JP3667500B2 - 薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法および薄クロムめっき鋼板 - Google Patents
薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法および薄クロムめっき鋼板 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法および薄クロムめっき鋼板に関し、特に、溶接に際して生じる研削粉による環境汚染がなく、かつ高い生産性で溶接缶を製造することが可能な薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法および薄クロムめっき鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、ティンフリースチールと呼ばれる、鋼板に金属クロムおよびクロム酸化物をめっきした薄クロムめっき鋼板は、飲料缶、食缶、18L缶やペール缶用に広く用いられている。
この薄クロムめっき鋼板を缶胴として用いる場合、缶胴に成形する方法として、絞り加工による一体成形法や丸めた後接着するか溶接する接合法が一般的に用いられている。
【0003】
缶胴成形法の内、溶接による方法の場合、表面の酸化クロムなどクロム酸化物が高電気抵抗物質であるため、薄クロムめっき鋼板をそのまま溶接することが困難であり、溶接する部分のみを研削してクロムめっき層の大部分を除去することが一般的に行われている。
しかしこの方法ではCrの研削粉が飛散するため環境上問題があり、また飛散する研削粉を吸引除去しようとしても缶内に残存してしまう可能性があるため、環境上および衛生上問題があり、研削を行わずに薄クロムめっき鋼板を溶接することが要求されている。
【0004】
また、研削法の場合、溶接性を安定させるために溶接部分の面積以上の面積を研削することが多く、このため溶接部周辺に研削部すなわちクロムめっきが削り取られて地鉄がむき出しになる部分ができてしまい、この部分が腐食し易いために錆が発生する問題がある。
薄クロムめっき鋼板の溶接性を改善し、研削を不要とする技術として、薄クロムめっき鋼板のめっき量を減らす方法が特開昭61−213398号公報に開示されているが、この方法では溶接性が安定せず、また溶接機によるバラツキも大きく実用上十分満足できるものではない。
【0005】
また、薄クロムめっき鋼板の金属クロムに微細な突起や粒状の形態を与えて接触抵抗を減らし、溶接性を改善する方法が特公昭63−26200 号公報に開示されているが、この方法の場合、突起や粒状の形態を巧く制御することでかなり溶接性は改善されるが、この突起や粒状の形態のため鋼板の色調が暗くまた指紋がつき易いことから缶使用者には受け入れられていない。
【0006】
薄クロムめっき鋼板の溶接性を改善する他の方法として、金属クロムと酸化クロムの間に金属Snめっき層を設ける方法が特公昭63−35718 号公報に開示されている。
この方法によれば、金属Snは融点が232 ℃と低いため、溶接時に速やかに溶融し、接合面を濡らして接触抵抗を安定して低くできるので良い溶接性が得られる。
【0007】
しかし、溶接部を含む全面にSnをめっきするため、コストが高く、またSnにより色調が白くなるため缶使用者には受け入れられにくい問題がある。
また、特公平6−96790 号公報には、予め金属Snを粒状散在めっきし、その上に薄クロムめっきする方法が開示されているが、この方法でも金属Snにより溶接性は改善されるが、溶接部を含む全面に金属Snをめっきするため、コストが高く、かつ色調も白っぽくなる問題がある。
【0008】
金属Snを溶接部分にのみストライプ状にめっきし、該めっき層の上および鋼帯全面に金属クロム層およびクロム酸化物層を生成せしめた缶用メッキ鋼板が、特開昭61−213395号公報に開示されており、この鋼板は、広幅の鋼板において缶胴にするときに溶接部になる部位毎に数本のストライプ状にめっきするものである。
【0009】
この鋼板の場合、めっき後に缶胴サイズに切り出すが、通常溶接部の幅が1mm程度であるため、めっき位置精度の制御が難しく、きちんとめっき位置と溶接部の位置を合わせるのが非常に困難である。
また、このストライプ状Snめっき鋼板は、溶接缶胴用にしか使えず、缶蓋などに転用することができない。
【0010】
さらに、特開昭62−274091号公報にはCrまたはCr合金めっきによる熱拡散層を形成し、この熱拡散層の上に0.15〜1.0mg/m2のSnめっき層を形成する方法が開示されている。
