JP3680737B2 - 薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法 - Google Patents

薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄クロムめっき鋼板の電気抵抗シーム溶接方法に関し、特に、溶接に際して生じる研削粉による環境汚染がなく、かつ、安定して優れた溶接性を得ることが可能な薄クロムめっき鋼板の電気抵抗シーム溶接方法に関する。
本発明は、特に、溶接缶胴の電気抵抗シーム溶接方法として好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
通常、ティンフリースチールと呼ばれる、鋼板に金属クロムおよびクロム酸化物をめっきした薄クロムめっき鋼板が、飲料缶、食缶、18L缶やペール缶用に広く用いられている。
この薄クロムめっき鋼板を缶胴として用いる場合、缶胴に成形する方法として、絞り加工による一体成形法や丸めた後接着するか溶接する接合法が一般的に用いられている。
【0003】
缶胴成形法の内、溶接による方法の場合、表面の酸化クロムなどクロム酸化物が高電気抵抗物質であるため、薄クロムめっき鋼板をそのまま溶接することが困難であり、溶接する部分のみを研削してクロムめっき層の大部分を除去することが一般的に行われている。
しかし、この方法の場合、Crの研削粉が飛散するため環境上および衛生上問題があり、また飛散する研削粉を吸引除去しようとしても缶内に残存してしまう可能性があるため、環境上および衛生上問題があり、研削を行わずに薄クロムめっき鋼板を溶接することが要求されている。
【0004】
また、研削法の場合、溶接性を安定させるために溶接部分の面積以上の面積を研削することが多く、このため溶接部周辺に研削部すなわちクロムめっきが削り取られて地鉄がむき出しになる部分ができてしまい、この部分が腐食し易く、錆が発生する問題がある。
薄クロムめっき鋼板の溶接性を改善し、研削を不要とする技術として、薄クロムめっき鋼板のめっき量を減らす方法が特開昭61−213398号公報に開示されているが、この方法では溶接性が安定せず、また溶接機によるバラツキも大きく実用上十分満足できるものではない。
【0005】
また、薄クロムめっき鋼板の金属クロムに微細な突起や粒状の形態を与えて接触抵抗を減らし溶接性を改善する方法が特公昭63− 26200号公報に開示され、この方法の場合、突起や粒状の形態を巧く制御することでかなり溶接性は改善されるが、この突起や粒状の形態のため鋼板の色調が暗くまた指紋がつき易いことから缶使用者には受け入れられていない。
【0006】
薄クロムめっき鋼板の溶接性を改善する他の方法として、金属クロムと酸化クロムの間に金属Snめっき層を設ける方法が特公昭63− 35718号公報に開示されている。
この方法によれば、金属Snは融点が232 ℃と低いため、溶接時に速やかに溶融し、接合面を濡らして接触抵抗を安定して低くでき、良い溶接性が得られる。
【0007】
しかし、溶接部を含む全面にSnをめっきするため、コストが高く、またSnにより色調が白くなるため缶使用者には受け入れられにくい問題がある。
また、特公平6− 96790号公報には、予め金属Snを粒状散在めっきし、その上に薄クロムめっきする方法が開示され、この方法でも金属Snによって溶接性は改善されるが、前記した技術と同様に、溶接部を含む全面に金属Snをめっきするためコストが高く、かつ色調も白っぽくなる問題がある。
【0008】
さらに、金属Snを溶接部分にのみストライプ状にめっきし、該めっき層の上および鋼帯全面に金属クロム層およびクロム酸化物層を生成せしめた缶用めっき鋼板が、特開昭61−213395号公報に開示されている。
この鋼板は、広幅の鋼板において缶胴にするときに溶接部となる部位毎に数本のストライプ状にめっきするものである。
【0009】
この鋼板の場合、めっき後に缶胴サイズに切り出すが、通常溶接部の幅が1mm程度であるため、めっき位置精度の制御が難しく、きちんとめっき位置と溶接部位置を合わせるのが非常に困難である。
また、このストライプ状Snめっき鋼板は、決まった部分にSnが存在するため溶接缶胴用にしか使えず、缶蓋などに転用することができない。
【0010】
以上のように、従来の技術では、薄クロムめっき鋼板を無研削で溶接缶胴とするためには種々の問題があり、薄クロムめっき鋼板を用いて近年要求されているクリーンな溶接缶を製造することが困難である。
