JP3677120B2 - 液透過型ガス拡散陰極 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、効率良く電解生成物を除去できるガス拡散陰極に関し、より詳細にはソーダ電解に好ましく使用でき、生成する苛性ソーダをその表面から容易に除去できるガス拡散陰極に関する。
【0002】
【従来技術とその問題点】
クロルアルカリ電解を代表とする電解工業は素材産業として重要な役割を果たしている。このような重要な役割を持つもののクロルアルカリ電解に要する消費エネルギーが大きく、日本のようにエネルギーコストが高い国ではその省エネルギー化が大きな問題となる。例えばクロルアルカリ電解では環境問題の解決とともに省エネルギー化を達成するために、水銀法から隔膜法を経てイオン交換膜法へと転換され、約25年で約40%の省エネルギー化を達成してきた。しかしこの省エネルギー化でも不十分で、エネルギーである電力コストが全製造費の50%を占めているが、現行の方法を使用する限りこれ以上の電力節約は不可能なところまで来ている。より以上の省エネルギー化を達成するためには電極反応を修正する等の抜本的な変化を行なわなければならない。その例として燃料電池等で採用されているガス拡散電極の使用は現在考えられる中で最も可能性が高く、電力節約が大きい手段である。
【0003】
従来の金属電極を使用する陽極反応▲1▼が、陽極としてガス拡散電極を使用すると陽極反応▲2▼に変換される。
▲1▼ 2NaCl+2H2 0→Cl2 +2NaOH+H2 EO =2.21V
▲2▼ 2NaCl+ 1/2O2 +H2 O→Cl2 +2NaOH EO =0.96V
つまり金属電極をガス拡散電極に変換することにより、電位が2.21Vから0.96Vに減少し、理論的には約65%の省エネルギー化が可能になる。従ってこのガス拡散電極の使用によるクロルアルカリの実用化に向けて種々の検討が成されている。
ガス拡散電極の構造は一般に半疎水(撥水)型と言われるもので、表面に白金等の触媒が担持された親水性の反応層と撥水性のガス拡散層を接合した構造を有している。反応層及びガス拡散層ともバインダーとして撥水性のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂を使用し、このPTFE樹脂の特性を利用してガス拡散層ではその割合を多くし、反応層では少なくして両層を構成している。
【0004】
このようなガス拡散電極をクロルアルカリ電解に使用すると幾つかの問題点が生ずる。例えば高濃度の苛性ソーダ中では撥水材であるPTFE樹脂が親水化して撥水性を失い易くなる。これを防止するために前記ガス拡散層のガス室側に薄い多孔性のPTFEシートを貼ることが試みられている。又このガス拡散電極に酸素や空気を供給しながら電解を進行させるが、副反応として一部過酸化水素が生成しそれが構成材料である炭素を腐食して炭酸ソーダを生成することがある。アルカリ溶液中では前記炭酸ソーダは沈澱してガス拡散層を閉塞したり表面を親水化したりしてガス拡散電極の機能を劣化させることがある。この炭酸ソーダが生成しなくても炭素表面に触媒を担持するのみで該触媒による炭素腐食が生ずることも観察されている。
【0005】
このような欠点を解消するために従来は、使用する炭素の選択やその作製法及び炭素と樹脂との混合比をコントロールすることが検討されている。しかしながらこれらの方法は根本的な解決法とはならず、炭素の腐食を遅らせることはできても、腐食を停止することはできない。炭素を使用しなければこのような腐食の問題は起きないため、炭素の代わりに金属である銀を使用することが試みられている。ところがこの金属を使用するガス拡散電極は炭素を構成材料とするガス拡散電極と異なり焼結法で製造され、その製造方法が極めて複雑になり、更に金属を使用するガス拡散電極では親水性部分と疎水性部分を制御しにくいという問題点がある。
【0006】
