JP3677688B2 - 熱硬化性樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は熱硬化性樹脂、シラノ−ル基と反応性の官能基を含有するオルガノポリシロキサン、シリコンアルコキシド、水、触媒及び有機溶媒よりなる熱硬化性樹脂組成物、その製造方法及び樹脂硬化物に関するものであり、成形材料、断熱材、塗料、摺動材、積層材等に有用である。
【0002】
【従来の技術】
有機ポリマ−材料のうち熱硬化性樹脂は現在電気、電子、自動車、建築、土木を始めとする広い分野で使用され、これら分野での要求性能の高度化に伴い、熱硬化性樹脂特性を改良する研究が幅広く行われている。しかし、一般に熱硬化性樹脂はその三次元架橋特性に基づき脆性的であることから、その脆さ、即ち耐衝撃性を改良することが重要な課題となっている。
【0003】
そのために従来より、熱硬化性樹脂に液状樹脂やゴム系樹脂などガラス転移温度の低い樹脂を添加・複合化することで耐衝撃性を改良することが広く検討され、一部実用に共されている。例えばフェノ−ル樹脂やエポキシ樹脂に、天然ゴムやアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、又ゴム系エマルジョンやラテックス、さらにはポリエチレンテレフタレ−トやポリウレタンなどの熱可塑性樹脂などを外部添加する方法や、長鎖のポリエチレン結合やウレタン結合などを熱硬化性樹脂内部に導入する方法などが報告されている(例えば、熱硬化性樹脂、13巻、3号、32〜42頁)。
【0004】
しかしながら熱硬化性樹脂にかかるガラス転移温度の低い樹脂を添加混合したり、導入するこれらの方法では耐衝撃性は向上しても、一方では熱硬化性樹脂の特徴である耐熱性を低下させたり、あるいは弾性率や曲げ強度などの他の静的力学物性を低下させたりする場合が多く、実用上の大きな問題となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明が解決しようとする課題は、良好な耐衝撃性を有し、且つ耐熱性、力学物性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは熱硬化性樹脂の耐熱性を保持したまま、耐衝撃性や曲げ強度、弾性率などの力学物性を改良した熱硬化性樹脂を得るべく鋭意研究に取り組んだ結果、熱硬化性樹脂溶液中に特定のオルガノポリシロキサンとシリコンアルコキシドと水と触媒を含ませてなる熱硬化性樹脂組成物から得られる樹脂硬化物がオルガノポリシロキサン及びシリカを共に微分散状態で含有した均質な樹脂複合体となり、該樹脂硬化物が上記問題点を解決し優れた特性を示すことを見いだし本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち本発明は、(A)熱硬化性樹脂100重量部と、(B)シラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン3〜30重量部と、(C)シリコンアルコキシドをシリカ固形分として2〜25重量部と、(D)水及びシリコンアルコキシドの反応触媒を各々シリコンアルコキシドの0.1〜10モル比及び0〜0.3モル比と、(E)有機溶剤とを含む熱硬化性樹脂組成物であり、
【0008】
また本発明は、(A)熱硬化性樹脂100重量部と、(B)シラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン3〜30重量部と、(C)非水系シリカゾルをシリカ固形分として2〜25重量部と、(E)有機溶剤とを含む熱硬化性樹脂組成物である。
【0009】
更に本発明は、特に、(A)熱硬化性樹脂100重量部と(B)シラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン3〜30重量部と(D)水及びシリコンアルコキシドの反応触媒を各々シリコンアルコキシドの0.1〜10モル比及び0〜0.3モル比及び(E)有機溶剤20〜300重量部を第一液とし、(C)シリコンアルコキシドをシリカ固形分として2〜25重量部及び(E)有機溶剤20〜250重量部を第二液とする2液混合型であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であり、第一液と第二液の混合比率が1:1であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
【0010】
