JP3679636B2 - 水分発生用反応炉 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として半導体製造装置に於いて利用される水分発生用反応炉の改良に係り、反応炉本体の全体の温度の均一化を図ることにより、水素への着火や逆火、白金コーティング触媒層の剥離等の発生を完全に防止して、安全性の向上や反応炉の長寿命化、コストダウン等を可能とした水分発生用反応炉に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体製造に於けるシリコンへの酸化膜付けには、少なくとも1000SCCM(標準状態において1000cc/min)の流量の高純度水分を必要とする。
これ等の用途に供するため、本願発明者等は先きに図5に示す様な構成の水分発生用反応炉を開発し、WO97/28085号としてこれを公開している。
即ち、図5に於いてAは反応炉本体、1は入口側炉本体部材、1aはガス供給口、2は出口側炉本体部材、2aは水分ガス取出口、3は入口側内部空間、4は出口側内部空間、5は入口側反射体、6は出口側反射体、7は金属フィルター、8は白金コーティング触媒層であり、また前記白金コーティング触媒層8は図6に示すように、出口側炉本体部材2の内表面にTiN等のバリヤー皮膜8aを設け、その上に、更に白金コーティング皮膜8bを積層固着することにより形成されている。
【0003】
水分の発生に際しては、ガス供給口1aから予かじめ所定の混合率で混合されたH2 とO2 の混合ガスGを反応炉本体A内へ供給する。反応炉本体Aの入口側内部空間3内へ供給された混合ガスGは、入口側反射体5及び金属フィルター7によって拡散され、出口側内部空間4内へ流入して白金コーティング皮膜8bと接触することにより、O2 及びH2 の反応性が活性化される。
【0004】
白金コーティング皮膜8bとの接触により活性化されたH2 とO2 とは、約300℃〜500℃前後の高温下で反応をし、水分ガス(水蒸気)に転換される。また、発生した水分ガス(水蒸気)は、水分ガス取出口2aから半導体製造用のプロセスチャンバー(図示省略)等へ供給されて行く。
尚、高温下でO2 とH2 とを反応させる水分反応炉本体Aは、その内部空間3・4内の温度をH2 又はH2 含有ガスの発火温度以下の温度に保持することにより、H2 とO2 の爆発的な燃焼反応を防止つつ適宜の速度で両者を反応させ、所要流量の水分ガスを発生する。
【0005】
上記図5の反応炉本体Aは、所望流量の高純度水分を極く小形の反応炉本体Aでもって連続的に、しかも高反応率の下で簡便に発生させることができ、優れた実用的効用を奏するものである。
しかし、図5のような構成の水分発生炉にも未だ解決すべき多くの問題が残されており、その中でも特に解決を急ぐ問題は、H2 への着火やガス供給口1aからの逆火をより完全に防止すると共に、反応炉本体Aの全体の温度分布を均一化して局部的な温度上昇による白金コーティング触媒層8の剥離を防止すると云う点である。
【0006】
上述したように、水分発生用反応炉本体Aの内部空間内の温度は、H2 又はH2 含有ガス最低限界着火温度(約560℃、H2 とO2 の混合率に応じて限界着火温度は約560℃より上昇する)よりも相当に低い約450℃〜500℃の温度に保持されており、H2 とO2 の爆発的な燃焼反応は抑制されるようになっている。
しかし、水分発生用反応炉Aの内部空間3・4側の温度を常に完全に前記限界着火温度以下の値に保持することは、現実にはなかなか困難なことであり、上流側炉本体部材1や下流側炉本体部材2等の内壁面の温度が、何等かの原因で局部的に限界着火温度以上に上昇することがある。
【0007】
尚、万一、前記上流側炉本体部材1や下流側炉本体部材2の内壁面温度が局部的に限界着火温度以上に上昇したとしても、常にO2 とH2 との爆発的な燃焼反応が生じて逆火を生ずるとは限らず、一般的には着火や逆火を生じないケースが多いが、混合ガスG内のH2 濃度が特に高い場合には、稀にH2 への着火或いは逆火を生ずることがある。
【0008】
前記H2 への着火や逆火を生ずる原因、即ち両炉本体部材1・2や金属フィルター7等の局部的で且つ急激な温度上昇を生ずる原因は、不明であって未だ十分にその原因は特定はされていない。
