JP3676535B2 - ベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法及びベニヤレースにおけるバックアップロール装置 - Google Patents
ベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法及びベニヤレースにおけるバックアップロール装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ベニヤレースにより原木からベニヤ単板(以下、単板と称す)を切削する方法及び切削する装置に関し、更に詳しく述べると、スピンドル駆動型レース及び外周駆動型レースにおいて、単板切削中の原木を押圧して原木の撓みを防止するバックアップロールの歩送り制御方法及びその為のバックアップロール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ベニヤレースで原木から単板を切削する場合、単板切削用ナイフ(以下、ナイフと称す)を備えた鉋台を、原木の一回転に対して予め設定した単板の厚さに相当する距離を原木の求心方向に対して連続的に搬送(以下、歩送りと称す)を行って切削をするが、切削が進行するのに伴って切削中の原木直径(以下、切削原木径と称す)が小さくなると、切削抵抗等の負荷によって原木に撓みが生じる。この現象は、原木の両端をスピンドルで支持するスピンドル駆動型レースの他に、切削初期にスピンドルで原木を支持し切削後期にはスピンドルを抜きとる外周駆動型レースでも見られる。
図1は撓んだ状態で切削された原木の剥き芯を示したもので、原木の中央部の原木径が両端の原木径よりも大きく、全体的に中央部が凸状となっている。この原木の撓みの程度によっては小径となった原木が損壊したり、或いは原木が振動することによりベニヤ単板の厚さ(以下、板厚と称す)が不均一に切削されたり、或いは撓んだ状態で切削されることにより単板中央部の厚みが薄く、上方に反った不良単板となって、単板の品質や歩留りが低下して適正な単板切削が行えなかった。
【0003】
このような原木の撓みにより発生する諸問題を解決する為に、従来より例えば図15に示すように、ベニヤレースのナイフとほぼ反対の位置に、回転する原木1の外周に従動自在な少なくとも1本の回転ロール(以下、バックアップロールと称す)を備え、該バックアップロール21が原木1を押圧しながら原木1の求心方向へ移動させるようにした種々の原木撓み防止装置(以下、バックアップロール装置と称す)が知られている。
【0004】
このバックアップロールを原木に当接させる時期を簡単に説明する。原木の断面が非真円形状であったり或いは原木の外周面に枝や瘤などが存在して凹凸状態であったりするなど、一般的にその外形が不定形である状態で、鉋台の歩送り量に対応させてバックアップロールで原木を押圧することもできるが、原木の表面に割れや樹皮があるような原木をバックアップロールが押圧すると、原木に異常荷重が加わって原木破損の要因になったり、破損しないまでも原木の割れが更に広がり、刃口で詰まったりするという問題が発生した。従って、バックアップロールは、原木の非円柱状外周を大部分切削し(以下、前切削と称す)原木が略円柱状になってから原木に当接されることが一般的に行なわれていた。なお、別に前切削を行った原木を搬送してくる場合もある。
【0005】
ところで、バックアップロール装置は、バックアップロールの移動制御について大きく、強制加圧方式と連動追従方式との2種類の装置に分類することができる。
先ず、強制加圧方式は、バックアップロールを油圧シリンダ、空気圧シリンダなどの駆動装置により原木を押圧する方式の装置である。原木の撓みは、切削中に受ける負荷と原木の材質、形状及びスピンドルの剛性との要因によって常に変動するのに対し、強制加圧方式のバックアップロール装置の場合は、単に原木をバックアップロールで押圧するだけのものであるから、バックアップロールの原木に対する押圧力が大き過ぎると原木はナイフ側に逆に曲げられ、切削されたベニヤ単板の板厚が設定板厚よりも厚くなって不揃いとなってしまったり、原木の端面を保持しているスピンドルチャックと原木の端面がずれてしまい切削が不能となる等の問題が生じていた。反対に押圧力が小さ過ぎると、原木の撓みを防ぐことができなかった。従って、上述した所謂強制加圧方式のバックアップロール装置では、バックアップロールが原木を単に押圧するのみであるので、原木の撓みを正確に防止することが不確実であった。
【0006】
一方、連動追従方式のバックアップロール装置としては、送りねじなどの駆動装置により鉋台の歩送りに対応させてバックアップロールの位置制御を行ないながら原木を押圧する方式の装置である。この連動追従方式を示す図15の場合は、バックアップロール21を原木外周の所定位置、即ち原木1が撓まずに切削されていると仮定した場合の原木外周面に位置するように、送りねじ25aを原木1の求心方向へ移動するよう制御を行っている。従って、前述の強制加圧方式のバックアップロール装置と違い、連動追従方式の場合は、安定して原木を加圧することができるという特長を有していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前述の連動追従方式のバックアップロール装置においては、原木の大部分の外周が前切削されて略円柱状になってから、バックアップロールが原木へ当接された直後に以下のような問題点が生じる。これらの問題点を図2乃至図4を用いて説明する。図2は、バックアップロール21が切削中の原木に当接する以前で、切削抵抗等の負荷によって撓んで前切削されている状態を示す平面図及び側面断面図である。また、図3及び図4は図2における側面断面図の拡大図である。尚、これから使用する図面においては、説明に必要のない部分を省略したり、図を見易くして理解を容易にするために図を部分的に拡大或いは縮小して表示する。
【0008】
先ず、図2において、単板4を切削中の原木1はスピンドル6によって両端を支持されながら回転しているが、切削抵抗等の負荷によってその外周面はバックアップロール21側に押されて撓み、湾曲した形状を成している。図2の側面図において、二点鎖線で示した曲線Cは、原木が撓まずに切削されていると仮定した場合の外周面(以下、仮想外周面と称す)を表し、実線で示した曲線C1は撓んだ状態で切削されている原木の湾曲した外周面(以下、湾曲外周面と称す)を表している。従って、湾曲外周面C1と仮想外周面Cとの差が実際の撓み量Δとなる。
【0009】
さて、この実際の撓み量Δは、切削中に受ける負荷と原木の材質、形状及びスピンドルの剛性との要因によって常に変動するのであるが、例えば、長さ1mの比較的硬い南洋材原木を、板厚2.4mm、ノーズバーによる絞りを10%という条件で切削を行った場合、切削原木径が800mm乃至500mmの範囲で既に約1mmの撓みが生じた。そしてその後、バックアップロールを使用しない場合は、切削の進行に伴い撓み量Δは更に増加していった。尚、撓み量Δにはスピンドル6の撓み量も含まれるが、その撓み量は原木に比べて小さい。
【0010】
ここで、従来の連動追従方式のバックアップロール装置の問題点について図4を用いて具体的に述べる。
バックアップロール21は、仮想外周面Cに沿って原木外周を押圧するように、鉋台の歩送りに対応した歩送り量でその位置を制御されながら原木の求心方向へ移動するよう構成されている。
従って、原木1の大部分の外周が前切削されて略円柱状になってからバックアップロール21を仮想外周面Cに向けて原木外周面を押圧するように歩送り制御すると、撓んだ状態(切削中の回転原木中心S1)で切削されている原木1はバックアップロール21により該仮想外周面Cに対応する位置まで鉋台の歩送りに対応した歩送り量とは関係なく、図中二点鎖線で示した外周面C2(基準回転原木中心S)の状態にまで一挙に押し込まれ、撓み量Δだけ厚く製品にはならない単板が切削されてしまう(以下、撓み排除切削と称す)。その後は、鉋台の歩送りに対応した歩送り量でバックアップロールが移動され適正厚さの単板の切削が継続されていく(以下、本切削と称す)。そこで、撓み排除切削された板厚不良部分を本切削の部分から切り離す手間が生じる。
【0011】
また、撓み排除切削でバックアップロール21が原木を一挙に押し込むことにより、切削中の原木に異常荷重が加わり、原木の状態によっては原木が部分的に損壊して歩留りが低下する状態を招き、単板から損壊部分を切断する手間が生じる場合や、或いは切削の継続ができないという状態を招き、ベニヤレースを連続運転できない場合があった。
【0012】
