JP3681180B2 - 固体レーザ発振装置及びその励起方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
この発明は、Nd3+:YAGレーザやガラスレーザ等に代表される固体レーザ発振装置の励起に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(1) 背景技術
【0003】
固体レーザ発振装置(Nd3+:YAGレーザ等)の励起光源には、フラッシュランプ(XeランプやKrランプ等)が広く利用されている。この様な固体レーザ発振装置をワークの溶接・切断等の加工に用いる場合には、通常(ノーマル)発振時に比べて急峻なパルスをフラッシュランプに印加して、強力なレーザ光を瞬間発振させる必要が生ずることがある。というのは、多くの場合、ワークは高反射率の金属から成り、しかもその加工表面が酸化膜で被覆されているからである。この様な場合、瞬時に強力なレーザ光を照射して酸化被膜を取除く必要がある。又、金属面を切断する際にも、強力なレーザ光を瞬時に照射して、照射面の温度を一気に溶融値にまで高め、その後の切断を実行可能とする必要がある。通常発振では、金属の高反射率に遮られ、表面温度を溶融値にまで高めるのが困難だからである。
【0004】
この様な観点から、フラッシュランプに印加するパルスを適切に制御する必要がある。その様な従来技術としては、次の様なものがある。
【0005】
(2) 従来の技術
【0006】
▲1▼ 例えば特公昭63−20032号公報に開示されたポンピングパルス制御技術がある。本技術では、高周波スイッチ(トランジスタ等)とLCフィルタとの組合せを用いて、そのパルス幅や周波数を可変できる矩形波や、その傾きを可変できる鋸歯状波形のパルスを実現している。
【0007】
▲2▼ 他の励起方法としては、ルモニクス社製の固体レーザ発振装置等において実現されている技術がある。これは、通常のパルス波形(矩形波)を階段状に整形したものである。その一例を、図6に示す。この場合、電圧波形を任意に変えることができる利点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の技術▲1▼,▲2▼は、溶接・切断時に必要とされる急峻な光励起を実現するには十分ではなかった。具体的には、各技術▲1▼,▲2▼は、次の様な問題点を有している。
【0009】
先ず上記▲1▼の技術に関しては、鋸歯状波形の傾きの可変範囲にも限度があり、通常時に較べて10倍程度のレベルにまでそのレベルを一気に高めることは困難であるということである。しかも溶接・切断に際しては、前述した通り、瞬間時だけ急竣な光励起を行えば良いのであって、その後は熱源としてレーザ光を発振させれば良いこととなり、この様な観点から見た場合には本技術▲1▼は望ましいものではないとも言える。更に本技術▲1▼は、LCフィルタを利用した回路構成を採用しているため、「加工作業上必要なときだけ急峻なパルス(この場合は、鋸歯状パルス)を出力し、不必要な場合には矩形波パルスによる通常発振を行う」という様な加工作業の進渉状況に応じた臨機応変な対応ができないという問題点をも内包している。
【0010】
同様な事が、上記▲2▼の技術に関しても成立する。即ち、本来的には通常発振時のレベルを有する1パルスから階段状の可変パルスを形成しているため、溶接・切断に要求されるレベルを有する急峻なパルスを発生させることができない。又、仮に発生させることが可能であるとしても、1系統による波形コントロールを行っているため、急峻励起の必要時と不必要時との対応ができない欠点が残ることとなる。更に、本技術▲2▼では、1つのフラッシュランプを、当該ランプに流す電流を大電流から小電流へと連続的に切替えて使用しているため、フラッシュランプの寿命を短くするおそれもある。
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みなされたものであり、通常の光励起と急峻な光励起とをその状況に応じて容易に切替えることができ、しかも当該急峻な光励起によって、通常の光励起では加工困難なワークの加工をも容易に実現できる固体レーザ発振装置の提供を目的としている。更に本発明は、その様な固体レーザ発振装置の励起方法をも実現しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る固体レーザ発振装置の励起方法では、第1光源に第1パルスの電圧を印加することにより、第1励起光を一つの固体レーザ媒質に対して照射するとともに、第1パルスの電圧印加と同時に又は当該印加後であって且つ当該印加終了前の間に、第1パルスと比較してそのレベルが大きく且つそのパルス幅が短い第2パルスの電圧を第2光源に印加して、第2励起光を更に上記一つの固体レーザ媒質に対して照射するようにしている。
