JP3681199B2 - 流し込み用カルシア・マグネシアクリンカーおよびその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は不定形耐火物原料として適する耐消化性に優れたカルシア・マグネシアクリンカーおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年製鋼炉用耐火物は、築炉の省力化および築炉環境改善のために吹き付け、流し込み材(キャスタブル)に代表される不定形耐火物が広く使用されるようになってきた。特に取鍋では、アルミナ−スピネル質、アルミナ−マグネシア質の不定形耐火物が広く普及している。一方、鋼の高級化および連続鋳造等の操業の合理化への志向から、操業温度の高温化、溶鋼処理時間の延長、あるいは取鍋精練法の導入が行われ、使用される耐火物は過酷な条件下にさらされるようになってきている。このため取鍋のスラグラインに相当する部位は、高い耐スラグ溶損性が要求されるため、MgO−Cr2O3質あるいはMgO−C質の塩基性定形耐火物が使用されている。これらスラグラインにおいても不定形化の要求は強いが、高耐食性を有し、かつ不定形施工時に消化しない耐火物原料が存在しないため、スラグラインの不定形化さらには全面流し込み施工は大きな課題として残されている。
【0003】
MgO−CaO質クリンカーは、耐食性、耐スラグ浸潤性に優れているので、スラグライン用耐火物として好適である。しかしながらCaOの持つ高い消化性のため、不定形施工に耐えられるクリンカーは得られていないのが現状である。CaOを主な構成成分とするクリンカーの消化性を改善する方法として、従来から、Fe2O3、Al2O3、SiO2、TiO2、CaF2等の不純物を添加焼成する方法、およびCaOの表面を炭酸カルシウムやリン酸カルシウムなどの耐水和層で被覆する方法が行われている。たとえば特開昭62−182137ではCaOを10%以上含有する高純度なMgO−CaO原料にAl2O3を0.2〜2.0%添加した後焼成して耐消化性を高めている。耐水和層を形成する方法として、特許登録1578806では、クリンカーのCaO表面を炭酸化して耐消化性を向上させている。また特公平3−71385では生石灰含有クリンカーのリン酸カルシウム塩類から成る保護層で被覆して高い耐消化性を得ている。さらに特開平5−294713では、不純物としてTiO2とFe2O3を調整後、焼成して得たクリンカーをリン酸および酸性リン酸塩溶液で処理して高い耐消化性を得ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら特開昭62−182137および特許登録1578806の方法は、カルシアの消化性の改良を保存性、および取扱いに主眼をおいたものであり、本発明が目指すところの不定形用途、すなわち水と混練され高温の水蒸気に晒されるキャスタブルを想定したものでない。従ってその耐消化性の到達レベルも低い。特公平3−71385の方法では、キャスタブル用途を想定しているもののその耐消化性のレベルは低く、キャスタブル用クリンカーとしては不十分である。また表面処理剤を多量に使用しているため、耐食性の低下が懸念される。特開平5−294713において、不定形用途に耐えられる高い耐消化性を持ったクリンカーが得られているが、乾燥もしくは養生条件下のキャスタブル中ではさらに過酷な条件に晒されることが予想され、未だ耐消化性は十分とは言えない。
【0005】
本発明の目的は、カルシアの本来持っている優れた耐熱性を損なうことなしに、キャスタブル施工を想定した高い耐消化性を有するカルシア・マグネシアクリンカー、およびその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、長時間にわたり高温、高水蒸気圧下に置かれたキャスタブル耐火物の挙動に着目して研究を行った。その結果、ある化学組成の下でクリンカー表面に存在するCaO粒子を水和させてCa(OH)2に変化させることにより、クリンカーの耐消化性を著しく向上させ、それを用いたキャスタブル耐火物は高温、高水蒸気圧下に長時間置かれても安定であることを見出した。さらにこれらクリンカーは実炉における不定形施工にも十分適応可能であることを確認し、製造方法を確立して発明を完成するに至った。その構成は特許請求の範囲に記載の通りである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のキャスタブル用カルシア・マグネシアクリンカーは、化学組成が灼熱基準で表して、