しかしこの方法の場合、Crを熱拡散し、かつ優れた鋼品質を得るための焼鈍条件が非常に狭く、また、従来の湿式の電気めっきによって全面に金属Snをめっきするため、コストが高いという問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、従来の技術では、薄クロムめっき鋼板を無研削で溶接缶胴とするためには種々の問題があり、薄クロムめっき鋼板を用いて近年要求されているクリーンな溶接缶を製造することが困難である。
本発明は、これらの問題点を解決し、無研削かつ生産性に優れた方法で薄クロムめっき鋼板をシーム溶接することが可能な、薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法および薄クロムめっき鋼板を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上にクロム酸化物層とを有する薄クロムめっき鋼板の電気抵抗シーム溶接方法において、該シーム溶接前に、溶接部の両接合面および/または電極に接する両面に、金属錫を摺動せしめ、金属錫付着単位面積当たり0.01〜0.7g/m2 の金属錫を付着せしめることを特徴とする薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法である。
【0013】
また、前記第1の発明においては、前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、薄クロムめっき鋼板に対して相対速度0.1 〜100m/分、加圧力0.1 〜100kgf/mm2の条件下で、薄クロムめっき鋼板に押圧、摺動せしめる方法であることが好ましい。
【0014】
また、前記第1の発明においては、前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、回転数1〜3000回転/分の条件下で回転させながら薄クロムめっき鋼板に押圧、摺動せしめる方法であることが好ましい。
また、前記第1の発明においては、前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、振動数1〜100000Hzの条件下で振動させながら薄クロムめっき鋼板に押圧、摺動せしめる方法であることが好ましい。
【0015】
また、前記第1の発明においては、前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、回転数1〜3000回転/分の条件下で回転し、かつ振動数1〜100000Hzの条件下で振動させながら薄クロムめっき鋼板に押圧、摺動せしめる方法であることが好ましい。
さらに、前記第1の発明においては、前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、該金属錫の温度が5℃以上、232 ℃未満の温度条件下で薄クロムめっき鋼板に押圧、摺動せしめる方法であることが好ましい。
【0016】
第2の発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上にクロム酸化物層とを有し、さらにその上層として、金属錫と前記クロム酸化物層との摺動によって形成された金属錫付着単位面積当たりの付着量が0.01〜0.7g/m2 の線状もしくは帯状の金属錫層を有することを特徴とする薄クロムめっき鋼板である。
前記第1の発明のシーム溶接方法は、重ねシーム溶接に、より好ましく適用され、また、第2の発明の薄クロムめっき鋼板は、重ねシーム溶接に供される鋼板としてより好適に用いられる。
【0017】
なお、前記第1の発明、第2の発明において、クロム酸化物とは、酸化クロムとクロム水和酸化物の両者を示し、後述のクロム酸化物の付着量とは、酸化クロムとクロム水和酸化物の合計付着量を示す。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層とを有する薄クロムめっき鋼板の電気抵抗シーム溶接方法において、該シーム溶接前に、予め、溶接部の両接合面および電極に接する両面の4面、または電極に接する両面のみ、または両接合面のみに金属錫を摺動せしめて付着せしめる薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法である。
【0019】
ここで、溶接部の両接合面とは、重ねシーム溶接部の鋼板同志が直接接合する部分の2面である。
また、電極に接する両面とは、重ねシーム溶接部のうち、上下電極に接する部分の2面である。
また、本発明は、溶接前に、薄クロムめっき鋼板の上から、溶接部となる部分にのみ金属錫を摺動せしめて機械的に付着せしめることによって、薄クロムめっき鋼板の溶接性を改善するものである。
【0020】