この発明の目的は、前切削済みの原木に対してバックアップロールを作用させる際に、例え前切削中の原木に撓み量Δが発生していても、バックアップロールを原木に当接した際に板厚変動の少ない良質で安定した単板厚の単板切削を可能にし、また、原木の損壊の発生を防止し、然も、原木の撓みを防止しながら切削を終了する最小切削原木径に至るまで適正な単板の切削を行って歩留りの向上を図る為のバックアップロールの制御方法及びバックアップロール装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために第1の手段として、ベニヤレースで原木からベニヤ単板を切削する際に発生する原木の撓みを防止するための少なくとも1本以上のバックアップロールを備え、該バックアップロールをベニヤ単板切削中の原木求心方向に歩送りする原木バックアップロール装置において、該バックアップロールが原木に接触する直前における切削原木径を制御開始切削原木径Φとして、該制御開始切削原木径Φから、予め任意に設定した補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない、その後、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送りを行うことにより、切削中に発生した原木の撓みを矯正しつつベニヤ単板を切削するベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法である。
第2に、第1手段の遅くとも原木の撓みが矯正された時点で所定の歩送り量Fに変更する前記仮の歩送り量fでの歩送りを、前記バックアップロールが予め任意に設定した制御終了切削原木径φに至る時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りするものである。
第3に、第1手段の前記補正量αを、前記制御開始切削原木径から予め任意に設定した回転数Nだけ原木を回転させて制御終了切削原木径φに至るまでの該回転数Nと、予め切削中の原木の撓み量を想定して設定した撓み量δとに基づいて補正量α=δ/Nとして求めるとともに、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更する前記仮の歩送り量fでの歩送りを、原木がN回転して該制御終了切削原木径φに至った時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りするものである。
また、第4の手段としてベニヤレースで原木からベニヤ単板を切削する際に発生する原木の撓みを防止するための少なくとも1本以上のバックアップロールを備え、該バックアップロールをベニヤ単板切削中の原木求心方向に歩送りする原木バックアップロール装置において、先ず、該バックアップロールを原木に当接させ、当接した時点のバックアップロールの位置と切削原木径とから切削中の原木撓み量Δを測定し、該原木撓み量Δを測定した時の切削原木径を制御開始切削原木径Φとして、該原木撓み量Δと該制御開始切削原木径Φと予め任意に設定した制御終了切削原木径φとベニヤ単板の板厚Tに基づいて補正量α=2ΔT/(Φ―φ)を求めるとともに、該制御開始切削原木径Φから遅くとも原木の撓みが矯正される時点まで、該補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない該原木の撓み量Δを矯正する一方、遅くとも原木の撓みが矯正される前に、該制御終了切削原木径に至った時点で仮の歩送り量fによる送りを中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りするものである。
第5に、第4手段の前記補正量αを、前記制御開始切削原木径Φから予め任意に設定した回転数Nだけ原木を回転させて制御終了切削原木径φに至るまでの該回転数Nと、前記原木撓み量Δとに基づいて補正量α=Δ/Nとして求めるとともに、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で所定の歩送り量Fに変更する前記仮の歩送り量fでの歩送りを、原木がN回転して制御終了切削原木径φに至った時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りするものである。
【0014】
更に、第6手段として、ベニヤレースで原木からベニヤ単板を切削する際に発生する原木の撓みを防止するための少なくとも1本以上のバックアップロールと、該バックアップロールをベニヤ単板切削中の原木求心方向に歩送りする制御装置を備える原木バックアップロール装置において、前記制御装置に、該バックアップロールが原木に接触する直前における切削原木径を制御開始切削原木径として、該制御開始切削原木径から、予め任意に設定した補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない、その後、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送りを行う補正制御部を設けることにより、切削中に発生した原木の撓みを矯正するベニヤレースにおけるバックアップロール装置である。
【0015】
【発明の実施の形態】
図5を使って本発明の実施の形態を説明する。本発明のベニヤレースにおけるバックアップロール歩送り制御方法は、少なくとも1本以上のバックアップロールを原木の求心方向に対して、鉋台の歩送りに対応した歩送り量で歩送りして原木の撓みを防止するものであるが、その際、撓みながら切削される原木に対してバックアップロールを正規の位置である仮想外周面Cに対応する位置に沿って原木の求心方向へ歩送りするのではなく、バックアップロールが原木に接触する直前の位置における切削原木径を制御開始切削原木径とし、その制御開始切削原木径から、板厚Tのベニヤ単板を切削する為の所定の歩送り量Fに予め任意に設定した補正量αを加算した歩送り量f(以下、仮の歩送り量fと称す)でバックアップロールを歩送りして、切削される板厚を所定の板厚Tよりも補正量αだけ厚く切削することにより、原木の撓みを徐々に矯正しつつ切削を行うというものである。
【0016】
尚、バックアップロールの歩送り制御開始切削原木径は、切削作業効率及び単板歩留りの面からも原木に可及的に接近した位置が望ましく、その為、作業者はバックアップロールを手動操作により原木外周面のできるだけ近くまで移動させた後、仮の歩送り量fで歩送り制御を行う。
【0017】
また、原木の撓み量δを予め想定して、後述する制御装置41に該撓み量δを入力しておけば、バックアップロールを湾曲外周面C1に当接しない位置まで自動的に搬送した後、制御装置41により仮の歩送り量fで歩送り制御することもできる。
【0018】
さて、図5を用いて更に詳しく述べる。バックアップロール21が原木外周面を押圧しながら仮想外周面Cの位置まで搬送されると、撓み量Δだけ厚い単板が切削されてしまうことは既に述べた。また、バックアップロール21を制御開始切削原木径から所定の歩送り量Fで歩送りすると、ナイフ15も同じ歩送り量Fで歩出し制御されているので、原木1とバックアップロール21との間に生じている隙間Hは縮まることがないので、原木の撓みを防止することはできない。
【0019】
そこで、本発明では、所定の歩送り量Fに予め任意に設定した補正量αを加算した仮の歩送り量fでバックアップロール21の歩送りを行うことにより、隙間Hは徐々に小さくなり、更に切削が進行するに伴って隙間Hは無くなり、その後は原木の撓みを徐々に矯正しながらバックアップロール21の歩送りを行うことができるというものである。この為、切削された単板の板厚Tは補正量α分だけ厚く切削されることになるが、この補正量αを後の工程及び製品にした段階でほとんど影響の無い範囲に収まるように設定することにより、原木の撓みを徐々に矯正しつつ原木の撓みを防止することができるというものである。そして、遅くとも原木の撓みが矯正されたと判断できる時点、つまり、バックアップロール21の位置が鉋台の位置に対応する仮想外周面C3に到達或いはほぼ到達した時点で、仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送りを行うものである。
【0020】
また他の実施の形態としては、バックアップロール21を仮の歩送り量fで歩送りする範囲を、前記制御開始切削原木径から予め任意に設定した制御終了切削原木径φに至るまでの間で行ってもよい。これは、例えば、原木を支持するスピンドルの構造がダブルスピンドルに代表されるような多重構造で構成されている場合などにおいて実施される。
【0021】
即ち、制御終了切削原木径φを、例えば大スピンドル径より多少大きめに設定することにより、原木から大スピンドルを抜きとる前までの段階で原木の撓みを矯正するようにバックアップロールの歩出しを制御することができる。
従って小スピンドルで切削する時点においては、既に原木の撓みが矯正されバックアップロールと鉋台とにより両側から押圧されているので、切削原木径が小さくなって更に撓み易い条件となっても、バックアップロールは鉋台の歩送りと同じ所定の歩送り量Fで原木を押圧するから、確実に原木の撓みを防止することができるのである。