MgO+CaO 97.0重量%以上、
CaO 10重量%以上、30重量%以下、
Al2O3 0.5重量%以上、3.0重量%以下、
Al2O3/CaOの重量比が0.05以上であり、表面が主として酸化マグネシウムと水酸化カルシウムより成ることを特徴としている。
【0008】
ここでクリンカー部分のMgO+CaOは、97.0重量%以上であることが必要である。これ以下ではMgOおよびCaOが本来持っている耐火性、耐食性が発揮できない。本発明の大きな特徴はクリンカー表面のCaOが水和してCa(OH)2に変化していることである。Ca(OH)2への変化は表面に存在する粒子のみに発生させることが高い耐消化性を得る上で重要である。そのためには、CaO相はクリンカー中において不連続相でなければならない。この様な組織を達成するためには、CaO量は10重量%以上、30重量%以下が必要であり、好ましくは10重量%以上、25重量%以下である。10重量%以下ではCaOの耐スラグ浸透性および不定形施工時の熱間強度等が低下してCaOの特性が消失する。また30重量%以上ではCaO粒子が連続相を形成して、クリンカー表面のCaO粒子のみを除去することが困難になり、本発明の目的とする高い耐消化性を得ることができない。
【0009】
本発明においてAl2O3は重要な構成成分であり、CaOと化合することにより強固な耐水和層を形成する。生成したAl2O3−CaO系の耐水和層はCaOとMgOの粒界に存在して著しく耐消化性を高める。さらにこれら粒界に生成した耐水和層は、本発明の大きな特徴であるクリンカー表面のCaO粒子のみをCa(OH)2へ変化させるという画期的な工程を可能とする。従って、一定量のAl2O3の添加があって初めてクリンカーになんら影響を与えずに、表面CaO粒子のみを水和させることが可能になる。これらのことからAl2O3は0.5重量%以上、3.0重量%以下が必要であり、好ましくは1.0重量%以上、2.0重量%以下である。0.5重量%以下では本発明の高い耐消化性は得られない。さらにAl2O3の含有量が3.0重量%を越すと耐火性が低下してCaOの持っている優れた特性が失われるだけでなく耐消化性も低下する。ここでAl2O3とCaOの重量比は特に重要であり、Al2O3/CaOは重量比で表して、0.05以上必要である。これ以下では十分な耐消化性は得られない。
【0010】
その他不純物として存在するSiO2、Fe2O3、B2O3は、キャスタブル施工体中では有害な成分である。すなわちSiO2は0.25重量%以下、Fe2O3は0.2重量%以下、B2O3は0.1重量%以下が好ましい。
【0011】
本発明において、耐消化性および耐火物としての強度を保つために、嵩密度は相対密度で表して96%以上が好ましく、さらに好ましくは98%以上である。本発明において、クリンカーの表面は酸化マグネシウムと水酸化カルシウムより成ることを大きな特徴としている。Ca(OH)2はCaOに比べて著しく安定である。しかし、この様な水和はクリンカー組織の崩壊を招くため、この現象を避けるべく数々の技術が従来より用いられてきた。本発明は、この水和現象の内部へ進行を阻止すれば、表面のCaO粒子のみの水和は逆にクリンカーを安定化させることを初めて見出し、従来の常識を覆す結果を得た。さらに特殊な表面処理剤をいっさい用いていないため、MgOおよびCaOの持つ特性を十分に発揮できるクリンカーと言える。
【0012】
本発明の流し込み用カルシア・マグネシアクリンカーは、
a)水酸化マグネシウムと水酸化カルシウムをスラリー状態で混合して得られた混合物、あるいはこれら混合物を濾過、乾燥、軽焼して得られた粉体に、アルミニウム化合物をスラリー状態で、あるいは乾燥状態下で混合した後焼成して、
化学組成が灼熱基準で表して、
MgO+CaO 97.0重量%以上、
CaO 10重量%以上、30重量%以下、
Al2O3 0.5重量%以上、3.0重量%以下、
Al2O3/CaOの重量比が0.05以上となるクリンカーを生成し、
b)得られたクリンカーを水あるいは水蒸気あるいは大気中の湿分と接触させ、表面に存在する酸化カルシウム粒子を水酸化カルシウムに変化させることにより製造される。
【0013】
原料の1つである水酸化マグネシウムは、海水に生石灰等のアルカリを反応させて得ることができる。この時得られる水酸化マグネシウムは酸化物換算で、MgOとして98重量%以上の高純度であることが好ましい。さらに液体サイクロン等により粗粒を除いておくことが好ましい。
【0014】
