JP3673055B2 - バーハンドル車両用ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動二輪車や自動三輪車,三・四輪バギー車等の各種バーハンドルに用いられるブレーキ装置に係り、詳しくは、前輪ブレーキと後輪ブレーキを1つまたは2つのブレーキ操作子の操作によって発生した液圧で連動して作動する構造を持ったバーハンドル車両用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動二輪車のブレーキ装置として、例えば特開昭56−67681号公報(第1従来例)に示されるように、1つのブレーキ操作子の操作によって、機械式の前・後輪ブレーキを連動して作動させるものや、特開昭56−154378号公報(第2従来例)に示されるように、1つのブレーキ操作子の操作によって、液圧式の前・後輪ブレーキを連動して作動させるものが知られている。
【0003】
また、前輪ブレーキと後輪ブレーキのそれぞれが、第1ブレーキ操作子と第2ブレーキ操作子の双方につながれ、またいずれのブレーキ操作子の操作によっても前・後輪ブレーキが連動して作動する二系統式の連動ブレーキ装置として、例えば実開昭62−56497号公報(第3従来例)に示されるものがある。
この技術は、後輪ブレーキに連結される第1液圧室と、前輪ブレーキに連結される第2液圧室とを有する液圧マスタシリンダに、液圧マスタシリンダのプライマリピストンを押動するレバー機構と、該レバー機構の一端に連結され、ハンドルブレーキ操作時にレバー機構を作動する第1ワイヤケーブルを第1ブレーキ操作子で牽引操作し、同じくレバー機構の一端に連結され、フットブレーキ操作時にレバー機構を作動する第2ワイヤケーブルを第2ブレーキ操作子で牽引操作するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の第1〜第3従来例の構成は、前・後輪ブレーキとも機械式か液圧式同士の組合わせのみ適用が可能であって、前・後輪ブレーキのいずれか一方が機械式のブレーキで、他方が液圧式のブレーキの場合、1つのブレーキ操作子の操作によって、前・後輪ブレーキを連動して作動させることができなかった。また、車両の機種・用途や車体の重量配分等によっては、前輪ブレーキと後輪ブレーキのいずれか一方を他方に先がけて作動するよう設定したい場合があるが、前・後輪ブレーキが常に連動して作動する第1〜第3従来例の構成では、このように設定を行なうことができない。
【0005】
さらに、第3従来例の二系統式連動ブレーキ装置では、レバー機構に第1及び第2ワイヤケーブルの双方を並列に連結するので、ブレーキ操作子の一方のみの牽引操作では、他方のブレーキ操作子のワイヤケーブルが緩んで、他方のブレーキ操作子が自由状態に遊んでしまうと言う不具合があり、さらに他方のブレーキ操作子を後から牽引操作した場合には遊びストロークが大きくなり、操作フィーリングの低下を招くこととなる。
【0006】
本発明は、上述の実情を背景にしてなされたもので、第1の目的は、前・後輪ブレーキのいずれか一方が機械式のブレーキで、他方が液圧式のブレーキ構成の場合でも、一つのブレーキ操作子の操作によって、双方のブレーキを連動して作動させるようにし、また第2の目的は、2つのブレーキ操作子のいずれによっても前・後輪ブレーキを連動して作動させながらも、操作フィーリングの低下を招くことのないバーハンドル車両用ブレーキ装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上述の第1の目的を達成する請求項1の発明として、バーハンドル車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキのいずれか一方を、ブレーキ操作子の操作にて液圧マスタシリンダに発生した液圧にて作動する液圧式ブレーキとし、他方をブレーキワイヤやロッド等の連繋手段に牽引される機械式ブレーキとし、前記液圧マスタシリンダのシリンダボディに一端を開口して設けたシリンダ孔にピストンを内挿して、シリンダ孔の底部に液圧室を画成し、該液圧室と前記液圧式ブレーキとを液圧配管にて連結、前記シリンダボディの前記シリンダ孔の開口部側にイコライザブラケットを突設し該イコライザブラケットにイコライザの基端を支軸にて回動可能に枢支し、該イコライザの先端に、前記連繋手段を取り付けると共に前記ブレーキ操作子の基端に設けた回動基部を前記支軸とは別の支軸にて回動可能に枢支し、前記2つの支軸の間にて前記液圧マスタシリンダのピストンを液圧室方向へ押動するピストン押動部を、前記ブレーキ操作子の基端から前記開口部側へ突出して設ける。
【0008】
請求項1の発明でブレーキ操作子を握り操作すると、ブレーキ操作子とイコライザとが一体または別体に回動し、ブレーキ操作子のピストン押動部が、液圧マスタシリンダのピストンを押動し、イコライザが機械式ブレーキ側の連繋手段を牽引して機械式ブレーキを作動する。ピストン押動部に押動された液圧マスタシリンダのピストンは、シリンダ孔を底部の液圧方向へ前進して、シリンダ孔とリザーバとの連通を遮断した後、液圧室に液圧を発生させる。液圧室の液圧は、液圧式ブレーキ側の液圧配管を通して液圧式ブレーキに供給され、液圧式ブレーキを作動する。
【0009】
ブレーキ操作子がピストンを押し込む際の抵抗力と、イコライザが連繋手段を牽引する抵抗力とを等しく設定しておくと、ブレーキ操作子がピストンを押動し、イコライザが連繋手段を牽引して、液圧式ブレーキと機械式ブレーキの双方が略同時に作動する。
【0010】
また、ブレーキ操作子に対するピストン押し込み抵抗力を、イコライザに対する牽引抵抗力よりも大きく設定しておくと、ブレーキ操作子を握り操作することによって、ブレーキ操作子がピストンを押動することなしに、牽引抵抗力の小さいイコライザがブレーキ操作子と一体に回動して、イコライザが機械式ブレーキの連繋手段を牽引し、機械式ブレーキを液圧式ブレーキに先行して作動させる。機械式ブレーキの作動に伴って、イコライザの牽引抵抗力がブレーキ操作子のピストン押し込み抵抗力まで高まると、ブレーキ操作子がイコライザとは別個に回動し、ブレーキ操作子のピストン押動部が、液圧マスタシリンダのピストンを押圧して、液圧式ブレーキを作動させる。
【0011】
一方、イコライザの牽引抵抗力を、ブレーキ操作子のピストン押し込み抵抗力よりも大きく設定しておくと、ブレーキ操作子の握り操作によって、イコライザを回動させることなしに、ブレーキ操作子のみが回動して、ピストン押動部がピストンを押動し、液圧式ブレーキを機械式ブレーキに先がけて作動させる。そして、ブレーキ操作子のピストン押し込み抵抗力がイコライザの牽引抵抗力まで高まると、イコライザがブレーキ操作子と共に回動して連繋手段を牽引し、機械式ブレーキを作動させる。
【0012】
また、第2の目的を達成するための請求項2の発明として、バーハンドル車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキのいずれか一方を、第1ブレーキ操作子の操作にて一次液圧マスタシリンダに発生した液圧にて作動する液圧式ブレーキとし、他方を第2ブレーキ操作子の操作にて牽引される機械式ブレーキとし、前記第1ブレーキ操作子と液圧式ブレーキとをつなぐ液圧配管中に、シリンダボディの一端を開口して設けたシリンダ孔にピストンを液密且つ移動可能に内挿し、該ピストンとシリンダ孔の底壁との間に液圧室を画成した二次液圧マスタシリンダを介装して、該二次液圧マスタシリンダの液圧室と前記液圧