JP3676137B2 - ニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニッケル水素蓄電池用の水素吸蔵合金電極及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
近年、ニッケル水素蓄電池に対する高出力化、特に低温での高出力化の要求が高まりつつある。高出力化を図るためには、活物質と電解液との反応面積が大きい方が有利である。ニッケル水素蓄電池において負極に使用されている水素吸蔵合金電極には、従来より、粒子径20μm以上100μm以下の水素吸蔵合金粒子が用いられているが、より粒子径の小さい合金粉末を用いることにより、水素吸蔵合金電極の比表面積を大きくすることができるので、高出力化が期待できる。
【0003】
ところで、通常主に使用されている水素吸蔵合金電極は、合金粒子と結着剤を含有した水溶液を混合してスラリーとし、このスラリーをパンチングメタルの芯体上に塗布し、乾燥することによって作製している。しかしながら、この方法では粒子径の小さい粉末を均一に塗布し、全ての合金粉末を電気化学的に利用することは困難である。すなわち、粒子径の小さな粉末は比表面積が大きいため、極板構造を維持し高品質な極板を作製するためには、結着剤の量が多く必要となるが、結着剤を多く含有させると、合金粒子間の電気的接触が弱まったり、合金粒子同士が接触せずに孤立した状態の粒子が存在するようになるため、電気化学的に利用されない合金粉末が多く存在し、十分な放電容量を得ることができない。
【0004】
上記の方法以外に、発泡ニッケル基体に合金粒子と結着剤を混合したスラリーを塗布し、乾燥させた電極も用いられている。この方法では、合金粒子間の接触が良好なため、合金粉末が電気化学的に利用される割合が高くなる。しかしながら、この方法によれば、基体の発泡ニッケルが占有する空間が大きいため、体積あたりの合金粒子の充填密度が小さくなり、このため高容量の電池を作製することは困難であった。
【0005】
本発明の目的は、ニッケル水素蓄電池において、放電容量を高め、かつ低温放電特性及び高率放電特性を向上させることができるニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明のニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極は、酸素を含有しない溶媒雰囲気中で粉砕した平均粒子径が15μm以下の水素吸蔵合金粉末と結着剤の混合物を射出成形法により薄板状に成形したことを特徴としている。
【0007】
本発明によれば、射出成形法により水素吸蔵合金粉末と結着剤の混合物を薄板状に成形して電極を形成しているので、従来のようにパンチングメタルや発泡ニッケル基体などの導電性芯体を用いずに合金粉末と結着剤から極板を構成することができる。従って、活物質の充填密度を向上させることができ、電池容量を高めることができる。また、極板の厚さを薄くすることができるので、正極との対向面積を増加させることができ、高出力化を図ることができる。また、合金粉末と結着剤の混合物から直接薄板状の電極を成形することができるので、従来の製造方法のように塗布工程や乾燥工程が必要ではなく、製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0008】
本発明においては、平均粒子径が15μm以下の水素吸蔵合金を用いている。従来より小さい平均粒子径の合金粒子を用いているので、平均粒子の比表面積が大きくなり、電極の反応面積を増加させることができる。従って、高出力化を図ることができ、低温放電特性及び高率放電特性を向上させることができる。なお、平均粒子径が1μm未満の水素吸蔵合金粉末を製造することは現在のところ技術的に困難であるので、本発明において用いる水素吸蔵合金粉末のより好ましい平均粒子径の範囲は1〜15μmである。さらに好ましい平均粒子径の範囲は1〜10μmである。なお、平均粒子径は、レーザー散乱式粒度分布測定装置などにより測定することができる。
【0009】
本発明において用いる水素吸蔵合金粉末としては、酸素を含有しない四塩化炭素やトルエンなどの溶媒雰囲気中で粉砕することにより、平均粒子径を15μm以下に調整した水素吸蔵合金粉末が用いられる。
【0010】
