JP2003128457A

JP2003128457A - カルシア系クリンカー及びそれを用いて得られる耐火物

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Publication number: JP2003128457A
Application number: JP2001325408A
Authority: JP
Inventors: Akihiro Tsuchinari; 昭弘土成; Kimito Nakamoto; 公人中本; Toyoyasu Obana; 豊康尾花; Hiroshi Makino; 浩牧野; Masahito Mori; 雅人森
Original assignee: Itochu Ceratech Corp
Current assignee: Itochu Ceratech Corp
Priority date: 2001-10-23
Filing date: 2001-10-23
Publication date: 2003-05-08

Abstract

(57)【要約】【課題】安価で、耐消化性に優れ、更には耐スラグ性
に優れた、ＣａＯを主成分とする塩基性耐火物材料、即
ちカルシア系クリンカー及びそれを用いて得られる耐火
物を提供すること。【解決手段】ＣａＯ：１０〜１００重量％及びＭｇ
Ｏ：０〜９０重量％なる化学組成を与える組成物に、無
機酸及びＣａＯと反応して固体を生成する物質のうちの
少なくとも１種以上を配合せしめてなる配合物を焼成す
ることにより、目的とするクリンカーを得る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本発明は、カルシア系クリンカー及びそれ
を用いて得られる耐火物に係り、特に、製鉄業における
溶鋼用容器、精錬炉用容器等の内張り用耐火物、或いは
セメントや石灰等を焼成するキルン等における内張り用
耐火物等に用いられる塩基性耐火物用の原料に関するも
のである。

【０００２】

【背景技術】ＣａＯ（カルシア）は、その融点が約２６
００℃で、酸素解離圧及び蒸気圧が低く、耐火物材料と
して魅力的な特徴を持つ反面、水と容易に反応し、消化
するという欠点も有することから、そのようなカルシア
を大量に含有する焼成物を、様々な用途の耐火物として
用いることについては、未だ実現されていない。因み
に、古くは、カルシア煉瓦がＡＯＤ炉やＶＯＤ炉に利用
された例は、見られる（「耐火物」、第４６巻第１号、
第３９〜４６頁、１９９４年、耐火物協会）が、その
後、製鋼用耐火物としての研究は、下火となっていたの
である。

【０００３】ところが、カルシアを主成分とするカルシ
ア煉瓦は、例えば精錬炉用容器の内張り用耐火物として
用いると、溶鋼中のアルミナをはじめとする介在物を取
り除くという特徴を有するものであり、高純度合金鉄の
精錬には欠かせないものであるところから、クリーンス
チール化の要求が高まると共に、再び、カルシア煉瓦の
要求が高まってきている。このため、カルシアの消化性
を抑制せしめたカルシアクリンカー、塩基性耐火物、或
いはその製造方法等が、近年、種々提案されている。

【０００４】例えば、特開昭５４−１２９０１４号公報
においては、ＣａＯ又はＣａＯ−ＭｇＯに、ＺｒＯ₂ 、
ＳｉＯ₂ 、Ｂ₂Ｏ₃、Ｙ₂Ｏ₃の１種又は２種以上を合計量
で１０％以下含有せしめ、溶融凝固してなる非破砕の塩
基性耐火物及びその製造方法が開示されており、また、
特開平６−１６５４号公報では、石灰石粉体に、ＳｉＯ
₂ 、ＴｉＯ₂ 、ＺｒＯ₂ 、Ａｌ₂Ｏ₃、Ｆｅ₂Ｏ₃、ＣａＦ
₂ 、ＭｇＦ₂ 等の金属酸化物を添加し、成形した後、焼
成する、カルシアクリンカーの製造方法が、開示されて
いる。更に、特開２００１−１０８７０号公報において
は、優れた耐消化性を有し、且つスラグ浸食抑制及び耐
スポーリング性に優れたマグネシア・カルシアクリンカ
ーを用いた塩基性不定形耐火物が、提案されている。

【０００５】しかしながら、上述のような、従来のカル
シアクリンカー、及びそれを用いた塩基性耐火物等にあ
っては、何れも、充分な耐消化性を有するものではな
く、未だ改善の余地を残すものであったのである。