配管とを連通させ、前記シリンダボディの前記シリンダ孔の開口部側にイコライザブラケットを突設し該イコライザブラケットにイコライザの基端を支軸にて回動可能に枢支し、該イコライザの先端に、前記機械式ブレーキにつながれるブレーキワイヤやロッド等の連繋手段を取り付けると共に前記第2ブレーキ操作子の基端に設けた回動基部を前記支軸とは別の支軸にて回動可能に枢支し、前記2つの支軸の間にて前記二次液圧マスタシリンダのピストンを液圧室方向へ押動するピストン押動部を、前記第2ブレーキ操作子の基端から前記開口部側へ突出して設ける。
【0013】
上記請求項2の構成では、第1ブレーキ操作子を単独で操作すると、第1ブレーキ操作子に付設の一次液圧マスタシリンダに発生した液圧が、液圧配管を通して、二次液圧マスタシリンダのシリンダ孔内に供給される。シリンダ孔に供給された液圧は、液圧室をそのまま通過して、液圧式ブレーキに供給され、液圧式ブレーキを単独で作動させる。
【0014】
本請求項2の第2ブレーキ操作子と二次液圧マスタシリンダは、請求項1の構成に相当し、第2ブレーキ操作子の単独操作では、第2ブレーキ操作子とイコライザが一体または別体に回動して、前述の請求項1と同様に、液圧式ブレーキと機械式ブレーキとが同時または相前後して作動する。
【0015】
また、第1ブレーキ操作子と第2ブレーキ操作子の双方の操作では、一次液圧マスタシリンダから二次液圧マスタシリンダの液圧室へ供給される液圧と、第2ブレーキ操作子の操作で、二次液圧マスタシリンダのピストンが押し込まれることによって二次液圧マスタシリンダの液圧室に発生する液圧のいずれか高い液圧が液圧式ブレーキへ供給され、イコライザに連繋手段をつないだ機械式ブレーキは、第2ブレーキ操作子の単独操作の場合と同様に作動する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各形態例を図面に基づいて説明する。
図1乃至図5は、本発明の請求項1を適用した第1形態例を示すもので、バーハンドル車両用のブレーキ装置1は、操向用のハンドルバー2の左端に取着けられる液圧マスタシリンダ3と、この液圧マスタシリンダ3にイコライザ4を介して取り付けられるブレーキ操作子5と、液圧マスタシリンダ3に作動液を供給するリザーバ6と、フロントフォーク7の下端に枢支される前輪ブレーキ8と、スイングアーム9の後端に枢支される後輪ブレーキ10と、前記液圧マスタシリンダ3及び前輪ブレーキ8をつなぐ液圧配管11と、前記ブレーキ操作子5及び後輪ブレーキ10をつなぐ連繋手段12とを備えている。
【0017】
ブレーキ操作子5には、ライダーに握り操作される操作レバーを用いており、ブレーキ操作子5と後輪ブレーキ10の間の連繋手段12として、ブレーキケーブルを用いている。前輪ブレーキ8には、ディスクロータ13とキャリパボディ14とを備える液圧式のディスクブレーキが適用され、キャリパボディ14には液圧配管11が接続されている。また後輪ブレーキ10には、バックプレート15内に一対の弓形ブレーキシュー16,16を対向配置し、両ブレーキシュー16,16を、カム軸17の回動にてアンカーピン18を支点に拡開する内拡型の機械式ドラムブレーキが適用されており、カム軸17に一端を固着したカムレバー19には、連繋手段12が接続されている。
【0018】
上記液圧マスタシリンダ3は、シリンダボディ3aに一端を開口して設けた有底のシリンダ孔3bに、ピストン20を液密且つ移動可能に内挿し、該ピストン20とシリンダ孔3bの底壁3cとの間に液圧室21を画成した液圧シリンダで、シリンダボディ3aの基部車体側には、ハンドルバー2への取付け片3dとイコライザブラケット3eが突設されている。
【0019】