【0013】
又、請求項2に係る固体レーザ発振装置では、一つの固体レーザ媒質と、固体レーザ媒質の励起光源としての第1及び第2光源と、第1光源に第1パルスの電圧を印加して、第1励起光を第1光源より照射する第1駆動回路と、第1パルスの電圧印加と同時に又は当該印加後であって且つ当該印加終了前の間に、第1パルスと比較してそのレベルが大きく且つそのパルス幅が短い第2パルスの電圧を第2光源に印加して第2励起光を第2光源より照射する第2駆動回路とを備えるようにしている。
又、請求項3に係る固体レーザ発振装置では、請求項2記載の固体レーザ発振装置における第2パルスの電圧レベルを第1パルスの電圧レベルの約10倍に設定している。
【0014】
【作用】
▲1▼ 請求項1に係る発明では、第1光源への第1パルスの印加によって第1励起光が照射され、当該第1励起光は固体レーザ媒質に吸収される。その結果、第1パルスのレベルに応じた強度のレーザ光が発振する。更に上記第1パルスの電圧印加と同時に、ないしはその印加後であって且つ当該印加終了前の間に、第1パルスよりも急峻な(レベル;大,パルス幅;短)第2パルスの電圧が第2光源へ印加される。この印加により、第1励起光よりも強度が格段に大きい第2励起光が照射され、当該第2励起光が照射されている時間内では、レーザ光の強度が格段に増大する。
【0015】
▲2▼ 請求項2に係る発明では、第1駆動回路が第1パルスを発生させ、この第1パルスを第1光源に出力する。第1光源は、第1パルスの電圧印加に同期して、且つそのレベルに応じた強度の第1励起光を放出する。
【0016】
一方、第2駆動回路は、上記第1パルスの電圧印加に同期して又は印加後であって且つ当該印加終了前の間に、当該第1パルスよりも急峻なパルス(第2パルス)を発生し、この第2パルスを第2光源へ出力する。その結果、第2光源は、第1励起光よりも強度が大きく且つ発光時間が短い第2励起光を照射する。
【0017】
この様に本発明では、強度と発光時間とが異なる2種類の励起光が、それぞれ別々の系統から一つの固体レーザ媒質内へ導かれる。両励起光が同時に固体レーザ媒質内に存在するときには、固体レーザ発振装置の発振出力は急激に高出力となる。
【0018】
【実施例】
A. 固体レーザ発振装置の構成
【0019】
図1は、この発明の一実施例である固体レーザ発振装置(以下、レーザ発振装置と略す)の主要部の構成を模式的に示した斜視図である。又、図2は、レーザ発振装置の正面図を同じく模式的に示した図である。両図において、固体レーザ媒質1は、その断面が矩形となる様に、スラブ型に形成されている。その材質としては、例えばNd3+:YAG結晶やガラス等が利用される。
【0020】
一方、本レーザ発振装置の励起光源としては、2つのフラッシュランプ4,5が用いられている。即ち、固体レーザ媒質1の下面3側には、その長手方向にわたって第1フラッシュランプ4が配設されており、当該第1フラッシュランプ4には第1電源6が接続されている。又、固体レーザ媒質1の上面2側には第2フラッシュランプ5が配設されており、当該第2フラッシュランプ5には第2電源7が接続されている。第1及び第2電源6,7の構成及びそれらの電源6,7より出力される第1及び第2パルスV1 ,V2 の波形については、後述する。
【0021】
尚、記号M1,M2は、それぞれ出力鏡及び反射鏡を示しており、これらのミラーM1,M2は本レーザ発振装置の共振器を構成している。又、記号L1 及びL2 は、それぞれ第1フラッシュランプ4より放出される第1励起光及び第2フラッシュランプ5より放出される第2励起光を示している。固体レーザ媒質1はこれらの励起光L1 ,L2 を吸収した後、レーザ光LBが出力鏡M1より発振する。
【0022】
B. 電源の構成・パルス波形
【0023】