しかし、本願発明者等はこれまでの水分発生用反応炉の製造並びに使用の経験からして、反応炉本体Aを構成する入口側炉本体部材1の内壁面(ガス供給口1a側の炉本体部材の内壁面)や入口側反射体5、出口側反射体6、金属フィルター7等の外表面の金属触媒作用により、混合ガスG内のH2 とO2 が活性化され、前記内壁面等に局部的で且つ急激な温度上昇が生じたことが、H2 への着火の第1原因であると想定している。
【0009】
即ち、入口側炉本体部材1や両反射体5・6、金属フィルター7等は全てステンレス鋼(SUS316L)により形成されている。そして、これ等各部材の外表面は、通常自然に形成された各種金属の酸化物皮膜や不働態皮膜によって覆われており、これによってステンレス鋼の外表面が本来保持している所謂触媒活性は、抑制されている。
ところが、約450℃〜500℃程度の高温下で、H2 濃度の高い混合ガスG中に前記酸化物皮膜や不働態皮膜が長時間晒されると、酸化物皮膜等がステンレス鋼表面から剥離脱落あるいは還元されて金属外表面が局部的に露出される。その結果、ステンレス鋼外表面の金属触媒活性が発揮され、O2 とH2 との反応が局部的に急速且つ高密度で進行し、これによって反応炉本体Aの内部空間3・4内の白金コーティング触媒層8を設けた部分以外の部分の局部の表面温度が、H2 (又はH2 含有ガス)の着火限界温度以上に上昇したものと想定される。
【0010】
尚、前記反応炉本体Aの内部空間3・4内の局部的な温度上昇を防止するためには、反応炉本体A自体を大形化してその熱容量を増大させると共に、放熱又は冷却装置を設けて反応炉本体Aの冷却性能の強化を図るのが通常の方策である。
しかし、半導体製造装置は一般にクリーンルーム内に設置されるものであり、その設置スペースを大きく取ることは困難である。そのため、半導体製造装置に付随する水分発生用反応炉もその小型化に対する要求が特に厳しく、反応炉本体Aの大型化や冷却装置の増強を以って、上述の如き水分発生用反応炉の内部に於ける局部的な温度上昇を防止しようとする方策は、現実的に採用が不可能な状態にある。
【0011】
また、従前の図6に示すような構造の水分発生用反応炉に於いては、入口側炉本体部材1の内壁面には白金コーティング触媒層8を設けず、入口側内部空間3を混合ガスGの拡散用空間として活用している。その結果、反応炉本体Aの内部空間3・4の大きさが相対的に大きくなると共に、H2 とO2 との反応が主として白金コーティング触媒層8を設けた出口側内部空間4内に於いて行なわれるため、出口側炉本体部材2や出口側反射体6の温度が入口側炉本体部材1や入口側反射体5の温度よりも高かくなり、反応炉本体Aの温度分布が不均一になり易い。
【0012】
即ち、反応炉本体Aの内部空間3・4が大きいと、反応炉本体Aの小形化を図り難いうえ、必然的に水分発生開始時の応答性が低下すると共に、混合ガスGの混合比を変えたような場合には、ガスGの置換性が低下する。
また、反応炉本体Aの温度分布が不均一になり易いと、どうしても出口側炉本体部材2の温度が上昇し易くなり、局部的な温度上昇による白金コーティング触媒層8の剥離が生じ易くなる。
更に、白金コーティング触媒層8の形成可能な面積が出口側炉本体部材2の内壁面に限定されることにより、白金コーティング触媒層8の単位面積当りの負荷密度が高かくなり、そけだけ白金コーティング触媒層8が厳しい条件下で使用されることになる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従前の水分発生用反応炉に於ける上述のような問題、即ち▲1▼反応炉本体Aを構成する入口側及び出口側炉本体部材1・2の内部空間内の温度をH2 又はH2 含有ガスの限界着火温度よりも相当に低い温度に保持していても、H2 濃度の高かい混合ガスを使用している場合には、水分の発生中にH2 への着火又は逆火を生ずることがあること、▲2▼反応炉本体Aの温度分布が不均一になり易く、出口側炉本体部材2の中央部の温度が上昇し易いこと、▲3▼反応炉本体Aの内部空間の容積の減少が困難で、応答性や混合ガスの置換性の向上を図り難いこと及び▲4▼白金コーティング触媒層8の形成面積が限定され、白金コーティング触媒層8の負荷分担が相対的に高かくなること等の問題を解決せんとするものであり、反応炉本体Aを大形化してその熱容量の増大を図ったり、或いは反応炉本体Aの冷却装置を大形化してその冷却能力を大幅に高めるような方策によらず、しかも水分発生用反応炉の運転中に於けるH2 