本発明において用いる結着剤としては、親水性及び耐アルカリ性を有し、かつ常温において固体であり、加熱することにより軟化して流動する熱可塑性を有するものが好ましく用いられる。このようなものとしては、例えば、PEG(ポリエチレングリコール)、PEO(ポリエチレンオキシド)、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、PVA(ポリビニルアルコール)、MC(メチルセルロース)及びCMC(カルボキシメチルセルロース)などが挙げられる。PEGとPEOは基本的に同一の骨格構造を有するものであるが、ここでは、相対的に分子量の小さなものをPEGとし、相対的に分子量が大きく、樹脂状のものをPEOとしている。
【0011】
本発明の水素吸蔵合金電極の極板の厚さは、特に限定されるものではないが、射出成形法により成形されるものであるので、従来の水素吸蔵合金電極に比べ薄くすることができ、例えば0.1〜0.5mmの範囲の厚さとすることができる。
【0012】
本発明においては、水素吸蔵合金粉末と結着剤の混合物中に、さらに潤滑の役割を果たすワックス類などのその他の添加物を添加してもよい。
本発明の水素吸蔵合金電極の製造方法は、上記本発明の水素吸蔵合金電極を製造することができる方法であり、酸素を含有しない溶媒雰囲気中で粉砕した平均粒子径が15μm以下の水素吸蔵合金粉末と結着剤の混合物を調製する工程と、この混合物を射出成形機内に入れ、結着剤が軟化する温度以上にこの混合物を加熱して、結着剤が軟化する温度以上でかつ該温度よりも50K高い温度以下に保たれた金型内に射出して薄板状に成形する工程と、金型内で成形された混合物を冷却して成形体を取り出す工程とを備えることを特徴としている。
【0013】
本発明の製造方法において、射出成形機内に入れられた混合物は、結着剤が軟化する温度以上に加熱されることにより、結着剤が軟化し、流動性を示すようになる。従って、金型内に射出して成形することができる。金型は、この混合物を薄板状に成形することができる金型内部空間を有している。本発明では、射出成形時において、結着剤が軟化する温度以上でかつ該温度より50K高い温度以下に金型温度が保たれている。すなわち、金型温度をTとし、結着剤が軟化する温度をTsとすると、Ts≦T≦Ts+50K(℃)で示される金型温度Tに保持されている。好ましくは、射出成形機内の加熱温度±10K(℃)程度となるように金型温度が保持され、さらに好ましくは、射出成形機内の加熱温度とほぼ同程度の温度になるように金型温度が保持される。
【0014】
金型温度を上記所定の温度に保持することにより、金型内での混合物の流動性が保たれ、所定の形状及び寸法の薄板状成形体とすることができる。
上記のように、所定の温度に保たれた金型内に混合物を射出した後、金型内で混合物を冷却して薄板状の成形体を取り出し、水素吸蔵合金電極とする。
【0015】
本発明の製造方法により製造された水素吸蔵合金電極は、上記本発明の水素吸蔵合金電極と同様に、導電性芯体を使用しないため、活物質の充填密度を向上させることができ、高容量化を図ることができる。また、粒子径の小さな水素吸蔵合金粉末を用いているので、電極の反応面積を増加させることができ、高出力化を図ることができる。また、極板の厚さを薄くすることができるので、正極との対向面積を増加させることができ、高出力化を図ることができる。また、合金粉末と結着剤の混合物から直接薄板状の電極を成形することができるので、従来の製造方法のように塗布工程や乾燥工程が必要ではなく、製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0016】
なお、上記本発明の水素吸蔵合金電極は、上記本発明の製造方法により製造されるものに限定されず、その他の製造方法により製造することができるものである。
【0017】
本発明のニッケル水素蓄電池は、上記本発明の水素吸蔵合金電極または上記本発明の製造方法により製造された水素吸蔵合金電極を負極として備えるニッケル水素蓄電池である。
【0018】
上記本発明の水素吸蔵合金電極または上記本発明の方法により製造された水素吸蔵合金電極を負極として備えているので、本発明のニッケル水素蓄電池は、放電容量が高く、かつ低温放電特性及び高率放電特性に優れており、高い出力を得ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0020】
[水素吸蔵合金粉末の作製]
