JP4115686B2 - 電極構造体及び該構造体を使用する電解方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業電解、特に食塩電解に用いるガス拡散電極構造体及び該電極構造体を使用する電解方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガス拡散電極は、反応物質としてのガスを電極表面に供給することを特徴とし、燃料電池等の用途を踏まえ開発されてきたが、最近になってガス拡散電極を工業電解に利用することが検討されはじめている。
例えば過酸化水素のオンサイト製造装置では、酸素還元反応を行うための疎水性陰極が利用されている。又アルカリの製造や回収プロセスでは、対極反応としての陽極の酸素発生あるいは陰極の水素発生の代替として、陽極での水素酸化反応あるいは陰極での酸素還元反応をガス拡散電極を用いて行い、消費電力の低減を図っている。更に亜鉛採取等の金属回収や亜鉛めっきの対極として水素ガス陽極を使用して減極することが可能であることが報告されている。
【0003】
しかしながらこれらの工業電解系では、溶液やガスの組成あるいは運転条件が燃料電池の場合と比較して単純でないために、電極の寿命や性能が十分に得られないことがあるという問題点を有している。
前述の過酸化水素の電解製造以外に、工業用原料として重要な水酸化ナトリウムは主として食塩電解により製造されている。この電解プロセスは水銀法及びアスベスト隔膜法を経て、イオン交換膜を隔膜とし、過電圧の小さい活性化陰極を使用するイオン交換膜法へ移行してきた。この製造移行により水酸化ナトリウム1トン当たりの電力原単位は2000kWhまで減少した。更に陰極で水素発生の代わりに酸素還元を行わせると、理論分解電圧は従来の2.19Vから0.96Vまで、約1.23V低減させることができ、大幅な省エネルギー化が達成できる。
【0004】
この省エネルギー化が可能な新プロセスを実現するためには、高性能かつ該プロセスで充分な安定性を有する酸素ガス陰極の開発が不可欠である。
現在最も一般的に行われている酸素ガス陰極を用いる食塩電解用電解槽の概略を図2に示す。この電解槽1は陽イオン交換膜2により多孔板状の陽極3を有する陽極室4と陰極室に区画された2室型電解槽であり、酸素ガス電極5を陰極として使用し、この酸素ガス電極5により陰極室を陽イオン交換膜側の溶液室6と反対側のガス室7とに区画している。
【0005】
酸素ガス電極5にはその背面に密着した多孔性給電体8により給電され、かつ背面側に設置された酸素ガス供給管9から酸素ガスが供給される。供給された酸素ガスは該電極を透過しその間に一部が電極触媒により水及び陽極室4から陽イオン交換膜2を通って移行してくるナトリウムイオンと反応して水酸化ナトリウムを生成する。
従ってこの電解に使用される酸素ガス陰極5は酸素のみを充分に透過し、なおかつ生成した水酸ナトリウムがガス室7に漏洩しない、いわゆる気液分離型のガス拡散電極であることが望ましい。このような要求を満たす電極として、現在食塩電解用に提案されている酸素ガス陰極は、カーボン粉末とPTFEを混合させシート状に成形した電極基体に銀や白金等の触媒を担持させたものが中心となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながらこの電解法は次のような問題点を有している。
▲1▼ 電極材料として用いられるカーボンは高温で水酸化ナトリウム及び酸素の共存下では容易に劣化し、電極性能を著しく劣化させる。
▲2▼ 液圧の上昇及び電極の劣化に伴い、発生する水酸化ナトリウムのガス室側へのリークは、現状の電極を使用する限り、防止することが困難である。
▲3▼ 実用レベルで必要な大きさの電極(表面積が1m2以上)を均一に作製しかつ電解槽内に保持することが困難である。
▲4▼ 槽内の圧力は高さによって変化するが、それに対応した供給酸素ガス圧分布を与えることが困難である。
▲5▼ 陰極の溶液抵抗損失があり、攪拌の動力を必要とする。
▲6▼ 実用化に際し、既存の電解設備の大幅な改良が必要となる。
【0007】
問題点▲1▼に関してはカーボンの代わりに銀触媒粉末を使用し又は銀めっきによる保護層の形成で対応できる。問題点▲2▼〜▲6▼に関しては、図2の電解槽を改良して酸素ガス陰極を陽イオン交換膜に密着させて陰極室から溶液室を除去してガス室のみとしたゼロギャップ型の電極構造体を使用することによる解決が試みられ、この方法では原料である酸素及び水は電極背面から供給され、生成物である水酸化ナトリウムは電極背面又は電極下部から回収される。