への着火や逆火の発生を完全に防止できると共に、反応炉本体Aの温度分布の均一化や応答性及びガス置換性の向上、白金コーティング触媒層8の負荷条件の緩和等を可能にした水分発生用反応炉を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、従前の水分発生用反応炉に於けるH2 への着火や逆火の発生原因を究明する過程を通して、前記着火や逆火を生ずる原因が「反応炉本体の内部空間側の金属外表面に形成されていた酸化物皮膜等の剥離脱落により、金属表面の触媒活性が発揮され、この金属表面の触媒活性によってO2 とH2 の反応が局部的に急激にしかも高密度で進行し、金属表面の温度が部分的にH2 含有ガスの限界着火温度以上に上昇したことによる。」ことを知得した。
また、本願発明者等は、「反応炉本体A内の入口側内部空間3や入口側反射体5、金属フィルター7等を除いても、高い反応率でもって水分の発生が可能である。」ことを知得した。
【0015】
本発明は、本願発明者等の上記知見に基づいて創作されたものであり、請求項1の発明は、ガス供給口を有する入口側炉本体部材と、水分ガス取出口を有する出口側炉本体部材と、前記両炉本体部材を組み合せして成る反応炉本体の内部空間内に設けた1枚の反射体と、入口側炉本体部材の内壁面及び出口側炉本体部材の内壁面に夫々形成した白金コーティング触媒層とから形成され、ガス供給口から反応炉本体の内部空間内へ供給した水素と酸素を前記白金コーティング皮膜層に接触させてその反応性を活性化させることにより、水素と酸素とを非燃焼の状態下で反応させて水を発生させるようにした水分発生用反応炉において、前記反射体の外表面に酸素及び水素に対する触媒活性を有しない非触媒性のTiN、TiC、TiCN、TiAlN、Al 2 3 、Cr 2 3 、SiO 2 、CrNの中の何れかから成るバリヤー皮膜を形成し、更に前記入口側炉本体部材のガス供給口の中心から少なくとも半径約10mmの範囲内の内壁面には、白金コーティング触媒層を形成するバリヤー皮膜のみを設けて白金コーティング皮膜を設けないようにしたことを発明の基本構成とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、反射体を反応炉本体の内部空間の内径より小さな外径のディスク体とするようにしたものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の発明において、反射体を、水素及び酸素に対して触媒活性を有しない非触媒性の鉄−クロム−アルミ合金、アルミ合金、銅合金の中の何れかから形成するようにしたものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る水分発生用反応炉の断面図である。図1に於いてAは反応炉本体、Gは混合ガス、Vは内部空間、Lは隙間、1は入口側炉本体部材、1aはガス供給口、1bは接続用金具、2は出口側炉本体部材、2aは水分ガス取出口、2bは接続用金具、8は白金コーティング触媒層、8aはバリヤー皮膜、8bは白金コーティング皮膜、9は反射体、10は反射体のバリヤー皮膜、11はスペーサー、12は溶接部、13は固定ボルト、14は取付用ボルト孔、15はシース型温度計の取付孔である。尚、図では省略されているが、固定ボルト13及びスペーサー11の外表面にもバリヤー皮膜が形成されている。
【0022】
本発明に係る水分発生用反応炉本体Aはステンレス鋼(SUS316L)製の入口側炉本体部材1と出口側炉本体部材2とを溶接することにより、円形の中空デスク状に形成されている。
前記入口側炉本体部材1には、その内部に底面が平面状の窪部が設けられており、ガス供給口1aが窪部内へ連通されている。また、出口側炉本体部材2には、内部に底面が平面状の窪部が設けられており、水分ガス取出口2aが窪部内へ連通されている。更に、両本体部材1・2の内側外周端面にはフランジ体が夫々形成されており、両フランジ体を気密状に溶接固定することにより、水分発生用反応炉本体Aが構成されている。
【0023】
