JP3639440B2 - 水分発生用反応炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として半導体製造設備で用いる水分発生用反応炉の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体製造に於ける水分酸化法によるシリコンの酸化膜付では、標準状態への換算値で1000sccm(cc/min)前後の超高純度水蒸気を必要とするが、このような場合に好適に使用することができる水分発生用反応炉として、本発明者は、先に、図8に示す構造のもの(以下「従来反応炉」という)を開発した。
【0003】
すなわち、従来反応炉は、図8に示す如く、円筒状の周壁111とその上下端部を閉塞する第1及び第2端部壁112,113とからなる中空密閉構造の反応炉本体101と、反応炉本体101内を上下2室114,115に区画するガス透過性の拡散フィルタ102と、第1端部壁112の中心部に穿設されて上位の第1室114に開口する原料ガス供給口143と、原料ガス供給口143に接続された原料ガス供給管104と、原料ガス供給口143を囲繞する有底円筒状の第1反射部材103,131と、第2端部壁113の中心部に穿設されて下位の第2室115に開口する水分ガス取出口107と、水分ガス取出口107に接続された水分ガス取出管171と、水分ガス取出口107を囲繞する有底円筒状の第2反射部材106,161と、第2室115における反応炉本体101の内面に被覆形成された白金触媒膜105とを具備する。原料ガス供給管104は、混合器140において混合された水素と酸素とを原料ガス供給口143に供給させるものである。第1反射部材は、複数の孔132を形成した円筒状の周壁131とその下端部を閉塞する円板状の反射板103とからなり、周壁131を原料ガス供給口143と同心状をなして第1端部壁112に取り付けたものであって、原料ガス供給口143から供給された水素と酸素との混合ガスである原料ガスを拡散しつつ第1室114へと供給させるものである。拡散フィルタ102は、原料ガスを第1室114から第2室115へと拡散させつつ透過させるものである。第2反射部材は、複数の孔162を形成した円筒状の周壁161とその上端部を閉塞する円板状の反射板106とからなり、周壁161を水分ガス取出口107と同心状をなして第2端部壁113に取り付けたものであって、拡散フィルタ102を通過して第2室115に導入された水素及び酸素が白金触媒膜105と接触することなく未反応のまま水分ガス取出口107へと流出するのを可及的に防止するためのものである。白金触媒膜105は、反応炉本体101の内周面であって第2室115に面する部分に、その全面に亘って形成されている。
【0004】
かかる従来反応炉にあっては、原料ガス供給口143から反応炉本体101内に供給された原料ガスは、第1反射部材103,131及び拡散フィルタ102からなるガス拡散手段によって拡散されつつ、第1室114から第2室115へと導入されて、白金触媒膜105と接触する。白金触媒膜105と接触した酸素及び水素は、白金の触媒作用によって反応性が高められ、所謂ラジカル化された状態となる。ラジカル化された水素と酸素は、水素混合ガスの発火温度よりも低い温度下で瞬時に反応して、高温燃焼をすることなしに水分を生成する。
【0005】
したがって、従来反応炉によれば、発火温度よりも低い炉温度(例えば、400℃以下)において1000sccm以上の水分ガスを安定した状態で良好に得ることができる。従来反応炉を、白金触媒膜105が形成された第2室115の容積:約490cc、水分発生量:1000sccm、炉温度(反応炉本体101の温度):約400℃の条件下で運転させたところ、図9に示す如く、原料ガスにおける酸素と水素との混合比率が適正である場合には勿論、当該混合比率が酸素リッチ又は水素リッチである場合にも、98.5〜99.0%の水分発生反応率の下で水分ガスを安定して生成させうることが確認された。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来反応炉にあっては、水素又は酸素が白金触媒膜105に接触することなく未反応のまま水分取出口107に到達する割合が1%程度あり、99%を超えた水分発生反応率の確保が困難であり、所望する適正な水分ガス(水素や酸素を含まない純水のみ又は水素を含まない純水と酸素のみの混合物)を確実に取り出すことが困難であった。
【0007】
