JP3680665B2 - 流体封入式防振装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、内部に封入された流体の共振作用等の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置に関するものであり、特に、負圧を利用することにより入力振動に応じて防振特性を変更することの出来る流体封入式防振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体乃至は防振支持体の一種として、実開昭61−190051号公報等に記載されているように、相互に離間配置された第一の取付金具と第二の取付金具を本体ゴム弾性体で連結せしめて、本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された主液室と、壁部の一部がゴム弾性板で構成されて非圧縮性流体が封入された副液室を形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を形成することにより、オリフィス通路を流動する流体の共振作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式防振装置が知られている。
【0003】
また、このような防振装置では、流体の共振作用に基づく防振効果が有効に発揮される周波数域が、オリフィス通路の狭いチューニング周波数域に限られてしまうことに対処して、より広い周波数域で有効な防振効果を得るために、ゴム弾性板を挟んで副液室と反対側に作用空気室を形成し、この作用空気室に及ぼされる空気圧を制御することによって防振特性を変更するようにしたものが、提案されている。具体的には、例えば、特許第2843088号公報や特開平4−277341号公報,実開平5−77642号公報,特開平3−157535号公報等に記載の防振装置が、それであり、例えば、内燃機関の吸気系に生ぜしめられる負圧を利用して防振特性を変更することが出来ることから、自動車用のエンジンマウント等への適用が検討されている。
【0004】
ところで、このように負圧を利用して防振特性を変更するようにした防振装置においては、作用空気室に及ぼされる負圧の大きさが変化すると防振特性も変化するおそれがあるために、防振しようとする振動に対応した大きさの負圧を、作用空気室に安定して供給することが重要となる。
【0005】
しかしながら、従来の防振装置では、内燃機関の吸気系等に生ぜしめられる負圧を、必要に応じて蓄圧器等を介して、作用空気室に対して直接的に供給する構造とされているに過ぎず、そのために、作用空気室に供給される負圧が、内燃機関の作動状態等によって変動し易く、目的とする防振特性を安定して得ることが難しいという問題があったのである。
【0006】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、作用空気室に対して負圧を安定して及ぼすことが出来、それによって、目的とする防振特性を有利に且つ安定して得ることの出来る、新規な構造の流体封入式防振装置を提供することにある。
【0007】
【解決手段】
そし、このような課題を解決するために、本発明の第一の態様は、相互に離間配置された第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結せしめて、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された主液室と、壁部の一部がゴム弾性板で構成されて非圧縮性流体が封入された副液室を形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を形成する一方、該ゴム弾性板を挟んで該副液室と反対側に作用空気室を形成して、該作用空気室に及ぼされる空気圧を制御することによって防振特性を変更可能とした流体封入式防振装置において、前記作用空気室を負圧源と大気に交互に切換接続する切換弁を、防振すべき振動の周波数と異なり且つ干渉しない周波数で切換作動せしめると共に、該切換弁の制御信号におけるデューティ比を防振すべき振動の周波数に応じて調節して、一周期中における作用空気室の負圧源への接続時間割合を変更することによって、該作用空気室に及ぼされる空気圧を調節して前記ゴム弾性板のばね定数を調節するようにしたことを、特徴とする。
【0008】
このような本態様に従う構造とされた防振装置においては、作用空気室を略一定の周期で負圧源と大気中に交互に接続せしめるに際して、一周期中で負圧源に接続する時間と大気中に接続する時間の割合(デューティ比)を調節することによって、作用空気室に及ぼされる負圧の大きさを調節することが出来る。具体的には、切換弁の一周期中での負圧源に接続する時間を短くする程小さな負圧が作用空気室に及ぼされる一方、切換弁の一周期中での負圧源に接続する時間を長くする程大きな負圧が作用空気室に及ぼされるのである。それ故、切換弁の制御信号を調節することによって、作用空気室に及ぼされる負圧の大きさを容易に調節することが可能となり、防振装置における防振特性を容易に変更することが可能となるのである。
【0009】
しかも、切換弁の切換周期が、防振すべき振動に干渉しない周波数に設定されることから、切換弁の切換作動によって作用空気室に圧力変動が生ぜしめられた場合でも、防振すべき振動との共振的な干渉が回避されることにより、良好なる防振性能が安定して維持され得る。
【0010】
なお、切換弁の切換作動に際して、防振すべき振動に干渉しない周波数に設定するためには、切換弁による大気中と負圧源への切換作動の周波数を、少なくとも防振すべき振動周波数と異なる値に設定する必要があり、より好ましくは両周波数が高調波成分でも同位相とならないように設定される。なお、その際、制御の容易性などの観点からは、切換弁による大気中と負圧源への切換作動の周波数を、防振すべき振動周波数にかかわらず略一定とすることが望ましいが、防振すべき振動周波数の変化に対応して変更設定しても良く、それによって、防振すべき振動に対する干渉を容易に回避することが可能となる。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記切換弁を、前記オリフィス通路がチューニングされた防振すべき振動周波数よりも小さな略一定の周期で切換作動せしめるようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、防振すべき振動に対する作用空気室の空気圧変動の共振的な干渉を回避しつつ、切換弁による大気中と負圧源への切換作動に基づく作用空気室に及ぼされる負圧の調節を、一層容易に行なうことが出来る。
