JP4297694B2 - ガス拡散陰極を用いたイオン交換膜型電解槽及びその運転方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガス拡散陰極を使用したイオン交換膜型電解槽及びその運転方法、特にクロルアルカリ(食塩)電解槽及びその運転方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロルアルカリ電解を代表とする電解工業は、素材産業として重要な役割を果たしている。このような重要な役割を持つものの、クロルアルカリ電解に要する消費エネルギーが大きく、日本のようにエネルギーコストが高い国ではその省エネルギー化の達成を強く要望されている。
例えば、クロルアルカリ電解は、環境問題の解決と共に省エネルギー化を達成するために、水銀法から隔膜法を経てイオン交換膜法へと転換され、約25年で約40%の省エネルギー化を達成してきた。しかし、この省エネルギー化でも不十分で、エネルギーである電力コストが全製造費の約半分を占めているが、現行の方法を使用する限りこれ以上の電力節約は不可能なところまで来ている。更なる省エネルギー化を達成するためには電極反応を変換する等の抜本的な変更を行わなければならない。その例として燃料電池等で採用されているガス拡散電極の使用は現在考えられている中で最も可能性が高く、電力節約に対する有効な手段である。従来の金属陰極を使用する電解反応▲1▼が、陰極としてガス拡散陰極を使用し酸素を供給すると電解反応▲2▼に変換される。
【0003】
▲1▼2NaCl+2H2O→Cl2+2NaOH+H2 Eo=2.19V
▲2▼2NaCl+1/2O2+2H2O→Cl2+2NaOH Eo=1.14V
【0004】
つまり金属陰極をガス拡散陰極に変換し酸素を供給する電解反応にすることにより、電位が2.19Vから1.14Vに減少し、理論的には40%以上の省エネルギー化が可能となる。このガス拡散陰極の使用によるクロルアルカリ電解の実用化に向けて種々の検討がなされているが、さらに電解電圧を低下させる方法としてガス拡散陰極をイオン交換膜に密着して設置し実質的に陰極液室をなくしてしまう、換言すると陰極室をガス室とする方法(陽極室と陰極ガス室の2つの部屋からなり2室法と総称する)が特許文献1等に提案されている。この方法を採用した場合、イオン交換膜と陰極との間にギャップがないため、陰極液がその間に最小限にしか存在せず、陰極液の電気抵抗が極限まで小さくなり電解電圧を最小に維持できるという利点を有する。
【0005】
しかし一方では、この2室法電解槽では、ガス拡散陰極がイオン交換膜に均一に密着する状態を維持しなければ電解液(陰極液)が全面均一に保持できず、電流を流すことができない箇所を生じて十分な電流の通電は困難であるばかりか電流の集中によってイオン交換膜や陽極、ガス拡散陰極に回復しがたい損傷を生じてしまうという不安定な面も有している。
【0006】
【特許文献1】
特開平11−124698号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したようにイオン交換膜を陽−陰極間で狭持する電解槽の構造上の特徴は、ガス拡散陰極をイオン交換膜に均一に密着させてイオン交換膜の破損をさけるため及び陽−陰両電極間距離を最小に保つため、少なくとも一方の電極の極間距離方向への移動が自由な構造とし、電極を弾力性部材で押し狭持圧を調節できる点にある。
弾力性部材としては、金属ワイヤーからなる編物や織物又はこれを積層したもの、或いは三次元的に編んであるか、三次元的に編んだ後これにうねり加工等を施した形状、並びに金属繊維からなる不織物、コイルバネ(スプリング)、板バネなどであり、いずれも何らかのバネ弾性を有するものである。
【0008】
バネ弾性にあっては、電解槽組み立て時に弾性部材は圧縮変形され反発力を生ずるが、この反発力が過度に大きければ、イオン交換膜は電極間に強く挟まれ機械的に変形し、ひいては破壊を生ずる。そこで、該反発力は電解槽下部に掛かる液ヘッド相当が適当であり、電解槽の運転時の圧力変動によるイオン交換膜の振動、ズレ等を抑制し得る程度で、可及的に小さくすることが望ましい。また、電解液の保持性、イオン交換膜に与える機械的損傷の面などから該反発力を全面均一にイオン交換膜に作用させることが好ましい。