また本発明は、熱硬化性樹脂が特に有機溶剤溶解性のあるフェノ−ル樹脂であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物であり、また、シリコンアルコキシドが式1で示されるテトラアルコキシシランまたはその低縮合物であることを特徴とする熱硬化性樹脂組成物である。
(式1) Si(OR)4
(式中、RはCn2n+1、nは1から8の整数を表わす。)
【0011】
更に本発明は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用い、熱硬化性樹脂及びオルガノポリシロキサンを含む溶液中でシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合を行なわせると共に、溶媒除去及び加熱して得られることを特徴とする、熱硬化した樹脂中にオルガノポリシロキサンとシリカを、共に均質に微分散させてなる樹脂硬化物の製造方法と、本発明の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる、共に粒子径が1μm以下であるシリカおよびオルガノポリシロキサンを分散して含有することを特徴とする樹脂硬化物を含むものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる熱硬化性樹脂としては、熱により反応硬化する一般の熱硬化性樹脂が使用可能であり、例えばフェノ−ル樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂などから選ばれる一種、または2種以上の混合物が熱硬化性樹脂として用いられる。特にフェノ−ル樹脂を主成分とするか、または少なくとも一成分として含んだ系が好ましい。
【0013】
また本発明で用いる熱硬化性樹脂は、熱硬化前の状態で有機溶剤への溶剤溶解性を有するものがよく、例えばフェノ−ル樹脂ではレゾ−ル型、ハイオルソノボラック型等の溶剤溶解性を有するフェノ−ル樹脂が良好に用いられる。
【0014】
本発明で用いるシラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサンとしては、ジメチルポリシロキサンなどのジアルキルポリシロキサンで、シラノ−ル基と反応性の官能基を有することが好ましいが、必ずしもシラノ−ル基と反応する官能基でなくとも、シラノ−ル基と強い親和性を有する官能基を有するものも用いることできる。該官能基としては、例えばカルボキシル基、エポキシ基、カルビノ−ル基、フェノ−ル性OH基、シラノ−ル基などがあげられる。
【0015】
かかる官能基は複合体形成過程において、シリコンアルコキシドの縮合物や熱硬化性樹脂と反応または強い相互作用を持つことになる。官能基はオルガノポリシロキサンの末端または側鎖のいずれに含まれていても良く、また官能基の数は1分子中に1個または複数個含むものが用いられる。オルガノポリシロキサンの分子量としては特に限定されないが、一般には良好な複合効果を出すためには分子量2000以上のものが好ましい。本発明における熱硬化性樹脂組成物に含まれるオルガノポリシロキサンの量は、熱硬化性樹脂100重量部に対して3〜30重量部の範囲が好ましい。3重量部未満ではオルガノポリシロキサンの添加効果が小さくなり、また30重量部より多いと耐熱性や弾性率などの物性低下が大きくなる。
【0016】
本発明におけるシリコンアルコキシドとしては、式1で表されるテトラアルコキシシランまたはその低縮合物が用いられる。
(式1) Si(OR)4
(式中、RはCn2n+1、nは1から8の整数を表わす。)
【0017】
低縮合物としては溶剤に溶解可能なもので、好ましくは平均分子量が3000以下のものが良い。また、シリコンアルコキシドとして式1で表されるものに、モノメチルトリメトキシシランのような1つがアルキル基で置換されたモノアルキルトリアルコキシシラン(SiR(OR)3、ここでR=Cn2n+1、n=1から8の整数を表わす。)を混合して用いることや、また、チタンやアルミニウムのような他の金属アルコキシドを混合して用いても良い。
【0018】
いずれの場合も主成分はテトラアルコキシシラン又はその低縮合物であることが必要であり、混合される量は少量、例えば20%以下であることが好ましい。本発明の熱硬化性樹脂組成物に含まれるシリコンアルコキシドの量としては、加水分解・重縮合反応後のシリカ固形分として熱硬化性樹脂100重量部に対して2〜25重量部、好ましくは2〜20重量部、更に好ましくは4〜15重量部が含まれるように用いることが好ましい。
【0019】