【０００６】

【解決課題】ここにおいて、本発明は、かかる事情を背
景にして為されたものであって、その解決課題とすると
ころは、安価で、且つ耐スラグ性及び耐消化性に優れ
た、カルシアを主成分とする塩基性耐火物材料、即ちカ
ルシア系クリンカー、及びそれを用いて得られる耐火物
を提供することにある。

【０００７】

【解決手段】そして、本発明は、かくの如き課題の解決
のために、ＣａＯ：１０〜１００重量％及びＭｇＯ：０
〜９０重量％なる化学組成を与える組成物に、無機酸及
びＣａＯと反応して固体を生成する物質のうちの少なく
とも１種以上を配合せしめてなる配合物を用い、それを
焼成して得られた焼成物からなることを特徴とするカル
シア系クリンカーを、その要旨とするものである。

【０００８】このように、本発明に従う塩基性耐火物原
料たるクリンカーは、溶鋼中の不純物を取り除く性質を
有するＣａＯと耐食性に優れたＭｇＯに加えて、無機酸
及びＣａＯと反応して固体を生成する物質のうちの、少
なくとも１種以上が配合せしめられて、構成されている
のであって、そのような無機酸等とＣａＯとの間におけ
る反応生成物が、ＣａＯと水との接触を阻止せしめ、以
て、耐消化性の向上に大きく寄与せしめ得たのである。

【０００９】なお、本発明に従うカルシア系クリンカー
においては、望ましくは、前記無機酸が、リン酸類、塩
酸、及び硫酸の中から選択され、また、前記ＣａＯと反
応して固体を生成する物質が、リン酸アルミニウム、亜
硫酸ナトリウム、塩化カリウム、乳酸アルミニウム、及
び四塩化炭素の中から選択されることとなるることとな
る。このような無機酸、或いはＣａＯと反応して固体を
生成する物質を選択することにより、耐消化性の向上に
有利に寄与せしめ得るのである。

【００１０】また、本発明は、ＣａＯ：１０〜１００重
量％及びＭｇＯ：０〜９０重量％なる化学組成を与える
組成物に、リン酸類及び／又はリン酸アルミニウムと共
に、ホウ酸を配合せしめてなる配合物を用い、それを焼
成して得られた焼成物からなることを特徴とするカルシ
ア系クリンカーも、その要旨とするものである。

【００１１】このような本発明のクリンカーにおいて
は、高価なリン酸類等の一部を安価なホウ酸に置き換え
ることにより、リン酸類等のみが配合せしめられた場合
と同様の耐消化性を発揮せしめ得るところから、クリン
カーの原料コストを低く抑えることが可能ならしめられ
るのである。

【００１２】さらに、本発明は、上記した本発明に従う
クリンカーを耐火物材料として用いてなることを特徴と
する耐火物をも、その要旨とするものである。このよう
な本発明に従う耐火物にあっても、前記した本発明に従
うクリンカーの特徴が、そのまま発揮され得るのであ
る。

【００１３】

【発明の実施の形態】ところで、かかる本発明に従うカ
ルシア系クリンカーにおいて、ＣａＯは、１０〜１００
重量％の割合において含有せしめられる必要がある。け
だし、ＣａＯの含有量が１０重量％よりも少ないと、そ
のような組成のクリンカーを用いてなる耐火物が、溶鋼
中の不純物を取り除くというクリーンスチール化に対し
て、十分に寄与し得ないからである。なお、一般に、耐
火物は、その使用中に損耗するため、例えば溶鋼用容器
等の内張り用耐火物として用いた場合において、損耗し
た耐火物片の一部が溶鋼中に混入するようになるところ
から、カルシアクリンカー中のＣａＯの含有率を高める
ことが望ましい。

【００１４】また、そのようなＣａＯに組み合わされる
ＭｇＯは、上述のＣａＯの添加量、及び目的とするクリ
ンカーの特性に応じて、９０重量％以下の割合におい
て、適宜に含有せしめられることとなる。