従来のバネ弾性により電極を押圧する方式では、バネ弾性が直接電極に伝達されていたため、弾性力の調節が困難で、しかも弾性力が均一に電極に伝達され難かった。従って電極がイオン交換膜に均一に密着せず、しかも電極が破損したり電極内での電流が集中する等の不都合が生じていた。
本発明は、前述する課題つまりガス拡散陰極をイオン交換膜に均一に密着する状態を維持する方法を提案し、食塩電解等に実質的に使用が可能な2室法イオン交換膜電解槽及びその運転方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、ガス拡散陰極をイオン交換膜に実質的に均一密着する状態を維持できる電解槽の構造を鋭意探求した結果、下記の手段で上記の課題を解決した。
つまり本発明は、イオン交換膜により陽極を収容する陽極室とガス拡散陰極を収容する陰極室に区画された2室法イオン交換膜型電解槽において、前記ガス拡散陰極の前記イオン交換膜と反対側に、透過性かつ金属製で、0.5mmから5.0mmの孔径を有するエキスパンドメタル、パンチドメタル、又は網状体製の剛体である押圧板を設置し、電解槽運転時に前記押圧板をガス室充填材の弾性力によりガス拡散陰極方向に押し付け、この押圧板から均一にガス拡散陰極に応力が作用してイオン交換膜とガス拡散陰極を全面的に密着する状態を維持することを特徴とするガス拡散陰極を用いたイオン交換膜型電解槽、及びイオン交換膜により陽極を収容する陽極室とガス拡散陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜型電解槽の前記ガス拡散陰極の前記イオン交換膜との反対側に、透過性かつ金属製で、0.5mmから5.0mmの孔径を有するエキスパンドメタル、パンチドメタル、又は網状体製の剛体である押圧板を設置し、電解槽運転時に前記押圧板により前記ガス拡散陰極を前記イオン交換膜方向に押し付け、陽極室にハロゲン化アルカリを陰極室に酸素含有ガスを供給しながら両極間に通電して陰極室で水酸化アルカリを製造することを特徴とするイオン交換膜型電解槽の運転方法である。
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。
本発明の対象とする電解槽は、ガス拡散陰極がイオン交換膜に密着した陰極室がガス室として構成される前述した2室法電解槽である。又本発明の電解反応はクロルアルカリ(食塩)電解による水酸化アルカリ(水酸化ナトリウム)の生成反応であることが望ましいが、陰極室側で反応物質として酸素含有ガスを供給する反応であれば特に限定されない。
本発明ではこのような電解槽のガス拡散陰極を直接又は他の部材を介してイオン交換膜に実質的に均一密着させて、電流が偏ったり、イオン交換膜が損傷したりすることがないようにする。
【0011】
この均一密着はガス拡散陰極にイオン交換膜に向けて力を加えれば良い。しかしながら、平滑面を有する押圧板をガス拡散陰極のイオン交換膜と反対側からイオン交換膜に向けて押圧することが望ましく、その押圧は、該押圧板と電解槽壁面等の間に収容した弾性力を有するガス室充填材により行うことが好ましい。このガス室充填材は電解槽組み込み前の厚さが前記押圧板と電解槽壁面との距離より大きいことが望ましい。このようなガス室充填材を前記押圧板と電解槽の壁面に組み込むと該ガス室充填材の厚さが縮小して反発力(又は弾性力)が生じる。この反発力は前記押圧板に向けて印加され、該押圧板がガス拡散陰極をイオン交換膜に向けて押圧する。前記反発力が均一に押圧板に印加されればガス拡散陰極がイオン交換膜に均一密着する。
【0012】
従って均一密着のためには、ガス室充填材の反発力を押圧板に均一に伝えることが必要になる。
前記押圧板は酸素含有ガスをガス拡散陰極に供給するため、無孔の平板を使用することはできず、酸素含有ガスを均一にガス拡散陰極へ供給するための多数の孔を有する多孔板とする。そしてこの押圧板はガス室充填材の反発力をイオン交換膜の全面に均一に伝達するため、剛体とする。つまり剛体であるためガス室充填材の反発力が複数の点で押圧板に伝達されても、この反発力が剛体である押圧板全体に分散して特定の点に集中せずにガス拡散陰極に均一に伝達される。
【0013】
この押圧板はガス及び液体透過性とする。
前記ガス室充填材も無孔性であると酸素含有ガスの供給に支障が生じる。このガス室充填材は弾性力を有することが必要であるため、通常は複数の金属ワイヤーを縦横に編み込み又は織り込んだ編物又は織物、つまり金網状とする。