なおこの場合も、設定した制御終了切削原木径φに至るか、原木の撓みが遅くとも矯正されたと判断できる時点に至った時は、仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送りを行うように制御するものである。
【0022】
更にまた他の実施の形態としては、バックアップロールを仮の歩送り量fで歩送り制御する範囲を、前記制御開始切削原木径から原木がN回転した後の制御終了切削原木径に至るまでの間で行うこともできる。この歩送り制御範囲においては、予め切削中の原木の撓み量を想定して設定した撓み量δを基づいて、原木がN回転する間に該撓み量δを矯正するよう演算により求めた補正量α=δ/Nを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送り制御を行なうというものである。
そしてその後、原木がN回転した後又は原木がN回転する以前であっても、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して所定の歩送り制御を行うというものである。
【0023】
さて、今まで述べた実施の形態においては、予め原木の撓み量δを想定した上でバックアップロール21の歩送り制御を行なうというものであったが、以下のように、原木の撓みを測定して得られた実際の撓み量Δに基づいて歩送り制御を行うこともできる。
【0024】
ここで実際の撓み量Δの測定方法に関して述べる。先ず、バックアップロール21を原木の求心方向に対して搬送して切削中の原木1と接触させる。そして、接触した時点におけるバックアップロールの位置を検出する。即ち、バックアップロール21は湾曲外周面C1の原木径を検出したことになるので、その時点における仮想外周面Cの原木径との差を演算することにより実際の撓み量Δを求めることができる。
【0025】
このようにして実測された原木1の撓み量Δに基づいて、原木の撓み量Δを実測した時点における切削原木径を制御開始切削原木径Φとして、この制御開始切削原木径Φから予め設定した制御終了切削原木径φに至るまでの間で原木の撓み量Δを矯正すべく、原木の撓み量Δ、制御開始切削原木径Φ、制御終了切削原木径φ及び単板の板厚Tそれぞれの値に基づいて演算により求めた補正量α=2ΔT/(Φ―φ)を所定のバックアップロール歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送り制御を行うものである。そして、その後、該制御終了切削原木径φに至るか又は遅くとも原木の撓みがなくなった時点で、仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送り制御を行うこともできる。
【0026】
また、バックアップロールを仮の歩送り量fで歩送り制御する範囲を、前記制御開始切削原木径Φから原木がN回転するまでの間で行ってもよい。
そしてこの歩送り制御範囲においては、該制御開始切削原木径Φから原木がN回転する間に原木の撓み量Δを矯正するよう演算により求めた補正量α=Δ/Nを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送り制御するというものである。
そして、原木がN回転した後又は遅くとも原木の撓みがなくなった時点で、仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送り制御を行うのである。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を、その実施例を示す図面に基づいて詳しく説明する。図6乃至図8は本発明の代表的な3つの実施例を説明する為の側面説明図である。以下の3つの実施例は、周知の外周駆動型ベニヤレースにおけるものであり、その基本的な構成に関しては同一である。
【0028】
(第1実施例)
図6は本発明の第1実施例を説明する為のベニヤレースの側面図であって、1は、単板4を切削する為の原木である。原木1はスピンドル6で支持されている。尚,スピンドル6は大小のスピンドル,所謂ダブルスピンドル構造で構成されているので(図示せず),原木径が大きい場合には大スピンドルで支持し,原木径が小径に至ると大スピンドルを原木から抜きとって小スピンドルのみで切削を行っている。
【0029】
3は、外周に多数の突刺体3bを有する適数個の原木駆動用部材であって駆動軸3aの軸芯方向に適宜間隔毎に具備して成る円柱状の外周駆動ロールである。駆動軸3aは、刃口昇降台11に備える三相誘導電動機等から成る定速駆動の外周駆動モータ2から切削に必要な動力の供給を受ける。また、駆動軸3aは、外周駆動ロール3の上方に位置する揺動支点7で支持される揺動アーム5に備えられているので、揺動支点7を中心として外周駆動ロール3は揺動可能に構成されている。従って、外周駆動ロール3は、油圧シリンダー等から成る加圧部材9の作用により絶えず原木1側へ押圧されているので、単板切削の進行に伴って原木直径が小さくなっても、押圧作用により外周駆動ロール3に備えた突刺体3bは、ナイフ15の刃先直前の原木外周部に追従して突刺すべくその位置を変化させることができるので、切削に必要な駆動力を与えることができる。
【0030】
ナイフ15は、ナイフ押え15aにより刃物台17に固定されている。ノーズバー13は、外周駆動ロール3の適宜間隔内に位置する複数個の押圧部材であって、その下端はナイフ15の刃先より単板が搬送される方向の上手の位置にあり単板4との境界付近の原木表面を押圧することによって、単板切削時に生じる単板の裏割れを防止するための部材である。
【0031】
鉋台送り装置18は、ボールねじ等から成る鉋台送りねじ18a、サーボモータ等から成る鉋台送りねじ用モータ18b、ロータリエンコーダ等から成る鉋台変位検出器18cを用いて構成した装置であって、後述の制御装置41により鉋台送りねじ用モータ18bの動作は制御されており、鉋台摺動面19上に載置された鉋台20を任意の早送り速さを以って移動させることができるので、所定の板厚の単板の切削が行える。尚、刃口昇降台11は検査・保守のため刃口昇降シリンダ(図示せず)により刃口部分が上方に開くように構成されている。
【0032】
次に、21は、軸受箱21aを介して支持枠23に備えた遊転可能な分割状或いは一体のバックアップロールであって、該バックアップロール21の回転中心は原木1の回転中心と同一或いはほぼ同一水平面内にあり、該原木1の回転中心を挟んで前記外周駆動ロール3と略対向する位置に備えられ、原木外周部へ当接して、主として切削中に於ける原木1の水平方向の撓みを阻止するものである。21cはロータリエンコーダ等から成るバックアップロール回転角検出器であって、該原木1に接触することにより該バックアップロール21が回転を始めるのを検出して後述の制御装置41へ出力する。支持枠23はバックアップロール摺動面27に連結され、バックアップロール送り装置25により水平方向に往復移動することができる。
【0033】
バックアップロール送り装置25は、一端を軸受箱(図示せず)を介して支持枠23に接続するボールねじ等から成るバックアップロール送りねじ25a、サーボモータ等から成るバックアップロール送りねじ用モータ25b、ロータリエンコーダ等から成るバックアップロール変位検出器25c等を用いて構成され、バックアップロール21は、切削の進行に伴って減少する原木の直径に追従或いは強制加圧して原木外周面に当接するように後述の制御装置41により送り量が制御されている。また、バックアップロール送り装置25は、任意の早送り速さを以ってバックアップロール21を自在に往復移動させることができる。
【0034】
さて、制御装置41は前記各モータ類2、18b、25bの作動を制御する為の制御機構であって、大きくは、前記夫々の変位検出器18c、21c、25cからの出力信号及び単板厚設定値Tなどを入力信号とし、予め作動プログラムを設定したコンピュータにより制御を行う制御部41aと、各変位検出器18c、21c、25cから該制御部41aが得た各出力信号に基づき各モータ類2、18b、25bを駆動させる駆動部41bと、板厚Tと補正値αから仮の歩送り量fを演算して前記制御部41aの制御を補正する補正制御部41c等から成る。
【0035】
また、制御装置41は、切削準備中或は切削完了後等に於ては手動若しくは半自動にて各モータ類を個別に制御することも可能とするが、単板切削時には夫々を関連づけて以下のように制御するプログラムが記憶されている。即ち、当初、外形が非円柱状の不定形である原木1をスピンドル6で支持して空転させながら鉋台20を鉋台送り装置18によって原木1の近傍へ接近させる際は、スピンドル駆動モータ(図示せず)の回転速度及び鉋台送り装置18の早送り速さを、手動若しくは半自動にて任意に制御して差支えないが、遅くとも原木とナイフ15が当接する直前の時点に於ては、スピンドルの回転速度を外周駆動ロール3の原木駆動速度に同調又は追従するよう制御し、併せて鉋台送り装置18の歩送り量をスピンドル回転角検出器(図示せず)によって計測されるスピンドルの回転数に対応して追従するようプログラムに従って制御される。