これらの問題点を解決し、無研削で薄クロムめっき鋼板をシーム溶接する方法として、本発明者らは既に特開平11− 33735号公報において、シーム溶接前に薄クロムめっき鋼板の溶接箇所の表面に金属錫を機械的に摺動させ、金属錫を付着させるシーム溶接方法および薄クロムめっき鋼板を開示した。
【0011】
上記方法によれば、薄クロムめっき鋼板の無研削での溶接が可能となるばかりでなく、金属錫を付着せしめる際に工業薬品などを使用しないので廃液の発生などの問題が無く、環境に優しく、さらに、金属錫を溶接部にのみ付着させるため省資源が達成できた。
一方、上記方法によれば、平坦でかつ形状の安定した鋼板に対しては問題なく金属錫の付着が行えるが、通常の鋼板で見られる「耳伸び」と称する端部の形状のうねりや、「返り」と称する端部のバリなどがあると金属錫の付着が不安定になり安定した無研削溶接ができなくなり、鋼板によっては生産性が低下する問題が生じた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記した従来技術の問題点を解決し、薄クロムめっき鋼板を無研削で安定して電気抵抗シーム溶接(以下、シーム溶接とも記す)することが可能な薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法であって、ロールの円周面に金属錫を付着させ、該ロールで前記鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を付着量:0.010 〜0.7g/m2 で転写付着させ、その後、シーム溶接を行うことを特徴とする薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法である。
【0014】
第2の発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法であって、ロール円周面に算術平均粗さRa: 0.5〜 2.5μm の表面粗さを有するロールの円周面に金属錫を摺動、付着させ、該ロールで前記鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を付着量:0.010 〜0.7g/m2 で転写付着させ、その後、シーム溶接を行うことを特徴とする薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法である。
【0015】
前記した第1の発明、第2の発明においては、前記したロールの円周面に金属錫を付着させる方法もしくは摺動、付着させる方法が、金属錫円盤を回転数:10〜3000回転/分で回転させながら該金属錫円盤の円周面をロールの円周面に摺動せしめる方法であることが好ましい。
また、前記した第1の発明、第2の発明においては、前記したロールの円周面に金属錫を付着させる方法もしくは摺動、付着させる方法が、金属錫を、振動数:10〜400Hz で振動させながらロールの円周面に摺動せしめる方法であることが好ましい。
【0016】
なお、前記したクロム酸化物とは、酸化クロムとクロム水和酸化物の両者を示し、後記するクロム酸化物の付着量とは、酸化クロムとクロム水和酸化物それぞれの金属クロム換算の合計付着量を示す。
また、前記した算術平均粗さRaはJIS B 0601-1994 で規定される算術平均粗さを示す。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
前記したように、薄クロムめっき鋼板の溶接部に金属錫を付着させる方法としては、金属錫を、直接、薄クロムめっき鋼板の溶接部に押圧、摺動せしめ、金属錫と薄クロムめっき鋼板表面との間で機械的エネルギーにより摩擦を起こさせ、この摩擦によって金属錫を鋼板に付着させる方法を用いることもできる。
【0018】
しかし、この方法の場合、薄クロムめっき鋼板の溶接部が平坦で、形状が安定していることが必要である。
一方、通常、薄クロムめっき鋼板は0.1 〜0.6 mm程度に薄く圧延された鋼板にクロムめっき処理を施し、3〜25t程度のコイルに巻き取られるのが通常である。
【0019】
巻き取られた薄クロムめっき鋼板には、圧延時の加工歪みの不均一性やコイルに巻き取る張力の不安定性に起因する残留応力が残存することが多い。
また、薄クロムめっき鋼板を用いて缶胴を製造する場合、コイルに巻かれた薄クロムめっき鋼板は一旦大板に切り出され、この大板から缶胴サイズに切り出される。
【0020】