【0012】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、防振すべき振動の周波数が大きくなる程、一周期中における作用空気室の負圧源への接続時間割合が次第に大きくなるように、前記切換弁の制御信号におけるデューティ比を、防振すべき振動に応じて連続的乃至は多段階に調節するようにしたことを、特徴とする。このような本態様においては、防振すべき振動の周波数が大きくなるに従って、作用空気室に及ぼされる負圧力(負圧力の絶対値)が大きくなるように調節されることとなり、それに伴って、作用空気室に及ぼされる負圧力によるゴム弾性板の作用空気室側への吸引に伴う膨出変形量が大きくされて該ゴム弾性板のばね定数、ひいては副液室の壁ばね剛性が大きくされることにより、オリフィス通路のチューニング周波数が、防振すべき振動周波数と同様、高周波側に移行せしめられることとなる。そして、その結果、オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて、防振すべき振動に対して有効な防振効果を得ることが出来るのである。
【0013】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記主液室などに封入された非圧縮性流体の流体圧を測定する圧力検出手段を設けると共に、該圧力検出手段によって検出された流体圧に基づいて、前記切換弁の制御信号におけるデューティ比を補正するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、封入流体の流体圧の検出値を参照信号として作用空気室の負圧の大きさをフィードバック制御することにより、例えば負圧源に圧力変動があるような場合でも、作用空気室に目的とする大きさの負圧力を安定して及ぼすことが出来るのであり、それによって、目的とする防振特性を安定して得ることが可能となる。
【0014】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記副液室と、該副液室を前記主液室に連通する前記オリフィス通路を、それぞれ複数設けると共に、それら複数のオリフィス通路に対して相互に異なるチューニングを施す一方、その少なくとも一つの副液室において、前記ゴム弾性板を挟んで該副液室と反対側に前記作用空気室を形成したことを、特徴とする。即ち、前記第一乃至第四の何れかの態様に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、互いに異なるチューニングが施された各オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づいて異なる周波数域の振動に対してそれぞれ有効な防振効果が発揮されると共に、作用空気室の負圧の大きさを調節してオリフィス通路のチューニング周波数を変更することにより、更に異なる周波数域の振動に対して有効な防振効果が発揮されるのであり、それ故、全体として、より一層広い周波数に亘って優れた防振効果を得ることが可能となるのである。
【0015】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかに記載の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記副液室として、第一ゴム弾性板で壁部の一部が構成されて小さな壁ばね剛性を有する第一副液室と、第二ゴム弾性板で壁部の一部が構成されて大きな壁ばね剛性を有する第二副液室を形成すると共に、前記オリフィス通路として、該第一副液室を前記主液室に連通する低周波数域にチューニングされた第一オリフィス通路と、該第二副液室を前記主液室に連通する高周波数域にチューニングされた第二オリフィス通路を形成し、更に、前記作用空気室として、該第一ゴム弾性板を挟んで該第一副液室と反対側に位置する第一作用空気室を形成せしめて、該第一作用空気室に及ぼされる負圧を振動周波数の大きさに従って調節するようにしたことを、特徴とする。
【0016】
このような本態様に従う構造とされた防振装置においては、第一作用空気室に負圧を及ぼすことにより第一副液室が減圧されて、その減圧状態が、第一オリフィス通路および第二オリフィス通路を通じて第二副液室にも及ぼされる結果、第二副液室の壁部を構成する第一ゴム弾性板が第二副液室側に吸引されて弾性変形せしめられる。また、第一作用空気室に及ぼされる負圧の大きさが、防振すべき振動周波数に応じて調節されることにより、防振すべき振動の周波数域に応じて、第一ゴム弾性板のばね剛性が変化せしめられると共に、副液室の容積が変化せしめられる。そして、第一作用空気室に及ぼされる負圧を大きくすると、ゴム弾性板のばね剛性の増大と副液室の容積減少が相俟って、第二オリフィス通路のチューニング周波数が高周波側に実質的に移行せしめられると共に、第二オリフィス通路を通じて流動せしめられる流体量が抑えられる。これにより、第二オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を、第二オリフィス通路の当初のチューニング周波数より高い周波数域においても有利に得ることが出来ると共に、それより更に高い周波数域における反共振的作用に起因する著しい高動ばね化が軽減乃至は回避されるのであり、その結果、より広い周波数域で良好なる防振性能を得ることが可能となるのである。
【0017】
また、本発明の第七の態様は、前記第六の態様に従う構造とされた流体封入式防振装置において、前記作用空気室として、前記第一作用空気室に加えて、前記第二ゴム弾性板を挟んで前記第二副液室と反対側に位置する第二作用空気室を形成せしめて、前記第一オリフィス通路のチューニング周波数から前記第二オリフィス通路のチューニング周波数に至る低周波数域の振動入力時には、該第一作用空気室に大気圧を及ぼしめると共に、該第二作用空気室に及ぼされる負圧を振動周波数の大きさに従って調節する一方、該第二オリフィス通路のチューニング周波数よりも高い中乃至高周波数域の振動入力時には、該第二作用空気室に大気圧を及ぼすと共に、該第一作用空気室に及ぼされる負圧を振動周波数の大きさに従って調節するようにしたことを、特徴とする。
【0018】