シリンダボディ3aの周壁には、リリーフポート22とサプライポート23とがシリンダ孔3bに連通して設けられ、このリリーフポート22及びサプライポート23にリザーバ6が接続されている。また、シリンダ孔3bの底壁3cには、液圧室21へ突出するピストン当接片3fと、液圧室21に連通する出力ポート24とが設けられており、該出力ポート24に前輪ブレーキ用の液圧配管11が接続されると共に、ピストン当接片3fによって、ピストン20がシリンダ孔3bを所定量以上前進しないように規制している。
【0020】
液圧室21には、シリンダ孔3bの底壁3cとピストン20との間にリターンスプリング25が縮設されており、非作動時のピストン20は、リターンスプリング25の弾発力によってシリンダ孔3bの開口部方向へ付勢され、その後退限を、シリンダ孔3bの開口部に係着した止め輪26との当接によって規制されている。
【0021】
前記シリンダボディ3aのイコライザブラケット3eには、イコライザ4の基端4aが支軸27によって回動可能に枢支され、該イコライザ4の先端4bの近傍に、シリンダボディ3aの支持腕3gを貫通して配策される連繋手段12が弛みなく取り付けられ、先端4bと支持腕3gとの当接にてイコライザ4の後退限が規制されると共に、イコライザ4の先端4bに、ブレーキ操作子5が回動基部5aを支軸28で枢支して回動可能に取付けられている。
【0022】
ブレーキ操作子5の基端側には、上述の回動基部5aと、シリンダ孔3bの開口部側へ半円状に突出するピストン押動部5bとが設けられている。イコライザ4の先端側とブレーキ操作子5の基端との間にはスプリング29が縮設されていて、シリンダ孔3bの開口部より突出するピストン20の外端20aにピストン押動部5bを常に当接させるよう、ブレーキ操作子5を弾発している。
【0023】
尚、符号30,30は、ピストン20の液圧室側及び反液圧室側に嵌合されたカップシール、31は両カップシール30,30間に画成された補給室、32,32は、後輪ブレーキ10のブレーキシュー16,16の間に張設された一対のシューリターンスプリング、33はバックプレート15のガイドアーム15aとカムレバー19との間で後輪ブレーキの連繋手段12に外挿されるレバーリターンスプリングである。
【0024】
以上のように構成される本形態例のブレーキ装置1は、ブレーキ操作子5を握り操作しない非作動時に、図1,図2に示す状態にあって、イコライザ4は、連繋手段12からの牽引力によって、先端4bをシリンダボディ3aの支持腕3gに支承される後退限に位置し、また液圧マスタシリンダ3では、リリーフポート22と液圧室21とが連通し、サプライポート23と補給室31とが連通している。
【0025】
次に、図1,図2の非作動状態からブレーキ操作子5を握り操作すると、図3に示すように、イコライザ4が支軸27を支点に回動して連繋手段12を牽引し、ブレーキ操作子5が支軸28を支点に回動して、支軸27,28の間に位置するピストン押動部5bが液圧マスタシリンダ3のピストン20を押動する。ピストン押動部5bに押圧された液圧マスタシリンダ3のピストン20は、シリンダ孔3bを底部の液圧室方向へ前進して、リリーフポート22と液圧室21との連通を遮断したのち、液圧室21に液圧を発生させる。液圧室21の発生液圧は、液圧配管11を通して前輪ブレーキ8のキャリパボディ14に供給され、前輪ブレーキ8を液圧作動する。一方、イコライザ4に牽引された連繋手段12は、カムレバー19を回動して後輪ブレーキ10を作動する。
【0026】
前輪ブレーキ8と後輪ブレーキ10の作動は、キャリパボディ14に用いるピストンシールの締め代や、後輪ブレーキ10のシューリターンスプリング32,32、レバーリターンスプリング33のセット荷重を調整して、連繋手段12を通してイコライザ4に作用する牽引抵抗力と、ピストン20からブレーキ操作子5に作用する押し込み抵抗力を変えることによって、いずれか一方を他方に先行させることができる。