Mm(ミッシュメタル:希土類元素の混合物)、Ni、Co、Al、及びMnをモル比で1.0:3.1:1.0:0.3:0.6の割合となるように混合して混合物とした。なお、Ni、Co、Al、及びMnは純度99.9%の金属単体を用いた。この混合物をアルゴン雰囲気のアーク溶解炉で溶解させた後、自然放冷して、組成式MmNi3.1Co1.0Al0.3Mn0.6で表される水素吸蔵合金を作製した。上記の方法で作製した水素吸蔵合金のインゴットを空気中で機械的に粗粉砕し、平均粒子径80μmの粗粉末を作製した。
【0021】
次に、この粗粉末をArガスを用いたジェットミルで、平均粒子径約1μm(粉末1)、約2μm(粉末2)、約3μm(粉末3)、約5μm(粉末4)、約10μm(粉末5)、及び約15μm(粉末6)となるように粉砕し、それぞれを粉末1〜6とした。なお、平均粒子径としては約1μmのものが最小であり、これより小さな平均粒子径の粉末は作製することができなかった。
また、上記粗粉末を窒素雰囲気中のピンミルで、平均粒子径約20μm(粉末7)及び約30μm(粉末8)に粉砕し、それぞれを粉末7及び粉末8とした。
【0022】
[水素吸蔵合金電極の作製]
(射出成形法による電極の作製)
水素吸蔵合金電極の作製に用いた射出成形機の概略断面図を図1に示す。水素吸蔵合金粉末と結着剤とを混合した混合物5は、ホッパー4から射出成形機のスクリュー部1に供給される。スクリュー部1内には、スクリューバレル2が設けられており、このスクリューバレル2が回転することにより、合金粉末と結着剤の混合物は混練され、ノズル6側に供給されていく。
【0023】
スクリュー部1の外側にはヒーター3が設けられており、このヒーター3によりスクリュー部1が加熱される。スクリュー部1内では、混合物中の結着剤が軟化する温度以上の温度に加熱される。結着剤が軟化することにより、混合物の流動性が増す。スクリューバレル2が所定のストロークでノズル6側に押しつけられることにより、スクリュー部1内の混合物が、ノズル6から金型7内に射出される。
【0024】
金型7には、ヒーター8が設けられており、このヒーター8により混合物中の結着剤が軟化する温度以上でかつ該温度より50K高い温度以下の温度に金型7が保たれている。従って、金型7内に射出された混合物は、スクリュー部1内と同様に良好な流動性を有した状態で射出され、金型7内に充填される。従って、金型7の所定の寸法形状の成形体を得ることができる。
【0025】
金型7内に混合物5が充填され、所定の薄板状に成形された後、ヒーター8による加熱を止め、金型7を冷却する。通常、室温程度になるまで冷却する。冷却後、金型7を開け、薄板状成形体9を取り出す。
【0026】
なお、結着剤の合金粉末に対する混合割合は、合金粉末100重量部に対し、粉末1の場合10重量部、粉末2〜5の場合5重量部、粉末6及び7の場合3重量部となるように混合した。また、スクリュー部1内の温度は、結着剤の軟化温度+20K(℃)に設定した。なお、結着剤の軟化温度は、予め熱分析実験により測定した。また、金型の温度も、スクリュー部1内と同様に結着剤の軟化温度+20K(℃)に設定した。
【0027】
(スラリー法による電極の作製)
水素吸蔵合金粉末100重量部と、結着剤としてのPEO(ポリエチレンオキサイド)5〜10重量%の水溶液20重量部とを混合してペーストを調製した。このときのPEO水溶液の濃度は、使用する水素吸蔵合金粉末の粒子径とスラリーの粘性によって調整した。得られたペーストをニッケル鍍金を施したパンチングメタルまたは発泡ニッケルからなる芯体の両面に塗着し、室温で乾燥した後、圧延して所定の厚さにした。その後、所定の寸法に切断して水素吸蔵合金電極を作製した。
【0028】
[ニッケル水素蓄電池の組み立て]
得られた水素吸蔵合金電極を負極に使用して、AAサイズの正極支配型のニッケル水素蓄電池を作製した。正極として、従来公知の非焼結式ニッケル極を、セパレータとして耐アルカリ性の不織布を、電解液として30重量%水酸化カリウム水溶液をそれぞれ使用した。
【0029】
図2は、作製したニッケル水素蓄電池の模式的断面図である。ニッケル水素蓄電池は、正極11、負極12、セパレータ13、正極リード14、負極リード15、正極外部端子16、負極缶17、及び封口蓋18などからなる。正極11及び負極12は、セパレータ13を介して渦巻き状に巻き取られた状態で負極缶17内に収容されている。正極11は正極リード14を介して封口蓋18に、負極12は負極リード15を介して負極缶17に接続されている。負極缶17と封口蓋18との接合部には、絶縁性のパッキング20が装着されて電池の密閉化がなされている。正極外部端子16と封口蓋18との間には、コイルスプリング19が設けられ、電池内圧が異常に上昇したときに圧縮されて電池内部のガスを大気中に放出し得るようになっている。
