JP3675171B2 - 電動機制御装置および制御方法 - Google Patents

電動機制御装置および制御方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動機の運転を制御する制御装置および制御方法に関し、詳しくは出力トルクの変動を抑制して電動機の運転を行うための制御装置および制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
多相交流を巻線に流し、該巻線による磁界と永久磁石による磁界との相互作用により回転子を回転させる電動機で、所望の回転トルクを得るためには、要求トルクに応じて巻線に流す多相交流を制御する必要がある。巻線に流す多相交流は、電流値と位相角によって設定される。
【0003】
位相角とは、固定子に対する回転子の電気的な回転位置を示す電気角と巻線に流す電流によって生じる磁界の方向との偏差を表す角度である。例えば回転子に永久磁石を備える同期モータでは、永久磁石により生じる磁界が回転子の中心を貫く方向をd軸方向とし、d軸方向に電気的に直交する方向をq軸方向と定義すると、q軸に近い方向に磁界が生じる位相角で巻線に電流を流した場合に最大トルクが生じる。
【0004】
従来は、電動機から出力すべきトルクと、巻線に流す電流の電流値および位相角との関係を記憶するマップを用意し、要求トルクに基づいてこのマップを参照することにより、巻線に流す電流を設定していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、かかる方法により電流を設定した場合、電動機の出力トルクに脈動が生じることが見いだされた。出力トルクの脈動の様子を図10に示す。図10は、一定の要求トルクTreqを出力するための制御を実施した場合の出力トルクToldを、横軸に電気角をとって示したグラフである。図10に示される通り、電気角の変化、即ち電動機の回転に応じて出力トルクToldは要求トルクTreqよりも増えたり、減ったりする脈動を生じていた。図10で示した例では、電気角が概ね60度の周期で脈動を生じていた。脈動の周期は電動機の回転子に備えられた永久磁石や固定子のティースの数等に応じて変化した。
【0006】
このようなトルクの脈動は電動機を種々の装置の動力源として使用する上で好ましくない現象である。例えば、いわゆるハイブリッド車両の動力源として電動機を利用した場合には、図10に示したトルクの脈動により、車両の乗り心地を損ねる可能性があった。また、トルクの脈動が生じているとき、電動機は余剰のトルクを出力したりトルクが不足したりしているため、要求トルクTreqに相当する一定のトルクを出力し続ける場合に比較して運転効率が低下していた。一般に余剰のトルクとして出力されたエネルギは熱等の形で消費されてしまうからである。
【0007】
図10では、一例として同期モータについてトルクの脈動が生じている場合を示した。かかるトルクの脈動は、同期モータのみならず誘導モータなど種々の交流モータにおいて同様に生じていた。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされ、巻線に多相交流を流すことにより回転子を回転させる電動機において、出力トルクの脈動を低減するための制御装置および制御方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
上記課題を解決するために、本発明では以下の構成を採った。
本発明の電動機制御装置は、
巻線に流す多相交流を制御することによって、該多相交流を流した際に該巻線に生じる回転磁界を利用して回転子を回転させる電動機の運転を制御する電動機制御装置であって、
該電動機から出力すべき要求トルクを設定する設定手段と、
前記回転子の電気的な回転位置を定義する電気角を検出する電気角検出手段と、
前記要求トルクを出力するために巻線に流す電流を、該要求トルクのみならず前記検出された電気角も考慮して設定する電流設定手段と、
該設定された電流を前記巻線に流す通電手段とを備えることを要旨とする。
【0010】
かかる電動機制御装置によれば、電動機から出力するトルクの脈動を低減することができる。この結果、種々の装置の動力源として適用した場合に、電動機ひいては該電動機が適用された装置を安定して運転することができる。また、電動機を効率よく運転することもできる。以下、かかる作用について説明する。
【0011】
本発明の電動機制御装置を完成するために、従来の制御方法により出力トルクの脈動(図10参照)が生じていた原因を探求する必要があった。図10に示すトルクの脈動には種々の原因が考えられる。例えば、回転子の重心位置の変動や軸受けの摩擦の不均一性などの機械的な要素および巻線に電流を流すための回路における抵抗やスイッチング素子の応答性の不均一性などの電気的な要素等である。本発明の発明者は、トルクの脈動の原因を探求するため、図10のトルクが出力される際に電動機の巻線に流れる電流を測定した。電流の測定結果を図11に示す。図10で用いた同期モータには多相交流が流れている。図11は、これらのうち一つの相に着目した相電流の変化を示したグラフである。図11に示す通り、一定のトルクを出力するために巻線に流すべき電流値ioptに対し、現実の電流値ioldが多かったり少なかったりしている。これにより、図10に示すトルクの脈動の主要因が巻線に流す電流にあることが見いだされた。
【0012】
発明者は、次に図10のトルクの脈動は約60度の電気角の周期で生じている点に着目した。一般に巻線にはインダクタンスと呼ばれる一種の抵抗が生じている。この抵抗は外部からの磁界の影響を受けて変化する。回転子が回転している場合には、回転子に備えられた永久磁石による磁界が巻線に与える影響が変化するから、巻線のインダクタンスが変化することになる。この変化は、モータの磁極の数に応じた電気角の周期で現れる。インダクタンスが変化すれば、要求トルクに応じて設定された電流指令値に基づいて電圧を印加しても実際に流れる電流値は電流指令値とは異なってしまう。発明者はかかる考察から、図10に示したトルクの脈動の主要因がインダクタンスの変化にあることを見いだした。