図3は、前述した第1電源6及び第2電源7のより詳細な構成を示したブロック図である。第1電源6は、通常発振時に必要とされるレベルの第1パルスV1 を出力する。この第1パルスV1 の波形を図4に示す。本図4は、時間tに対するパルスの振幅(電圧値)を示した図であり、第1パルスV1 とともに第2パルスV2 をも示したものである。同図に示す通り、第1パルスV1 は、レベルv1 ,パルス幅ΔT1 を有する信号である。ここでは、第1パルスV1 は、時間t1 ,t2 及びt3 において立ち上がり、時間t11,t21及びt31においてレベルv1 から0レベルへ立ち下がるものとする。
【0024】
一方、第2電源7は、その電圧振幅がv2 に、そのパルス幅がΔT2 となる様に、その回路構成が予め設定されている。上記電圧v2 のレベルは第1パルスV1 のレベルv1 の約10倍程度に設定されている。しかもそのパルス幅ΔT2 は、パルス幅ΔT1 に較べて極めて小さな値に設定される。従って、第2電源7が出力する第2パルスV2 は、急峻なパルスとなる。尚、両パルスV1 ,V2 の周期は同一である。
【0025】
両パルスV1 ,V2 の同期は、次の通り行われる。即ち、トリガー発生回路8が別に設定されており、当該トリガー発生回路8は、両電源6,7に対してトリガー信号TRGを出力する。このトリガー信号TRGを受けて、両電源6,7は、同時に第1パルスV1 ,第2パルスV2 を出力することとなる。
【0026】
尚、トリガー発生回路8と第2電源7との間に遅延回路9を設けることによって、トリガー信号TRGを任意の時間だけ遅延させることができる。これによって、当該遅延時間だけ第2パルスV2 の出力タイミングを遅らすことができる。遅延回路9によって遅延時間Δtd だけ第2パルスV2 の出力を遅らせた一例を、同じく図4に示す。
【0027】
この様に通常の第1パルスV1 を第1フラッシュランプ4へ、急峻な第2パルスV2 を第2フラッシュランプ5へそれぞれ印加させているため、第2パルスV2 が印加されている時間、即ちパルス幅ΔT2 に相当する時間内では、急峻な光励起が固体レーザ媒質1内で発生し、強力なレーザ光LBが発振される。これに対して、第2パルスV2 が0レベルに立ち下がった時刻(例えば時刻t1 ' )から第1パルスV1 が0レベルにまで立ち下がる時間(例えば時間t11)までの間は、通常の発振が生じ、当該レーザ光LBはワーク加工時の熱源として機能する。 C. 加工作業の手順
【0028】
図5は、本レーザ発振装置を溶接や切断等の加工作業に適用した場合の手順を示すフローチャートである。先ず、ステップS1では、加工面が高反射率の金属から成るか否かが、又、その加工面が酸化膜で被覆されているか否かが判断される。この様な判断は、作業者自ら行っても良く、又、予めワークの形状が既知である場合にはコンピュータを用いて判断することもできる。
【0029】
上記ステップS1でYESと判断された場合には、ステップS2及びS3において、第1パルスV1 及び第2パルスV2 が、各フラッシュランプ4,5へ印加される。この印加により、急峻な光励起が行われ、レーザ光LBの強度は瞬時に急激に増大する。これにより、酸化被膜等が瞬時に除去され、その後の第1パルスV1 によるレーザ光LBによって加工作業が続行される。
【0030】
一方、ステップS1においてNOと判断された場合には、第2パルスV2 を印加する必要はないため、第2電源7はOFFとされ、第1パルスV1 のみが第1フラッシュランプ4へ印加される。この場合は、通常発振したレーザ光LBによって加工作業が続行される(ステップS4)。
【0031】
最後にステップS5では、加工作業が終了したか否かが判断される。終了した場合には、一連の作業は終了する。それに対して加工終了でない場合には、上記ステップS1〜S4までの各ステップが再度続行されることとなる。
【0032】
【発明の効果】
▲1▼ 請求項1及び2に係る発明では、第1光源及び第2光源に印加すべき電圧を別々にコントロールすることができる。そのため、第1パルスと比較して急峻なパルス(第2パルス)を容易に発生させることが可能となる。しかも、当該第2パルスを第1パルスの任意な位置(第1パルス印加中の任意な時間)に容易に重畳することができ、ワークの加工状況に応じて臨機応変に急峻な第2パルスの印加をコントロールすることが可能となる。
【0033】
以上の効果を通じて、両発明は、高反射率の金属から成るワークや、加工面が酸化膜で被覆されているワーク等の加工(溶接・切断等)を容易に実行できる固体レーザ発振装置の実現を可能とする。