【0036】
また、自動運転に於いては鉋台20の歩送りに同調してバックアップロール21の歩送りも行なわれるように制御されるのであるが、必要に応じてバックアップロール21の歩送り切り換えスイッチ(図示せず)を手動にしておけば、鉋台のみ歩送りを行なうことができる。これは、原木の表面に割れや樹皮があるような場合、これらがバックアップロールに当接して原木に異常荷重が加わり原木破損の要因になったり、破損しないまでも割れが更に広がり、刃口で詰まったりするのを防止するためである。従って、切削が進行して原木が略円柱状になれば、切削の途中であっても、バックアップロール21の歩送り切り換えスイッチを自動にすると、制御装置41により制御された位置に移動した後、必要に応じた歩送り量で歩送り制御することができる。
【0037】
さて、ここでバックアップロールの歩送り制御方法について、図10に示したフローチャートに基づいて具体的に説明する。なお、これらの制御方法は、ベニヤレースの作動プログラムとしてコンピューターの記録媒体(磁気ディスク又はCD−ROM等)に書き込まれ、この記憶媒体から制御部41aに適宜読み込んで予め設定する場合や、この記憶媒体がベニヤレース内に固設され予め設けられた場合等がある。
尚、第1実施例以下に於いては、切削前の最大原木径が600mmの原木を使用し、その原木から板厚2.50mmの単板を切削中に原木に1mmの撓みが生じることとし、その生じた撓みを矯正する為に補正量αを0.05mmに設定して仮の歩送り量で制御を行う場合を例として説明する。
【0038】
先ず、単板の切削を開始する前に、制御部41aに板厚Tとして2.50mm、バックアップロール21の仮の歩送量fを算出するための補正量αとして0.05mmを、予め入力して設定する(stp.11)。また、前工程である原木チャージャ(図示せず)において原木の芯出しを行なう際に計測された最大原木径として600mmの値が制御部41aに入力される(stp.13)。
【0039】
次いで、該入力された最大原木径の値に基づいて、鉋台20及びバックアップロール21は、原木のベニヤレースへの搬入とスピンドル6による原木の保持が可能となる位置まで移動して待機し(stp.15、バックアップロールをBRと略す)、その後、原木が搬入されてスピンドル6により保持される(stp.17)。尚、この待機位置を最大原木径と比べて大きく取り過ぎると、単板切削に至るまでの空転時間が増えて可動効率が低下するので、回動する原木に接触しないように最大原木径に若干の余裕を持たせた程度の位置まで移動させる。
【0040】
上述のステップまでは鉋台20及びバックアップロール21を自動運転で行なう事もできるが、次の切削開始(stp.19)のステップは、作業者が安全を確認した後、手動により切削開始のスイッチ等(図示せず)を操作して切削を開始するのが望ましい。また、バックアップロールの待機位置が原木外周面から離れ過ぎている原木では、個別に手動操作にて更に原木に近づけることもできる。そして、撓み排除切削が開始してから次の原木が搬入されるまでの流れは、鉋台20及びバックアップロール21の自動運転が可能である。
【0041】
さて、切削開始のスイッチが押されると、切削原木径とバックアップロール21の位置は、鉋台の変位検出器18c及びバックアップロール変位検出器21cにより随時作動状況として入力される(stp.21)。また、スピンドルの回転速度信号も、スピンドル回転角検出器(図示せず)から随時作動状況として同時に入力される(stp.21、スピンドルをSPと略す)。
【0042】
そして、板厚T、スピンドルの回転速度信号及び切削原木径信号それぞれの入力値から所定の鉋台の歩出し量Fが演算され(stp.23)、その演算された歩出し量Fで鉋台の歩送りが開始され(stp.25)前切削される。
尚、鉋台の歩送りがstp.25で開始されても、前切削ではバックアップロール21を手動運転に切り換えてあるのでバックアップロールの歩送りは開始されない。
【0043】
続いて、原木1の外周が略円柱状に旋削されたならば、バックアップロール21を自動運転に切り換えて、以下のように歩送り制御を行なう。
先ず、バックアップロール送り装置25は、バックアップロール21を待機位置から湾曲外周面C1に当接する直前の位置、本実施例の場合、仮想外周面Cの位置よりも+2mm外側に設定されている位置まで、鉋台とは関係なく任意速さを以って自動的に搬送される。尚、このバックアップロールが原木に接触する直前における切削原木径が制御開始切削原木径となる(stp.31)。
この+2mmは、1mmに想定した原木の撓み量に、若干の余裕を持たせる1mmを合算した値である。尚、この数値は作業員の目視により原木の状態に合わせて任意に変更して設定することができる。従って、原木の実際の撓み量Δが2mm以内であれば、バックアップロールを自動的に+2mm外側の位置まで搬送しても原木に当たることはない。
【0044】
次いで、前記制御開始切削原木径からは、stp.23において板厚Tとスピンドルの回転信号と切削原木径の入力値とから求めた歩送り量Fに、stp.11において設定してある補正値αを加算することにより仮の歩送り量fを求め(stp.32)、その仮の歩送り量fでバックアップロールは歩送り制御されるのである(stp.33)。
【0045】
ここで原木の撓みが矯正される過程について説明する。図9は、撓み排除切削時の原木の撓み状態を示す側面図である。
原木1は撓み量Δを生じた状態で前切削が終了し、撓み排除切削は、まず、前切削の原木径に対応する仮想外周面Cから2mm隔てた制御開始切削原木径にバックアップロール21は搬送制御されている。次に、原木1に二点鎖線で描いた曲線C3は、切削の進行に伴い撓み量Δが矯正されて0mmになった時点における仮想外周面を表している。従って、原木の撓みが矯正されたこの時点においては、仮想外周面Cと湾曲外周面C1とは一致することになる。
【0046】
さて、切削中の原木の湾曲外周面C1を仮想外周面C3と一致させるには、先ず、ナイフ15を備えた鉋台20は原木1回転当たり板厚Tmmの速度(歩送り量F)で原木求心方向に距離Lだけ移動すればよいのに対し、バックアップロール21の方は、前記鉋台20の移動距離Lにバックアップロール21と仮想外周面Cとの間隔2mmを加算して求めた移動距離L1だけ原木の求心方向に向かって移動するよう制御しなければならない。
【0047】
そこで、本実施例において板厚Tは2.50mm、補正量αは0.05mmに設定してあるので、原木1回転当たり2.50mmの歩送り量Fに0.05mmを加算した仮の歩送り量f、原木1回転当たり2.55mmでバックアップロールの歩送り制御を行うというものである。
バックアップロール21は上記仮想外周面Cから2mm隔てた位置にあるので、上記仮の歩送り量fで制御を行った場合は、この2mmを0.05mmで除した値である40、即ち原木が40回転する間に1回転当たり0.05mmの割合で徐々にこの2mmの隙間は減少し、原木が40回転した時点で、バックアップロール21は仮想外周面C3に到達することになる。
従って、原木の撓み量Δが1mmの場合、湾曲外周面C1とバックアップロール21との隙間は1mmとなるので、この間は、仮の歩送り量fで移動してもバックアップロールは湾曲外周面C1に当接することはなく原木は20回転し、当接後原木が残り20回転し切削が進行するのに伴って、上述したように徐々に撓みを矯正することになる。
【0048】
尚、上述の仮の歩送り量fは、バックアップロール21の回転中心がスピンドル中心と同一水平面にある場合であり、バックアップロール21の位置がこれより上下している場合には、同一水平面にある場合との位置の違いを演算により補正した歩送り量で歩送り制御する必要がある。
【0049】
さて、単板切削中においては、切削原木径及びバックアップロール21の位置は連続的に検出されているため、この検出信号に基づいて切削中の原木の実際の撓み量Δを連続的に求めることができる。即ち、実際のバックアップロールの位置と仮想外周面Cとの位置を比較演算して差を求めれば、この差を実際の撓み量Δと判断して差し支えない。尚、実際にはバックアップロールが原木を押圧すると原木外周面に変形が生じるので、比較演算する際にその変形量を考慮して演算することもできる。
【0050】
そして、切削が進行しバックアップロール21が仮想外周面C3に到達したと検出された場合、原木の撓みが矯正されたと判断され(stp.35)、仮の歩送り量fを変更し歩送り量Fでバックアップロールの歩送り制御が行なわれ(stp.41)、設定値厚さ2.50mmの単板が本切削される。
従って、原木に撓みのない状態を持続しながら継続して単板切削を行うことができる。そして、最小切削原木径に至って切削終了径が検出されると、鉋台とバックアップロールの歩送り制御が終了する(stp.27)。