本発明は、従来反応炉におけるかかる問題を解決して、炉温度が400℃以下で水分発生量が1000sccm以上の条件下においても、99%を超える水分発生反応率を安定して得ることができる水分発生用反応炉を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の水分発生用反応炉は、上記の目的を達成すべく、筒状の周壁とその両端部を閉塞する第1及び第2端部壁とからなる中空密閉構造の反応炉本体と、反応炉本体内を第1端部壁側の第1室と第2端部壁側の第2室とに区画するガス透過性の拡散フィルタと、反応炉本体を所定温度に加熱保持する温度制御機構と、第1端部壁に対向して第1室に配置されており、第1端部壁との間に拡散フィルタ側に開口する原料ガス供給空間を形成する第1反射板と、原料ガス供給空間に水素と酸素との混合ガスである原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、第2端部壁に近接対向して第2室に配置されており、第2端部壁との間に拡散フィルタ側に開口する水分発生空間を形成する第2反射板と、第2端部壁に形成されて水分発生空間に開口する水分ガス取出口と、第2室における反応炉本体の内面部分であって少なくとも第2反射板に対向部分に全面的に被覆形成された白金触媒膜と、を具備するものであり、第2反射板をその外周縁部が反応炉本体の周壁の内面に近接する大きさのものとして、水素と酸素との反応が主として水分発生空間において行なわれるように構成したものである。かかる水分発生用反応炉にあって、原料ガス供給機構は、第1端部壁を貫通して原料ガス供給空間に開口する原料ガス供給口と、水素を供給する水素供給管と、酸素を供給する酸素供給管と、両供給管の下流端部を合流して原料ガス供給口に接続する接続器とを具備するものであり、接続器が、ガス流動方向に複数の小径管部分と大径管部分とが交互に並ぶ異径管構造をなすものであることが好ましい。また、温度制御機構は、反応炉本体を冷却する冷却器を具備するものとしておくことが好ましい。冷却器は、反応炉本体の外面部に取り付けられた放熱フィンで構成されていることが好ましいが、冷却ファン等の空冷,水冷手段によるものを使用してもよい。また、拡散フィルタとしては、200μm以下の透孔を有するものを使用しておくことが好ましい。また、白金触媒膜が形成される反応炉本体の内面部分には、下地膜として窒化物等からなるバリヤ膜を形成しておくことが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図7に基づいて具体的に説明する。
【0010】
図1〜図4は第1の実施の形態を示したもので、この実施の形態における本発明に係る水分発生用反応炉(以下「第1反応炉」という)にあって、反応炉本体1は、軸線方向たる上下方向に短尺な円筒状の周壁11とその上下端部を閉塞する円板状の第1及び第2端部壁12,13とからなる中空密閉構造をなすものであり、同一形状又は略同一形状に成形された第1及び第2有底円筒体1a,1bの開口端部同士を溶接により衝合一体化させることにより、構成されている。すなわち、図1に示す如く、第1及び第2端部壁12,13は、夫々、第1及び第2有底円筒体1a,1bの底壁部で構成されており、反応炉本体1の周壁11は、連結された両有底円筒体1a,1bの周壁部で構成されている。
【0011】
反応炉本体1内は、図1に示す如く、その周壁11に固着した拡散フィルタ2により上下2室14,15に区画されている。すなわち、円板状の拡散フィルタ2を両有底円筒体1a,1bの衝合部位に張設することにより、反応炉本体1内を上位の第1有底円筒体1aの内面及び拡散フィルタ2で囲繞形成される第1室14と下位の第2有底円筒体1bの内面及び拡散フィルタ2で囲繞形成される第2室15とに区画しているのである。
【0012】
拡散フィルタ2は、水素と酸素との混合ガスである原料ガスを上位の第1室14から下位の第2室15へと拡散させつつ透過させるものであり、一般に、200μm以下の透孔を有する耐熱性材製のものを使用することが好ましい。この例では、平均径2μmの透孔を有するステンレス鋼製のメッシュ状フィルタを複数枚積層してなるもの(厚み:約1.7mm)を使用している。
【0013】
第1室14には、円板状の第1反射板3が反応炉本体の内周面部分である第1端部壁12の下面に近接対向する状態で配置されている。すなわち、第1反射板3は、図1及び図3に示す如く、第1端部壁12に対向する面の外周縁部に周方向に等間隔を隔てて複数の脚部31を突設したものであり、各脚部31を第1端部壁12に溶着することによって、第1端部壁12にこれと近接平行する同心状態をなして固着されている。