【0013】
本発明は、上述の観点により完成されたものである。本発明の電動機制御装置における電流設定手段は、巻線に流す電流を要求トルクのみならず電気角も考慮して設定する。電気角を考慮する点で従来の電流の設定方法と大きく相違する。このように電気角に応じて巻線に流す電流を変化させることにより、要求トルクを出力するために必要となる電流を適切に巻線に流すことができ、トルクの脈動を低減することができる。
【0014】
「電気角を考慮する」とは、設定される電流が電気角に応じて変え得るように設定されることを意味する。図10に示したように、ほぼ全般の電気角においてトルクの脈動が生じている場合には、各電気角で設定される電流が周期的に変化することになる。また、ある特定の電気角においてパルス的にトルクの変動が生じるような場合には、該電気角においてのみ電流が変化することになる。本発明における「考慮」には、両者の態様を含んでいる。
【0015】
また、「電流の設定」としては、電動機のトルク制御に関する本質的な要素の設定という意味である。一般には、先に説明したd軸方向およびq軸方向の電流がトルク制御においては、本質的な要素とされている。これらの要素を設定するものとして、具体的にd軸方向の電流値およびq軸方向の電流値をそれぞれ与えるものとしてもよいし、巻線に流す電流値と位相角を与えるものとしてもよい。もちろん、電動機に実際に流れる各相の電流値の大きさとして設定することも可能である。
【0016】
本発明では、「電流の設定」を上述の意味で用いるから、d軸電流およびq軸電流に置換した場合に電気角に依らずに一定値となるような「電流の設定」は、本発明における電気角を考慮した電流の設定には該当しない。例えば、電動機に実際に流れる各相の電流値の大きさは電気角によって変化することになるが、d軸電流、q軸電流としての大きさが変化しない場合には本発明における「電流の設定」には含まれない。
【0017】
なお、本発明の電動機制御装置における「要求トルク設定手段」は、電動機制御装置内部で要求トルクを設定する手段であってもよいし、外部から要求トルクを入力することにより電動機から出力すべきトルクを設定する手段であってもよい。
【0018】
また、「電気角検出手段」としては、いわゆるホール素子その他のセンサを用いて電気角を検出する装置であっても良いし、巻線の電圧値および電流値などに基づいて演算により電気角を検出する手段であってもよい。
【0019】
本発明の電動機制御装置において、
前記電流設定手段は、
電気角およびトルクと、該トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流との関係を記憶する記憶手段と、
前記要求トルクおよび電気角に基づいて、前記関係を参照して該要求トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流を求める参照手段とを有するものとすることが望ましい。
【0020】
かかる構成によれば、巻線に流す電流を、要求トルクおよび電気角に応じて設定することができる。上記記憶手段としては、電気角およびトルクの離散的な値に対して巻線に流すべき電流を記憶するマップや、電気角およびトルクと電流値との関係を与える関数を記憶する手段などが挙げられる。もちろん、従来の制御方法によって一旦トルクに応じた電流を設定した後、電気角に応じて設定された電流を補正するものとしても構わない。かかる場合には記憶手段にはトルクに基づいて電流を設定するための関係と、電気角に基づいて設定された電流を電気角に応じて補正するための関係とを記憶することになる。
【0021】
また、「参照」とは、記憶手段にマップが記憶されている場合には、該マップから適切な値を読みとることおよび必要に応じて該マップの補完演算を行うことが該当する。記憶手段に関数が記憶されている場合には、必要な諸量を代入して該関数を演算することが該当する。その他、巻線に流すべき電流を、記憶手段に記憶されている内容に応じて求める方法が本発明における「参照」に相当する。
【0022】
本発明の電動機制御装置においては、
さらに、
該電動機の回転子の回転数を検出する回転数検出手段を有し、
前記電流設定手段は、該検出された回転数をも考慮して電流を設定する手段であるものとすることが望ましい。
【0023】
こうすれば、回転数に応じた適切な電流を流すことができる。回転子の回転により電動機の巻線には誘導起電力が生じる。かかる誘導起電力は電動機の回転数に応じて変化する。従って、トルクを効率的に出力するためには、電動機に流す電流の位相角を回転数に応じて変化させることが好ましい。上記構成によれば、回転数も考慮して電流を設定するため、回転数に応じて適切なトルクを効率よく出力することができる。
【0024】
さらに、本発明の電動機制御装置において、
該電動機の回転子の回転数を検出する回転数検出手段を有し、
前記電流設定手段は、前記電動機の回転数が所定の値以下の場合のみに前記検出された電気角を考慮する手段であるものとすることも好ましい。
【0025】
かかる構成によれば、電動機の回転数が所定の値以下の場合のみに電気角を考慮して電流を設定する。電動機がある装置の動力源として適用された場合、トルクの脈動による装置の運転への影響は、電動機が低速回転しているときに顕著である。従って、上記構成によれば、このようにトルクの脈動による影響が顕著な領域において、電気角を考慮した電流の設定を行うことにより、トルクの脈動を低減することができるため、有用性が高い。上記発明における所定の値は、このようにトルクの脈動による影響に基づいて予め設定される値である。
【0026】
また、本発明は以下に示す電動機の制御方法としても成立する。
本発明の電動機の制御方法は、