さらに、本発明は、鋼板表面に、金属クロム層と、該金属クロム層の上に形成されたクロム酸化物層とを有し、さらにその上層として、金属錫と前記クロム酸化物層との摺動によって形成された線状もしくは帯状の金属錫層を有する薄クロムめっき鋼板である。
なお、前述の本発明のシーム溶接方法は、重ねシーム溶接に、より好ましく適用され、また、前記した本発明の薄クロムめっき鋼板は、重ねシーム溶接に供される鋼板としてより好適に用いられる。
【0021】
本発明によれば、薄クロムめっき鋼板を、無研削で溶接し、溶接缶胴を製造することが可能となった。
本発明によれば、薄クロムめっき鋼板の大板を溶接缶胴サイズに切り出した後、必要に応じて塗装・印刷した後、溶接前に、溶接部となる部分にのみ金属錫を摺動せしめて付着せしめることにより優れた溶接性が得られる。
【0022】
金属錫を付着せしめるのは、溶接前であればいつでもよく、制限はされるものではないが、溶接機直前か、あるいは塗装・印刷した後、溶接機までコンベアなどで搬送している時でよく、今まで研削機を使っていた製造ラインであれば研削機を取り外した場所で付着せしめるのが最も好都合である。
本発明によれば、従来の薄クロムめっき鋼板をそのまま使用できる利点があり、このため薄クロムめっき鋼板を缶胴に使うか、缶蓋に使うか、今までどおりの自由な使い方ができる。
【0023】
さらには、本発明によれば、前記した従来技術の色調差による問題を生じることがない。
本発明における金属錫を付着せしめる手段としては、金属錫を、薄クロムめっき鋼板の溶接部に押圧、摺動せしめ、金属錫と薄クロムめっき鋼板表面のクロム酸化物層との間で機械的エネルギーにより摩擦を起こさせ、この摩擦により金属錫を鋼板上に凝着させる方法が用いられる。
【0024】
本発明者らは、上記した本発明の方法によって、従来使われている薄クロムめっき鋼板に金属錫を直接付着でき、良好な溶接性が得られることを新規に見出し、本発明に至ったものである。
本発明における薄クロムめっき鋼板の溶接部に対する金属錫の押圧、摺動による金属錫の付着法は、金属錫の付着箇所やその幅を制御することが容易であり、かつ従来の電気錫めっきのような種々の工業薬品を使っためっき液を使用しないため、廃液の問題がなく環境に優しく、また金属錫付着設備も比較的コンパクトにできる利点がある。
【0025】
本発明では、金属錫は、主に最表面にクロム酸化物層を有する鋼板の表面粗さである凹凸の凸部に凝着するものであり、金属錫と鋼板が擦り合わさった面全体に金属錫が均一に付着しているものではない。
この結果、溶接時に、先ず金属錫が付着している凸部が接触し通電が起こるが、金属錫は柔らかくかつ融点が低いため、金属錫の溶融によって接触面積が広がり、溶接開始初期の抵抗が低下し、このことが溶接性を改善する効果をもたらす。
【0026】
また、凸部に付着した金属錫は、通電により温度が上がって溶融すると凸部から凹部へと広がり、溶接部全体の抵抗を安定化させるため優れた溶接性が得られる。
本発明における薄クロムめっき鋼板は、鋼板上の片面または両面に、金属クロム被覆単位面積当たりの金属クロムの付着量が30〜150mg/m2の金属クロム層を有し、その上に、クロム酸化物被覆単位面積当たりのクロム酸化物の付着量が金属クロム換算で3〜30mg/m2 のクロム酸化物層を有すものが好ましい。
【0027】
金属クロムの付着量が30mg/m2 未満の場合、耐食性が不十分で錆を発生し易く、逆に150mg/m2超えの場合、耐食性は十分であるが、必要以上の量の金属クロムの付着は経済性の面から問題であるばかりでなく、薄クロムめっき鋼板の生産性が低下する。
クロム酸化物の付着量が金属クロム換算で3mg/m2 未満の場合、耐食性、塗料密着性が不十分であり、逆に30mg/m2 超えの場合、鋼板表面に干渉色が生じ外観が悪くなるだけでなく、酸化クロムなどのクロム酸化物が高電気抵抗物質であるため金属錫を付着させても溶接性が向上しなくなる。
【0028】
より好ましくは、金属クロム被覆単位面積当たりの金属クロムの付着量は50〜120mg/m2、クロム酸化物被覆単位面積当たりのクロム酸化物の付着量は金属クロム換算で5〜20mg/m2 、さらに好ましくは、金属クロムの付着量は70〜110mg/m2、クロム酸化物の付着量は金属クロム換算で8〜18mg/m2 である。
本発明における溶接部への金属錫の付着は、溶接部の両接合面および電極に接する両面の4面、または電極に接する両面、または両接合面に対して行う。
【0029】
金属錫の付着量は、鋼板表面への金属の付着量を鋼板表面凸部における付着金属の個数で表すのは鋼板の分野では一般的でないので、本発明においては、従来用いられている単位面積当たりの付着量で規定した。