【0030】
[初期放電容量の測定]
化成後の各電池を、常温にて電流0.2Cで6時間充電した後、電流0.2Cで1.0Vまで放電して、初期放電容量(1サイクル目の放電容量)(mAh)を求めた。
【0031】
[高率放電特性の測定]
化成後の各電池を、25℃にて電流0.2Cで6時間充電した後、1Cで1.0Vまで放電した。その後、同じ温度での充電を1Cで1時間、放電を1Cで1.0Vまで行う充放電を1サイクルとして、4サイクルの試験を行い、5サイクル目の放電を4Cで1.0Vまで行って、そのときの放電容量(mAh)を測定し、これを高率放電特性の指標とした。
【0032】
[低温放電特性の測定]
化成後の各電極を、25℃にて0.1Cで16時間充電した後、0℃にて2Cで放電し、電池の放電電圧が1.0Vとなったときの放電容量を測定し、低温放電特性の指標とした。
【0033】
(実験1)
PEO(平均分子量330万〜380万)を結着剤として用い、上記粉末1〜8と結着剤との混合物を上記のように射出形成して極板を作製した。但し、射出成形において、粒子径が大きい粉末8については極板の品質が悪く電池構成が可能な極板を作製することができなかった。粉末1を使用して作製した極板をA1、粉末2〜7を使用して作製した極板をA2〜A7とした。これらの極板を使用して電池容量1100mAhの正極支配型の電池を作製した(負極容量1800mAh)。ここで、極板A1を使用した電池をAA1とし、極板A2〜A7を使用した電池をAA2〜AA7とした。
【0034】
比較のため、パンチングメタル及び発泡ニッケルにスラリーを塗布する上記方法により比較電池を作製した。但し、パンチングメタルまたは発泡ニッケルに塗布し作製した電池では、負極極板の活物質充填密度が低いため、正負極容量比が同じ構成の電池を作製するには、射出成形により作製した電池よりも正極容量を低くすることが必要となる。この結果、電池容量も低いものとなり、パンチングメタルに塗布し作製した電池では1000mAh、発泡ニッケルに塗布して作製した電池では950mAhであった。なお、電池AA1〜AA7の電池容量は1100mAhであるが、これは本発明で作製した負極極板には芯体が使用されていないため、10〜15%程度の容量増加が見込めるためである。
【0035】
また、パンチングメタルに塗布する方法では、粒子径が小さい粉末1〜6を用いて極板及び電池を作製することができなかった。これは、粒子径が小さいためスラリー粘度が高くなり、均一に塗布することが難しいことに加え、合金粒子間の電気的な接触が不十分となり、電気化学的に利用されない合金粉末が多く存在することにより、電池の化成ができなかったためである。
【0036】
従って、パンチングメタルに塗布して作製した極板としては、粉末7を用いた極板B7並びに粉末8を用いた極板B8を作製した。これらの極板B7及びB8を用いて、電池BB7及びBB8を作製した。
【0037】
発泡ニッケルに塗布して作製した極板については、粉末1〜8を用いて作製したものをそれぞれ極板C1〜C8とし、これらの極板C1〜C8を用いて作製した電池をCC1〜CC8とした。
【0038】
上記各電池について、上記の方法で、初期放電容量、低温放電容量、及び高率放電容量を測定した。測定結果を表1に示す。表1に示すように、本発明に従い射出成形法により成形した極板は、粒子径の小さな合金粉末を使用できるので、より厚さの薄い極板を作製できることがわかる。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示す結果から明らかなように、電池AA7から電池AA1へと、使用する合金粉末の粒子径が小さくなるにつれて、低温放電特性及び高率放電特性が向上していることがわかる。これは、合金粉末の粒子径が小さくなることにより、その比表面積が増大して電極の反応面積が増加し、電気化学的反応速度が上昇することによるものと考えられる。また、初期容量においても、粒子径が小さくなるにつれて高くなっているが、これは粒子径の小さな合金粉末の方が反応活性に優れるため、1サイクル目から高い放電容量を示すものと思われる。
【0041】