この改良プロセスでは溶液室がなくなるため問題点▲2▼及び▲5▼が解決され、又酸素ガス陰極が陽イオン交換膜に密着する構造であり従来の多孔板状の陰極を使用する従来の食塩電解槽と殆ど構造的変化がなく、従来設備をそのまま使用できるため問題点▲6▼も解決される。
【0008】
又前述の通り電極により溶液室とガス室を区画する必要がなくなるため、電極は一体構造である必要がなくなり大型化も比較的容易になり問題点▲3▼が解決される。更に当然高さ方向の液圧変化の影響を受けなくなるため問題点▲4▼は起こらない。但し裏側に移動するアルカリ溶液以外に高さ方向に重力により移動する分があり、生成するアルカリ量の方が過剰であると液の滞留が電極内部で発生し、ガス供給が阻害されることがある。これを防止するために液保持機能を有する親水層をイオン交換膜とガス拡散電極間に配置することが提案されている。
この電解プロセスに適した酸素ガス陰極に要求される性能は従来の電極とは大きく異なり、充分なガス透過性に加え、水酸化ナトリウムによる湿潤を避けるための充分な疎水性及び水酸化ナトリウムが電極内に容易に透過できる透過性等を必要とする。
【0009】
従って前述した通り、ガス拡散電極を工業電解系に適した電極とするために改良が重ねられているが、例えば前記親水層を使用するガス拡散電極でも満足できる電解性能が得られない傾向があった。これは電極触媒への原料酸素ガスの供給が律速になり、電極での酸素還元反応が阻害されるためと推定される。
本発明は、前述の従来技術の問題点を解決し、比較的高い電流密度で、かつ大型の電解槽にも適用可能な、特に2室型食塩電解槽用のガス拡散電極構造体、及び該電極構造体を使用する電解方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、イオン交換膜に近接してガス拡散陰極が配置された電極構造体において、前記イオン交換膜とガス拡散陰極の電極触媒層間に、水に対する接触角が90°以上である気液透過層を設置したことを特徴とする電極構造体、及び該電極構造体を有する2室型電解槽により食塩電解を行う方法である。
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明のガス拡散電極構造体は、従来技術でガス拡散電極を使用した液のガス拡散電極内での滞留を防止するための親水層では、反応サイトへの反応ガス供給が充分に達成できないことに鑑み、該親水層に代えて、あるいは該親水層とともに気液透過層を使用することを特徴とする。
本発明者らは前述の親水層をガス拡散電極に密着させても充分な電解性能が得られない理由について種々検討し、親水層のガス保持能力が充分でないことに起因するであろうことを見出した。
前記親水層はその表面における水に対する接触角が90°未満、多くの場合80°以下で、水に対する濡れ性が高く、濡れ性が高いと、ガス保持能力は低くなる。つまり親水層をイオン交換膜とガス拡散陰極間に配置しても該ガス拡散陰極の触媒面で反応ガスが充分に保持されず、従って反応が迅速に進行しない。
【0012】
これに対し、水に対する接触角が90°以上、好ましくは100°以上の気液透過層をガス拡散陰極とイオン交換膜間に設置すると、ガス拡散陰極の触媒面に反応ガスが充分に保持されて、従って反応が迅速に進行する。あるいは少量の触媒の使用で同等の反応速度が得られる。又供給ガスが充分に電極触媒表面に存在するため、触媒が過度に生成する水酸化ナトリウムに接触することがなく、触媒性能の劣化が抑制される。
この気液透過層は前述の通りイオン交換膜とガス拡散陰極間に設置され、親水層と併用する場合には、イオン交換膜−親水層−気液透過層−ガス拡散陰極の順に設置する。
【0013】
この気液透過層は主な機能は原料ガスを保持することにある。ガス拡散陰極の背面側に供給される酸素ガスは全てガス拡散陰極内部の三次元ガスチャンネルを透過し電極触媒層に達するが、微視的に見ると供給ガスは電極触媒層の最前面に存在し、この最前面に位置する反応ガス量が多いほど反応は進行しやすいと考えられる。気液透過層が存在すると電極触媒層からその最前面に達した反応ガスが一旦気液透過層中に取り込まれ再度電極触媒層最前面に供給される状況が起こることが推測できる。従って気液透過層の存在は反応サイトへの反応ガス供給量の増加に貢献していることになる。