多相交流を巻線に流した際に該巻線に生じる回転磁界を利用して回転子を回転させる電動機について、該巻線に流す電流を制御して該電動機の運転を制御する電動機の制御方法であって、
(a) 該電動機から出力すべきトルクの要求値を設定する工程と、
(b) 前記回転子の電気的な回転位置を定義する電気角を検出する工程と、
(c) 電気角およびトルクと、該トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流とについて予め記憶された関係を、前記要求トルクおよび電気角に基づいて参照することにより、該要求トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流を求める工程と、
(d) 該設定された電流を前記巻線に流す工程と
を備えることを要旨とする。
【0027】
かかる制御方法によれば、先に電動機の制御装置として説明した種々の作用により、トルクの脈動を低減しつつ、効率よく電動機の運転を制御することができる。
【0028】
なお、上述した電動機の制御装置および制御方法は、中心部にロータを備え、外周部にステータを備えるいわゆるインナロータ型の電動機のみならず、いわゆるアウタロータと呼ばれるタイプの電動機にも適用可能である。アウタロータ型の電動機は、中心部のステータと、その外周を円状に取り囲むようにロータとを備え、三相コイルに制御電流を流すことにより回転磁界が形成され、円環状のアウタロータを回転させる電動機である。また、インナロータとアウタロータとを備える対ロータ電動機にも適用可能である。また、電動機の構成としては、永久磁石を備えた電動機および永久磁石に代えて電磁石を用いた電動機など種々の構成に適用可能である。
【0029】
また、本発明の電動機制御装置を組み込むことにより、電動機を動力源とする種々の装置の発明を構成することも可能である。かかる装置としては、種々の工作機械や家電製品が挙げられる。また、近年では、電動機を動力源として走行可能な車両も提案されており、以下に示す通り、かかる車両の発明として構成することもできる。
例えば、
巻線に流す多相交流を制御することによって、該多相交流を流した際に該巻線に生じる回転磁界を利用して回転子を回転させる電動機と、該電動機の運転を制御する電動機制御装置とを備え、該電動機を動力源として走行可能な車両であって、
該車両の走行状態に応じて、前記電動機から出力すべき要求トルクを設定する設定手段を備え、
前記電動機制御装置は、
前記回転子の電気的な回転位置を定義する電気角を検出する電気角検出手段と、
前記要求トルクを出力するために巻線に流す電流を、該要求トルクのみならず前記検出された電気角も考慮して設定する電流設定手段と、
該設定された電流を前記巻線に流す通電手段とを備える装置であることを要旨とすることができる。もちろん、先に説明した種々の構成からなる電動機制御装置をそれぞれ適用することが可能である。
【0030】
【発明の実施の形態】
(1)実施例の構成:
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて説明する。図1は、本実施例の電動機制御装置10の機能ブロックを示す説明図である。電動機制御装置10が制御する対象はモータ40である。モータ40は、後述する通り、U,V,Wの三相交流を流すことにより回転する同期モータである。
【0031】
電動機制御装置10には、このモータ40の電気角θを検出するための電気角センサ114と回転数Nを検出するための回転数センサ115が設けられている。これらのセンサ114,115により検出された電気角θおよび回転数Nは電流設定部212に受け渡される。電流設定部212には要求トルク設定部216により設定された要求トルクT*も受け渡される。これらの値に基づいて、電流設定部212は電流マップ214を参照し、電流指令値id*,iq*を設定する。
【0032】
一方、3相/2相変換部210は、モータ40のU,V,Wの各相に流れている電流を3相/2相変換し、d軸に流れている電流idとq軸に流れている電流iqとを算出する。図1では、U,V,Wの各相に流れている電流のうちU相の電流iuとV相の電流ivのみを用いるものとして示した。これは、3相交流の場合、U,V,W相に流れる電流の合計値は常に値0となるため、W相の電流値iwは検出する必要がないからである。
【0033】
先に設定された電流指令値id*,iq*と、実際に流れている電流id,iqとの差分に基づいてPI制御部202d,202qは、いわゆる比例積分制御によってそれぞれd軸およびq軸に印加すべき電圧指令値Vd*,Vq*を設定する。こうして設定された電圧指令値Vd*,Vq*は2相/3相変換部204によりU,V,Wの各相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換される。これらの指令値に基づいて、PWM制御部206は各相への印加電圧を制御するためのスイッチング信号Su,Sv,Swを設定する。このスイッチング信号に基づいたスイッチングを行うことにより通電部208は各相に電流を通電する。
【0034】
なお、本実施例では、後述する通り、通電部208として内部にスイッチング素子を備える構成を採用しているため、PWM制御部206では通電部208を駆動するためのスイッチング信号を生成している。これに対し、スイッチング素子を持たない通電部208を採用する場合には、PWM制御部206を省略しても構わない。また、電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を実現可能な制御方法であれば、PWM制御に依らずその他の制御方法によるスイッチング信号の生成を行うものとしても良い。l
【0035】