【0027】
例えば、ブレーキ操作子5のピストン押し込み抵抗力を、イコライザ4に対する牽引抵抗力よりも大きく設定しておくと、図4に示す如く、ブレーキ操作子5がピストン20を押動することなしに、牽引抵抗力の小さいイコライザ4がブレーキ操作子5と一体に回動して、イコライザ4が連繋手段12を牽引し、後輪ブレーキ10を前輪ブレーキ8に先行して作動させる。そして、後輪ブレーキ10の作動に伴い、イコライザ4の牽引抵抗力がブレーキ操作子5のピストン押し込み抵抗力まで高まると、ブレーキ操作子5が支軸28を支点にイコライザ4とは別個に回動し、ブレーキ操作子5のピストン押動部5bが、液圧マスタシリンダ3のピストン20を押圧して、前輪ブレーキ8を作動させる。
【0028】
また、イコライザ4の牽引抵抗力を、ブレーキ操作子5のピストン押し込み抵抗力よりも大きく設定しておくと、図5に示す如く、ブレーキ操作子5がイコライザ4を回動させることなしに支軸28を支点に回動して、ピストン押動部5bがピストン20を押動し、前輪ブレーキ8を後輪ブレーキ10に先がけて作動させる。そして、ブレーキ操作子5のピストン押し込み抵抗力がイコライザ4の牽引抵抗力まで高まると、イコライザ4が支軸27を支点にブレーキ操作子5と共に回動して連繋手段12を牽引し、後輪ブレーキ10を作動させる。
【0029】
このように、本形態例のブレーキ装置1によれば、ブレーキ操作子5の握り操作によって、液圧式の前輪ブレーキ8と機械式の後輪ブレーキ10とを連動して作動することができ、前・後輪ブレーキに液圧式と機械式を用いた既成のスクータや小型自動二輪車等を連動ブレーキ化する場合に頗る好適である。
【0030】
また、前・後輪ブレーキ8,10を同時に作動させる以外に、上述のピストンシールやスプリング類の設定を変更することによって、前・後輪ブレーキ8,10のいずれか一方を他方に先がけて作動させる先行ブレーキとすることができ、車体重量が後部に偏重したスクータ等や、不整地を走行するオフロードバイク,バギー車等を始め、車両特性に合わせた良好な制動を行なうことができるようになる。さらに、前・後輪ブレーキ8,10を同時またはいずれか一方を優先して作動させた場合にも、後輪ブレーキ10の連繋手段12に緩みを生じることがなく、ブレーキ操作子5の操作フィーリングを損なうことがない。
【0031】
次に、本発明の請求項2を適用した第2形態例を、図6及び図7に基づいて説明する。尚、前述の第1形態例と同様の構成部分については同一の符号を付して、詳細な説明を省略する。
バーハンドル車両用のブレーキ装置40は、操向用のハンドルバー2の右端に取着けられる一次液圧マスタシリンダ41及び第1ブレーキ操作子42と、同じくハンドルバー2の左端に取着けられる二次液圧マスタシリンダ3(第1形態例の液圧マスタシリンダと同じ)、及びこの液圧マスタシリンダ3にイコライザ4を介して取り付けられる第2ブレーキ操作子5(第1形態例のブレーキ操作子と同じ)と、フロントフォーク7の下端に枢支される前輪ブレーキ8と、スイングアーム9の後端に枢支される後輪ブレーキ10と、一次液圧マスタシリンダ41と二次液圧マスタシリンダ3と前輪ブレーキ8とをつなぐ液圧配管43a,43bと、前記第2ブレーキ操作子5と後輪ブレーキ10とをつなぐ連繋手段12とを備えている。
【0032】
二次液圧マスタシリンダ3のシリンダボディ3aに形成されたリリーフポート22とサプライポート23には、第1ブレーキ操作子側の液圧配管43aが接続されている。また、二次液圧マスタシリンダ3の液圧室21に設けられた出力ポート24には、前輪ブレーキ側の液圧配管43bが接続されている。
【0033】