該気液透過層は、例えばフッ素樹脂、フッ化黒鉛及び疎水性カーボン粉末を混練しかつ焼成してシート状に成形することにより得られる。該気液透過層は原料ガスの保持以外に、ガス拡散陰極とイオン交換膜間のイオン電導を確保する機能を有し、その一部を親水性とすることが望ましく、例えば電解液が通過できる孔によりイオン電導を確保する。そのため、電気化学的な活性は必要ないが、多孔性として電解液流路を確保できる構造とすることが好ましい。
【0014】
該気液透過層は単独のシートとし、ガス拡散陰極、イオン交換膜及び必要に応じて親水層とともに挟み込んで電極構造体を構成しても良いが、ガス拡散陰極のイオン交換膜側、又は親水層のガス拡散陰極側に一体成形して挟み込んでも良い。好ましい形状は厚さが0.01〜10mm、孔径が0.005 〜5mmである。
親水層の主たる機能は電解液を保持することで、耐食性を有する金属や樹脂により厚さ0.01〜5mm程度のシート状に成形できる。電極ではなく電気伝導には寄与しない部品であるため、導電性はなくても良く、例えばカーボン、酸化ジルコニウム及び炭化珪素等のセラミックス、親水性化したPTFE及びFEP等の樹脂、あるいはニッケル、ステンレス及び銀等の金属を使用して形成する。
イオン交換膜とガス拡散陰極の間に配置されるため、前記親水層は弾力があり不均一な圧力分布が生じた場合には、自身が変形し不均一分布を吸収できる材料であることが望ましい。具体的には、網、織物、不織物、発泡体、粉末から成る前記材料と、孔形成剤及び各種バインダーの混合物をシート状に成形した後に、溶剤を使用して該シート状体から前記孔形成剤を除去し、更に焼結して製造できる。又得られるシート状体を複数枚重ねて構成しても良い。好ましい孔径は0.005 〜5mmである。
【0015】
使用するガス拡散陰極は、電極支持体と該支持体上に形成した電極触媒層を含んでいる。
電極支持体は、チタン、ニオブ、タンタル、ステンレス、ニッケル、ジルコニウム、カーボン及び銀等の耐食性を有する金属や合金製の金網、該金属や合金の粉末から成る焼結体、金属又は合金繊維焼結体及び発泡体等を用いて構成する。ニッケルなどの腐食されやすい金属や合金の場合は、銀めっきなどの保護層を予め形成しておくことが望ましい。
該電極支持体は、ガス及び液の供給及び除去のため、適度の多孔性を有しかつ充分な電導性を有することが望ましく、厚さ0.05〜5mm、空隙率30〜90%及び代表的孔径0.001 〜5mmが好ましい。
【0016】
更に該支持体は、生成ガス及び液の物質移動を速やかに行うために、疎水性や親水性の材料や領域を触媒あるいは触媒を有する集電体に分散担持することが好ましい。疎水性材料としてはフッ化ピッチ、フッ化黒鉛及びフッ素樹脂等があり、特にフッ化樹脂は均一かつ良好な性質を得るためにその使用が望ましく、200 〜400 ℃で焼成を行って疎水性材料として使用できる。疎水性部分及び親水性部分は、それぞれ電極断面方向に沿って連続して繋がっていることが好ましい。
前述の銀、特に疎水性銀めっき保護層等の形成のための銀めっき浴は、チオシアン化銀10〜50g/リットル及びチオシアン化カリウム200 〜400 g/リットルを含む水溶液に、PTFE粒子10〜200 g/リットル及び界面活性剤10〜200 g/(g−PTFE)を添加して調製し、この銀めっき浴を適度に攪拌しながら前記支持体を浸漬し、室温で電流密度0.2 〜2A/dm2で電着させることができる。めっき厚は1〜10μmが望ましく、この厚さで良好な疎水性及び耐食性が発現する。めっき後は表面をアセトンで充分に洗浄することが好ましい。
【0017】
このような支持体上に電極触媒層を形成する。触媒としては、白金、パラジウム、ルテニウム、イリジウム、銅、銀、コバルト及び鉛等の金属又はそれらの酸化物の使用が好ましい。これらの触媒金属は、0.005 〜100 μm程度の粒径の粉末フッ素樹脂等のバインダー及びナフサ等の溶剤と混合し、ペーストとして支持体表面に固着するか、触媒金属の塩溶液を支持体表面に塗布焼成するか、あるいは塩溶液を電気めっきするか又は還元剤を用いて無電解めっきすることにより電極触媒層として支持体上に形成される。