具体的にはシリカ変換率約40%のテトラメトキシシランを用いた場合、熱硬化性樹脂100重量部に対して約5〜63重量部、好ましくは5〜50重量部、更に好ましくは10〜37.5重量部の該シリコンアルコキシドを熱硬化性樹脂組成物中に含ませることになる。シリカ固形分としての量が熱硬化性樹脂100重量部に対して2重量部未満ではシリカ含有の効果が明確でなくなり、また25重量部以上では樹脂硬化物の成形時にクラックが発生しやすいなどの問題が生じやすくなる。
【0020】
一方、本発明に用いる非水系シリカゾルとしては、メタノ−ル等の非水性の有機溶媒中に数十nm以下の大きさのシリカを分散して含むシリカゾルが用いられ、その量は、熱硬化性樹脂100重量部に対してシリカ固形分として2〜25重量部が好ましい。一方、水を分散媒とした水系シリカゾルを用いた場合は、均質な複合体を得ること出来ない。
【0021】
本発明において熱硬化性樹脂組成物中に含まれる水は、用いられるシリコンアルコキシドの0.1〜10モル比の量が好ましい。0.1モル比以下の量ではシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合が不十分となりすぎ、また10モル比以上の量では不必要な水分が多すぎて均質な複合体の調製に悪影響を及ぼす場合がある。
【0022】
本発明において用いる触媒は、シリコンアルコキシドの加水分解・重縮合反応を促進する働きのあるものであり、例えば有機や無機の酸、またはアンモニアやアルカリ水溶液などの塩基が用いられる。これら触媒の量は、用いられるシリコンアルコキシドの0〜0.5モル比の量が好ましく、触媒を用いない場合もある。
【0023】
本発明において用いる有機溶媒としては、熱硬化性樹脂、オルガノポリシロキサン、シリコンアルコキシド、及び水と触媒を含む系を溶解し均質溶液とするものであれば良く特に限定されない。例えば、メタノ−ル、エタノ−ル、テトラヒドロフラン、メチルエチルケトン、N−メチルピドリロン等があげられ、単独もしくは混合して用いられる。
【0024】
本発明における熱硬化性樹脂組成物より得られる樹脂硬化物はマクロな相分離をすることなく均質で、且つ、含有されるオルガノポリシロキサン、およびシリカは共に微細な分散状態であることが特徴である。具体的には、オルガノポリシロキサン及びシリカ共に1μm以下の大きさであり、好ましくは0.5μm以下の大きさである。また、シリカ、オルガノポリシロキサン共に、0.1μm以下の大きさに制御されることも可能であり、透明性をもった良好な樹脂硬化物となる。
【0025】
本発明における熱硬化性樹脂組成物において、全ての成分を含む熱硬化性樹脂組成物が保存安定性などの必要がある場合は、これらの成分を2つにわけて、熱硬化性樹脂及び官能基を有するオルガノポリシロキサン及び水及び触媒及び有機溶媒からなる溶液を第一液とし、シリコンアルコキシドおよび有機溶媒を第二液とする2液混合型での熱硬化性樹脂組成物であっても良い。
【0026】
また、この場合、第二液にシリコンアルコキシドを安定化するものを更に添加することも可能である。熱硬化性樹脂組成物から樹脂硬化物を調製する方法は、最終的に樹脂硬化物がマクロな相分離をすることなく均質で、且つ熱硬化した樹脂中にオルガノポリシロキサンとシリカを共に微細分散させることができれば良く、特に限定されないが、具体的には本発明における熱硬化性樹脂組成物を用い、熱硬化性樹脂及びオルガノポリシロキサンを含む溶液中でシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合反応を行わせると共に、溶媒除去及び加熱を行なう方法が用いられる。
【0027】
本発明により、熱硬化性樹脂の有する脆性的性質が改良され、且つその改良に伴う耐熱性や、曲げ強度、弾性率などの静的力学物性の低下を抑えることが可能である。かかる効果は、本発明における構成、即ち樹脂硬化物の中にシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合により得られるシリカ、およびオルガノポリシロキサンを同時に微細な分散状態で保持した均質な複合体とすることにより発現されるものであり、そのいずれが欠けても本発明の効果は充分でない。
【0028】
更に詳細には、微細なシリカが分散した熱硬化性樹脂は、オルガノポリシロキサン、特にシラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサンを微細分散することが可能である。図1及び図2に熱硬化性樹脂中のオルガノポリシロキサンの典型的な分散形態例を示す。
【0029】