【0034】
▲2▼ 又、請求項2に係る発明では、第1光源及び第2光源をそれぞれ第1駆動回路及び第2駆動回路によって発光せしめているため、ワークの状況に応じて(高出力の)第2励起光の照射を自在にコントロールすることができる。即ち、ワークが酸化被膜等を有する場合には、通常の発振パワー以上のパワーを要するため、第1及び第2パルスを共にONレベルとし、逆にその様な急峻なパルスを不要とする作業に於いては、第2パルスをOFFレベルとして、第1パルスのみをONレベルに設定すれば良いこととなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体レーザ発振装置の主要部を模式的に示した斜視図である。
【図2】固体レーザ発振装置の主要部を模式的に示した正面図である。
【図3】電源部を示したブロック図である。
【図4】第1パルスと第2パルスのタイミングと波形とを示した説明図である。
【図5】加工手順を示したフローチャートである。
【図6】従来の励起方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 固体レーザ媒質
4 第1フラッシュランプ(第1光源)
5 第2フラッシュランプ(第2光源)
6 第1電源
7 第2電源
V1 第1パルス
V2 第2パルス
L1 第1励起光
L2 第2励起光
【産業上の利用分野】
この発明は、Nd3+:YAGレーザやガラスレーザ等に代表される固体レーザ発振装置の励起に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
(1) 背景技術
【0003】
固体レーザ発振装置(Nd3+:YAGレーザ等)の励起光源には、フラッシュランプ(XeランプやKrランプ等)が広く利用されている。この様な固体レーザ発振装置をワークの溶接・切断等の加工に用いる場合には、通常(ノーマル)発振時に比べて急峻なパルスをフラッシュランプに印加して、強力なレーザ光を瞬間発振させる必要が生ずることがある。というのは、多くの場合、ワークは高反射率の金属から成り、しかもその加工表面が酸化膜で被覆されているからである。この様な場合、瞬時に強力なレーザ光を照射して酸化被膜を取除く必要がある。又、金属面を切断する際にも、強力なレーザ光を瞬時に照射して、照射面の温度を一気に溶融値にまで高め、その後の切断を実行可能とする必要がある。通常発振では、金属の高反射率に遮られ、表面温度を溶融値にまで高めるのが困難だからである。
【0004】
この様な観点から、フラッシュランプに印加するパルスを適切に制御する必要がある。その様な従来技術としては、次の様なものがある。
【0005】
(2) 従来の技術
【0006】
▲1▼ 例えば特公昭63−20032号公報に開示されたポンピングパルス制御技術がある。本技術では、高周波スイッチ(トランジスタ等)とLCフィルタとの組合せを用いて、そのパルス幅や周波数を可変できる矩形波や、その傾きを可変できる鋸歯状波形のパルスを実現している。
【0007】
▲2▼ 他の励起方法としては、ルモニクス社製の固体レーザ発振装置等において実現されている技術がある。これは、通常のパルス波形(矩形波)を階段状に整形したものである。その一例を、図6に示す。この場合、電圧波形を任意に変えることができる利点がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の技術▲1▼,▲2▼は、溶接・切断時に必要とされる急峻な光励起を実現するには十分ではなかった。具体的には、各技術▲1▼,▲2▼は、次の様な問題点を有している。
【0009】
先ず上記▲1▼の技術に関しては、鋸歯状波形の傾きの可変範囲にも限度があり、通常時に較べて10倍程度のレベルにまでそのレベルを一気に高めることは困難であるということである。しかも溶接・切断に際しては、前述した通り、瞬間時だけ急竣な光励起を行えば良いのであって、その後は熱源としてレーザ光を発振させれば良いこととなり、この様な観点から見た場合には本技術▲1▼は望ましいものではないとも言える。更に本技術▲1▼は、LCフィルタを利用した回路構成を採用しているため、「加工作業上必要なときだけ急峻なパルス(この場合は、鋸歯状パルス)を出力し、不必要な場合には矩形波パルスによる通常発振を行う」という様な加工作業の進渉状況に応じた臨機応変な対応ができないという問題点をも内包している。