【0014】
第1反射板3と反応炉本体1の第1端部壁12との対向面間には、隣接する脚部31,31間において拡散フィルタ2側に開口する混合ガス供給領域14aが形成されるが、この混合ガス供給領域14aには、次のように構成された混合ガス供給機構4により、水素と酸素との混合ガスである原料ガスが供給されるようになっている。
【0015】
すなわち、混合ガス供給機構4は、図1に示す如く、第1端部壁12の中心部に穿設されて原料ガス供給空間14aに開口する原料ガス供給口43と、水素を供給する水素供給管44と、酸素を供給する酸素供給管45と、両供給管44,45の下流端部を合流して原料ガス供給口43に接続する接続器46とを具備する。接続器46は、ガス流動方向に複数の小径管部分46a,46cと大径管部分46b,46dとが交互に並ぶ異径管構造をなすものであり、両供給管44,45の下流端部に分岐連結された第1小径管部分46aと、第1小径管部分46aの下流端部である合流端部に連結された第1大径管部分46bと、第1大径管部分46bの下流端部に連結された第2小径管部分46cと、第2小径管部分46cの下流端部に連結された第2大径管部分46dとからなる。第2大径管部分46dは、反応炉本体1の第1端部壁12への脱着部を備えたもので、原料ガス供給口43に接続されており、その内径は原料ガス供給口43及び各供給管44,46と同一に設定されている。第1及び第2小径管部分46a,46cの内径は、原料ガス供給口43及び各供給管44,45より小さく設定されている。第2大径管部分46bの内径は、小径管部分46a,46cに比しては勿論、原料ガス供給口43及び各供給管44,45よりも大きく設定されている。したがって、両供給管44,45から供給される水素と酸素とは、小径管部分46a,46cと大径管部分46b,46dとが交互に配置された接続器4内において流速変化を繰り返すことから、大径管部分46b,46dでの拡散混合作用と相俟って、良好に混合された状態で原料ガス供給口43から原料ガス供給空間14aに導入される。この例では、原料ガス供給口43及び各供給管44,45並びに第2大径管部分46dの内径:4.35mm、第1及び第2小径管部分46a,46cの内径:1.85mm、第1大径管部分46bの内径:10.7mmに設定してあり、水素と酸素との混合は、特に、拡径率が最大となっている第1小径管部分46aから第1大径管部分46bへのガス流入による拡散混合作用によって効果的に行なわれる。
【0016】
反応炉本体1の内周面であって第2室15に面する部分、つまり周壁11における拡散フィルタ2より下方の部分(第2有底筒体1bの周壁部)の内面及び第2端部壁13(第2有底筒体1bの底壁部)の上面には、真空蒸着法等により、その全面に亘って白金触媒膜5が被覆形成されている。白金触媒膜5の膜厚は、0.1〜3μmとしておくことが好ましい。白金触媒膜5が形成される反応炉本体1の内周面部分には、図2に示す如く、TiN,TiC,TiCN等からなるバリヤ膜51(膜厚は0.1〜10μmとしておくことが好ましい)を下地膜として形成し、このバリヤ膜51上に白金触媒膜5を形成するようにすることが好ましい。この例では、当該内周面部分にTiN膜たるバリヤ皮膜51(膜厚:約5μm)をイオンプレーティング法により形成した上、このバリヤ膜51の表面に白金膜たる白金触媒膜5(膜厚:約1μm)を真空蒸着法により形成している。なお、白金触媒膜5及びバリヤ皮膜51の形成手法は任意であり、例えば、白金触媒膜5は、真空蒸着法の他、イオンプレーティング法,イオンスパッタリング法,化学蒸着法,ホットプレス法等により形成することができ、またバリヤ膜51は、イオンプレーティング法の他、イオンスパッタリング法,真空蒸着法,化学蒸着法,ホットプレス法,溶射法等によって形成することができ、更にバリヤ皮膜51がTiN等の導電性材で構成される場合にはメッキ法により形成することも可能である。
【0017】
第2室15には、円板状の第2反射板6が白金触媒膜5に近接対向する状態で配置されている。すなわち、第2反射板6は、図1及び図3に示す如く、反応炉本体1の第2端部壁13に対向する面の外周縁部に周方向に等間隔を隔てて複数の脚部61を突設したものであり、各脚部61を第2端部壁13に溶着することによって、第2端部壁13にこれと近接平行する同心状態をなして固着されている。
【0018】