次に、本実施例の電動機制御装置10およびモータ40のハードウェア構成を説明する。図2は、本実施例の電動機制御装置10のハードウェア構成を示す説明図である。モータ制御装置10は、モータ40の電気角θを検出する電気角センサ114,回転数Nを検出する回転数センサ115,外部からのトルク指令を受けて三相同期モータ40の三相(U,V,W相)のモータ電流を制御する制御用ECU100、三相同期モータ40のU相電流iu、V相電流ivを検出する電流センサ102、103、検出された電流の高周波ノイズを除去するフィルタ106、107、検出した電流値をディジタルデータに変換する2個のアナログディジタル変換器(ADC)112、113から構成されている。電気角センサとしては、ホール素子を用いたものが知られている。なお、電気角センサ114と回転数センサ115は兼用することも可能である。また、電気角はセンサによらず演算によって求めるものとしてもよい。
【0036】
制御用ECU100の内部には、図示するように、算術論理演算を行うマイクロプロセッサ(CPU)120、このCPU120が行う処理や必要なデータを予め記憶したROM122、処理に必要なデータ等を一時的に読み書きするRAM124、計時を行うクロック126等が設けられており、バスにより相互に接続されている。このバスには、入力ポート116や出力ポート118も接続されており、CPU120は、これらのポート116,118を介して、三相同期モータ40のU,V,Wの各相に流れる電流iu,iv、電気角θ、回転数Nを読み込むことができる。
【0037】
また、制御用ECU100には、別途入力されるトルク指令に基づいて決定されたモータ40の各相電流iu,iv,iwが得られるようモータ40の各コイル間に電圧を印加するインバータ130およびバッテリ132が、その出力部に設けられている。CPU120からの制御出力Su,Sv,Sw,SDが、このインバータ130に出力されており、三相同期モータ40の各コイルに印加される電圧を外部から制御することが可能となっている。
【0038】
インバータ130は本実施例ではいわゆるトランジスタインバータを採用している。インバータ130はスイッチング素子としてのトランジスタが各相に対し2つ一組で設けられている。各相の2つのトランジスタは一方がバッテリ132のソース側、他方がシンク側に接続されている。制御用ECU100からの制御出力Su,Sv,Sw、SDはこれらのトランジスタのゲート信号に入力され、各トランジスタのオンオフを制御する。但し、各相のシンク側に設けられたトランジスタにはインバータ素子により制御出力がハイロー反転されて入力されるようになっている。従って、上記インバータの各相のトランジスタは通常は、ソース側とシンク側とが排他的にオンオフするようになっている。なお、制御信号SDは、全てのトランジスタをオフ状態にするシャットダウン信号である。
【0039】
図2における制御用ECU100が、図1に示したPI制御部202d、202q、2相/3相変換部204、PWM制御部206、3相/2相変換部210、電流設定部212、電流マップ214、要求トルク設定部216の各機能を果たす部分である。本実施例では、要求トルク設定部216は、外部から入力されたトルク指令値を要求トルクT*として設定する機能を奏するものとして構成した。また、インバータ130およびバッテリ132が通電部208に相当する機能を果たす部分である。
【0040】
次に、本実施例の電動機制御装置による制御対象であるモータ40の構成について説明する。図3は、モータ40の回転軸を含む断面における断面図である。図4は、回転軸に直交する断面における断面図である。図3に示す通り、この三相同期モータ40は、固定子30と回転子50とこれらを収納するケース60とからなる。回転子50は、外周に永久磁石51ないし54が貼付されており、その軸中心に設けられた回転軸55を、ケース60に設けられた軸受61,62により回転自在に軸支している。
【0041】
回転子50は、無方向性電磁鋼板を打ち抜いて成形した板状回転子57を複数枚積層したものである。この板状回転子57は、図4に示すように、直交する位置に4箇所の突極71ないし74を備える。板状回転子57を積層した後、回転軸55を圧入し、積層した板状回転子57を仮止めする。この電磁鋼板を素材とする板状回転子57は、その表面に絶縁層と接着層が形成されており、積層後所定温度に加熱され、接着層が溶融することにより、固定される。
【0042】
こうして回転子50を形成した後、回転子50の外周面であって、突極71ないし74の中間位置に、永久磁石51ないし54を軸方向に亘って貼付する。永久磁石51ないし54は、回転子50の半径方向に磁化されており、その極性は隣り合う磁石同士が互いに異なる磁極となっている。例えば、永久磁石51は外周面がN極であり、その隣の永久磁石52は外周面がS極となっている。この永久磁石51,52は、回転子50を固定子30に組み付けた状態では、板状回転子57および板状固定子20を貫く磁路Mdを形成する(図4破線参照)。
【0043】
固定子30を構成する板状固定子20は、板状回転子57と同じく無方向性電磁鋼板の薄板を打ち抜くことで形成されており、図3に示すように、計12個のティース22を備える。ティース22間に形成されたスロット24には、固定子30に回転磁界を発生させるコイル32が巻回されている。尚、板状固定子20の外縁部には、固定用のボルト34を通すボルト孔が設けられているが、図4では図示を省略してある。
【0044】
固定子30は、板状の板状固定子20を積層し互いに押圧した状態として、接着層を加熱・溶融することで一応固定される。この状態で、コイル32をティース22に巻回して固定子30を完成した後、これをケース60に組み付け、ボルト孔に固定用のボルト34を通し、これを締め付けて全体を固定する。更に回転子50をケース60の軸受61,62により回転自在に組み付けることにより、この三相同期モータ40は完成する。
【0045】
