JP3677441B2 - ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、気泡の発生がなく、膜厚精度に優れたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関し、更に詳しくは、光学フィルム、特には偏光膜に適したポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒に溶解し、混練、脱泡して原液を調製した後、溶液流延法(キャスティング法)により製膜して製造される。
ポリビニルアルコール系樹脂を溶媒に溶解し、混練、脱泡する方法としては、例えば、2軸押出機を用いてポリビニルアルコール系樹脂粉末を溶媒で溶解するとともに混練・脱泡する方法(特開平5−305642号公報)が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特開平5−305642号公報開示技術では、2軸押出機を用いてポリビニルアルコール系樹脂粉末を溶媒で溶解、脱泡を行うため熱や剪断により着色等の劣化を招いたり、脱泡が充分に行えなかったりする等の問題点があり、良好なポリビニルアルコール系フィルムを得るには更なる改良が望まれている。
【0004】
そこで、本発明ではこのような背景下において、気泡の発生のない充分な脱泡が行え、膜厚精度にも優れたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
しかるに、本発明者等が上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)で脱泡して、該水溶液をT型スリットダイに導入して製膜するに当たり、濃度15〜60重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液をベントを有した多軸押出機(A)に供給し、ベント部での樹脂温度を105〜180℃とし、かつ押出機先端圧力を2〜100kg/cm2の範囲とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法が上記目的に合致することを見出し、本発明を完成した。
【0006】
本発明においては、多軸押出機(A)の前後にギアポンプ(P1)及びギアポンプ(P2)を、ギアポンプ(P1)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)に供給し、ギアポンプ(P2)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)から排出するように設け、かかるギアポンプ(P2)の入口圧力が2〜70kg/cm2の範囲で一定値を示すようにギアポンプ(P1)を制御することがフィルム膜厚の精度が向上する点で好ましい。
【0007】
又、本発明では、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶中で水蒸気を吹き込んで含水ポリビニルアルコール系樹脂のウェットケーキを溶解してなるポリビニルアルコール系樹脂水溶液であることが特に好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、酢酸ビニルを重合したポリ酢酸ビニルをケン化して製造されるが、本発明では必ずしもこれに限定されるものではなく、少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等、酢酸ビニルと共重合可能な成分を含有していても良い。
又、ポリビニルアルコール系樹脂にシリル基を含有させたものでも良く、シリル化剤を用いて後変性させたり、シリル基含有オレフィン性不飽和単量体と共重合しケン化させたり、等の方法が挙げられる。シリル基含有オレフィン性不飽和単量体としてはビニルシラン、(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等が挙げられる。
【0009】
ポリビニルアルコール系樹脂における重合度は特に限定されないが、中でも1000〜7000が好ましく、特には1200〜6000が好ましく、更には1400〜5000が好ましい。かかる重合度が1000未満では光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られず、7000を越えると偏光膜とする場合に延伸が困難となり工業的な生産が難しくなり好ましくない。
【0010】
更に、ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は80モル%以上であることが好ましく、特には85〜100モル%、更には98〜100モル%が好ましい。かかるケン化度が80モル%未満では光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られず好ましくない。
【0011】
上記ポリビニルアルコール系樹脂には、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール等、一般的に使用される可塑剤をポリビニルアルコール系樹脂に対して30重量%以下、好ましくは3〜25重量%、更に好ましくは5〜20重量%含有される。該可塑剤が30重量%を越えるとフィルム強度が劣り好ましくない。
【0012】
又、更に好ましくは、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤、中でも特に好ましくはポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル等の剥離剤をポリビニルアルコール系樹脂に対して5重量%以下、好ましくは0.001〜3重量%、更に好ましくは0.001〜2重量%含有される。該剥離剤が5重量%を越えるとフィルム表面外観が不良となり好ましくない。
【0013】
本発明においては、上記で得られたポリビニルアルコール系樹脂を用いて、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製し、該水溶液を多軸押出機(A)で脱泡して、T型スリットダイに導入し、製膜することでポリビニルアルコール系フィルムを製造するわけであるが、以下にその製造方法を説明する。