すなわち、本発明においては、金属錫の付着量を、溶接部の付着面における金属錫付着単位面積当たり0.01〜0.7g/m2 と規定した。
【0030】
なお、上記付着量は、溶接部の金属錫が付着する面における金属錫付着単位面積当たりの付着量を示す。
金属錫の付着量が0.01g/m2未満の場合、溶接性の向上が不十分であり、逆に0.7g/m2 超えの場合、溶接性向上効果は十分であるが、必要以上の量の金属錫の付着は経済性の面から問題となる。
【0031】
より好ましい金属錫の付着量は、溶接部の金属錫付着面における金属錫付着単位面積当たり0.05〜0.55g/m2である。
金属錫の付着は、缶胴サイズに切り出された薄クロムめっき鋼板の溶接部にのみ行えばよく、シーム溶接前に、溶接部の両接合面および電極に接する両面の4面、または電極に接する両面、または両接合面に金属錫を付着せしめればよい。
【0032】
金属錫付着の幅は、特に限定しないが、溶接部の幅と同じかそれ以上であればよい。
金属錫付着の幅が広すぎると不経済であるので、金属錫付着の幅は、0.4 〜4mm幅が好ましい。
金属錫を付着せしめる方法は、薄クロムめっき鋼板と金属錫を擦(こす)り合わせる方法を用いればよく、金属錫と薄クロムめっき鋼板を、相対速度0.1 〜100m/分、加圧力0.1 〜100kgf/mm2の条件下で相互に押し付けながら摺動させる方法を用いることが好ましい。
【0033】
通常、溶接缶製造設備においては、板を積んだパイラーから溶接機まで1枚ずつコンベヤなどで移送しているので、金属錫の付着は、この移送時に行うことができる。
この他、板を固定しておき金属錫を移動させてもよい。
摺動させる速度は、前記したように相対速度で0.1 〜100m/分とすることが好ましい。
【0034】
相対速度が0.1m/分未満の場合、擦り合う際に生じる摩擦エネルギーが小さく、必要量の金属錫を均一に付着することが困難で、逆に相対速度が100m/分超えの場合、スリップが生じ、同じく、必要量の金属錫を均一に付着することが困難となる。
より好ましくは、相対速度は1〜70m /分である。
【0035】
金属錫を付着せしめる際の加圧力は、0.1 〜100kgf/mm2が好ましい。
加圧力が0.1kgf/mm2未満の場合、必要量の金属錫の付着を行うことが困難で、逆に100kgf/mm2超えの場合、相対的に移動させる際に強大な力が必要になるばかりでなく、押し付け圧力により板が変形するので好ましくない。
より望ましくは、加圧力は0.5 〜75kgf/mm2 である。
【0036】
金属錫の摺動付着に用いる金属錫の形状は、Sn付着幅が溶接部の幅以上になればよく、丸棒状、帯状、円板状あるいは板状のものなど特に限定するものではない。
金属錫を付着せしめるには、金属錫と薄クロムめっき鋼板を相互に押し付けながら相対的に移動させて摩擦させればよいが、この時、金属錫を回転させ、回転による摩擦を加えることでより効率よく錫を付着させることができる。
【0037】
この場合、金属錫の摺動付着に用いる金属錫の形状は、丸棒状、帯状、円板状あるいは板状の形態を用いればよく、回転数1〜3000回転/分で回転させながら擦(こす)りつければよい。
回転数が1回転/分未満の場合、回転による摩擦増加効果が得られず、逆に3000回転/分超えの場合、スリップし、同様に回転による摩擦増加効果が得られない。
【0038】
より好ましくは、回転数は5〜2500回転/分であり、さらに好ましくは10〜2000回転/分である。
本発明においては、金属錫の摺動付着の方法として、回転以外にも、振動によって摩擦を加え金属錫を付着せしめることができる。
この場合、金属錫の摺動付着に用いる金属錫の形状は、丸棒状、帯状、円板状あるいは板状の形態を用いればよい。
【0039】
上記した振動によって摩擦を加え金属錫を付着せしめる方法は、金属錫の形状に影響されにくい利点がある。
振動を用いる場合、振動数は1〜100000Hzが好ましい。
1Hz未満の場合、振動による摩擦増加効果が得られず、逆に100000Hz超えの場合、スリップし、同様に振動による摩擦増加効果が得られない。
【0040】
より好ましくは、振動数は10〜50000Hz である。
金属錫を付着せしめる際の金属錫の温度は、5℃以上、232 ℃未満とすることが望ましい。
金属錫の温度が5℃未満の場合、α→βへの変態が生じ、金属錫が脆くなって錫付着中に金属錫が破損するため好ましくない。
【0041】
逆に、金属錫の温度が金属錫の融点である232 ℃以上であると融解してしまい錫付着が不可能になるので、金属錫の温度は232 ℃未満とする必要がある。
一方、金属錫は温度が高いほど柔らかくなるので擦(こす)りつけ易くするため、金属錫の温度は高い方が望ましく、より好ましい金属錫の温度は10〜231 ℃であり、さらに好ましくは20〜150 ℃である。