固定子30のコイル32に回転磁界を発生するよう励磁電流を流すと、図4に示すように、隣接する突極および板状回転子57,板状固定子20を貫く磁路Mqが形成される。尚、上述した永久磁石51により形成される磁束が回転子50を、その回転軸中心を通って径方向に貫く軸をd軸と呼び、回転子50の回転面内において前記d軸に電気的に直交する軸をq軸と呼ぶ。つまり、d軸およびq軸は回転子50の回転に伴い回転する軸である。本実施例では、回転子50に貼付された永久磁石51および53は外周面がN極となっており、永久磁石52および54は外周面がS極となっていることから、図4に示す通り、幾何学的にはd軸と45度方向にある軸がq軸となる。
【0046】
図5に本実施例の三相同期モータ40の等価回路を示す。図5に示す通り、三相同期モータ40はU,V,Wの三相コイルと、回転軸中心回りに回転する永久磁石を有する等価回路により表される。d軸はこの等価回路において永久磁石のN極側を正方向として貫く軸として表され、q軸はd軸に対し幾何学的にも直交した軸として表される。また、電気角はU相コイルを貫く軸とd軸との回転角θとなる。
【0047】
(2)トルク制御:
次に本実施例におけるモータ制御装置10におけるトルク制御について図6のフローチャートを用いて説明する。トルク制御ルーチンは、図2に示したCPU120により周期的に実行される処理である。
【0048】
このルーチンが開始されると、CPU120は目標トルクT*を読み込む(ステップS100)。次に、電気角θおよび回転数Nの検出を行う(ステップS105)。電気角θは電気角センサ114により検出され、回転数Nは回転数センサ115により検出される。また、電流iu,ivを検出する(ステップS110)。これらの値は電流センサ102,103により検出される。
【0049】
こうして検出された諸量に基づいて、CPU120は3相/2相変換を行いd軸電流id、q軸電流iqを算出する(ステップS115)。3相/2相変換は以下に示す式を演算することにより実行される。
id=√2×(−iu・sin(θ−120)+iv・sinθ);
iq=√2×(−iu・cos(θ−120)+iv・cosθ);
こうして演算されたd軸電流idおよびq軸電流iqは、後述する電圧指令値の設定に用いられる。なお、電動機のトルク制御においては、d軸電流およびq軸電流が本質的なパラメータとなるため、本実施例ではこれらの電流に変換して制御を実施している。かかる変換を行わずにU,V,Wの3相のまま制御することも可能である。
【0050】
次に、CPU120は目標トルクT*、回転数Nおよび電気角θに基づいてd軸、q軸の目標電流id*,iq*を設定する(ステップS120)。この処理は、ROM122内に記憶された電流マップ214から、目標トルクT*、回転数Nおよび電気角θに相当する値を読み出すことにより行う。電流マップ214の内容については、その作成方法も含めて後述する。
【0051】
なお、電流マップ214は、目標トルクT*、回転数Nおよび電気角θの離散的な値に対し、目標電流id*,iq*を与えるマップである。従って、目標トルkT*等の値によっては該当する値がマップに存在しない場合もある。本実施例では、かかる場合には、電流マップ214を線形補完することにより該当する値を求めるものとしている。マップを構成するトルク、回転数、電気角の離散的な値が十分細かく設定されている場合には、補完演算を省略してもよい。例えば、マップ上に存在するポイントから目標トルクT*、回転数Nおよび電気角θに最も近いポイントを選択し、そのポイントに対応する目標電流id*,iq*を用いるものとしてもよい。
【0052】
こうして目標電流id*,iq*が設定されると、CPU120はd軸方向、q軸方向に印加すべき電圧指令値Vd*,Vq*を設定する(ステップS125)。この電圧指令値は、いわゆる比例積分制御(PI制御)により設定される。つまり、ステップS115において算出されたd軸電流id、q軸電流iqと、ステップS120において設定された目標電流id*,iq*との差分△id、△iqを求め、その差分△id、△iqの比例項と積分項との和により電圧指令値Vd*,Vq*を設定する。比例積分制御は周知の制御方法であるため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0053】
以上の処理により、d軸、q軸に印加する電圧指令値Vd*,Vq*が設定された。次にCPU120はこれらの電圧指令値を2相/3相変換によりU,V,Wの各相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*に変換する(ステップS130)。2相/3相変換は次式を演算することにより行われる。
【0054】
Vu*=√(2/3)×(Vd*・cosθ−Vq*・sinθ);
Vv*=√(2/3)×(Vd*・cos(θ−120)−Vq*・sin(θ−120));
Vw*=−Vu−Vv;
【0055】
CPU120は、2相/3相変換した結果に基づいて、PWM制御してインバータに出力する。つまり、各相の電圧指令値Vu*,Vv*,Vw*を、インバータの各トランジスタのオンオフ信号のディーティ比に変換して出力する。この信号によってインバータの各トランジスタがオンオフされると、ステップS120で設定した目標電流id*,iq*が流れる。この結果、モータ40は目標トルクT*に相当するトルクを出力する。以上の制御処理を周期的に繰り返すことにより本実施例の電動機制御装置は、モータ40の運転を制御する。
【0056】
(3)電流マップ:
次に、上記トルク制御のステップS120において用いられる電流マップ214の内容を説明する。図7は、本実施例の電流マップ214を作成するために用いられる基礎データをプロットしたグラフである。図7のグラフは、電流位相角と、トルクおよび電流値との関係を示している。図7中に示した3本の曲線は、それぞれ電流値i1,i2,i3に対応した曲線である。電流値は、i1<i2<i3となっている。また、図7に示す通り、このグラフは電気角θおよび回転数Nに応じて描かれる。
【0057】