一方、パンチングメタルに塗布して作製した電池では、電池容量が1000mAhと低くなっていることに伴い、初期容量も低くなっている。また、同一の粒子径の合金粉末を用いた電池BB7と電池AA7を比較した場合、電池BB7では、低温放電容量及び高率放電容量が共に低くなっている。これは、粒子径の小さな合金粉末を使用して芯体に塗布する場合、使用する結着剤の量が多くなるため、結着剤が合金粒子の間に介在して反応面積を減少させることによるものと思われる。
【0042】
また、発泡ニッケルに塗布して作製した電池においても、初期容量及び低温放電容量が低くなっている。高率放電容量については、粒子径の小さな粉末1及び2を用いた電池CC1及びCC2において、電池容量の低下の相当分よりも大幅に低い値となっている。これは、合金粉末を射出成形により成形した場合、通常のスラリー法で作製した極板の厚さよりも薄い極板を作製することができるため、正極との対向面積が増加し、高率放電特性を向上させることができるためであると思われる。
【0043】
以上のように、射出成形により極板を作製することにより、電池容量及び出力特性を高めることができ、特に低温放電特性及び高率放電特性に優れた電池とすることができる。
【0044】
(実験2)
実験1において特に良好な特性を示した粉末1〜4を用い、結着剤としては、PEG(平均分子量7800〜9000)、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、PVA、MC、及びCMCを用いて、上記と同様にして極板を作製した後、この極板を用いて電池を作製した。
【0045】
各電池について初期容量を測定した。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示す結果から明らかなように、結着剤として、PEG、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、PVA、MC、及びCMCを用いた場合も、高い初期容量が得られている。
【0048】
(実験3)
実験1において特に良好な特性を示した粉末1〜4を用い、厚さが0.10、0.20、0.30、0.50、0.60、0.70mmの極板をそれぞれ作製し、これらの極板を用いて電池を作製した。極板の厚さは、それぞれに対応した異なる金型を用いることにより調整した。正極としては、非焼結式ニッケル極、すなわち発泡ニッケルに活物質を充填したものを用い、圧延条件を変更することによって、負極の1.5倍程度の厚さとなるように調整した。
【0049】
各電池について初期容量及び高率放電容量を測定した。初期容量を表3に、高率放電容量を表4に示す。
【0050】
【表3】
【0051】
【表4】
【0052】
表3及び表4に示す結果から明らかなように、負極極板の厚さが0.10〜0.50mmである範囲内において、特に良好な初期放電容量及び高率放電容量が得られている。高率放電容量においては、極板の厚さが薄くなるにつれて、良好な特性が得られているが、これは正極及び負極の対向面積が増加したことによるものと考えられる。
【0053】
(実験4)
圧縮空気及びArの各雰囲気中でジェットミルにより乾式粉砕した粉末、並びにアセトン、メチルアルコール、及び四塩化炭素の各雰囲気中でアトライターにより湿式粉砕した粉末をそれぞれ作製した。各粉末の平均粒子径が、約1μm、約2μm、約3μm、及び約5μmとなるようにそれぞれ粉砕した。
【0054】
得られた合金粉末を用い、上記と同様にして極板を作製し、この極板を用いて電池を作製した。各電池の初期放電容量を表5に示す。
【0055】
【表5】
【0056】
圧縮空気を用いたジェットミル粉砕による粉末は、Arを用いたジェットミル粉砕による粉末に比べ、初期放電容量が低下している。これは、粉砕中に合金粉末が酸化されたためであると思われる。特に、平均粒子径の小さい粉末において顕著にその傾向が認めれらる。
【0057】
また、アセトンまたはメチルアルコールを溶媒としてアトライターにより粉砕した粉末は、四塩化炭素を溶媒としてアトライターにより粉砕した粉末に比べ、初期放電容量が低下している。これは、アセトン及びメチルアルコールの溶媒中には酸素が含有されており、このような酸素の影響により合金粉末が酸化されたためであると思われる。
以上のことから、不活性ガスであるArや四塩化炭素のような酸素を含有しない溶媒雰囲気中で粉砕した合金粉末を用いることが好ましいことがわかる。