使用するイオン交換膜としてはフッ素樹脂系の耐食性膜の使用が最適である。前記支持体−気液透過層−(親水層−)イオン交換膜を機械的に一体化するためには、約1〜300 N/m2の圧力で各部材を締着することが好ましい。この場合に電極支持体とイオン交換膜間に挟まれる気液透過層は陽極液の高さによる水圧差で固定される。
【0018】
陽極は、DSE又はDSAと称されるチタン基体に貴金属酸化物を担持した多孔性電極を使用すれば良く、前記イオン交換膜と密着状態で使用することが望ましい。
食塩電解の電解条件は、液温が60〜95℃、電流密度が10〜100 A/dm2が好ましく、陰極への供給酸素ガスは必要に応じて湿潤させる。ガスの湿潤は例えば、電解槽入口に70〜95℃に加熱された加湿装置を設け、供給酸素ガスをこの加湿装置を通すことにより行われ、温度や滞留時間を適宜設置することにより湿潤度を調節できる。
現在市販されているイオン交換膜の場合、陽極液の濃度を150 〜200 g/リットルに維持すると、陽極側からイオン交換膜を通して陰極側に水分が供給されるため、陰極側への供給酸素ガスを加湿する必要はなくなる。
【0019】
生成する水酸化ナトリウムの濃度は25〜40%が望ましく、イオン交換膜の特性により最適値を決定する。該濃度は湿潤ガス中の水分やイオン交換膜を通して陽極室側から浸透する水分量により調節する。
本発明の電極構造体は、そのまま食塩電解槽に装着して電解を行えるが、電極支持体の気液透過層側の面に沿って下降する電解液を一部その背面側に移送して電解液の除去、従って生成ガスの供給及び除去を円滑に行うための手段を施しても良い。該手段としては例えば、1〜5mmの幅のスリットやガイドがあり、該スリット等を電極支持体の前面側と裏面側を連結するように上下間隔20〜50cmごとに設置し、その先端を触媒層の裏側に垂らして生成する水酸化ナトリウムを反応面から取り出すようにすることができる。
【0020】
本発明の電極構造体は、ガス拡散陰極とイオン交換膜間に水に対する接触角が90°以上である気液透過層を設置してあり、該気液透過層は比較的高いガス保持能を有しかつガス拡散陰極表面の電極触媒層と接触しているため、反応サイトである電極触媒層に充分な量の反応ガスが供給されかつ保持されるため、電解反応が促進され、あるいは同一反応を起こすために必要な触媒量が低減される。更にこのガス保持能力により電極触媒層が過度に水酸化ナトリウムに接触することがなくなり、電極触媒の保護も達成できる。
【0021】
又この気液透過層はさほど大きくないにしても液保持能力を有し、電極触媒層から水分を取り出して自身で保持することにより電極触媒層内のガス移動を円滑に行ってガス供給及び排出能を高めている。
本発明の電極構造体は食塩電解用の陰極として特に有用であるが、芒硝電解や有機電解等の他の電解にも使用でき、更にガス拡散陽極としても使用できる。
本発明では該気液透過層に加えて親水層を併用しても良く、該親水層はガス保持能力は気液透過層より低いが、より高い液保持能力を有し、気液透過層及び親水層の併用により最適なガス保持能力及び液保持能力を有する電極構造体を提供できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
次に添付図面に基づいて本発明の電極構造体の実施形態を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明に係る電極構造体を装着した食塩電解槽を例示する概略断面図である。
食塩電解槽11は、陽イオン交換膜12により多孔板状の陽極13を有しかつ食塩水である陽極液が満たされた陽極室14と、電極支持体上に電極触媒層を形成してなるガス拡散陰極15を有する陰極室16に区画された2室型電解槽である。
ガス拡散陰極15にはその背面に密着した多孔性給電体17により給電され、かつ背面側に設置された酸素ガス供給管18から酸素ガスが供給される。供給された酸素ガスは該電極15を透過しその間に一部が電極触媒により水及び陽極室14から陽イオン交換膜12を通って移行してくるナトリウムイオンと反応して水酸化ナトリウムを生成する。
【0023】