この結果、缶胴サイズに切り出された鋼板は、残留応力によって、図3(a) に示すように「耳伸び」Aと称せられるエッジが波打つような形状を呈したり、図3(b) に示すように「反り」Bを生じることがある。
また、図3(c) に示すように、鋼板を切り出す際に、切断部に「返り」あるいは「刃返り」Cと称せられるバリを生じることがある。
【0021】
溶接部に「耳伸び」、「反り」、「刃返り」があると、前記した金属錫を、直接、薄クロムめっき鋼板に摺動、付着させる方法の場合、金属錫と薄クロムめっき鋼板表面との接触が不安定となり、金属錫の付着が不均一となり、無研削で十分な溶接性を得ることが困難となる。
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解決するために鋭意検討した結果、金属錫をロールを介して薄クロムめっき鋼板の溶接部となる部分に付着せしめることによって、薄クロムめっき鋼板を安定して電気抵抗シーム溶接(:シーム溶接)することが可能であることを見出し本発明に至った。
【0022】
すなわち、第1の発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法であって、ロールの円周面に金属錫を付着させ、該ロール(:該ロールの円周面)で前記鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を付着量:0.010 〜0.7g/m2 で転写付着させ、その後、シーム溶接を行う薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法である。
【0023】
第2の発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法であって、ロール円周面に算術平均粗さRa: 0.5〜 2.5μm の表面粗さを有するロールの円周面に金属錫を摺動、付着させ、該ロール(:該ロールの円周面)で前記鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を付着量:0.010 〜0.7g/m2 で転写付着させ、その後、シーム溶接を行う薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法である。
【0024】
前記した第1の発明、第2の発明においては、前記したロールの円周面に金属錫を付着させる方法もしくはロールの円周面に金属錫を摺動、付着させる方法が、金属錫円盤を回転数:10〜3000回転/分で回転させながら該金属錫円盤の円周面をロールの円周面に摺動せしめる方法であることが好ましい。
また、前記した第1の発明、第2の発明においては、前記したロールの円周面に金属錫を付着させる方法もしくはロールの円周面に金属錫を摺動、付着させる方法が、金属錫を、振動数:10〜400Hz で振動させながらロールの円周面に摺動せしめる方法であることが好ましい。
【0025】
ここで、シーム溶接における鋼板表面の溶接部となる部分とは、▲1▼重ねシーム溶接部の鋼板同士が直接接合する部分である2面の内の両面または片面、もしくは▲2▼重ねシーム溶接部の内、上下電極に接する部分である2面の内の両面または片面、もしくは▲3▼重ねシーム溶接部の鋼板同士が直接接合する部分である2面および上下電極に接する部分である2面の4面である。
【0026】
以下、本発明におけるI.ロール円周面への金属錫の付着、II. 薄クロムめっき鋼板、III.薄クロムめっき鋼板溶接部への金属錫の付着の順に説明する。
〔I.ロール円周面への金属錫の付着:〕
本発明においては、ロールの円周面(以下、ロール円周面とも記す)に金属錫を付着させ、該ロールで薄クロムめっき鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を転写付着する。
【0027】
本発明によれば、ロール円周面に金属錫を付着したロールで溶接部を圧下するため、鋼板の「耳伸び」、「反り」といった形状不良を矯正でき、また「刃返り」も潰して平坦化でき、この結果、ロール円周面上に付着した金属錫を薄クロムめっき鋼板の溶接部に均一かつ安定して転写付着することができる。
本発明におけるロール円周面への金属錫の付着方法としては、ロールとしてロール円周面に表面粗さである粗度を有するロールを用い、金属錫とロール円周面との間で機械的エネルギーにより摩擦を起こさせる方法、さらに具体的には金属錫とロール円周面とを擦り合わせる方法、すなわちロール円周面に金属錫を摺動せしめ金属錫を付着させる方法を用いることが好ましい。