【0014】
まず、上記ポリビニルアルコール系樹脂は、酢酸ナトリウムを除去するためその粉末を洗浄する。洗浄に当たっては、メタノールあるいは水で洗浄されるが、メタノールで洗浄する方法では溶剤回収などが必要になるため、水で洗浄する方法がより好ましい。
【0015】
次に、洗浄後の含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解し、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を調製するが、かかる含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキをそのまま水に溶解すると所望する高濃度の水溶液が得られないため、一旦脱水を行うことが好ましい。脱水方法は特に限定されないが遠心力を利用した方法が一般的である。
【0016】
かかる洗浄及び脱水により、含水率50重量%以下、好ましくは30〜45重量%の含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキとすることが好ましい。該含水率が50重量%を越えると所望する水溶液濃度にすることが難しくなり好ましくない。
【0017】
そして、脱水後の含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを水に溶解し、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液となる。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、溶解缶を用いて脱水後のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ、必要に応じて水、可塑剤、添加剤を仕込み、加温、撹拌し溶解したり、多軸押出機を用いて脱水後のポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキあるいはそれを乾燥したポリビニルアルコール系樹脂を仕込み、サイドフィードにより、必要に応じて水、可塑剤、添加剤を仕込み加温、剪断をかけながら溶解したりして得られた水溶液でもよいが、本発明では特に、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶中で水蒸気を吹き込んで含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解して得られる水溶液であることが好ましい。
【0018】
本発明では、上下循環流発生型撹拌翼として大型翼を備えた撹拌翼が好ましく、特には住友重機械工業(株)社製のマックスブレンド型翼、神鋼パンテック(株)社製のフルゾーン型翼等が好適に用いられる。但し、これらに限定されない。
撹拌翼の形状は特に限定されないが、翼の直径(d)/溶解缶の内径(D)が0.5〜0.8程度のものが好ましい。
又、必要に応じて、溶解缶の側壁面に、回転軸方向に沿う複数本の邪魔板を間隔をおいて配設することが好ましい。
【0019】
かかる上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶中で上記含水ポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを溶解するにあたり、水蒸気を吹き込むわけであるが、かかる水蒸気を吹き込むにあたり、所望する濃度となるように水を加えることも好ましい。又、必要に応じて可塑剤、添加剤を添加してもよい。
【0020】
該水蒸気の吹き込み量は、溶解するポリビニルアルコール系樹脂に対して0.5〜5倍量(重量換算)が好ましく、吹き込み時間は0.5〜3時間が好ましい。吹き込み量が0.5倍量未満では溶解不充分となり、5倍量を越えるとドレン量が多くなりすぎて所望する濃度にならず好ましくない。
又、水蒸気を吹き込む際は、缶底より吹き込むことが好ましいがこれに限らず側面等から吹き込んでも良い。
【0021】
又、水蒸気を吹き込み、樹脂温度が40〜80℃、好ましくは45〜70℃となった時点で、撹拌を開始することが均一溶解ができる点で好ましく、樹脂温度が40℃未満ではモーターの負荷が大きくなり、80℃を越えるとポリビニルアルコール系樹脂の固まりができて均一な溶解ができなくなり好ましくない。
【0022】
更に、水蒸気を吹き込み、樹脂温度が90〜100℃、好ましくは95〜100℃となった時点で、缶内を加圧することも均一溶解ができる点で好ましく、樹脂温度が90℃未満では未溶解物ができ好ましくない。
【0023】
そして、樹脂温度が130〜150℃となったところで、水蒸気の吹き込みを終了し、0.5〜3時間撹拌を続け、溶解が行われる。
溶解後は、所望する濃度となるように濃度調整が行われる。
かかる水溶液の濃度調整に当たっては、缶の中の液を一部抜き出し、循環させながらプロセス屈折率計(K−PATENTS社製)を用いて濃度測定を行う。
【0024】
かくして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の濃度は15〜60重量%であり、特に好ましくは17〜55重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。かかる濃度が15重量%未満では乾燥負荷が大きくなり生産能力が劣り、60重量%を越えると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができず好ましくない。
【0025】
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、多軸押出機(A)を用いて脱泡される。
多軸押出機(A)としては、ベントを有した多軸押出機であれば特に限定されないが、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
【0026】