【0051】
上記において原木の撓みがまだ残っていると判断された状態で(stp.35)、原木の切削終了径が検出されていなければ(stp.28)、更に仮の歩送り量fで移動するようにバックアップロール21は制御され続ける。また仮の歩送り量fでバックアップロール21は移動させられ続けている状態、即ち原木の撓みがまだ残っていると判断されている状態で(stp.35)、原木の切削終了径が検出されれば(stp.28)バックアップロール21は歩送り量Fで移動するように制御される段階(stp.41)を経過することなく原木の切削が終了される。
この為、切削の進行に伴って徐々に原木の撓みは矯正され、従来は撓み排除切削で廃棄された原木部分も板厚変動が少なく良質で安定した単板厚を有した単板として切削が行える。
また切削終了までに原木の撓みが全て矯正されなくても、バックアップロール21が原木外周面に押圧される前に有していた原木の撓みが、押圧された時に一挙に矯正されないため、前述の従来技術の問題点が解決されるのである。
【0052】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例を図7に基づいて説明する。尚、前記第1実施例と同じ構成或いは作用等に関してはその説明を省略する。
【0053】
図7において、51は軸受箱51aを介して支持枠53に備えた遊転可能な分割状の垂直バックアップロールであって、原木1の回転中心のほぼ鉛直方向下手位置に備え、原木外周部へ当接して主として切削中に於ける原木1の垂直方向の撓みを阻止するものである。支持枠53は、バックアップロール21の支持枠23に揺動支点53aを介して回動自在に連結されている。また、支持枠53は垂直バックアップロール昇降装置55に連結し、該垂直バックアップロール51は原木1の回転中心に向かって略垂直方向に往復回動することができる。
【0054】
垂直バックアップロール昇降装置55は、サーボモータ等から成る垂直バックアップロール昇降用モータ55a、ロータリエンコーダ等から成る垂直バックアップロール変位検出器55b、垂直バックアップロール昇降用モータ55aからの動力を受ける垂直バックアップロール昇降用減速機55c、該減速機55cの出力軸に備えた揺動アーム55d、緩衝部材55e、連結部材55f、連結支点55g等から構成されている。
【0055】
圧縮ばねから成る緩衝部材55eの目的は、切削中に原木1と垂直バックアップロール51との間に原木の破片などが入り込むことによって過負荷が発生した時に、該過負荷を緩衝部材によって吸収することにより、垂直バックアップロール昇降装置55などの破損や垂直バックアップロール51の位置の狂いなどを防止することである。
【0056】
制御装置61は、前記第1実施例における制御装置41と同様に、前記各モータ類の作動を制御する為の制御機構であって、大きくは、前記夫々の検出器からの出力信号、単板厚設定値T、補正値α及び任意に設定した切削原木径φ等を入力信号とし、予め設定してなる作動プログラムによりコンピュータ制御を行う制御部61aと、各モータ類を該制御部からの出力信号に基づき駆動する駆動部61bと、板厚Tと補正値αから仮の歩送り量fを演算して前記制御部61aの制御を補正する補正制御部61c等から成る。
制御装置61は、切削準備中或は切削完了後等に於ては、手動若しくは半自動にて各モータ類を個別に制御することも可能とするが、単板切削時には夫々を関連づけて制御する。
【0057】
ここで、本実施例のバックアップロールの歩送り制御方法について、図11に示したフローチャートに基づいて前記第1実施例と比較して具体的に説明する。先ず、前記第1実施例では、切削の進行に伴って原木の実際の撓み量Δが徐々に矯正され、その後、バックアップロール21の位置が鉋台の位置に対応する仮想外周面C3にほぼ到達した時点で原木の撓みが矯正されたと判断されると(stp.35)、仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更した歩送り量でバックアップロールの歩送り制御を行っているのであるが、本第2実施例においては、原木の撓みが矯正されたと判断される以前であっても、予め任意に設定した制御終了切削原木径φに至ることがある。そのように予め任意に設定した制御終了切削原木径φに至った時には(stp.37)大スピンドルを小スピンドルの支持のために抜きとり、仮の歩送り量fを中断し所定の歩送り量Fでバックアップロールの歩送り制御を行い(stp.41)、本切削を行うものである。
【0058】
この為、仮の歩送り量fによるバックアップロールの歩送り制御を、任意に設定した制御終了切削原木径φに至るまでの間で終了することができるから、ダブルスピンドルの小スピンドルで支持する時には原木の撓みが矯正されており、原木の損壊によるベニヤレースの中断が発生しにくくなる。
【0059】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例を図8に基づいて説明する。尚、前記第1実施例及び第2実施例と同じ構成或いは作用等に関してはその説明を省略する。
第3実施例は、略水平方向に移動するディスクロール並びに斜め方向に移動する上部バックアップロール及び下部バックアップロールを備えている。そして、これらのバックアップロールにより原木の撓み防止制御を行っている。
【0060】
図8において、71は、取り付け軸方向に分割された薄い円盤状の適数個のディスクロールであって、駆動軸71aの軸芯方向に適宜間隔毎に具備して成る補助的原木駆動部材である。該ディスクロール71は、前述の外周駆動ロール3と違いその外周に突刺体を有していないが、単板切削に必要な動力を原木表面から補助的に供給すると共に、切削された単板の刃口部分での詰まり現象を軽減して排出を円滑に行う上で有効である。
【0061】
駆動軸71aは、刃口昇降台11上に備えるサーボモータ等から成る外周駆動モータ72より切削に必要な動力の補助的な供給を受ける。この駆動軸71aは、軸受箱71bを介して支持枠73に備え、該支持枠73はディスクロール摺動面77に連結され、ディスクロール変位装置75により自在に往復移動することができる。この為、切削の進行に伴って切削原木直径が減少しても、ディスクロール71をその変化に追従させて原木1の表面を所望状態に押圧できるので、単板切削に必要な動力を原木表面から補助的に供給することができる。
【0062】
ディスクロール変位装置75は、一端を軸受箱(図示せず)を介して支持枠73に接続するボールねじ等から成るディスクロール変位ねじ75a、サーボモータ等から成るディスクロール変位ねじ用モータ75b、ロータリエンコーダ等から成るディスクロール変位検出器75c等を用いて構成されており、後述の制御装置101によりディスクロール変位ねじ用モータ75bの動作は制御され、ディスクロール71は切削の進行に伴って減少する切削原木径に追従して原木表面に当接するように所定の送り量に制御される。
【0063】
81は、軸受箱81bを介して支持枠83に備えた、外周に多数の突刺体81aを有するとともに軸方向に分割形成された上部バックアップロールであって、原木1の回転中心より上方で、該原木1の回転中心を挟んで前記ディスクロール71と対向する位置に備えられている。そして、サーボモータ等から成る上部バックアップロール駆動モータ81cから動力の供給を受けて、原木1の外周に当接して切削に必要な回転駆動力を供給すると共に、切削中の原木1の撓みを阻止するものである。また、支持枠83は上部バックアップロール摺動面87に連結され、上部バックアップロール送り装置85により傾斜方向に往復移動することができる。
【0064】
上部バックアップロール送り装置85は、一端を軸受箱(図示せず)を介して支持枠83に接続するボールねじ等から成る上部バックアップロール送りねじ85a、サーボモータ等から成る上部バックアップロール送りねじ用モータ85b、ロータリエンコーダ等から成る上部バックアップロール変位検出器85c等を用いて構成され、後述の制御装置101により上部バックアップロール送りねじ用モータ85bの動作は制御され、切削の進行に伴って減少する原木1の直径に追従して原木表面に上部バックアップロール81が当接するように所定の送り量で歩送り制御される。また、上部バックアップロール送り装置85は、任意の早送り速さを以って上部バックアップロール81を自在に往復移動させることができる。
【0065】
91は、軸受箱91bを介して支持枠93に備えるとともに軸方向に分割形成された下部バックアップロールであって、原木1の回転中心より下方向で上部押圧ロール81の直下位置または略直下位置に備え、サーボモータ等から成る下部バックアップロール駆動モータ91cから動力の供給を受けて、原木1の外周に当接して切削に必要な回転駆動力を補助的に供給すると共に、切削中に於ける原木1の撓みを阻止するものである。91dはロータリエンコーダ等から成る下部バックアップロール91の回転角検出器であって、実質的に原木1の回転角を計測して制御装置101へ出力し、鉋台送り装置18の歩送り量を原木1の回転数に対応して追従するよう制御する。支持枠93は下部バックアップロール摺動面97に連結され、下部バックアップロール送り装置95により傾斜方向に往復移動することができる。