【００１５】そして、本発明に従うクリンカーにあって
は、ＣａＯ及びＭｇＯに、無機酸及びＣａＯと反応して
固体を生成する物質のうちの少なくとも一つが配合され
て、構成されているところに、大きな特徴を有している
のである。すなわち、クリンカーの原料となる組成物中
に、無機酸及びＣａＯと反応して固体を生成する物質の
うちの少なくとも１種以上を配合せしめ、その得られた
配合物を焼成すると、それら無機酸等とＣａＯとが反応
して、種々の化合物が生成することにより、クリンカー
（焼成物）中のＣａＯ成分が減少せしめられることとな
るのであり、以て、耐消化性が有利に向上せしめられ得
るのである。

【００１６】ここで、そのような無機酸としては、従来
より公知の各種無機酸を用いることが出来るが、それら
の中でも、特に、オルトリン酸、メタリン酸、ポリリン
酸、無水リン酸等のリン酸類、塩酸、及び硫酸が望まし
い。具体的には、ＣａＯ及びＭｇＯよりなる組成物に対
して、そのような無機酸を適用すると、ＣａＯとの間に
おいて、リン酸類を用いた場合にあってはリン酸カルシ
ウムやハイドロキシルアパタイトが、また塩酸を用いた
場合には塩化カルシウムが、更には硫酸を用いた場合に
あっては硫酸カルシウムが、それぞれ生成せしめられる
こととなるところから、そのような生成物により、Ｃａ
Ｏと水分子との接触が有効に回避され得て、耐消化性が
より効果的に向上せしめられ得るのである。

【００１７】なお、上述の如き特徴を有する無機酸の配
合量は、目的とするクリンカー乃至は耐火物の特性や、
費用対効果等を総合的に勘案して、適宜に決定されるこ
ととなるが、例えば、上述の如きリン酸類、塩酸、或い
は硫酸を用いる場合には、ＣａＯ及びＭｇＯよりなる組
成物１００重量部に対して、リン酸類成分にあっては４
５〜１３５重量部の割合にて、また、塩酸成分にあって
は７０〜１３０重量部の割合にて、或いは硫酸成分にあ
っては７０〜１２０重量部の割合にて、それぞれ、添加
せしめられることが望ましい。また、そのような無機酸
を配合せしめる場合には、市販されているリン酸水溶
液、濃塩酸、或いは濃硫酸等をそのまま用い得ることは
勿論のこと、それらの水溶液等を適宜水にて希釈したも
のを使用することも可能であり、要するに、無機酸成分
が、上記組成物に対して所定割合となるように配合せし
められ得るものであれば、使用することが出来るのであ
る。

【００１８】一方、そのような無機酸に代えて、ＣａＯ
と反応して固体を生成する物質を、クリンカーの原料と
なる組成物中に配合せしめた場合にあっても、上述した
無機酸の場合と同様に、耐消化性を向上せしめ得るので
あり、そのような物質としては、ＣａＯと反応して固体
を生成する性質を有する、従来より公知の各種の物質を
用いることが出来る。それらの中でも、特に、リン酸ア
ルミニウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、乳酸ア
ルミニウム、及び四塩化炭素が、好適に用いられ得るの
であり、具体的には、ＣａＯとの間において、リン酸ア
ルミニウムを用いた場合にあっては、リン酸カルシウム
やハイドロキシルアパタイト等を、また、亜硫酸ナトリ
ウムを用いた場合には、それに含まれる硫黄とＣａＯと
が反応して硫化硫黄を、更には塩化カリウムを用いた場
合にあっては塩化カルシウムを、或いは、乳酸アルミニ
ウムを用いた場合には３ＣａＯ・Ａｌ₂Ｏ₃を、それぞれ
生成せしめるところから、そのような生成物により、Ｃ
ａＯと水分子との接触が阻止せしめられて、耐消化性が
有利に向上せしめられ得るのである。

【００１９】なお、そのようなＣａＯと反応して固体を
生成する物質の配合量は、上述した無機酸の場合と同様
に、費用対効果を考慮しつつ、クリンカー及びそれを用
いてなる耐火物に要求される耐消化性に応じて、適宜に
決定されるのであるが、例えば、上述の如きリン酸アル
ミニウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カリウム、乳酸アル
ミニウム、或いは四塩化炭素を用いる場合には、ＣａＯ
及びＭｇＯよりなる組成物１００重量部に対して、リン
酸アルミニウムにあっては１００〜２００重量部の割合
にて、また亜硫酸ナトリウムにあっては３０〜５０重量
部の割合にて、若しくは塩化カリウムにあっては２０〜
３５重量部の割合にて、更には乳酸アルミニウムにあっ
ては０．５〜１５重量部の割合にて、更にまた四塩化炭
素にあっては１０〜３０重量部の割合にて、それぞれ、
添加せしめられることが望ましい。また、このようなＣ
ａＯと反応して固体を生成する物質を配合せしめる際に
は、固体或いは液体状態の物質そのもののみならず、そ
れらの物質を水に溶解せしめた水溶液を添加せしめるこ
とも、可能である。