ガス室充填材の金網では、縦横の金属ワイヤーの複数の交点がほぼ均一に分散すると共に、横方向に突き出している。このガス室充填材を電解槽内の押圧板と電解槽壁面間に収容すると、該ガス室充填材が横方向に収縮して反発力が生じると共に、均一に分散している前記複数の交点が押圧板に接触して押圧板全体を均一にガス拡散陰極方向に押圧し、これによりガス拡散陰極とイオン交換膜の均一密着が達成される。
【0014】
本発明ではガス拡散陰極とイオン交換膜との間に炭素繊維性織物や金属繊維等の親水性材料から成る親水層を介在させても良い。この親水層はガス拡散陰極の反応点で生成した生成物である苛性ソーダ等を保持する機能を有し、この苛性ソーダ等は電解槽内下部から電解槽外へ取り出される。
このような構成から成るイオン交換膜電解槽を使用して、陽極室に食塩水溶液等の電解液を、陰極ガス室に酸素含有ガスを供給しながら、両極間に通電すると、ガス拡散陰極がイオン交換膜に均一密着しているため、ガス拡散陰極やイオン交換膜が機械的に損傷したりすることなく、更にガス拡散陰極の一部に電流集中が生ずることなく、苛性ソーダ等を高効率で製造できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明による2室法型電解槽の一例を図1を参照して説明する。
電解槽本体1は、イオン交換膜2により陽極室3と陰極ガス室4に区画され、前記イオン交換膜2の陽極室3側にはメッシュ状の不溶性陽極5が密着し、イオン交換膜2の陰極ガス室4側には炭素繊維織物や金属繊維からなる親水層6を挟み、ガス拡散陰極7が密着している。ガス拡散陰極7の陰極ガス室4側には剛体で成形された押圧用剛体多孔板(押圧板)8が位置し、この多孔板8とガス室背板(陰極端子)10の間、つまり陰極ガス室4内部には金属ワイヤーからなる編物又は織物等を複数枚積層して構成されるガス室充填材9が存在する。
図中、11は陽極室3下部に設けられた陽極液導入口、12は陽極室3上部に設けられた陽極液及びガス取出口、13は陰極ガス室4上部に設けられた酸素含有ガス導入口、14は陰極ガス室4下部に設けられた苛性ソーダ水溶液取出口である。
【0016】
この電解槽本体1の陽極室3に陽極液導入口11から食塩水を供給し、かつ陰極ガス室4に酸素含有ガス導入口13から酸素含有ガスを供給しながら両電極5、7間に通電すると、ガス拡散陰極7では、予め苛性ソーダ水溶液で満たした親水層6側から水分が、反対面の陰極ガス室4側から酸素含有ガスが供給され、ガス拡散陰極7の反応点において苛性ソーダの生成反応が進行する。ガス拡散陰極7の反応点において生成した高濃度の苛性ソーダ水溶液は濃度勾配に従って親水層6へ拡散し直ちに吸収、保持され、また親水層6内部を流下して苛性ソーダ水溶液取出口14から排出される。このとき、親水層6はガス室充填材9の弾力性を伝達された剛体多孔板8、及びガス拡散陰極7から均一にイオン交換膜2へ押し付けられる。つまりガス室充填材9の弾力性によりガス拡散陰極7を親水層6を介してイオン交換膜2に均一密着する状態を維持でき、電解液である苛性ソーダ水溶液を親水層6のほぼ全面に均一に保持することができる。ガス室充填材9で発生した反発力は結果的に陽極5によって支えることとなるため、陽極5は該反発力を支えるだけの剛性を有し、かつ平滑性を有していることが望ましい。
【0017】
前述した反発力のバランス及び平滑性が崩れるとガス拡散陰極7とイオン交換膜2が不均一な密着となり苛性ソーダ水溶液は密着した点のみ親水層6に保持されることから、実質的な電流密度が上がり、槽電圧の上昇原因につながるばかりか、電流の集中によってイオン交換膜2や陽極5、ガス拡散陰極7に回復しがたい損傷を生じかねない。
剛体多孔板8の役割は、ガス室充填材9の弾力性を受け止め、ガス室充填材9の弾力性を均一にガス拡散陰極7、親水層6、更にイオン交換膜2に伝達することである。
【0018】
ガス拡散陰極7をイオン交換膜2に均一に密着する状態を維持するために必要な剛体多孔板8とガス室充填材9についてさらに詳しく説明する。