【0066】
下部バックアップロール送り装置95は、一端を軸受箱(図示せず)を介して支持枠93に接続するボールねじ等から成る下部バックアップロール送りねじ95a、サーボモータ等から成る下部バックアップロール送りねじ用モータ95b、ロータリエンコーダ等から成る下部バックアップロール変位検出器95c等を用いて構成され、後述の制御装置101により上部バックアップロール送りねじ用モータ95bの動作は制御され、切削の進行に伴って減少する原木1の直径に追従して原木表面に下部バックアップロール91が当接するように所定の送り量で歩送り制御される。また、下部バックアップロール送り装置95は、任意の早送り速さを以って下部バックアップロール91を自在に往復移動させることができる。
【0067】
ところで、必要に応じては多数の突刺体81aの代用として上部バックアップロール81及び下部バックアップロール91などの外周駆動部材の外周に、溝加工・ローレット加工・ゴム被覆・研磨布紙被覆等の摩擦係数増大処理を施すか、或は原木の硬度差等に起因して食込み深さが変化することのない高さの小突起体を多数突設するなどの処理を施して、原木と緊密に係合させて駆動しても良い。
【0068】
次に、制御装置101は、前記実施例における制御装置41、61と同様に、前記各モータ類の作動を制御する為の制御機構であって、大きくは、前記夫々の検出器からの出力信号、単板厚設定値T、補正値α及び任意に設定した原木の回転数N等を入力信号とし、予め設定してなる作動プログラムによりコンピュータ制御を行う制御部101aと、各モータ類を該制御部からの出力信号に基づき駆動する駆動部101bと、板厚Tと補正値αから仮の歩送り量fを演算して前記制御部101aの制御を補正する補正制御部101c等から成る。制御装置101は、切削準備中或は切削完了後等に於ては、手動若しくは半自動にて各モータ類を個別に制御することも可能とするが、単板切削時には夫々を関連づけて制御する。
【0069】
さて、本第3実施例のバックアップロールの歩送り制御方法について、図12に示したフローチャートに基づいて説明する。
本第3実施例においては、切削の進行に伴って原木の撓みが矯正されたと判断された時は、既に述べた第1実施例及び第2実施例と同様に、仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更した歩送り量でバックアップロールの歩送り制御を行うのであるが、例え原木の撓みが矯正されたと判断される以前であっても、バックアップロールの歩送り制御が開始されてから後、予め任意に設定した回転数N回だけ原木が回転した場合には(stp.39)、第2実施例と同様に仮の歩送り量fを中断し所定の歩送り量Fでバックアップロールの歩送り制御を行い(stp.41)、本切削を行うものである。
【0070】
この為、原木の撓みを矯正する為に行うバックアップロールの歩送り制御を、切削する原木径の大小に関わりなく、バックアップロールの歩送り制御が開始されてから後、任意に設定した回転数N回だけ原木が回転するまでの間で行うことができる。
【0071】
これまで述べてきた3つの実施例は、いずれも切削中の原木の撓み量を想定して、その想定した撓み量δに基づいて任意に設定した補正量αを所定の歩送り量Fに加算して求めた仮の歩送り量fでバックアップロールの歩送り制御を行なうというもので、特に第3実施例は、切削する原木径の大きさが比較的揃っているような場合撓み量も揃っており、例えば、原木径が大きい場合には原木回転数Nを多めに設定し、逆に小径が多い場合には原木回転数Nを少なめに予め設定するなどの変更が容易である。
これに対し、第4実施例及び第5実施例においては、以下説明するように、切削中の原木の撓みを測定して得られた実際の撓み量Δに基づいてバックアップロールの歩送り制御を行い、原木径の大きさが揃っていない場合に有効な手段である。
【0072】
(第4実施例)
本実施例では、第1実施例におけるバックアップロールの歩送り制御を原木1の実際の撓み量Δに基づいて制御を行う場合について説明する。
従って、本実施例のベニヤレース本体の構成については図6に示した第1実施例を用いて説明し、バックアップロールの歩送り制御方法については、図13に示したフローチャートに基づいて具体的に説明する。
【0073】
先ず、単板の切削を開始する前に、制御部41aに板厚Tとして2.50mmを設定し、また、バックアップロールを仮の歩送り量fで歩送り制御する際の制御終了切削原木径φとして250mmの値を入力して設定する(stp.12)。
該制御終了切削原木径φは、ダブルスピンドルで原木を支持して切削する際に、大スピンドルを抜いて小スピンドルのみで切削するに至るまでに原木の撓みを矯正する制御を終了させる為に、大スピンドルの直径よりも僅か大きめに設定してある。
【0074】
さて、stp.13乃至stp.25を経て鉋台の歩送りが開始され、単板の切削が始まる。この時、バックアップロール21を自動運転に切り換えると、バックアップロール21は、待機位置から任意の速さで原木求心方向に対して搬送される(stp.30)。
そして、バックアップロール21が原木に当接して回転が始まると、バックアップロール回転角検出器21から回転信号が出力され、その回転信号は制御装置41に入力される(stp.30a)。
【0075】
次に、バックアップロールの回転信号が出力された時点におけるバックアップロールの位置信号及び鉋台の位置信号が、バックアップロール変位検出器25c及び鉋台変位検出器18cから夫々制御装置41に入力される。
そして、これら入力された信号に基づいて原木の実際の撓み量Δの測定が行なわれる。
【0076】
例えば、バックアップロールが原木に当接して回転が始まった時点において、バックアップロール外周面と原木との接触位置までの距離が基準スピンドル中心Sから303mm、即ち606mmの制御開始切削原木径Φに相当する位置にあり、一方、鉋台の位置であるナイフ15の刃先までの距離が同様に基準スピンドル中心Sから300mm、即ち切削原木径が600mmである場合について説明をする。
尚、鉋台の位置である切削原木径は、その時点における仮想外周面Cの直径に相当する。
【0077】
さて、バックアップロールの位置は制御開始切削原木径Φ606mmに相当し(stp.31)、鉋台の位置は切削原木径600mmに相当するということから、原木の実際の撓み量Δ=(606mm―600mm)/2=3mmが測定値となる(stp.30b)。
そこで、このようにして実測された原木1の撓み量Δを、バックアップロールが原木に当接して回転が始まった位置からバックアップロールの歩送り制御終了切削原木径φである250mmの位置に至るまでの間で矯正する為に、原木の撓み量Δと制御開始切削原木径Φと制御終了切削原木径φと単板の板厚Tに基づいて補正量α=2ΔT/(Φ―φ)を算出し(stp.30c)、求めた補正量αを所定のバックアップロール歩送り量Fに加算して求めた仮の歩送り量fで歩送り制御を行うものである(stp.32)。
【0078】
ここで、上述した補正量αの算出法について分りやすく具体的に述べる。
即ち、実際の撓み量Δ=3mmを、制御開始切削原木径Φから制御終了切削原木径φに至るまでの間で矯正するということは、鉋台が(600mm―250mm)/2=175mmだけ原木の求心方向に歩送りされる間に矯正されることを意味する。
また、板厚Tが2.50mmであることから、鉋台が175mm歩送りされる間に原木は175mm/2.50mm=70回転することになる。
これを式で表せば、原木回転数=(Φ―φ)/2Tとなる。
従って、原木が70回転する間に実際の撓み量Δ=3mmが矯正されればよいことになるので、1回転当たり3mm/70回転≒0.04mmだけ多めにバックアップロールの歩送りを制御すれば良いことが分かる。この0.04mmは、製品に影響の無い範囲に収まっており補正量αに相当する。
これを式で表すと、補正量α=Δ/原木回転数=2ΔT/(Φ―φ)となるので、バックアップロールを、T+α≒2.54mmの仮の歩送り量fで歩送りすれば良いことが分かる。
なお、補正量αが製品に影響の無い範囲に収まらない場合は、制御終了切削原木径φを250mm未満に変更する必要がある。
【0079】
こうして仮の歩送り量fが算出されると、その値に基づいてバックアップロールは仮の歩送り量fで歩送りが開始される(stp.33)。