【００２０】さらに、本発明に従うクリンカーにあって
は、ＣａＯ：１０〜１００重量％及びＭｇＯ：０〜９０
重量％なる化学組成を与える組成物に、リン酸類及び／
又はリン酸アルミニウムと共に、リン酸類等より安価な
ホウ酸を配合せしめてなる配合物を用いた場合にあって
も、ＣａＯとかかるリン酸類等との反応によるリン酸カ
ルシウムやハイドロキシルアパタイト等に加えて、Ｃａ
Ｏとホウ酸との間において、ＣａＢ₂Ｏ₄が生成せしめら
れるところから、ＣａＯと水分子との接触が効果的に阻
止せしめられて、以て、耐消化性が効果的に向上せしめ
られ得ると共に、原料成分のコストも低く抑えることが
出来るのである。

【００２１】なお、上述の如く、リン酸類及び／又はリ
ン酸アルミニウムと共に併用されるホウ酸の配合量は、
原料コストを考慮し、また、クリンカー及びそれを用い
て得られる耐火物に要求される耐消化性に応じて、適宜
に選択されることとなるが、好ましくは、ＣａＯ及びＭ
ｇＯよりなる組成物１００重量部に対して３〜１５重量
部添加することが、望ましい。

【００２２】そして、本発明に従うカルシア系クリンカ
ーを製造するに際しては、先ず、前記した化学組成を与
える組成物を準備する一方、所定割合に希釈された液体
の無機酸及び／又は無機酸等の水溶液、及びバインダー
を準備し、それらを回転ミキサーやフレットミルで混練
し、その後、ブリケットマシンやオーガーマシンで成形
する。そして、成形物を乾燥した後、トンネルキルンあ
るいはロータリーキルンで焼成（１５００〜２０００℃
程度）することにより、焼成物として目的とするクリン
カーが得られるのであり、かかるクリンカーは所定の粒
度に粉砕され、耐火物材料として使用されるのである。
なお、本発明のクリンカーにあっては、電融によって製
造することも可能である。

【００２３】ここで、かかるクリンカーの製造に際して
用いられるバインダーとしては、公知の各種のものを挙
げることが出来、例えばリグニン類、デンプン類、ポリ
ビニルアルコールやメチルセルロース類、各種フェノー
ル樹脂、糖蜜等が、適宜の割合において用いられ、目的
とする形状に有利に成形されることとなる。

【００２４】なお、このようにして製造されたクリンカ
ーにあっては、さらに耐消化性を向上せしめるべく、そ
の表面を、無水の油類、タール、ピッチ、パラフィン、
フェノール樹脂、シリコーン樹脂等で被覆することも可
能であり、また、塩化カルシウム溶液によってクリンカ
ー表面のカルシアを溶かし、除去することも可能であ
る。更には、二酸化炭素ガスを用いて、クリンカー表面
をコーティングすることも可能である。

【００２５】また、本発明に従う耐火物は、上述せる如
きクリンカーに対して、常法に従って、粉砕、整粒操作
を施し、それにより、該クリンカーの粉末又は粒状物か
らなる耐火物材料を得た後、その得られた耐火物材料
を、従来から公知の手法にて所定の形状に成形し、更に
必要に応じて加熱、焼結せしめることによって、煉瓦等
の成形耐火物として得ることが出来る。

【００２６】そして、そのような本発明に従う耐火物
は、前述せるように、耐消化性に優れている特徴を有す
るものであって、これにより、製鉄業における溶鋼用容
器、精錬炉用容器等の内張り用耐火物、或いはセメント
や石灰等を焼成するキルン等における内張り用耐火物等
に用いられる塩基性耐火物用の原料として、有利に用い
られ得るのである。