このような本態様に従う構造とされた防振装置においては、第二作用空気室に負圧を及ぼすことにより第二副液室が減圧される結果、該第二副液室の壁部を構成する第二ゴム弾性板が第二作用空気室側(第二副液室と反対側)に吸引されて弾性変形せしめられる。また、第一作用空気室に及ぼされる負圧の大きさが調節されることにより、第一ゴム弾性板のばね剛性が変化せしめられる。そして、第二作用空気室に及ぼされる負圧を大きくすると、第二ゴム弾性板のばね剛性が増大して、第二オリフィス通路のチューニング周波数が高周波側に実質的に移行せしめられるのであり、それにより、第二オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果を、第二オリフィス通路の当初のチューニング周波数より高い周波数域においても有利に得ることが出来る。特に、前述の如き第一作用空気室に及ぼされる負圧の大きさの調節と併せて、第二作用空気室に及ぼされる負圧を調節することにより、第二オリフィス通路を流動せしめられる流体の共振作用等に基づく防振装置の防振特性の設定自由度が大幅に増大されるのであり、その結果、より一層広い周波数域で良好なる防振性能を得ることが可能となるのである。
【0019】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0020】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウント10が示されている。このエンジンマウント10は、第一の取付金具12と第二の取付金具14が、互いに離間配置されていると共に、それらの間に介装されたゴム弾性体16によって弾性的に連結されており、第一の取付金具12が図示しないパワーユニットに取り付けられる一方、第二の取付金具14が図示しない自動車ボデーに取り付けられることにより、パワーユニットをボデーに対して防振支持せしめるようになっている。また、そのような装着状態下、かかるエンジンマウント10には、パワーユニットの分担荷重が及ぼされることにより、第一の取付金具12と第二の取付金具14が相互に接近する方向にゴム弾性体16が弾性変形せしめられると共に、それら第一の取付金具12と第二の取付金具14の接近/離隔方向に防振すべき主たる振動が入力されるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として図1中の上下方向を言うものとする。
【0021】
より詳細には、第一の取付部材としての第一の取付金具12は、略逆向きの裁頭円錐台形状を有する本体部分18を有していると共に、該本体部分18の大径側端面から軸方向上方に突出して一体形成されたロッド形状のボルト固定部20を備えており、このボルト固定部20には、上端面に開口して軸方向内方に延びるねじ穴22が形成されている。また、第一の取付金具12の軸方向中間部分には、径方向外方に向かって突出する円環板形状のストッパ部23が一体形成されている。そして、この第一の取付金具12は、ボルト固定部20のねじ穴22に螺入されるボルト(図示せず)によって、図示しない車両のパワーユニットに固定的に取り付けられるようになっている。
【0022】
一方、第二の取付部材としての第二の取付金具14は、上金具24と中金具26,下金具28が、互いに軸方向に重ね合わせられて相互にボルト固定されることによって形成されている。上金具24は、大径の略円筒形状を有しており、中金具26は、中央凹所30を備えた大径の略有底円筒形状を有しており、更に、下金具28は、中央凹所32を備えた大径の略有底円筒形状を有している。
【0023】
また、下金具28の中央凹所32には、変形容易な可撓性膜としての薄肉ゴム膜34が収容配置されている。この薄肉ゴム膜34は、略円形の袋形状を有しており、外周縁部には略L字形断面で周方向に延びる環状金具36の縦壁部が加硫接着されており、この環状金具36の横壁部が、中金具26と下金具28の筒壁部間で挟圧保持されることにより、薄肉ゴム膜34の外周部分が第二の取付金具14によって固定的に支持されている。これにより、中央凹所32の開口部が中金具26で流体密に覆蓋されることによって中金具26と下金具28の間に画成された内部領域が薄肉ゴム膜34によって流体密に二分されている。
【0024】
そして、薄肉ゴム膜34と中金具26の間には、壁部の一部が薄肉ゴム膜34で構成されて該薄肉ゴム膜34の変形に基づいて容積変化が容易に許容される平衡室38が形成されており、この平衡室38に対して、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。なお、本実施形態においては、かかる薄肉ゴム膜34によって、第一ゴム板が構成されていると共に、平衡室38によって第一副液室が構成されている。また、薄肉ゴム膜34と下金具28の間には、薄肉ゴム膜34の変形を許容する第一作用空気室としての第一空気室40が、外部空間に対する遮断状態で形成されている。更に、下金具28の底壁部には、第一空気室40に連通せしめられて底面中央から外方に向かって開口するポート部41が形成されており、このポート部41を通じて第一空気室40に外部から空気圧が及ぼされ得るようになっている。
【0025】
更にまた、中金具26の中央凹所30には、第二ゴム板としてのゴム板42と、オリフィス部材44が収容配置されている。ゴム板42は、略円板形状を有しており、少なくとも薄肉ゴム膜34よりも厚肉で、略一定の初期形状に復元し得る程度の弾性を発揮し得る肉厚寸法とされている。また、ゴム板42の外周面には金属リング46が加硫接着されており、この金属リング46が中央凹所30に圧入固定されることにより、ゴム板42が、中央凹所30の深さ方向中間部分で軸直角方向に広がって位置決め配置されている。一方、オリフィス部材44は、それぞれ略円板形状を有する底板金具48と蓋板金具50が軸方向に重ね合わせられることによって構成されている。底板金具48は、中央部分において軸方向上方に突出する円形突出部52を有しており、中央凹所30の開口部に圧入されて外周縁部がゴム板42の金属リング46に対して軸方向に重ね合わせられた状態で固定的に収容配置されている。これにより、円形突出部52の外周部分には、円形突出部52の外周面と凹所30の内周面の対向面間を周方向に延びる凹溝54が、上方に向かって開口して形成されている。また、蓋板金具50は円形平板形状を有しており、中板金具28における中央凹所30の開口部に重ね合わせられることにより、凹溝54の開口が流体密に覆蓋されている。
【0026】