他の原料である水酸化カルシウムは、生石灰を消和して得ることができる。得られた水酸化カルシウムは酸化物換算で、CaOとして99重量%以上の高純度であることが好ましい。さらに水酸化マグネシウムと同様に粗粒を除いておくことが好ましい。
【0015】
これら水酸化マグネシウムと水酸化カルシウムをスラリー状態で混合され、得られた混合物にアルミニウム化合物が添加される。この時混合スラリーに水溶性アルミニウム化合物を添加混合するか、混合スラリーを濾過、乾燥、軽焼して得られた粉体にアルミニウム化合物を添加混合する。軽焼した混合粉体にアルミニウム化合物を添加する場合、用いるアルミニウム化合物は平均粒径が5μm以下の微細な酸化アルミニウム粉末であることが好ましい。
【0016】
アルミニウム化合物を添加した混合物は、必要ならば濾過、乾燥、軽焼した後に、焼成される。焼成にあたっては焼結性向上の目的から、ブリケットマシン等で成型することが好ましい。これら粉体あるいは成形体は、1800℃以上の温度で焼成される。焼成はロータリーキルン等を使用することができる。
【0017】
これらクリンカーを水あるいは水蒸気あるいは大気中の湿分と接触させることにより、表面に存在する酸化カルシウム粒子を水和させ水酸化カルシウムに変化させる。水を用いる場合、水中にクリンカーを浸漬させた後に乾燥する、あるいはクリンカーに水を噴霧した後に乾燥する等の比較的容易な方法で水和させることが可能である。水蒸気を用いる場合も容易に水和が可能であるが、マグネシア粒子までも水和させると耐消化性は著しく低下するので注意が必要である。大気中の湿分と接触させて水和させる方法は最も容易な方法であるが、本発明のクリンカーは水和処理する前から従来のクリンカーに比べて高い耐消化性を有しているため、通常の室温および湿度では容易に水和しない。従って短時間でかつ十分な水和をおこさせるためには、水との接触が好ましい。
【0018】
以上の工程を経て、不定形施工に耐えられる高い耐消化性を持ち、かつ高耐火性、高嵩密度の本発明のカルシア・マグネシア系クリンカーを製造することができる。本発明における種々の測定方法は下記の通りである。
【0019】
(1)相対密度(RD)
カルシアの理論密度を3.345g/cm3、マグネシアを3.581g/cm3として以下の式により求めた。
RD(%)=BD/ρ×100
ここで
ρ=100/(WC/3.345+WM/3.581)
ただし、WC:MgO+CaO=100%とした時のCaOの重量%
WM:MgO+CaO=100%とした時のMgOの重量%
BD:日本学術振興会第124委員会で提案された学振法2「マグネシアクリンカーの見掛け気孔率、見掛け比重及び嵩比重の測定法」に準じて測定したカルシア・マグネシア系クリンカーの嵩比重の値。
【0020】
(2)化学組成
試料をディスクミルを用いて約10μm以下に微粉砕した後、0.5gを正確に計り取る。これらを塩酸で加熱溶解して250mlに希釈する。これら試料溶液をアルゴンプラズマ発光分光分析装置にて、MgO、CaO、SiO2、Fe2O3、Al2O3、B2O3の各成分を分析した。さらに1000℃における灼熱減量をそれら分析値に加え、ほぼ100%になることを確かめたうえで、以上6成分をもって100%に換算した。
【0021】
(3)耐消化性(134℃)
日本学術振興会第124委員会で提案された学振法7「ドロマイトクリンカーの消化性試験方法(案)(II)オートクレーブによる方法、に準じて測定した。
【0022】
【実施例】
次に本発明の実施例および比較例を挙げ、具体的に説明する。
【0023】
実施例1
海水に水酸化カルシウムを反応させて得たスラリーを、液体サイクロンを用いて精製して水酸化マグネシウムスラリーを得た。さらに生石灰を消和して得たスラリーを液体サイクロンを用いて精製して水酸化カルシウムスラリーを得た。これら2種のスラリーをMgO:CaOが重量比で80:20になる様に混合後、濾過してケークを得た。これを解砕した後、900℃で軽焼を行い焼成用原料粉体を得た。これら粉体に平均粒径が1μmの酸化アルミニウム粉末を焼成用原料粉体に対して重量比で1.5%添加混合した後に、ブリケットマシンを用いてアーモンド状に成型した。これら成型体をロータリーキルンを用いて1800℃で焼成してクリンカーを得た。
【0024】
これらクリンカーを20℃の蒸留水中に30秒間浸漬した。浸漬後を余分な水分を切った後、110℃の乾燥器中1時間乾燥を行った。これらクリンカーの化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表1に示す。