【００２７】

【実施例】以下に、本発明の代表的な実施例を含む幾つ
かの実験例を示し、本発明を更に具体的に明らかにする
こととするが、本発明が、そのような実験例の記載によ
って何等の制約をも受けるものでないことは、言うまで
もないところである。また、本発明には、以下の実施例
の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の
趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づい
て種々なる変更、修正、改良等を加え得るものであるこ
とが理解されるべきである。なお、以下の実施例中にお
ける部は、特に断りのない限り、重量基準にて示される
ものである。

【００２８】実験例１ＣａＯ成分としての消石灰と、ＭｇＯ、及び、市販の濃
リン酸を水にて希釈したものを準備し、それらを下記表
１に示す各種割合において（但し、消石灰についてはＣ
ａＯ換算量にて示されており、リン酸水溶液について
は、リン酸成分に換算されている）配合して、混練せし
めた後、その得られた混練物を乾燥機にて脱水し、更
に、それにバインダーとしてのポリビニルアルコールを
添加して、混練した。次いで、そのような混練物を、ア
ムスラー成形機を用いて１トンの圧力にて成形し、乾燥
せしめた後、電気炉内において、１６００℃、２時間の
条件にて焼成することにより、各種クリンカー（焼成
物）を得た。このようにして得られた各種クリンカーを
粉砕等して、それぞれの特性、即ち嵩比重、見掛気孔
率、耐スラグ性及び耐消化性について調べて、その結果
を、下記表１に併せて示した。

【００２９】ここで、かかるクリンカーの特性評価にお
ける嵩比重及び見掛気孔率は、何れも、煮沸法にて測定
したものであり、また耐スラグ性は、直径：５０ｍｍ、
高さ：４０ｍｍの円柱状試料の上部に、直径：３０ｍ
ｍ、深さ：１０ｍｍの凹部を設け、この中に、鉄：６０
重量％、石灰：３０重量％、及びシリカ：１０重量％の
組成よりなるスラグを入れて、電気炉中に、１５５０℃
の温度にて２時間静置せしめた後、冷却して、かかる試
料に対するスラグの浸透深さを、試料を切断して測定し
た。更に、耐消化性については、１５０μｍ（１５０×
１０^-6ｍ）以下の粒子を用いて、その１００グラムを容
器に入れて、水蒸気中、３気圧の圧力下、１３１℃の温
度で３時間、オートクレーブで処理した後の重量増加率
として、示されている。なお、本実施例中の嵩比重、見
掛気孔率、耐スラグ性及び耐消化性は、それぞれ、特に
断りのない限り、上述の手法にて評価されたものであ
る。

【００３０】

【表１】

【００３１】かかる表１の結果から明らかな如く、本発
明に従う組成とされたクリンカー（Ｎｏ．２〜Ｎｏ．
５）にあっては、そのような範囲外の組成よりなるもの
（Ｎｏ．１）と比較して、耐スラグ性及び耐消化性が優
れていることを認めることができる。

【００３２】実験例２ＣａＯ成分として消石灰を用いると共に、無機酸とし
て、実験例１と同様なリン酸水溶液を用いて、それら
を、下記表２に示される各種割合（実験例１と同様に、
消石灰についてはＣａＯ換算量にて示されており、リン
酸水溶液については、リン酸成分に換算されている）に
て配合し、そしてその配合物を混練せしめた後、焼成温
度を１５５０℃として、実験例１と同様にして焼成を行
ない、目的とするクリンカーを得た。そして、このよう
にして得られた各種クリンカーについて、それぞれ、嵩
比重、見掛気孔率、耐スラグ性及び耐消化性の評価を行
ない、それらの結果を、下記表２に併せ示した。

【００３３】さらに、かかる表２におけるＮｏ．７及び
Ｎｏ．１０の組成の配合物を用い、それらをフレットミ
ルで混練し、ブリケットマシンでアーモンド形状に成形
した後、ロータリーキルンにおいて、１７００℃の温度
にて２時間焼成せしめることにより、目的とする焼成物
を得た。そして、それらの焼成物についても、嵩比重、
見掛気孔率、耐スラグ性及び耐消化性の評価を行ない、
それらの結果を、下記表３に示した。

