JP3677834B2 - 鉄筋コンクリート造地下室構築用ユニットの接続部の構造 - Google Patents

鉄筋コンクリート造地下室構築用ユニットの接続部の構造 Download PDF

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嘉人 井上
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、場所打ちコンクリートにより構築される鉄筋コンクリート造の地下室に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、場所打ちコンクリートによる地下室を構築するため、鉄筋組立体と、該鉄筋組立体に固定され該鉄筋組立体を貫通し、横方向に伸びる複数の鉄筋からなる継手と、前記鉄筋組立体の少なくとも一方の面を覆うモルタルやコンクリートからなる外装板とを有するユニットが用いられている(特開平6−41991号参照)。
【0003】
複数のユニットは、地表に解放する穴の壁部に沿って配置され、互いに隣り合う一対のユニットは該ユニットから突出する前記継手を互いに重ね合わせることにより連結される。前記外装板は、後にユニット内に打設されるコンクリートのための型枠としての作用をなす。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来の例にあっては、先に配置されたユニットの横隣に他のユニットを配置するとき、両ユニットから突出する継手が互いに他の一方のユニット内に受け入れられるように、前記他のユニットをこれが前記先に配置されたユニットに対向するように穴内に降ろし、次に、前記先に配置されたユニットに向けて前記他のユニットを横方向へ移動し、前記先に配置されたユニット突き合わせる。
【0005】
しかし、地下室を構築するための穴は、通常、必要最小限の大きさに設定されており、最後に配置される他のユニットを横方向へ移動させるためのスペースを有しない。したがって、最後の他のユニットの配置のための作業を必要とし、このため、地下室の構築に余分な労力、時間、費用等を必要とする。
【0006】
本発明の目的は、場所打ちコンクリートによる鉄筋コンクリート造の地下室の構築に必要な労力および時間を軽減することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鉄筋コンクリート造地下室の構築に用いられる一対のユニットの接続部の構造であって、各ユニットがワイヤメッシュからなる鉄筋を有し、一方のユニットは、前記鉄筋に固定され該鉄筋と部分的に重なり合うワイヤメッシュからなる継手筋を有し、他方のユニットは、該他方のユニットが前記一方のユニットの隣に下降されるとき、前記一方のユニットの継手筋の一部が前記鉄筋と重なり合うようにこれを受け入れる空間を有する。
前記他方のユニットは、前記一方のユニットが前記他方のユニットの隣に下降されるとき、前記一方のユニットの継手筋の一部が前記鉄筋と重なり合うようにこれを受け入れる空間を有するものとすることができる。
【0008】
【発明の作用および効果】
本発明によれば、互いに隣接して配置される両ユニットの一方を他方のユニットの隣に下降させるとき、両ユニットの鉄筋相互が継手筋と部分的に重なり合うことから、ユニットの縦方向への移動のみにより、ユニット相互に継手を介在させることができる。したがって、従来におけるユニットの横移動が必要でなく、また、最後のユニットの配置のための特別な作業を必要としない。このため、鉄筋コンクリート造の地下室の構築に必要な労力および時間、さらに費用を節減することができる。
【0009】
また、本発明によれば、前記鉄筋および継手筋の双方がワイヤメッシュからなることから、単鉄筋からなる継手筋同士を互いに重ね合わせる場合と比べて、継手長を短くすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
図1を参照すると、半地下形式の地下室と称される、一部が地中にありかつ他の一部が地上にある鉄筋コンクリート造の地下室を構築するための骨組をなす構造体の一部が符号10で示されている。構造体10は、地表に解放する、矩形の横断面形状を有する穴11の内部で組み立てられる。
【0011】
図1〜図10に示すように、構造体10は、互いに相対する一組の鉄筋(ダブル配筋)からなる鉄筋組立体、または、前記一組の鉄筋の内の一方のみからなる鉄筋(シングル配筋、図示せず)を含む複数のユニット、すなわち、平面で見て矩形の四隅に配置された4つの底盤ユニット12と、各底盤ユニット上に配置された壁ユニット14と、前記矩形の4辺に沿って配置された6つの他の底盤ユニット16と、各底盤ユニット16上に配置された他の壁ユニット18とを含む(図2参照)。