【0025】
さらにキャスタブル乾燥時における耐消化性を比較するために、表3の配合比でキャスタブルを作成し、30×30×120mmの金型に流し込んだ。これらを相対湿度85%、温度20℃の下で24時間養生した後に脱型し、得られたブロックをオートクレーブ中130℃の条件下で20時間保持した。冷却後オートクレーブ処理前後の寸法変化を測定し、以下の式で線変化率を測定した。測定結果は表1に示す。
【0026】
【数2】
線変化率(%)=(L1−L0)/L0×100
L0:オートクレーブ処理前長さ
L1:オートクレーブ処理後長さ
このクリンカーの表面の電子顕微鏡写真を図1に示す。
【0027】
実施例2
実施例1において20℃の蒸留水に180秒間浸漬した以外は実施例1と全く同様にしてクリンカーを得た。これらクリンカーについて化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表1に示す。さらに実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表1に示す。
【0028】
実施例3
海水に水酸化カルシウムを反応させて得たスラリーを、液体サイクロンを用いて精製して水酸化マグネシウムスラリーを得た。さらに生石灰を消和して得たスラリーを液体サイクロンを用いて精製して水酸化カルシウムスラリーを得た。これら2種のスラリーをMgO:CaOが重量比で90:10になる様に混合後、濾過してケークを得た。これを解砕した後、900℃で軽焼を行い焼成用原料粉体を得た。これら粉体に平均粒径が1μmの酸化アルミニウム粉末を焼成用原料粉体に対して重量比で1.5%添加混合した後に、ブリケットマシンを用いてアーモンド状に成型した。これら成型体をLPGと酸素を熱源とする静置型の焼成炉を用いて1800℃で焼成してクリンカーを得た。
【0029】
これらクリンカーを20℃の蒸留水中に180秒間浸漬した。浸漬後を余分な水分を切った後、110℃の乾燥器中1時間乾燥を行った。これらクリンカーの化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表1に示す。さらに実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表1に示す。
【0030】
比較例1
実施例1において、焼成後得られたクリンカーをなんら処理を施さずに試験試料として用いた。これらクリンカーについて化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表2に示す。さらにこのクリンカーを用いて、実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表2に示す。
【0031】
比較例2
実施例1において、焼成後得られたクリンカーを、700℃に加熱してCO2ガスと1時間接触させ、CaO粒子表面にCaCO3層を形成させた。これらクリンカーについて化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表2に示す。さらに実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表2に示す。
【0032】
比較例3
海水に水酸化カルシウムを反応させて得たスラリーを、液体サイクロンを用いて精製して水酸化マグネシウムスラリーを得た。さらに生石灰を消和して得たスラリーを液体サイクロンを用いて精製して水酸化カルシウムスラリーを得た。これら2種のスラリーをMgO:CaOが重量比で80:20になる様に混合後、濾過してケークを得た。これを解砕した後、900℃で軽焼を行い焼成用原料粉体を得た。これら粉体に平均粒径が1μmの酸化アルミニウム粉末を焼成用原料粉体に対して重量比で0.5%添加混合した後に、ブリケットマシンを用いてアーモンド状に成型した。これら成型体をLPGと酸素を熱源とする静置型の焼成炉を用いて1800℃で焼成してクリンカーを得た。
【0033】
これらクリンカーを20℃の蒸留水中に180秒間浸漬した。浸漬後を余分な水分を切った後、110℃の乾燥器中1時間乾燥を行った。これらクリンカーの化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表2に示す。さらに実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表2に示す。