【００３４】

【表２】

【００３５】

【表３】

【００３６】上記表２及び表３の結果から明らかなよう
に、ＣａＯにリン酸を配合してなるクリンカーにあって
は、優れた耐スラグ性及び耐消化性を発揮し得ることが
認められるのである。

【００３７】実験例３ＣａＯ成分としての消石灰と共に、無機酸として、市販
の濃塩酸を水にて希釈した希塩酸を用いて、それらを下
記表４に示される各種割合（但し、消石灰についてはＣ
ａＯ換算量にて示されており、希塩酸については塩酸成
分に換算されている）にて配合し、かかる配合物を混練
せしめた後、焼成温度を１５５０℃として、実験例１と
同様にして焼成を行ない、目的とするクリンカーを得
た。そして、このようにして得られた各クリンカーにつ
いて、嵩比重、見掛気孔率、耐スラグ性及び耐消化性の
評価を行ない、それらの結果についても、下記表４に併
せ示した。

【００３８】

【表４】

【００３９】かかる表４の結果から明らかな如く、Ｃａ
Ｏに塩酸を配合してなるクリンカーにあっても、耐スラ
グ性及び耐消化性が優れていることが、確認され得るの
である。

【００４０】実験例４ＣａＯ成分としての炭酸カルシウムと共に、無機酸とし
て、市販の濃硫酸を水にて希釈した希硫酸を用いて、そ
れらを下記表５に示される各種割合（但し、炭酸カルシ
ウムについてはＣａＯ換算量にて示されており、希硫酸
については硫酸成分に換算されている）にて配合し、か
かる配合物を混練せしめた後、ボールミルにて１５０μ
ｍ以下の微粉に粉砕した。そして、その粉砕物をオーガ
ーマシンにて成形し、乾燥せしめた後、電気炉内におい
て、１５５０℃の温度で２時間焼成することにより、各
種クリンカーを得た。このようにして得られた各種クリ
ンカーについて、嵩比重、見掛気孔率、耐スラグ性及び
耐消化性の評価を行ない、それらの結果を、下記表５に
併せ示した。

【００４１】

【表５】

【００４２】かかる表５の結果からも明らかなように、
ＣａＯに硫酸を配合してなるクリンカーにあっても、優
れた耐スラグ性及び耐消化性を発揮し得ることが認めら
れるのである。

【００４３】実験例５ＣａＯ成分としての炭酸カルシウム、及び市販のリン酸
アルミニウム水溶液を、下記表６に示される各種割合
（但し、炭酸カルシウムについてはＣａＯ換算量にて示
されており、リン酸アルミニウム水溶液については、リ
ン酸アルミニウムに換算されている）にて配合し、かか
る配合物を混練せしめた後、実験例１と同様の条件にて
焼成を行ない、目的とするクリンカーを得た。そして、
この得られた各種クリンカーについて、それぞれ、嵩比
重、見掛気孔率、耐スラグ性及び耐消化性の評価を行な
い、それらの結果を、下記表６に併せて示した。

【００４４】

【表６】

【００４５】かかる表６から明らかな如く、ＣａＯにリ
ン酸アルミニウムを配合してなるクリンカーにあって
も、耐消化性及び耐スラグ性において優れていること
が、確認され得るのである。

【００４６】実験例６消石灰及び亜硫酸ナトリウムを、下記表７に示される割
合（但し、消石灰についてはＣａＯ換算量にて示されて
いる）にて配合し、かかる配合物を混練せしめた後、焼
成温度を１５５０℃として、実験例１と同様にして焼成
を行ない、目的とするクリンカーを得た。ここで、亜硫
酸ナトリウムを添加せしめるに際しては、所定濃度の亜
硫酸ナトリウム水溶液を用いた。また、消石灰及び塩化
カリウムについても、下記表７に示される割合にて配合
し、混練した後、亜硫酸ナトリウムを用いた場合と同様
の条件にて焼成を行ない、目的とするクリンカーを得
た。そして、得られた各種クリンカーについて、耐スラ
グ性等の評価を行ない、それらの結果を、下記表７に併
せ示した。