本実施例では、有限要素法等を用いた磁場解析により図7のグラフを作成した。この解析では、モータ40の回転中のある状態を入力すると、ロータおよびステータ間の磁場を解析することによりロータに作用するトルクを出力することができる。かかる解析自体は周知であるため詳細な説明は省略する。
【0058】
例えば、かかる解析により、電気角θ=0度、回転数N=0rpm、電流値=i2、電流位相角=20度なる条件を与えると、出力トルク=T2なる結果が得られる。これをプロットしたのが、図7の点P2である。このように上記パラメータを種々の値に変化させて解析を実行すれば、図7に示す曲線を引くことができる。もちろん、図7のグラフを実験的に作成するものとしても構わない。
【0059】
ここで、位相角φの定義についてモータの等価回路(図5)により説明する。位相角φとは、図5に示す通り、巻線に流す電流ベクトルの方向とq軸方向の偏差をいう。電流ベクトルの大きさをiとすると、図5より明らかな通り、d軸電流id、q軸電流iqとの間には、次式(1)が成立する。
id=−i×sinφ;
iq= i×cosφ …(1)
【0060】
一般に同期モータにおいては、巻線に流す電流ベクトルがq軸方向に近い場合に大きなトルクを出力することができる。電流ベクトルがd軸と一致した場合、即ち位相角=90度の場合には、ロータを回転させる成分が生じなくなるため、トルクは出力されない。図7に示す通り、本実施例のモータ40についても位相角90度では電流値に関わらず、出力トルクが値0となっている。
【0061】
図7に示したグラフは電気角θおよび回転数Nに応じて描かれる。本実施例では、電気角θを5度刻み、回転数Nを100rpm刻みの値で設定し、各電気角及び回転数の組み合わせに応じて図7に示すグラフを作成した。なお、電気角と回転数の刻みはモータの特性およびトルク制御に要求される精度等に応じて任意に設定可能である。また、必ずしも等間隔で設定する必要はない。例えば、電気角で30度付近のみを細かく設定し、0度付近は粗く設定するものとしても構わない。
【0062】
また、電気角および回転数の全ての範囲に対して図7のグラフを描く必要もない。本実施例のモータ40の場合は、3相の同期電動機であり、ロータとステータの位置関係は、電気角60度周期で同じ関係が繰り返される。従って、本実施例では、電気角については、0度から60度の範囲でマップを用意し、60度から120度およびそれ以降の電気角については、このマップを繰り返し用いるものとしている。
【0063】
図7のグラフに基づいて、トルク制御に用いられる電流マップ214を設定する。電流マップ214の例を図8および図9に示した。電流マップ214は、これらの図に示す通り、2つのマップから成り立っている。図8は、トルクと電流位相角との関係を与えるマップである。図9は、電流位相角とモータ電流の関係を与えるマップである。これらのマップは、図7のグラフにおける曲線i1,i2,i3のピーク部分(図7中の点P1,P2,P3)を用いて作成される。ピーク部分を用いてマップを作成するのは、かかる部分が電流値に対して最も出力トルクが大きくなる点を示しており、電動機を最も効率よく運転できる状態を示しているからである。
【0064】
図7の点P1,P2,P3を横軸にトルク、縦軸に電流位相角を採ってプロットすると、それぞれ図8の点P1,p2,P3となる。図7では、図示の都合上、3本の曲線しか描いていないが、更に多くの電流値に対して図7のグラフを作成することにより、図8に示した曲線を得ることができる。
【0065】
一方、図7の点P1,P2,P3を横軸に電流値、縦軸に電流位相角を採ってプロットすると、それぞれ図9の点P1,P2,P3となる。図7では、図示の都合上、3本の曲線しか描いていないが、更に多くの電流値に対して図7のグラフを作成することにより、図9に示した曲線を得ることができる。
【0066】
本実施例では、図8および図9のマップをそれぞれディジタル化したデータテーブルとしてROM122に記憶している。図8および図9に示す通り、これらのマップが電気角θに応じて用意されているところが、従来技術と大きく相違する。先に説明したトルク制御ルーチンでは、検出された電気角θおよび回転数Nに応じて、最初に図8に示したマップから目標トルクT*に対応する電流位相角φを求める。次に、図9に示したマップから電流位相角φに対応するモータ電流を求める。こうしてモータ電流と電流位相角が求まれば、上式(1)に基づいてd軸およびq軸の目標電流id*,iq*を求めることができる。
【0067】
本実施例ではモータ電流と位相角とを与えるマップを用いて、d軸およびq軸の目標電流id*,iq*を設定している。これに対し、モータ電流および位相角を与えるマップに代えて、d軸電流、q軸電流を与えるマップを用いるものとしてもよい。こうすれば、上式(1)を演算する必要がなくなる分、処理の高速化を図ることができる。
【0068】
以上で説明した本実施例の電動機制御装置10によれば、モータ40のトルクの脈動を低減することができる。図10にトルク要求値Treqと出力トルクとの関係を示す。図10中のToldで示した曲線が要求値Treqに対して、従来の制御方法により出力されるトルクを示している。図示される通り、大きな脈動を示している。これに対し、本実施例の電動機制御装置によれば、出力トルクを要求トルクTreqにほぼ一致させることができる。また、図11には電動機の運転中に流れる相電流を示した。図11中のioldで示される曲線が従来の制御方法により電動機を運転した場合の電流を示している。図11中のioptで示される曲線が要求トルクTreqを出力するために流すべき電流を示している。図示される通り、従来の制御方法では、電流値は本来流すべき電流ioptに対して脈動している。これに対し、本実施例の電動機制御装置によれば、曲線ipotに相当する電流を流すことができる。
【0069】