そして、切削の進行に伴って原木の実際の撓み量Δが徐々に矯正され、その後、バックアップロール21の位置が鉋台の位置に対応する仮想外周面C3にほぼ到達し原木の撓みが矯正されたと判断されると(stp.35)撓み排除切削は終了する。或いは、原木の撓みが矯正されたと判断される以前であっても、予め任意に設定した切削原木径φである250mmに至った時には(stp.37)、仮の歩送り量fを中断し所定の歩送り量Fに変更した歩送り量でバックアップロールの歩送り制御を行い(stp.41)、大スピンドルを抜きとり小スピンドルで切削を行うというものである。
【0080】
この為、撓みのない原木を小スピンドルが支持しているから、従来より精度良く原木の撓みを矯正することができる。
【0081】
(第5実施例)
本実施例の制御方法については、図14に示したフローチャートに基づいて具体的に説明する。先ず、単板の切削を開始する前に、制御部41aに板厚Tとして2.50mmを入力して設定し、また、後に詳しく説明するが、仮の歩送り量fによる歩送り制御を開始してから原木がN回転した後に制御を終了させるための原木回転数Nを入力する。
本実施例ではN=30回転を入力して設定する(stp.12a)。
【0082】
そして、第4実施例と同様に、stp.13乃至stp.25を経て鉋台の歩送りが開始されて単板の前切削が始まる。この後撓み排除切削のために、バックアップロール21を自動運転に切り換えると、バックアップロール21は、待機位置から任意の速さで原木求心方向に対して搬送される(stp.30)。
そして、バックアップロール21が原木に当接して回転が始まると、第4実施例と同様にバックアップロール回転角検出器21から回転信号が出力され、その回転信号は制御装置41に入力される(stp.30a)と共に、バックアップロールの位置信号及び鉋台の位置信号が、バックアップロール変位検出器25c及び鉋台変位検出器18cから夫々制御装置41に入力される。
【0083】
これら入力された信号に基づいて、stp.30bで原木の実際の撓み量Δが実測される。ここでは第4実施例と同様に、バックアップロールが原木に当接して回転が始まった時点が606mmの制御開始切削原木径Φに相当する位置となり(stp.31)、その時の鉋台の位置である切削原木径が600mmであるとした場合、実際の撓み量Δは3mmであることが分かる(stp.31b)。
【0084】
そこで、実測された原木の撓み量Δを、バックアップロールが原木に当接して回転が始まった時点から、その後原木がN回転した後の制御終了切削原木径までの間で矯正する為に、原木の撓み量Δと原木の回転数Nとに基づいて補正量α=Δ/Nを算出する(stp.31c)。
そして、求めた補正量αを所定のバックアップロール歩送り量Fに加算することにより仮の歩送り量fが得られる。(stp.32)。
【0085】
ここで、上述の補正量αの算出法について述べると、3mmの実際の撓み量Δを制御開始切削原木径Φから原木がN回転数するまでの間で矯正するということは、切削する原木径の大小に関わりなく、実際の撓み量ΔをN回転で除した値が所定の歩送り量Fを補正する補正値αとなるのである。
この時、補正値α=3mm÷30回転=0.10mmとなり、製品に影響の無い範囲に収まらないと判断された場合には、撓み排除切削をする原木回転数を30回以上に変更する必要があり、例えば、10回ずつ元の原木回転数に加算して演算し直し、補正量αが製品に影響の無い範囲まで繰り返す。そして、例えばN=60で、補正量α=0.05mmと演算され製品に影響の無い範囲に収まると判断された場合にはバックアップロールを仮の送り量f=板厚T+補正量α=2.55mmで歩送りすれば良いことになる(stp.31)。
【0086】
こうして仮の歩送り量fが算出されると、その値に基づいてバックアップロールは仮の歩送り量fで歩送りが開始される(stp.33)。
そして、切削の進行に伴って原木の実際の撓み量Δが徐々に矯正され、その後原木の撓みが矯正されたと判断されると(stp.35)、或いは原木の撓みが矯正されたと判断される以前であっても、予め任意に設定した原木がN回転した時には(stp.39)、仮の歩送り量fを中断し所定の歩送り量Fに変更した歩送り量でバックアップロールの歩送り制御を行い(stp.41)、本切削を行うというものである。
【0087】
本実施例によれば、切削する原木径の大小に関わりなく、実際の撓み量Δに対応させて原木がN回転した時点で確実に原木の撓みを矯正することができる。
このため、切削する原木径の大きさが比較的揃っているような場合、例えば、原木径が大きい場合には原木回転数Nを多めに設定し、逆に小径が多い場合には原木回転数Nを少なめに予め設定するなどの変更が容易である。
そして、より精度良く原木の撓みを矯正することができる。
【0088】
(その他の実施例)
ところで、図8に示した第3実施例におけるバックアップロールの歩送り制御方法を、第4実施例及び第5実施例のように実際の撓み量Δに基づいて行う場合について述べる。
【0089】
第3実施例の場合、バックアップロール自体が原木に当接する以前から回転駆動されているので、91dなどの回転角検出器をバックアップロールの回転検出用のセンサとして使用することができない。
しかし、バックアップロールが原木に当接したことを検知する手段として、以下のような機械量センサや光センサを採用することにより同様のバックアップロール制御方法を採用することができる。
【0090】
機械量センサとしては、ロータリエンコーダ、ストレンゲージ(ロードセル、圧力センサ)、近接スイッチ、マイクロスイッチ、変位センサなどがあり、また光センサとして光反射形センサなどが挙げられる。そしてその中でも、以下に述べるセンサを採用して構成することが適している。
【0091】
即ち、ロータリエンコーダや近接スイッチを採用する場合は、バックアップロールと別体に回転部材を設け(図示せず)、この回転部材が原木に当接して回転する際の回転信号を検出するように構成すれば良い。
【0092】
ストレンゲージを採用する場合には、バックアップロールが原木に当接した際に受ける押圧力を検知できるよう構成すれば良い。
【0093】
光センサを採用する場合には、光反射形センサを採用して原木表面を検出するよう構成し、バックアップロールが原木の表面に当接した時に検出するよう調整すれば良い。
【0094】
尚、これらのセンサは、第1実施例乃至第5実施例にも勿論採用して実施することができる。
【0095】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したような形態で実施されるものであるから、原木の損壊が防止でき、更に、切削中の原木に発生している撓みを徐々に矯正して板厚変動の少ない良質で安定した単板の切削を可能にし、然も、原木の撓みを防止しながら最小切削原木径に至るまで適正な単板の切削を行って歩留りの向上を図ることができる。
【0096】
また、バックアップロールの歩送り制御を、バックアップロールが原木に接触する直前における切削原木径を制御開始切削原木径として、予め任意に設定した補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで始めに歩送り制御する第1の形態により、切削中に原木に生じていた撓み量を原木1回転につき補正量αの割合で矯正することができるので、切削の進行に伴って徐々に原木の撓みは矯正され、板厚変動の少ない、良質で安定した単板厚の単板の切削が連続的に行える。
従って、従来のようにバックアップロールを仮想外周面の位置まで一挙に搬送しないので、撓み量Δだけ厚い単板が切削されたり、原木に異常荷重が加わることにより原木が損壊したりすることを防止できる。
【0097】
また、バックアップロールの歩送り制御を、前記制御開始切削原木径から予め任意に設定した制御終了切削原木径φの間で行なう第2の形態により、例えば原木を支持するスピンドルの構造がダブルスピンドルに代表されるような多重構造で構成されている場合においては、多重スピンドルのうちの任意のスピンドル径に対応させて制御終了切削原木径φを設定しておけば、この間で原木の撓み量を矯正することができる。
因に、ダブルスピンドルの場合は、制御終了切削原木径φを大スピンドル径より多少大きめに予め設定しておけば、原木から大スピンドルを抜きとる前の段階で原木の撓みを矯正することができるので、小スピンドルで切削する時点においては既に原木は撓みが矯正された状態となり、切削原木径が小さくなって更に原木が撓み易い条件となっても、バックアップロールは仮想外周面Cに沿って原木を押圧し続けるので、確実に原木の撓みを防止することができる。
【0098】
また、スピンドルを原木から抜いた状態で切削を行う、所謂スピンドルレス切削を行う場合においては、スピンドルを原木から抜きとる直前における切削原木径を制御終了切削原木径φとして予め設定すれば、スピンドルを抜きとる前の段階で原木の撓みを矯正することができるので、その後スピンドルレス切削に至ってからはバックアップロールは仮想外周面Cに沿って歩送りされ、撓みが生じない状態の原木にスピンドルレス切削を行うことができる。
【0099】