これらの問題点の解決法としてかつ更に電解電圧を低下させる方法として、ガス拡散電極をイオン交換膜に密着又は接着して実質的に陰極室をなくしてしまう、換言すると陰極室をガス室として構成する方法が提案されている。この方法を採用した電解槽を使用してクロルアルカリ電解を行なうと、生成する苛性ソーダは反応層及びガス拡散層を通って陰極室であるガス室に到達する。この方法は陰極液が存在しないためガス室の高さ方向の圧力差の影響がなくなり大型化しても圧力分布を考える必要がないこと、陰極液が実質的に存在しないため電気抵抗が最小になり電解電圧を最小に維持できるという利点を有する一方、前記した生成する苛性ソーダのガス室方向への透過を促進するためにガス拡散層の貫通孔の大きさ及び分布を制御しなければならない。しかもガス室側に取り出された苛性ソーダが前記ガス拡散層の貫通孔を閉塞し易く、閉塞が生ずると電解の円滑な進行に支障を来たし、実験室レベルではさほど問題にはならないが、実用槽などの大型電解槽では前記閉塞による電流分布の不均一や電解電圧の上昇といった問題が起こり易く、前記貫通孔の閉塞が電解槽の大型化を達成するための最大に障害となっている。
又通常の食塩電解以外にも芒硝電解等のソーダ電解でも同様の問題点が指摘されている。
【0007】
【発明の目的】
本発明は、前述の従来技術の問題点、つまりガス拡散電極を食塩電解や芒硝電解等の電気化学反応に実用的なレベルで使用できないという欠点を解消し、アルカリ中等の過酷な条件下でも長期間安定で食塩電解等に実質的に使用可能な液透過型ガス拡散陰極構造体を提供することを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】
本発明に係わる液透過型ガス拡散陰極は、陽極室及び陰極ガス室を区画するイオン交換膜に接触したガス拡散陰極において、電解液に対して耐食性を有する金属又は樹脂製の線を埋め込み複数の凸部を形成したことを特徴とする液透過型ガス拡散陰極である。
【0009】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明では、ガス拡散陰極を使用する食塩電解や芒硝電解等の工業電解においてガス室を構成する陰極室側に取り出される苛性ソーダ等を前記ガス拡散陰極のガス室側表面から迅速に除去してガス供給の不足や親水性化に起因する電解条件の不安定化を抑制し、長期間使用しても安定した条件でソーダ電解等を行ない得るガス拡散陰極を提供できる。
ガス拡散陰極の表面から得られる苛性ソーダ溶液を離脱させることは、前記ガス拡散陰極表面を撥水化することによりつまり液の濡れ性を悪くすることにより円滑に行ない得ると考えられる。
【0010】
しかし単にガス拡散陰極の表面を撥水化するのみでは表面の濡れ性の低下は達成できるものの、ガス拡散層を透過してガス室側に達する溶液が水玉状の液滴としてガス拡散層表面に残り、この液滴はかなり大きくならないと表面から離脱しない。本発明者らの経験によるとこの液滴は表面が平坦であればあるほど離脱しにくく、逆に表面に凹凸を形成すると液滴が大きく成長しないうちに表面を容易に離脱して電極表面を覆うことがなくなる。
【0011】
前述した通りガス拡散陰極を使用する例えばソーダ電解では、電解の進行に伴ってガス拡散陰極の背面に陰極液である苛性ソーダ溶液が透過してくる。この溶液には陽極室側からイオン交換膜を浸透してくるナトリウムイオン、同伴水及び陰極から供給される水酸イオンが含まれる。この苛性ソーダ水溶液をガス拡散陰極表面から迅速に除去しないとガス拡散陰極の貫通孔が閉塞してガス供給が阻害されて、安定な電解操作が継続できなくなる。特にガス拡散陰極の下部、つまり重力方向に沿った下側では上方からの苛性ソーダ水溶液が加わるため多量の苛性ソーダ水溶液が滞留してその分見掛け上の過電圧が上がり電圧が上昇してしまうという現象が生ずる。
【0012】