上述した通り、本実施例の電動機制御装置によれば、トルクの脈動を低減して電動機を運転することができる。この結果、本実施例の電動機制御装置によれば、電動機の運転効率を向上することができる。
【0070】
なお、上記実施例のトルク制御には、いくつかの変形した態様が可能である。例えば、上記実施例ではステップS120において、目標電流値を設定するために図8および図9に示したマップを用いた。これに対し、図8および図9の曲線を近似した関数を用いて目標電流を設定するものとしても構わない。
【0071】
また、上記実施例では、モータ40が低速回転であるか高速回転であるかに関わらず、図8および図9のマップを用いることにより、電気角θに応じて目標電流を設定していた。モータ40の回転数が非常に高速になった場合には、電気角θに応じて目標電流を設定する処理がモータ40の回転に間に合わない可能性もある。従って、モータ40が比較的低速で回転している場合にのみ図8および図9に示したような電気角θを考慮したマップを使用するものとし、その他の場合には電気角θを考慮しない従来と同様のマップを用いるものとしてもよい。
【0072】
(4)モータ制御装置の適用例:
本実施例における電動機制御装置を備えたモータの有用性を示すため、これらの適用例について図12を用いて説明する。図12は、これらを適用したハイブリッドカーの概略構成を示す説明図である。ハイブリッドカーとは、エンジンとモータの双方を搭載した車両をいう。図12に示すハイブリッドカーは以下で説明する通り、エンジンの動力を直接駆動輪に伝達可能な構成となっている。かかるハイブリッドカーを特にパラレル・ハイブリッドカーと呼ぶ。
【0073】
まず、図12に示したハイブリッドカーの概略構成を説明する。エンジンEGは通常の車両に用いられているガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。エンジンEGのクランクシャフトはプラネタリギヤPGに機械的に接続されている。プラネタリギヤPGは中心で回転するサンギヤSGと、サンギヤSGのまわりを自転しながら公転するプラネタリキャリアPCと、プラネタリキャリアPCの周囲で回転可能なリングギヤRGとから構成されている。プラネタリギヤPGは周知の通り、サンギヤSG、プラネタリキャリアPC、リングギヤRGのうちいずれか2つに入出力される動力が決定されると残余の一つに入出力される動力が決まるという機械的特性を有している。
【0074】
本実施例のハイブリッドカーは図12に示す通り、エンジンEGのクランクシャフトがプラネタリキャリアPCに結合されている。また、サンギヤSGには発電機MG1が結合され、リングギヤRGにはモータGM2が結合されている。リングギヤRGは、またベルト等の動力伝達機構を経て駆動輪WHに結合されている。発電機MG1およびモータMG2はそれぞれ同期モータである。発電機MG1およびモータMG2はバッテリBAに電気的に接続されており、バッテリBAと電力のやりとりを行っている。
【0075】
エンジンEGの運転は、EFIECUにより制御されている。また、発電機MG1およびモータMG2は、駆動回路DU1,Du2を介して制御ユニットCUに電気的に接続されており、制御ユニットCUにより運転が制御されている。制御ユニットCUは、かかる制御に必要な情報を種々のセンサにより取得している。これらのセンサには、例えば、モータMG2の電気角および回転数を検出するセンサSN1,SN2がある。その他のセンサについては、図示を省略した。
【0076】
制御ユニットCUは、エンジンを制御するために必要となる情報をEFIECUに出力することにより、間接的にエンジンEGの運転をも制御している。本実施例における電動機制御装置10(図2)との対応を示すと、制御ユニットCUが制御用ECU100に相当し、駆動回路DU2はそれぞれインバータ130に相当し、モータMG2がモータ40に相当する。電流センサ102,103、フィルタ106,107およびADC112,113については図12では図示を省略した。
【0077】
上記構成によるハイブリッドカーでは、エンジンEGから出力される動力はプラネタリギヤPGにより2つに分配されて伝達される。即ち、一部はサンギヤSGに分配され発電機MG1によって電力として回生される。この電力はバッテリBAに蓄えられる。プラネタリギヤPGにより分配された残余の動力はリングギヤRGを経て駆動輪WHに伝達され、車両の走行に用いられる。リングギヤRGにはモータMG2から出力される動力も付加される。制御ユニットCUはエンジンEGから駆動輪WHに伝達される動力とモータMG2から出力される動力の総和が要求された動力に一致するようにエンジンEG、発電機MG1、およびモータMG2の運転をそれぞれ制御しているのである。このようなハイブリッドカーではその他、エンジンEGの運転を停止してモータMG2から出力される動力のみを用いて走行するなど、種々の運転モードによる走行が可能となっている。
【0078】
上述した通り、モータMG2から出力される動力は駆動輪WHに伝達可能であるから、例えば、モータMG2からの出力トルクが脈動すればその分車両の乗り心地を損ねることになる。上記ハイブリッド車両において、本実施例のモータ制御装置を備えていれば、モータMG2から出力されるトルクの変動を抑制することができ、車両の走行状態に応じて設定された要求トルクを定常的に出力することができるため乗り心地を改善することができる。また、トルク変動なくモータMG2を運転可能とすることによりハイブリッドカーの運転効率を向上することもできる。なお、上記ハイブリッドカーにおいては、発電機MG1も同期モータとして構成されており、運転モードによっては電力の供給を受けてトルクを出力するモータとしても機能し得るため、本発明は発電機MG1の制御装置として適用することも可能である。
【0079】
上記説明ではパラレルハイブリッドカーを例にとって説明したが、本発明のモータ制御装置は、エンジンEGから出力される動力が直接は駆動輪WHに伝達できないタイプのハイブリッドカー、いわゆるシリーズハイブリッドカーにも適用可能である。当然、エンジンEGを搭載しない、いわゆる電気自動車にも適用可能である。