【0012】
上下に隣接する前記底盤ユニットと壁ユニットとは後記継手筋を介して互いに接続され、横方向に互いに隣接する底盤ユニット相互、および、横方向に互いに隣接する壁ユニット相互もまた後記継手筋を介して接続されている。壁ユニット14,18の上部は穴11から地上に突出している。なお、図7に示すユニット相互間の横方向を向く矢印は、接続される相手を示すものであって、接続のための移動方向を示すものではない。
【0013】
前記矩形の四隅に配置された底盤ユニット12は、穴11の底部の一部(水平部)と穴11の互いに直交する両壁部の一部とに相対して伸びる部分(水平部)を有し、また、前記矩形の4辺に沿って配置された底盤ユニット16は穴11の底部の一部(水平部)とこれに直交する壁部の一部とに相対して伸びる部分(垂直部)を有する。このため、複数の底盤ユニット12,16は穴の底部の中央部に矩形の平面形状を有する空間19を規定する(図1参照)。
【0014】
また、前記矩形の四隅に配置された壁ユニット14は、穴11の前記互いに直交する両壁部の一部に相対して伸びる部分(垂直部)と地下室の天井の一部を形成する部分(水平部)とを有し、また、前記矩形の4辺に沿って配置された壁ユニット18は、穴11の壁の一部に相対して伸びる部分(垂直部)と天井の一部を形成する部分(水平部)とを有する。このため、壁ユニット14,16は、地上に、前記天井の一部を形成する部分が取り囲む矩形の平面形状を有する空間20を規定する。
【0015】
構造体10は、さらに、穴11の底部上の空間19に配置された互いに相対する上下一組の鉄筋からなる鉄筋組立体21または前記一組の鉄筋の内の一方のみからなる鉄筋(図示せず)と、地上の空間20に配置された互いに相対する上下一組の鉄筋からなる鉄筋組立体22または前記一組の鉄筋の内の一方のみからなる鉄筋(図示せず)とを含む。下方の鉄筋組立体21は、上下一組の継手筋24を介して、その周囲の各底盤ユニット16の水平部に接続され、また、上方の鉄筋組立体22は、上下一組の継手筋26を介して、その周囲の各壁ユニット18の水平部に接続される。前記継手筋24,26および後記する他の継手筋も、また、互いに相対する一組のものとすることに代えて、該一組のものの内の一方のみからなるもので構成することができる。
【0016】
前記鉄筋組立体を構成する各鉄筋および各継手筋は、棒状単鉄筋の組み合わせ或いは図示の例のようなワイヤメッシュからなる。ワイヤメッシュとすることにより、前記単鉄筋の組み合わせとする場合に比べて、鉄筋組立体と継手筋との互いに重なり合う長さすなわち継手長を短くすることができる。
【0017】
図3〜図8に示すように、前記ユニットは、基本的に、互いに間隔をおかれて相対する一組の鉄筋28からなる鉄筋組立体30と、鉄筋組立体30から間隔をおかれ該鉄筋組立体を間に挟んで互いに相対する、多数の孔を有する一組の型枠32と、両型枠を間に挟んで互いに相対する一組の格子状部材34と、両格子状部材34を間に挟んでそれぞれが各格子状部材に相対しかつ該格子状部材の縁部に沿って伸びる複数の矩形のフレーム36とを含む。但し、後述するように、前記ユニットは、必要に応じて、これを構成する部材の一部を省略しまたは変更することができる。
【0018】
前記ユニットの各格子状部材34は各フレーム36に溶接され、また、各型枠32は各格子状部材34に結束線で固定され、それぞれが各フレーム36の開口を覆っている。鉄筋組立体30と、各型枠32と、格子状部材34とはこれらを貫通する複数のセパレータ38(図8参照)に溶接され、互いに間隔を保持されている。格子状部材34の一方が省略される後述の場合には、セパレータ38は筋交い48に固定される。格子状部材34と該格子状部材が溶接されたフレーム36とは、両型枠32間へのコンクリートの打設によって型枠32が膨出することを防止する補強作用を有する。互いに相対する両フレーム36は、細幅の連結板40(図8参照)により互いに連結され、間隔を保持されている。型枠32はコンクリート中に埋め殺しにされる。
【0019】
フレーム36は、実質的に前記ユニットの外形を規定することから、鉄筋組立体30、型枠32または格子状部材34に製作誤差等による不揃いがあっても、前記ユニットは高い寸法精度を有する。フレーム36は、また、ユニット相互のための良好な突き合わせ面を提供し、これが、ユニット相互の接続作業を容易にする。図示のフレームは複数の山形鋼材片を互いに接合してなる。フレーム36は、しかし、その配置を省略することができる。
【0020】