前記反射体9は薄い皿形に形成されており、入口側炉本体部材1のガス供給口1aと対向する位置に、固定用ボルト13によりスペーサー11を介設して出口側炉本体部材へ固定されている。
尚、図1の実施形態に於いては、反射体9をボルト13により出口側炉本体部材2へ固定するようにしているが、入口側炉本体部材1側へ固定するようにしてもよく、或いは溶接により出口側炉本体部材2又は入口側炉本体部材1へ固定するようにしてもよい。本実施形態では、ボルト13の頭部が締め込み後にスポット溶接され、所謂緩み止め処理が行なわれている。
また、本発明の水分発生用の反応炉本体Aでは、後述するように反射体9の外表面にバリヤー皮膜10が形成されている。
更に、図1の実施形態では反射体9を皿形に形成しているが、反射体9の形態は、内部空間V内へ流入した混合ガスが未反応のままで、直接に水分ガス取出口2a内へ流入するのを防止できるものであれば、如何なるものであってもよいことは勿論であり、例えば、後述する図4に示した第2実施形態の反射体9のように比較的厚いディスク体としてもよい。
【0024】
ガス供給口1aを通して反射体9へ向けて噴射された混合ガスGは、反射体9へ衝突したあと内部空間V内で拡散され、拡散された混合ガスGは、白金コーティング触媒層8の全面に亘って均等に衝突接触することにより所謂触媒活性化されH2 とO2 とが反応することにより水分ガスが生成される。また、内部空間V内に形成された水分ガスは、反射体9の裏面側の隙間Lを通して水分ガス取出口2aへ導出されて行く。
【0025】
前記白金コーティング触媒層8はSUS316L製の入口側炉本体部材1と出口側炉本体部材2の内表面の全域に形成されており、図2に示す如く各炉本体部材1・2の内表面にTiN製のバリヤー皮膜8aを形成したあと、当該バリヤー皮膜8aの上に白金コーティング皮膜8bが形成されており、前記バリヤー皮膜8aと白金コーティング皮膜8bとによって本発明に係る白金コーティング触媒層8が構成されている。
前記白金コーティング皮膜8bの厚さは0.1μm〜3μm位いが適当であり、本実施態様に於いては約1μmの厚さの白金コーティング皮膜8bが形成されている。また、バリヤー皮膜8aの厚さは0.1μm〜5μm程度が最適であり、本実施態様では約2μmの厚さのTiN製のバリヤー皮膜が形成されている。
【0026】
本発明の実施形態に於いては、白金コーティング触媒層8を形成する入口側及び出口側炉本体部材1・2だけでなく、反射体9の外表面にもTiN製のバリヤー皮膜10が形成されている。図3は反射体9の外表面のバリヤー皮膜10の形成状態を示すものである。
即ち、各バリヤー皮膜8a・10の形成に際しては、先ず、入口側炉本体部材1や出口側炉本体部材2、反射体9等の表面に適宜の表面処理を施し、ステンレス鋼表面に自然形成されている各種金属の酸化膜や不働態膜を除去する。次にTiNによるバリヤー皮膜8a・10の形成を行なう。本実施態様に於いてはイオンプレーティング工法により厚さ約2μmのTiN製バリヤー皮膜8a・10を形成している。
【0027】
前記バリヤー皮膜8a・10の材質としてはTiNの外にTiC、TiCN、TiAlN等を使用することが可能である。非触媒性であり、しかも耐還元性及び酸化性に優れているからである。
また、バリヤー皮膜8a・10の厚さは前述の通り0.1μm〜5μm程度が適当である。何故なら、厚さが0.1μm以下であると、バリヤー機能が十分に発揮されず、また逆に、厚さが5μmを越えるとバリヤー皮膜そのものの形成に手数がかかるうえ、加熱時の膨張差等が原因となってバリヤー皮膜の剥離等を生ずる虞れがあるからである。
更に、バリヤー皮膜の形成方法としては、前記イオンプレーティング工法以外に、イオンスパッタリング法や真空蒸着法等のPVD法や化学蒸着法(CVD法)、ホットプレス法、溶射法等を用いることも可能である。
【0028】
前記入口側炉本体部材1と出口側炉本体部材2の方は、バリヤー皮膜8aの形成が終わると、引き続きその上に白金コーティング皮膜8bを形成する。本実施態様に於いては、イオンプレーティング工法により厚さ約1μmの白金コーティング皮膜8bを形成している。