剛体多孔板8は、平滑性を有する部材で、例えばエキスパンドメタル、パンチドメタル、剛性を持つ金属ワイヤー線で構成された金網、金属棒を格子状或いは縦方向に接続されたものが好ましい。エキスパンドメタルやパンチドメタル、平織金網等の場合、孔径は0.5〜5.0mmとする。孔径を0.5mmより小さくすると酸素含有ガスの拡散に支障をきたしガス拡散陰極7の反応点までの到達が困難となることから槽電圧の上昇に繋がる。一方、5.0mmより大きくすると剛体多孔板8のガス拡散陰極7に対する接触面積が著しく低下し、ガス拡散陰極7の機械的損傷や、ガス室充填材9の反発力をガス拡散陰極7に均一に伝達できない状態に陥り、延いては槽電圧の上昇に繋がる。開孔率(投影開孔率)は50〜70%程度が好ましいが、剛体多孔板8の材質、形状等によっては、70%を越えても期待する剛性が維持され、かつ好ましい孔径が保たれている場合においては、前記開孔率は大きいほど透過能の観点からより好ましい。
【0019】
ガス室充填材9は、電解槽1が組み立てられたとき、圧縮され、その反発力によって剛性多孔板8をガス拡散陰極7方向に押し付け、さらにガス拡散陰極7に反発力を伝達する機能を有する。このためガス室充填材9は金属ワイヤーを編んで網状とすることが好ましく、例えば0.02〜0.5mm程度の径のワイヤーを編み、これを重ね合わせて又は三次元状に編み込んで網状体を構成する。編状体の最適な形体は表面に凸凹を付し反発力を付与した編状メッシュの積層体であり、この場合には見かけ厚さ0.5〜3mm程度のメッシュを1〜5枚積層したものが良い。この他の形体としては金属編物や織物又はこれを積層したもの、或いは金属繊維からなる不織物等、及び複数の長寸のワイヤーを互いにランダムに絡み合わせてフェルト状の網状体を構成することもできる。又ガス室充填材9の反発力は1mm圧縮したときの1平方センチメートル当り0.03kgから0.3kgの応力で反発するものが好ましい。該反発力を0.03kgより小さくするとイオン交換膜2とガス拡散陰極7の密着性が低下し、親水層6に苛性ソーダ水溶液(電解液)を保持できなくなることがある。反対に反発力を0.3kgより大きくするとイオン交換膜2や陽極5、ガス拡散陰極7に回復しがたい機械的損傷を生じさせることがある。
【0020】
前記剛体多孔板8とガス室充填材9は陰極給電体(導電体)及び酸素含有ガス撹拌バッフルとしても機能する。
陰極給電体としての機能は、ガス室背板(陰極端子)10からガス拡散陰極7へ給電する役割を果たす。給電をより効果的とするため剛体多孔板8、ガス室充填材9、さらにガス室背板(陰極端子)10には銀メッキを施すことが好ましい。銀メッキは給電効果向上のほかガス室4の腐食防止にも寄与する。
酸素含有ガス撹拌バッフルとしての機能は、酸素含有ガスの流れを乱流化し、ガス拡散陰極7への拡散・供給効果を促進することに由来する。電解槽1では、物質移動の促進は効果的な電解反応を促すため非常に重要である。特に酸素の供給が重要である。酸素源として酸素濃度90%以上の酸素含有ガスを使用したとしても、ガス拡散陰極7の反応点まで拡散していかなければ反応は進行しない。気体とガス拡散陰極7の界面における物質移動を促進するため酸素含有ガス撹拌バッフルとしての機能は一層重要な要素となる。
【0021】
【実施例】
次に実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0022】
(実施例1)
電解槽としては、有効面積が幅100mm、高さ600mmの2室法電解槽を使用した。ガス拡散陰極としては、銀製マイクロメッシュを芯材とし、PTFE粉末、カーボン粉末を混練充填して製作されたガス拡散陰極を使用した。このガス拡散陰極はガス拡散層と反応層の2層構造からなり、反応層には銀微粒子触媒を担持させた。
剛体多孔板(押圧板)はニッケル製のエキスパンドメタル(孔径1.0〜1.5mm、厚さ0.6mm、開効率56%)を使用した。ガス室充填材は、線形0.2mmのニッケルワイヤーを三次元にニット形状に編み、目開きを1.5〜3.5mmとした金網を4枚積層したもので、電解槽が組み立てられたとき、その厚みを3.0mmから2.0mmへ1mm圧縮され、その反発力は0.15kgf/平方センチメートルとなるように設置した。なお剛体多孔板、ガス室充填材、ニッケル製背板には厚みが10μmの銀メッキを施した。
【0023】
親水層としては炭素繊維織物から成るシートを使用し、陽極としては、DSA(TM)と呼ばれるチタンメッシュに酸化ルテニウムと酸化タンタルからなる混合物を被覆した不溶性陽極を使用した。又イオン交換膜としては旭硝子製フレミオン8934を使用した。
ニッケル製背板、前記ガス室充填材、前記剛体多孔板、前記ガス拡散陰極、前記イオン交換膜及び前記陽極の順に重ねて電解槽を構成した。
【0024】