本発明における熱硬化性樹脂組成物は、他のガラス繊維やガラス粒子、または金属繊維やその粒子、またはセルロ−スやアラミド等の有機繊維や粉末などを含んだ系と併せて調製または使用することが可能であり、それらの充填材と良い密着性を示すことより優れた複合材料となりうる。
【0030】
【実施例】
次いで本発明を実施例によって更に説明する。尚、例中の%は特に断りの無い限り重量基準である。
【0031】
(実施例1及び比較例1)
フェノ−ル樹脂(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、樹脂固形分=60%)167重量部(樹脂分として100重量部)に対して、側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン株式会社製、分子量約20000)6.5重量部、メタノ−ル40重量部を、攪拌しながら順次、滴下混合し、均質混合溶液を調製した。
【0032】
本混合溶液を50℃で6時間攪拌しながら保持した後、実施例1ではテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)14重量部(固形シリカ分として5.6重量部)、水6.5重量部、メタノール60重量部からなる均質溶液を、比較例1ではメタノール60重量部を滴下混合し各々均質混合溶液とした。
【0033】
本溶液を密閉容器中30℃にて1時間保持後、清浄なポリスチレン容器中に流延し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約2日間、その後、80℃熱風乾燥機中で20時間かけてキャストした後、ポリスチレン板上から取り出し150℃で50分間保持した。
【0034】
実施例1で得られたフィルムは均質であり、半透明〜透明(光透過率=87%)であった。比較例1で得られたフィルムは白濁不透明(光透過率=53%)であった。ここで光透過率(%)=exp{(0.1/d)・ln(x/100)}×100(式中、dは膜厚(mm)、xは膜厚dの状態での光透過率(%))にて得た。
【0035】
実施例1におけるサンプルの破断面の走差型電子顕微鏡(SEM)測定(倍率5000倍)ではシリカ粒子やポリジメチルシロキサンの分散形態は明確でなく、0.1μm以下であることが推定された。また、破断面中にマトリックス樹脂と分散粒子間の界面剥離等は見られず密着性は良好であった。
【0036】
比較例1におけるSEM測定では0.5〜2μmの大きさで側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサンがフェノール樹脂マトリックス中に分散しているのが観察された。一方、25000〜250000倍での透過型電子顕微鏡(TEM)測定からは実施例1ではフェノール樹脂マトリックス中にシリカ微粒子及び側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサンが約0.005〜0.01μmで微細分散していること、比較例1では側鎖型ポリエ−テル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサンが約0.5μm以上の大きさで分散しているのが確認できた。
【0037】
実施例1及び比較例1のTEM測定結果例をおのおの図1及び図2に示す。
得られた熱硬化性樹脂複合体の弾性率測定(昇温速度2℃/min、1Hz、引張モード)の結果、比較例1では100℃での弾性率が3GPaとフェノール樹脂単体での値(3.6GPa)より約17%低下したのに対し、実施例1では4GPaとオルガノポリシロキサンを比較例1と同量だけ含有しているにも関わらず約11%増加して観察され、耐熱性の低下が抑えられているのが確認された。
【0038】
また、キャスト成形物(9.5mm×1mm×50mm)のIzod衝撃試験を行った結果、実施例1では28.2kgf・cm/cm2と、樹脂単体での値(16.3kgf・cm/cm2)より向上しているのが確認された。一方、比較例1では21.1kgf・cm/cm2となり樹脂単体での値を上回ったが、実施例1の結果がより良好であった。
【0039】
(実施例2)
分子量約2000まで予め加水分解・重縮合を進めたテトラメトキシシランの低縮合物を12重量部(固形シリカ分として6.5重量部)とする以外は実施例1と同様にして樹脂硬化物を調製した。得られたフィルムは半透明(光透過率=75%)であった。このキャスト成形物(9.5mm×1mm×50mm)のIzot衝撃試験を行った結果、25.9kgf・cm/cm2であり、原料樹脂単体での値を上回った。