而して、第2反射板6と第2端部壁13との対向面間には、隣接する脚部61,61間において拡散フィルタ2側に開口する水分発生空間15aが形成されるが、第2反射板6の径は、図1及び図3に示す如く、水分発生空間15aの開口部(隣接する脚部61,61間に形成される開口部)15bが拡散フィルタ2の外周縁部の近傍に位置するように、つまりで当該反射板6の外周縁部が反応炉本体1の周壁11の内面に近接されるように、設定されている。なお、第2反射板6と反応炉本体1の第2端部壁13との対向間隔つまり第2反射板6の下面と白金触媒膜5の上面(表面)との上下間隔は、一般に、0.5〜2.0mmに設定しておくことが好ましく、この例では1mmに設定してある。また、第2反射板6における白金触媒膜5との対向面つまり当該反射板6の下面にも、白金触媒膜5と同等の白金膜を形成しておくことが可能である。
【0019】
反応炉本体1の第2端部壁13の中心部には、水分発生空間15aに開口する水分ガス取出口7が穿設されている。この水分取出口7には、後述する如く第2室15で発生した水分又は水分ガスを取り出す取出管71が接続されている。
【0020】
反応炉本体1には、これを所定温度に加熱保持する温度制御機構8が付設されている。この温度制御機構8は、図1に示す如く、反応炉本体1を加熱するヒータ81とヒータ81をオン・オフ制御する制御器(図示せず)と反応炉本体1を冷却する冷却器82とを具備する。ヒータ81は、いわゆるラビットヒータであり、円板状のヒータ押さえ83により反応炉本体1の上下面に接触固定されている。制御器は、ヒータ81をオン・オフすることにより、反応炉本体1の温度(炉温度)を、所定の適正温度(水素混合ガスの発火温度よりも低い温度であって水素と酸素との反応が効果的に行なわれる温度であり、一般に、400℃以下に設定しておくことが好ましい)に保持するものである。冷却器82は各ヒータ押さえ83に櫛歯状の冷却フィン82aを取り付けてなり、水素と酸素との反応熱による炉温度の上昇を可及的に防止して水分発生反応の安定化を図るべく、反応炉本体1からの放熱を促進させるように構成されている。
【0021】
なお、反応炉本体1及び反射板3,6等は、ステンレス鋼等の耐熱性材で構成されている。この例では、SUS316Lを使用している。
【0022】
このような構成をなす第1反応炉にあっては、原料供給口43から原料ガス供給空間14aに供給された原料ガス(水素と酸素との混合ガス)は、第1反射板3によって更には拡散フィルタ2を透過することによって拡散されつつ、第1室14から第2室15へと導入される。第2室15に導入された原料ガスは、そのまま或いは第2反射板6で再拡散された上で、開口部15bから水分発生空間15aに流入する。そして、水分発生空間15aに流入した原料ガスは水分ガス取出口7へと流動するが、この間において、水素と酸素とは白金触媒膜5に接触することによりラジカル化され、ラジカル化された水素と酸素は瞬時に反応して水に変換される。第1反応炉にあっては、白金触媒膜5が水分発生空間15aのみならず、当該空間15a外にも形成されていることから、水素と酸素との反応は当該空間15a外においても行なわれることになるが、その反応領域は水分発生空間15aに比して極く僅かであるから、水素と酸素との反応はその大半が水分発生空間15aにおいて行なわれることになる。しかも、水分発生空間15aは、白金触媒膜5とこれに近接して対向する第2反射板6との極めて狭い空間であることから、水素及び酸素と白金触媒膜5との接触が効果的に行なわれることなり、且つその接触が水分ガス取出口7に至るまで継続して行なわれることになる。したがって、水素又は酸素の一部が未反応のまま水分ガス取出口7に至ったり、一旦ラジカル化されたものが元の状態に戻って水分ガス取出口7に至るようなことがなく、水素と酸素との反応が効率よく適正に行なわれ、水分発生反応率の大幅な向上を図ることができる。
【0023】
ところで、従来反応炉においては、冒頭で述べた如く、混合器140で混合させた水素と酸素とを原料ガス供給管104により原料ガス供給口143へと移送させるようにしていたため、両ガスの分子量差等により、水素と酸素とが原料ガス供給管104内を流動する間に分離し、分離状態で第1室114に供給される虞れがある。その結果、水素と酸素との反応応答性が悪くなり、このことが水分発生反応率の一定以上の向上を妨げる一因ともなっていた。しかし、第1反応炉にあっては、前述した如く、異径管構造をなす接続器46により充分に混合された原料ガスがそのまま原料ガス供給口43から第1室14に供給されることから、水素と酸素との反応応答性が向上する。このことによって、水分発生反応率が更に向上する。
【0024】