そして、このようにゴム板42とオリフィス部材44が中金具26に組み込まれることにより、中央凹所30の内部において、ゴム板42を挟んだ上下両側に第二副液室としての副液室56と第二作用空気室としての第二空気室58が形成されている。副液室56は、ゴム板42とオリフィス部材44の間に形成されており、壁部の一部がゴム板42で構成されて該ゴム板42の弾性変形に基づいて容積変化が許容されるようになっていると共に、その内部に水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油等の非圧縮性流体が封入されている。また、第二空気室58は、ゴム板42と中央凹所30の底壁部の間に形成されて外部空間に対して遮断されており、ゴム板42の弾性変形を許容し得るようになっている。更に、中金具26の底壁部には、第二空気室58に連通せしめられて外周面から外方に向かって開口するポート部59が形成されており、このポート部59を通じて第二空気室58に外部から空気圧が及ぼされ得るようになっている。
【0027】
さらに、上述の如き構造とされた上,中,下の金具24,26,28が軸方向に一体的にボルト固定されて構成された第二の取付金具14は、第一の取付金具12に向かって上方に開口する状態で、第一の取付金具12に対して略同一中心軸上で離間して対向配置されている。そして、これら第一の取付金具12と第二の取付金具14の対向面間には、本体ゴム弾性体としてのゴム弾性体16が介装されており、ゴム弾性体16によって第一の取付金具12と第二の取付金具14が弾性的に連結されている。ゴム弾性体16は、全体として略円錐台形状を有しており、その小径側端面に第一の取付金具12が重ね合わせられて加硫接着されている一方、その大径側端部の外周面に第二の取付金具14(上金具24)が加硫接着されている。要するに、ゴム弾性体16は、第一の取付金具12と上金具24を有する一体加硫成形品として形成されているのである。
【0028】
なお、ゴム弾性体16には、大径側端面に開口する大径凹部60が形成されており、パワーユニット荷重が及ぼされた際の引張応力が軽減乃至は回避されるようになっている。また、第一の取付金具12におけるストッパ部23には、軸方向上方に向かって突出する緩衝ゴム62が、ゴム弾性体16と一体形成されており、ストッパ部23が、ボデー側に固設された図示しないストッパ部に対して緩衝ゴム62を介して緩衝的に当接することにより、リバウンド方向(第一の取付金具12と第二の取付金具14が相対的に離間する方向)でのゴム弾性体16の弾性変形量を制限するストッパ機能が発揮されるようになっている。
【0029】
そして、このように第一の取付金具12と第二の取付金具14がゴム弾性体16で弾性連結されることにより、これら両取付金具12,14の対向面間には、壁部の一部がゴム弾性体16で構成されて、両取付金具12,14間への振動入力時にゴム弾性体16の弾性変形に基づいて圧力変化が生ぜしめられる主液室64が画成されている。また、この主液室64には、平衡室38や副液室56と同様、所定の非圧縮性流体が封入されている。なお、これら主液室64や平衡室38,副液室56への非圧縮性流体の封入は、例えば、ゴム弾性体16の一体加硫成形品における上金具24に対する中金具26や下金具28の組み付けを非圧縮性流体中で行なうこと等によって、或いは、それらの組み付けを大気中で行なった後に適当な箇所に穿孔した注入用孔を通じて非圧縮性流体を中央した後にブラインドリベット等で封止すること等により、有利に行なわれ得る。
【0030】
また、中金具26の外周壁部には、圧力検出手段としての圧力センサ66が装着されており、主液室64の圧力を直接に検出するようになっている。なお、圧力センサ66としては、半導体式や圧電式,静電容量式等、従来から公知の各主の圧力センサが採用可能であり、例えば、図示されているように、中金具26の外周壁部に設けたねじ穴に流体密に螺着固定すること等によって有利に装着され得る。
【0031】
更にまた、第二の取付金具14を構成する中金具26には、その内部を貫通して延び、一端部が主液室64に開口連通せしめられると共に、他端部が平衡室38に開口連通せしめられた第一オリフィス通路80が形成されている。そして、振動入力時に主液室64と平衡室38の間に生ぜしめられる圧力差に基づいて、それら両室64,38間で第一オリフィス通路80を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっている。また、主液室64と副液室56を仕切るオリフィス部材44には、外周部分を周方向に延び、周上の異なる位置に設けられた二つの連通孔82,84によって主液室64と副液室56に開口,連通せしめられた第二オリフィス通路86が形成されている。そして、振動入力時に主液室64と副液室56の間に生ぜしめられる圧力差に基づいて、それら両室64,56間で第二オリフィス通路86を通じての流体流動が生ぜしめられるようになっている。
【0032】
そこにおいて、第一のオリフィス通路80のチューニング周波数よりも第二のオリフィス通路86のチューニング周波数の方が大きく設定されており、特に本実施形態では、第一空気室40と第二空気室58を大気中に連通せしめた状態下で発現される初期のチューニング特性として、第一オリフィス通路80にあっては、シェイク等の極低周波数域にチューニングされており、極低周波数域の振動に対して流体の共振作用に基づく有効な減衰効果が発揮されるようになっている。また、第二オリフィス通路86にあっては、アイドリング低次等の低周波数域にチューニングされており、低周波数域の振動に対して流体の共振作用に基づく有効な低動ばね効果(防振効果)が発揮されるようになっている。なお、第一及び第二のオリフィス通路80,86のチューニングは、例えば、主液室64や副液室56,平衡室38の各室の壁ばね剛性の大きさや封入流体の密度等を考慮して、各オリフィス通路80,86における通路長さと通路断面積の比の値を適当に調節することによって行なうことが可能である。なお、壁ばね剛性とは、各室の容積を単位量だけ変化させるに必要とされる室内圧力変化量に対応した値として認識され得る。また、オリフィス通路80,86のチューニング周波数は、一般に、流路長さ:Lと流路断面積:Aの比の値:A/Lが大きい程、流体の共振作用に基づく防振効果の発揮される周波数域が高周波となる。
【0033】