そして、上記の濃度15〜50重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液を該多軸押出機(A)に供給し、ベント部の樹脂温度を105〜180℃、好ましくは110〜160℃とし、かつ押出機先端圧力を2〜100kg/cm2、好ましくは5〜70kg/cm2の範囲の条件下で脱泡を行う。
【0027】
かかるベント部の樹脂温度が105℃未満では脱泡が不充分となり、180℃を越えると樹脂劣化が起こることとなる。又、押出機先端圧力が2kg/cm2未満では脱泡が不充分となり、100kg/cm2を越えると配管での樹脂漏れ等が発生し、安定生産することができなくなる。
【0028】
又、本発明では、多軸押出機(A)の前後にギアポンプ(P1)及びギアポンプ(P2)を設け、ギアポンプ(P1)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)に供給し、ギアポンプ(P2)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)から排出するわけであるが、かかるギアポンプ(P2)の入口圧力が2〜70kg/cm2の範囲、好ましくは5〜70kg/cm2の範囲で一定値を示すようにギアポンプ(P1)を制御することがフィルム膜厚の精度向上の点で好ましい。かかる入口圧力が2kg/cm2未満では脱泡が不充分となり、70kg/cm2を越えるとベント部分より樹脂が出てくることとなり好ましくなく、又、上記範囲であっても一定値を示さなければフィルム膜厚の精度が不充分となり好ましくない。尚、ここで言う一定値とは、指定値から±2%以内、好ましくは±1.5%以内の範囲を許容するものである。
【0029】
上記多軸押出機(A)による脱泡処理が行われ、多軸押出機(A)から排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、一定量ずつT型スリットダイに導入され、製膜、乾燥される。
製膜については、ドラム型ロール又はベルト上で流延製膜法が採用され、更に該ロール又はベルト上で乾燥される。
その後、必要に応じて更に乾燥、熱処理、調湿が行われ、ポリビニルアルコール系フィルムとなるのである。
【0030】
乾燥については、▲1▼表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径2〜4mのドラムを該ドラムの内温80〜100℃に調整してその上で乾燥させる方法、▲2▼該ドラムを通過させた後、表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径0.2〜2mのロール(1〜30本)を温度60〜100℃に調整して通過させる方法、▲3▼一対のロール間に保持されたベルト(長さ:20〜100m、表面:鏡面処理)の途中に乾燥機を設け、該乾燥機を通過させる方法等が挙げられ、又、かかる▲1▼、▲2▼、▲3▼の方法を適宜組み合わせて行うこともできる。
【0031】
熱処理については、▲1▼表面をハードクロムメッキ処理又は鏡面処理した、直径0.2〜2mのロール(1〜30本)を温度60〜180℃に調整して通過させる方法、▲2▼フローティング型ドライヤー(長さ:2〜10m、温度80〜180℃)にて行う方法等が挙げられる。
【0032】
調湿については、▲1▼温度20〜80℃、湿度65〜95%RHに調湿された室内を通過させる方法、▲2▼ヒラノテクシード(株)社製「フリューデックス」を用いた蒸気凝縮法による方法等が挙げられる。
【0033】
かくして得られるポリビニルアルコール系フィルムは、膜厚精度に優れたポリビニルアルコール系フィルムであり、特には偏光膜用として非常に有効である。以下、偏光膜の製造方法について説明する。
【0034】
偏光膜の製造方法としては、かかるポリビニルアルコール系フィルムを延伸してヨウ素あるいは二色性染料の溶液に浸漬し染色するか、延伸と染色を同時に行うか、ヨウ素あるいは二色性染料により染色して延伸するかした後、ホウ素化合物処理する方法が挙げられる。又、染色した後ホウ素化合物の溶液中で延伸する方法等もあり、適宜選択して用いることができる。
【0035】
偏光膜に用いられるポリビニルアルコール系フィルムの膜厚としては、30〜100μmが好ましく、更には40〜90μmで、30μm以下では延伸が難しく、100μm以上では膜厚精度が低下して好ましくない。
【0036】
かかるポリビニルアルコール系フィルム(未延伸フィルム)は次に延伸及び染色、ホウ素化合物処理が施される。延伸と染色更にホウ素化合物処理は別々に行っても同時に行っても良いが、本発明では染色工程、ホウ素化合物処理工程の少なくとも一方の工程中に一軸延伸を実施することが望ましい。
【0037】
延伸は一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが望ましい。この際、前記と直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度あるいはそれ以上の延伸)を行っても差し支えない。延伸時の温度条件は40〜170℃から選ぶのが望ましい。更に、かかる延伸倍率は最終的に上記の範囲に設定されれば良く、延伸操作は一段階段のみならず、製造工程の任意の範囲の段階に実施すれば良い。
【0038】
フィルムへの染色はフィルムにヨウ素或いは二色性染料を含有する液体を接触させることによって行われる。
通常は、ヨウ素−ヨウ化カリの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/l、ヨウ化カリの濃度は10〜50g/l、ヨウ素/ヨウ化カリの重量比は20〜100が適当である。染色時間は30〜500秒程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させても差し支えない。
接触手段としては浸漬、塗布、噴霧等の任意の手段が適用できる。
【0039】
染色処理されたフィルムは次いでホウ素化合物によって処理される。ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ砂が実用的である。
ホウ素化合物は水溶液又は水−有機溶媒混合液の形で濃度0.5〜2モル/l程度で用いられ、液中には少量のヨウ化カリを共存させるのが実用上望ましい。