前記白金コーティング皮膜8bの厚さは0.1μm〜3μm程度が適当である。何故なら、厚さが0.1μm以下の場合には、長期に亘って触媒活性を発揮することが困難となり、また逆に、厚さが3μm以上になると、白金コーティング皮膜8bの形成費が高騰するうえ、3μm以上の厚さにしても触媒活性度やその保持期間にほとんど差がなく、しかも加熱時に膨張差等によって剥離を生ずる虞れがあるからである。
また、白金コーティング皮膜8bの形成方法は、イオンプレーティング工法以外にイオンスパッタリング法、真空蒸着法、化学蒸着法、ホットプレス法等が使用可能であり、更に、バリヤー皮膜8aがTiN等の導電性のある物質の時にはメッキ法も使用可能である。
【0029】
前記図1に示した第1実施形態に於いては反射体9を形成する素材としてステンレス鋼(SUS316L)を使用しているが、これを例えば鉄−クロム−アルミ合金やアルミ合金、銅合金等のH2 やO2 に対して所謂触媒活性を有しない材質の素材を使用するようにしてもよい。この場合には、白金コーティング触媒層8を設けた部分以外では、H2 やO2 が水分の発生中に活性化されることが無くなり、反射体9の表面が触媒作用を呈することにより、O2 とH2 の反応が起生して局部的な温度上昇が起ることは皆無となる。
【0030】
尚、前記反射体9にステンレス鋼やニッケル合金鋼、ニッケル鋼以外の金属表面の触媒活性を有しない金属(例えば鉄−クロム−アルミ合金)を使用した場合には、これ等の外表面に内部ガスや内部金属組成材の外部への放出を防止するための適宜の表面処理を施す方が望ましい。また、前記表面処理としては、例えば図1の第1実施形態に於いて使用したTiN等の非触媒性で且つ耐食性、耐還元性及び耐酸化性に優れたバリヤー皮膜を形成するようにしてもよい。
【0031】
図4は本発明の第2実施形態を示すものであり、反射体9を比較的厚目のディスク状としている点及び入口側炉本体部材1のガス供給口1aの近傍の白金コーティング皮膜8bを除いている点が、前記図1に示した本発明の第1実施形態と異なっている。
【0032】
即ち、当該第2実施形態に於いては、入口側炉本体部材1のガス供給口1a中心から少なくとも半径10mm位の範囲、望ましくは半径15〜25m位の範囲の白金コーティング皮膜8bが除かれており、バリヤー皮膜8aのみが形成されている。ガス供給口1aの入口近傍で水分発生反応が活発に行なわれると、入口側接続用金具等の温度が上昇し過ぎるからである。
尚、出口側炉本体部材2の方は、水分ガス取出口2aの内方まで白金コーティング皮膜8bを設けていても温度が上昇し過ぎることはない。既に大部分の水分発生反応が完了しており、反応熱が反応炉本体他の部分に於いて吸収されてしまっているからである。
【0033】
【実施例】
図1の水分発生用反応炉に於いて、反応炉本体Aの外形114mmφ、厚さ30mm、内部空間Vの厚さ10mm、内径108mmφ、反射体9の厚さ2mm、外径100mmφ、白金コーティング触媒層8を(5μmTiNバリヤー皮膜8a+0.3μm白金コーティング皮膜8b)、反射体9のバリヤー皮膜10をTiN皮膜(5μm)とし、H2 20%リッチの混合ガスGを供給して100時間の連続的な水分発生試験(水分発生量1000SCCM)を行なった。
【0034】
入口側炉本体部材1及び出口側炉本体部材2の外表面に於ける温度は350℃〜400℃であり、且つ入口側炉本体部材1のシース型温度計(挿入深さ約30mm、角度90°ピッチで4本挿入)の読みは400℃〜450℃であった。
また、100時間の連続水分発生試験中H2 ガスへの着火や逆火は皆無であり、且つ白金コーティング触媒層8の局部的な剥離も皆無であった。
更に、水分発生ガス中の未反応O2 及び未反応H2 の量は極く僅かであり、約99.9%以上のH2 とO2 の反応率が得られた。
【0035】
請求項1の発明に於いては、反応炉本体を形成する入口側炉本体部材と出口側炉本体部材の両方の内壁面に白金コーティング触媒層を形成すると共に、反応炉本体の内部空間内に、外表面に酸素及び水素に対して触媒活性を有しないバリヤー皮膜を形成した1枚の反射体を設け、更に、前記入口側炉本体部材のガス供給口の中心から少なくとも半径10mmの範囲内の内壁面には、白金コーティング触媒層を構成するバリヤ皮膜のみを設けて白金コーティング皮膜を設けない構成としている。その結果、反応炉本体内における触媒作用を有する金属外表面の露出が皆無となり、2 濃度の高い混合ガスを用いて長期に亘って水分発生を行っても、前記白金コーティング触媒層以外の部分の金属表面の触媒作用によってO2 とH2 が局部的に激しく反応することが皆無となる。これによって従前のようなH2 への着火や逆火の発生がより完全に防止される。
