JP3678594B2 - 膜カートリッジの製造方法および再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、下廃水等の処理において処理槽内に浸漬設置して固液分離に使用される平板状の膜カートリッジの製造方法および再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
下廃水処理、汚泥濃縮などで使用される固液分離装置に、図6に示したような浸漬型膜分離装置1がある。この膜分離装置1は、ケーシング2内の上部に平板状膜カートリッジ3を配列し、その下方に散気装置4を内設したものであり、たとえば生物処理槽の内部に設置して、散気装置4により曝気し、流入する原水を生物浄化しつつ、曝気によって上昇流をなす活性汚泥混合液を膜カートリッジ3によりクロスフロー濾過(重力濾過あるいは吸引濾過)し、膜面を透過した透過水をチューブ5、集水管6、透過水導出管7を通じて槽外へ導出するようにしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した膜分離装置1の主たる構成要素である膜カートリッジ3は、剛性を有する樹脂製濾板8の表裏各面に有機濾過膜9を、膜周縁部において接着剤や超音波で溶着固定したものであり、曝気空気や上昇水流によって上方へ煽られることもあって、溶着部に疲労破壊が発生し易い傾向にある。
【0004】
一方、濾過膜9自体は、基材としての不織布の表面に膜材をコーティングしてなるポリオレフィン系樹脂膜であり、活性汚泥に対する耐久性や耐薬品性に優れているので、溶着部より先に濾過膜9が破損することはまずない。
【0005】
このため、溶着部が破損するまでは汚染状況に応じた薬品で洗浄することによって透過性を回復させるようにしており、溶着部の破損を防止あるいは容易に補修できるようにすることが課題となっている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、処理槽内に浸漬設置して固液分離に使用される平板状の膜カートリッジを製造するに際し、剛性を有する濾板の表面に配置した有機濾過膜を膜周縁部において溶着固定し、溶着部に沿う膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤を帯状に塗布するようにしたものである。
【0007】
また本発明は、濾板の表面に有機濾過膜を膜周縁部において溶着固定し、溶着部に沿う膜周縁部を補強用軟質接着剤で覆ってなり、処理槽内に浸漬設置して固液分離に使用した平板状の膜カートリッジを再生するに際し、前記膜カートリッジを次亜塩素酸ソーダ液に浸漬して補強用軟質接着剤を溶解除去し、この膜カートリッジの溶着部に沿う膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤を帯状に塗布するようにしたものである。
【0008】
ここで、補強用軟質接着剤としては、濾過膜および濾板との親和性がよく、濾過膜を劣化させることなく濾板に溶着できるものであって、次亜塩素酸ソーダで溶解できるものを使用する。
【0009】
上記した膜カートリッジの製造方法によれば、軟質接着剤が濾過膜を溶かして濾過膜と一体となって濾板に接着されるので、溶着部に沿う膜周縁部が全周にわたって補強されることになり、また軟質接着剤自体は硬化後も柔軟性を有して非塗布部分との境界に力がかかることがなく、曝気空気や上昇水流による引張力によっても溶着部に疲労破壊は生じにくい。
【0010】
このような、軟質接着剤で膜周縁部を覆って補強した膜カートリッジは、処理槽内に浸漬設置して使用する間に接着剤が一部破損したり剥がれたりする。上記した膜カートリッジの再生方法によれば、塗布した軟質接着剤を次亜塩素酸ソーダ液によって溶解除去し、そのうえで再塗布するので、塗布面が均一になって高い接着強度が得られ、軟質接着剤が残存する場合に比べて外観も向上する。次亜塩素酸ソーダ液には有機性膜汚染物質も溶解するので、濾過機能も向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0012】
本発明に係る膜カートリッジは、先に図6を用いて説明したような浸漬型膜分離装置に配列するものであって、従来のものとほぼ同様の構成を有している。
【0013】