また、バックアップロールの歩送り制御の補正量を、制御開始切削原木径から予め任意に設定した回転数Nだけ原木を回転させて制御終了切削原木径φに至るまでの該回転数Nと、予め切削中の原木の撓み量を想定して設定した撓み量δとを基にした補正量α=δ/Nという演算により求め、その補正量を所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで切削を行なう間に撓み量δが矯正される第3の形態により、切削する原木径の大小に関わりなく原木がN回転した時点で原木の撓み量の矯正を終了することができる。
【0100】
また、バックアップロールの歩送り制御を、切削中の原木の実際の撓み量Δを測定し、この原木の撓み量Δを実測した時点における切削原木径を制御開始切削原木径Φとし、この原木撓み量Δと制御開始切削原木径Φと予め任意に設定した制御終了切削原木径φとベニヤ単板の板厚Tとに基づいて補正量α=2ΔT/(Φ―φ)を求めるとともに、制御開始切削原木径Φから遅くとも原木の撓みが矯正される時点まで補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない、遅くとも原木の撓みが矯正される前に、該制御終了切削原木径に至った時点で仮の歩送り量fによる送りを中断し、所定の歩送り量Fに変更して原木の撓み量Δを矯正する第4の形態により、制御開始切削原木径Φから予め任意に設定した制御終了切削原木径φに至るまでの間に原木の撓み量Δを徐々に矯正し、樹種、原木径及び原木長さ並びに切削条件などによって異なる原木の実際の撓み量Δに対応させて、確実に原木の撓みを矯正することができる。
【0101】
また、バックアップロールの歩送り制御の補正量を、前記制御開始切削原木径Φから予め任意に設定した回転数Nだけ原木を回転させて制御終了切削原木径φに至るまでの該回転数Nと、実測した原木撓み量Δとに基づいて補正量α=Δ/Nとして求めるとともに、仮の歩送り量fでの歩送りを、原木がN回転して制御終了切削原木径φに至った時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送り制御する第5の形態により、制御開始切削原木径Φから原木がN回転する間に原木の撓み量Δを徐々に矯正し、切削する原木径の大小に関わりなく、前記制御開始切削原木径Φから原木がN回転した時点で確実に原木の撓みを矯正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】撓んだ状態で切削された原木の剥き芯を示す説明図である。
【図2】前切削されている状態のベニヤレースの平面図及び側面断面図である。
【図3】図2における側面断面図の拡大図である。
【図4】従来の撓み排除切削時におけるベニヤレースの側面断面図である。
【図5】本発明のバックアップロール歩送りを行うベニヤレースの側面断面図である。
【図6】外周駆動型ベニヤレースの側面断面図である。
【図7】外周駆動型ベニヤレースの側面断面図である。
【図8】外周駆動型ベニヤレースの側面断面図である。
【図9】撓み排除切削時の原木の撓み状態を示す側面図である。
【図10】切削中の原木の撓み量を想定し遅くとも原木の撓みが矯正された時点で終了する歩送り制御方法を示すフローチャートである。
【図11】切削中の原木の撓み量を想定し制御終了原木径で中断する歩送り制御方法を示すフローチャートである。
【図12】切削中の原木の撓み量を想定し原木の所定回転数で中断する歩送り制御方法を示すフローチャートである。
【図13】原木の撓みを実測し制御終了原木径で中断する歩送り制御方法を示すフローチャートである。
【図14】原木の撓みを実測し原木の所定回転数で中断する歩送り制御方法を示すフローチャートである。
【図15】従来のベニヤレースを示す側面断面図である。
【符号の説明】
1 原木
4 単板
6 スピンドル
15 ナイフ
20 鉋台
21 バックアップロール
41 制御装置
41c 補正制御部
Claims (6)
- ベニヤレースで原木からベニヤ単板を切削する際に発生する原木の撓みを防止するための少なくとも1本以上のバックアップロールを備え、該バックアップロールをベニヤ単板切削中の原木求心方向に歩送りする原木バックアップロール装置において、
該バックアップロールが原木に接触する直前における切削原木径を制御開始切削原木径Φとして、
該制御開始切削原木径Φから、予め任意に設定した補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない、
その後、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送りを行うことにより、
切削中に発生した原木の撓みを矯正しつつベニヤ単板を切削する、
ことを特徴とするベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法。 - 遅くとも原木の撓みが矯正された時点で所定の歩送り量Fに変更する前記仮の歩送り量fでの歩送りを、
前記バックアップロールが予め任意に設定した制御終了切削原木径φに至る時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りする、
ことを特徴とする請求項1記載のベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法。 - 前記補正量αを、
前記制御開始切削原木径Φから予め任意に設定した回転数Nだけ原木を回転させて制御終了切削原木径φに至るまでの該回転数Nと、予め切削中の原木の撓み量を想定して設定した撓み量δとに基づいて補正量α=δ/Nとして求めるとともに、
遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更する前記仮の歩送り量fでの歩送りを、
原木がN回転して制御終了切削原木径φに至った時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りする、
ことを特徴とする請求項1記載のベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法。 - ベニヤレースで原木からベニヤ単板を切削する際に発生する原木の撓みを防止するための少なくとも1本以上のバックアップロールを備え、該バックアップロールをベニヤ単板切削中の原木求心方向に歩送りする原木バックアップロール装置において、
先ず、該バックアップロールを原木に当接させ、当接した時点のバックアップロールの位置と切削原木径とから切削中の原木撓み量Δを測定し、
該原木撓み量Δを測定した時の切削原木径を制御開始切削原木径Φとして、
該原木撓み量Δと該制御開始切削原木径Φと予め任意に設定した制御終了切削原木径φとベニヤ単板の板厚Tに基づいて補正量α=2ΔT/(Φ―φ)を求めるとともに、
該制御開始切削原木径Φから遅くとも原木の撓みが矯正される時点まで、該補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない該原木の撓み量Δを矯正する一方、
遅くとも原木の撓みが矯正される前に、該制御終了切削原木径に至った時点で仮の歩送り量fによる送りを中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りする、
ことを特徴とするベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法。 - 前記補正量αを、
前記制御開始切削原木径Φから予め任意に設定した回転数Nだけ原木を回転させて制御終了切削原木径φに至るまでの該回転数Nと、前記原木撓み量Δとに基づいて補正量α=Δ/Nとして求めるとともに、
遅くとも原木の撓みが矯正された時点で所定の歩送り量Fに変更する前記仮の歩送り量fでの歩送りを、
原木がN回転して制御終了切削原木径φに至った時点で中断し、所定の歩送り量Fに変更して歩送りする、
ことを特徴とする請求項4記載のベニヤレースにおけるバックアップロールの歩送り制御方法。 - ベニヤレースで原木からベニヤ単板を切削する際に発生する原木の撓みを防止するための少なくとも1本以上のバックアップロールと、
該バックアップロールをベニヤ単板切削中の原木求心方向に歩送りする制御装置を備える原木バックアップロール装置において、
前記制御装置に、
該バックアップロールが原木に接触する直前における切削原木径を制御開始切削原木径Φとして、
該制御開始切削原木径Φから、予め任意に設定した補正量αを所定の歩送り量Fに加算した仮の歩送り量fで歩送りを行ない、
その後、遅くとも原木の撓みが矯正された時点で仮の歩送り量fを所定の歩送り量Fに変更して歩送りを行う補正制御部を設けることにより、
切削中に発生した原木の撓みを矯正する、
ことを特徴とするベニヤレースにおけるバックアップロール装置。
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