【0080】
以上で説明した通り、本発明のモータ制御装置は、トルク変動なくスムーズにモータを運転することができる点で非常に有用なものである。上記説明では、一例としてハイブリッドカーや電気自動車を挙げたが、本発明のモータ制御装置の適用例はこれに限定されるものではない。例えば、工作機械や家電製品などの種々の装置に適用可能である。
【0081】
以上、本発明の種々の実施例について説明してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の形態による実施が可能である。例えば、本実施例ではトルク制御を図6に示したフローチャートによりソフトウェアで実現しているが、同様の処理をハードウェアにより実現するものとしてもよい。逆に本実施例においてハードウェアによって実現している処理、例えば電気角の検出などをソフトウェアにより実現するものとしてもよい。また、本発明の電動機制御装置は同期機のみならず、誘導機など種々の交流モータに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の電動機制御装置の機能ブロックを示す説明図である。
【図2】電動機制御装置10のハードウェア構成を示す説明図である。
【図3】モータ40の回転軸を含む断面における断面図である。
【図4】回転軸に直交する断面における断面図である。
【図5】三相同期モータ40の等価回路図である。
【図6】トルク制御ルーチンの処理内容を示すフローチャートである。
【図7】電流位相角とトルクとの関係を示す説明図である。
【図8】電流設定のための第1のマップを示す説明図である。
【図9】電流設定のための第2のマップを示す説明図である。
【図10】トルク指令値に対するトルクの脈動を示すグラフである。
【図11】巻線に流れる電流の変動を示すグラフである。
【図12】本発明の電動機制御装置を適用したハイブリッド車両の構成を示す説明図である。
【符号の説明】
10…電動機制御装置
20…板状固定子
22…ティース
24…スロット
30…固定子
32…コイル
34…ボルト
40…三相同期モータ
50…回転子
51,52,53,54…永久磁石
55…回転軸
57…板状回転子
60…ケース
61,62…軸受
71,72,73,74…突極
100…制御用ECU
102,103…電流センサ
106,107…フィルタ
112,113…ADC
114…電気角センサ
115…回転数センサ
116…入力ポート
118…出力ポート
120…CPU
122…ROM
124…RAM
126…クロック
130…インバータ
132…バッテリ
202d、202q…PI制御部
204…2相/3相変換部
206…PWM制御部
208…通電部
210…3相/2相変換部
212…電流設定部
214…電流マップ
216…要求トルク設定部

Claims (5)

  1. 巻線に流す多相交流を制御することによって、該多相交流を流した際に該巻線に生じる回転磁界を利用して回転子を回転させる電動機の運転を制御する電動機制御装置であって、
    該電動機から出力すべき要求トルクを設定する設定手段と、
    前記回転子の電気的な回転位置を定義する電気角を検出する電気角検出手段と、
    前記要求トルクを出力するために巻線に流す電流を、該要求トルクのみならず前記検出された電気角も考慮して設定する電流設定手段と、
    該設定された電流を前記巻線に流す通電手段と
    を備え、
    前記電流設定手段は、
    前記電気角毎にそれぞれ用意された、前記電動機のトルクと該トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流との関係を示すマップを記憶する記憶手段と、
    前記要求トルクおよび電気角に基づいて、前記マップを参照して該要求トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流を求める参照手段と、
    を有する電動機制御装置。
  2. 請求項1記載の電動機制御装置であって、
    前記マップは、前記電動機のトルクと電気位相角との関係を示す第1のマップと、前記巻線に流すべき電流と前記電気位相角との関係を示す第2のマップと、を備える電動機制御装置。
  3. 請求項1記載の電動機制御装置であって、さらに、
    該電動機の回転子の回転数を検出する回転数検出手段を有し、
    前記電流設定手段は、該検出された回転数をも考慮して電流を設定する手段である電動機制御装置。
  4. 請求項1記載の電動機制御装置であって、
    該電動機の回転子の回転数を検出する回転数検出手段を有し、
    前記電流設定手段は、前記電動機の回転数が所定の値以下の場合のみに前記検出された電気角を考慮する手段である電動機制御装置。
  5. 多相交流を巻線に流した際に該巻線に生じる回転磁界を利用して回転子を回転させる電動機について、該巻線に流す電流を制御して該電動機の運転を制御する電動機の制御方法であって、
    (a) 該電動機から出力すべきトルクの要求値を設定する工程と、
    (b) 前記回転子の電気的な回転位置を定義する電気角を検出する工程と、
    (c) 前記電気角毎にそれぞれ用意された、前記電動機のトルクと該トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流との関係を示すマップを、前記要求トルクおよび電気角に基づいて参照することにより、該要求トルクを出力するために前記巻線に流すべき電流を求める工程と、
    (d) 該設定された電流を前記巻線に流す工程と
    を備える電動機の制御方法。
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