さらに、上述の如き構造とされたエンジンマウント10においては、第一空気室40に及ぼす負圧の大きさを制御する第一制御手段と、第二空気室58に及ぼす負圧の大きさを制御する第二制御手段を、備えている。これら第一の制御手段と第二の制御手段は、その多くの構成部分を共通して構成されており、負圧の蓄圧手段としてのサブタンク68と、該サブタンク68に及ぼされた負圧力を第一空気室40や第二空気室58に伝達せしめるエア管路70を含んで構成されている。また、サブタンク68は、切換バルブ72を介して、負圧源と大気中に択一的に接続されるようになっており、切換バルブ72の切換作動形態に応じて、サブタンク68に蓄えられる負圧力の大きさを調節することができるようになっている。なお、切換バルブ72としては、サブタンク68側のポートを、負圧側と大気側の二つのポートに高速で安定して切換作動するものが望ましく、例えば、制御が容易な電磁式の三方切換弁などが好適に採用される。
【0034】
そこにおいて、サブタンク68に蓄えられる負圧力の大きさの調節に際しては、例えば、負圧源からの負圧力の供給管路上に直動形やリリーフ形等の減圧弁乃至は調圧弁を配設し、比例電磁式等として調圧することも可能であるが、特に本実施形態では、高速で切換可能な電磁式の三方切換バルブからなる圧力調整弁72を採用し、その切換周波数を略一定とした上で、一周期:T中でサブタンク68を負圧源に接続せしめる時間的な割合、即ちデューティ比:t/Tを、圧力制御装置74で調節することによって、サブタンク68を通じて空気室40,58に及ぼされる負圧力が調節されるようになっている。より具体的には、図2(a),(b),(c)に示されているように、デューティ比:t/Tの値を小さく設定した場合には、単位時間内に第一空気室40や第二空気室58に及ぼされる負圧量が小さくされて、全体として小さな負圧力が及ぼされる一方、デューティ比:t/Tの値を大きく設定した場合には、単位時間内に第一空気室40や第二空気室58に及ぼされる負圧量が大きくされて、全体として大きな負圧力が及ぼされるのである。
【0035】
しかも、かかる圧力調整弁72における負圧源と大気中への切換周波数:f(=1/T)は、第一及び第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づいて防振すべき振動に対して干渉しないように設定されており、特に本実施形態では、第一及び第二のオリフィス通路を通じて流動せしめられる流体の共振作用に基づいてアイドリング低次振動から走行こもり音振動にまで至る20Hz〜100Hz程度の振動に対する防振効果を得ることが目的とされているのに対して、圧力調整弁72の切換周波数:fが、かかる防振すべき振動の周波数よりも低い周波数域(具体的には、20Hzに満たない周波数域)に設定されて、略一定の周波数(f)で切換作動せしめられるようになっている。
【0036】
また、サブタンク68を第一空気室40や第二空気室58に接続するエア管路70上には、通路切換バルブ76が配設されており、サブタンク68に蓄えられた負圧が、第一空気室40と第二空気室58に対して択一的に及ぼされるようになっている。特に、本実施形態では、電気信号によって切換制御が可能な電磁式の三方切換バルブからなる接続切換弁76が採用されており、切換制御装置78で接続切換弁76を切換制御することによって、サブタンクに蓄えられた負圧が、第一空気室40と第二空気室58に択一的に及ぼされるようになっている。
【0037】
そして、エンジンの回転数信号や自動車の速度信号,変速機のシフト信号等の自動車の走行状態信号が、圧力制御装置74や切換制御装置78に入力されて、自動車の走行状態に応じてそれら圧力制御装置74や切換制御装置78が切換制御されて、圧力制御装置74におけるデューティ比と、切換制御装置78による空気室40,58の大気乃至は負圧源への接続状態が設定,変更されることにより、第一空気室40と第二空気室58の圧力が制御されるようになっている。
【0038】
より具体的には、車両走行状態下では、圧力調整弁72を常時大気連通として、一旦、第一空気室40をサブタンク68を通じて大気に連通せしめた後に、接続切換弁76を切り換えて、第一空気室40を大気圧で遮断すると同時に第二空気室58をサブタンク68に接続すると共に、圧力調整弁72を適当なデューティ比で切換制御することにより、サブタンク68を介して、第二空気室58に負圧力を及ぼす。これにより、副液室56の壁ばね剛性が増大せしめられて容積変化量が抑えられ、第一オリフィス通路80を通じての流体流動量が十分に確保されることによって、第一オリフィス通路を通じて流動する流体の共振作用に基づいて、シェイク等の極低周波数域の振動に対して有効な防振効果(減衰効果)が発揮されることとなる。
【0039】
また、車両停止状態下でのアイドリング時には、圧力調整弁72を常時大気連通として、第一空気室40と第二空気室58の何れか一方を大気連通後に遮断せしめて大気圧に保持すると共に、それらの他方を大気連通状態に保持する。これにより、第一オリフィス通路80が反共振的作用による著しい流動抵抗の増大に起因して実質的に閉塞状態となる一方で、第二オリフィス通路86を通じて流動する流体の共振作用が生ぜしめられ、かかる流体の共振作用に基づいて、第二オリフィス通路86がチューニングされたアイドリング低次振動等の低周波数域の振動に対して有効な防振効果(絶縁効果)が発揮されることとなる。
【0040】
更にまた、車両の低〜中速走行時には、圧力調整弁72を常時大気連通として、一旦、第一空気室40をサブタンク68を通じて大気に連通せしめた後に、接続切換弁76を切り換えて、第一空気室40を大気圧で遮断すると同時に第二空気室58をサブタンク68に接続すると共に、圧力調整弁72を適当なデューティ比で切換制御することにより、サブタンク68を介して、第二空気室58に負圧力を及ぼす。そこにおいて、車両の走行速度やエンジン回転数等を指標として圧力調整弁72を制御することにより、具体的には、一周期中でサブタンク68を負圧源に接続せしめる時間的な割合(デューティ比:t/T)を次第に大きくすることによって、防振すべき振動周波数が大きくなるのに伴って、第二空気室58の負圧が次第に大きくなるように調節する。なお、負圧の大きさは、絶対値でいうものとする。これにより、防振すべき振動周波数が大きくなる程、副液室56の壁部の一部を構成するゴム板42が第二空気室58側に大きく負圧吸引されて、膨出した変形状態に保持されるのであり、その結果、ゴム板42の動ばね定数、ひいては副液室56の壁ばね剛性が次第に大きくされることにより、第二オリフィス通路86のチューニング周波数が実質的に高周波数側に移行する。そして、防振すべき振動周波数の変化に伴って、第二オリフィス通路86のチューニング周波数も変化せしめられることとなって低〜中周波数の広い周波数域の振動に対して、何れも、第二オリフィス通路86を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果(絶縁効果)が有効に発揮されることとなるのである。