型枠32を多数の孔を有するものとすることにより、前記孔を通して、打設されたコンクリートの鉄筋組立体内における充填の程度を確認することができ、この確認に基づいて鉄筋コンクリートの品質管理を行なうことができる。型枠32の補強部材である格子状部材34は多数の大きい開口を有するため、型枠32の孔を通しての確認作業の邪魔にならない。また、前記多数の孔は打設されたコンクリートの余剰水の排出を許すため、強度および防水性の高い鉄筋コンクリートが得られる。図示の型枠32はメタルラスからなる。
【0021】
コーナー部の底盤ユニット12は、底盤の一部を規定する水平部40と、水平部40からこれと直角に上方へ伸びる比較的小さい長さの垂直部42とを有する。水平部40は、全体に矩形の平面形状を有し、垂直部42は水平部40の隣り合う矩形の二辺から直立する、互いに直交する2つの部分44,46からなる。
【0022】
水平部40および垂直部42の2つの部分44,46は、それぞれ、鉄筋組立体30を有する。水平部40の鉄筋組立体(底盤用鉄筋組立体)の一部と、垂直部の一方の部分44の鉄筋組立体(壁用鉄筋組立体)の一部とはこれらに共通の鉄筋からなる。また、水平部40の鉄筋組立体の一部と、垂直部の他方の部分46の鉄筋組立体(壁用鉄筋組立体)の一部とはこれらに共通の鉄筋からなる。このことから、水平部40と垂直部42とは一体構造を有する。また、垂直部42の両部分44,46の鉄筋組立体の一部が共通の鉄筋からなる。このことから、両部分44,46は一体構造を有する。コーナー部の複数の鉄筋組立体30を一体構造とすることにより、分離構造の鉄筋組立体を継手筋で連結する場合における該継手筋の集中配置とこれに伴う構造上の弱点の発生を回避することができる。
【0023】
底盤ユニット12にあっては、その水平部40への前記型枠の配置が省略されている。これは、穴11の底部にコンクリートを打設することにより水平部40をコンクリートで満たすことができるため前記型枠を不要とすることができるからである。また、図示の例に代えて、水平部40に設けられた一対の格子状部材34を省略することができ、また、格子状部材34の代わりに、各フレーム36にその開口の対角線上を伸びる一対の筋交い(図示せず)を固定してもよい。前記筋交いは打設されるコンクリートの流動を阻害することはない。また、前記筋交いはフレーム36、したがって底盤ユニット12を剛性を高める作用をなす。
【0024】
また、底盤ユニット12にあっては、その垂直部42の各部分44,46への前記両型枠の一方の配置が省略されている。より詳細には、穴11の壁面に相対する側(外側)には前記型枠が配置されておらず、穴11の中央部の側(内側)にのみ型枠32が配置されている。これは、穴11の前記壁面が型枠の作用をなすためである。また、図示の例では、垂直部42の各部分44,46の外側には、前記格子状部材が配置されていない。型枠の膨らみを抑制する必要がないからである。前記格子状部材の代わりに、前記水平部におけると同様、各部分44,46の外側のフレーム36に一対の筋交い48(図)が溶接されている。
【0025】
垂直部42の両部分44,46には、それぞれ、互いに相対する一組の継手筋50,52が取り付けられている。一方の両継手筋50は、これらの下部において、部分44の鉄筋組立体30に固定され該鉄筋組立体と重なり合っており、両継手筋50の上部が内外側の両フレーム36の上部から上方に突出している。両継手筋50は、さらに、これらの一部が両フレーム36の側部から横方向に突出している。前記したように、両継手筋50および両継手筋52も、また、それぞれ、単一の継手筋とすることができる。
【0026】
他方の両継手筋52は、これらの下部において、部分46の鉄筋組立体30に固定されこれと重なり合っており、これらの上部が、部分46の両フレーム36上部から上方に突出している。両継手筋52は、継手筋50と異なり両フレームの側部から突出しておらず、両継手筋52と両フレーム36の前記側部との間に間隔すなわち空間54(図7)をおかれている。この空間54は、上方および側方に解放しているため、下降される他の底盤ユニット16の後記継手筋78の一部を受け入れることができる。
【0027】
次に、コーナー部の壁ユニット14は、地下室の壁の一部を規定する、鉄筋組立体(壁用鉄筋組立体)30を含む比較的長寸法の垂直部56と、垂直部56の頂部からこれと直角に内側へ伸びる、鉄筋組立体(天井用鉄筋組立体)30を含む水平部58とを有する。垂直部56と、水平部58とは、それぞれ、次の点を除いて、コーナー部の底盤ユニット12の垂直部42と、水平部40と実質的に同じ構造を有する。
【0028】
構造の異なる第1の点は、垂直部56の互いに直交する2つの部分60,62の上部の外側に型枠(上部型枠(第2の型枠)、図示せず)が配置され、前記上部型枠にモルタル、好ましくは断熱性を有するモルタル64(図3および図4)が塗り付けられ、フレーム36の一部がモルタル64で覆われていることである。モルタル64の塗り付けは、ユニットの製作時または現場での組み立て時のいずれでも行なうことができる。モルタル64が塗り付けられた部分は、地上に突出する部分であり、地下室の地上部の該壁面をなす。前記上部型枠は、各フレーム36に固定され横方向へ伸びる複数の山形鋼材片65で仕切られている。