この場合にガス拡散陰極表面に水平方向の凸部が存在するとその方向に沿って液が流れるため前述の閉塞の度合いが少なくなって電圧上昇が抑制され、安定な電解操作が可能になる。ガス拡散陰極表面に透過した苛性ソーダ水溶液が前記凸部に沿って流れるため、少なくとも該凸部の真下のガス拡散陰極表面には苛性ソーダ水溶液が滞留することがなく、ガス供給が十分に行なわれて低電圧で電解が進行し、全体としては電圧上昇が最小限に抑えられ、かつ安定な電解操作を行なうことができる。
【0015】
前記凸部はどのように形成しても良いが、例えばガス拡散陰極の表面近傍に金属線を埋め込んでその部分のガス拡散陰極材料を膨出させたり、ガス拡散陰極の成型時に前記凸部に対応する窪みを有する金型を使用して成型することによりガス拡散陰極表面に形成しても良い。
前記した金属線の埋め込み法は特に限定されないが、例えば電極基材としてニッケルや銀又はそれらを厚付けメッキした金属線メッシュで構成し、そのメッシュに5〜15cmの間隔をおいて前記メッシュより太い金属線を予め組み込むことにより当初から金属線を有する電極を構成することができる。なお前記金属線は当然電解液に対して耐食性のある材質である必要があり、可能ならば基材金属と同じ材質とする。
【0016】
前記凸部では上方から流下してくる液が止まり該凸部より下方には流れなくなるため、前記凸部に沿って液が流れ、前記凹溝と同等の効果が生ずる。金属線を埋め込んだ部分では液が集中するため凹溝と同様にその部分は電解に寄与しないが、該凸部以外の部分の電解効率が上昇して電極面積の減少は十分に補償される。なお凸部を形成した場合にも凹溝の場合と同様に、垂直方向に交差する凸部を形成して該垂直方向の凸部に沿って流下させるようにしても良いが、凸部をオーバーフローした液は下部のガス拡散陰極には接触せずに下方に移動(落下)するため、ガス拡散陰極を閉塞する可能性は低く、前記垂直方向の凸部は形成しなくても良い。しかし安全を期すためには、間隔をおいて金属線等の切断部を形成しその部分に垂直方向の溝を刻設した構造とすることが望ましく、金属線(凸部)部分に溜まった液の一部が該金属線に沿って移動し、他の一部が金属線の切れ目から溝を通って流下するため、大型電解槽の場合でも全面に渡り電流分布のない電解が可能になる。
【0017】
このような構成から成るガス拡散陰極及び他の構成部材を、陽極−イオン交換膜−ガス拡散陰極−陰極給電体の順で積層して両側から圧着して電極構造体を作製し、この構造体を電解槽内に組み込んだ状態で陽極室に食塩水を陰極室に酸素含有ガスをそれぞれ供給しながら両極間に通電すると、ガス拡散陰極で苛性ソーダ等の陰極生成物が生成し、この苛性ソーダ等が前記ガス拡散陰極を透過してガス拡散陰極表面に達する。この苛性ソーダ等は該表面に形成された凹溝及び/又は凸部に接触してその方向に案内されてガス拡散陰極表面を水平方向あるいは垂直方向に移動し、最終的にガス拡散陰極の下端に達してガス拡散陰極から離脱し、電解槽外に取り出される。
これらの凹溝や凸部が存在する電極表面は電極として機能せず有効電極面積が減少するが、前記凹溝等の存在しない電極ではガス拡散陰極全面に苛性ソーダ水溶液等が存在してガス拡散陰極を閉塞しがちであるのに対し、本発明のガス拡散陰極ではガス拡散陰極の前記凹溝等の存在しない箇所に透過した苛性ソーダ水溶液等が円滑に前記凹溝等に達し、電解中のガス拡散陰極の表面の前記凹溝以外の面には殆ど苛性ソーダ水溶液等が存在せず、従ってガス拡散陰極が閉塞してガス供給が阻害されることもなくなり、低電圧で安定した電解を継続できる。
【0018】
添付図面は、本発明に係わる2室型ソーダ電解用電解槽を例示するもので、図1はその概略縦断面図、図2は図1のガス拡散陰極のガス室側表面の拡大斜視図である。