【0041】
さらに、車両の中〜高速走行時には、圧力調整弁72を常時大気連通として、一旦、第二空気室58をサブタンク68を通じて大気に連通せしめた後に、接続切換弁76を切り換えて、第二空気室58を大気圧で遮断すると同時に第一空気室40をサブタンク68に接続すると共に、圧力調整弁72を適当なデューティ比で切換制御することにより、サブタンク68を介して、第一空気室40に負圧力を及ぼす。そこにおいて、車両の走行速度やエンジン回転数等を指標として圧力調整弁72を制御することにより、具体的には、一周期中でサブタンク68を負圧源に接続せしめる時間的な割合(デューティ比:t/T)を次第に大きくすることによって、防振すべき振動周波数が大きくなるのに伴って、第一空気室58の負圧が次第に大きくなるように調節する。これにより、防振すべき振動周波数が大きくなる程、平衡室38の壁部の一部を構成する薄肉ゴム膜34が第一空気室40側に大きく負圧吸引されて、膨出した変形状態に保持されるのであり、それに伴って平衡室38に負圧が生ぜしめられた分だけ、主液室64や副液室56から第一及び第二のオリフィス通路80,86を通じて平衡室38に流体が流入せしめられる。そして、主液室64の壁部を構成するゴム弾性体16のばね剛性よりも副液室56の壁部を構成するゴム板42のばね剛性の方が十分に小さいことから、平衡室38の減圧量に略対応する量だけ、ゴム板42が副液室56側に負圧吸引される。要するに、防振すべき振動周波数が大きくなる程、ゴム板42が副液室56側に大きく負圧吸引されて、その膨出した変形状態に保持されるのであり、その結果、ゴム板42の動ばね定数、ひいては副液室56の壁ばね剛性が次第に大きくされると同時に、副液室56の容積も次第に小さくされる。
【0042】
そして、副液室56の壁ばね剛性の増大と、副液室56の容積の減少とが、相俟って、第二オリフィス通路86のチューニング周波数がより高周波数側にまで有利に移行せしめられると共に、更なる高周波数域における反共振的作用に起因する著しい高動ばね化が、第二オリフィス通路86を通じての流体流動量の抑制等に基づいて軽減乃至は回避され得るのであり、その結果、防振すべき振動周波数の変化に伴って、第二オリフィス通路86のチューニング周波数と副液室の容積が変化せしめられることとなって、中〜高周波数の広い周波数域の振動に対して、第二オリフィス通路86を流動せしめられる流体の共振作用に基づく防振効果(絶縁効果)が有利に発揮されると共に、流体の反共振的作用による著しい高動ばね化が軽減されて、有効な防振効果が発揮されることとなるのである。
【0043】
なお、このことから明らかなように、本実施形態では、第一空気室40に及ぼされる負圧の大きさを調節する第一制御手段が、圧力調整弁72と圧力制御装置74を含んで構成されていると共に、第二空気室58に及ぼされる負圧の大きさを調節する第二制御手段も、圧力調整弁72と圧力制御装置74を含んで構成されている。
【0044】
因みに、前記実施形態に示された構造のエンジンマウント10において、上述の如き圧力制御を実施した場合における防振性能の周波数特性を実測した結果を、実施例として、図3に示す。なお、かかる実測に際しては、10〜30Hzの低周波数域では、第一及び第二の空気室40,58を何れも略大気圧に保持せしめる一方、30〜50Hzの中周波数域では、平衡室38を略大気圧に保持せしめた状態下で、周波数の増大に伴って大きくなる負圧力を副液室56に及ぼし、更に、50Hzを越えた高周波数域では、副液室56を略大気圧に保持せしめた状態下で、周波数の増大に伴って大きくなる負圧力を平衡室38に及ぼした。図中、マイナス記号が付された圧力値は、第一空気室40を略大気圧に保持せしめた状態下で第二空気室58に及ぼした負圧力を示すものであり、プラス記号が付された圧力値は、第二空気室58を略大気圧に保持せしめた状態下で第一空気室40に及ぼした負圧力を示すものである。また、比較例として、実施例と同じエンジンマウントを用い、第一空気室40と第二空気室58の何れも、常時、略大気圧に保持せしめた状態下で発揮される防振性能の周波数特性を同様に測定した結果を、図2に併せ示す。
【0045】
かかる図3に示された結果からも明らかなように、本実施形態のエンジンマウント10においては、比較例構造のエンジンマウントに比して、30Hz以上の極めて広い周波数域に亘って、防振特性の飛躍的な向上が達成されていることが認められる。
【0046】
なお、実際の車両において、車速信号やエンジン回転数信号、或いは振動の検出信号等の入力信号に基づいて圧力調整弁72を作動制御するに際しては、例えば、予め得られた実験データ等に基づいて設定したマップデータ等に基づいてフィードフォワード的に制御することが可能である。また、そこにおいて、本実施形態のエンジンマウント10においては、主液室64の圧力を検出する圧力センサ66を備えていることから、この圧力センサ66による主液室64の圧力の検出値に基づいて、目的とする大きさの負圧力が第一乃至は第二の空気室40,58に及ぼされるように、圧力調整弁72のデューティ比をフィードバック制御することも可能である。特に、内燃機関の吸気系を負圧源とする場合には、自動車の走行状態等によって負圧源の負圧の大きさが変化することから、このようなフィードバック系を採用することにより、制御精度の向上が図られ得る。なお、主液室64の検出値としては、例えば最大値や最小値、平均値等を採用することが可能であり、また、主液室64以外の平衡室38や副液室56、更にはサブタンク68等の圧力検出値を利用することも可能である。
【0047】
さらに、上述の如き構造とされた本実施形態のエンジンマウント10においては、内燃機関の吸気系等によって構成される負圧源の負圧をそのまま直接的に作用空気室に及ぼすことなく、負圧源と大気中への切換接続をデューティ比制御することによって、目的とする負圧力を得るようになっていることから、目的とする負圧力を安定して作用空気室40,58に及ぼすことが出来るのであり、以て、目的とする防振特性を安定して得ることが出来るのである。また、本実施形態では、更に、デューティ比制御で得られた負圧力を、サブタンク68を介して作用空気室40,58に伝達するようになっていることから、負圧源と大気中への切換接続に起因する作用空気室40,58内の空気圧変動を、一層有利に軽減乃至は回避することが可能となる。