【0036】
また、入口側炉本体部材と出口側炉本体部材の両方の内壁面に白金コーティング触媒層を設けているため、H2 とO2 との反応が内部空間Vの全域に亘って略均等に行なわれ、その結果、水分発生用反応炉本体の温度分布がその全体に亘って均等となる。これにより、反応炉本体の内部空間内に於ける局部的な異常温度上昇が防止され、前記H2 ガスへの着火や逆火の発生が有効に防止される。
そのうえ、両炉本体部材の内壁面に白金コーティング皮膜層を形成しているため、白金コーティング皮膜層の形成面積を従前の反応炉に比べて大きくとることができ、水分発生量が同一である場合には白金コーティング皮膜層にかかる触媒負荷の分担を比較的小さくすることができる。これにより、白金コーティング皮膜層の剥離等が発生し難くなる。
【0037】
更に、反応炉本体の内部空間内には薄い反射体を1枚入れるだけでよいため、当該内部空間の内容積をより小さくすることができる。その結果、水分発生の応答性や混合ガス切換時のガス置換性が大幅に向上すると共に反応炉本体の小形化が可能となる。
【0038】
加えて、本発明の水分発生反応炉に於いては、大流量の水分発生を行っても、入口側炉本体部材のガス供給口近傍の温度が過度に上昇することは無く、安全に大流量の水分を発生させることができる。
本発明は上述の通り優れた実用的効用を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る水分発生用反応炉本体の縦断面図である。
【図2】白金コーティング皮膜の形成状態を示す部分縦断面図である。
【図3】バリヤー皮膜の形成状態を示す部分縦断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る水分発生用反応炉本体の縦断面図である。
【図5】従前の水分発生用反応炉本体の縦断面図である。
【図6】図5の白金コーティング皮膜層の形成状態を示す縦断面図である。
【符号の説明】
Aは反応炉本体、H2 は水素ガス、O2 は酸素ガス、Gは混合ガス、Vは内部空間、Lは隙間、1は入口側炉本体部材、1aはガス供給口、1bは接続用金具、2は出口側炉本体部材、2aは水分ガス取出口、2bは接続用金具、8は白金コーティング触媒層、8aはバリヤー皮膜、8bは白金コーティング皮膜、9は反射体、10は反射体外表面のバリヤー皮膜、11はスペーサ、12は溶接部、13は固定ボルト、14は取付用ボルト孔、15はシース型温度計の取付孔。

Claims (3)

  1. ガス供給口を有する入口側炉本体部材と、水分ガス取出口を有する出口側炉本体部材と、前記両炉本体部材を組み合せして成る反応炉本体の内部空間内に設けた1枚の反射体と、入口側炉本体部材の内壁面及び出口側炉本体部材の内壁面に夫々形成した白金コーティング触媒層とから形成され、ガス供給口から反応炉本体の内部空間内へ供給した水素と酸素を前記白金コーティング皮膜層に接触させてその反応性を活性化させることにより、水素と酸素とを非燃焼の状態下で反応させて水を発生させるようにした水分発生用反応炉において、前記反射体の外表面に酸素及び水素に対する触媒活性を有しない非触媒性のTiN、TiC、TiCN、TiAlN、Al 2 3 、Cr 2 3 、SiO 2 、CrNの中の何れかから成るバリヤー皮膜を形成し、更に前記入口側炉本体部材のガス供給口の中心から少なくとも半径約10mmの範囲内の内壁面には、白金コーティング触媒層を形成するバリヤー皮膜のみを設けて白金コーティング皮膜を設けないようにしたことを特徴とする水分発生用反応炉。
  2. 反射体を、反応炉本体の内部空間の内径より小さな外径のディスク体とするようにした請求項1に記載の水分発生用反応炉。
  3. 反射体を、水素及び酸素に対して触媒活性を有しない非触媒性の鉄−クロム−アルミ合金、アルミ合金、銅合金の中の何れかから形成するようにした請求項1に記載の水分発生用反応炉。
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