このように構成される本形態例のブレーキ装置40では、第1ブレーキ操作子42のみを単独で握り操作した場合に、一次液圧マスタシリンダ41に発生した液圧が、液圧配管43aを通して二次液圧マスタシリンダ3のリリーフポート22から液圧室21に、またサプライポート23から補給室31にそれぞれ供給され、液圧室21からピストン20をシリンダ孔3bの開口部方向へ押圧する液圧が作用するが、ピストン20は、後退限を止め輪26にて規制されているため作動しない。これにより、液圧室21に供給された液圧は液圧室21をそのまま通過して、液圧配管43bより前輪ブレーキ8のキャリパボディ14に供給され、前輪ブレーキ8を単独で液圧作動する。
【0034】
また、第2ブレーキ操作子5を単独で握り操作した場合には、第2ブレーキ操作子5とイコライザ4とが支軸27を支点に一体に回動し、第2ブレーキ操作子5のピストン押動部5bが二次液圧マスタシリンダ3のピストン20を押動し、イコライザ4が連繋手段12を牽引する。支軸27,28の間に位置するピストン押動部5bに押圧された二次液圧マスタシリンダ3のピストン20は、シリンダ孔3bを底部の液圧室方向へ前進して、リリーフポート22と液圧室21との連通を遮断したのち、液圧室21に液圧を発生させる。液圧室21の発生液圧は、液圧配管43bを通して前輪ブレーキ8のキャリパボディ14に供給され、前輪ブレーキ8を液圧作動する。一方、イコライザ4に牽引された連繋手段12は、カムレバー19を回動して後輪ブレーキ10を作動する。
【0035】
また、第1ブレーキ操作子42と第2ブレーキ操作子5の双方を握り操作すると、二次液圧マスタシリンダ3のシリンダ孔3bに、一次液圧マスタシリンダ41からの液圧が作用し、同じく二次液圧マスタシリンダ3のピストン20にピストン押動部5bの押圧力が作用する。そして、ピストン押動部5bからの押圧力が一次液圧マスタシリンダ41からの液圧よりも大きい場合には、上述のように第2ブレーキ操作子5とイコライザ4とが一体に回動し、ピストン押動部5bがピストン20を押動して、前輪ブレーキ8を二次液圧マスタシリンダ3の液圧室21に発生した液圧によって作動し、またイコライザ4が後輪ブレーキの連繋手段12とカムレバー19とを介して後輪ブレーキ10を牽引作動する。
【0036】
一方、一次液圧マスタシリンダ41からの液圧がピストン押動部5bからの押圧力よりも大きい場合には、図7に示されるように、一次液圧マスタシリンダ41からの液圧が、ピストン20の前進を阻止し、二次液圧マスタシリンダ3の液圧室21をそのまま通過して前輪ブレーキ8を液圧作動する。また、第2ブレーキ操作子5は、ピストン20からの反力によって、ピストン押動部5bとピストン20の外端20aとの当接点を支点に回動し、該第2ブレーキ操作子5の回動にてイコライザ4が支軸27を支点に回動し、連繋手段12が後輪ブレーキ10を牽引作動する。
【0037】
また、第1ブレーキ操作子42の握り操作を解除した場合には、前輪ブレーキ8のキャリパボディ14へ供給された液圧が、液圧配管43a,43bと二次液圧マスタシリンダ3の液圧室21を通して一次液圧マスタシリンダ41へ戻される。更に、第2ブレーキ操作子5の握り操作を解除すると、連繋手段12が、後輪ブレーキ10のシューリターンスプリング32,32の牽引力やレバーリターンスプリング33の弾発力によって後輪ブレーキ方向へ牽引され、イコライザ4と第2ブレーキ操作子5と後輪ブレーキ10とが、それぞれ図6に示す非作動状態に復帰する。
【0038】
本形態例はこのように、第1ブレーキ操作子42の単独操作によって、制動効率の高い前輪ブレーキ8のみを、二次液圧マスタシリンダ3を介して単独で作動させることができ、また第2ブレーキ操作子5の単独操作では、二次液圧マスタシリンダ3とイコライザ4とを介して、前輪ブレーキ8と後輪ブレーキ10とを連動させて効率のよい制動を行なうことができる。