【0042】
錫付着に使用する金属錫の純度は、純度99.9wt%以上が好ましい。
【0043】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
冷延鋼板を、Cr6+および硫酸を含有する水溶液中で陰極処理を行うことによって、鋼板の両面に金属クロム層とその上層としてのクロム酸化物層を有する表1に示す3種類(A,B,C)の薄クロムめっき鋼板を製造した。
【0044】
得られた薄クロムめっき鋼板を用いて、図1に示す重ねシーム溶接の溶接部の位置に、図2に示す錫付着方法で金属錫を付着せしめた。
次に、金属錫を付着せしめた薄クロムめっき鋼板を表2に示す溶接条件で重ねシーム溶接し、十分な溶接強度を有しかつ溶接チリがない溶接一次電流範囲(適正溶接電流範囲)を求め、溶接性を評価した。
【0045】
溶接性評価結果を、試験条件と併せて表3に示す。
表3に示されるように、本発明の溶接方法および薄クロムめっき鋼板は、優れた溶接性を有することが分かる。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】
【発明の効果】
本発明により、通常市販されている薄クロムめっき鋼板を研削することなく溶接できるので、缶製造業において、極めて工業的意義が大きい。
また、錫を付着せしめるのに工業薬品などを使用しないので廃液の発生などの問題がなく、環境に優しく、さらに、錫を必要な部分にのみ確実に付着し、溶接が可能となったため、省資源が達成でき、産業上大変優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶接部への金属錫付着位置を示す説明図である。
【図2】金属錫の付着方法を示す説明図である。
Claims (6)
- 鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上にクロム酸化物層を有する薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法において、該シーム溶接前に、溶接部の両接合面および/または電極に接する両面に、金属錫を摺動せしめ、金属錫付着単位面積当たり0.01〜0.7g/m2 の金属錫を付着せしめることを特徴とする薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
- 前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、薄クロムめっき鋼板に対して相対速度0.1 〜100m/分、加圧力0.1 〜100kgf/mm2の条件下で、薄クロムめっき鋼板に摺動せしめる方法であることを特徴とする請求項1記載の薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
- 前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、回転数1〜3000回転/分の条件下で回転させながら薄クロムめっき鋼板に摺動せしめる方法であることを特徴とする請求項1または2記載の薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
- 前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、振動数1〜100000Hzの条件下で振動させながら薄クロムめっき鋼板に摺動せしめる方法であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
- 前記金属錫を付着せしめる方法が、金属錫を、該金属錫の温度が5℃以上、232 ℃未満の温度条件下で薄クロムめっき鋼板に摺動せしめる方法であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の薄クロムめっき鋼板のシーム溶接方法。
- 鋼板表面に金属クロム層と、該金属クロム層の上にクロム酸化物層を有し、さらにその上層として、金属錫と前記クロム酸化物層との摺動によって形成された金属錫付着単位面積当たりの付着量が0.01〜0.7g/m2 の線状もしくは帯状の金属錫層を有することを特徴とする薄クロムめっき鋼板。
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JPS63262495A (ja) | 溶接性に優れた缶用鋼板 |
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