【0028】
なお、ロールの円周面は機械加工で精度良く仕上げられるので、ロール円周面と金属錫の接触は常に一定に保ことができ、ロール円周面上への金属錫の摺動による付着は極めて安定かつ均一となる。
本発明においては、ロール円周面の表面粗さを、算術平均粗さRaで 0.5〜 2.5μm とすることが好ましい。
【0029】
ロール円周面の表面粗さである算術平均粗さRaが 0.5μm 未満の場合は、摺動させる金属錫がロール円周面上で滑ってしまい、必要量の金属錫が付着できず、逆に算術平均粗さRaが 2.5μm を超える場合は、金属錫が必要付着量を超えて過剰に削り取られ金属錫の過剰消費を招き好ましくない。
なお、ロール円周面に粗度すなわち凹凸を付与する方法としては特に制限を受けるものではなく、例えばヤスリでの研磨、放電ダル加工、レーザーダル加工、ショットダル加工などの方法を用いることができる。
【0030】
前記したロール円周面と金属錫との相互摺動方法としては特に制限を受けるものではないが、下記(1) 、(2) の方法を用いることが特に好ましい。
(1) 回転金属錫円盤の押圧・摺動法:
本発明においては、ロール円周面と金属錫との相互摺動方法として、金属錫の円盤(以下、金属錫円盤と記す)を回転させながら好ましくは回転するロール円周面に押圧、摺動せしめる方法を用いることが好ましい。
【0031】
この場合、金属錫円盤を、好ましくはロール円周面の回転方向とは逆向きに、回転数:10〜3000回転/分で回転させながらロール円周面に押圧、摺動せしめることが好ましい。
摺動せしめる際の押し付け圧力は、0.98〜98MPa (:0.1 〜10kgf/mm2 )が好ましい。
【0032】
これは、押し付け圧力を上記範囲内で調整することによって、ロール円周面の金属錫の付着量が好適範囲内となるように制御できるためである。
上記した回転金属錫円盤の押圧・摺動法によるロール円周面への金属錫の付着方法によれば、ロール円周面へ安定して必要量の金属錫を付着でき、該ロールで薄クロムめっき鋼板の溶接部に金属錫を確実に転写付着できる。
【0033】
この結果、後記する実施例に示すように、安定して優れた溶接性を得ることができる。
(2) 振動金属錫の押圧・摺動法:
本発明においては、ロール円周面と金属錫との他の相互摺動方法として、金属錫を振動させながらロール円周面に押圧、摺動せしめる方法を用いることが好ましい。
【0034】
この場合、金属錫を、振動数:10〜400Hz で振動させながらロール円周面に押圧、摺動せしめることが好ましい。
摺動せしめる際の押し付け圧力は、0.98〜98MPa (:0.1 〜10kgf/mm2 )が好ましい。
これは、押し付け圧力を上記範囲内で調整することによって、ロール円周面の金属錫の付着量が好適範囲内となるように制御できるためである。
【0035】
上記した振動金属錫の押圧・摺動法によるロール円周面への金属錫の付着方法によれば、ロール円周面へ安定して必要量の金属錫を付着でき、該ロールで薄クロムめっき鋼板の溶接部に金属錫を確実に転写付着できる。
この結果、後記する実施例に示すように、安定して優れた溶接性を得ることができる。
【0036】
なお、本発明においては、前記したロールとして、ビッカース硬さ(Hv)が錫(:金属錫)より硬い材質から成るロールを用いることが好ましい。
これは、ロール円周部(:ロール円周面)が錫の硬さ以下の硬さ(Hv)の材質から成るロールを用いた場合、ロール円周面が薄クロムめっき鋼板の切板の刃返り部などによって傷つき、ロール円周面の表面形状が不均一となり、薄クロムめっき鋼板溶接部における金属錫の付着が不均一となり、安定して優れた溶接性を得ることが困難となるためである。
【0037】
〔II. 薄クロムめっき鋼板:〕
本発明における薄クロムめっき鋼板としては、鋼板の両面に、金属クロムの付着量が30〜150mg/m2の金属クロム層を有し、その上に、クロム酸化物の付着量が金属クロム換算で3〜30mg/m2 のクロム酸化物層を有する鋼板が好ましい。
金属クロムの付着量が30mg/m2 未満の場合、耐食性が不十分で錆を発生し易く、逆に150mg/m2を超える場合、耐食性は十分であるが、必要量以上の金属クロムの付着は経済性の面から問題であるばかりでなく、薄クロムめっき鋼板の生産性が低下するため好ましくない。
【0038】
また、クロム酸化物の付着量が金属クロム換算で3mg/m2 未満の場合、耐食性、塗料密着性が不十分となり、逆に30mg/m2 を超える場合、鋼板表面に干渉色が生じ外観が悪くなるだけでなく、酸化クロムなどのクロム酸化物が高電気抵抗物質であるため金属錫を付着させても溶接性が向上しなくなる。