【0039】
また、第1ブレーキ操作子42と第2ブレーキ操作子5の双方の操作では、二次液圧マスタシリンダ3が、シリンダ孔3bに供給される一次液圧マスタシリンダ41からの液圧と、ピストン20に作用するピストン押動部5bの押圧力のいずれか大きい方を選択して前輪ブレーキ側に高い液圧を供給するいわゆるハイセレクトとなるので、後輪ブレーキ10をイコライザ4で牽引作動しながら、前輪ブレーキ8をより高い液圧で作動して、バーハンドル車両を効率よく制動することができる。
【0040】
更に本形態例は、第1ブレーキ操作子42と第2ブレーキ操作子5の握り力や操作タイミングを変えることによって、前輪ブレーキ8と後輪ブレーキ10の制動開始時間を前後にずらしたり、前・後輪ブレーキ8,10の制動力配分を変えることも可能であり、運転状況や道路状況により適合した制動が可能となる。また、第1,第2ブレーキ操作子42,5のいずれか一方のみを操作した場合に、2本のワイヤケーブルを並列に用いた従来のように、他方の系統のワイヤケーブルが緩んで初期制動を遅らせたり、操作フィーリングの低下を招くなどの不具合がなく、良好な制動を行なうことができる。
【0041】
尚、上述の両形態例では、前輪ブレーキに液圧式ブレーキを適用し、後輪ブレーキに機械式ブレーキを適用して説明したが、本発明は逆の設定も可能である。また、液圧式ブレーキは、ホイールシリンダを用いたドラムブレーキであってもよく、機械式ブレーキにピストンをメカニカルな機構で押動する形式のディスクブレーキを用いることもできる。第1,第2ブレーキ操作子には、ブレーキペダルを用いてもよく、また連繋手段をロッドまたはワイヤケーブルとロッドの組合わせとすることもできる。
【0042】
【発明の効果】
以上のように、本発明の請求項1によれば、1つのブレーキ操作子の握り操作によって、液圧式ブレーキと機械式ブレーキとを連動して作動することができ、前・後輪ブレーキに液圧式と機械式を適用した既成のスクータや小型自動二輪車等のバーハンドル車両を連動ブレーキ化する場合に、構造が簡単で且つコストも改造のための費用安価で、頗る好適である。更に、バーハンドル車両の特性に合わせて、液圧式ブレーキと機械式ブレーキのいずれか一方を他方に先がけて作動させたい場合に、調整を容易に行なうことができる。
【0043】
また、請求項2の発明によれば、制動効力の高い前輪ブレーキのみを、一次液圧マスタシリンダからの液圧によって単独で作動させることができ、更に、第2ブレーキ操作子の単独操作では、二次液圧マスタシリンダとイコライザとによって前輪ブレーキと後輪ブレーキとを連動させて効率のよい制動を行うことができる。
【0044】
また、第1ブレーキ操作子と第2ブレーキ操作子の双方の操作では、二次液圧マスタシリンダが、シリンダ孔に供給される一次液圧マスタシリンダからの液圧と、ピストンに作用するピストン押圧部の押圧力のいずれか大きい方を選択して、前輪ブレーキ側に高い液圧を供給するいわゆるハイセレクトとなるので、後輪ブレーキをイコライザで牽引作動しながら、前輪ブレーキをより高い液圧で作動して、バーハンドル車両を効率よく制動することができる。
【0045】
従って、第1ブレーキ操作子の単独操作によって、前輪ブレーキを制動限界域で作動している時に、第2ブレーキ操作子を追加操作することによって、後輪の制動を追加することが可能であり、制動中の安定性が向上すると共に、制動距離の短縮化も可能となる。
【0046】
さらに、請求項1及び請求項2の発明では、前輪ブレーキと後輪ブレーキを作動させた場合に、後輪ブレーキにつながれた連繋手段に緩むことがないから、ブレーキ操作子の操作に余分な遊びを生じて、操作フィーリングを損なうという不具合がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1形態例を示すブレーキ装置の要部断面図