すなわち、膜カートリッジ3は濾板8の表裏各面に有機濾過膜9を設けている。濾板8は剛性を有するABS樹脂などの板体であり、図1に示したように、表面で開口する透過水流路10を内部に形成するとともに、この透過水流路10に連通する透過水取出口11を上部に設けている。濾過膜9は、芯材かつスペーサをなす不織布の表面に膜材をコーティングしてなるポリオレフィン系有機膜である。
【0014】
このような膜カートリッジ3を製造するに際しては、図2に示したように、濾板8の表裏各面を覆って濾過膜9を配置し、膜周縁部において超音波(熱、接着剤でもよい)により水密的に溶着固定する。そして、図3および図4に示したように、溶着部12に沿う膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤13を帯状に塗布する。
【0015】
このようにすることにより、軟質接着剤13が濾過膜9を溶かして濾過膜9と一体となって濾板8に接着され、溶着部12に沿う膜周縁部が全周にわたって補強される。このため、この膜カートリッジ3を膜分離装置に配列し、活性汚泥混合液などに浸漬して、曝気空気(あるいは膜面洗浄ガス)や上昇水流に曝す状態において固液分離を行った時も、膜周縁部における強度が増していて、かつ軟質接着剤13自体は硬化後も柔軟性があって非塗布部分との境界に力がかかることはなく、曝気空気や上昇水流による引張力が膜全周の補強部に分散されることもあって、溶着部12における疲労破壊は生じにくい。
【0016】
次に、このような膜カートリッジ3の再生方法を説明する。
【0017】
膜分離装置を運転する間に膜カートリッジ3に次第に目詰まりが生じ、濾過性能が低下してくるので、年1〜2回程度は薬液洗浄を行うことにより膜カートリッジ3を再生し、濾過性能を回復させる。
【0018】
その際には、膜カートリッジ3を水洗浄して膜表面の活性汚泥などを除去し、その後に有効塩素濃度0.5〜1%の次亜塩素酸ソーダ液に1〜2時間浸漬することにより有機系の膜汚染物質を溶解除去する。膜汚染状況によってはさらに(あるいはこの次亜塩素酸ソーダ液に代えて)、シュウ酸、クエン酸、塩酸などの0.5〜1%薬液により洗浄して、無機系の膜汚染物質を溶解除去する。各洗浄工程間には適宜に濯ぎを行って洗浄薬液の浪費を回避する。
【0019】
軟質接着剤13の一部破損や剥がれなど、溶着部12近傍の劣化が認められた時には、以下のようにして膜カートリッジ3を再生する。
【0020】
すなわち、膜カートリッジ3を上記と同様にして水洗浄および薬品洗浄し、その後に有効塩素濃度5〜12%の高濃度次亜塩素酸ソーダ液に数時間から一昼夜浸漬して、膜細孔に侵み込んだ軟質接着剤13まで溶解除去する。そして、この膜カートリッジ3を水濯ぎし、乾燥させた後、製造時と同様にして溶着部12に沿う膜周縁部を覆って同一の軟質接着剤13を帯状に塗布する。
【0021】
このようにすることにより、軟質接着剤13が残存している上に重ね塗りする場合に比べて、塗布面が均一状態であるため高い接着強度が得られ、外観も向上する。同時に、次亜塩素酸ソーダ液によって有機性の膜汚染物質も除去されるため濾過性能も向上する。
【0022】
溶着部12が一部破損していたり、強度が極端に低下している場合には、軟質接着剤13の塗布に先立って、図5に示したように濾過膜9と同一素材の適当大きさの補修膜14を当該部分にあてがい、軟質接着剤13で接着しておく。
【0023】
軟質接着剤13としては、濾板8および濾過膜9との親和性がよく、濾過膜9を劣化させることなく濾板8に溶着できるものであって、次亜塩素酸ソーダで溶解できるものであれば何でもよい。乾式硬化性、湿式硬化性を問わず使用できるが、湿式硬化性の接着剤の方が、膜カートリッジ3を乾燥させることなく再生することができ、また完全に乾燥させることなく水中に戻せるため好都合である。タケライトA−2510(武田薬品工業(株))などの一液軟質ポリウレタン(エステル系)接着剤は、低粘度であって濾過膜の細孔に侵入しつつ濾過膜を溶かし易く、また容易に塗布できることもあって好適な接着剤である。
【0024】
これに対して、塩化ビニル系接着剤のような硬質乾式接着剤では、完全に乾燥させないと接着効果が低いという理由で補修に不向きであるだけでなく、溶剤の少ない高粘度のタイプのものでは、濾過膜を溶かすことなくその上に乗るような状態で硬化してしまうため十分な強度が得られず、長期間使用すると、濾過膜を構成する膜材と一体となって不織布から脱落したり、また柔軟性がないため塗布境界部に破損が生じたりし易い。
【0025】