【0010】
同様な事が、上記▲2▼の技術に関しても成立する。即ち、本来的には通常発振時のレベルを有する1パルスから階段状の可変パルスを形成しているため、溶接・切断に要求されるレベルを有する急峻なパルスを発生させることができない。又、仮に発生させることが可能であるとしても、1系統による波形コントロールを行っているため、急峻励起の必要時と不必要時との対応ができない欠点が残ることとなる。更に、本技術▲2▼では、1つのフラッシュランプを、当該ランプに流す電流を大電流から小電流へと連続的に切替えて使用しているため、フラッシュランプの寿命を短くするおそれもある。
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みなされたものであり、通常の光励起と急峻な光励起とをその状況に応じて容易に切替えることができ、しかも当該急峻な光励起によって、通常の光励起では加工困難なワークの加工をも容易に実現できる固体レーザ発振装置の提供を目的としている。更に本発明は、その様な固体レーザ発振装置の励起方法をも実現しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る固体レーザ発振装置の励起方法では、第1光源に第1パルスの電圧を印加することにより、第1励起光を一つの固体レーザ媒質に対して照射するとともに、第1パルスの電圧印加と同時に又は当該印加後であって且つ当該印加終了前の間に、第1パルスと比較してそのレベルが大きく且つそのパルス幅が短い第2パルスの電圧を第2光源に印加して、第2励起光を更に上記一つの固体レーザ媒質に対して照射するようにしている。
【0013】
又、請求項2に係る固体レーザ発振装置では、一つの固体レーザ媒質と、固体レーザ媒質の励起光源としての第1及び第2光源と、第1光源に第1パルスの電圧を印加して、第1励起光を第1光源より照射する第1駆動回路と、第1パルスの電圧印加と同時に又は当該印加後であって且つ当該印加終了前の間に、第1パルスと比較してそのレベルが大きく且つそのパルス幅が短い第2パルスの電圧を第2光源に印加して第2励起光を第2光源より照射する第2駆動回路とを備えるようにしている。
又、請求項3に係る固体レーザ発振装置では、請求項2記載の固体レーザ発振装置における第2パルスの電圧レベルを第1パルスの電圧レベルの約10倍に設定している。
【0014】
【作用】
▲1▼ 請求項1に係る発明では、第1光源への第1パルスの印加によって第1励起光が照射され、当該第1励起光は固体レーザ媒質に吸収される。その結果、第1パルスのレベルに応じた強度のレーザ光が発振する。更に上記第1パルスの電圧印加と同時に、ないしはその印加後であって且つ当該印加終了前の間に、第1パルスよりも急峻な(レベル;大,パルス幅;短)第2パルスの電圧が第2光源へ印加される。この印加により、第1励起光よりも強度が格段に大きい第2励起光が照射され、当該第2励起光が照射されている時間内では、レーザ光の強度が格段に増大する。
【0015】
▲2▼ 請求項2に係る発明では、第1駆動回路が第1パルスを発生させ、この第1パルスを第1光源に出力する。第1光源は、第1パルスの電圧印加に同期して、且つそのレベルに応じた強度の第1励起光を放出する。
【0016】
一方、第2駆動回路は、上記第1パルスの電圧印加に同期して又は印加後であって且つ当該印加終了前の間に、当該第1パルスよりも急峻なパルス(第2パルス)を発生し、この第2パルスを第2光源へ出力する。その結果、第2光源は、第1励起光よりも強度が大きく且つ発光時間が短い第2励起光を照射する。
【0017】
この様に本発明では、強度と発光時間とが異なる2種類の励起光が、それぞれ別々の系統から一つの固体レーザ媒質内へ導かれる。両励起光が同時に固体レーザ媒質内に存在するときには、固体レーザ発振装置の発振出力は急激に高出力となる。
【0018】
【実施例】
A. 固体レーザ発振装置の構成
【0019】
図1は、この発明の一実施例である固体レーザ発振装置(以下、レーザ発振装置と略す)の主要部の構成を模式的に示した斜視図である。又、図2は、レーザ発振装置の正面図を同じく模式的に示した図である。両図において、固体レーザ媒質1は、その断面が矩形となる様に、スラブ型に形成されている。その材質としては、例えばNd3+:YAG結晶やガラス等が利用される。