ガス拡散陰極15と陽イオン交換膜12との間には、カーボン粒子とPTFE粒子をバインダーで焼結した、水との接触角が90°以上好ましくは120°程度の気液透過層19と、金属繊維焼結体であり水との接触角が90°未満好ましくは60°程度の親水層20が気液透過層19がガス拡散陰極15側に位置するように配置されている。気液透過層19はガス保持機能を有し、該気液透過層19と近接する電極触媒層に反応ガスを供給できるため、反応効率が上昇し、従って少量の触媒で所望の反応速度が得られる。更に該気液透過層19の存在により電極触媒層が生成する水酸化ナトリウムによる劣化から保護され、電極触媒層の長寿命化が達成できる。
図示の例では、気液透過層19と親水層20は別個にガス拡散陰極15と陽イオン交換膜12間に挟まれているが、両者を一体化したり、気液透過層のみをガス拡散陰極15の電極触媒層と一体化したり、前記一体化した気液透過層19と親水層20を更に電極触媒層と一体化したりすることができる。又親水層20を設置しなくても良く、この場合にも気液透過層19を電極触媒層と一体化しても良い。
【0024】
次に本発明のガス拡散陰極とそれを使用する食塩電解に係る実施例を記載するが、これらは本発明を限定するものではない。
(実施例1)厚さ1mmの銀めっきしたニッケル発泡体を支持体とした(投影電解面積が1dm2、幅5cm、高さ20cm、厚さ0.5 mm)。疎水性カーボン(商品名:Vulcan XC-72) とPTFE水懸濁液(三井フロロケミカル株式会社製30J)を体積比1:1で混合し、この混合懸濁液を、前記支持体に100 g/m2となるように塗布し、250 ℃で20分乾燥後、電気炉中350 ℃で50分焼成して気液透過層を作製した。この気液透過層の接触角は110°であった。
【0025】
次に銀粉末(福田金属箔工業株式会社製AgC-H)とPTFE水懸濁液(三井フロロケミカル株式会社製30J)を体積比1:1で混合し、該混合懸濁液を、前記支持体の気液透過層を形成した面と反対面に250 g/m2となるように塗布し、電気炉中350 ℃で50分焼成して触媒層を作製した。
給電体として銀めっきを施したニッケルメッシュ(厚さ2mm、開口率40%、平均孔径5mm)を用い、前記支持体に接続した。
陽極としてチタン製のDSE多孔性陽極、イオン交換膜としてナフィオン981 (デュポン社製)を用いた。
【0026】
又厚さ1mmで接触角が60°の銀製の繊維焼結体(厚さ0.5 mm)を親水層とし、この親水層を前記支持体と前記イオン交換膜間に挟み、前記陽極及び前記支持体を内向きに押圧し、イオン交換膜が鉛直方向に位置するように、各部材を密着固定して電解槽を構成した。
陽極液として飽和食塩水を毎分4mlで供給し陽極液濃度が180 g/リットルとなるようにした。又陰極には湿潤酸素ガスを毎分200 ml(理論量の約1.2 倍)の割合で供給した。陽極液の液温を90℃、電流量を50Aとして電解を行ったところ、セル電圧は2.20Vであり、陰極室出口から32%の苛性ソーダが電流効率約97%で得られた。
100 日間電解を継続したところセル電圧は20mVだけ上昇したが、電流効率は約97%に維持された。
【0027】
(比較例1)
気液透過層を作製しなかったこと以外は実施例1と同様にして電解槽を構成し同一条件で飽和食塩水の電解を行ったところ、セル電圧は2.40Vであった。
【0028】
(実施例2)
黒鉛化カーボンクロス(日本カーボン株式会社製)製の繊維焼結体(厚さ0.4 mm)を親水層とし、この親水層の一方面に疎水性カーボン層を50g/m2となるように塗布焼成して気液透過層とし、親水層と気液透過層を一体化した。親水層の接触角は80°で、気液透過層の接触角は120°であった。この一体化層を親水層側がイオン交換膜に接触するようにイオン交換膜と陰極支持体間に挟み固定した。
他は実施例1と同様にして電解槽を構成し同一条件で飽和食塩水の電解を行ったところ、セル電圧は2.25Vであり、陰極室出口から32%の苛性ソーダが電流効率約98%で得られた。
【0029】
(実施例3)
親水層を作製しなかったこと以外は実施例1と同様にして電解槽を構成し同一条件で飽和食塩水の電解を行ったところ、電流密度50A/dm2でのセル電圧は2.20Vで、陰極室出口から32%の苛性ソーダが電流効率約96%で得られた。
100 日間電解を継続したところセル電圧は50mVだけ上昇したが、電流効率は約96%に維持された。
【0030】
(比較例2)
気液透過層を作製しなかったこと以外は実施例3と同様にして電解槽を構成し同一条件で飽和食塩水の電解を行ったところ、電流密度50A/dm2でのセル電圧は2.5 Vとなり、水素ガスの発生が観察された。
【0031】
(実施例4)