また、上記した如く、水分発生反応が、専ら、極く狭い空間である水分発生空間15aで行なわれることから、当該空間15aでの反応熱による温度上昇は極めて高くなる。したがって、ヒータ81の制御によっては炉温度を適正に維持することができず、炉温度が異常に上昇して水素混合ガスの発火温度に達する虞れがある。しかし、第1反応炉にあっては、前述した如く、反応炉本体1に冷却フィン82aで構成される冷却器82を取り付けて、放熱を促進させるように工夫していることから、炉温度が適正に維持されて、反応の安定化と水分発生反応率の向上とが図られる。
【0025】
これらのことから、第1反応炉にあっては、未反応のまま水分取出口107に到達する割合が極めて減少し、従来反応炉に比して反応効率及び応答性が大幅に向上し、99%を超える水分発生反応率を確保することができる。しかも、水分発生反応が専ら第2反射板6と第2端部壁13との間の狭い空間15aで行なわれる構成としたことから、従来反応炉に比して、白金触媒膜5が形成される第2室15の容積、ひいては反応炉本体1を大幅に小型化することができる。
【0026】
これらの点については、第1反応炉を使用して、第2室15の容積:45.8cc、水分発生量:1000sccm、炉温度:約400℃の条件下で行なった水分発生実験(10時間連続運転)により確認することができた。すなわち、この水分発生実験にあっては、供給管44,45から接続器46への水素供給量と酸素供給量との割合を変えながら、各々の場合において、水分ガス取出口7から流出する水分を測定し、水分発生反応率を求めた。その結果は、図4に示す通りであり、H2 リッチ,O2 リッチの何れにおいても、約99.7%以上の水分発生反応率が得られた。
【0027】
また、図5及び図6は第2の実施の形態を示したもので、この実施の形態における本発明に係る水分発生用反応炉(以下「第2反応炉」という)は、以下の点を除いて、第1反応炉と同一構造をなすものである。
【0028】
すなわち、第2反応炉の反応炉本体1にあっては、図5に示す如く、両端部壁12,13の対向面を同一又は略同一の曲率半径をなす球面形状となし、第2反射板6をこの球面と平行をなす形状,配置のものに構成してある。なお、第2反射板6と第2端部壁13に形成した白金触媒膜5との対向間隔は、第1反応炉におけると同様である。また、第2反応炉の混合ガス供給機構4にあっては、、図4及び図5に示す如く、第1端部壁12の中心部に、第1端部壁12の下面(反応炉本体1の内面)に開口する混合通路4aとこの通路4aから分岐して第1端部壁12の上面(反応炉本体1の外面)に開口する第1及び第2ガス通路4b,4cとを形成して、第1ガス通路4bに水素供給管44を接続すると共に第2ガス通路4cに酸素供給管45を接続して、水素と酸素とが混合ガス供給空間14aに供給される直前で混合されるように工夫してある。このように水素と酸素とを混合した直後に混合ガス供給空間14aに供給させるようにすることにより、両ガスを分離しない適正な混合ガス状態で第1室14に供給させることができ、高応答性を確保することができる。また、第1反射板3は、複数の孔31aを形成した円筒体31を介して、第1端部壁12に取り付けられている。
【0029】
また、図7は第3の実施の形態を示したもので、この実施の形態における本発明に係る水分発生用反応炉(以下「第3反応炉」という)は、以下の点を除いて、第2反応炉と同一構造をなすものである。
【0030】
すなわち、第2反応炉の混合ガス供給機構4にあっては、、図7に示す如く、第1端部壁12の中心部に、混合ガス供給空間14aに開口する第1及び第2ガス通路4d,4eを各別に穿設し、第1ガス通路4dに水素供給管44を接続すると共に第2ガス通路4eに酸素供給管45を接続して、水素と酸素とを混合ガス供給空間14aにおいて混合させるように工夫してある。
【0031】
第2反応炉及び第3反応炉の何れにおいても、第1反応炉と同様の水分発生実験を行なうことにより、99%を超える水分発生反応率が得られることが確認された。但し、第1室14に供給される水素と酸素との混合度は、混合ガス供給機構4の構造上、第3反応炉より第2反応炉の方がやや高く、更に第2反応炉よりも第1反応炉の方がやや高い。
【0032】