【0040】
(実施例3及び比較例2)
フェノ−ル樹脂(フェノライト5510、大日本インキ化学工業株式会社製ノボラック型、ヘキサミン10重量%含有物)100重量部と、側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン株式会社製、分子量約20000)5.3重量部をメタノ−ル130重量部に溶解させ、均質混合溶液を調製した。本混合溶液を、50℃で6時間攪拌しながら保持した後、実施例3ではテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)23重量部(シリカ固形分として9.2重量部)、メタノ−ル70重量部、水15重量部からなる均質液を、比較例2ではメタノール70重量部を攪拌しながら滴下混合して均質混合溶液とした。
【0041】
該溶液を密閉容器中30℃にて一時間保持後、清浄なポリスチレン製容器中に流延し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約2日間かけキャストし、更にその後、真空下徐々に70℃まで昇温した後、ポリスチレン板上から取り出し、粉砕して粒径約1mm程度の粒子を得た。これを金型(2mm厚のスペーサー)に充填して10mm×2mm×50mmにプレス成形した。成形条件は150℃×45min、15kg/cm2とした。
【0042】
得られたプレスサンプルの透明性は実施例3では半透明(光透過率=83%)であり、比較例2では透明(光透過率=91%)であった。これらの成形物のIzod衝撃強度試験を行った結果、実施例3では19.8kgf・cm/cm2であり、樹脂単体での値(4.4kgf・cm/cm2)を大きく上回った。又、比較例2では12.1kgf・cm/cm2となり、樹脂単体での値を上回ったが、実施例3の結果がより良好であった。
【0043】
(実施例4)
フェノ−ル樹脂(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、固形分=60%)167重量部(樹脂分として100重量部)に対して、カルビノール基末端ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン株式会社製、分子量約2400)6.6重量部、メタノ−ル40重量部を攪拌しながら順次、滴下混合し、均質混合溶液を調製した。
【0044】
本混合溶液を50℃で6時間攪拌しながら保持した後、テトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)14重量部(シリカ固形分として5.6重量部)、水6.5重量部、メタノール60重量部からなる均質溶液を滴下混合し均質混合溶液とした。本溶液を密閉容器中30℃にて1時間保持後、清浄なポリスチレン容器中に流延し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約2日間、その後、80℃熱風乾燥機中で20時間かけキャストした後、ポリスチレン板上から取り出し150℃で50分間保持した。得られたフィルムは均質で半透明(光透過率=86%)であった。
【0045】
SEM測定(倍率5000倍)による分散シリカ粒子の大きさは約0.05〜0.25μmと推定され、マトリックス樹脂との密着性は界面の剥離等なく良好であった。又、カルビノール基末端ポリジメチルシロキサンは凝集することなくシリカ微粒子を含むフェノール樹脂マトリックス中に微細分散していた。得られたキャスト成形物(9.5mm×1mm×50mm)のIzod衝撃試験を行った結果、27.3kgf・cm/cm2であり、原料樹脂単体での値(16.3kgf・cm/cm2)を大きく上回った。
【0046】
(実施例5)
フェノ−ル樹脂(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、樹脂固形分=60%)167重量部(樹脂分として100重量部)にメタノ−ル40重量部を添加して溶液とした。これとは別にテトラメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)26重量部(シリカ固形分として10.4重量部)と側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサン(東レダウコ−ニングシリコ−ン株式会社製、分子量約20000)10.5重量部と水2.5重量部と2−プロパノール60重量部を攪拌しながら混合し均質溶液としたものを90℃で45分間攪拌しながら保持した。
【0047】