電解槽本体1は、イオン交換膜2により陽極室3と陰極室(ガス室)4に区画され、前記イオン交換膜2の陽極室3側にはメッシュ状の不溶性陽極5が密着し、該イオン交換膜2の陰極室4側にはガス拡散陰極6が密着している。該ガス拡散陰極6の陰極室側表面には、複数の狭間隔の水平方向の凹溝7が刻設され、この凹溝7に、金属棒などを埋め込んで凸部 14 を形成し、前記ガス拡散陰極6には陰極集電体9が接続されている。なお10は陽極室底板に形成された陽極液導入口、11は陽極室天板に形成された陽極液及びガス取出口、12は陰極室天板に形成された酸素含有ガス導入口、13は陰極室底板に形成された苛性ソーダ取出口である。
【0019】
この電解槽本体1の陽極室3に陽極液例えば食塩水を供給しかつ陰極室4に酸素含有ガスを供給しながら両電極5、6間に通電すると、イオン交換膜2の陰極室4側表面で苛性ソーダが生成し、この苛性ソーダは水溶液としてガス拡散陰極6を透過してその陰極室側表面に達する。該表面に達した苛性ソーダ水溶液は該表面を流下して水平方向の凹溝7に達し、該凹溝7に保持された凸部 14を水平方向に移動する。
【0020】
なお添付図面では2室型ソーダ電解用電解槽を示したが、本発明は3室型ソーダ電解用電解槽等にも適用可能である。
【0021】
【実施例】
次に本発明に係わるガス拡散陰極及び該電極を使用する電解の実施例を記載するが、該実施例は本発明を限定するものではない。
【0022】
【参考例1】
銀の厚付けメッキを行なった見掛け厚さ5mmのニッケルフォームをプレスにより1mmの厚さまで潰してガス拡散電極基材とした。カルボニルニッケルにバインダーであるデキストリンを5%加え水で練ったペーストを前記基材の内部に両面から充填しかつ表面に塗布し、この基材を60℃で乾燥後、水素を流した450℃の電気炉中で15分焼結した。この焼結した基材を銀の無電解メッキ浴に浸漬してその表面に銀メッキを施した。PTFE樹脂の水懸濁剤であるデュポン社製のJ30を脱イオン水で2倍に希釈した液を、前記メッキ基材の両面及び貫通孔表面に行き渡るように塗布し乾燥後350 ℃で15分焼結した。
【0023】
この基材の片面に平均粒径0.2 μmの銀粉を硝酸銀溶液に懸濁した液を塗布し乾燥後、水素雰囲気中250 ℃で15分焼成して電極触媒とした。この塗布面とは反対面に5cm間隔で幅2mm深さ0.6 mmの水平方向の凹溝をプレスにより形成し、更に該凹溝と交差するように10cm間隔で同形状の垂直方向の凹溝を形成した。
これをガス拡散陰極としかつニッケルメッシュから成る陰極給電体に接続した後、デュポン社製のイオン交換膜ナフィオン961 に密着させ、前記ガス拡散陰極のイオン交換膜の反対側には、チタンメッシュに酸化ルテニウムと酸化タンタルから成る混合物を被覆した不溶性陽極を密着させ、前記陰極給電体と不溶性陽極間に圧力を掛けて固定し、高さ25cm×幅20cmの2室型電解槽内に設置し、ソーダ電解用電解槽を構成した。
【0024】
この電解槽の陽極室に180 g/リットルの食塩水を、陰極室に水分を飽和した酸素ガスを理論量の120 %供給しながら温度90℃、電流密度30A/dm2 で電解を行なった。
初期槽電圧は2.05Vであり、陰極室から濃度33%の苛性ソーダが得られた。50日経過後も電圧変化はなく他の性能にも変化はなかった。又前記ガス拡散陰極表面の液は凹溝に沿って流れており予想通りであった。
【0025】
【比較例1】
ガス拡散陰極表面に凹溝を形成しなかったこと以外は参考例1と同じ電解槽を組み立て、同一条件で苛性ソーダの電解生成を行なった。初期の槽電圧は2.4 Vであったが、30分後には電圧が2.8 Vまで上昇した。ガス拡散陰極表面の垂直方向の電流分布を観察したところ、電解槽上端から10cmの所での電流密度は40〜50A/dm2 に相当したのに対し、下端から5cmの部分では電流が殆ど零であり僅かな水素発生が認められた。電解継続は危険であると判断し、電解は継続しなかった。なお前記ガス拡散陰極表面の液は電極表面全体を流下し、最下部では流下する液により電極表面全体が完全に覆われていた。
【0026】
【実施例1】