なお、本発明は上記した各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において適宜に改良,変更することができる。例えば、拡散フィルタ2としては、このように全面をガス透過部としたものの他、外周側部分のみをガス透過部(環状のガス透過部)としたものを使用することも可能である。また、白金触媒膜5は、第2室15に面する反応炉本体1の内面部分全体に被覆形成せず、第2反射板6に対向する部分にのみ形成しておいてもよい。すなわち、水素と酸素との反応が、水分発生空間15aのみにおいて行なわれるようにしておいてもよい。また、冷却器82としては、上記した放熱ファンによる他、反応炉本体1をファン等による空冷,水冷手段を採用することができる。例えば、水素と酸素との反応熱により最も高温となる第2端部壁13を、その下方に設置したファンにより空冷するようにしてもよい。また、反射板3,6は、前記した脚部31,61を設けず、端部壁12,13にスポット溶接しても、又はネジ等の固定具によりスペーサを介して端部壁12,13に固定するようにしてもよい。
【0033】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、冒頭で述べた従来反応炉における問題を解決して、99%を大幅に超える水分発生反応率と高応答性の下に、安全に1000sccm以上の水分を発生させることができ、小型で且つ極めて実用的な水分発生用反応炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1反応炉を示す縦断正面図である。
【図2】図1の要部を拡大して示す詳細図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う要部の横断底面図である。
【図4】第1反応炉における水分発生反応率と原料ガスのガス過剰度との関係を示す曲線図である。
【図5】第2反応炉を示す縦断正面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う要部の横断底面図である。
【図7】第3反応炉を示す縦断正面図である。
【図8】従来反応炉を示す縦断正面図である。
【図9】従来反応炉における水分発生反応率と経過時間との関係を示す曲線図である。
【符号の説明】
1…反応炉本体、2…拡散フィルタ、3…第1反射板、4…混合ガス供給機構、5…白金触媒膜、6…第2反射板、7…水分ガス取出口、8…温度制御機構、11…周壁、12…第1端部壁、13…第2端部壁、14…第1室、14a…混合ガス供給空間、15…第2室、15a…水分発生空間、15b…水分発生空間の開口部、43…原料ガス供給口、44…水素供給管、45…酸素供給管、46…接続器、46a,46c…小径管部分、46b,46d…大径管部分、81…ヒータ、82…冷却器、82a…放熱フィン。
Claims (4)
- 筒状の周壁とその両端部を閉塞する第1及び第2端部壁とからなる中空密閉構造の反応炉本体と、反応炉本体内を第1端部壁側の第1室と第2端部壁側の第2室とに区画するガス透過性の拡散フィルタと、反応炉本体を所定温度に加熱保持する温度制御機構と、第1端部壁に対向して第1室に配置されており、第1端部壁との間に拡散フィルタ側に開口する原料ガス供給空間を形成する第1反射板と、原料ガス供給空間に水素と酸素との混合ガスである原料ガスを供給する原料ガス供給機構と、第2端部壁に近接対向して第2室に配置されており、第2端部壁との間に拡散フィルタ側に開口する水分発生空間を形成する第2反射板と、第2端部壁に形成されて水分発生空間に開口する水分ガス取出口と、第2室における反応炉本体の内面部分であって少なくとも第2反射板に対向する部分に全面的に被覆形成された白金触媒膜とを具備する水分発生用反応炉であって、第2反射板と第2端部壁との間の水分発生用空間の拡散フィルタ側への開口部を拡散フィルタの外周縁部の近傍に位置させて、水素と酸素との反応が主として水分発生空間において行われるように構成したことを特徴とする水分発生用反応炉。
- 前記原料ガス供給機構が、第1端部壁を貫通して原料ガス供給空間に開口する原料ガス供給口と、水素を供給する水素供給管と、酸素を供給する酸素供給管と、両供給管の下流端部を合流して原料ガス供給口に接続する接続器とを具備するものであり、接続器が、ガス流動方向に複数の小径管部分と大径管部分とが交互に並ぶ異径管構造をなすものであることを特徴とする請求項1に記載する水分発生用反応炉。
- 温度制御機構が、反応炉本体を冷却する冷却器を具備するものであることを特徴とする、請求項1に記載する水分発生用反応炉。
- 冷却器が、反応炉本体の外面部に取り付けられた放熱フィンで構成されていることを特徴とする、請求項3に記載する水分発生用反応炉。
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