陽極室に濃度が305g/リットル、87℃に加温した食塩水を供給し、次いでガス室に酸素含有ガス供給口よりPSA濃縮酸素(94容量%)を酸素基準で0.75Nリットル/min(必要理論量の1.2倍)、温度87℃に加熱して供給した。電解槽全体を87℃に調節しながら電流を1分間に33A/平方メートルの上昇速度で180Aまで上昇した。このときの電流密度は3kA/平方メートルである。定常状態に達した後の陽極液濃度は125g/リットル、生成苛性ソーダ濃度は32.4%であった。運転初期槽電圧は2.10Vであったが、徐々に低下し1.95Vで2ヶ月間以上安定推移した。このときの電流効率は96%であった。
【0025】
(比較例1)
電解槽に剛体多孔板を設置しなかった点を除き実施例1と同様の条件で電解を行ったところ、運転初期槽電圧は2.10Vであったが、その後上昇傾向に推移し、6時間後2.70Vを超え、また好転する見込みは見られなかった。水素発生の危惧、及び電解槽の構成部材に対して好ましくないので通電を停止した。
【0026】
【発明の効果】
本発明の電解槽は、上記のような構成からなるため、イオン交換膜とガス拡散陰極がほぼ均一な力で接触し、ガス拡散陰極やイオン交換膜が機械的に損傷したりすることなく、更にガス拡散陰極の一部に電流集中が生ずることなく、苛性ソーダ等を高効率で製造できる。又イオン交換膜とガス拡散陰極間に親水層を設置すると、この親水層には苛性ソーダ水溶液等のアルカリ性電解液が全面均一に保持され、電解時には十分に電流が通電される状態を持続できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の2室法電解槽の構造を説明する図である。
【符号の説明】
1 電解槽本体
2 イオン交換膜
3 陽極室
4 陰極ガス室
5 陽極
6 親水層
7 ガス拡散陰極
8 剛体多孔板(押圧板)
9 ガス室充填材
10 ガス室背板(陰極端子)
11 陽極液導入口
12 陽極液及びガス取出口
13 酸素含有ガス導入口
14 苛性ソーダ水溶液取出口
Claims (7)
- イオン交換膜により陽極を収容する陽極室とガス拡散陰極を収容する陰極室に区画された2室法イオン交換膜型電解槽において、前記ガス拡散陰極の前記イオン交換膜と反対側に、透過性かつ金属製で、0.5mmから5.0mmの孔径を有するエキスパンドメタル、パンチドメタル、又は網状体製の剛体である押圧板を設置し、電解槽運転時に前記押圧板をガス室充填材の弾性力によりガス拡散陰極方向に押し付け、この押圧板から均一にガス拡散陰極に応力が作用してイオン交換膜とガス拡散陰極を全面的に密着する状態を維持することを特徴とするガス拡散陰極を用いたイオン交換膜型電解槽。
- ガス室充填材が押圧板と陰極室壁間に弾力性をもたせて収容されている請求項1記載のイオン交換膜型電解槽。
- ガス室充填材が、金属ワイヤーよりなる編物並びに織物及びこれらを積層したもの、三次元的な編物並びに三次元的編物にうねり加工を施したもの、又は金属製不織物であり、1mm圧縮したときの1平方センチメートル当りの弾性応力が0.03kgから0.3kgであることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン交換膜型電解槽。
- 押圧板とガス室充填材がガス拡散陰極の給電体として機能する請求項1から3のいずれか1項に記載のイオン交換膜型電解槽。
- 前記イオン交換膜とガス拡散陰極の間に親水層を有することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のイオン交換膜型電解槽。
- 前記親水層が炭素繊維織物であることを特徴とする請求項5に記載のイオン交換膜型電解槽。
- イオン交換膜により陽極を収容する陽極室とガス拡散陰極を収容する陰極室に区画されたイオン交換膜型電解槽の前記ガス拡散陰極の前記イオン交換膜との反対側に、透過性かつ金属製で、0.5mmから5.0mmの孔径を有するエキスパンドメタル、パンチドメタル、又は網状体製の剛体である押圧板を設置し、電解槽運転時に前記押圧板により前記ガス拡散陰極を前記イオン交換膜方向に押し付け、陽極室にハロゲン化アルカリを陰極室に酸素含有ガスを供給しながら両極間に通電して陰極室で水酸化アルカリを製造することを特徴とするイオン交換膜型電解槽の運転方法。
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