本混合溶液及び水4重量部を、上記フェノ−ル樹脂溶液に拡販しながら滴下混合し均質溶液とした。本溶液を密閉容器中30℃にて10分間保持後、清浄なポリスチレン容器中に流延し、以後25℃にて溶媒をゆっくりと約2日間、その後、80℃熱風乾燥機中で20時間かけてキャストした後、ポリスチレン板上から取り出し150℃で50分間保持した。得られたフィルムは均質であり、半透明(光透過率=83%)であった。このキャスト成形物(9.5mm×1mm×50mm)のIzod衝撃試験を行った結果、21.9kgf・cm/cm2であり、原料樹脂単体での値(16.3kgf・cm/cm2)を上回った。
【0048】
(実施例6)
ビスフェノール型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロン850)100重量部、脂肪族アミン系硬化剤(大日本インキ化学工業(株)製、エピクロンB−053)20重量部、THF溶媒50重量部よりなる溶液を25℃にて40時間かくはんした。またテトラメトキシシラン28.5重量部(シリカ固形分として11.4重量部)と側鎖ポリエーテルエポキシ基末端ジメチルシロキサン5.3重量部と2−プロパノール2重量部を90℃にて45分間反応させた後、水13.5重量部を添加させた。
【0049】
両溶液を混合し、均質溶液とした後、ガラス板上に流延し溶媒をキャストした。次いで80℃で10時間、150℃で3時間熱処理した。得られたフィルムは半透明(光透過率=78%)均質であった。150℃での弾性率は65MPaであり、エポキシ樹脂とポリジメチルシロキサンとの複合体(30MPa)を大きく上回り、エポキシ樹脂単体(49MPa)の値をも上回った。また耐衝撃性はエポキシ樹脂単体の約2倍を示した。
【0050】
(実施例7)
実施例1におけるテトラメトキシシランと水とメタノ−ルからなる均質溶液のかわりに、メタノールシリカゾル(日産化学工業株式会社製、SiO2固形分=30%)27重量部(シリカ固形分として8.1重量部)、メタノール48重量部からなる均質溶液を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂硬化物を調製した。得られたフィルムは不透明(光透過率=56%)であった。このキャスト成形物(9.5mm×1mm×50mm)のIzod衝撃試験を行った結果、24.8kgf・cm/cm2であり、原料樹脂単体での値(16.3kgf・cm/cm2)を上回った。
【0051】
比較例3)比較例3においては、テトラメトキシシランを70重量部(固形シリカ分として28重量部)、水を30重量部、側鎖型ポリエ−テル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサンを10.5重量部とする以外は実施例1と同様にして樹脂硬化物を調製した。
【0052】
得られた樹脂硬化物は比較例3では透明(光透過率=94%)であるが多数のクラック発生により小片に破壊し良好なフィルムは得られなかった。
【0053】
(比較例)フェノ−ル樹脂(プライオ−フェンJ−325、大日本インキ化学工業株式会社製レゾ−ル型、メタノ−ル溶媒、樹脂固形分=60%)167重量部(樹脂分として100重量部)に対して、側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン株式会社製、分子量約20000)6.6重量部、メタノ−ル50重量部を、撹拌しながら順次、滴下混合し、均質混合溶液を調製した。本混合溶液を、50℃で6時間撹拌しながら保持後、メタノール50重量部、水系シリカゾル液(日産化学工業株式会社製、スノーテックスUP、シリカ固形分=20%)30重量部からなる均質溶液を撹拌しながら滴下して混合したが、滴下と同時に沈澱が生じ、均質混合溶液は得られず、該混合液から均質な複合体は得られなかった。
【0054】
(比較例)側鎖型ポリエーテル・エポキシ基末端ポリジメチルシロキサンの替わりに反応基を持たないポリジメチルシロキサン(東レダウコーニングシリコーン株式会社製)を用いることを除き実施例1と同様の方法にてフィルムを調製した。得られたフィルムは気泡が多数あり、且つ、表面が油状となり良好な複合体を得ることが出来なかった。
【0055】
図1は本発明による熱硬化性フェノ−ル樹脂とテトラメトキシシラン(シリコンアルコキシド)と側鎖にエポキシ基を有するジメチルポリシロキサンとを含む熱硬化性樹脂組成物より得られた樹脂硬化物の透過型電子顕微鏡観察写真(100000倍)である。シリコンアルコキシドが加水分解・重縮合して得られたシリカがフェノ−ル樹脂中に約10nm程度の大きさで微細分散していると共に、オルガノポリシロキサンも微細に分散している。