処理法は浸漬法が望ましいが勿論塗布法、噴霧法も実施可能である。処理時の温度は50〜70℃程度、処理時間は5〜20分程度が好ましく、又必要に応じて処理中に延伸操作を行っても良い。
【0040】
このようにして得られた偏光膜は、その片面又は両面に光学的に等方性の高分子フィルム又はシートを保護膜として積層接着して用いることもできる。
かかる保護膜としては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルム又はシートが挙げられる。
【0041】
又、かかる偏光膜には、薄膜化を目的として、上記保護膜の代わりに、その方面又は両面にウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂等の硬化性樹脂を塗布し、積層させることもできる。
【0042】
かかる偏光膜(又はその少なくとも片面に保護膜あるいは硬化性樹脂を積層したもの)は、その一方の表面に必要に応じて、透明な感圧性接着剤層が通常知られている方法で形成されて、実用に供される場合もある。該感圧性接着剤層としてはアクリル酸エステル、例えばアクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等とα−モノオレフィンカルボン酸、例えばアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、メタクリル酸、クロトン酸等との共重合物(アクリルニトリル、酢酸ビニル、スチロールの如きビニル単量体を添加したものも含む。)を主体とするものが、偏光フィルムの偏光特性を阻害することがないので特に好ましいが、これに限定されることなく、透明性を有する感圧性接着剤であれば使用可能で、例えばポリビニルエーテル系、ゴム系等でもよい。
【0043】
かかる偏光膜は、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、パソコン、携帯情報端末機、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防目メガネ、立体メガネ、表示素子(CRT、LCD等)用反射低減層、医療機器、建築材料、玩具等に用いられる。
【0044】
【実施例】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
尚、例中「部」、「%」とあるのは特に断りのない限り重量基準である。
【0045】
実施例1
500lのタンクに18℃の水200kgを入れ、撹拌しながら、重合度1700、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂40kgを加え15分間撹拌を続けた。その後一旦水を抜いた後、更に水200kgを加え15分間撹拌した。得られたスラリーをスーパーデカンタ(巴工業社製)により脱水し、含水率40%、ナトリウム含有量1500ppmのポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを得た。
【0046】
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ70kgを、マックスブレンド型翼(住友重機械社製)を備えた溶解缶に入れ、可塑剤としてグリセリン4.2kg、剥離剤としてポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル42g、水10kgを加え、缶底から水蒸気を吹き込み、内部樹脂温度が50℃になった時点で撹拌(回転数:5rpm)を行い、内部樹脂温度が100℃になった時点で系内を加圧し、150℃まで昇温した後、水蒸気の吹き込みを停止し(水蒸気の吹き込み量は合計75kg)、30分間撹拌(回転数:20rpm)を行い均一に溶解した後、濃度調整により濃度45%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液(可塑剤、剥離剤も固形分として含む)を得た。
【0047】
次に該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液(液温147℃)を、ギアポンプ(P1)より2軸押出機(東芝機械社製)に供給し、脱泡した後、ギアポンプ(P2)より排出した。
ギアポンプ(P1)、2軸押出機(A)、ギアポンプ(P2)での条件は以下の通りである。
【0048】
【0049】
【0050】
ギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液には気泡等は見られなかった。
【0051】
そしてギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、T型スリットダイ(幅450mmのストレートマニホールドダイ)よりドラム型ロールに流延して製膜し、乾燥(条件:ドラム(直径2.8m、内温90℃)、乾燥ロール(直径0.3m、内温70℃、本数10本))、熱処理(条件:フローティングドライヤー(140℃、長さ6m))、調湿(条件:フリューデックス)を行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
得られたポリビニルアルコール系フィルムは、膜厚が75±2μmであり、膜厚精度に優れたものであった。
【0052】
尚、膜厚の測定については、製膜直後に、幅方向に対して中央部と該中央部より両端部に向かって30mm間隔に各5カ所の計11カ所、及び流れ方向に対して該11カ所から1m間隔に各5カ所の合計55カ所を、ピーコック社製のシックネスゲージを用いて測定を行った。
【0053】
実施例2
500lのタンクに18℃の水180kgを入れ、撹拌しながら、重合度2600、ケン化度99.7モル%のポリビニルアルコール系樹脂36kgを加え15分間撹拌を続けた。その後一旦水を抜いた後、更に水180kgを加え15分間撹拌した。得られたスラリーをスーパーデカンタ(巴工業社製)により脱水し、含水率40%、ナトリウム含有量1500ppmのポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキを得た。
【0054】