【0029】
第2の点は、垂直部56の両部分60,62が、これらの下部に、底盤ユニット12の垂直部の両部分44,46から突出する継手筋50,52の上部を受け入れるための空間66,68をそれぞれ有することである。空間66,68は、下方および側方に解放しているため、壁ユニット14を底盤ユニット12に向けて下降させるとき、継手筋50,52の挿入を許す。
【0030】
第3の点は、互いに相対する両継手筋70が、その一部において、垂直部56の一方の部分60の鉄筋組立体30に固定され、該鉄筋組立体と重なり合い、残りの一部が部分60の両フレーム36間から横方向へ突出していることである。継手筋70は下方の空間66を残して上下方向へ伸びている。
【0031】
第4の点は、水平部58の下方のフレーム36に型枠32が支持されかつこの型枠32にその下面からモルタル、好ましくは断熱性を有するモルタル72(図3、図4および図10参照)が塗り付けられていることである。モルタルの層72により、前記型枠の剛性が高められ、該型枠上へのコンクリートの打設の際に設置される支保工を簡易なものとすることができる。また、水平部58に打設されるコンクリートの余剰水の余剰水の垂れ落ちとこれに伴う地下空間の作業環境の悪化を防止することができる。モルタル64およびモルタル72として、後記ペーパーモルタル(商標)を用いることができる。また、水平部58の上方のフレーム36には、前記格子状部材の代わりに一対の筋交い48が取り付けられている。
【0032】
次に、他の底盤ユニット16は、地下室の底盤の一部を規定する底盤用鉄筋組立体30を有する水平部74と、水平部74からこれと直角に上方へ伸びる、壁用鉄筋組立体30を有する垂直部76とを備える。
【0033】
底盤ユニット16は、垂直部76が単一のものからなり、この点において、2つの部分44,46を有するコーナー部の底盤ユニット12と構造を異にする。底盤ユニット16の水平部74および垂直部76は、底盤ユニット12におけると同様、一体構造を有する。
【0034】
底盤ユニット16の垂直部76には、互いに相対する一対の継手筋78が取り付けられている。両継手筋78は、これらの下部において、垂直部76の鉄筋組立体30に固定され該鉄筋組立体と重なり合っており、両継手筋78の上部が内外側の両フレーム36の上部から上方に突出している。さらに、両継手筋78は、これらの横方向の一端部が両フレーム36の一方の側部から横方向に突出し、また、両継手筋76の他端部がフレーム36の他方の側部から前記一方の側部に向けて間隔をおかれた箇所に位置する。これにより、垂直部76は、その両フレーム36間に他方の側部に上方および横方向に解放する空間80を有する。空間80は、底盤ユニット16をその配置のために穴11に下降させるとき、先に配置されたコーナ部の底盤ユニット12の継手筋50の横方向に突出する部分、または、先に配置された他の底盤ユニット16の継手筋78の横方向に突出する部分を受け入れることができる(配置状態を示す図9参照)。
【0035】
次に、他の壁ユニット18は、壁の一部を規定する壁用鉄筋組立体30を有する比較的長寸法の垂直部82と、垂直部82からこれと直角に内側に伸びる、天井用鉄筋組立体30を有する水平部84とを備える。
【0036】
この壁ユニット18が、他の底盤ユニット16におけると同様、垂直部82が2つの部分ではなく単一のものからなる。この点で、コーナー部の壁ユニット14の構造と異なる。壁ユニット18の垂直部82および水平部84も、また、一体構造を有する。
【0037】
図8に示すように、壁ユニット18には、コーナー部の壁ユニット14と同様、垂直部82の外側のフレーム36の上部が山形鋼材片65で仕切られ、前記上部にメタルラスからなる型枠(上部型枠)86と、格子状部材34とが取り付けられており、さらに、上部型枠86にモルタル64が塗り付けられている。上部型枠86、その外側の格子状部材34およびこれを取り巻くフレーム36の一部および山形鋼材片65はモルタル64の層により覆われている。この上部のモルタル層は、コーナー部の壁ユニット14の上部とともに、地上における地下室の外壁面を規定する。
【0038】
また、コーナー部の壁ユニット14におけると同様、水平部84の下方のフレーム36に型枠32が支持されかつこの型枠32にその下面からモルタル72(図3〜6および図10参照)が塗り付けられている。モルタル72の層が、水平部84に打設されるコンクリートの余剰水の余剰水の垂れ落ちを防止する。また、同様に、上方のフレーム36には、前記格子状部材の代わりに一対の筋交い48が取り付けられている(図8)。