【００４７】

【表７】

【００４８】上記表７の結果からも明らかなように、Ｃ
ａＯに、ＣａＯと反応して固体を生成する物質を配合し
てなるクリンカーにあっては、優れた耐スラグ性及び耐
消化性を発揮し得ることが認められるのである。

【００４９】実験例７消石灰と、リン酸水溶液と、リン酸アルミニウム水溶液
と、更にホウ酸粉末とを準備し、それらを、下記表８に
示される割合（消石灰についてはＣａＯ換算量にて示さ
れており、また、リン酸水溶液及びリン酸アルミニウム
水溶液についても、それぞれ、リン酸、リン酸アルミニ
ウムに換算されている）にて配合し、かかる配合物を混
練せしめた後、実験例１と同様にして焼成を行ない、目
的とするクリンカーを得た。このようにして得られたク
リンカーについても、耐スラグ性等の評価を行ない、そ
の結果についても、下記表８に併せ示した。

【００５０】

【表８】

【００５１】かかる表８から明らかな如く、原料成分中
に、リン酸或いはリン酸アルミニウムと共に、安価なホ
ウ酸を配合してなるクリンカーにあっても、優れた耐ス
ラグ性及び耐消化性が発揮され得るのであり、かかるク
リンカーよりなる耐火物にあっては、その製造コストを
低く抑えることが出来るのである。

【００５２】

【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
に従うカルシア系クリンカーにあっては、溶鋼のクリー
ンスチール化に大きく寄与するＣａＯを主成分とし、こ
れに無機酸及びＣａＯと反応して固体を生成する物質の
うちの少なくとも１種以上を配合せしめることにより、
ＣａＯとの間において各種の反応物を生成せしめ、かか
る反応物により、ＣａＯと水との接触が効果的に阻止さ
れるのであって、これにより、耐消化性に優れ、且つ耐
スラグ性にも優れた、塩基性耐火物原料が実現され得る
のである。

【００５３】また、そのようなクリンカーを用いて得ら
れる耐火物にあっても、原料たるクリンカーの特性をそ
のまま引き継ぎ、耐食性及び耐スラグ性において優れた
特徴を発揮するものであるところから、各種用途におけ
る耐火物として、例えば、製鉄業における溶鋼用容器、
精錬炉用容器等、或いはセメントや石灰等を焼成するキ
ルン等における内張り用耐火物等として、有利に用いら
れ得るのである。

フロントページの続き (72)発明者尾花豊康愛知県瀬戸市塩草町11番地の４伊藤忠セラテック株式会社内 (72)発明者牧野浩愛知県瀬戸市塩草町11番地の４伊藤忠セラテック株式会社内 (72)発明者森雅人愛知県瀬戸市塩草町11番地の４伊藤忠セラテック株式会社内Ｆターム(参考） 4G030 AA04 AA07 AA08 AA35 AA36 AA41 BA25 BA28 GA04 GA14 GA22 GA27 4K051 AA06 BE03

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】ＣａＯ：１０〜１００重量％及びＭｇ
Ｏ：０〜９０重量％なる化学組成を与える組成物に、無
機酸及びＣａＯと反応して固体を生成する物質のうちの
少なくとも１種以上を配合せしめてなる配合物を用い、
それを焼成して得られた焼成物からなることを特徴とす
るカルシア系クリンカー。
【請求項２】前記無機酸が、リン酸類、塩酸、及び硫
酸の中から選択される請求項１に記載のカルシア系クリ
ンカー。
【請求項３】前記ＣａＯと反応して固体を生成する物
質が、リン酸アルミニウム、亜硫酸ナトリウム、塩化カ
リウム、乳酸アルミニウム、及び四塩化炭素の中から選
択される請求項１又は請求項２に記載のカルシア系クリ
ンカー。
【請求項４】ＣａＯ：１０〜１００重量％及びＭｇ
Ｏ：０〜９０重量％なる化学組成を与える組成物に、リ
ン酸類及び／又はリン酸アルミニウムと共に、ホウ酸を
配合せしめてなる配合物を用い、それを焼成して得られ
た焼成物からなることを特徴とするカルシア系クリンカ
ー。
【請求項５】請求項１乃至請求項４の何れかに記載の
カルシア系クリンカーを、耐火物材料として用いてなる
ことを特徴とする耐火物。