【0048】
また、目的とする負圧力を得るための上述の如き負圧源と大気中への切換接続をデューティ比制御は、負圧源と大気中への切換接続を、防振すべき振動周波数と干渉しない略一定の周波数で行なうことを前提として実施されることから、圧力制御が一層容易とされると共に、作用空気室40,58の空気圧変動が防振すべき振動と干渉することに起因する作動の不安定化も有利に回避されて、目的とする防振性能がより安定して発揮され得るのである
【0049】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明は、かかる実施形態における具体的な記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0050】
例えば、前記第一の実施形態においては、第一空気室40と第二空気室58が、各一つの圧力調節弁72とサブタンク68を、共通の圧力調節系として利用しており、かかる圧力調節系によって得られた空気圧を、接続切換弁76によって第一空気室40と第二空気室58に択一的に及ぼすことによって、それら両空気室40,58の圧力を制御するようになっていたが、第一空気室40用の圧力調節系と、第二空気室58用の圧力調節系を、互いに独立して構成することも可能である。
【0051】
その一具体例が、第二の実施形態に係るエンジンマウントとして、図4に示されている。なお、本実施形態では、第一の実施形態に係るエンジンマウントと同様な構造とされた部材および部位については、図中に、第一の実施形態と同一の符号を付することにより、それらの詳細な説明を省略する。即ち、本実施形態のエンジンマウント90においては、負圧源を第一空気室40に接続する第一の空気管路92と、負圧源を第二空気室58に接続する第二空気管路94が、実質的に相互に独立して形成されており、第一の空気管路92上には、第一のサブタンク96と第一の圧力調節弁98が配設されていると共に、第二の空気管路94上には、第二のサブタンク100と第二の圧力調節弁102が配設されている。そして、第一の圧力調節弁98によるデューティ比、即ち第一の圧力調節弁98を大気中と負圧源に切り換える一周期中で第一のサブタンク96を負圧源に接続せしめる時間的な割合と、第二の圧力調節弁102によるデューティ比、即ち第二の圧力調節弁102を大気中と負圧源に切り換える一周期中で第二のサブタンク100を負圧源に接続せしめる時間的な割合を、互いに独立して各別に調節設定することが出来るようになっている。なお、第一及び第二の圧力調節弁98,102における負圧源と大気中への切換周波数は、何れも、前記第一の実施形態と同様に、防振すべき振動周波数に対して干渉しない周波数に設定される。従って、このような構造とされた本実施形態のエンジンマウント90においても、前記第一の実施形態のエンジンマウントと同様な作動制御を行なうことによって、同様な防振効果を有効に得ることが出来るのである。
【0052】
また、かかる第二の実施形態に係るエンジンマウントにおいては、第一空気室40と第二空気室58を、互いに独立して圧力調節することが出来ることから、前記実施形態に示された具体的な圧力形状形態の他、例えば要求される防振特性等に応じて、その他、種々なる圧力の制御形態を、より広い選択範囲で採用することが出来るのであり、それによって、より広範な防振特性のチューニング自由度が実現可能とされる。
【0053】
さらに、前記実施形態では、第一空気室40と第二空気室58の何れに及ぼされる負圧も、大きさを調節可能とされていたが、それら第一空気室40と第二空気室58の一方だけに及ぼされる負圧を調節し、他方の空気室を常時大気連通とすることも可能である。また、それら第一空気室40や第二空気室58に及ぼされる空気圧は、必ずしも、防振すべき振動に対応して連続的乃至は多段階的に変化させる必要はなく、大気中と負圧源とに選択的にのみ接続可能として、それらの空気室に及ぼされる負圧をON/OFF的に切換制御することも可能であり、その場合においても、空気室に及ぼされる負圧力の大きさを安定化させると共に、入力振動との干渉を回避することによって、防振特性の安定化が有利に達成され得る。
【0054】
また、第一乃至は第二の空気室40,58に及ぼされる負圧の大きさを調節するための切換弁としても、例示の如き3方切換式の電磁弁72によって構成されたものに限定されるものでなく、例えば、空気室40,58を常時大気中に開口せしめると共に、それら空気室40,58に対する負圧源の接続だけを連通/遮断するものや、反対に、空気室40,58を常時負圧源に連通せしめると共に、それら空気室40,58に対する大気中への開口だけを連通/遮断する電磁式の開閉弁(2ポート弁)等も採用可能である。また、それらにおいて採用される弁機構としても、空気室の負圧源及び/又は大気への接続を、実質的に連通/遮断するものであれば良く、完全に連通と遮断を行なうものの他、通路の開口量を大小に切り換えることで実質的に連通/遮断するもの、或いは空気室を負圧源に接続するエア管路上において、該エア管路から分岐して大気に連通する分岐路を開閉することによって、エア管路を通じた空気室の負圧源への接続を実質的に連通/遮断するもの等も、切換弁として採用可能である。
【0055】
さらに、前記実施形態では、空気室40,58に負圧を及ぼすエア管路70上にサブタンク68が配設されていたが、かかるサブタンク68としては、従来から公知のダイヤフラム形やピストン形、ばね形等の各種公知のタイプが何れも採用可能である。また、そのような蓄圧器タイプの他、消音器構造の圧力変動低減器を採用することも可能である。そこにおいて、消音器構造のものとしては、例えば、サイドブランチタイプや干渉型消音器タイプ,吹出口型消音器タイプ等の公知の各種のものが適宜に採用され得る。尤も、防振装置に要求される防振特性や、採用する負圧源の性能等によっては、このようなサブタンク68等は、必ずしも設ける必要がない。
【0056】
また、前記実施形態では、第一副液室としての平衡室38の背後に形成された第一作用室40と、第二副液室としての副液室56の背後に形成された第二作用室58に対して、それぞれ、空気圧制御が行なわれるようになっていたが、それらの何れか一方の作用室だけに空気圧制御を行なうようにしても良い。更に、要求される防振特性等によっては、それら平衡室38と副液室56の何れか一方だけを形成し、他方を形成しないことも可能である。