【0039】
壁ユニット18には、コーナー部の壁ユニット14の継手筋70と同様の一組の継手筋86が取り付けられている。両継手筋86は、その一部において、垂直部82の鉄筋組立体30に固定され、該鉄筋組立体と重なり合い、残りの一部が両フレーム36の一側部から横方向へ突出している。両継手筋86は、壁ユニット18の下部に下方および横方向に解放する空間88を残して上下方向へ伸びている。空間88は、壁ユニット18を先に配置された底盤ユニット16に向けて下降させるとき、底盤ユニット16から上方に突出する継手筋78を受け入れる。
【0040】
また、壁ユニット18の他方の側部、すなわち、継手筋86が設けられていない側部が下方および横方向に解放する空間90(図8参照)を有する。この空間は、壁ユニット18を下降させるとき、先に配置されたコーナー部の壁ユニット14の継手筋70または先に配置された他の壁ユニット18の継手筋86を受け入れる。
【0041】
穴11内に配置されかつ組み立てられた、上下方向および横方向に互いに隣接するユニット相互の連結は、複数の連結板92(図1)とボルト・ナット組立体(図示せず)とを用いて行なうことができる。
【0042】
ところで、構造体10はその全てが地下に埋設される全地下方式の地下室の構築に用いることができる。この場合には、穴11の壁面を型枠として利用することができるため、壁ユニット14,18の前記上部型枠(第2の型枠)を省略することができ、また、これに塗り付けられるモルタル64の層を不要とすることができる。また、壁ユニット14,18を、それぞれ、水平部58,54を有しないものとすることができ、これらは、天井を有しない地下室の構築に用いることができる。
【0043】
次に、複数の壁ユニット18に囲まれた空間20に配置される鉄筋組立体22は、その配置作業の便宜を考慮して、鉄筋組立体22の一方の鉄筋94とその下方に配置された、型枠32と同様の型枠96(図7)と、好ましくは、型枠96にその下方から塗り付けられたモルタル72(図10)の層とを含むアセンブリ97と、他方の鉄筋98とに分離されている。モルタル72の層は、壁ユニット14,18におけるモルタル72の層と同様、型枠の剛性を高めると共に打設コンクリートからの余剰水の滴下を防止する。
【0044】
アセンブリ97は、より好ましくは、型枠96の下方に配置された、格子状部材34と同様の格子状部材100と、格子状部材100の下方に配置され該格子状部材に相対しかつ該格子状部材の縁部に沿って伸びるフレーム102とを含む。格子状部材100はその縁部においてフレーム102に溶接され、型枠96は結束線で格子状部材100に固定されている。また、一方の鉄筋94はセパレータ(図示せず)を介して型枠96の上方に間隔をおかれている。フレーム102を設けることにより、アセンブリ97を開口20と整合するように正確に配置することができる。他方の鉄筋98は、アセンブリ97の配置後、コンクリートの打設前に、アセンブリ97から上方に間隔をおいて配置される。なお、アセンブリ97と鉄筋98とは、取り扱いを容易にするため、2つに分割したものとすることができる。
【0045】
次に、図11〜図18を参照して、図1〜図10に示すユニット12〜18、鉄筋組立体21、アセンブリ97等を用いて行なう地下室の築造方法を説明する。
【0046】
まず、地表に解放する矩形の横断面形状を有する穴11を形成する。図11に示す符号110および符号112は、それぞれ、穴11を掘削するために用いられた親杭および山止め壁を表わす。また、符号114および116は、それぞれ、穴11の底部に順次に敷かれた割栗石および捨てコンクリートを示す。
【0047】
次に、複数の底盤ユニット12,16を穴11の底部に該穴の壁面に沿って順次降ろす(図11)。複数の底盤ユニット12,16は矩形の四辺に沿って時計周りまたは反時計周りに配置する。例えば、底盤ユニット12をコーナー部に配置した後、図7における右側の底盤ユニット16を降ろす。このとき、底盤ユニット16の継手筋78の左端部が、先に配置された底盤ユニット12の空間54に受け入れられ、底盤ユニット12の右隣に配置される。
【0048】
また、全ての底盤ユニット12,16を配置した後、底盤ユニットの水平部40,74に囲まれた空間19から、継手筋、好ましくは相対する上下一組の継手筋117(図7参照)を互いに隣接する両底盤ユニットの前記水平部に差し込む。これにより、継手筋117は、前記両水平部の鉄筋組立体と重なり合い、互いに隣接する両底盤ユニット相互に継手が介在される。
【0049】