【0020】
一方、本レーザ発振装置の励起光源としては、2つのフラッシュランプ4,5が用いられている。即ち、固体レーザ媒質1の下面3側には、その長手方向にわたって第1フラッシュランプ4が配設されており、当該第1フラッシュランプ4には第1電源6が接続されている。又、固体レーザ媒質1の上面2側には第2フラッシュランプ5が配設されており、当該第2フラッシュランプ5には第2電源7が接続されている。第1及び第2電源6,7の構成及びそれらの電源6,7より出力される第1及び第2パルスV1 ,V2 の波形については、後述する。
【0021】
尚、記号M1,M2は、それぞれ出力鏡及び反射鏡を示しており、これらのミラーM1,M2は本レーザ発振装置の共振器を構成している。又、記号L1 及びL2 は、それぞれ第1フラッシュランプ4より放出される第1励起光及び第2フラッシュランプ5より放出される第2励起光を示している。固体レーザ媒質1はこれらの励起光L1 ,L2 を吸収した後、レーザ光LBが出力鏡M1より発振する。
【0022】
B. 電源の構成・パルス波形
【0023】
図3は、前述した第1電源6及び第2電源7のより詳細な構成を示したブロック図である。第1電源6は、通常発振時に必要とされるレベルの第1パルスV1 を出力する。この第1パルスV1 の波形を図4に示す。本図4は、時間tに対するパルスの振幅(電圧値)を示した図であり、第1パルスV1 とともに第2パルスV2 をも示したものである。同図に示す通り、第1パルスV1 は、レベルv1 ,パルス幅ΔT1 を有する信号である。ここでは、第1パルスV1 は、時間t1 ,t2 及びt3 において立ち上がり、時間t11,t21及びt31においてレベルv1 から0レベルへ立ち下がるものとする。
【0024】
一方、第2電源7は、その電圧振幅がv2 に、そのパルス幅がΔT2 となる様に、その回路構成が予め設定されている。上記電圧v2 のレベルは第1パルスV1 のレベルv1 の約10倍程度に設定されている。しかもそのパルス幅ΔT2 は、パルス幅ΔT1 に較べて極めて小さな値に設定される。従って、第2電源7が出力する第2パルスV2 は、急峻なパルスとなる。尚、両パルスV1 ,V2 の周期は同一である。
【0025】
両パルスV1 ,V2 の同期は、次の通り行われる。即ち、トリガー発生回路8が別に設定されており、当該トリガー発生回路8は、両電源6,7に対してトリガー信号TRGを出力する。このトリガー信号TRGを受けて、両電源6,7は、同時に第1パルスV1 ,第2パルスV2 を出力することとなる。
【0026】
尚、トリガー発生回路8と第2電源7との間に遅延回路9を設けることによって、トリガー信号TRGを任意の時間だけ遅延させることができる。これによって、当該遅延時間だけ第2パルスV2 の出力タイミングを遅らすことができる。遅延回路9によって遅延時間Δtd だけ第2パルスV2 の出力を遅らせた一例を、同じく図4に示す。
【0027】
この様に通常の第1パルスV1 を第1フラッシュランプ4へ、急峻な第2パルスV2 を第2フラッシュランプ5へそれぞれ印加させているため、第2パルスV2 が印加されている時間、即ちパルス幅ΔT2 に相当する時間内では、急峻な光励起が固体レーザ媒質1内で発生し、強力なレーザ光LBが発振される。これに対して、第2パルスV2 が0レベルに立ち下がった時刻(例えば時刻t1 ' )から第1パルスV1 が0レベルにまで立ち下がる時間(例えば時間t11)までの間は、通常の発振が生じ、当該レーザ光LBはワーク加工時の熱源として機能する。 C. 加工作業の手順
【0028】
図5は、本レーザ発振装置を溶接や切断等の加工作業に適用した場合の手順を示すフローチャートである。先ず、ステップS1では、加工面が高反射率の金属から成るか否かが、又、その加工面が酸化膜で被覆されているか否かが判断される。この様な判断は、作業者自ら行っても良く、又、予めワークの形状が既知である場合にはコンピュータを用いて判断することもできる。
【0029】
上記ステップS1でYESと判断された場合には、ステップS2及びS3において、第1パルスV1 及び第2パルスV2 が、各フラッシュランプ4,5へ印加される。この印加により、急峻な光励起が行われ、レーザ光LBの強度は瞬時に急激に増大する。これにより、酸化被膜等が瞬時に除去され、その後の第1パルスV1 によるレーザ光LBによって加工作業が続行される。
