向上することから、出射面部分の熱に伴う光学損傷を防ぐことができるため、半導体レーザの長寿命化が達成できる。
【0106】
(4)化合物半導体基板を分断して半導体レーザ素子を製造する際、分断部分に細い溝が存在しないため、細い溝での劈開やクラック発生が防止でき、信頼性の高い半導体レーザ素子を高歩留りで製造することができる。この結果、半導体レーザ素子および半導体レーザ装置のコストの低減が達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態である半導体レーザ素子を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】本実施形態の半導体レーザ素子における多重量子井戸活性層の構造を示す一部の断面図である。
【図4】図1のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図6】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、化合物半導体基板の主面に所望の化合物半導体層を積層形成した状態を示す断面図である。
【図7】図6の一部を示す拡大断面図である。
【図8】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、リッジを形成した状態を示す断面図である。
【図9】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、リッジの両側に電流狭窄層を形成し、かつリッジおよび電流狭窄層上にキャップ層を形成した状態を示す断面図である。
【図10】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、メサエッチングを形成した状態を示す断面図である。
【図11】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、メサエッチングを形成した状態を示す平面図である。
【図12】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、半導体基板の主面側に絶縁膜を形成した状態を示す断面図である。
【図13】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、半導体基板の裏面側に電極を形成した状態を示す断面図である。
【図14】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、半導体基板の裏面側に電極を形成した状態を示す断面図である。
【図15】本実施形態の半導体レーザ素子の製造において、半導体基板の裏面側に電極を形成した状態を示す平面図である。
【図16】本実施形態の半導体レーザ装置を示す一部を切り欠いた斜視図である。
【図17】本実施形態の半導体レーザ装置における半導体レーザ素子の固定状態を示す断面図である。
【図18】本発明の他の実施形態である半導体レーザ素子を示す斜視図である。
【符号の説明】
1…半導体レーザ素子、2…光導波路(共振器)、3…レーザ光、5…化合物半導体基板(n型GaAs基板)、6…多層成長層、7…活性層(GaInP/AlX Ga1-X InP歪多重量子井戸構造活性層)、10…溝、11…光導波路形成部、12…放熱部、13…細幅部、14…溝、16…アノード電極、17…カソード電極、20…n型GaAsバッファ層、21…n型AlGaInP光導波層、22…p型AlGaInP光導波層、23…p型GaInPバッファ層、24…n型GaAs電流狭窄層、25…p型GaAsコンタクト層、26…絶縁膜層、30…アンドープGaInP量子井戸層、31…アンドープAlX Ga1-X InP量子障壁層、32…アンドープAlX Ga1-X InPガイド層、33…リッジ、35…前方コーティング膜、36…後方コーティング膜、40,41…エッチングマスク、42…単位素子形成領域、43…幅広部、45…電極材料、46…エッチングマスク、50…ステム、51…キャップ、52…ヒートシンク、53…サブマウント、53a…メタライズ層、54…接合材、55…受光素子、56…リード、57…絶縁体、60…ワイヤ、61…窓、62…ガラス板、65…V字状切欠部、66…矩形状切欠部。
Claims (10)
- 化合物半導体基板と、前記化合物半導体基板の主面側に直接または所望の化合物半導体層を介して設けられた化合物半導体層からなる第1導電型光導波層と、前記第1導電型光導波層上に設けられた化合物半導体層からなる活性層と、前記活性層上に設けられた化合物半導体層からなる第2導電型光導波層と、前記第2導電型光導波層側から設けられかつ前記活性層を貫いて前記第1導電型光導波層の表層部分にまで到達する2条の溝と、前記2条の溝に挟まれかつ光導波路を含む帯状の光導波路形成部と、前記光導波路形成部上に形成され前記第2導電型光導波層に電気的に接続される電極とを有する半導体レーザ素子であって、前記2条の溝は前記光導波路形成部の両端部分では相互に徐々に離れるように屈曲延在して前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなり、前記電極は徐々に広がる前記光導波路形成部の端部分にも設けられていることを特徴とする半導体レーザ素子。
- 前記光導波路形成部の端部分は半導体レーザ素子の幅一杯に広がっていることを特徴とする請求項1記載の半導体レーザ素子。
- 前記活性層は単一の量子井戸層または複数個の量子井戸層による量子井戸構造で構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の半導体レーザ素子。
- 前記溝の側面はいずれの結晶方向においても順メサ構造となり、前記溝上には絶縁膜が設けられかつ一部の絶縁膜上には電極が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の半導体レーザ素子。
- 前記第1導電型光導波層,活性層および第2導電型光導波層はAlGaInP層またはGaInP層で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の半導体レーザ素子。
- 化合物半導体基板の主面に直接または所望の化合物半導体層を介して化合物半導体層からなる第1導電型光導波層,化合物半導体層からなる活性層,化合物半導体層からなる第2導電型光導波層等を順次重ねて形成する工程と、前記第2導電型光導波層側から前記活性層を貫いて前記第1導電型光導波層の表層部分にまで到達する2条の溝を形成して前記2条の溝によって挟まれかつ光導波路を含む帯状の光導波路形成部を形成する工程と、前記光導波路形成部上に前記第2導電型光導波層に電気的に接続される電極を形成する工程と、を有する半導体レーザ素子の製造方法であって、前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなるように前記2条の溝を前記光導波路形成部の両端部分では徐々に離れて広がるように形成し、前記電極形成時には徐々に広がる前記光導波路形成部の端部分上に前記電極を形成することを特徴とする半導体レーザ素子の製造方法。
- 前記溝の形成時、前記溝の側面がいずれの結晶方向においても順メサ構造になるようなエッチング方法でエッチングすることを特徴とする請求項6記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 前記活性層を単一の量子井戸層または複数個の量子井戸層による量子井戸構造で形成することを特徴とする請求項6または請求項7記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 前記第1導電型光導波層,活性層および第2導電型光導波層をAlGaInP層またはGaInP層で形成することを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項記載の半導体レーザ素子の製造方法。
- 支持体と、前記支持体に接合材を介して固定される半導体レーザ素子とを有し、前記半導体レーザ素子は化合物半導体基板の主面側に光導波路を形成する活性層等が設けられるとともに、前記化合物半導体基板の主面側に設けられた電極面が接合材を介して前記支持体に固定され、かつ前記化合物半導体基板の主面側に設けられ前記活性層を貫く2条の溝間に光導波路を含みかつ帯状となる光導波路形成部を有することを特徴とする半導体レーザ装置であって、前記半導体レーザ素子の前記溝は前記光導波路形成部の端側で屈曲し前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなり、前記 2条の溝は前記光導波路形成部の両端部分では相互に徐々に離れるように屈曲延在して前記光導波路形成部の端部分の幅が他の部分に比較して広くなり、前記電極は徐々に広がる前記光導波路形成部の端部分にも設けられていることを特徴とする半導体レーザ装置。
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