【図2】本発明の第1形態例を示すブレーキ装置の概略図
【図3】本発明の第1形態例を示す制動時の要部断面図
【図4】本発明の第1形態例を示す液圧マスタシリンダからの液圧がピストン押動部の押圧力より大きい場合の要部断面図
【図5】本発明の第1形態例を示すピストン押動部の押圧力が液圧マスタシリンダからの液圧より大きい場合の要部断面図
【図6】本発明の第2形態例を示すブレーキ装置の概略図
【図7】本発明の第2形態例を示す液圧マスタシリンダからの液圧がピストン押動部の押圧力より大きい場合の要部断面図
【符号の説明】
1,40…ブレーキ装置
2…ハンドルバー
3…液圧マスタシリンダ(二次液圧マスタシリンダ)
3a…シリンダボディ
3b…シリンダ孔
4…イコライザ
5…ブレーキ操作子(第2ブレーキ操作子)
5b…ピストン押動部
8…前輪ブレーキ
10…後輪ブレーキ
11,43a,43b…液圧配管
12…連繋手段
20…ピストン
21…液圧室
41…一次液圧マスタシリンダ
42…第1ブレーキ操作子

Claims (2)

  1. バーハンドル車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキのいずれか一方を、ブレーキ操作子の操作にて液圧マスタシリンダに発生した液圧にて作動する液圧式ブレーキとし、他方をブレーキワイヤやロッド等の連繋手段に牽引される機械式ブレーキとし、
    前記液圧マスタシリンダのシリンダボディに一端を開口して設けたシリンダ孔にピストンを内挿して、シリンダ孔の底部に液圧室を画成し、該液圧室と前記液圧式ブレーキとを液圧配管にて連結
    前記シリンダボディの前記シリンダ孔の開口部側にイコライザブラケットを突設し
    該イコライザブラケットにイコライザの基端を支軸にて回動可能に枢支し、
    該イコライザの先端に、前記連繋手段を取り付けると共に前記ブレーキ操作子の基端に設けた回動基部を前記支軸とは別の支軸にて回動可能に枢支し、
    前記2つの支軸の間にて前記液圧マスタシリンダのピストンを液圧室方向へ押動するピストン押動部を、前記ブレーキ操作子の基端から前記開口部側へ突出して設けたことを特徴とするバーハンドル車両用ブレーキ装置。
  2. バーハンドル車両の前輪ブレーキと後輪ブレーキのいずれか一方を、第1ブレーキ操作子の操作にて一次液圧マスタシリンダに発生した液圧にて作動する液圧式ブレーキとし、他方を第2ブレーキ操作子の操作にて牽引される機械式ブレーキとし、
    前記第1ブレーキ操作子と液圧式ブレーキとをつなぐ液圧配管中に、シリンダボディの一端を開口して設けたシリンダ孔にピストンを液密且つ移動可能に内挿し、該ピストンとシリンダ孔の底壁との間に液圧室を画成した二次液圧マスタシリンダを介装して、該二次液圧マスタシリンダの液圧室と前記液圧配管とを連通させ、
    前記シリンダボディの前記シリンダ孔の開口部側にイコライザブラケットを突設し
    該イコライザブラケットにイコライザの基端を支軸にて回動可能に枢支し、
    該イコライザの先端に、前記機械式ブレーキにつながれるブレーキワイヤやロッド等の連繋手段を取り付けると共に前記第2ブレーキ操作子の基端に設けた回動基部を前記支軸とは別の支軸にて回動可能に枢支し、
    前記2つの支軸の間にて前記二次液圧マスタシリンダのピストンを液圧室方向へ押動するピストン押動部を、前記第2ブレーキ操作子の基端から前記開口部側へ突出して設けたことを特徴とするバーハンドル車両用ブレーキ装置。
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