かかるポリビニルアルコール系樹脂ウェットケーキ60kgを、マックスブレンド型翼(住友重機械社製)を備えた溶解缶に入れ、可塑剤としてグリセリン3.6kg、剥離剤としてポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル36g、水20kgを加え、缶底から水蒸気を吹き込み、内部樹脂温度が50℃になった時点で撹拌(回転数:5rpm)を行い、内部樹脂温度が100℃になった時点で系内を加圧し、150℃まで昇温した後、水蒸気の吹き込みを停止し(水蒸気の吹き込み量は合計75kg)、30分間撹拌(回転数:20rpm)を行い均一に溶解した後、濃度調整により35%濃度のポリビニルアルコール系樹脂水溶液(可塑剤、剥離剤も固形分として含む)を得た。
【0055】
次に該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液(液温147℃)を、ギアポンプ(P1)より2軸押出機(東芝機械社製)に供給し、脱泡した後、ギアポンプ(P2)より排出した。
ギアポンプ(P1)、2軸押出機(A)、ギアポンプ(P2)での条件は以下の通りである。
【0056】
【0057】
【0058】
ギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液には気泡等は見られなかった。
【0059】
そしてギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、実施例1に準じて製膜し、乾燥、熱処理、調湿を行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
得られたポリビニルアルコール系フィルムは、膜厚が75±1.8μmであり、膜厚精度に優れたものであった。
【0060】
実施例3
実施例1において、2軸押出機(A)でのベント部での樹脂温度を150℃、押出機先端圧力を30kg/cm2に変更した以外は同様に脱泡、製膜を行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
ギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液には気泡等は見られず、得られたポリビニルアルコール系フィルムは、75±1.9μmであり、膜厚精度に優れたものであった。
【0061】
比較例1
実施例1において、2軸押出機(A)でのベント部での樹脂温度を70℃、押出機先端圧力を20kg/cm2に変更した以外は同様に脱泡、製膜を行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
ギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液には気泡が見られた。又、良好なフィルムを得ることはできなかった。
【0062】
比較例2
実施例1において、2軸押出機(A)でのベント部での樹脂温度を190℃、押出機先端圧力を50kg/cm2に変更した以外は同様に脱泡、製膜を行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
ギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液には気泡が見られた。又、良好なフィルムを得ることはできず、フィルムに着色が見られた。
【0063】
比較例3
実施例1において、2軸押出機(A)でのベント部での樹脂温度を120℃、押出機先端圧力を1kg/cm2に変更した以外は同様に脱泡、製膜を行い、ポリビニルアルコール系フィルムを得た。
ギアポンプ(P2)より排出されたポリビニルアルコール系樹脂水溶液には気泡が見られた。又、良好なフィルムを得ることはできなかった。
【0064】
【発明の効果】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)で脱泡して、該水溶液をT型スリットダイに導入して製膜するに当たり、濃度15〜60重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液をベントを有した多軸押出機(A)に供給し、ベント部での樹脂温度を105〜180℃とし、かつ押出機先端圧力を2〜100kg/cm2の範囲とするため、気泡の発生のない充分な脱泡が行うことができ、膜厚精度にも優れたポリビニルアルコール系フィルムが得られる。
得られたポリビニルアルコール系フィルムは、光学フィルム、特に偏光膜や位相差膜等のポリビニルアルコール系フィルムとして有用である。
Claims (3)
- ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)で脱泡して、該水溶液をT型スリットダイに導入して製膜するに当たり、濃度15〜60重量%のポリビニルアルコール系樹脂水溶液をベントを有した多軸押出機(A)に供給し、ベント部での樹脂温度を105〜180℃とし、かつ押出機先端圧力を2〜100kg/cm2の範囲とすることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- 多軸押出機(A)の前後にギアポンプ(P1)及びギアポンプ(P2)を、ギアポンプ(P1)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)に供給し、ギアポンプ(P2)によりポリビニルアルコール系樹脂水溶液を多軸押出機(A)から排出するように設け、かかるギアポンプ(P2)の入口圧力が2〜70kg/cm2の範囲で一定値を示すようにギアポンプ(P1)を制御することを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
- ポリビニルアルコール系樹脂水溶液が、上下循環流発生型撹拌翼を備えた溶解缶中で水蒸気を吹き込んで含水ポリビニルアルコール系樹脂のウェットケーキを溶解してなるポリビニルアルコール系樹脂水溶液であることを特徴とする請求項1又は2記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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