より好ましくは、金属クロムの付着量は50〜120mg/m2、クロム酸化物の付着量は金属クロム換算で5〜20mg/m2 、さらに好ましくは、金属クロムの付着量は70〜110mg/m2、クロム酸化物の付着量は金属クロム換算で8〜18mg/m2 である。
【0039】
なお、前記した金属クロムの付着量およびクロム酸化物の付着量とは、それぞれ、金属クロム付着単位面積当たりの金属クロムの付着量およびクロム酸化物付着単位面積当たりのクロム酸化物の付着量(金属クロム換算値)を示す。
〔III.薄クロムめっき鋼板溶接部への金属錫の付着:〕
本発明における薄クロムめっき鋼板への金属錫の付着は、例えば溶接缶胴サイズに切り出した薄クロムめっき鋼板の溶接部にのみ行えば良く、前記したように、▲1▼重ねシーム溶接部の鋼板同士が直接接合する部分である2面の内の両面または片面、もしくは▲2▼重ねシーム溶接部の内、上下電極に接する部分である2面の内の両面または片面、もしくは▲3▼重ねシーム溶接部の鋼板同士が直接接合する部分である2面および上下電極に接する部分である2面の4面に対して行う。
【0040】
また、薄クロムめっき鋼板溶接部への金属錫の付着は、溶接前であればいつでもよく、特に制限されるものではないが、溶接機直前か、あるいは必要に応じて塗装・印刷した後、溶接機までコンベアなどで搬送している時でもよく、今まで研削機を用いていた製造ラインであれば研削機を取り外した場所で付着せしめるのが好都合である。
【0041】
本発明においては、ロール円周面に金属錫が付着したロールを回転させながらロール(:ロール円周面)で薄クロムめっき鋼板溶接部を圧下することが好ましい。
この場合、下記(1) 〜(3) のいずれかの方法で薄クロムめっき鋼板溶接部へ金属錫を付着することが好ましい。
【0042】
(1) 後記する図1に示すように、薄クロムめっき鋼板を移動させながら回転ロールを圧下し、ロール円周面に付着した錫を薄クロムめっき鋼板溶接部に転写付着させる。
(2) 回転ロールを移動させながら回転ロールを圧下し、ロール円周面に付着した錫を薄クロムめっき鋼板溶接部に転写付着させる。
【0043】
(3) 薄クロムめっき鋼板を移動させながらかつ回転ロールも移動させながら回転ロールを圧下し、ロール円周面に付着した錫を薄クロムめっき鋼板溶接部に転写付着させる。
なお、上記(3) の場合は、薄クロムめっき鋼板の移動方向と回転ロールの移動方向は相互に逆向きとすることが好ましい。
【0044】
本発明においては、薄クロムめっき鋼板溶接部への金属錫の付着量を、溶接部の金属錫付着面における金属錫付着単位面積当たり 0.010〜 0.7g/m2と規定する。
上記した金属錫の付着量が 0.010g/m2未満の場合は、溶接性の向上効果が不十分であり、逆に 0.7g/m2を超える場合は、溶接性向上効果は十分であるが、必要量以上の金属錫の付着は経済性の面から問題となる。
【0045】
さらに、上記した薄クロムめっき鋼板溶接部への金属錫の付着量は、0.05〜0.55g/m2であることがより好ましい。
以上、本発明について述べたが、本発明の電気抵抗シーム溶接方法によれば、下記(1) 、(2) の優れた効果が得られる共に、安定して優れた溶接性が得られる電気抵抗シーム溶接方法を提供することが可能となった。
【0046】
(1) 薄クロムめっき鋼板を無研削で溶接できるため、環境・衛生上の問題および耐食性低下の問題を解決できる。
(2) 薄クロムめっき鋼板自体に特殊処理を施すことが不要となり、薄クロムめっき鋼板を缶胴に使うか、缶蓋に使うか、自由な使い方ができ、また従来の色調差による問題を生じることがない。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに具体的に説明する。
冷延鋼板(板幅:1500mm)を、Cr6+および硫酸を含有する水溶液中で陰極処理し、鋼板の両面に金属クロム層とその上層としてのクロム酸化物層を有する表1に示す3種類(A,B,C)の薄クロムめっき鋼板(鋼帯)を製造した。
【0048】
次に、コイルに巻き取った薄クロムめっき鋼板(鋼帯)から大板を切り出し、大板から缶胴サイズの試験片を切り出した。
次に、得られた薄クロムめっき鋼板の各試験片について、図1に示す錫付着方法および表2に示す錫付着条件で金属錫を付着した(実施例1〜9、比較例1〜3)。
【0049】