【0034】
比較例4
海水に水酸化カルシウムを反応させて得たスラリーを、液体サイクロンを用いて精製して水酸化マグネシウムスラリーを得た。さらに生石灰を消和して得たスラリーを液体サイクロンを用いて精製して水酸化カルシウムスラリーを得た。これら2種のスラリーをMgO:CaOが重量比で60:40になる様に混合後、濾過してケークを得た。これを解砕した後、900℃で軽焼を行い焼成用原料粉体を得た。これら粉体に平均粒径が1μmの酸化アルミニウム粉末を焼成用原料粉体に対して重量比で2.0%添加混合した後に、ブリケットマシンを用いてアーモンド状に成型した。これら成型体をLPGと酸素を熱源とする静置型の焼成炉を用いて1800℃で焼成してクリンカーを得た。
【0035】
これらクリンカーを20℃の蒸留水中に180秒間浸漬した。浸漬後を余分な水分を切った後、110℃の乾燥器中1時間乾燥を行った。これらクリンカーの化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表2に示す。さらに実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表2に示す。
【0036】
比較例5
FeSO4をFe2O3換算でMgOに対して0.5重量%含む海水に、水酸化カルシウムを反応させて得たスラリーを、液体サイクロンを用いて精製して水酸化マグネシウムスラリーを得た。さらに生石灰を消和して得たスラリーを液体サイクロンを用いて精製して水酸化カルシウムスラリーを得た。これら2種のスラリーをMgO:CaOが重量比で75:25になる様に混合後、さらにTiO2を酸化物重量換算で1%添加し、乾燥、成型した。これら成型体をLPGと酸素を熱源とする焼成炉を用いて1800℃で焼成してクリンカーを得た。これらクリンカーをステンレス製のカゴに入れて、10%リン酸溶液に30秒浸漬した後、水切りを行い水による洗浄は行わずそのままで110℃で1時間乾燥した。これらクリンカーについて化学組成、物性および耐消化性を測定した結果を表2に示す。ここでTiO2の分析は他の成分と同様、アルゴンプラズマ発光分光分析装置を用いて行い、分析結果は7成分をもって100%と表記した。さらに実施例1と同じ条件で測定したキャスタブル線変化率を同じく表2に示す。なおこのクリンカーの表面は難溶性のリン酸マグネシウムとリン酸カルシウムで覆われており、リンの含有量はクリンカーに対してP2O5として0.57重量%であった。
【0037】
◇
【表1】
【0038】
◇
【表2】
【0039】
◇
【表3】
【0040】
【発明の効果】
本発明の不定形用カルシア・マグネシアクリンカーは、著しく高い耐消化性を有しており、特にその性能は不定形施工を行った時に発揮される。さらになんら特殊な表面処理剤を含まないため、十分な耐火度と耐食性が要求されかつ従来キャスタブル施工が不可能であった取鍋スラグラインへの適応を可能にするものである。さらに本発明の不定形用カルシア・マグネシア系クリンカーは、本発明の製造方法によれば、工業的規模で容易に製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1のクリンカーの表面の電子顕微鏡写真である。
Claims (2)
- 化学組成が灼熱基準で表して、
MgO+CaO 97.0重量%以上、
CaO 10重量%以上、30重量%以下、
Al2O3 0.5重量%以上、3.0重量%以下、
Al2O3/CaOの重量比が0.05以上であり、
表面が主として酸化マグネシウムと水酸化カルシウムより成ることを特徴とするカルシア・マグネシアクリンカー。 - a)水酸化マグネシウムと水酸化カルシウムをスラリー状態で混合して得られた混合物、あるいはこれら混合物を濾過、乾燥、軽焼して得られた粉体に、アルミニウム化合物をスラリー状態で、あるいは乾燥状態下で混合した後焼成して、
化学組成が灼熱基準で表して、
MgO+CaO 97.0重量%以上、
CaO 10重量%以上、30重量%以下、
Al2O3 0.5重量%以上、3.0重量%以下、
Al2O3/CaOの重量比が0.05以上となるクリンカーを生成し、
b)得られたクリンカーを水あるいは水蒸気あるいは大気中の湿分と接触させ、表面に存在する酸化カルシウム粒子を水酸化カルシウムに変化させることを特徴とする流し込み用カルシア・マグネシアクリンカーの製造方法。
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