【0058】
(実験5)
結着剤として、実験1と同様のPEOを用い、合金粉末として粉末3を用い、射出成形の際の金型温度を変化させて、金型温度が与える影響について調べた。金型温度は、PEOの軟化温度をTsとしたときに、Ts+0K、Ts+10K、Ts+20K、Ts+50K、Ts+75K、Ts+100Kとなるように変化させ、それ以外は上記実験1と同様にして極板を作製し、得られた極板を用いて電池を作製した。
【0059】
各電池の初期放電容量を表6に示す。
【0060】
【表6】
【0061】
表6に示す結果から明らかなように、金型温度がTs+0K及びTs+10Kでは若干初期放電容量が低くなっている。これは、完全に結着剤が軟化していないため、成形性が悪くなったことによるものと思われる。また、流動性が悪くなっているため、成形にも時間を要した。
【0062】
一方、Ts+75K及びTs+100Kにおいては、顕著に初期放電容量が低下している。これは、金型温度が高くなりすぎたため、結着剤の一部が変質し、結着力が弱くなったことによるものと考えられる。
【0063】
以上のことから、金型温度としては、結着剤の軟化温度以上で、かつ該温度より50K高い温度以下であることが好ましいことがわかる。また、結着剤の軟化温度より20〜50K高い温度の範囲が特に好ましいことがわかる。
【0064】
上記実施例においては、水素吸蔵合金粉末と混合する結着剤として、具体的な例を挙げて説明したが、親水性、耐アルカリ性、及び熱可塑性を有するものであれば、上記の具体例以外の結着剤も使用することができる。
【0065】
【発明の効果】
本発明によれば、放電容量を高め、かつ低温放電特性及び高率放電特性を向上させることができる。従って、高出力で高容量のニッケル水素蓄電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う実施例において用いた射出成形機を示す模式的断面図。
【図2】本発明に従う実施例において作製したニッケル水素蓄電池を示す模式的断面図。
【符号の説明】
1…スクリュー部
2…スクリューバレル
3…ヒーター
4…ホッパー
5…混合物
6…ノズル
7…金型
8…ヒーター
9…成形体
11…正極
12…負極
13…セパレータ
14…正極リード
15…負極リード
16…正極外部端子
17…負極缶
18…封口蓋
19…コイルスプリング
20…絶縁性パッキング
Claims (5)
- 酸素を含有しない溶媒雰囲気中で粉砕した平均粒子径が15μm以下の水素吸蔵合金粉末と結着剤の混合物を射出成形法により薄板状に成形したことを特徴とするニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極。
- 結着剤として、PEG(ポリエチレングリコール)、PEO(ポリエチレンオキシド)、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体、PVA(ポリビニルアルコール)、MC(メチルセルロース)及びCMC(カルボキシメチルセルロース)から選ばれる少なくとも1種を用いたことを特徴とする請求項1に記載のニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極。
- 極板の厚さが0.1〜0.5mmであることを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極。
- 酸素を含有しない溶媒雰囲気中で粉砕した平均粒子径が15μm以下の水素吸蔵合金粉末と結着剤の混合物を調製する工程と、
前記混合物を射出成形機内に入れ、前記結着剤が軟化する温度以上に加熱して、前記結着剤が軟化する温度以上でかつ該温度よりも50K高い温度以下に保たれた金型内に射出して薄板状に成形する工程と、
前記金型内で前記成形された混合物を冷却して成形体を取り出す工程とを備えることを特徴とするニッケル水素蓄電池用水素吸蔵合金電極の製造方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水素吸蔵合金電極を負極として備えることを特徴とするニッケル水素蓄電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
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