【0057】
また、前記実施形態では、本発明を自動車用のエンジンマウントに適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他、各種の防振装置に適用可能であり、例えば、特開平3−157535号公報等に記載されている如き、FF型自動車用エンジンマウント等に用いられる円筒型の流体封入式防振装置にも適用可能であることは勿論、自動車用ボデーマウントやデフマウントの他、自動車以外の各種装置における流体封入式の防振装置に対しても、何れも同様に適用可能である。
【0058】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0059】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた流体封入式防振装置においては、作用空気室に対して目的とする大きさの負圧を安定して及ぼすことにより、目的とする防振特性を高精度に得ることが出来ると共に、作用空気室における圧力変動と入力振動の共振的な干渉等も防止されて安定した防振効果を得ることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面説明図である。
【図2】図1に示された構造のエンジンマウントにおける切換弁の制御態様を説明するための制御信号図である。
【図3】図1に示された構造のエンジンマウントについて防振性能の周波数特性を測定した結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第二の実施形態としての自動車用エンジンマウントを示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
10 エンジンマウント
12 第一の取付金具
14 第二の取付金具
16 ゴム弾性体
34 薄肉ゴム膜
38 平衡室
40 第一空気室
42 ゴム板
56 副液室
58 第二空気室
64 主液室
70 エア管路
72 切換バルブ(圧力調整弁)
74 圧力制御装置
76 切換バルブ(接続切換弁)
78 切換制御装置
80 第一オリフィス通路
86 第二オリフィス通路

Claims (8)

  1. 相互に離間配置された第一の取付部材と第二の取付部材を本体ゴム弾性体で連結せしめて、該本体ゴム弾性体で壁部の一部が構成されて非圧縮性流体が封入された主液室と、壁部の一部がゴム弾性板で構成されて非圧縮性流体が封入された副液室を形成すると共に、それら主液室と副液室を相互に連通するオリフィス通路を形成する一方、該ゴム弾性板を挟んで該副液室と反対側に作用空気室を形成して、該作用空気室に及ぼされる空気圧を制御することによって防振特性を変更可能とした流体封入式防振装置において、
    前記作用空気室を負圧源と大気に交互に切換接続する切換弁を、防振すべき振動の周波数と異なり且つ干渉しない周波数で切換作動せしめると共に、該切換弁の制御信号におけるデューティ比を防振すべき振動の周波数に応じて調節して、一周期中における作用空気室の負圧源への接続時間割合を変更することによって、該作用空気室に及ぼされる空気圧を調節して前記ゴム弾性板のばね定数を調節するようにしたことを特徴とする流体封入式防振装置。
  2. 前記切換弁を、前記オリフィス通路がチューニングされた防振すべき振動周波数よりも小さな略一定の周期で切換作動せしめる請求項1に記載の流体封入式防振装置。
  3. 防振すべき振動の周波数が大きくなる程、一周期中における作用空気室の負圧源への接続時間割合が次第に大きくなるように、前記切換弁の制御信号におけるデューティ比を、防振すべき振動に応じて連続的乃至は多段階に調節する請求項1又は2に記載の流体封入式防振装置。
  4. 前記主液室などに封入された非圧縮性流体の流体圧を測定する圧力検出手段を設けると共に、該圧力検出手段によって検出された流体圧に基づいて、前記切換弁の制御信号におけるデューティ比を補正するようにした請求項1乃至3の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  5. 前記副液室と、該副液室を前記主液室に連通する前記オリフィス通路を、それぞれ複数設けると共に、それら複数のオリフィス通路に対して相互に異なるチューニングを施す一方、その少なくとも一つの副液室において、前記ゴム弾性膜を挟んで該副液室と反対側に前記作用空気室を形成した請求項1乃至4の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  6. 前記副液室として、第一ゴム弾性板で壁部の一部が構成されて小さな壁ばね剛性を有する第一副液室と、第二ゴム弾性板で壁部の一部が構成されて大きな壁ばね剛性を有する第二副液室を形成すると共に、前記オリフィス通路として、該第一副液室を前記主液室に連通する低周波数域にチューニングされた第一オリフィス通路と、該第二副液室を前記主液室に連通する高周波数域にチューニングされた第二オリフィス通路を形成し、更に、前記作用空気室として、該第一ゴム弾性板を挟んで該第一副液室と反対側に位置する第一作用空気室を形成せしめて、該第一作用空気室に及ぼされる負圧を振動周波数の大きさに従って調節するようにした請求項1乃至5の何れかに記載の流体封入式防振装置。
  7. 前記作用空気室として、前記第一作用空気室に加えて、前記第二ゴム弾性板を挟んで前記第二副液室と反対側に位置する第二作用空気室を形成せしめて、前記第一オリフィス通路のチューニング周波数から前記第二オリフィス通路のチューニング周波数に至る低周波数域の振動入力時には、該第一作用空気室に大気圧を及ぼしめると共に、該第二作用空気室に及ぼされる負圧を振動周波数の大きさに従って調節する一方、該第二オリフィス通路のチューニング周波数よりも高い中乃至高周波数域の振動入力時には、該第二作用空気室に大気圧を及ぼすと共に、該第一作用空気室に及ぼされる負圧を振動周波数の大きさに従って調節するようにした請求項6に記載の流体封入式防振装置。
  8. 前記作用空気室と前記切換弁の間に蓄圧手段が設けられて、該切換弁の切換作動に応じて、該蓄圧手段に蓄えられる負圧力の大きさが調節されるようになっており、該蓄圧手段に蓄えられた負圧が該作用空気室に及ぼされるようになっている請求項1乃至7の何れかに記載の流体封入式防振装置。
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