実施例1の電解槽を全体的に同一縮尺で大型化して高さ100 cmで幅10cmの電解槽とし、陰極支持体のイオン交換膜との反対面に20cmごとに幅3mmのスリットを4本形成し、これらの各スリットのそれぞれに親水性のカーボンクロスの一端を止着し、かつ他端を底面に向けて垂らした。
50A/dm2の電流密度で電流を流して飽和食塩水の電解を行ったところ、セル電圧は2.20Vで、電流効率約98%であり、小型の電解槽とほぼ同等の性能が得られた。
【0032】
(比較例3)
気液透過層を作製しなかったこと以外は実施例4と同様にして電解槽を構成し同一条件で飽和食塩水の電解を行ったところ、電流密度50A/dm2でのセル電圧は2.45Vであった。
【0035】
【発明の効果】
本発明は、イオン交換膜に近接してガス拡散陰極が配置された電極構造体において、前記イオン交換膜とガス拡散陰極の電極触媒層間に、水に対する接触角が90°以上である気液透過層を設置したことを特徴とする電極構造体である。
各種電解では、単位時間当たりの電解生成物の量を増やすために、高電流密度で運転を行うことが多い。しかし反応サイトに充分な反応物質が供給されないと反応速度が低くなり、生成物量が低下する。ガス拡散陰極を使用する各種電解でも高電流密度での運転が行われることが多いが、このような電解では反応物質である反応ガスはガス拡散陰極を透過して反応サイトに達するため透過抵抗が高く、供給量が不足しがちである。
【0036】
しかし本発明のように水に対する接触角が90°以上である気液透過層を反応サイトであるイオン交換膜とガス拡散陰極間に設置しておくと、反応サイトに供給されるガスが散逸せず一旦前記気液透過層に保持され、その後再度反応サイトに供給されるため、反応物質が不足することが殆どなく、使用する陰極の電解能力に応じた量の生成物が得られる。
又前記気液透過層と前記イオン交換膜間に、水に対する接触角が90°未満である親水層を設置すると、反応サイト付近のガス保持能だけでなく、液保持能も向上し、ガスが透過するガス拡散電極内の水分を該親水層で保持し、反応ガスの供給や生成ガスの排出を阻害することなく電解反応を進行させることが可能になる。
更に前記電極構造体は2室型の食塩電解槽で最も効率的に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電極構造体を装着した食塩電解槽を例示する概略断面図。
【図2】従来の食塩電解槽を例示する概略断面図。
【符号の説明】
11 食塩電解槽
12 陽イオン交換膜
13 陽極
14 陽極室
15 ガス拡散陰極
16 陰極室
17 多孔性給電体
18 酸素ガス供給管
19 気液透過層
20 親水層
Claims (3)
- イオン交換膜に近接してガス拡散陰極が配置された電極構造体において、前記イオン交換膜とガス拡散陰極の電極触媒層間に、水に対する接触角が90°以上である気液透過層を設置したことを特徴とする電極構造体。
- イオン交換膜に近接してガス拡散陰極が配置された電極構造体において、前記イオン交換膜とガス拡散陰極の電極触媒層間に、水に対する接触角が 90 °以上である気液透過層を設置し、更にイオン交換膜と気液透過層間に、水に対する接触角が90°未満である親水層を設置したことを特徴とする電極構造体。
- 電解槽を陽極室と陰極室の2室に区画するイオン交換膜、該陰極室内に設置されたガス拡散陰極、前記イオン交換膜と該ガス拡散陰極の電極触媒層間に設置され水に対する接触角が90°以上である気液透過層を含んで成る電極構造体を設置した2室型食塩電解槽の、前記陽極室に食塩水を、前記陰極室に酸素ガスを供給しながら電解し、陰極室で水酸化ナトリウム水溶液を得ることを特徴とする電解方法。
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JP2001230231A JP4115686B2 (ja) | 2000-11-02 | 2001-07-30 | 電極構造体及び該構造体を使用する電解方法 |
Applications Claiming Priority (3)
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JP2000-335461 | 2000-11-02 | ||
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