【0030】
一方、ステップS1においてNOと判断された場合には、第2パルスV2 を印加する必要はないため、第2電源7はOFFとされ、第1パルスV1 のみが第1フラッシュランプ4へ印加される。この場合は、通常発振したレーザ光LBによって加工作業が続行される(ステップS4)。
【0031】
最後にステップS5では、加工作業が終了したか否かが判断される。終了した場合には、一連の作業は終了する。それに対して加工終了でない場合には、上記ステップS1〜S4までの各ステップが再度続行されることとなる。
【0032】
【発明の効果】
▲1▼ 請求項1及び2に係る発明では、第1光源及び第2光源に印加すべき電圧を別々にコントロールすることができる。そのため、第1パルスと比較して急峻なパルス(第2パルス)を容易に発生させることが可能となる。しかも、当該第2パルスを第1パルスの任意な位置(第1パルス印加中の任意な時間)に容易に重畳することができ、ワークの加工状況に応じて臨機応変に急峻な第2パルスの印加をコントロールすることが可能となる。
【0033】
以上の効果を通じて、両発明は、高反射率の金属から成るワークや、加工面が酸化膜で被覆されているワーク等の加工(溶接・切断等)を容易に実行できる固体レーザ発振装置の実現を可能とする。
【0034】
▲2▼ 又、請求項2に係る発明では、第1光源及び第2光源をそれぞれ第1駆動回路及び第2駆動回路によって発光せしめているため、ワークの状況に応じて(高出力の)第2励起光の照射を自在にコントロールすることができる。即ち、ワークが酸化被膜等を有する場合には、通常の発振パワー以上のパワーを要するため、第1及び第2パルスを共にONレベルとし、逆にその様な急峻なパルスを不要とする作業に於いては、第2パルスをOFFレベルとして、第1パルスのみをONレベルに設定すれば良いこととなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】固体レーザ発振装置の主要部を模式的に示した斜視図である。
【図2】固体レーザ発振装置の主要部を模式的に示した正面図である。
【図3】電源部を示したブロック図である。
【図4】第1パルスと第2パルスのタイミングと波形とを示した説明図である。
【図5】加工手順を示したフローチャートである。
【図6】従来の励起方法を示す説明図である。
【符号の説明】
1 固体レーザ媒質
4 第1フラッシュランプ(第1光源)
5 第2フラッシュランプ(第2光源)
6 第1電源
7 第2電源
V1 第1パルス
V2 第2パルス
L1 第1励起光
L2 第2励起光
Claims (3)
- 一つの固体レーザ媒質と第1及び第2光源とを有する固体レーザ発振装置の励起方法において、
前記第1光源に第1パルスの電圧を印加して、第1励起光を前記固体レーザ媒質に対して照射し、
前記第1パルスの前記電圧の印加と同時に又は当該印加後であって且つ当該印加終了前の間に、前記第1パルスと比較してそのレベルが大きく且つそのパルス幅が短い第2パルスの電圧を前記第2光源に印加して、第2励起光を前記固体レーザ媒質に対して照射することを特徴とする固体レーザ発振装置の励起方法。 - 一つの固体レーザ媒質と、
前記固体レーザ媒質の励起光源としての第1及び第2光源と、
前記第1光源に第1パルスの電圧を印加して、第1励起光を前記第1光源より照射する第1駆動回路と、
前記第1パルスと比較してそのレベルが大きく且つそのパルス幅が短い第2パルスの電圧を、前記第1パルスの前記電圧の印加と同時に又は当該印加後であって且つ当該印加終了前の間に、前記第2光源に印加して第2励起光を前記第2光源より照射する第2駆動回路とを、
備えたことを特徴とする固体レーザ発振装置。 - 請求項2記載の固体レーザ発振装置であって、
前記第2パルスの前記電圧レベルは前記第1パルスの前記電圧レベルの約10倍に設定されていることを特徴とする、
固体レーザ発振装置。
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- 1993-03-10 JP JP07761693A patent/JP3681180B2/ja not_active Expired - Fee Related
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