なお、濾板8における透過水流路10や透過水取出口11は上記した位置、形状に限定されず、種々構成すればよい。
【0026】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、浸漬型平板状膜カートリッジを製造するに際し、濾板の表面に有機濾過膜を膜周縁部において溶着固定し、溶着部に沿う膜周縁部を軟質接着剤で補強するようにしたので、溶着部における疲労破壊を防止できる。
【0027】
しかも、このような浸漬型平板状膜カートリッジを、致命的な破損が生じる前に軟質接着剤を溶解除去し、その後に再塗布することによって再生するようにしたので、高い接着強度が得られ、外観が向上し、同時に濾過性能が回復することもあって、膜カートリッジの寿命を延ばすことができる。
【0028】
その結果、膜カートリッジの交換頻度を低減することができ、広く有用性が認められている浸漬型膜分離装置の使用をその運転維持管理費の低減によって図れるだけでなく、資源の有効利用・リサイクルの観点から有意義である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態において膜カートリッジを製造するに際し、膜カートリッジの構成部材として用いる濾板を示した説明図である。
【図2】図1に示した濾板の表面に濾過膜を溶着固定した状態を示した説明図である。
【図3】図2に示した濾過膜の膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤を塗布した状態を示す平面図である。
【図4】図2に示した濾過膜の膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤を塗布した状態を示す一部拡大断面図である。
【図5】溶着部に補修膜をあてがってから補強用軟質接着剤を塗布した状態を示す一部拡大断面図である。
【図6】従来よりある膜分離装置の斜視図である。
【符号の説明】
3 膜カートリッジ
8 濾板
9 濾過膜
12 溶着部
13 補強用軟質接着剤
Claims (2)
- 処理槽内に浸漬設置して固液分離に使用される平板状の膜カートリッジの製造方法であって、剛性を有する濾板の表面に配置した有機濾過膜を膜周縁部において溶着固定し、溶着部に沿う膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤を帯状に塗布することを特徴とする膜カートリッジの製造方法。
- 濾板の表面に有機濾過膜を膜周縁部において溶着固定し、溶着部に沿う膜周縁部を補強用軟質接着剤で覆ってなり、処理槽内に浸漬設置して固液分離に使用した平板状の膜カートリッジを再生するに際し、前記膜カートリッジを次亜塩素酸ソーダ液に浸漬して補強用軟質接着剤を溶解除去し、この膜カートリッジの溶着部に沿う膜周縁部を覆って補強用軟質接着剤を帯状に塗布することを特徴とする膜カートリッジの再生方法。
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JP00477099A JP3678594B2 (ja) | 1999-01-12 | 1999-01-12 | 膜カートリッジの製造方法および再生方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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Family Applications (1)
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JP00477099A Expired - Lifetime JP3678594B2 (ja) | 1999-01-12 | 1999-01-12 | 膜カートリッジの製造方法および再生方法 |
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JP5315728B2 (ja) * | 2008-03-06 | 2013-10-16 | 東レ株式会社 | 膜エレメント |
-
1999
- 1999-01-12 JP JP00477099A patent/JP3678594B2/ja not_active Expired - Lifetime
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