これに代えて、互いに隣接する両底盤ユニットのいずれか一方の水平部内に予め継手筋117を配置しておき、全ての底盤ユニットまたは互いに隣接する両底盤ユニットの配置後、継手筋117を移動させてその一部を隣接する他の一方の底盤ユニットの水平部内に配置することもできる。鉄筋組立体30の上方に開口の大きい格子34が配置されているため、鉄筋組立体30内に手を差し入れ、継手筋117の移動を容易に行なうことができる。
【0050】
底盤ユニット12,16を穴11内下降させることにより、底盤ユニット12,16を、これらの垂直部相互を継手筋50,78を介して互いに接続し、また、継手筋117を介して水平部を相互に接続し、穴11の底部に配置することができる。
【0051】
全ての底盤ユニット12,16を配置した後、底盤ユニット12,16に囲まれた空間19に鉄筋組立体21の一方の鉄筋118および他方の鉄筋120を積み重ねるように順次に配置する(図12)。
【0052】
一方の鉄筋118を配置する前または配置した後、空間19から、継手筋、図示の例では上下一組の継手筋24を各底盤ユニットの水平部40,74内、好ましくはこれらの内部の鉄筋組立体30の両鉄筋間に挿入する。
【0053】
その後、底盤ユニットの水平部40,74上および鉄筋組立体21上にコンクリート124を打設し、これらをコンクリート124中に埋設する(図13)。
【0054】
コンクリート124の硬化後、対応する底盤ユニット12,16に向けて、複数の壁ユニット14,18を順次下降させる(図14)。壁ユニット14,18の下降の順序は、例えば時計方向または反時計方向に定める。このとき、コーナー部の壁ユニット12は、その垂直部56の空間66,68が、コーナー部の底盤ユニット12の継手筋50,52および継手筋78の一部をそれぞれ受け入れ、また、他の壁ユニット18は、その垂直部82の空間88が底盤ユニット12の継手筋50の一部および他の底盤ユニット16の継手筋78の一部を受け入れる。その結果、継手筋50,52,78の突出上端部が前記壁ユニットの垂直部の継手組立体と重なり合う。
【0055】
さらに、例えば壁ユニット18の下降の間、該ユニットの垂直部の側部の空間90が、先に下降された壁ユニット14,18の継手筋70,86の突出部をその上端から下端までを順次に受け入れる。その結果、継手筋70,86の一部が壁ユニット18の垂直部の鉄筋組立体30と重なり合う。
【0056】
また、全ての壁ユニット14,18を配置した後、壁ユニットの水平部58,84に囲まれた空間20から、継手筋、好ましくは上下一組の継手筋126(図図3,4,7参照)を互いに隣接する両壁ユニットの前記水平部に差し込む。これにより、継手筋126は、前記両水平部の鉄筋組立体と重なり合う。
【0057】
これに代えて、互いに隣接する壁ユニットのいずれか一方の水平部58,84に予め継手筋126を配置しておき、全ての壁ユニットまたは互いに相対する両壁ユニットの配置後、継手筋126を移動させてその一部を隣接する他の一方の壁ユニットの水平部に配置してもよい。鉄筋組立体30の上方に筋交い48が配置されているため、これを通して鉄筋組立体30内に手を差し入れ、継手筋126を容易に移動させることができる。
【0058】
その後、複数の壁ユニットの水平部58,84が取り囲む空間20にアセンブリ97を配置する(図15)。アセンブリ97は、連結板92およびボルト・ナット組立体を用いて、水平部58,84に連結する。次いで、空間20から、継手筋、好ましくは上下一組の継手筋26の一部を各壁ユニットの前記水平部に差し込む。その後、天井用鉄筋98をアセンブリ97上に配置する。このようにして構造体10が組み立てられる(図16)(但し、底盤は先に構築されている)。
【0059】
次に、構造体10の天井を支えまた側部の間隔を維持するため、支保工128を構造体10の内部に配置する(図17)。支保工128の設置のため、天井の一部に予め出入口(図示せず)を設けておく。
【0060】
その後、穴11の壁面(山止め壁112)と、底盤ユニット12,14の垂直部の型枠(第1の型枠)32および壁ユニット14,18の垂直部の型枠(第1の型枠)32との間と、壁ユニット14,18の垂直部の型枠(第1の型枠)32と上部型枠(第2の型枠)86との間と、壁ユニット14,18の水平部上と、アセンブリ97上とにコンクリート130を打設する。その結果、半地下形式の地下室132が構築される。
【0061】
穴11の壁面と、前記底盤ユニットの垂直部および壁ユニットの垂直部の型枠との間にコンクリート130を打設することにより、穴11の壁面と前記垂直部との間への埋め戻しを不要とすることができる。
【0062】