【0056】
一方、図2はシリコンアルコキシドを組成物に含まない、熱硬化性フェノ−ル樹脂と側鎖にエポキシ基を有するジメチルポリシロキサンとを含む熱硬化性樹脂組成物より得られた樹脂硬化物の透過型電子顕微鏡観察写真(25000倍)である。ここではジメチルポリシロキサンが約0.5〜1μmの大きな粒子として存在しており、且つその界面も電子顕微鏡用の超薄切片サンプル調製時に容易に剥離する程度で弱く、図1との分散形態の違いは明瞭である。
【0057】
また官能基を有しないジメチルポリシロキサンを用いる以外は図1の場合と同様な熱硬化性樹脂組成物を用いて得られた樹脂硬化物では、ジメチルシロキサンが相分離して樹脂硬化物の表面に遊離しているのが観察され、均質な複合体は得られなかった。
【0058】
【発明の効果】
本発明は、熱硬化性樹脂の有する脆性的性質を改良し、且つその改良に伴う耐熱性や、曲げ強度、弾性率などの静的力学物性の低下を抑え、良好な耐衝撃性を有し、耐熱性、力学物性に優れた熱硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1でのフェノ−ル樹脂とシラノ−ル基と反応性の官能基含有オルガノポリシロキサンとシリカとからなる樹脂硬化物の透過型電子顕微鏡観察写真を示す図(100000倍)である。
【図2】比較例1でのフェノ−ル樹脂と官能基含有オルガノポリシロキサンとからなる樹脂硬化物の透過型電子顕微鏡観察写真を示す図(25000倍)である。

Claims (8)

  1. (A)熱硬化性樹脂100重量部と、(B)シラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン3〜30重量部と、(C)シリコンアルコキシドをシリカ固形分として2〜25重量部と、(D)水及びシリコンアルコキシドの反応触媒を各々シリコンアルコキシドの0.1〜10モル比及び0〜0.3モル比と、(E)有機溶剤とを含む熱硬化性樹脂組成物。
  2. (A)熱硬化性樹脂100重量部と、(B)シラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン3〜30重量部と、(C)非水系シリカゾルをシリカ固形分として2〜25重量部と、(E)有機溶剤とを含む熱硬化性樹脂組成物。
  3. (A)熱硬化性樹脂100重量部と(B)シラノ−ル基と反応性の官能基を有するオルガノポリシロキサン3〜30重量部と(D)水及びシリコンアルコキシドの反応触媒を各々シリコンアルコキシドの0.1〜10モル比及び0〜0.3モル比及び(E)有機溶剤20〜300重量部を第一液とし、(C)シリコンアルコキシドをシリカ固形分として2〜25重量部及び(E)有機溶剤20〜250重量部を第二液とする2液混合型であることを特徴とする請求項1記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 第一液と第二液の混合比率が1:1であることを特徴とする請求項3記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 熱硬化性樹脂が有機溶剤溶解性のあるフェノ−ル樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. シリコンアルコキシドが式1で示されるテトラアルコキシシランまたはその低縮合物であることを特徴とする請求項1、3、4又は5のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物。
    (式1) Si(OR)4
    (式中、RはCn2n+1、nは1から8の整数を表わす。)
  7. 請求項1、3、4、5又は6のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物を用い、熱硬化性樹脂及びオルガノポリシロキサンを含む溶液中でシリコンアルコキシドの加水分解・重縮合を行なわせると共に、溶媒除去及び加熱して得られることを特徴とする、熱硬化した樹脂中にオルガノポリシロキサンとシリカを、共に均質に微分散させてなる樹脂硬化物の製造方法。
  8. 請求項1〜6のいずれか一つに記載の熱硬化性樹脂組成物を熱硬化させて得られる、共に粒子径が1μm以下であるシリカおよびオルガノポリシロキサンを分散して含有することを特徴とする樹脂硬化物。
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