なお、図1において、f1はロールの回転方向、f2は金属錫円盤の回転方向、f3は薄クロムめっき鋼板(試験片)の移動方向、f4は錫板の振動方向を示す。
金属錫の付着箇所は、図2に示す重ねシーム溶接部の電極面(2面)もしくは接合面(2面)もしくは電極面および接合面(4面)とした。
次に、溶接部に金属錫を付着した薄クロムめっき鋼板の試験片(実施例1〜9、比較例1〜3)および溶接部に金属錫を付着しない薄クロムめっき鋼板の試験片(比較例4)を、表3に示す溶接条件で重ね電気抵抗シーム溶接し、十分な溶接強度を有しかつ溶接チリがない溶接一次電流範囲(適正溶接電流範囲)を求め、溶接性を評価した。
【0050】
表4に、得られた溶接性評価結果を試験条件と併せて示す。
表4に示されるように、本発明の溶接方法(実施例1〜9)は優れた溶接性を有すると共に、安定した溶接性を有することが分かった。
以上、実施例について述べたが、本発明によれば、薄クロムめっき鋼板の切板に対して安定して優れた溶接性を得ることが可能となった。
【0051】
【表1】
Figure 0003680737
【0052】
【表2】
Figure 0003680737
【0053】
【表3】
Figure 0003680737
【0054】
【表4】
Figure 0003680737
【0055】
【発明の効果】
本発明のシーム溶接(電気抵抗シーム溶接)方法によれば、下記(1) 、(2) の優れた効果が得られる共に、安定して優れた溶接性が得られる電気抵抗シーム溶接方法を提供することが可能となった。
(1) 薄クロムめっき鋼板を無研削で溶接できるため、環境・衛生上の問題および耐食性低下の問題を解決できる。
【0056】
(2) 薄クロムめっき鋼板自体に特殊処理を施すことが不要となり、薄クロムめっき鋼板を缶胴に使うか、缶蓋に使うか、自由な使い方ができ、また従来の色調差による問題を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる薄クロムめっき鋼板溶接部への金属錫の付着方法を示す説明図である。
【図2】薄クロムめっき鋼板溶接部の金属錫の付着位置を示す説明図である。
【図3】切り出された鋼板の形状を示す説明図であり、耳伸び(a) 、反り(b) 、刃返り(c) を示す。
【符号の説明】
A 耳伸び
B 反り
C 刃返り
f1 ロールの回転方向
f2 金属錫円盤の回転方向
f3 薄クロムめっき鋼板(試験片)の移動方向
f4 錫板の振動方向

Claims (4)

  1. 鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法であって、ロールの円周面に金属錫を付着させ、該ロールで前記鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を付着量:0.010 〜0.7g/m2 で転写付着させ、その後、シーム溶接を行うことを特徴とする薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
  2. 鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法であって、ロール円周面に算術平均粗さRa: 0.5〜 2.5μm の表面粗さを有するロールの円周面に金属錫を摺動、付着させ、該ロールで前記鋼板の溶接部となる部分を圧下し、該溶接部に金属錫を付着量:0.010 〜0.7g/m2 で転写付着させ、その後、シーム溶接を行うことを特徴とする薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
  3. 前記したロールの円周面に金属錫を付着もしくは摺動、付着させる方法が、金属錫円盤を回転数:10〜3000回転/分で回転させながら該金属錫円盤の円周面をロールの円周面に摺動せしめる方法であることを特徴とする請求項1または2記載の薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
  4. 前記したロールの円周面に金属錫を付着もしくは摺動、付着させる方法が、金属錫を、振動数:10〜400Hz で振動させながらロールの円周面に摺動せしめる方法であることを特徴とする請求項1または2記載の薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
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