コンクリート130の硬化後、地下室132の内壁面134に、断熱性を有するモルタルを塗り付けてモルタル層135を形成する。これにより、メタルラス32から突出するコンクリート130が規定する凹凸面を平坦なものとするとともに、地下室が有する高い気密性のために発生しやすい結露を防止することができる。また、前記モルタル層135に防水塗料を塗布することにより、地下水が侵入しやすい地下室132に良好な防水性を付与することができる。
【0063】
前記モルタルとして、新聞紙、雑誌、段ボールのような水を含みやすい紙と、変成アクリル樹脂エマルジョンと、セメントとの混合物からなるものを用いることができる。このモルタルは、商品名をペーパーモルタルとして、株式会社ハイウッドシステムにより製造されている。
【0064】
前記ペーパーモルタルからなるモルタル層は、断熱性を有する外、収縮率が小さく、このためにひび割れが生じにくく、防水塗料の下地として優れる。また、前記ペーパーモルタルは、硬化したコンクリートとの付着性に優れる。さらに、弾性を有し、高い耐衝撃性を有する。さらに、防音性、耐熱性等に優れている。
【0065】
天井に穴を有する地下室を形成するときは、アセンブリ97および天井用鉄筋98の設置を省略する。この場合は、壁ユニットの設置後、穴11の壁面と、底盤ユニット12,14の垂直部の第1の型枠32および壁ユニット14,18の垂直部の第1の型枠32との間と、壁ユニット14,18の垂直部の第1の型枠32と上部型枠(第2の型枠)86との間とにコンクリートを打設する。
【0066】
また、天井を有しない地下室を形成するときは、水平部58,84を有しない壁ユニット、すなわち垂直部のみを有する壁ユニットを使用し、アセンブリ97および天井用鉄筋98の設置を省略する。この場合は、垂直部のみの壁ユニットの配置後、穴11の壁面と、底盤ユニット12,14の垂直部の第1の型枠32および壁ユニット14,18の垂直部の第の型枠32との間と、壁ユニット14,18の垂直部の第1の型枠32と上部型枠(第2の型枠)86との間とにコンクリートを打設する。
【0067】
さらに、全地下方式の地下室を構築するときは、図14に示す工程において、前記上部型枠(第2の型枠)を有しない壁ユニットを用いる。但し、穴はこのような壁ユニットの全高にわたって収容可能で高さ寸法を有するものが設けられる。前記第2の型枠を有しない壁ユニットを各底盤ユニット12,16上に配置した後、前記壁ユニットの第1の型枠と穴の壁面との間にコンクリート打設する。
【0068】
次に、図19〜図24を参照して、地下室の他の構築方法を説明する。
【0069】
底盤ユニット12,16を配置することに代えて、穴11の各隅に、矩形状の底盤部および該底盤部の互いに隣接する2辺から上方に伸びる、互いに連なる2つの垂直部とを有するワイヤメッシュ136を配置し、かつ、両ワイヤメッシュ間に、矩形状の底盤部および該底盤部の一辺からから上方に伸びる垂直部を有する1または複数のワイヤメッシュ138を配置する。これにより、両ワイヤメッシュ136,138は穴11の底部に、穴11の中央部に空間140を残して配置される(図19)。
【0070】
その後、ワイヤメッシュ136,138上に壁ユニット142,144を立て込む。壁ユニット142,144は、前記した壁ユニット14,18から水平部58,84を取り除いたもの、すなわち壁ユニット14,18の垂直部56,82と同じ構造を有する。このとき、壁ユニット142,144の底部はワイヤメッシュ136,138の垂直部を受け入れる(図20)。
【0071】
次に、空間140に上下一組のワイヤメッシュからなる鉄筋146を配置する。下方の鉄筋146を配置した後、上下一組のワイヤメッシュからなる継手筋148を鉄筋146と各ワイヤメッ138とに関して配置する(図21)。
【0072】
その後、ワイヤメッシュ136,138の水平部上および鉄筋146上にコンクリート150を打設して底盤を形成する(図22)。
【0073】
次に、各壁ユニット1142,144の頂部に、空間151を残して、アセンブリ97と同様の構造を有するアセンブリ152を水平に取り付ける。次いで、アセンブリ97と同様のアセンブリ154を空間151に配置し、これをその周囲の各アセンブリ152に連結する(図23)。
【0074】
その後、両アセンブリ152,154上に、ワイヤメッシュからなる鉄筋156を配置する(図24)。
【0075】
その後、図17および図18に示すと同様にして、両アセンブリ152,154上にコンクリートを流し込むことにより、各壁ユニットと両アセンブリ上にコンクリートの打設を行なう。これにより、地下室を構築する。
【0076】
図示の例に代えて、図22に示すコンクリート150の打設を行なうことなく、両アセンブリ152,154および鉄筋156の配置後に両アセンブリ152,154上にコンクリートを流し込んでもよい。これによれば、ワイヤメッシュ136,138の水平部上および鉄筋146上、穴11の壁面と各壁ユニットとの間、壁ユニットの上部、およびアセンブリ152,154上に一時にコンクリートを打設することができる。