線径0.2 mmのニッケル線を縦横に並べて編んだ金属メッシュを基材として使用し、このメッシュの片側に直径1mmのニッケル線を平行に7cm間隔で並べて溶接した。このメッシュの両面に参考例1と同じカルボニルニッケルのペーストを塗布し、室温にて乾燥後、実施例1と同様にして水素ガス雰囲気中で焼結して電極基体とした。この基体の片側にはニッケル線が約0.5 mm突出していた。
ニッケル線の突出のない面を電極面として塩化白金酸のブチルアルコール溶液を刷毛で塗布し乾燥後、水素雰囲気中200℃で15分加熱した。このように作製したガス拡散陰極のニッケル線突出側に該ニッケル線と垂直方向に10cm間隔で深さ0.5 mm幅1mmの縦溝を入れた。これをガス拡散陰極として参考例1と同じ電解槽に取付け同一条件で電解を行なったところ、槽電圧は2.05Vで極めて安定していた。又電流密度を40A/dm2 上昇させたところ槽電圧は2.15Vに上昇し、生成電解液量は増加したが電解は安定していた。
【0027】
【比較例2】
直径1mmのニッケル線を使用せずかつ縦溝を形成しなかったこと以外は実施例1と同一条件で電解を行なったところ、電流密度30A/dm2 での初期電圧は2.38Vであったが、30分後には2.8 Vを越えてしまった。
【0028】
【発明の効果】
本発明のガス拡散陰極は、陽極室及び陰極ガス室を区画するイオン交換膜に接触したガス拡散陰極において、電解液に対して耐食性を有する金属又は樹脂製の線を埋め込み複数の凸部を形成したことを特徴とする液透過型ガス拡散陰極である。
このガス拡散陰極は、その表面で生成しガス室側に透過する苛性ソーダ水溶液等が該ガス室側表面に形成された凸部に保持され、あるいはこれに沿って移動することにより、凸部が形成されていないガス拡散陰極表面に苛性ソーダ水溶液等の電解液が滞留することを防止する。前記凸部が形成された電極表面は電解には使用できないが、該凸部が存在しなければ電極表面全体を被覆してガス供給を阻害する電解液の滞留を抑制し生成した苛性ソーダ等を直ちに陰極室側から取り出すことができ、これによりガスの供給及び取り出しを円滑に行なうことが可能になり、槽電圧の低下を達成できる。
つまり本発明ではこの凸部による有効電極面積の減少による電解効率の減少を十分に補償できる電解効率の上昇を、前記凹溝等の形成により獲得することができるのである。更に電流密度を上昇させて生成電解液量を増加させてもガス拡散陰極の閉塞は殆どない。
【0029】
電解槽を大型化する際には前述したガス拡散陰極表面からの液離脱が重大な問題点となりやすく、この問題点解決が電解槽大型化のネックになることが多い。本発明によると電解槽を大型化しても、凸部の数をそれに対応するように増加するのみで大量の液離脱を円滑に行なうことができ、電解槽の大型化にも容易に対応できる。前記凸部は任意の方法でガス拡散陰極表面に形成できるが、それぞれガス拡散陰極をプレスして潰すことにより、又電解液に対して耐食性を有する金属又は樹脂製の線をガス拡散陰極中に埋め込んで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わるソーダ電解用電解槽を例示する概略縦断面図。
【図2】図1のガス拡散陰極のガス室側表面の拡大斜視図。
【符号の説明】
1・・・電解槽本体 2・・・イオン交換膜 3・・・陽極室 4・・・陰極室(ガス室) 5・・・不溶性陽極 6・・・ガス拡散陰極 7・・・水平方向の凹溝 9・・・陰極給電体 10・・・陽極液導入口 11・・・陽極液及びガス取出口 12・・・酸素含有ガス導入口 13・・・苛性ソーダ取出口 14・・・凸部
Claims (1)
- 陽極室及び陰極ガス室を区画するイオン交換膜に接触したガス拡散陰極において、前記ガス室側表面に水平方向に間隔をおいて電解液に対して耐食性を有する金属又は樹脂製の線を埋め込み複数の凸部を形成したことを特徴とする液透過型ガス拡散陰極。
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