【0077】
図20に示す作業を、壁ユニット142,144として、それぞれを、外側部分157および内側部分158に分離したものを用いて行なうことができる。すなわち、外側部部分157を建て込んだ後、内側部分158を建て込み、その後、両部分157,158を相互に連結する。この相互連結の前に両部分157,158間にプラスチックシート(図示せず)を配置する。これによれば、両アセンブリ152,154上に打設されたコンクリートが硬化するとき、内側部分158は前記プラスチックシートにより前記コンクリートとは絶縁されているため、これを取りはずし、転用することができる。
【0078】
また、天井を有しない地下室を形成するときは、図23に示す工程を省略し、図22に示す工程の終了後、穴11の壁面と、底盤ユニット12,14の垂直部の第1の型枠32および壁ユニット14,18の垂直部の第の型枠32との間と、壁ユニット14,18の垂直部の第1の型枠32と上部型枠(第2の型枠)との間とにコンクリートを打設する。
【0079】
さらに、全地下方式の地下室を構築するときは、図20に示す工程において、前記上部型枠(第2の型枠)を有しない壁ユニットを用いる。但し、穴はこのような壁ユニットの全高にわたって収容可能で高さ寸法を有するものが設けられる。前記上部型枠(第2の型枠)を有しない壁ユニットを各底盤ユニット136,138上に配置した後、前記壁ユニットの第1の型枠と穴の壁面との間にコンクリート打設する。
【図面の簡単な説明】
【図1】構造体の部分斜視図である。
【図2】構造体の概略的な平面図である。
【図3】図2の線3−3に沿って得た縦断面図である。
【図4】図2の線4−4に沿って得た縦断面図である。
【図5】図2の線5−5に沿って得た縦断面図である。
【図6】図2の線6−6に沿って得た縦断面図である。
【図7】各ユニットの接続関係を概略的に示す斜視図である。
【図8】壁ユニットの外側面を示す斜視図である。
【図9】底盤ユニットを組み立てた状態の概略的な斜視図である。
【図10】構造体の内部の天井部近傍を示す概略図である。
【図11】穴内に底盤ユニットを配置する工程を示す図である。
【図12】穴内に底盤用鉄筋を配置する工程を示す図である。
【図13】底盤形成用コンクリートを打設する工程を示す図である。
【図14】穴内に壁ユニットを建て込む工程を示す図である。
【図15】天井用のアセンブリを配置する工程を示す図である。
【図16】天井用鉄筋を配置する工程を示す図である。
【図17】支保工を配置する工程を示す図である。
【図18】天井部分および側壁部分にコンクリートを打設する工程を示す図である。
【図19】穴内に底盤用ワイヤメッシュを配置する工程を示す図である。
【図20】穴内に壁ユニットを建て込む工程を示す図である。
【図21】穴内に底盤用鉄筋を配置する工程を示す図である。
【図22】底盤用鉄筋上にコンクリートを打設する工程を示す図である。
【図23】天井用アセンブリを配置する工程を示す図である。
【図24】天井用鉄筋を配置する工程を示す図である。
【符号の説明】
10 構造体
11 穴
12,16 底盤ユニット
14,18 壁ユニット
19,20 ユニットが取り囲む空間
24,26,50,52,78,117,126 継手筋
30 鉄筋組立体
32,86 型枠および上部型枠(第2の型枠)
34 格子状部材
36 フレーム
40,58,74,84 水平部
42,56,76,82 垂直部
54,66,68,80,88,90 継手筋を受け入れる空間
124 コンクリート
136 モルタル層

Claims (2)

  1. 鉄筋コンクリート造地下室の構築に用いられる一対のユニットの接続部の構造であって、各ユニットがワイヤメッシュからなる鉄筋を有し、一方のユニットは、前記鉄筋に固定され該鉄筋と部分的に重なり合うワイヤメッシュからなる継手筋を有し、他方のユニットは、該他方のユニットが前記一方のユニットの隣に下降されるとき、前記一方のユニットの継手筋の一部が前記鉄筋と重なり合うようにこれを受け入れる空間を有する、ユニットの接続部の構造。
  2. 鉄筋コンクリート造地下室の構築に用いられる一対のユニットの接続部の構造であって、各ユニットがワイヤメッシュからなる鉄筋を有し、一方のユニットは、前記鉄筋に固定され該鉄筋と部分的に重なり合うワイヤメッシュからなる継手筋を有し、他方のユニットは、前記一方のユニットが前記他方のユニットの隣に下降されるとき、前記一方のユニットの継手筋の一部が前記鉄筋と重なり合うようにこれを受け入れる空間を有する、ユニットの接続部の構造。
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